2023年10月27日
今年度から、石川県内の大学生を対象に能登の里山里海GIAHSを通して国際的な視点を持つ若者の育成と地域への貢献を促進することを目的に「世界農業遺産(GIAHS)スタディ・ビジットプログラム」が石川県と国連大学OUIKの共同プログラムとしてスタートしました。 7月に開催された第一回講義、8月9日~10日の1泊2日の世界農業遺産「能登の里山里海」について学ぶ現地研修に続いて、石川県内の大学生の5名が参加するイタリア研修が9月10日~17日の日程で実施されました。 この訪問の目的は様々な国連期間の食に関する取り組みについて学び、実際にイタリアのGIAHS地域を訪れ、持続可能な農業について学ぶことです。
これまでのGIAHSスタディ・ビジットプログラムの活動は以下よりご覧ください。
ローマでは、ローマに本部を置く食糧関連の国連3機関、国連世界食糧計画(WFP )、国際連合食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)を訪れ、世界が直面する食料や農業の課題や各機関の取り組み内容について学びました。FAO本部で学生たちは国内研修を通して学んだ、能登GIAHSに関するプレゼンテーションを英語で行いました。FAOのプログラムスペシャリスト、クレリアさんは千枚田の次世代継承について研究したチームの発表について「とても興味深い。現代のテクノロジーを用いた提案を現地の人とも共有するべき」とコメントしました。以下はWFP, FAO, IFADの本部訪問での学びの記録です。
IFAD(国際農業開発基金)
IFADでは発展途上国、特に農村地域を支援するIFADの活動について学びました。小規模農家や農村コミュニティに主に向けられた資金調達と能力構築の取り組みについてのレクチャーの後、IFADは、貧困層と低所得者に対するインフラ改善とマイクロファイナンスサービス提供のアプローチについて議論しました。特にジェンダー平等の実現は、途上国の持続可能な開発を実現するうえで重要な課題であり、その実現に向けて様々なプロジェクトを通じで途上国の女性を支援しているそうです。そして、若者には資本となる土地がないなどの課題があり、若者の雇用を生み出し、エンパワーメントを後押しするためのプロジェクトも進められているとのことです。
WFP(世界食糧計画)
WFPでは「命を救い、人生を変える(Saving lives, changing lives)」というポリシーのもと、戦地や被災地に72時間以内に対応しているそうです。特に学校給食プログラムを通じた教育の重要性、栄養不良の対策と子供たちの教育へのアクセス支援に焦点を当てました。給食が学習成果の向上とSDG 4の達成に果たす重要な役割を認識するとともに国際機関と民間企業の協力の重要性を認識しました。また、「Share The Meal」というアプリにを通し、個人が食糧支援プログラムに簡単に貢献できることを知りました。
FAO(食品農業機関)
FAOでは食品に関連する課題に対処するために持続可能な農業の実践と革新の必要性について学びました。世界的な食に関する問題に取り組むために学術界、研究機関、国際機関との協力の重要な役割にも焦点を当てました。学生たちはFAOの環境に配慮した農業の促進と栄養価の高い食品へのアクセスを確保する取り組みについてより深い理解を得ました。
ローマ訪問の後半はウンブリアを訪問し、GIAHSに認定されているアッシジとスポレートの間の斜面にあるオリーブ畑などを訪問しました。
オリーブ農家から地域に古くから伝わるオリーブの栽培方法についても学びました。斜面を活用して太陽の光を最大限に利用し、雨水を効果的に排水する方法や、石で土地を固定する伝統的な方法は、土壌流出を防ぐために重要です。また、気候変動との関係についても学び、持続可能なオリーブ栽培の重要性を理解しました。オリーブオイルテイスティングでは、オリーブオイルにはさまざまな味があり、気温やオリーブの品種によって変化することを学びました。さらにオリーブオイルの生産工場を見学したり、博物館や伝統的な建築を訪問し、オリーブ栽培やオリーブオイル生産の歴史について探求しました。農家の方とのディスカッションでは地域の獣害問題や若者の農業人口など、能登での課題と関連性のあるトピックにつても議論しました。
学生たちはこの訪問やこれまでの能登での学びを活かし、能登GIAHSでの課題解決に関する研究を進め、最終発表へ挑みます。