3月31日、金沢市指定文化財の一つでもある千田家庭園(非公開)にて清掃ワークショップが行われました。
庭園の維持は手のかかる作業です。普段からの木々の手入れ、草むしりなどに加え、特にこの千田家庭園のように大きな池があり、用水から水を引いているタイプの庭園では、定期的な池の清掃も必要になってきます。
これがとても大変な力仕事なのですが、前回の清掃ワークショップから半年が経ち、また池の底に泥が溜まってきました。
今回のワークショップでは、地域住民、学生、自治体職員、外国人観光客の方々、約15名の方々に参加頂き、水を抜いた状態の池の中に入り、底に溜まった泥を除去する作業を行いました。
泥をスコップですくい、袋に入れて運び出す作業。
石や藻も絡み付いてきます。この藻は池に泥が溜まりだすと急に繁殖し、泥に根を張るそうです。
今回はこの藻も除去しました。
作業を続けること1時間半、池の中から大きな亀がでてきました。
なんとこの亀、少なくとも50年前からこの庭園に住み着いている亀だそうです。
ここを住処にする動植物からも、この庭園の歴史の深さがうかがえます。
清掃が終わった後は家の中でお茶を頂き、所有者の千田さんと石野さんからこの庭園の歴史や造りについて学びました。
この庭園は千田登文旧加賀藩士が1984年(明治27年)に作庭した池泉回遊式の庭園で、いたるところに今の時代では中々見られない職人技が施されているそうです。
100年以上たっても崩れてこない池の淵の石積み技術、戸室石で作られた橋に刻まれる加賀藩とのゆかりを示す刻印、徽軫(ことじ)灯篭に似た雪見灯篭などなど、沢山ある見所についても説明していただきました。
参加者も普段なかなか聞けない話に興味深く聞き入っている様子でした。
特にアメリカからの観光客の方は地域との連携や市の制度など、文化財の保護や維持のシステムについて質問されていました。
このような清掃ボランティア活動は元々、金沢市の景観政策課の方々を中心に行われていたようです。2017年からOUIKのフアン研究員も活動に加わり、このワークショップを「エコツーリズム」へ発展させるべく、清掃後に庭園の歴史や管理について学ぶワークショップやお茶会を組み込み、体験型プログラムとしての定着を進めています。また、重労働が分散でき、所有者にもメリットがある新しい庭園の管理システムとして更なる活用が期待されています。