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【開催報告】SDGsカフェ#6 「文化のまちづくり」

今回は、金沢らしいSDGsへの取り組み方を考える上で、欠かすことができない「文化のまちづくり」をテーマに、認定NPO法人趣都金澤の理事長・浦淳さんを迎えて、金沢らしい文化を使ったまちづくりについてお話いただきました。後半は国連大学OUIKの永井事務局長との対談によって、金沢らしい文化について意見を交わし、さらに会場も交えて、文化にとどまらず、SDGsの進むべき方向性について深い議論がなされました。

文化でまちづくりをしながら、金沢をIMAGINE

まずは事務局長の永井からSDGsとIMAGINE KANAZAWAの取り組みやSDGsミーティングやSDGsカフェの説明がありました。

趣都金澤は、令和元年の「金沢市文化活動賞」を受賞。折しもこの日はその授賞式があったそうで、授賞式の興奮冷めやらぬ浦さんに、さっそく金沢をIMAGINEしていただきました。

講演の冒頭、浦さん自身が最近診断されたという痛風とSDGsとの関係をユーモアたっぷりに紹介し、会場の笑いを誘い、和やかなムードに。

石川県が輩出した二人の偉人、鈴木大拙と西田幾多郎が残した言葉の中で、浦さんが好きなものを紹介しました。
鈴木大拙の自由に関する表現から、西洋では「束縛からの自由」だが、東洋的な自由は「自らなしていく」とする、自由の考え方の東西の違いには、興味をひかれた人も多かったのではないでしょうか。
「鈴木大拙館」(金沢市/設計:谷口吉生)、「西田幾多郎記念哲学館」(かほく市/設計:安藤忠雄)とも、「素晴らしい建築なのでぜひ行って欲しい」と、建築が専門の浦さんらしいアピールも。

金沢のまちづくりに新しい風を吹き込む工芸建築

趣都金澤とは、市民参画型によって文化でまちをつくっていこうという活動を行っている。2007年の設立当時は、行政や各種団体がまちづくりを行い、市民参画型というのは新しかったそうです。

*認定NPO法人趣都金澤についてはこちら

文化でまちをつくっていこうとした場合、その評価は計量的にはできず、文化についてある程度理解がないと、市民がそれを評価もできず、まちづくりの方向性について合意形成ができないのではないかと感じていました。

浦さんは会員とともにまちづくり学びながら、そのような感覚を養い、地域でまちづくりを行うディレクターをつくっていきたいと考えているそうです。

2018年秋には、金沢21世紀美術館で「『工芸×建築』の可能性を探る工芸建築展」を開催。さらに、2020年春にドイツ・ベルリンの「フンボルトフォーラム」内のベルリン国立アジア美術館に常設展示される「ゆらぎの茶室」を、工芸作家らと制作中です。

また、2016年からは金沢21世紀工芸祭を開催しています。工芸と食の催し「趣膳食彩」や、点在する町家を会場とした回遊型展示「工芸回廊」をはじめ、5つのメインコンテンツで、工芸を通じて金沢の魅力を発信しています。今年で4回目となり、金沢での秋の恒例イベントとして定着しました。

日本の工芸は世界的に見ても、緻密で伝統的にもさまざまな技法が残っていて、表現としても素晴らしいものがあるそうです。世界に売っていける可能性があるアートコンテンツとして、日本の工芸は、かなり注目されているそうです。

北陸や金沢が日本の工芸の中心となる

さて、2020年には日本海側初の国立美術館となる、国立工芸館が石川金沢に移転してきます。約1900点という日本の名だたる工芸が北陸・金沢にやってくることや、2020年には石川県で「国際工芸サミット」という大きなイベントも開催されることなど、北陸と金沢の工芸が今おかれている熱い状況を語りました。

「小松や金沢などの工芸は内発的に持続可能な形でやっていける可能性がある。高岡や福井の越前、鯖江とかでも、若い人が中心となって内発的な工芸祭もやっている。そういうものをつなげていくのもいい。工芸館がくることで、日本を見渡した工芸拠点を作れたらいいと思う。そして金沢はぜひ、北陸の中心として工芸のマーケットを作っていったらいい」と、期待を述べました。

 

自然との共生から自然との対峙へ。時代の変化がSDGsを生んだ

続いて世界各国の都市の、夜景写真を見せ、夜景だとどれも似たような感じで、驚くほど都市の平準化が進んでいることを示しました。
産業革命以前は、人と自然が共生しながらある種の理屈を持っていた時代でした。しかし、それが今は、人と自然が対峙しながら理屈がない無理な時代になっていると述べ、「だから今、SDGsがあるのではないか」と説明しました。そして、もう一度その中に、“理屈を入れていく”、“編集していく”といったことが大事だと付け加えました。

SDGsの17のゴールでまちづくりのことをストレートにいっているのは、「11.住み続けられるまちづくりを」の1つだけ。「もっとあってもいいと思う。そもそもデベロップメントとサステイナビリティを一緒にするのが難しい」と言う浦さんからは、「その地域ならでは文化にもっと寄せてみるのもいいのでは?」との意見が出ました。

 

後半は浦さんと永井によるトークライブ。まずは金沢らしい文化を見つめ直す

金沢の産業には内発的なものが多く、結果として残っているニッチトップがいっぱいあります。その中には、前田家が投資を行ってきたストックも多く含まれます。
一方、全国を見渡してみると、日本海側にはそういったストックがいっぱい残っているはずなのに、「それがうまく生かされていない気がする」と言う浦さん。それらを顕在化するキーワードが「内発」であり、そのことを一番理解しているのがそこに住む人ではないか・・・、そのような話から議論が深まっていきました。

また、メインストリームでない人が変えたいと思っていることもたくさんあると、永井から話が切り出され、「例えば、国際会議に芸妓が来てお酌をするとか、旦那衆が文化を作ってきた金沢らしい側面でもありますが、グローバルスタンダードと照らしてみて、それはどうなのでしょう?」と、疑問を提示。
「金沢だからとりあえず芸妓を呼べばいいという考え方ならば、それは想像力の欠如。ある意味、文化的発想から一番遠いこと。これは“伝えて統(す)べる”伝統も同じ。新しく創造されたものもいっぱいあり、その中から統べられて何かが残っていく、これじゃなくちゃいけない」(浦さん)「創造性、その場その場をちゃんと考えてやっているのであれば、『何か理由があるのだろう・・・』と納得できますが、考えもしないで『こうしておけばいいや』というところに縛られている金沢の文化というのも、たくさんありますよね」(永井)

それぞれが心地いい場所を作るために、まちづくりをはじめ、金沢で文化から変えることはできないものか、そんな話につながります。

話題はSDGsのあり方へと進む

「SDGsのゴールの目標。平準化、結果にこだわると、『数字を出せばいいのでしょう?』みたいになるのではないでしょうか?」(永井)。

SDGsみたいにガーってきたものは、往々にして残らないものがある。残すためには多少の疑問を持ったりすることも大事。地域や環境にあわせ少し軌道修正したり、付け加えたりしながら多様なゴールを考えることは、SDGsという理念の持続性に繋がると思う」(浦さん)

「食品会社だからと、『世界の飢餓をなくすために貢献しています』とか、SDGsでラベリングだけしている企業も残念ながらあります。SDGsの根底をうまく共有して、結果の出方は金沢の場合は文化によるかもしれないし、他の町はそうじゃないかもしれないが、表層的なものではなく、SDGsのコアなところの価値の共有ができたらいいですね」(永井)

「SDGsは一人ひとりの中にある、地域の中にあるもので、それを無理やり1個にまとめようとしているから難しいのではないか。17の目標から何を自分の方に呼び込んで行くか、それで足したり引いたりしていく上で別に生まれたりするものっていうのがあって、そこの議論が大事だと思う」(浦さん)。

 

会場を巻き込んで、SDGsに対するさまざまな思いが交錯

SDGsについて、会場からも貴重な意見がたくさん出ました。ここでは、そのいくつかをかいつまんで紹介します。

「SDGsは、みんなが変わっていかないといけないが、今までやってきたことを今まで通りにやりたいと思う伝統主義的な人には、それができなくなると思われるのではないか?」

「子供が学校でSDGsを習ってきた。先生は子供たちに議論もさせずに、正しいこととして教えていたが、『これでゴールしたら本当に幸せなの?』って疑問を持たないのは思考停止だと思う。誰かが違うって多面的に意見を言わないと本当のゴールは見えないのではないか?」

