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【開催報告】 SDGsカフェ#2 「Civic Techと誰も取り残さない情報アクセス」

2019年3月23日に、金沢市、金沢青年会議所(JC金沢)、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)の三者でSDGsを推進していく宣言を行いました。

*金沢SDGsの詳細は、当サイトの【開催報告】SDGsダイアローグシリーズ最終回・総括シンポジウム「地域の未来をSDGsでカタチにしよう」をご覧ください。

これを受け、4月からSDGsの勉強会やセミナーなどを開催しています。名づけて「SDGsカフェ」。

2030年の金沢を決めるのは市民であり、いろいろな人に参加していただき、2030年の金沢を考えてもらう(IMAGINEしてもらう)場です。

カフェということで、飲み物やお菓子も用意され、緩やかな雰囲気のなか、誰でも気軽に参加でき、コーヒーなどを飲みながら、登壇者と来場者が気軽に意見を交わせるリアルコミュニケーションの場です。

その第2回目となる今回は、先日行われた統一地方選挙で、候補者の政策などをもっとわかりやすく、簡単に知ることはできないかということを発端に、誰も取り残さない情報アクセスについて、話し合ってみました。

 

統一地方選挙で情報のあり方を考えた

まず、2030年の金沢をIMAGINEする人(話題提供する人)として、認定NPO法人フローレンスの須田麻佑子さんに登壇していただきました。

須田さんは、先日の金沢市議選に立候補した候補者本人が発信しているSNSやブログなどをリストアップして「市議会議員候補者のHP・SNSまとめ」という記事をブログにアップしました。

その記事は、候補者の詳しい情報が届かず、「誰に投票したらいいのだろうか?」と、モヤモヤしていた有権者の間で、「これは助かる!」と評判となりました。

 

現状に愕然としてしまった

須田さんは、候補者43人分もあるから、まとめるのには相当時間がかかると覚悟して取り掛かりましたが、作業は短時間で終わったそうです。

HPやSNSを何もしていない、あるいは、あっても前回の当選のお礼で更新が終わっている人・・・など、機能していない候補者が多く、その状況に驚いたそうです。

「これを許しているのは市民なのではないか?」と須田さんは言い、自分たちの意思を反映しているか否かを、投票によって意思表示をするのが選挙なのに、それを判断する情報が得られない(得られにくい)ことは問題だと述べました。

情報アクセビリティー(利用しやすさ)に問題があるから、「争点がわからない」、「自分たちには関係ない」、「自分の1票で変わる気がしない」などと、いろいろな感情が重なって、それが投票率の低さにつながっているのではないかとも。

 

2030年の金沢のIMAGINE(金沢はどうあってほしいか)とは?

「テクノロジー(情報技術)の恩恵をすべての市民が受けられる」、「テクノロジーからアウトリーチ(出前・出張サービス)の仕組みづくりができる」、「社会課題解決のための資源を供給しあう」、そんな2030年の様子を、ご自身が取り組まれている子育ての現場を例にとって紹介しました。

そして、最近では、市民の声を集めるアプリも登場(*)しているので、そのようなツールも使って市民の声を集め、それを元に政策が作られる街の姿をIMAGINEしてくださいました。

PoliPoliIssuesなど

 

このIMAGINEを実現するためにできることは?

その答えをいろいろと持っているエキスパートの福島健一郎さんと、堤敦朗さんからもプレゼンテーションを行っていただきました。

まず、福島さんからは、テクノロジーを使い、選挙などに関する情報のアクセスの方法として、現状どのようなものがあるのか、国内外の具体的な事例を紹介してくださいました。

意外と知られていませんが、実は日本でもいろいろあるそうです。

代表的な2例をここでも紹介します。

  • ラポールジャパン http://rapportjapan.info 政治資金がどう使われているかを可視化しているサイト。民主主義のコストを可視化
  • 国会議員白書 https://kokkai.sugawarataku.net 国会議員が、議会でどんな発言をしたかがまとめられている

 

使い勝手はさておき、一人一人の国会議員が普段どんな政治活動をしているのかは、このようにその気になればネット上で見られる環境になってきています。

オープンデータとして議事録が公開されていれば、地方でもこれを実現することは可能だと言います。

今後、これを発展させるためにはどうすればいいのでしょうか?

