地域との研究活動:アーカイブ
2019年07月19日
※前半の記事はコチラから
遠足の後半のプランはこの2つです
・あごだし作り体験で魚を焼くときに使用した、珪藻土(けいそうど)七輪コンロのできる様子を見学
・あごだし作り体験で魚をさばいたときに使用した、包丁のできる様子を見学
珪藻土七輪コンロができあがるまで
珪藻土七輪コンロのできる様子を見学しに、能登燃焼器工業株式会社を訪れました。
職人の舟場さんから、「珪藻土って何だと思う?!」と質問を受けると、「土です!」と子供たちが元気よく答えました。

「珪藻土とは、珪藻という水の中にいる小さい植物性プランクトンが死に、その殻が積み重なって化石化した土のことだよ。この地域の山の中を切り出すと珪藻土が出てくるということは、大昔この地域は海の底だったということが分かるよ。」と説明する舟場さん。子供たちは、「へ~」と少し驚いた様子でした。
「実際に、そこにある珪藻土の塊を触っていいよ」と言われると、「なんだか粘土みたい!」「柔らかい~」子供たちは初めて触る珪藻土の触感を楽しんでいました。
舟場さん曰く、この辺りでは珪藻土を使って七輪コンロを作り、輪島の地域では輪島塗を作るときに珪藻土を使用しているとのことです。地域によって、珪藻土の使われ方は様々であると分かりました。
続いて、実際に珪藻土を切り出してくる山の穴の入り口まで連れて行ってもらいました。
穴の入り口の前に来ると、「涼しい!!」「天然クーラーだ!!」「音がすごく響くよ!」(穴に向かって、あーーーっ!!と叫んでみる)子供たちは穴の中の様子に興味深々でした。穴の中は、夏は涼しく、冬は暖かいという特徴があるそうです。
職人は、ノミを持って穴の中に入り、珪藻土を切り出します。珠洲では昔から、珪藻土七輪コンロを作ってきた歴史があるので、山の中を探すと沢山の穴が見つかるとのことです。
先ほどの作業場へ戻ってくると、舟場さんが珪藻土の中から出てきたサメの化石を見せてくれました。「えっ!化石が出るの?!」「何が出るの!?」「たくさんでるの?!」「ここの方が近いし、福井行かないでここで発掘しようかな!」子供たちはとても嬉しそうに声をあげていました。

実際に珪藻土から出てきたサメの歯
「これまで切り出してきた珪藻土の中には、気づかずに見過ごした化石もあると思う」と舟場さんが言うと、「え~もったいない!」子供たちは、化石にとても興味があるようでした。
続いて、山の中から切り出してきた珪藻土の塊を七輪の形に形成していく加工場へ連れて行ってもらいました。加工場へ向かう途中で、焼き上げた後の珪藻土を目にすることができました。「実際に持ってみてもいいよ」と言われると、「え!!こんなに軽いの!?」「なんだか色が白っぽい!」子供たちは驚いた様子でした。(珪藻土は焼き上げると水分が抜け、塊だったころの約半分の重さになるそうです。)

加工場では、職人さんたちが道具を使って、珪藻土の塊を七輪の形に加工していました。子供たちも実際に、珪藻土の塊を削る作業を体験しました。「なにか、化石出てこないかなぁ(わくわく)」「チョコレートみたい!」「俺もやりたい!」子供たちはとても盛り上がっていました。
-削るときのポイントー
・少しずつ削ること
・薄く薄く削ること
・力を入れすぎると削るのが難しいから、力を入れすぎずに削ること
舟場さんからアドバイスを受けながら、子供たちは夢中になって珪藻土を削っていました。

加工場で珪藻土の塊を七輪の形に加工した後は、焼きの作業があります。二晩かけて珪藻土で出来た専用の窯で焼き上げるそうです。燃料は薪を使用し、窯の中の温度は800℃まで上がるそうです。

焼きの作業後は、仕上げの作業に入り、最終的に珪藻土の七輪コンロが出来上がるとのことです。珠洲の珪藻土は形成性に富み、多孔質(表面にちいさい穴があいている性質)で、優れた断熱性(熱効率)を有することなどから、長年人々の火のある暮らしを支えてきたとのことです。
包丁ができあがるまで
続いて、午前中のあごだし作り体験で魚をさばくときに使用した包丁のできる様子を見学しに、ふくべ鍛冶工場を訪れました。
移動の車中で、「ふくべ鍛冶工場には沢山の刃物が置いてあるので、皆さん気を付けて作業場を歩くようにしてください」と言われていた子供たちは、少し慎重な足取りで工場の中へと進みました。
子供たちが到着すると、ふくべ鍛冶4代目の千場さんが待っていてくださりました。

