2019年5月に始まった「SDGs三井のごっつぉproject」では輪島市三井を中心に能登の「ごっつぉ(ごちそう)」を巡るフィールド学習を行ってきました。今回、11月26日に行われた第7回目はまとめの回として世界の食に関する問題を学んだり、いろいろな国の食を味わったり、春にみんなで作ったワラビの塩漬けの塩抜き作業をする回になりました。
はじめに「今、世界が面している食に関する問題」についてSDGsの視点で国連大学OUIKの富田から紹介がありました。「17個あるSDGsのゴールのうち、「食」に関係してくるゴールはどれかな?」という問いかけに「2番(飢餓をゼロに)食べ物のマークあるけど飢餓ってなんだろう?」「14(海の豊かさを守ろう)とか15(陸の豊かさを守ろう)も関係するね。魚も食べるし」「6(安全な水とトイレを世界中に)もじゃない?水飲むし、水ないと畑もできんし」「農業とかは16(気候変動に具体的な対策を)にも関係するんじゃない?」と、とてもたくさんの意見が出ました。生徒たちはSDGsを通してグローバルなスケールで物事を考えたり、ゴールと問題を関連付けることが出来るようになり、SDGsの理解をさらに深めているようでした。
次に日本に住んでいるとなかなか聞くことがない「飢餓問題」について国連WFPのハンガーマップを見ながら考えてみました。「アフリカが深刻」「日本は全然大丈夫だね」と生徒たちは自分たちのテーブルに置かれた地球儀を使いながら場所を確認していました。現在地球上では8億2,100万人、約9人に1人が「栄養不足」であるという調査結果が出ています。SDGsのゴール2でもある「飢餓をなくそう」は途上国特有の問題と捉えられがちです。しかし気候変動や先進国の経済活動が飢餓問題の要因となっていることもあり、先進国に住む私たちちも真剣に向き合うべき問題です。
更に関連した話題として食品ロスの問題や未来の農業にも目を向けてみました。テクノロジーが食品の流通や農業そのものを効率化する一方、2017年に国連は2019年~2028年を国連「家族農業の10年」と定め、食料生産おいて主要な農業形態である家族農園の更なる活性化を図っています。話を聞きながら「残さず食べてるよ!」「家でも畑しとるよ」と話す生徒たちもちらほら。皆さんなりに食品にまつわる問題に向き合っているようです。
次に世界の食卓を覗いてみました。「地球の食卓―世界24か国の家族のごはん」(著者=ピーター・メンツェル+フェイス・ダルージオ)に掲載されている、さまざまな国や地域の「ひと家族における1週間分の食料」の写真を見ながら、気づいたことを発表しました。「パンがたくさんある、パンが主食かな?」「野菜が多いけど肉が全然ない」「家族が多い!来ている服も全然日本と違う」など、たくさんの発見がありました。国や地域によって食料の種類や量、家族の雰囲気が様々で、見たことのない食材も沢山あったようです。私たちの食卓に乗っている食材も世界の他の地域に住む人にとっては不思議な食材なのかもしれません。
次に萩野さんより5月にみんなで作った「ワラビの塩漬け」の塩抜きについて教えてもらいました。山菜を茹でたり、塩抜きをするときは銅鍋を使うのが昔から伝わる知恵だそうですが、どうしてでしょう?萩野さんによると銅鍋を使うと銅イオンが葉緑素(クロロフィル)とくっつき、食材の変色を防げるそうです。不思議ですね!
しばらく使っていないと銅鍋には緑青(錆)がつきます。この授業ではは同じ銅で出来た10円玉を使って緑青取りを行ってみました。準備したのは酢と塩。これらを混ぜて磨くだけで綺麗な輝きを取り戻します。つやつやになった10円玉、日常生活にもいろいろな化学が隠れていて面白いですね。
綺麗に塩抜きできたこのワラビの塩漬けは、12月5日の「あえのこと」にて神様にお供えする予定です。
最後は「能登空港発 世界一周ごっつぉツアー」ということで鈴木さんのブルキナファソ料理「トー」、OUIKインターンのフェリックスさんのスイスの「ロシュティ(Rösti)」OUIK富田のイギリス/オーストラリア料理「ベジマイト」を食べるツアーを行いました。まずはブルキナファソの「トー」。これはヒエやトウモロコシなどの粉をお湯で練ったお餅のようなものに、ソースをかけて食べるもので、今回はトマトを使ったシチューのようなソースをかけました。現地ではとてもよく食べられている料理だそうです。次はスイスのジャガイモ料理、「ロシュティ」です。細く切ったジャガイモをプライパンで焼いたもので、ソーセージなどの付け合わせとして食べることが多いようです。見た目はお好み焼きに少し似ていますが表面がカリカリしてとてもおいしいです。今回はスイスの代表的なチーズの1つ、「グリュイエールチーズ」も試食しました。最後はイギリスやオーストラリアで親しまれている「ベジマイト」をトーストに塗ったものです。チョコレートみたいに見えますがしょっぱく、発酵した独特の臭いがあります。現地ではよく朝食などで食べられているそうです。
はじめて食べる料理に生徒たちも大興奮です。ベジマイトは想像と全く違う味がしたらしく、かなりてこずっていたようでしたが、トーとロシュティに至ってはみんなおいしそうに食べていました。住んでいる地域や環境、文化が違うとそこで食べられている「ごっつぉ(ごちそう)」も多種多様です。最後にまるやま組の萩野さんは「今やいろいろな地域の料理がどこにいても食べられる時代となりましたが、自分たちが育った地域の「ごっつぉ」の味を忘れないでほしい」と話しました。
報告:国連大学OUIK
国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」を利用した持続可能な未来へ向けての教育活動をサポートしています。一言で「能登の里山里海」と言っても地域によって異なる様々な伝統文化がありますが、三井小学校のような活動が能登の他の地域でも行われ、里海、里山間で交流が生まれるようなプラットフォーム作りを進めていきたいと思います。さて、次回はどんな「ごっつぉ」を作るのでしょうか?「SDGs三井のごっつぉproject」は通年のプログラムとして続きます。
企画・実行:萩野アトリエ/まるやま組 萩のゆき、萩野紀一郎(富山大学 芸術文化学部 准教授)協力:国連大学OUIK