「文化はストーリーではなく、ナラティブ的に脈々と答えもなく受け継がれてきたもの。自分の町会でも誰も理由もわからずに祭りが続いている。こういうナラティブ的な文化のあり方が、金沢でのSDGsには必要な気がする。合理性とか生産性とか数値化とかからかけ離れたところにあるのが文化」

「極限の貧困とか自分たちの知らない現実があることはわかった。それに対して目標が誤っているとは思わないが、これらは教えることではなくて感じ取るものではないかと思う。学校では先生が教えることよりも、自分たちで答えを出すという教育に変わってきている。そのためにも自分たちはもっと現実を知るべきだと感じた」

「金沢で知らず知らずに受け継がれているもの。そういうものだという一つの型が文化を生んでいる。基本的に人間が育つ文化だし、子供のうちから引き継がれてきたもので、体に蓄えられた大事なもの。それが金沢だから継続しているが、周辺の山間部では少子高齢化でできなくなっている。それまで持っていたものがサステイナブルで無くなること。これは、世界中で起こってきている。自然環境や戦争で自分を育ててくれた土地から離れないといけなくなるなど、そういうことが起こり過ぎているからSDGsという話が出てきた。サステイナブルな環境が金沢にあるということならそれを大事にしないといけない」

最後に永井からは、「SDGsはISOのようにやり方を変えるのではなく、自分の在り方を変えようというもの。SDGsはこのように学び続けて対話しながら、想像を創造につなげいていくことが大切なのではないかと思う。今日ここで出た話から、多少なりとも何か持って帰っていただければ嬉しいです。素晴らしい場をみなさんと共有できたことに感謝します」と述べ、閉会となりました。

日本庭園ワークショップをSDGs観光ツアーに

OUIKのJuan Pastor Ivars 研究員が、金沢の緑や街並みをみんなで守っていくために考案した日本庭園ワークショップを、観光ツアーのコンテンツとして企画しました。

この試みは、2020年のSDGs未来都市に金沢市が認定され、テーマとなる「責任ある観光」を推進するため催行した金沢SDGs体感モデルツアーの一つに庭園ワークショップを組み込んだものです。金沢の大切な文化的要素である日本庭園を、グリーンインフラとして生物多様性保全、ヒートアイランド現象の緩和など、その隠れた機能を学び、さらにお茶会や庭園清掃を通じて日本庭園の価値を体感するというものです。

日本庭園を学びのプラットフォームとして地域内外の人が集うことで、ご高齢の個人オーナーには負担が難しくなってしまった日頃の維持管理に様々な人が関わり、新しい形の維持管理体制が作れないかというのが、このワークショップの重要な狙いでもあります。今回はそこに、金沢をもっと深く知りたい観光客にも参加してもらえたら、そして金沢の日本庭園を守っていくことに世界中の人が参加してもらえるような観光モデルが作れたら、という Juan研究員の願いを具現化しました。

ツアーは東山の茶屋街近くの卯辰山山麓寺院群をぬうように通るこころの道の散策から始まります。参加者はインバウンドツアーガイドなど、様々な観光客のニーズを知り尽くしたプロの方々。観光客から圧倒的に人気があるのがその地域の住民との交流があるプログラムだそうです。市民が行き交う路地裏をJuan研究員の解説を聴きながら進み、目的地の永久寺さんに到着。

古くは前田家の公式の祈祷所で、250年以上の歴史をもつ永久寺。このお寺の管理を任されている本郷さんから、お寺の歴史やお庭の管理に関する課題を学んだ後は、早速お庭に出て清掃の開始。春先の庭には外来種のリュウキンカが蔓延ってその駆除が中心となります。

お庭には大きな槻もあり、円周を計測し金沢市の保存樹に登録できないか、という調査にも参加者に協力してもらいました。

こういった作業は決して観光客が携われないのでとてもワクワクしたとフィードバックがありました。小一時間の清掃作業で10以上のゴミ袋がいっぱいになるほどの雑草を駆除できました。作業の後は、金沢棒茶とお菓子を味わいながら、今回のワークショップの観光プログラムとしての評価について意見交換を行いました。

「観光客はその地域が好きだから訪れるので、その地域の市民との交流やその地域がよくなっていくことに貢献できることを探してしている。」「今回のツアーは金沢の文化歴史を深く知る学びを提供しているのでとても価値がある」「SDGsについて深く考える機会となった」「特定の宗教行事と思われない配慮が必要」「年配の方には作業上の工夫が必要」など様々なご意見をいただきました。

今後もたくさんの方に庭園ワークショップに参加してもらうため、観光ツアーとしての可能性を探っていきます。

 

富士フイルム・グリーンファンド「グリーンレター」の最新42号「里海ー人と海のつながり」

富士フイルム・グリーンファンド「グリーンレター」の最新42号「里海ー人と海のつながり」に、イヴォーン・ユー研究員の記事「能登に生きる海女さんたちからみえる里海」が掲載されました。能登の里海セミナーにも登壇した石川県輪島海女の早瀬千春さんを特集しています。下記のURLにてご覧になれます。

https://holdings.fujifilm.com/ja/sustainability/activity/other-activities/social-contribution-activities/greenfund

記事直結URL

https://www.fujifilm.com/files-holdings/ja/sustainability/activity/other-activities/social-contribution-activities/greenfund/sustainability_activity_other-activities_greenfund_no42.pdf

【開催報告】SDGsカフェ#5 「2030年 こんな会社があったら働きたい! −社会に求められる企業経営の姿とは−」

今回は金沢イクボス企業同盟の「金沢版働き方改革普及プロジェクト サマーセミナ−2019」と合同での開催となりました。

「イクボス」をご存知でしょうか?

「職場で共に働く部下やスタッフのワークライフバランスを考え、その人のキャリアと人生を応援する。組織の業績や結果も出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司のことをイクボスという」と、司会を務める金沢イクボス企業同盟の安江さんが教えてくださいました。

また、SDGsの理念や、17の全てのゴールが私たちの暮らしとつながっていること、こういった世界の動きと連動して、金沢では「金沢SDGs−IMAGINE KANAZAWA 2030−」を今年3月から発足させ、5つの方向性を導き出して推進していることも紹介されました。

ちなみに、今日のセミナーは、その方向性4番目の「働きがいも、生きがいも得られるまち」をテーマにしたSDGsカフェとなります。

*金沢イクボス企業同盟では、趣旨に賛同した企業が集まって、勉強会や御互いに切磋琢磨しながら、学びあっています(セミナー開催現在、85社が参加)。
詳しくは金沢イクボス企業同盟のHPをご覧ください。
https://ikuboss-kanazawa.com

 

2030年の自身の働いている姿を2人の大学生にイマジンしていただきました

一人目の中西辰慶(たつよし)さんは、東京都台東区出身の金沢大学2年生。
そしてもう一人の戸上玲央さんは金沢市出身の明治大学4年生。立場は異なりますが金沢市に縁があるお2人です。

 

2030年「コスパがいい仕事をしたい!」
中西辰慶さんの場合

楽をしていい給料をもらおうというのではなく、結果として幸福度が高いことを「コスパがいい」とするのが中西さんの考え方。自分の時間が確保できて、学んだり、成長を感じたりできることが「コスパの良さ」で、その先にあるのが自己実現だと話します。

中西辰慶さん

「2030年がどうなっているのか正直わからない」という中西さんは、ネットで検索して社会的な状況を把握し、超高齢化社会となっている日本を想像しました。周辺のアジア諸国が発展していく中で、日本だけは人口が減少して衰退していく−−。その一方で、早晩人口減少に転じる諸外国にとって、日本の取り組みはモデルケースとして注目を浴びているのではないかとも。

自分たち世代は100歳までは生きそうだと推測し、80歳まで仕事を続けていくことを考えているそうです。その場合、若い時に吸収してきた知識だけでは太刀打ちできなくなるだろうから、20年後くらいに、改めて学びなおす時間が必要になるはずだと言います。

2030年には、週休3日制になっているのではないだろうか? そして3日のうち、1日は休養、2日は教養に当てる・・・。新しいスキルに習得していくためにも、週休3日に対応していく企業の柔軟性が欲しいと感じているそうです。
また、仕事を離れ学び直ししたい時も、企業はそれを後押ししてくれ、戻ってくることができる制度や仕組みが整っていて欲しいとも。

今の学生はプライベートの充実を一番にあげますが、趣味だけでなく、家族との時間や、地域社会への貢献を通じて、自己実現することを大事に思っているそうです。

 

2030年「地域の稼ぐ力向上支援をしたい!」
戸上玲央さん

これからの中核都市の発展を担っていける、そのモデルケースとなり得る金沢市や石川県で、魅力的な新事業の創出やそれを軌道に乗せること、つまり稼ぐ力を作り出すことに関わっていたいという戸上さん。

