SDGs未来都市にも選定されている石川県珠洲市では、2018年に能登SDGsラボが開設され、2020年度から市内全小学校を対象とした、SDGs教育プログラムを開始しました。世界農業遺産(GIAHS)「能登の里山里海」に関する教育プロジェクトを進めている国連大学OUIKは、このSDGs教育プログラムと連携して、子供たちの国際的な学びや交流を深めるオンラインプログラムを企画しました。
今回交流を行ったのは、珠洲市上戸小学校と、フィリピン、イフガオ州にあるキアガン中央小学校です。
能登とフィリピンのイフガオは双方が世界農業遺産(GIAHS)に認定されており、里山マイスタープログラムの活動を通じて長年交流を深めてきたという背景があります。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で学校がお休みになったり、外出が自粛されたり、地域内であっても人と人の交流が減っている状況が能登地域でもイフガオでもみられました。そのような中、遠く離れた地域の子供達同士がオンラインで交流し、お互いの国や地域、文化や生活様式の違いについて学び合うことは、お互いの理解を深めるのみならず、自分たちの地域についても改めて学び、伝える機会となり、これは子供たちのアイデンティティーの形成やコミュニケーション能力の上向にもつながる活動といえます。
今回の交流プログラムは3回の交流からなり、それぞれ1) 自己紹介と地域の紹介 、2)地域の食文化の紹介、 3)文化活動の紹介 というプログラムを組みました。
10月27日に行われた第1回目、「自己紹介と地域の紹介」では上戸小学校の5、6年生11人とイフガオのキアガン中央小学校の5年生6人が、お互いの地域について紹介しました。
はじめに上戸小学校の児童がひとりずつ、名前や年齢、好きなことなどを紹介していきました。この日のために英語での自己紹介を練習し、わかりやすいように手書きのパネルも作ってくれました。皆さん、少し恥ずかしそうにしながらもスムーズに自己紹介を行いました。
次にイフガオの皆さんが自己紹介を行なってくれました。フィリピンの学校教育は基本的に英語で行われていることもあり、小学生の皆さんもとても流暢に英語を話します。今回はOUIKの小山と富田が通訳しながら進行しました。「バスケットボールが好きです」「ゲームが好きです」など、住んでいる国や言葉は違えど、児童たちの興味にはたくさんの共通点があったようです。
次にお互いの地域についての紹介を行いました。まずは上戸小学校から、3つのチームに分かれ、それぞれ「石川県について」「珠洲市について」「上戸小学校について」の紹介を行いました。たくさんの写真や絵を使いながら、兼六園などの石川県の観光名所から輪島市の棚田、珠洲市の見附島、地域の祭りの文化など、詳しい説明を行いました。最後の「上戸小学校について」の紹介では、日本特有のランドセルを紹介したり、制服や校舎の3階からの眺めを写真を使って紹介し、自分たちの学校や地域を身近に感じてもらえるような工夫が多くみられました。イフガオからの紹介では世界遺産、そして世界農業遺産(GIAHS)にも登録されているイフガオの棚田の紹介から、地域の歴史的な建物や文化の紹介が行われました。
次は質問コーナーです。イフガオの児童からまず「どうして上戸小学校は全校児童が24人しかいないのですか?」という質問が飛び出しました。イフガオのキアガン中央小学校は全体で400人近い児童がいるようで、24人しがいない小規模な小学校はイフガオの皆さんにとってはとても不思議だったようです。上戸小学校からの答えは「このあたりに住んでいる人が少ないから学校の児童も少ないです」ということでした。
さらに「好きな科目はなんですか?何科目勉強していますか?」「好きなスポーツはなんですか?」など、お互いのことを知るためにたくさんの質問を交わしました。上戸小学校からの「給食はありますか?私たちの今日の給食はカレーです」という質問にイフガオは「ランチはお弁当を持ってきます」と答える場面もありました。
最後に今日の交流の機会に感謝の気持ちを込めて、それぞれの言語で歌を歌いました。上戸小学校からは「世界中の子供たち」を、イフガオの皆さんは現地の言葉で伝統的な「さよならの歌」を歌ってくれました。
最後に「Thank you, see you again!」と手を振り、第一回目の交流は幕を閉じました。
上戸小学校もイフガオのキアガン中央小学校もオンラインでのこのような交流は初めてということもあり、前半は緊張した面持ちの児童が目立ちましたが、自己紹介や地域の紹介でお互いの理解が深まるにつれ、皆さんから「もっと知りたい」「もっと知ってもらいたい」という意欲が湧いてきたように見受けられました。
次回の交流ではお互いの地域の「食」について紹介します。珠洲とイフガオの食文化にはどのような違いや共通点があるのでしょうか。児童たちも興味津々のようです。