※前半の記事はコチラから
遠足の後半のプランはこの2つです
・あごだし作り体験で魚を焼くときに使用した、珪藻土(けいそうど)七輪コンロのできる様子を見学
・あごだし作り体験で魚をさばいたときに使用した、包丁のできる様子を見学
珪藻土七輪コンロができあがるまで
珪藻土七輪コンロのできる様子を見学しに、能登燃焼器工業株式会社を訪れました。
職人の舟場さんから、「珪藻土って何だと思う?!」と質問を受けると、「土です!」と子供たちが元気よく答えました。
「珪藻土とは、珪藻という水の中にいる小さい植物性プランクトンが死に、その殻が積み重なって化石化した土のことだよ。この地域の山の中を切り出すと珪藻土が出てくるということは、大昔この地域は海の底だったということが分かるよ。」と説明する舟場さん。子供たちは、「へ~」と少し驚いた様子でした。
「実際に、そこにある珪藻土の塊を触っていいよ」と言われると、「なんだか粘土みたい!」「柔らかい~」子供たちは初めて触る珪藻土の触感を楽しんでいました。
舟場さん曰く、この辺りでは珪藻土を使って七輪コンロを作り、輪島の地域では輪島塗を作るときに珪藻土を使用しているとのことです。地域によって、珪藻土の使われ方は様々であると分かりました。
続いて、実際に珪藻土を切り出してくる山の穴の入り口まで連れて行ってもらいました。
穴の入り口の前に来ると、「涼しい!!」「天然クーラーだ!!」「音がすごく響くよ!」(穴に向かって、あーーーっ!!と叫んでみる)子供たちは穴の中の様子に興味深々でした。穴の中は、夏は涼しく、冬は暖かいという特徴があるそうです。
職人は、ノミを持って穴の中に入り、珪藻土を切り出します。珠洲では昔から、珪藻土七輪コンロを作ってきた歴史があるので、山の中を探すと沢山の穴が見つかるとのことです。
先ほどの作業場へ戻ってくると、舟場さんが珪藻土の中から出てきたサメの化石を見せてくれました。「えっ!化石が出るの?!」「何が出るの!?」「たくさんでるの?!」「ここの方が近いし、福井行かないでここで発掘しようかな!」子供たちはとても嬉しそうに声をあげていました。
「これまで切り出してきた珪藻土の中には、気づかずに見過ごした化石もあると思う」と舟場さんが言うと、「え~もったいない!」子供たちは、化石にとても興味があるようでした。
続いて、山の中から切り出してきた珪藻土の塊を七輪の形に形成していく加工場へ連れて行ってもらいました。加工場へ向かう途中で、焼き上げた後の珪藻土を目にすることができました。「実際に持ってみてもいいよ」と言われると、「え!!こんなに軽いの!?」「なんだか色が白っぽい!」子供たちは驚いた様子でした。(珪藻土は焼き上げると水分が抜け、塊だったころの約半分の重さになるそうです。)
加工場では、職人さんたちが道具を使って、珪藻土の塊を七輪の形に加工していました。子供たちも実際に、珪藻土の塊を削る作業を体験しました。「なにか、化石出てこないかなぁ(わくわく)」「チョコレートみたい!」「俺もやりたい!」子供たちはとても盛り上がっていました。
-削るときのポイントー
・少しずつ削ること
・薄く薄く削ること
・力を入れすぎると削るのが難しいから、力を入れすぎずに削ること
舟場さんからアドバイスを受けながら、子供たちは夢中になって珪藻土を削っていました。
加工場で珪藻土の塊を七輪の形に加工した後は、焼きの作業があります。二晩かけて珪藻土で出来た専用の窯で焼き上げるそうです。燃料は薪を使用し、窯の中の温度は800℃まで上がるそうです。
焼きの作業後は、仕上げの作業に入り、最終的に珪藻土の七輪コンロが出来上がるとのことです。珠洲の珪藻土は形成性に富み、多孔質(表面にちいさい穴があいている性質)で、優れた断熱性(熱効率)を有することなどから、長年人々の火のある暮らしを支えてきたとのことです。
包丁ができあがるまで
続いて、午前中のあごだし作り体験で魚をさばくときに使用した包丁のできる様子を見学しに、ふくべ鍛冶工場を訪れました。
移動の車中で、「ふくべ鍛冶工場には沢山の刃物が置いてあるので、皆さん気を付けて作業場を歩くようにしてください」と言われていた子供たちは、少し慎重な足取りで工場の中へと進みました。
子供たちが到着すると、ふくべ鍛冶4代目の千場さんが待っていてくださりました。