会社は残業がなく、職種に縛られない働き方ができると良いと述べ、育児の携わり方は家庭によって違うから、さまざまな選択肢の中から、自分に合った育児方法が選択できる企業に籍を置きたいと言います。

戸上玲央さん

東京で成功したビジネスモデルを地方に持ってきてもその縮小版となるだけ。独自のビジネスモデルを作り、さらに若者を惹きつけるために、充分な収入を稼げるものにしていかないといけないと考えます。「稼げるシステムに昇華させていくことは、東京への若者流出を防ぐためにも重要となってくる」と話します。合わせて、既存事業は個人の生産性を高めて、稼ぐ力の増強を図っていくことも必要だと付け加えました。

魅力的な新事業が生まれる土壌を作ること、それは企業だけでは難しく、産官学などの連携も必要。各セクターとのつながりや調整力を発揮し、アイデアを形にして軌道に乗せるための実務力も持ち合わせるようになりたいと考えているそうです。

2030年、地域の「稼ぐ力」の向上支援を仕事にしたいという戸上さん。そのための人間力、実務力をこの先の10年で身に着ける必要があると言います。

冷静に、しかもプラス思考で2030年を想像しているお二人。とっても意識の高い発表に、会場の多くが感心しきりでした。

 

「給料が低くても人気のある会社になるには?」
サイボウズの野水克也さんより話題提供

働きがいのある会社ランキングで6年連続ランクインするなど、働き方改革をやっている人たちの間では知らない人はいないサイボウズ株式会社で、社長室フェローをされている野水克也さんからは、2人の学生の発表を受けての話題提供として、サイボウズが就職したい企業のトップクラスになった理由を説明していただきました。

サイボウズとは企業向けのグループウェアのソフトを作っている会社です。給料はIT業界の中でも全く高くないそうですが、学生からの人気はとても高いのです。

*サイボウズ株式会社 https://cybozu.co.jp

野水さん曰く、「40年ほど前、40億人と教わった世界の人口」も、あと数年後には80億人になります。しかし日本の人口はそれほど増えていません。GDPも世界の伸びに比べると日本はわずかで、日本市場は相対的に小さくなっていると言えます。
「世界が変わっていく中、日本だけは変わらずに30年を過ごしてきました。この事実を企業の皆さんはあまりわかっていません。しかし、学生たちは世界の今を学んできていますから、よくわかっています。ここに大きなギャップがあって、学生たちが入りたいと思う会社は大きく様変わりをしていますが、企業は発想の転換ができていません」

野水克也さん

これからの企業は、環境の上に成り立ち、多様性を担保していないといけないし、その上で、儲けるというビジネスモデルをつくっていかないと成り立たないというのがSDGs的な企業のあり方。社会からはそういうSDGs的な企業が求められていますが、それは学生も同じだと言います。
「社会貢献をしていかないとこの世界は持たない、年金もキビシイとか、学生たちは先行きをわかっていますから、そういう企業を探し始めているのです。きれいごとではありません」
そして、家庭を持ってからの生活の厳しさを考えると、共稼ぎを考えます。「女性の社会進出」ではなく、「男性がどれだけ女性を支援できるか?」という風に変わり、夫婦そろって安心して定年まで働けるから、公務員が人気なのだと付け加えます。

サイボウズでは「100人いたら100通りの働き方がある」と言っています。「一生の間に自分で働き方を決めながら、キャリアプランを作れます」という風にしたところ、就職希望者が押し寄せてくるようになったそうです。再学習は各自に任せ、そのための環境は提供しているそうです。
「本業で、副業で、地域コミュニティで、家族に、友達にと、たくさんの人や環境が支えてくれるのであれば、会社にちょっと変なことがあっても倒れることはありません。残業しないで早く帰って地域コミュニティに参加することは、会社にとって良いこと。だって会社から自立してくれるのですから」

社員の一生を保証することを会社に求めることは「もう幻想だ」とも言います。
「多くの学生たちは、自分でスキルを身に付けたいと思っています。そのスキルをつけるための手段をどれだけ認めてもらえるのか? それだけの新しいビジネスの方向をやってくれるかどうかが働きたい基準の一番。これをできない会社が多すぎるということになります」
IT技術を使うなどして、早く若手を育てている会社は若者の定着率が良いそうです。そして下働きなんてもってのほかだと言います。

働き方を自分で決めたい人たちがたくさんいる今、それに応えることで人を集めることができると述べました。

 

2030年、働き方、生き方ということをテーマにトークセッション

金沢イクボス企業同盟事務局で計画情報研究所の須田さんをコーディネイターに、野水さんと中西さん、戸上さんと、さらには会場からの質問も交えてもう少しテーマの深掘りをしていきました。参考になる意見がたくさん出ましたので、ちょっと長くなりますが、一部をダイジェストでお届けします。

〔会場からの質問1〕

40代あたりで一旦再勉強する働き方を話していたが、子供のことなどで一番その年代はお金を稼がないといけないと思うが、その辺はどう思うか?

〔回答:中西さん〕

30代までにある程度貯金が必要。なので、年功序列で若い人は給料が安いということでは成り立たない。夫婦でどっちかが学び直したいと思った時はフォローしあえる、いろいろの夫婦共稼ぎの形が必要。

〔回答:野水さん〕

会社を辞めてアメリカにMBAを取りに行く時代ではなくなった。30代後半に働く速度を半分に落として、残りの半分は勉強に当てる。何を学ぶかは20代のうちから自分でちゃんと考えておかないといけないと思う。40台後半では遅い。40代前半までに学び直しをやっておくべき。

〔会場からの質問2〕

仕事は現場での作業。もう数年もすれば自動化が進む今が過渡期。そんな中で働く人たちが魅力を持てる働き方について、具体的なヒントを。

〔回答:野水さん〕

自動化について興味を持つこと。本来、総務は仕事の量をこなした方が評価されるが、サイボウズでは評価されない。仕事のやり方を変えた人が評価をされる。今の仕事をこなしながらも自動化について勉強をしていくこと。

〔戸上さんから野水さんへ質問〕

学生が就職で意識することは?

〔野水さん〕

面接の中で出てきたことに対する質問はほとんどない。ボクらが言っていることを盲目的に信じている。わからなかったらちゃんと質問できる力をつけていくことが必要。
もう一つは好奇心。自分の好奇心をどう持ち続けるか? これが人生で一番大事。長生きする人としない人の差はほぼ好奇心の差。好奇心さえあれば人は生き続けられる。その好奇心を持ち続けることを心の中で思うように。

〔中西さんから野水さんへ質問〕

自分は誰かの役に立った、社会の役に立ったと思えた時に働きがいを感じるが、働きがいについてどう思うか?

〔野水さん〕

今は世間から評価されることに喜びを覚えることが主流となっている。学生たちは上司ではなく、違うところで評価されたいという欲が必ずある。企業はそれを満たすように誘導してあげるべき。

〔須田さんから野水さんへ質問〕

売り上げ、事業の継続性で悩まれている方もいらっしゃると思うがどう考えるか? どういうところから取り組んでいけば変わっていけるか?

〔野水さん〕

昔は借金できる方がいい会社と言われていた。今は逆。不動産とか余計なものは買わず、キャッシュフローだけで処理をする方がいい。理由は売り上げを保たなくてもいいから。人件費だけなら、休んで働かない分、売り上げを落としても構わない。
また、売り上げを上げる方法を人に依存してもいけない。人ではなく、仕組みで売り上げを保つ。会社のブランド力を高めるなど、誰が抜けても売り上げが保てるようビジネスモデルを作る。

〔須田さんから野水さんへ質問〕

80歳まで働く時代。持続可能ということを個人も企業も意識していくことが大事。金沢SDGsの4つ目「誰もが生涯にわたって学びや活躍できる社会風土をつくる」
その社会風土をつくるところで企業・個人が意識して取り組んでいくことは?