「資金をみんなで出し合ってでも、政治をわかりやすくするツールを作っていくことが必要なのかも」と福島さんは述べました。

ネットやSNSなどを活用すれば、若者たちの選挙離れにも歯止めがかけられるかも知れません。そのためにも、テクノロジーを使って、政治を分かりやすく見せることは、ますます重要となってくるでしょう。

 

全ての人に情報を届けるということ

堤 敦朗 さん
金沢大学准教授、EMPOWER Project KANAZAWA主宰。世界保健機関 (WHO)技術専門官などを歴任

金沢という46万人の都市では、情報を共有するためにテクノロジーが絶対必要。しかしそれを高齢者にいきなりやらせることは無理。また、目の見えない人や耳が聞こえない人もいらっしゃいます。そういう方のことも考えた情報アクセビリティーについて、堤さんからお話いただきました。

今まで、災害が起こればベーシック・ヒューマン・ニーズさえ満たされれば、あとは我慢するという範疇でした。しかし今は、生き方とか人間の尊厳とか、人権的側面からも考えなくてはいけません。アクセビリティーというのも非常に重要な人権です。

東日本大震災で障害のある方の死亡率は2倍、多いところで4倍だったとも。何故ならば、情報が行き届かなかったからでした。

情報というのは出せばみんながアクセスできるわけではありません。とりあえずホームページに載せて情報を出したことで満足してしまうことも多くないでしょうか。

「情報を欲している人がいかにそこに簡単にアクセスできるのか? その配慮をしなければ情報を出す価値はほとんどない」と、堤さんは言います。

アクセビリティーというのは、そこにあればいいといのではなく、必要な人がそこにアクセスできるルートを確保し、その方法を明示していなければなりません。

誰も取り残さないためには、誰もがその情報にアクセスできるようにしなければいけないということですね。

 

2030年への熱い思いを語り合う

3人のプレゼンテーションが終了し、後半は来場の皆さんも巻き込んで、活発な意見交換が始まりました。

障害者の政策などを考える会議なのに、日本では障害者が参加してその情報を得る(手話の同時通訳などが用意されていない)ことがよくあるとか、テクノロジーは特別なものではなくなりつつあるが、自分ごととして考えようとする人はまだ少ないとか、地方自治体のオープンデータ化はなぜ進まないのかなど、今回のテーマに関連することの質疑応答や意見交換が、積極的に行われました。

最後に、来場された皆さんが今日インプットできたことや、アウトプットしたいこと、さらには、テクノロジーを使ってやりたいと思っていることや、あったらいいなと思うことを、2030年をちょっとだけ意識しつつ、それぞれのテーブルに置かれたふせんに書いてもらいました。

さまざまな意見をいただきましたが、2030年に向けて、このままではいけないということは、ほとんどの皆さんが感じたことのようです。

来場者の意見をまとめたものは、下記の「IMAGINE KANAZAWA 2030」Facebookページで見ることができます。
https://www.facebook.com/kanazawa.sdgs/

それにしても皆さん、本日のテーマに大いには刺激を受けたようで、書き終わった後も、あちらこちらで盛んに議論を続けていました。

このように、どなたでも気軽にご参加いただけるカフェです。
今後、さまざまなテーマを扱う予定ですので、まずは興味のあるテーマから、ご来場をお待ちしています。

【開催報告】国連大学ブース in MISIAの里山ミュージアム

こんにちはOUIKインターンの向です。

私たちは、6月9日に津幡町にある石川県森林公園内のMISIAの森で開かれた「MISIAの里山ミュージアム」というイベントに参加しました。OUIKは過去にも2回、このイベントに出させていただいています。今回はその活動報告をさせて頂きます。

 

MISIAの里山ミュージアムとは?