まず初めに千場さんから、「鍛冶屋って何だと思う?!」と質問を受けると、「刀をつくる!」と子供たちが答えました。
千場さんから、鍛冶屋は三種類に分類することができると教えてもらいました。
- 刀鍛冶
- 専門鍛冶
- 野鍛冶-包丁や農具、漁具などを扱う鍛冶屋
ふくべ鍛冶は③野鍛冶に属し、能登の農業、漁業と共に歩んできた鍛冶屋であるとのことです。農法に適した道具を作っていくのが野鍛冶であり、用途に合わせてひとつひとつ丁寧に製造、修理を行っているそうです。
今回は、イカ割き包丁(イカを割くための細い包丁)が出来上がるまでを千場さんに実演して頂きました。窯の中は1200℃まで温度が上がり、その中に材料(鋼を鉄でサンドした包丁の原型)を入れるところから実演がスタートしました。

実演では、
窯の中で熱した材料を取り出す→機械で叩いて形を整える→ハンマーで叩いて形を整える→また窯の中に戻す
という作業を繰り返し行っていきました。
子供たちは、1200℃の熱い窯の側で汗をかきながら一生懸命に作業している千場さんの姿を、一瞬も目を離さずに見ていました。
千場さんが熱い窯の中から熱した刃物を取り出し、子供たちに見せると、「こんなに距離があるのに暑い・・。(干場さんの方が刃に近いから)」「すごーい」子供たちは刃物の熱さや、鋭さに驚いていました。
実演をしながら千場さんが、「ハンマーで叩く際に出てくる、カサブタのようなものは、鉄の中の不純物(サビの一種)が出てきているんだよ。」と教えてくれました。繰り返し叩くことで不純物を出し、純度の高い丈夫な刃物が出来上がるそうです。

また、ふくべ鍛冶で使用する窯の燃料は松炭を使用しているとのことです。松炭は繊細な温度調整ができ、火が付きやすく、刃が溶けにくく、刃物作りに適しているそうです。しかし、現在では手に入りづらく、とても貴重であるとのことです。
実演がすべて終わると、最初は長方形だった材料が、先の尖った刃物の形へと変形していました。
子供たちからは、「おぉ~」「包丁みたい」と声があがっていました。
千場さん曰く、通常は一時間ほど作業を繰り返し、その後に柄の部分と刃を合体させて包丁が完成するそうです。柄の部分と刃が合体したときに、丁度よいバランスが取れるようにすることが大切であるとのことでした。
-子供たちの感想-
・何回も同じ作業を繰り返していてすごいと思った
・包丁の作り方が分かった
・こんなに時間をかけて、包丁ができあがると思わなかった
・あちらにある機械はなんですか?→包丁を削る道具だよ(千場さん)
最後に、ふくべ鍛冶のお店を訪問し、実際に包丁が売られているところを見せていただきました。

お店には、様々な用途で使用できる包丁や、農業、漁業で使用する道具などが沢山販売されていました。千場さんが道具の使用方法などを教えてくださり、子供たちは真剣に耳を傾けていました。
遠足の後半(珪藻土七輪コンロ作りの見学、包丁作りの見学)を通して子供たちは、美味しい「ごっつぉ」ができあがるまでには、新鮮な食材だけでなく、様々な道具が使用されていることを改めて学べたのではないでしょうか。伝統的な技術で道具作りをしている人たちの、ひとつひとつの丁寧な手作業や、情熱によって素晴らしい道具が完成するということも、実際に道具を作る現場を見学させていただき、理解できたのではないかと思います。
私も三井小学校の皆さんの遠足に参加させていただき、とても勉強になりました。
ありがとうございました。
報告:OUIKインターン 成嶋 里香
国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」を利用した持続可能な未来へ向けての教育活動をサポートしています。
一言で「能登の里山里海」と言っても地域によって異なる様々な伝統文化がありますが、三井小学校のような活動が能登の他の地域でも行われ、里海、里山間で交流が生まれるようなプラットフォーム作りを進めていきたいと思います。