〔野水さん〕

昔は売り上げが上がる会社がいい会社だった。どこかのセミナー会場で「もう一回、日本が強くなってGNPを3倍にして、世界のトップに立つためにはどうしたらいいか?」と質問されたことがある。ボクは「あきらめなさい」と言った。それは無理。ボクらのライバルはグーグルとかアマゾンとかになるけど、絶対に勝てる気がしない。
でも、日本が生き残る道はある。世界で一番尊敬される国になること。そのために直さないといけないことはいっぱいあるが、どれも直せそうな気がする。そして金沢が観光都市としてどうやって発展してくか考えた場合、日本中で一番尊敬される都市になれば勝てる。
さらに会社も周りから尊敬されるようになれば、助けてもらえたり、いろいろなものが得られたりする。どうやったら尊敬される会社になれるかを考えればいい。

〔須田さんから中西さん・戸上さんへ質問〕

こんな会社だったら働きたいと思うことを。

〔中西さん〕

個人の好奇心に対して企業も興味を持っていて、外から世界から尊敬される会社。

〔戸上さん〕

自分は働いている人に人徳を求めてしまう。仕事ができるかできないかがいちばんの指標になる。この人についていきたいなと思う人が溢れている会社に居たい。

〔須田さんから野水さんへ質問〕

今日の副題にある「社会に求められる企業経営の姿とは」について、改めてお聞きしたい。

〔野水さん〕

近江商人の三方よし「売り手よし、買い手よし、世間よし」と同じ。自分、お客さん、社会がいいということ。金沢や石川のためになって、お客さんのためになって、自分のためにもなるということ。それを延々と続けていけば、それは社会に求められる企業となる。

 

2030年、自分は? 会社は?
まずは、今日からできることをしよう

限られた時間でしたが、それぞれグループ分けされた中で、学生から2030年にこんな会社で働きたいということ、社会人からは自分は、自分の会社は2030年にはこうなっているという話をディスカッションした後、今回の話を聞いて、自分が今日から取り組もうと思っていることを付箋に書いていただきました。

この「SDGsカフェ」では、話題にしたテーマを「自分ごとにして帰る」ということがあり、さまざまな人の意見を聞きながら、自分の気持ちを確かめて書き留めること、この作業は毎回のお約束となっています。

最後に野水さんからは、「出世した人間が幸せに死ねるわけじゃない。死ぬときに幸せな自分ってなんだろう?と考えて、働き方、生き方を見直すべき」と、アドバイスがあり、閉会となりました。

参加者全員で記念撮影。たくさんのご参加、誠にありがとうございました

学生と社会人が、2030年の金沢を想像しつつ、意見を交えるというなかなかない機会。
参加された皆さんは、きっと新しい発見や気づきを得ることができたのではないでしょうか。

第3回能登×イフガオ国際交流プログラム

第3回目の能登×イフガオ国際交流プログラムは12月17日(木)に行われました。

 

第1回目のレポート・このプログラムの背景はこちらから。

第2回目のレポートはこちらから。

今回は、交流の前に世界農業遺産「能登の里山里海」について学習しました。

まず、世界農業遺産のDVDを視聴し、その後、なぜ能登が世界農業遺産(GIAHS:Globally Important Agricultural Systems)になれたのか、能登GIAHSとSDGsの繋がりなどについて学びました。そして、最後にフィリピンにも一つだけGIAHSがあるということ、そしてそれが今交流をしているイフガオであることを知ると、上戸小学校の児童達は「あ、そういうことだったのか!」と、驚くと同時に納得した様子でした。能登とイフガオは、2011年に同時期にGIAHSに登録されたということ、そしてGIAHSを守り活用していくための大人向けの学校「マイスタープログラム」が両方の地域で行われていて、これまでも大人同士の交流が進められていることなどを学びました。

GIAHSの学習の後、オンライン会議システムを使って2校を繋ぎ、3回目の交流を行い、上戸小学校の5、6年生11人とイフガオのキアガン中央小学校の5年生7人が参加しました。2校のオンラインでの交流の最終回となる今回のテーマは「伝統文化」です。

まず、能登の上戸小学校の皆さんに能登の伝統文化について紹介してもらいました。最初に「祭りのごっつぉ」について説明がありました。お祭りの際にご馳走を用意し、お呼ばれに行ったり、来てもらったりすること、各家庭で用意するご馳走が少しずつ違うこと、地域で採れた旬のものを入れて作られることなどが紹介されました。

次に「キリコ」について紹介し、キリコが神輿の前や後ろに付き灯りの役目を果たしていることや、珠洲市の寺家地区の祭りは9月に行われ、キリコは高さが16.5メートルもあり、日本一ともいえる大きさで豪華であることなどの紹介がありました。

最後に祭りで歌う「きゃあらげ」について紹介がありました。男の子がお化粧をして着物を着て2種類の歌を歌うことや、歌う時に使う扇子を実際に見せて説明しました。「その日は神の使いなので地面に足をついてはいけません。そのため大人がおんぶして地面に降りる時はゴザを敷きます。」と語り、大人達が作った「曳山(ひきやま)」に乗って移動することも紹介しました。紹介の後には実際に扇子を持って「きゃあらげ」を歌い、イフガオの皆さんも一緒に手拍子をしながら喜んで歌を聞いていました。

さらに、太鼓の紹介がありました。当日参加して下さっていた生徒のお父さんから「龍神太鼓」について詳しい説明をして頂きました。龍神太鼓は1000年ぐらい前から伝わっていて、能登の国で鬼が暴れていて作物が実らず困っていたところ、龍神が来て鬼を退治してくれた、という話を太鼓で表現しているそうです。児童のお父さんと一緒に勇ましく迫力のある太鼓も披露してくれましいた。太鼓の音が大きすぎてオンライン会議システムでは途中で音を届けられなくなるというアクシデントもありましたが、映像の雰囲気からも迫力は伝わったのではないかと思います。

イフガオから上戸小学校の皆さんに沢山の質問がでました。

イフガオ児童「男の子だけが扇子を使って歌うのですか?」

上戸小児童「はい、そうです。」

イフガオ児童「学校でも歌いますか?」

上戸小児童「祭りの日に学校に来て歌います。」

次に、イフガオから伝統的な歌と踊りの発表がありました。まず、先生から太鼓の紹介があり、「皆さんの太鼓と私達の太鼓ととても似ていると思います。こちらでも太鼓を使います。」とおっしゃっていました。そして、ガムという金属でできた楽器や、地域の竹で作られた楽器などイフガオの伝統的な曲には欠かせない楽器の紹介がありました。

続いて実際にイフガオの伝統的な歌を披露してくれました。上戸小学校の皆さんは、伝統衣装に身を包み、竹の楽器を手にリズミカルに歌うイフガオのみんなの様子を真剣に見ていました。歌の後には先生から「私達トゥワリ部族のブガンというきれいな女の人の曲と、別のアヤンガン部族の強い男の人の曲を歌いました」と紹介がありました。

次に、イフガオの地域では、伝統的な踊りは、結婚式などの特別な日に披露されると紹介があり、実際に踊りを披露してくれました。

踊りのあと、上戸小学校の児童達からも沢山の質問が出ました。

上戸小児童「フィリピンにお祭りはありますか?」

イフガオ児童「はい、あります。」

先生「イフガオにもお祭りがあり、伝統的な歌を歌ったり、踊りを踊ったりします。」

上戸小児童「お祭りは年に1回ですか?」

イフガオ児童「年に1回です。」

上戸小児童「イフガオではもう雪が降りましたか?」

イフガオ児童「こちらでは雪は降りません。」

上戸小児童「能登は大雪です。」

数日前から能登では雪が降っていたこともあり、ビデオカメラ越しに降り積もった雪を見せると、温かい地域に住んでいるイフガオの先生や生徒からは見慣れない雪景色に歓声があがり、とても喜んでいる様子でした。

上戸小児童「イフガオには冬休みはありますか?」

イフガオ児童「はい、クリスマスのお休みがあります。」

上戸小児童「お祭りは何のお祭りですか?」

イフガオ児童「サンクスギビング(感謝祭、収穫祭)です。」

先生「前回お餅づくりのビデオをお見せしましたが、あれもバックレ―祭りの風景で、お米が沢山採れたことを神様に感謝するお祭りです。」

上戸小児童「いつお祭りがあるのですか?」

イフガオ児童「収穫後です。6月です。」

先生「栽培しているお米の品種によって変わりますが、6月~7月頃です。年に1回しか収穫できない品種の場合は1月にすることもあります。」

上戸小児童「お祭りは好きですか?」

イフガオ児童「はい、大好きです。歌ったり踊ったりするのが好きなのでお祭りが大好きです。食べ物もいっぱいあるので好きです。」

上戸小児童「お祭りで、キリコの様なものは使いますか?」

イフガオ児童「いいえ。収穫した食べ物を飾ったりはします。」

今回は最終回ということで、お互いに記念写真を撮って終了となりました。3回の交流を通じて、お互いの地域の食べ物や伝統文化だけでなく、気候や学校生活の様子など色々な違いや共通点を見つける良い機会になったのではないでしょうか。オンラインでの交流は今回で一区切りとなりますが、今後はカードを送り合うなど、新たな交流の形を探していく予定です。能登とイフガオの児童達の素敵な縁が今後も続きますように。