2010年に国連から生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の名誉大使に歌手のMISIAさんが任命されました。その際に、MISIAさんが「自然豊かな石川で生物多様性の大切さを発信したい」と提唱されたことにより、MISIAの森ができました。

この森で、アートと音楽を通して森づくりを学んでもらうイベントがこの「MISIAの里山ミュージアム」です。

 

「森から食を作って、里山を元気にしよう!」

実は、毎年5月22日は国連が定めた「国際生物多様性の日」というもので、毎年テーマが決まっています。今年のテーマが「食」であるため、私たちは、このイベントで、皆様に食と里山のつながりについて学んでもらうことにしました。また、OUIKはSDGs啓発活動を積極的に行っていますので、我々のブースにSDGsも飾りました。

人が手を入れることで森は元気になる

天候が思わしくなく、皆様に来ていただけるか不安でしたが、たくさんの方々に来ていただけました。最初は里山の仕組みの説明を行いました。里山とは人里に隣接し、人が手を入れることで生態系が成り立っている山の事を指します。伐採という行為によって森に光が入り、多様な動植物が存在する豊かな森になります。また、伐採で手に入れた幹や落ち葉などを上手く利用すると、私たちの生活が豊かになります。しかし、近年、人手不足や高齢化により森林管理が満足に行えていないことで、生物多様性が失われている問題があります。今回は、これらの説明を通して、大人だけでなく子供たちにも「なにもしない、そのままの森よりも、人間がちゃんと手を入れた森の方が実は元気な森なんだ」ということを伝え、少しでも森に関して興味を持っていただけたらと考えています。

食と里山のつながり

次は森で作れる食材の一つであるシイタケを例に、伐採で手に入れた幹の活用法を説明しました。伐採した木の幹にシイタケを植菌して、数ヶ月伏せて、ようやくシイタケが発生します。シイタケが発生するまでに1年~2年かかってしまいますが、こうしてシイタケを作ることで、伐採を行う需要が高まり、里山が元気になっていきます。ここで、私たちが伝えたい、「食と里山のつながり」を皆様にも伝わったのではと思います。

自分の手で森から食を作る

最後は、森から食を作ることを身近に感じてもらうために、植菌体験を行いました。シイタケの菌が付いているコマを、原木に開いている穴に木槌で打ち込んでもらうという内容です。意外にも子供たちから「やったことがある」という声がたくさん上がり、手慣れた様子で植菌していました。また、植菌した原木を持ち帰り可にしたところ、多くの方々が持ち帰ってくださいました。実際に自分でシイタケを育てることで、食と里山のつながりをより深く理解できますし、大人も子供も一緒に森について考える、いいきっかけになるのではないでしょうか。

今後とも、皆様にいろいろな活動を通してSDGsだけでなく、里山里海についても知っていただき、共に考える機会を作っていきたいと思います。

 

OUIKインターン 向

珠洲市小学校SDGs学習「ゴール14:海の豊かさを守ろう」オンラインレクチャー

今年度から、珠洲市の全ての小学校でスタートしたSDGs学習プログラムの一環として、2020年9月3日(木)に能登SDGsラボが「ゴール14:海の豊かさを守ろう」に取組む正院小学校で導入授業を実施し、国連大学OUIKのイヴォーン・ユー研究員がゲストスピーカーとしてオンライン講義を提供しました。

対象:正院小学校 5,6年生

日時:2020年9月3日(木)13:45~15:25

講義が始まる前から始めてのオンライン授業に大喜びの生徒たち。

イヴォーン研究員に手を振ったり、質問をしたり。イヴォーン研究員も嬉しそうに答えます。

能登SDGsラボのスタッフたちからSDGs全体の話を聞いた後、イヴォーン研究員から「SDG14から考える能登の里山里海を元気にするために私たちができること」と題して、オンライン講義が始まりました。

すでに海岸でごみ拾いなどの活動をスタートさせていた正院小学校の生徒たちは、海の問題や能登の里海に関するより詳しい話を真剣に聞いています。

里海は「海のゆりかご」としてとても大切な場所であること、海の問題の多くは人が暮らしている陸によるものであるということ、一度海に流れ出てしまったゴミは何十年、何百年も分解されずに漂い続けるということなど、自分達の暮らしと海のつながりについて、学んでいきます。