まず初めに千場さんから、「鍛冶屋って何だと思う?!」と質問を受けると、「刀をつくる!」と子供たちが答えました。
千場さんから、鍛冶屋は三種類に分類することができると教えてもらいました。
- 刀鍛冶
- 専門鍛冶
- 野鍛冶-包丁や農具、漁具などを扱う鍛冶屋
ふくべ鍛冶は③野鍛冶に属し、能登の農業、漁業と共に歩んできた鍛冶屋であるとのことです。農法に適した道具を作っていくのが野鍛冶であり、用途に合わせてひとつひとつ丁寧に製造、修理を行っているそうです。
今回は、イカ割き包丁(イカを割くための細い包丁)が出来上がるまでを千場さんに実演して頂きました。窯の中は1200℃まで温度が上がり、その中に材料(鋼を鉄でサンドした包丁の原型)を入れるところから実演がスタートしました。
実演では、
窯の中で熱した材料を取り出す→機械で叩いて形を整える→ハンマーで叩いて形を整える→また窯の中に戻す
という作業を繰り返し行っていきました。
子供たちは、1200℃の熱い窯の側で汗をかきながら一生懸命に作業している千場さんの姿を、一瞬も目を離さずに見ていました。
千場さんが熱い窯の中から熱した刃物を取り出し、子供たちに見せると、「こんなに距離があるのに暑い・・。(干場さんの方が刃に近いから)」「すごーい」子供たちは刃物の熱さや、鋭さに驚いていました。
実演をしながら千場さんが、「ハンマーで叩く際に出てくる、カサブタのようなものは、鉄の中の不純物(サビの一種)が出てきているんだよ。」と教えてくれました。繰り返し叩くことで不純物を出し、純度の高い丈夫な刃物が出来上がるそうです。
また、ふくべ鍛冶で使用する窯の燃料は松炭を使用しているとのことです。松炭は繊細な温度調整ができ、火が付きやすく、刃が溶けにくく、刃物作りに適しているそうです。しかし、現在では手に入りづらく、とても貴重であるとのことです。
実演がすべて終わると、最初は長方形だった材料が、先の尖った刃物の形へと変形していました。
子供たちからは、「おぉ~」「包丁みたい」と声があがっていました。
千場さん曰く、通常は一時間ほど作業を繰り返し、その後に柄の部分と刃を合体させて包丁が完成するそうです。柄の部分と刃が合体したときに、丁度よいバランスが取れるようにすることが大切であるとのことでした。
-子供たちの感想-
・何回も同じ作業を繰り返していてすごいと思った
・包丁の作り方が分かった
・こんなに時間をかけて、包丁ができあがると思わなかった
・あちらにある機械はなんですか?→包丁を削る道具だよ(千場さん)
最後に、ふくべ鍛冶のお店を訪問し、実際に包丁が売られているところを見せていただきました。
お店には、様々な用途で使用できる包丁や、農業、漁業で使用する道具などが沢山販売されていました。千場さんが道具の使用方法などを教えてくださり、子供たちは真剣に耳を傾けていました。
遠足の後半(珪藻土七輪コンロ作りの見学、包丁作りの見学)を通して子供たちは、美味しい「ごっつぉ」ができあがるまでには、新鮮な食材だけでなく、様々な道具が使用されていることを改めて学べたのではないでしょうか。伝統的な技術で道具作りをしている人たちの、ひとつひとつの丁寧な手作業や、情熱によって素晴らしい道具が完成するということも、実際に道具を作る現場を見学させていただき、理解できたのではないかと思います。
私も三井小学校の皆さんの遠足に参加させていただき、とても勉強になりました。
ありがとうございました。
報告:OUIKインターン 成嶋 里香
国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」を利用した持続可能な未来へ向けての教育活動をサポートしています。
一言で「能登の里山里海」と言っても地域によって異なる様々な伝統文化がありますが、三井小学校のような活動が能登の他の地域でも行われ、里海、里山間で交流が生まれるようなプラットフォーム作りを進めていきたいと思います。
さて、次回はどんな「ごっつぉ」を作るのでしょうか?
「SDGs三井のごっつぉproject」は通年のプログラムとして続きます。
企画・実行:萩野アトリエ/まるやま組 萩のゆき、萩野紀一郎(富山大学 芸術文化学部 准教授)
協力:国連大学OUIK