 

第2回能登×イフガオ国際交流プログラム

第2回目の能登×イフガオ国際交流プログラムは11月26日(木)に行われました。

第1回目のレポート・このプログラムの背景はこちらから。

今回のテーマは「食文化」、フィリピンのイフガオと日本の能登の食べ物とではどのような違いがあるのでしょう。今回は事前学習として、それぞれの地域でお米を使った伝統的なお菓子の作り方を紹介するビデオを撮影し、交換しました。イフガオの児童たちはビデオの中でライスケーキ作りを紹介し、能登の児童たちは、かき餅作りを説明しました。

イフガオ「ライスケーキ(お餅)」

粉末にしたもち米に砂糖、ココナッツパウダー、水を混ぜたものをバナナの皮に包み、鍋で茹でて食べる伝統的なおやつ。

能登「かき餅」

お餅をスライスしたものを室内の大きなテーブルに広げて裏と表を均等に乾燥させたものを油で揚げて食べる伝統的なおやつ。

日本のお餅の作り方は知っている上戸小学校の児童たちですが、伝統衣装を着て、見慣れない大きな葉っぱを使いながらお餅を作るイフガオの皆さん姿に、興味津々の様子でした。ビデオを見た後、上戸小学校の皆さんはグループに分かれて、ビデオを見た感想やこの後の交流で質問したい内容を話合いました。

それぞれ撮影したビデオに加えて、能登の食文化と自然・農業の繋がりを紹介した動画「ごっつぉをつくろう」を事前に共有し、能登の皆さんは日本語版を、イフガオの皆さんは英語版をそれぞれ視聴しました。動画では山菜採りや海藻採り、魚釣りなど、能登の里山里海で営まれている様々な活動が紹介されていますが、上戸小学校のみんなはまだ体験したことがないものがほとんどだったようですが、「キノコ採りは、ばあちゃんとしたことがある!」「野菜は作ったことある!」と教えてくれた児童も何人かいました。能登ではまだまだ里山里海の恵みを生かした暮らしが続けられていますが、実際にそれらを家庭で自ら体験する機会は、生活スタイルの変化や家族構成の変化などにより減ってきているのかもしれません。けれども、なぜか味噌作りはクラスの全員が体験したことがあるとのこと。理由を聞くと、学校の授業の一環で体験しているそうです。学校教育の一環で地域の事を知り、体験する機会を設けていることの重要性を改めて感じる機会となりました。今回のかき餅作りも、児童たちにとって貴重な体験になったのではないでしょうか?

事前学習の後、オンライン会議システムを使って2校を繋ぎ、待ちに待った2回目の交流がスタートしました。はじめにイフガオのキアガン中央小学校の皆さんに一人一つずつ、イフガオで採れた野菜やフルーツを紹介していただきました。

ココナッツやペッチャイ(写真左、フィリピンのチンゲン菜のような野菜)、サヨーテ(写真真ん中、はやとうり)、カラマンシー(写真右、四季柑)など日本ではあまり見かけない食べ物ばかりです。「これはビタミンが豊富で体にいいです」「甘くておいしいので好きです」など、皆さんそれぞれ、よく食べる好きな食材を紹介してくれたようでした。

上戸小学校からイフガオの皆さんに向けて、紹介していただいた食べ物やビデオで見たライスケーキについてたくさん質問が出ました。

上戸小児童「なぜライスケーキ(お餅)を作るときバナナの葉っぱを使うのですか?」

イフガオ児童「アルミホイルが今ないのでバナナの葉っぱを使います。イフガオでは昔からバナナの葉っぱを使うのが伝統です。バナナの葉っぱは、一枚一枚がとても大きいのでいろいろな用途に使えますし、環境にも優しいです」

上戸小児童「果物や野菜はどうやって食べますか?生ですか?それとも料理しますか?」

イフガオ児童「ジュースやシェイクにして食べます」「砂糖を混ぜてジュースにします」「野菜は蒸したり、炒めたりして食べます」「そのまま皮をむいて食べます」 

上戸小児童「ライスケーキ(お餅)を作るとき、どうして伝統的な衣装を着ていたのですか?」

イフガオ児童「伝統的なお菓子を作るときは伝統的な衣装を着るのが習わしです」

次に上戸小学校の皆さんが日本、そして珠洲の食についてパネルを使い紹介しました。

はじめに握り寿司やお祭りやお祝いの時に作る押し寿司、珠洲で栽培されている野菜(だいこん・白菜・かぶ・トマト・人参など)について紹介しました。大浜大豆という地域独特の大豆については「この大豆は畔大豆とも呼ばれていて普通の大豆よりも大きいです。タンパク質が多く含まれていて身体にいいです。たくさんの料理に使われていて、豆腐や味噌を作るととてもおいしいです」と詳しく紹介しました。上戸小学校では3,4年生の時に学校で大浜大豆を栽培するようです。感想として「実際に育ててみると難しく、たくさんは収穫できなかった」と語りました。さらに金時草やえびすカボチャなど、地元の野菜の紹介もしました。

 

「金時草は酢の物や天ぷらにして食べるとおいしいです。お米と混ぜて料理すると葉っぱから紫色が染み出て、色がきれいです。食物繊維やカリウム、カルシウム、ビタミンも豊富に含まれていて栄養価も高いです」

「えびすカボチャは収穫後、県外にも出荷されてとても人気です。とても甘いので煮物やコロッケ、お菓子などに多く使われています。珠洲ではカボチャが熟して甘くなるまで待って収穫するのでとてもおいしいです」

さらに能登では秋にたくさん作られる干し柿についても説明しました。今年、上戸小学校の1、2年生が、200個もの干し柿を作ったそうです。

イフガオから上戸小学校の皆さんにもたくさん質問が寄せられました。

イフガオ児童「お寿司を海苔で巻きますか?」

上戸小児童「はい、海苔で巻くお寿司と巻かないお寿司があります」

イフガオ児童「柿はそのまま生でも食べますか?それはリンゴみないな味ですか?」

上戸小児童「生でも食べます。甘くておいしいですがリンゴとはちょっと違う味がします」

イフガオ児童「イフガオでは柿はとても高いです。能登ではどうですか?」

上戸小児童「能登では柿は高くないです。庭に柿の木があります」

イフガオ児童「柿は一年中食べられるフルーツですか?それともある季節だけですか?」

上戸小児童「柿が採れるのは秋だけです」

初めて見る食材に皆さんは興味津々の様子でした。フィリピンのイフガオと日本の能登、同じアジアにある国・地域なのに気候や文化が違うことから、採れる野菜やフルーツ、そして調理方法も全く違います。実際に食べることはできませんでしたが、お互いにたくさん質問し合ってどんな味か、どんなふうに食べるのか、想像がついたことと思います。

最後にイフガオ、キアガン中央小学校のジェニファー先生よりコメントを頂きました。

「いろいろな種類の食べ物を紹介してくれてありがとうございました。上戸小学校の皆さんがどんな食べ物を食べて生活しているのかがよくわかりました。イフガオでは5年生くらいにならないと調理実習はしませんが、上戸小学校では1、2年生から実習をしていて素晴らしい取り組みだと思いました。さらに能登ではフルーツの食べ方もいろいろあり、面白いと思いました。イフガオのライスケーキについて知ってもらえてうれしいです。このお菓子はThanksgiving (感謝祭・収穫祭)などで昔からよく食べている伝統食です。お餅はモチモチしていてお互いにくっつくことから、家族の繋がりを表現している縁起物としてイフガオでは食べられています。」

上戸小学校からは児童ひとりひとりが一言ずつコメントしました。

「イフガオの食べ物を知れてよかったです。ありがとうございます」

「イフガオのいろいろな種類のフルーツについて学べてよかったです」

「ライスケーキ(お餅)の作り方が能登とイフガオでは違って面白かったです」

「イフガオのライスケーキを日本でも作ってみたいです」

「日本とイフガオでは違う食べ物がたくさんあることがわかりました」

「お餅を作るときにイフガオではココナッツを混ぜていてびっくりしました」

などなど、上戸小学校の皆さんにとってもイフガオの食文化は驚きと新しい発見の連続だったようです。

 

次回はこの交流プログラムの最終回となります。

最終回のテーマは「伝統文化」。主に地域のお祭り文化について紹介し、実際に歌や踊りを披露する予定です。

 

 

 

 

【開催報告】 シンポジウム「金沢の庭園がつなぐ人と自然」

金沢には半世紀から代々受け継がれてきた数々の庭園があります。このたび国連大学IAS-OUIKでは、これらの庭園や自然をテーマに、生物文化多様性ブックレット#5『金沢の庭園がつなぐ人と自然−持続可能なコモンズへの挑戦−』を制作しました。
それを記念して、金沢の庭園の知られざる魅力を、歴史、環境、デザインの面から紐解き、庭園の新しい楽しみ方や、「後世に引き継ぐために私たちができることは何か?」を考えるシンポジウムを開催しました。

日本庭園に心底魅せられたフアン研究員がこだわり抜いた一冊が誕生!