イヴォーン研究員が投げかける質問にもさっと手が挙がります。

レクチャーの最後には、能登の里山里海を元気にするために自分達ができることについて、具体例を用いて説明してもらいました。

世界レベルの大きな問題にも、自分たちの身の回りで取り組めることが色々あるということに気付くことができた様子。

最後に担任の先生から感想を言える人は発表するように促されると、全ての生徒が一人ずつ感想や今後取り組みたい事などを発表してくれました。

「僕たちが目指している『海の豊かさを守ろう』のゴールについてイヴォーンさんから大切なことを聞けました。その話を聞いて、僕たちもできることがないかと考えることができたので良かったです。」「自分でできることを沢山しようと思いました。」など、素直で前向きな感想を聞き、この生徒たちが大人になるSDGsゴールの目標年2030年にはもっともっと明るい未来が待っているように、今の大人達も全力でSDGsに取組まなくては、と感じました。

 

さて、この導入授業を受けて、正院小学校の生徒たちの取組はどのように発展していくのでしょうか?今後の活動がとても楽しみです。

 

企画・実行:能登SDGsラボ

協力:国連大学OUIK

執筆:国連大学OUIK

「第1回IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議」開催

2019年3月、国連大学OUIK、金沢市、金沢青年会議所の三者が協力し、持続可能な金沢をパートナーシップで実現するプロジェクト「IMAGINE KANAZAWA 2030」が発動しました。その一環として行われてきたSDGsミーティングでは、多様なステークホルダーが立場や世代を超えて集まり、金沢のあるべき姿を思い描き、アイデアを出し合いながら「金沢ミライシナリオ」の制作にいたりました。

2020年6月29日、SDGsの達成に向けて、この「金沢ミライシナリオ」を通して様々な主体が連携し実践すべく、この推進会議が設置されました。産業、教育、行政、金融、市民団体など各分野の方々をメンバーに迎え、意見を出し合い、協力体制を築きました。

会長として金沢市長山野委員、副会長として金沢商工会議所理事長、鶴山委員と国連大学OUIK所長、渡辺委員が選出され、監事としては金沢青年会議所監事、小谷内委員と金沢市会計課長、徳田委員が選任されました。

さらに金沢青年会議所、国連大学OUIK、コード・フォー・カナザワの三者より、これまでの取組報告が行われました。

最後の意見交換会では今後の活動に向けたアドバイスや様々なアイデアが交換され、立場や世代を超えたコミュニケーションの場となりました。

会議の詳細や発表内容は以下のYouTubeビデオからもご視聴ただけます。

・「IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ」募集中

SDGsを通して地域の課題解決を一緒に進めていくパートナーを募集しています。これまでなかなか解決できなかった課題も様々な立場の人や企業が集まり、異なる強みを持つプレイヤー同士が連携することで具体的なアプローチを指すことができるかもしれません。興味がある方はIMAGINE KANAZAWA 2030事務局までご連絡ください。

【開催報告】 SDGsカフェ#3 「今、求められる教育−映画『Most Likely to Succeed』 上映会とワークショップ−」

今年4月から始まりました「SDGsカフェ」。
さまざまな方に参加していただき、コーヒーでも飲みながら、2030年の金沢を考えてもらおうというものです。
その第3回では、「今、求められる教育」をテーマに、学校教育を問い直すキュメンタリー映画『Most Likely to Succeed』を鑑賞し、会場の皆さんと対話をしました。

未来の学び方について考えさせてくれる映画

まずは国連大学 サステイナビリティ高等研究所 いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)事務局長の永井から、SDGsカフェの趣旨説明と、今回、2030年の金沢をIMAGINEしてくださる藤岡慎二さん(北陸大学経済経営学部教授、地域連携センター長)の紹介がありました。

さて、上映する映画に出てくるHigh Tech Highというチャータースクール(特定の目的をもって設立される学校)について簡単にご紹介。
この学校は2010年の開校した米国のカリフォルニア州にある公立校で、小学校、中学校、高校があります。
学んだことはテストではなく文化祭で評価され、詰め込み式の受験偏重型教育とは違い、学生が主体的に深く学び、失敗や成功を通じて人間的にも成長できるそうです。

未来型教育を研究・実践しているHigh Tech Highの21世紀型の授業スタイルの実際を、この映画は克明にルポしています。

◎映画の詳しい情報は下記のサイトをご覧ください。
 FUTUREEDU TOKYO

世の中は変わっても教育は120年以上変わっていない

米国の教育カリキュラムは、大量生産を推し進めていこうとした1892年に制定されたもの。GDPが伸びれば、国民所得も伸びた20世紀にはマッチしたものでしたが、1990年代後半からの急速な技術の進歩により、多くの仕事が奪われ、もはや大学を卒業したら安定した職に就けるという時代ではなくなりました。