さて、次回はどんな「ごっつぉ」を作るのでしょうか?
「SDGs三井のごっつぉproject」は通年のプログラムとして続きます。
企画・実行:萩野アトリエ/まるやま組 萩のゆき、萩野紀一郎(富山大学 芸術文化学部 准教授)
協力:国連大学OUIK
2019年07月22日
皆さん、こんにちは。インターン生の向です。
7月11日、今回で3回目となった『SDGs三井ごっつぉproject』では三井小学校5、6年生の7名が遠足という形で珠洲市を訪れ、「あごだし」について学びました。
これまでの活動についてはこちらをご覧ください。
『SDGs三井のごっつぉ Project』始動!
『SDGs三井のごっつぉ Project』第2回
皆さん、「あごだし」はご存じでしょうか?「あごだし」とはトビウオの出汁(だし)のことで、新鮮なトビウオを焼いて干したり、煮て干したりして作るもののことです。珠洲では外浦で捕れる小さなトビウオを地元産の炭火で焼き、干して作っています。

今回の活動内容は
・あごだし作り体験
・あごを焼く珪藻土で作った七輪について学ぶこと
・トビウオを捕まえる道具作りについて学ぶこと
とても盛りだくさんな内容だったので、2部制で皆さんにお届けしたいと思います。
前半は午前中に行ったあごだし作り体験をメインに報告させていただきます!
最初の目的地は、珠洲市三崎町にある長手崎すいせん工房です。

「わぁぁ!海だぁ!」
普段は山に囲まれた三井で暮らしているため、今までのSDGsごっつぉprojectも山に関わるものでしたが、今回は初めての海。長手崎すいせん工房までの道中で、絵本「日本海のはなし」を読み聞かせしてもらい、気持ちはまっすぐ海に向かっていた子供たちは、工房のすぐそばにある海にとても目を輝かせていました。
あごだしはどうやって作るの?
今回は珠洲市みさき小学校が毎年行っている「あごだし作り体験」に同行させていただき、みさき小学校5年生11名の皆さんと一緒に体験を行いました。


最初にトビウオのウロコ・頭・内蔵を取ってから水で洗い、串に刺して炭火で焼きます。焼いた後は身を開いて中骨を取り出し、網に並べ、24時間乾燥機にかけることで、あごだしができます。


どうやら子供たちは初めてトビウオに見たり触れたりするようで、「トビウオ怖い!!」「いきなりウロコ取りって・・触るの!?」と、少々ビビりながら、体験を行う工房に入っていきました。
そんな子供たちも実際に作業を行うといろいろ感じたことがあるようです。「トビウオって固いんだね。」「どこに串を指すといいのかな?」「どうやってトビウオを採るの?」
実は串を指す場所にも知恵が隠されています。焼き場で焼くときに串に刺さったトビウオをひっくり返したりするのですが、低い位置に刺しすぎると頭の方が重くなって上手くひっくり返せないそうです。
その他にも、トビウオは300m~400m飛び、6~8月に南国からやってくることや、脂がのりすぎたトビウオはあごだしには不向きなため、脂が少ない6・7月にしかこの工房では作らないことなどを教えてもらいました。
自分が刺したトビウオを焼くために、焼き場に移動した子供たち。炭火で焼くことによって、遠赤外線で焼くことができるため、より美味しいトビウオが出来上がるそうです。いざ、焼き場に立つと「暑い!!」「トビウオの串、重いなぁ。」そして中骨を取り出す作業に入ると「上手く取れないよ。」「ポロポロ身が取れちゃう。」あごだし作りの苦労を子供たちはそれぞれ感じたようです。
あごだしが出来るまでを体験を通して学んだ子供たちを乗せたバスは、次の見学地の能登SDGsラボへと出発しました。


能登SDGsラボ

珠洲市三崎町には、廃校になった小泊小学校の校舎を再利用した金沢大学能登学舎があり、その一室に能登SDGsラボが存在します。校舎内には、SDGs珠洲版や、珠洲の水田の生き物たちについての展示などがあります。
「SDGsってなんのゴールなの?」