まず最初に、オープニングとして、このブックレットの責任編著者・国連大学のフアン バストール・イヴァールス研究員から、ブックレットの概要について解説しました。

本書は4章からなります。

第1章 都市自然の持続可能な保全のための施策
第2章 庭園にまつわる人々の物語
第3章 日本庭園の多様な教え
第4章 自然と関わる新しい方法

金沢らしい生物多様性の戦略、所有者が庭園を維持していくための苦労や課題、さまざまな視点から日本庭園がもたらしてくれる教え、日本庭園との新しい関わり方が生み出すものなど、本文131ページというボリュームで、今まで知らなかった庭園の魅力や関わり方を紹介しています。

「都市の自然と親密な関係を作ることで、人々が幸福に恵まれます。行政、所有者、専門家、市民が協働して庭園を維持管理することで、都市に春夏秋冬が存在できます。人、動物、草木などがサイクルを持ち、調和のとれた世界になるよう、私はこれからも頑張っていきたい」とフアン研究員は話を締めくくりました。

 

基調講演「庭園から見た金沢らしさ」

日本民俗学会評議員・元北陸大学教授の小林忠雄さんの基調講演がありました。小林さんは、本書にも寄稿していただいています。

中国の風水を180度ひっくり返した、いわゆる「逆風水」の空間特徴を備えるのが金沢で、不吉とされる場所に悪霊封じのために寺院群を置いたことを解説されました。

また泉鏡花の作品から、往時の広坂通りはコナラやホオノキなどがいっぱいあって鬱蒼としていたことがわかり、古い写真からは中心部には木がいっぱいあって、文字通り「森の都」だったことを示し、古い時代の金沢では周辺の樹木を積極的に入れて造園をしていたのではないかと述べました。

金沢には植物に関する民俗も残っていて、例えば紫陽花を切って玄関に吊るす「門守」という独特な習慣を紹介。植物と生活が一体となったライフスタイルがこの町には今も残っていることは大変注目と述べて、話を締めくくりました。

*この内容にご興味がある方は、上述のPDF版/P76〜79「風水思想に彩られた金沢」をぜひご覧ください。

 

ブックレットの著者の方々によるトークセッション1
「金沢の庭園に隠された魅力」

ファシリテーター・鍔隆弘さん(金沢美術工芸大学環境デザイン専攻教授)、パネリストに野々市芳朗さん(株式会社野々与造園 会長)、寺島恭子さん(寺島蔵人邸跡)、長谷川孝徳さん(北陸大学国際コミュニケーション学部教授)、土田義郎さん(金沢工業大学建築学部建築学科教授)を迎えて、「金沢の庭園に隠された魅力」をテーマに討論が始まりました。

まずはそれぞれから庭園の魅力、楽しみ方を語っていただくということで、最初にファシリテーターの鍔さんから、「周りを取り込む庭園」(本書P88)に掲載した林鐘庭「五人扶持の松」の紹介がありました。また、「千田家庭園」で毎年学生と一緒に行っている泥さらい(清掃活動)についての説明もありました。

続いて、長谷川さんからは、「加賀藩士屋敷の植栽について」(本書P80)から、加賀藩士の屋敷の庭にはどのような木が植わっていたか? またその理由などについて解説がありました。そして、往時のように自給自足ができる庭というのは、「これから先、庭園を残していくのに大きな魅力につながっていくのではないか」と付け加えました。

「10年後、100年後も、金沢と共にあるために未来を考えて維持していく」(本書P38)を寄稿してくださった寺島さんからは、寺島蔵人邸で暮らしていた頃の思い出を語っていただきました。風呂は庭から拾ってきた薪で沸かし、庭に生えたり、実ったりする自然のものを大切にして食べるなど、慎ましやかな暮らしだったと述べます。また、庭師を入れることができず、見よう見まねで雪吊りも自分たちで行っていたそうで、「そういうこともしないといけないことは苦痛でした」と振り返ります。

「里山の風景、自然から創造する金沢らしい庭園」(本書P92)を執筆された野々市さんからは、雪国・金沢ならではの剪定方法や、「市中の山居」(里山の情景を家の周りに作る)を基本とした金沢の日本庭園の特徴を解説してくださいました。

土田さんからは、「庭を聞く」(本書P108)に合わせて、サウンドスケープ(音風景)の楽しみ方を紹介していただきました。また、日本の庭園の技術には「暗黙知」として受け継がれているものが多く、未来に引き継ぐためには、作る側だけでなく鑑賞する側も意識して、暗黙知を形式知として残す必要があると述べました。

金沢にはたくさんの庭が残っていて、維持する機会もあって、作る楽しみを知ってらっしゃる方もたくさんいる−−。そう言ったものを共有しながら、「風景としてだけでなく、街なの自然空間、生物の生息空間としての価値が広がっていけばいいなと思う」と鍔さんが述べて、トークセッション1は終了しました。

 

トークセッション2「地域の自然から見るサステイナビリティ」

ファシリテーター・上野裕介さん(石川県立大学生物資源環境学部環境学科准教授)、パネリストに円井基史さん(金沢工業大学建築学部建築学科准教授)、アイーダ・ママードヴァさん(金沢大学国際機構特任准教授)と留学生代表(ロシア・カザン連邦大学)、永井三岐子(UNUーIAS OUIK 事務局長)が登壇し、セッション1で知ることができた庭園の新たな魅力や価値を、持続可能にしていくために、私たちはどうすれば良いのかを議論しました。

まず、上野さんからサステイナビリティ=持続可能性について考えた時、重要となる行動目標としてSDGsのアウトライン紹介がありました。

そして、社会、経済を支えているのが生物圏や自然で、そんな地域の資源をうまく使うことができれば、社会はもっとより豊かに、そして持続可能な社会になるのではないだろうか? セッション2では、その方法について話し合いたいと、口火を切りました。

大野庄用水

その答えの一つとして上野さんからは、「グリーンインフラ」の紹介がありました。自然が持っている機能や仕組みを活用してインフラ整備や防災、国土管理に使っていこうというもので、詳しくは「金沢市のグリーンインフラと都市の生態系サービス」(本書P104)をご覧ください。

「金沢市街の緑と熱環境および今後も街づくりについて」(本書P100)を執筆された円井さんからは、都市の緑と熱について着目した話がありました。温暖化は都市部ではヒートアイランドによりさらに進んでいるが、都市でも緑地があることで、緑から冷気流が起こり、周辺が冷やされている部分があるという話。金沢の場合、小立野台地と片町では夜間、2〜3度の気温の違いがあることもわかったそうです。

「庭園でのボランティア活動を通じた学び」(本書P113)を寄稿されたアイーダさんは、海外からの留学生に金沢の文化を体験してもらうプログラムを担当。フアン研究員の協力で、庭園から学生たちにいろいろなことを学んでもらっているそうです。庭園の中に入るとサウンドスケープ、ランドスケープ、建築、経済を一つの場所から全部見ることができ、茶道などの日本文化を掃除しながら学ぶというベストな体験になっていると言い、これをもっと広げていきたいと考えているそうです。

また、今回実際に日本庭園の清掃を体験したロシアの学生からは、庭園の維持管理方法については、「学生の援助を求める、国際ボランティアを招く、世界中に問題を広める」と言った提言もありました。

「金沢の庭園から生まれるコレクティブ・インパクト」(本書P17)を執筆した永井からは、金沢市と金沢青年会議所、そしてUNUーIAS OUIKが中心となって進めつつあるSDGsの動きを紹介。金沢SDGsの5つの方向性について説明しました。

引き続き、「庭園をどうしたら持続的なものにできるのか?」「将来に向かって私たちは何をすべきか?」ということを、考えることに。答えは出なくても、「考える契機となればいい」と上野さんは申します。

庭園の新たな魅力や価値を知り、まずは「庭園は大事だ」ということに気がついてもらうことが、守るための第一歩。そのためにできることとは?

