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「千田家庭園」清掃SDGsツアー ―市民も観光客も庭師になろう!―

 3月28日日曜日に、長町武家屋敷エリアに位置する金沢市指定名勝千田家庭園(非公開庭園)にて、庭園清掃SDGsツアーを開催しました。このツアーは、これまでJuan Pastor Ivars 研究員が金沢市内の自然と文化を体感するために開催してきた庭園清掃ワークショップを、観光客も参加するツアーモデルとして展開出来るよう、令和二年度金沢市SDGsツーリズム推進事業を使って実施したものです。

 日本庭園でのこのような清掃ボランティア活動は、これまでは金沢市景観政策課や金沢美術工芸大学など、自治体職員、研究者や学生などが中心となって実施されてきました。Juan研究員も2017年より活動に加わり、庭園清掃に、庭園の歴史や維持管理方法について学ぶワークショップやお茶会を組み込んで体験型プログラムに仕立て、プログラムの定着と普及啓発を図ってきました。

 日本庭園を含む都市部の緑は、地球温暖化対策、ヒートアイランド対策にもなり、都市の固有の生態系や生物多様性の保全につながります。また、金沢市においては、工芸やお茶などの文化的営みや文化的景観の継承にも貢献してきました。更には、自然との関わりは心や体の健康への影響も指摘されています。しかし、人口構造の変化に伴って、維持管理のための担い手不足や維持管理の不届きが起こり、金沢市の持つ都市の自然や文化的景観、そしてそれに付随する文化的活動の次世代への継承が難しくなりつつあります。

 このような課題の解決策として、Juan研究員は清掃活動を「エコツーリズム」として幅広い人に知ってもらうための仕組みづくりを探索してきました。今回は国際交流事業に強みのある株式会社You-I Japanと協力しワークショップを実施することで、インバウンド観光客と市民が協力して金沢のまちの緑と文化を共に継承していくツアーモデルの可能性を探りました。先日、卯辰山山麓寺院群と永久寺にて実施したツアーに続くSDGsツアーの開催になります。

 当日はあいにくの小雨でしたが、朝9時に千田家庭園前にて待ち合わせ。金沢工業大学の日本人学生や金沢大学のロシア人学生など、総勢8名が参加しました。最初、庭園の修復にも関わっている金沢美術工芸大学の鍔先生から庭園設計についてお話を伺います。千田家庭園は脇に流れる大野庄用水から取水し、庭園の中心に位置する池を通って用水に戻される池泉回遊式庭園。座敷から池の向こうに見える石と木々の配置の一部は、長寿の象徴である鶴と亀を模しているそう。日本庭園の芸術性の奥深さを学びます。その後は、2人1組になって池の底に溜まった泥を取り除く作業を行います。参加者の皆さんは黙々と掃除に没頭します。水の流れに沿って、泥がたくさん溜まっているところとそうではないところもあるようです。

 掃除の後は、休憩を挟み、所有者の千田さんより庭園の歴史についてお話を聞きます。千田家庭園は、明治時代中頃、西南戦争において功績を挙げた千田登文が作庭しました。往年の写真を通して、時代とともに庭園のデザインも少し変化していることが伺い知れます。今ではツツジが配されている土縁周囲のデザインにも違いが見られ、また、滝組が配されている石組周囲には水車も設置されていたそうです。千田さんは、このように、庭園の生態系が創り出す景観的美しさと歴史文化的価値を併せ持つ千田家庭園を千田登文の歴史とともに公開することを考えているそうです。

 この日はツアー開催前に、千田家庭園で庭園の生物種を確認する生物調査も実施されました。エビやヤゴ、ドンゴやアユまで、池の中からは多くの生物種が見つかり、参加者で観察することが出来ました。庭園の自然と文化の連なりを学ぶ貴重な機会となりました。

 最後に、参加者とともに意見交換会を行いました。近年、観光客も趣向が変わり、より地域に入り込んで現地ならではの体験や地域そのものが垣間見れる特別な経験を望むようになっているよう。庭園ワークショップもツアーコンテンツとしての可能性は秘めていますが、文化的背景が異なる他国の方々へは庭園技術の違いや地域の歴史文化を工夫して説明していくことが必要。一方で、日本庭園造園の技術的奥深さへの気づきのコメントもいただきました。

 

 金沢市に蓄積された特有のまちの緑と文化を観光客と地域住民が協力しながら共同管理し、そして、その自然文化的価値を次世代に継承していくことに貢献出来るツアーモデルのあり方について、今後も考えて行きます。

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