能登SDGs内に飾られたSDGsそれぞれのゴールについて書かれたパネルを見た子供たちは、不思議そうにつぶやきました。それを聞いたOUIKの永井事務局長が子供たちにそれぞれのゴールの解説を始めました。SDGsとは国連が2015年に定めた、持続可能な社会を実現するための17のゴール、169のターゲットのことを指します。その中でも特に貧困やジェンダー、海ゴミに関するゴールに子供たちは興味を持ったようでした。
「一日100円で生活してるんだって。何ができるかな?」「お菓子しか買えないよ・・。」
「男のマークと女のマークがあるから、ジェンダーはオスとメスが平等にって意味かな?」
「去年、七ツ島のごみ拾いに参加したけど、たくさんごみがあったから今年も行くの!」
でもSDGsは2030年までのゴールなので、11年後までに達成しなくてはいけないと知ると、「達成できなかったらどうするの?」と子供たちはこぼします。また、「言葉が難しくて分からない。」という子もいました。
実は普段やっていることがSDGsだった!
三井小学校の地区では週に一度程、地域の方と森に入って遊んだり、自然にふれあう活動が行われています。
「俺ら、週に一回森に入っていろいろやってるからSDGs15は普段やってるってこと?」
「知らなかったけど、普段やってることもSDGsなんだね。」
普段の行動がSDGs達成に繫がるということは、能登に豊かな自然や文化が残っているからです。自分たちの生活とSDGsのつながりを学ぶことで、子供たちにSDGsを身近に感じてもらうことができたのではないかと思います。
ごっつぉを食べて、あごだしへの理解を深める
お待ちかねのごっつぉの時間!!


ダッシュで地域の方が運営する食堂「へんざいもん」に駆け込んできた子供たちは、あごだしのそうめんを見て満面の笑顔。「美味しい!!」「ずっと食べたかった!!」と大喜びでした。
やっぱりごっつぉは最高だね!
午前中はあごだしを作り、SDGsを学び、あごだしを食し、地域の皆さんと共に学びを深めました。
午後の活動に関しては、もう一人のインターン生 成嶋さんが次号にまとめています。
子供たちのあごだしを学ぶ旅はまだまだ続きます!
2019年07月18日
2019年7月4日、卯辰山山麓寺院群に位置する心蓮社(金沢市指定名勝)で、庭園クリーニングワークショップが実施されました。フアン(OUIK研究員)が率先して始めたこのプロジェクトに、アイーダ・ママードウァさん(金沢大学国際機構特任准教授)、飯田義彦さん(金沢大学環日本海域環境研究センター連携研究員)が加わり、共催でイベントを開催しました。
今回は、金沢大学に短期留学に来ているロシアのカザン連邦大学の留学生14名が参加しました。
開催当日は、ひがし茶屋街を散策しながら、金沢の文化や歴史などを学び、その後に心蓮社で庭園の清掃とお茶体験を行いました。
庭園クリーニングワークショップでの一日の様子を、ご報告したいと思います。
金沢について知る
まず初めに、街中にある地図を見ながら、
・金沢の人々の生活や文化に深く関わっている浅野川、犀川の二つの川について
・金沢の三寺院群について
・金沢の交通網について
など、金沢の街の地形や文化、歴史などの説明を聞きました。

東山ひがし茶屋街を散策
続いて、重要伝統的建造物群保存地区ひがし茶屋街を訪れ、建築物や、金沢の伝統的な食文化、工芸品などについての説明を聞きながら、散策しました。


宇多須神社では、夏越の大祓(なごしのおおはらえ)という神事が行われており、茅の輪をくぐって参拝しました。参拝後、留学生たちはおみくじを引いて、とても楽しんでいるようでした。

茅の輪くぐり

おみくじを引いて楽しんでいる様子卯辰山山麓寺院群〝心の道″を歩く
ひがし茶屋街から心蓮社へは、〝心の道″を通って行きました。〝心の道″は細い小路になっており、とても静かでした。

心蓮社
心蓮社に着くとまずは、到着を待っていてくれた小島住職が心蓮社の歴史などについて教えてくれました。


心蓮社が現在の地に移ってきたのは1637年頃であり、そのときに庭園が造られたとのことです。庭園は江戸時代初期に作庭された築山池泉式書院庭園で、当時の寺院庭園として貴重なことから、金沢市指定名勝に指定されているそうです。