「日本人の昔の知恵というのが庭には眠っていて、その知恵は現代の技術に生かすことができるのに、それに気がついていない人が多い。そういったところを教育したり、普及していきたいと思う」(円井さん)

「手入れされた庭園は生態系だけでなく、社会、経済にも貢献する。庭園を失った時、日本人の心も失う。ボランティア制度を作ってお互いが協力しながら庭園を維持していくことがこれからの時代にマッチ。SDGsのボランティアの概念ともリンクでき、金沢ならではのモデルとなるのではないか」(アイーダ)

「心蓮社の庭園清掃は、スペインに行った日本人がサクラダファミリアの建設を手伝わせてくれるくらい、外国人にとっては宝物のような体験となる。その視点の違いを私たちも持たないといけない。同じものを見ても違うように価値づけできることが大切」(永井)

「30年後、50年後、金沢の街をどう活用していくか? それをみんなで考えていけばいいが、その時により多くの市民や行政の人、企業の人を巻き込み、賛同してやってもらいたい。そのためにはどうすればいいか?」(上野さん)

「知ってもらうこと、体験してもらうことが大切。樹木を西に植えると省エネになることを、庭に木を植えないと言っていた施主に知らせたら、考えが変わったこともあった」(円井さん)

「留学生は金沢の家の前に庭が少ない、土がないと言う。各家の前に小さい庭を作る、そういう場所を増やしていけば、市の人も考えて施策も新しく考え直すことがあるのではないか」(アイーダさん)

 

最後に、上野さんからは、「外国人の視点も入り、さまざまなものの見方で、新しい価値を発見していくこと。多くの人が取り組みたくなるような、そして楽しめるような仕組みを作っていくこと。そして課題解決にはパートナーシッも重要。古い日本らしい、金沢らしい暮らしを守っていく、あるいは取り戻すことができれば、これから50年後、100年後、金沢はもっと魅力的な地域になるのではないか」と述べて、トークセッション2は幕を下ろしました。

引き続き、閉会の挨拶を行った、日本造園学会石川県連絡会の上田哲男さんは、庭園の維持管理の難しさに言及。「所有者や管理者だけでは到底困難な状態が存在しており、良好な状態で後世へ引き継いでいける管理システムの構築が急務。そのためには、庭園や自然に対する調査研究から維持管理までを視野に入れた、市民協働の取り組みを行うことが必要」と述べられました。

会場では席が足りなくなり、慌てて追加するほどの大盛況のうちに、無事シンポジウムを終了することができました。ご登壇くださった皆さん、出版にご協力くださった皆さん、そしてシンポジウムに参加してくださった皆さん、ありがとうございました。

第1回能登×イフガオ国際交流プログラム

SDGs未来都市にも選定されている石川県珠洲市では、2018年に能登SDGsラボが開設され、2020年度から市内全小学校を対象とした、SDGs教育プログラムを開始しました。世界農業遺産(GIAHS)「能登の里山里海」に関する教育プロジェクトを進めている国連大学OUIKは、このSDGs教育プログラムと連携して、子供たちの国際的な学びや交流を深めるオンラインプログラムを企画しました。

今回交流を行ったのは、珠洲市上戸小学校と、フィリピン、イフガオ州にあるキアガン中央小学校です。

能登とフィリピンのイフガオは双方が世界農業遺産(GIAHS)に認定されており、里山マイスタープログラムの活動を通じて長年交流を深めてきたという背景があります。

今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で学校がお休みになったり、外出が自粛されたり、地域内であっても人と人の交流が減っている状況が能登地域でもイフガオでもみられました。そのような中、遠く離れた地域の子供達同士がオンラインで交流し、お互いの国や地域、文化や生活様式の違いについて学び合うことは、お互いの理解を深めるのみならず、自分たちの地域についても改めて学び、伝える機会となり、これは子供たちのアイデンティティーの形成やコミュニケーション能力の上向にもつながる活動といえます。

今回の交流プログラムは3回の交流からなり、それぞれ1) 自己紹介と地域の紹介 、2)地域の食文化の紹介、 3)文化活動の紹介 というプログラムを組みました。

10月27日に行われた第1回目、「自己紹介と地域の紹介」では上戸小学校の5、6年生11人とイフガオのキアガン中央小学校の5年生6人が、お互いの地域について紹介しました。

はじめに上戸小学校の児童がひとりずつ、名前や年齢、好きなことなどを紹介していきました。この日のために英語での自己紹介を練習し、わかりやすいように手書きのパネルも作ってくれました。皆さん、少し恥ずかしそうにしながらもスムーズに自己紹介を行いました。

次にイフガオの皆さんが自己紹介を行なってくれました。フィリピンの学校教育は基本的に英語で行われていることもあり、小学生の皆さんもとても流暢に英語を話します。今回はOUIKの小山と富田が通訳しながら進行しました。「バスケットボールが好きです」「ゲームが好きです」など、住んでいる国や言葉は違えど、児童たちの興味にはたくさんの共通点があったようです。

次にお互いの地域についての紹介を行いました。まずは上戸小学校から、3つのチームに分かれ、それぞれ「石川県について」「珠洲市について」「上戸小学校について」の紹介を行いました。たくさんの写真や絵を使いながら、兼六園などの石川県の観光名所から輪島市の棚田、珠洲市の見附島、地域の祭りの文化など、詳しい説明を行いました。最後の「上戸小学校について」の紹介では、日本特有のランドセルを紹介したり、制服や校舎の3階からの眺めを写真を使って紹介し、自分たちの学校や地域を身近に感じてもらえるような工夫が多くみられました。イフガオからの紹介では世界遺産、そして世界農業遺産(GIAHS)にも登録されているイフガオの棚田の紹介から、地域の歴史的な建物や文化の紹介が行われました。

次は質問コーナーです。イフガオの児童からまず「どうして上戸小学校は全校児童が24人しかいないのですか?」という質問が飛び出しました。イフガオのキアガン中央小学校は全体で400人近い児童がいるようで、24人しがいない小規模な小学校はイフガオの皆さんにとってはとても不思議だったようです。上戸小学校からの答えは「このあたりに住んでいる人が少ないから学校の児童も少ないです」ということでした。

さらに「好きな科目はなんですか?何科目勉強していますか?」「好きなスポーツはなんですか?」など、お互いのことを知るためにたくさんの質問を交わしました。上戸小学校からの「給食はありますか?私たちの今日の給食はカレーです」という質問にイフガオは「ランチはお弁当を持ってきます」と答える場面もありました。

最後に今日の交流の機会に感謝の気持ちを込めて、それぞれの言語で歌を歌いました。上戸小学校からは「世界中の子供たち」を、イフガオの皆さんは現地の言葉で伝統的な「さよならの歌」を歌ってくれました。

最後に「Thank you, see you again!」と手を振り、第一回目の交流は幕を閉じました。

 上戸小学校もイフガオのキアガン中央小学校もオンラインでのこのような交流は初めてということもあり、前半は緊張した面持ちの児童が目立ちましたが、自己紹介や地域の紹介でお互いの理解が深まるにつれ、皆さんから「もっと知りたい」「もっと知ってもらいたい」という意欲が湧いてきたように見受けられました。

次回の交流ではお互いの地域の「食」について紹介します。珠洲とイフガオの食文化にはどのような違いや共通点があるのでしょうか。児童たちも興味津々のようです。

【開催報告】 SDGsカフェ#4「今、求められる教育−2030の担い手育成−」

今回は前回に続いて「今、求められる教育」シリーズの第2回目。
「2030の担い手育成」をテーマに、2030年の金沢を金沢大学附属高等学校校長の山本吉次先生にIMAGINEしていただきました。

まずは、金沢市企画調整課の笠間彩氏から、金沢SDGs「5つの方向性」について紹介。
この5つをゴールとして行動計画を決めていくことで、「金沢らしく、そして金沢の人たちが、自分ごととしてSDGsに取り組んでいけるのではないか」とお話しました。

前回、SDGsカフェ#3の様子は下記の投稿をご覧ください。
【開催報告】 SDGsカフェ#3 「今、求められる教育−映画『Most Likely to Succeed』上映会とワークショップ−」
金沢SDGs「5つの方向性」について、下記の以前の投稿で詳しく紹介しています。
【開催報告】SDGsダイアローグシリーズ最終回・総括シンポジウム「地域の未来をSDGsでカタチにしよう」

以下、本文中の*マークのあるリンク先をクリックするとそれぞれの詳細情報が得られる公的機関等のサイトにジャンプします。

2030年の教育をIMAGINEしてくださる方

さて今回、2030年の金沢をIMAGINEしてくださる人は、金沢大学附属高等学校*(以下、附属高校)校長の山本吉次さんです。
そして、山本さんのお話しから、そこにアイデアをくれるお二人のゲストをお招きしました。

お一人は、今年の春までシンガポール日本人学校の校長も勤められた池端弘久さん。もうお一人は、学生と企業、子供たちと地域社会を結びつける活動などを行う仁志出憲聖さんです。

 

 

これからの社会で活躍できる人材とは?