世界の経済が激変した中で学校教育の改革は遅れています。これは日本に似たような状況と言えるでしょう。

この先、「より創造力の高い仕事だけが生き残っていく時代となる」、そう考えると、今の教育システムで十分なのか?という疑問が生じてくるでしょう。
その答えを導くヒントがこの映画の中にはたくさんありそうです。

映画が媒体となって、日本の教育の現状を考え合う

この映画を観ると、今までの学校教育の概念とのギャップを感じて、疑問や不安、あるいは気づきや確信など、さまざまな思いが浮かんできます。

映画を観終わってすぐ、そんな熱い想いを隣の人と語り合い、そしてティーブレイクを挟んで、今度は4〜5人でグループとなり、ワークショップが始まりました。

この映画は、観て終わりではなく、当事者である学生やその親、教師をはじめ、さまざまな立場の人が意見を交えあうことが重要なのです。

藤岡さんからは、「これはアメリカの学校の話であり、急いで日本で取り入れるのも変な話。日本には日本のいいもの(keep)もあれば、問題(problem)もある。そして取り込むべきと思うこと(try)もある。それをみんなで考えるワークショップにしたい」と述べ、一人ひとりが思うことを付箋に書き、keep、problem、tryと3分割された模造紙に貼っていくことになりました。

今回、さまざまな世代が集まり、いろいろな意見が出ましたが、「keep」には礼儀正しさなど日本人らしさに関係する意見が多く、また「problem」では、子どもの個性を伸ばせていないなど、いまの教育が抱えている問題とリンクした意見が多く見受けられました。

 

日本の地方は世界の“課題最先端地”。ここが変われば世界も変えられる

このワークショップをファシリテートする藤岡さんは、教育改革による地域創生で数々の実績をお持ちの方。
高校魅力化プロジェクト」のきっかけとなった、隠岐島前高校が起こした奇跡の仕掛け人でもあります。その一つの高校から始まったことが、今では全国の地域に広がっているそうです(石川県でも「能登高校魅力化プロジェクト」が始まっています)。

藤岡さんによれば、少子高齢化など、日本は世界の「課題先進国」であり、地方はさらにその先を進んでいる最先端地だと言います。
そんな地方で生活や仕事をしている人たちの意見を高校生たちが聞き、そして一緒に挑戦していけるプロジェクト型学習ができたら、「それはもう、間違いなく世界最先端の教育」だと強調します。

いまの学校教育って・・・。批判するだけでは何も変わらない

このように、日本でもさまざまな教育改革が起こり始めていますが、その全てに当てはまる共通項があるそうです。
それは、「学校の先生に全て授業を丸投げしないこと」。
親や地域の人たちが、みんなで相談しながらみんなで育てているということです。
「今の学校は・・・」と、ただ批判するだけでは、改革は始まりません。周りの人たちがどう参画していけるかということがキーとなります。

2030年の社会をIMAGINEしてみたときに、今の教育制度で大人になった子ども達が、その社会でどんな活躍をしているだろうか? まずは一人ひとりがその姿を想像してみることから、いろいろなことが始まりそうですね。

石川県金沢市が「SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業」に選定されました!

2020年7月17日、金沢市は「2020年度SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定されました。テーマは「市民生活と調和した持続可能な観光の振興 ~「責任ある観光」により市民と観光客、双方の「しあわせ」を実現するまち金沢~」です。これは観光客が増加する中、自然・歴史・文化に基づく生物文化多様性をベースとし、市民・来街者の双方がまちの魅力を共創し、 持続可能なまちを実現すること目標としています。