心蓮社庭園
小島住職は留学生に向けて、「日本滞在中に金沢、そして日本の文化を知り、その背後にある思想なども理解していただければと思います」と優しく語りかけていました。

留学生に語りかける小島住職
さて、ここから庭園の清掃です。
まずは、清掃についての指導を受けてから、作業に入っていきました。

水の音やカエルの鳴き声を聞きながら、全員で落ち葉拾いを行いました。気づくと、無心になって清掃していました。庭園が綺麗になっていくと同時に、自分の心も整っていくような感覚がしました。


庭園を清掃していると、緑が美しい苔や、キノコ、カエル、小さな草花など沢山の生物と出会いました。庭園は見た目が美しいと同時に、多様な生物の生息地としても大きな役割を果たしていると実感しました。


お茶体験
庭園を清掃した後は、お茶体験をしました。
茶道の先生がお点前を披露して下さり、和菓子とお茶をいただきました。留学生の皆さんも正座をして、真剣に先生のお点前を拝見していました。
茶道に興味のある留学生三人は、実際にお抹茶を点てる体験をしました。とても緊張した面持ちで取り組んでいました。


自分たちが清掃した後の美しい庭園を眺めながら、幸せなひと時を過ごしました。
庭クリーニングワークショップの魅力
今回の庭園クリーニングワークショップの後、留学生に感想を伺ったところ、「庭園の清掃をしながら、庭園の造りなどをじっくりと眺めることができ、庭園の持つ素晴らしさを知ることができた」と話してくれました。
このような活動に参加することで、庭園のことが好きになったり、自然と私たちの暮らしとの関わりを考えるきっかけになると、改めて感じました。
また、庭園を眺めながらお茶をいただく時間は、自然と文化との繋がりを感じることができるひと時だと思いました。
OUIKでは今後も引き続き、庭園クリーニングワークショップを行っていく予定ですので、
ご興味のある方はぜひご参加ください。
報告:成嶋 里香(OUIKインターン)
2019年05月16日
昨年、発行された「ごっつぉをつくろう」の絵本を皆さんご存知でしょうか?
世界農業遺産(GIAHS )「能登の里山里海」地域での「ごっつぉ(ご馳走)」作りについてのストーリーです。
この「ごっつぉをつくろう」をベースに企画された環境教育プロジェクト「SDGs三井のごっつぉproject」が始動しました。
新緑がキラキラ光る五月晴れの中、三井小学校の1年生から6年生まで、元気いっぱいの生徒たちが輪島市三井のまるやまに集まりました。
この日のプランはこの3つ
・山菜のワラビ探し
・ワラビの塩漬け(ごっつお)作り
・笹船作り
はじめにプロジェクトの企画運営を行う、まるやま組の萩野さん達に地域の環境について教えてもらいました。

50年前と現在の様子を航空写真で見比べながら、農地や生態系の変化について考えます。
農法や暮らしの近代化に伴い、少なくなっていった生き物や植物、逆に増えてきた生き物や植物・・・
「里山は人間の暮らしと共に変化する」ということを生徒たちも少し理解したようです。
田んぼのあぜ道を歩き、脇の森に入ります。

山菜採りは初めての生徒がほとんどです。
どんな山菜が、どの時期に、どんな場所に生えているのでしょう?
周りには、どんな植物や生き物が生息しているのでしょう?
萩野さんや地域の方々にヒントをもらいながら、目線を低くしてワラビを探します。
「あった!」

よーく目を凝らさないと、誤って踏んでしまいますが、みんなすぐにコツをつかんだのか「こっちにある!」「こんなに採れたー」と大はしゃぎです。
採れたワラビはこの様にに前掛けを縫い合わせて袋にしたものに入れていきます。

2~30分の間でこんなに収穫しました。ものすごい集中力です。
さて、今回はこのワラビを使って「ワラビの塩漬け」を作っていきます。

この山菜を使った郷土料理、最近は作る家庭も減ってきているとか。塩加減が難しく、少ないとヌメヌメになり、食べられないそうです。
自分たちで採った材料で作る初めての「ごっつぉ」、地域の方々に教えてもらいながら心を込めて料理します。
ワラビは根元の硬いところを切って、藁紐で結び、桶に並べます。
塩もたくさん入れました。出来上がるのが楽しみですね!

