昨年、発行された「ごっつぉをつくろう」の絵本を皆さんご存知でしょうか?
世界農業遺産(GIAHS )「能登の里山里海」地域での「ごっつぉ(ご馳走)」作りについてのストーリーです。
この「ごっつぉをつくろう」をベースに企画された環境教育プロジェクト「SDGs三井のごっつぉproject」が始動しました。
新緑がキラキラ光る五月晴れの中、三井小学校の1年生から6年生まで、元気いっぱいの生徒たちが輪島市三井のまるやまに集まりました。
この日のプランはこの3つ
・山菜のワラビ探し
・ワラビの塩漬け(ごっつお)作り
・笹船作り
はじめにプロジェクトの企画運営を行う、まるやま組の萩野さん達に地域の環境について教えてもらいました。
50年前と現在の様子を航空写真で見比べながら、農地や生態系の変化について考えます。
農法や暮らしの近代化に伴い、少なくなっていった生き物や植物、逆に増えてきた生き物や植物・・・
「里山は人間の暮らしと共に変化する」ということを生徒たちも少し理解したようです。
田んぼのあぜ道を歩き、脇の森に入ります。
山菜採りは初めての生徒がほとんどです。
どんな山菜が、どの時期に、どんな場所に生えているのでしょう?
周りには、どんな植物や生き物が生息しているのでしょう?
萩野さんや地域の方々にヒントをもらいながら、目線を低くしてワラビを探します。
「あった!」
よーく目を凝らさないと、誤って踏んでしまいますが、みんなすぐにコツをつかんだのか「こっちにある!」「こんなに採れたー」と大はしゃぎです。
採れたワラビはこの様にに前掛けを縫い合わせて袋にしたものに入れていきます。
2~30分の間でこんなに収穫しました。ものすごい集中力です。
さて、今回はこのワラビを使って「ワラビの塩漬け」を作っていきます。
この山菜を使った郷土料理、最近は作る家庭も減ってきているとか。塩加減が難しく、少ないとヌメヌメになり、食べられないそうです。
自分たちで採った材料で作る初めての「ごっつぉ」、地域の方々に教えてもらいながら心を込めて料理します。
ワラビは根元の硬いところを切って、藁紐で結び、桶に並べます。
塩もたくさん入れました。出来上がるのが楽しみですね!
六年生の皆さんが塩漬けを作っている間、他の皆さんは笹舟づくりをしました。まずは鎌を使って笹を刈るところから。
先生のレクチャーをしっかり聞いて、いざ笹を刈り取ります。
この笹薮、昔はトモエソウという小さな黄色い花が沢山咲いていたそうです。
今では絶滅危惧種となったこの植物、笹を刈ることによって日当たりが変わり、もしかしたら今年は見かけられるかも?そんな期待を胸に笹を刈ります。
最後にみんなで作った笹船で、「よーいどん!」
1〜2時間の短い間でしたがこのワークショップに参加させていただき、子どもたちの成長が垣間見えたように思います。
「どんな場所にワラビがあるの?」「鎌をどう使えば笹を上手く刈れるの?」「どんな笹舟は沈みにくいの?」生徒たちは自分の頭で考え、失敗しながらも友達と助け合い、「学び」を楽しんでいる様子でした。
このような経験を重ねることが自分たちの地域への誇り、そして里山の自然や恵に感謝する心にもつながるのではないでしょうか。
国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」を利用した持続可能な未来へ向けての教育活動をサポートしています。
一言で「能登の里山里海」と言っても地域によって異なる様々な伝統文化がありますが、三井小学校のような活動が能登の他の地域でも行われ、里海、里山間で交流が生まれるようなプラットフォーム作りを進めていきたいと思います。
さて、次回はどんな「ごっつぉ」を作るのでしょうか?
「SDGs三井のごっつぉproject」は通年のプログラムとして続きます。
企画・実行:萩野アトリエ/まるやま組 萩のゆき、萩野紀一郎(富山大学 芸術文化学部 准教授)
協力:国連大学OUIK
執筆:国連大学OUIK