附属高校は、2014年から文科省のSGH*(スーパー・グローバル・ハイスクール)指定校となりました。世の中のパイロット校となる役割を持つ附属高校では、“国際社会の中で、地球生態系の中で、サステイナブルに能力を活かして生きていける、そんな人間を作る”ために、SGHによる地球サイズの教育活動を行ってきたそうです。

「地域課題研究」(地域)→「異文化研究」(二国間)→「グルーバル提案」(多国間)→「グローバル・キャリアパス」(自己)と、高校の3年間、一貫した課題研究カリキュラムを実践。SGHにより教科もSGH化し、授業も変わってきたそうです。

そして、国内外の学校との交流や、北陸の機関や企業の指導などを受けるなど、オープンな学校へと変化しました。
さらに、外から中に入ってくるだけではなく、中から外へ、留学などで海外へ出ていく生徒も増えたそうです。

一方で、SGHの課題もいろいろ出てきました。その一つ、そもそもこれが課題なのかどうか、意見は分かれると思いますが、今年は東京大学の合格者が減って、「大学受験をしっかりやってほしい」、そんな声も上がっているそうです。実は、東大を志望する生徒自体が減っていて、その代わりに増えたのがAO入試だそうです。留学経験を持つ生徒などが明確な意思を持って、自分が行きたい大学を選ぶように変わってきていると言います。

総合の学習の基盤となるのは教科の学習であり、それは受験にも通じます。でも教科の学習だけだったら、これからの世の中に通用していかないでしょう。附属高校は受験のための教科の勉強と、主体的な探求が求められる総合の授業の両方をやっていくそうですが、「大学受験をどうしていくか?」ということは、今後議論を重ねるべきことだと述べました。

SGHは5年間の期間限定のため、附属高校の指定は今年の3月で終了しました。

今年からは、「Society5.0*」の社会に向けた人材育成を推進する文科省の「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム支援事業*」の拠点校となり、一つの学校ではできない、国内外のいろんな学校や企業、国際機関と結びつき、コンソーシアムを作ってイノベーティヴなグローバル人材を育成していくそうです。

このようなことを踏まえて、2030年をIMAGINEしてもらいます

山本さんの経験から、「情報入手方法が激変している」ことを指摘。2030年にはもっと変わり、「バーチャルをリアルに体験」できるようになるのではないかと想像されます。

AIが進化しても、情報処理を行うための評価関数(つまり価値)を決めるのは人間です。その価値を決めていく重要な指標が「SDGsの17の目標ではないか? そして、目標(価値観)の深化と共有のためには、もっと自分ごとにするために、対話と議論が必要」と強調されました。そういう意味でも「主体的・対話的な深い学び」がより重要となるのは明らかです。

これから実施されていく「新学習指導要領*」では、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)も重視されていくそうです。

いろいろなことを実際に体験しないと議論はできません。インターネットなどのバーチャルだけではなく、自分でリアルに体験する重要。そして、より広い知的交流の枠組み(コンソーシアム)が必要だとも述べて、お話しを締めくくりました。

 

大人も子供も一緒に問題意識を共有すべき

山本さんのIMAGINEを受けて、ESD*に長年携わってきた池端さんからは、シンガポール日本人学校で行っていることや、海外から見てわかった日本の教育の良い点や足りないことなどを紹介してくださいました。

まず、池端さんからは、全ての小中学校がユネスコスクールに認定されている金沢市は、ESDの基本的な考え方による総合的学習の実践が進んでいるという話も出ました。

さて、とかく英語を喋るのが苦手とされる日本人ですが、その環境さえ整えば、英語力がみるみる上達していく、日本人学校ではそんな子供達の成長ぶりに感心させられたそうです。

日本人学校では、今まで行ってきた体験的な学習にSDGsの項目をつけ、子供達に問題意識を持ってもらう教育をしています。年度当初のガイダンスでは、「学校も力を入れるから、みんなも頑張ってやるぞ」と、問題意識を共有して、教師や大人も一緒に成長していくことを目指します。

また、子供達には、情報が生成される「第一次情報」を作るプロセスをアナログ目線で経験させるようにしているそうです。これを知らなかったら、その情報が正しいものかどうかの精査ができず、2次情報、3次情報だけで物事を考えてしまうことになるからです。

教科の学習による知識理解は、深い思考する上で非常に重要です。その上で、どういう問題意識を持つのか? どういう風に問題を解決していくのか? ということが問われます。そして、教員もまた、問題意識を持って成長することが大事だと言います。

特に、環境問題や人権問題など、もう後戻りができず、限界が近づいています。ここでの議論のような場には子供達がきちんと参画して、子供達とともに考えていく、そうしていくべきだと提言されました。

 

やる気のある学生を支援する会社

株式会社ガクトラボ(企業紹介の動画はこちらで見られます)の仁志出さんからは、全国で唯一、「学生のまち推進条例*」がある金沢で、長期実践型のインターンシップ(ガレナ*)での学生支援の実績の紹介がありました。

スキルはなくてもやる気のある大学生が6ヶ月間、その企業に入って、一緒に挑戦していくことで、さまざまな成果が残せているそうです。学生にとっては、社会で自分の力を試す機会となり、企業にとっては、若い人材と一緒に挑戦できるきっかけとなっています。

また、耕作放棄地を学生が開拓して、日本酒を造り、デザイン、コンセプト作り、販売まで手がけた「N-project*」など、地域を元気にする学生団体の活動も支援もしています。

やる気がある若い人は、SDGsに取り組んでいるようなビジョンを持った企業に魅力を感じると言います。先が読めない時代、やる気があって思考ができる人材は多くの企業が欲するところでしょう。

今は学生のほとんどがインターンシップをしますが、「教育的にも、地域にとっても、経済にとっても、価値のある質の高いインターンシップをいかにするかが大切。体験じゃなくて経験、それもただ経験するだけでは浅い」と仁志出さんは申します。

「学生の街なので数は多いが、質が高く、挑戦できるインターンシップはなかった。しかも、質は一つだけでなく多様なものが必要」と、その時に思った仁志出さんは、学校だけでは多様な選択肢を補完できないと考えて、「自分でやってみよう」と起業したそうです。

若い人たちの意見も主体としてしっかり取り入れつつ、多様性のある教育の仕組みになっていくような場を、ここの皆さんとディスカッションしていきながら作っていきたいと述べました。

 

この後、質疑応答があって、今日話を聞いた中で、自分は2030に向けて、子供達の教育に対してどんな役割を果たしていきたいと思うか? そのことをそれぞれのグループで話し合い、その思いを付箋に書いていただき、SDGsカフェ#4は終了しました。

 

なお、ご参加された皆さんが書いてくださった付箋のメッセージは、今後の金沢SDGsの行動計画に結びつけ、そのヒントとして活用していきます。

 

絵本「ごっつぉをつくろう」動画版公開

世界農業遺産(GIAHS)「能登の里山里海」や地域の食文化の価値を次世代に伝えるため、能登地域GIAHS 推進協議会、国連大学IAS-OUIKでは地域の有識者とともに絵本「ごっつぉをつくろう」を2018年に作成しました。能登での暮らしや季節ごとの行事、食文化について楽しく学べる、大人にとっても興味深いストーリーとなっています。

2019年にはこの絵本をテーマに、石川県輪島市の三井小学校にて環境教育「SDGs三井のごっつぉproject」が通年で行われました。生徒たちは自分たちで実際に食材を収穫し、「ごっつぉ(ごちそう)」を作りながら地域の環境や伝統、そして持続可能な未来について学びました。

今後、このような教育活動をより活発に行っていくべく、今年度OUIKでは絵本の動画版を制作しました。この動画制作では祭囃子の音や、方言、鳥の鳴き声なども忠実に再現するため、専門家の皆様、地域の皆様にもご協力いただきました。さらに英語版の完成に伴い、今後はフィリピンのイフガオの世界農業遺産 (Ifugao Rice Terrace GIAHS) の地域の小学校と能登地域の小学校間の交流活動をはじめ、このストーリーを活用した国際的な学びの場を展開していく予定です。

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学校などの教育現場のみならず、ご家庭でも楽しんでいただけたらと思います。

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