六年生の皆さんが塩漬けを作っている間、他の皆さんは笹舟づくりをしました。まずは鎌を使って笹を刈るところから。
先生のレクチャーをしっかり聞いて、いざ笹を刈り取ります。
この笹薮、昔はトモエソウという小さな黄色い花が沢山咲いていたそうです。
今では絶滅危惧種となったこの植物、笹を刈ることによって日当たりが変わり、もしかしたら今年は見かけられるかも?そんな期待を胸に笹を刈ります。


最後にみんなで作った笹船で、「よーいどん!」
1〜2時間の短い間でしたがこのワークショップに参加させていただき、子どもたちの成長が垣間見えたように思います。
「どんな場所にワラビがあるの?」「鎌をどう使えば笹を上手く刈れるの?」「どんな笹舟は沈みにくいの?」生徒たちは自分の頭で考え、失敗しながらも友達と助け合い、「学び」を楽しんでいる様子でした。
このような経験を重ねることが自分たちの地域への誇り、そして里山の自然や恵に感謝する心にもつながるのではないでしょうか。
国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」を利用した持続可能な未来へ向けての教育活動をサポートしています。
一言で「能登の里山里海」と言っても地域によって異なる様々な伝統文化がありますが、三井小学校のような活動が能登の他の地域でも行われ、里海、里山間で交流が生まれるようなプラットフォーム作りを進めていきたいと思います。

さて、次回はどんな「ごっつぉ」を作るのでしょうか?
「SDGs三井のごっつぉproject」は通年のプログラムとして続きます。
企画・実行:萩野アトリエ/まるやま組 萩のゆき、萩野紀一郎(富山大学 芸術文化学部 准教授)
協力:国連大学OUIK
執筆:国連大学OUIK
2019年04月15日
都市の生物文化多様性に関する本を出版するためのワークショップが南アフリカで2019/4/1-4/7に開催され、OUIK からはリサーチアソシエイトのフアン パストール・イヴァールスが参加しました。世界中から 13 人の研究者が集まったこのワークショップは南アフリカのロードス大学の教授であるミシェル・コック氏とチャーリー・シャクルトン氏が主催を務めました。
この本の出版にあたり、フアン研究員は日本庭園の姿、そのオントロジー、美学、生態学を金沢の庭園に焦点を当てながら評価しています。さらに日本庭園を通じて人と自然の関係を再構築する方法やそのモデルの提示に力を入れてきました。ワークショップでは生物文化多様性の概念を広めるためのグローバルなレベルでのコミュニケーションの重要性について論議されると共にそれらを実装するための学術機関を設立することの必要性についても語られました。この本は来年の初め頃に出版される予定です。
2019年04月05日
2019/3/31
3月31日、金沢市指定文化財の一つでもある千田家庭園(非公開)にて清掃ワークショップが行われました。
庭園の維持は手のかかる作業です。普段からの木々の手入れ、草むしりなどに加え、特にこの千田家庭園のように大きな池があり、用水から水を引いているタイプの庭園では、定期的な池の清掃も必要になってきます。
これがとても大変な力仕事なのですが、前回の清掃ワークショップから半年が経ち、また池の底に泥が溜まってきました。
今回のワークショップでは、地域住民、学生、自治体職員、外国人観光客の方々、約15名の方々に参加頂き、水を抜いた状態の池の中に入り、底に溜まった泥を除去する作業を行いました。

泥をスコップですくい、袋に入れて運び出す作業。
石や藻も絡み付いてきます。この藻は池に泥が溜まりだすと急に繁殖し、泥に根を張るそうです。

今回はこの藻も除去しました。

作業を続けること1時間半、池の中から大きな亀がでてきました。
なんとこの亀、少なくとも50年前からこの庭園に住み着いている亀だそうです。

ここを住処にする動植物からも、この庭園の歴史の深さがうかがえます。
清掃が終わった後は家の中でお茶を頂き、所有者の千田さんと石野さんからこの庭園の歴史や造りについて学びました。

この庭園は千田登文旧加賀藩士が1984年(明治27年)に作庭した池泉回遊式の庭園で、いたるところに今の時代では中々見られない職人技が施されているそうです。
100年以上たっても崩れてこない池の淵の石積み技術、戸室石で作られた橋に刻まれる加賀藩とのゆかりを示す刻印、徽軫(ことじ)灯篭に似た雪見灯篭などなど、沢山ある見所についても説明していただきました。

参加者も普段なかなか聞けない話に興味深く聞き入っている様子でした。
特にアメリカからの観光客の方は地域との連携や市の制度など、文化財の保護や維持のシステムについて質問されていました。

このような清掃ボランティア活動は元々、金沢市の景観政策課の方々を中心に行われていたようです。2017年からOUIKのフアン研究員も活動に加わり、このワークショップを「エコツーリズム」へ発展させるべく、清掃後に庭園の歴史や管理について学ぶワークショップやお茶会を組み込み、体験型プログラムとしての定着を進めています。また、重労働が分散でき、所有者にもメリットがある新しい庭園の管理システムとして更なる活用が期待されています。
2019年03月30日
OUIKは、金沢市、金沢青年会議所ともにSDGs実践にかかる勉強会を重ね、3月23日(土)に3者で金沢市のSDGs推進に関する3者共同宣言を行いました。宣言式では、山野之義金沢市長がIMAGINE KANAZAWAと銘打った金沢市SDGsの重点分野を説明し、続いて中泉金沢青年会議所理事長がJCI金沢会議の成果をはじめとする同所の取り組みに触れました。
渡辺OUIK所長からは、これまでOUIKが提唱してきた「生物文化多様性」や、第8回ダイアローグでも取り上げた「グリーンインフラ」の考え方が、環境、経済、社会を統合するSDGsの考え方と非常に近いものであると紹介しました。
この宣言式に続いたSDGsいしかわ・かなざわダイアローグ総括シンポジウムでは、パネルセッションにおいて嵩桒 都市政策局企画調整課長から金沢市のこれからのSDGsの進め方について説明がありました。総括シンポジウムでも参加者の方から積極的なご意見を沢山いただきました。これから3者、そして金沢市民全員で、2030年の金沢を考えていくIMAGINE KANAZAWAを進めていければと考えます。
2018年09月29日
今年2018年に「金沢市における美しい景観のまちづくりに関する条例」の施行50周年を迎えた金沢市で、都市景観をグリーンインフラから考える国際シンポジウムを、金沢大学地域政策研究センター主催、金沢市、国連大学サステイナビティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット、一般財団法人エコロジカル・デモクラシー財団の共催で開催しました。
金沢らしい景観から、グリーンインフラを読み解く
グリーンインフラとは、多機能性という視点から自然を再評価することによって、持続可能な社会形成を目指した土地利用計画のこと。
「金沢市における美しい景観のまちづくりに関する条例」が施行されたのは、高度経済成長期の真っ只中でした。開発が最優先だった当時、伝統環境保存という景観政策を始めたことは、とても先進的なことでした。
この条例によって、金沢らしい町並み・景観のなかに埋め込まれている斜面緑地、用水、川筋景観、寺社景観、庭園などが保全・再生されてきたのです。
「金沢の都市景観をグリーンインフラとしてとらえ直すことができるのではないか」
これは今回のシンポジウムの目標の一つでもあります。
このシンポジウムに先立って、前日にはエクスカーションとして、金沢市内の用水や庭園、斜面緑地などを、登壇者の皆さんが見て回り、金沢の都市景観をさまざまな角度から眺め、感じてもらうことができました。
まずは、世界の最先端事例から学ぶ
シンポジウムは3部で構成し、第一部は「グリーンインフラを学ぶ」と題し、次の3氏から発表がありました。
西田貴明氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
多機能性ということから自然を考えて、人口減少時代に持続可能な社会形成を目指した土地の利用の方法や動向など、国内外のさまざまなグリーンインフラの事例を紹介。
福岡孝則氏(東京農業大学)
住みやすい都市をつくるため、今ある用水とか駐車場とかを使うという視点も大切であることや、グリーンインフラとは地域ごとに定義されるものであるべきと提案。
宋泳根氏(ソウル大学)
ソウル市の都市のグリーンインフラや、自身がかかわってきた取り組みを紹介。ソウルでは大がかりなプロジェクトもスピード感を持って取り組み、成果を出していると説明。
金沢らしいグリーンインフラの可能性を探る
第二部は「金沢の都市景観をグリーンインフラから考える」ということで、おもに金沢のグリーンインフラに関する研究や取り組みを4氏が発表しました。
金沢市の防災・環境・経済からみるグリーンインフラに関する報告。グリーンインフラによって犯罪の抑止や教育にも関係してくるなど、意外な効果も紹介。
水、食、工芸といった金沢の暮らしは、自然資本をよりどころにしていること、そして、用水はインフラとしても機能し、社会構造と歴史が密接にかかわっていることなどを紹介。
庭園も空き地も所有者だけでは維持管理できなくなりつつあり、持続可能な保全活動の必要性と協働的な管理について紹介。SDGsのゴール11、ゴール15、ゴール17と連動して実現していくことを提案。
日本庭園の歴史研究の視点から、日本庭園を起点に置き、周辺部とのグリーンインフラ的なつながりを探求。庭園は都市と密接な関係があり、庭園を活用する考えの新鮮さに言及。
自然の多機能性を軸にした持続可能性の実現、特に都市景観に注目してグリーンインフラとして活用するためには、取り組みを進めながら評価と見直しをする順応的ガバナンスが必要であるという話。
グリーンインフラの最先端都市を目指す
第三部は「ラウンドテーブル」。コメンテーターに岡野隆宏氏(環境省)、舟久保敏氏(国土交通省)、土肥真人氏(東京工業大学)、佐々木雅幸氏(同志社大学)を迎えて、「都市景観をグリーンインフラとして活用する」について、椅子を放射状に並べ直して、参加者が顔を見合わせながら発言していきました。

グレーインフラとグリーンインフラの比較、自然保護や自然保全をグリーンインフラという言葉に置き換えるメリット、グリーンインフラへの理解を深めてもらうためには、その多機能な効果の可視化をしないといけないなど、盛りだくさんな意見が出ました。
また、金沢のグリーンインフラについては、金沢は400年前からグリーンインフラをやってきた先進的な都市であることや、その一方で、近年、中心部では空き家も増え、グリーンインフラ的計画を進めていく必要性などを議論し、それは歴史都市・金沢でこそやるべきだという意見が出ました。そして、金沢はグリーンインフラの最先端都市になれるのではないかという期待の声も上がりました。
SDGsダイアローグシリーズとしては、さまざまなアイデアを共有しながら、世界共通で持続可能な町づくりをしていくための、都市計画論、グリーンインフラ論をここ金沢から発信していきたいと考え、このシンポジウムがその最初の一歩となった手ごたえを感じています。
グリーンインフラとは、社会のさまざまな課題と結び付けて自然の問題に取り組んでいくものでもあります。そのことが、ひいては自然のためにも新しい展開へとつながります。
そしてグリーンインフラを推進していくためには、皆さんが持ち味を生かし、ひとり一人が主役となれる、そんなパートナーシップをどう作っていくかということが重要です。
OUIKもそのようなパートナーシップづくりのお手伝いをできればと思っており、これからも金沢ならではのグリーンインフラを皆さんと一緒に掘り下げていければと願っています。
2019年03月04日
中国、韓国、日本の世界農業遺産(GIAHS)の研究者や認定地の自治体、実践者が集まり実践について学び合う東アジア農業遺産学会は今年で6回目を迎えます。今年は5月20日から22日まで、伝統的お茶栽培で認定を受けた韓国南部のハドン郡で開催されます。開催を前に第11回作業部会がソウルで開かれ中国、韓国、日本の専門家、ハドン郡関係者が集い今学会の目指す成果、分科会の提案、フィールド視察などを議論しました。
また前日には韓国側の主催により、「農林水産業遺産の保全と活用」というテーマで国際シンポジウムが開催され、国連大学からは永田明シニアプログラムコーディネーターが日本のGIAHS の現状を発表し、永井三岐子OUIK事務局長がパネルデスカッションで能登GIAHSの環境教育の事例などを紹介しました。
2018年12月26日
2018年4月、OUIKはストックホルムレジリエンスセンター、東京大学IR3Sと共同で生物文化多様性ウォーキングワークショップを開催しました。
アジア、南アフリカ、南米、スウェーデン、ハワイなど様々な場所で自然と人間のつながりを研究する参加者が、都市部と農村部を取り巻く様々な外的変化に対し、生物文化多様性資源の役割、現状、保全を、五感を通じて体験しながら議論しました。
「Reinvigorating creative solutions to save people and planet: A walking workshop through biocultural landscapes in western Japan」by Viveca Mellegård, Stockholm Resilience Center