日本では2008年、持続可能な経済社会実現に向けて「環境モデル都市」と「環境未来都市」を選定する制度が採用されました。今回金沢市が選定された「SDGs未来都市」は、「環境モデル都市」と「環境未来都市」に加えて、地方創生を一層促進することを目的として、SDGs達成に向けた取り組みを提案するものです。2018年度から各年度最大30都市が選定されており、石川県では珠洲市(2018年度)、白山市(2018年度)、小松市(2019年度)、今年新たに加賀市、能美市、金沢市が選定されました。(自治体SDGsモデル事業としては金沢市が県内初)これらはSDGs17の目標と紐づけられた評価軸で選定されていることが特徴で、目標達成に向けた積極的な事業展開が期待されています。

 

国連大学IAS-OUIKの役割

国連大学OUIKはSDGsの達成に向け金沢市との協働を進めてきました。「2018年のSDGsいしかわ・かなざわダイアローグシリーズ」をはじめ、2019年3月に金沢市、金沢青年会議所、国連大学での三者SDGs共同宣言を行なってからは金沢SDGsプロジェクトを「IMAGINE KANAZAWA 2030」と名づけ、協働を本格始動しました。SDGsや地域の課題への理解を深めるために「SDGsカフェ」という地域の皆さんが気軽に金沢の未来や地域課題について対話できるコミュニケーションの場を提供したり、SDGsミーティングでは地域の様々なステークホルダーの皆さんと協力し、アイデアを出し合いながら2030年の金沢のありたい姿を示す「金沢ミライシナリオ」を作成しました。

 

今後の展開

今後もOUIKは3者の協力体制をプラットフォームとして、SDGsの啓発・周知公報、共創するコミュニティの形成など、様々な場面で協働を進めていきます。特にモデル事業のうち、重要な要素である、魅力的なSDGsツアーの開発において、OUIKが長年の研究で培ってきた「日本庭園と金沢の持続可能性」を考えるワークショップ等の実践経験や、能登GIAHS(世界農業遺産)・白山ユネスコエコパークに関する研究成果を活かし、金沢のグリーンインフラを活かしたツーリズムのあり方や、広域のSDGsツーリズムのあり方に学術的な助言する役割を担っていきます。

『SDGs三井のごっつぉproject』最終回 田の神様祭り

奥能登にはアエノコトと呼ばれる祭りがあります。「アエ=饗」の「コト=祭り」という意味で一年のお米の収穫を感謝して、毎年12月5日に田の神様を家へお迎えします。神様を風呂やご馳走でおもてなしをして春まで休んでいただきます。翌年2月9日には同じようにおもてなしをして豊作を祈願して田んぼへ送り出す行事です。

三井町ではアエノ͡コトではなく、古くから田の神様祭りと呼びそれぞれに家でお祭りされていましたが、近年過疎高齢化などで稲作に携わる人も減り執り行う家も減ってきました。そこで三井地区の区長会を中心に田の神様祭りを次世代に継承するために保存会を作り、三井町漆原にある茅葺き民家旧福島邸で公民館行事として行われています。

毎年三井小学校の子供達も太鼓や踊りで田の神様祭りに参加しています。この一年間は「SDGs三井のごっつぉプロジェクト」でご馳走の材料集めを体験してきたので、4,5,6年生12名が参加して一緒にお供えさせていただけることになりました。

まずは放課後バスで会場に到着しました。曇り空に雨交じりの能登の冬らしい天気となりました。山形公民館長さんはいつもと違って裃姿です。田の神様をお迎えするので正装されているのです。ゴテと呼ばれ一家の家長の役割を果たされます。

みんなで田んぼに向かいます。田の神様がいらっしゃるところには榊が建てられています。蓑や菅笠の衣装の集落の方もいます。昔は今のようなレインコートやビニールの傘がないので稲わらやスゲの草などで編んだ雨具です。

ゴテの手に持たれる松と栗の枝は「依り代」と呼ばれます。神様がそこへ依りついてお運びするためのもので、神様は田んぼの端で「待ってると来る」から転じて「松と栗」を掲げています。

田の神様は稲穂で目をついて失明されたということなので、家へご案内する道中も「段差がございます」や「右へ曲がります」など声掛けをします。ゴテはあたかも田の神様がそこにいるかのように振る舞うので不思議な光景に見えます。

家にたどり着くと「田の神様がおかえりやぞ!お迎えせ−よ!」と家のものに声をかけます。茅葺き屋根の玄関から囲炉裏のそばに入られます。寒い外からいらしたのでまずは暖かい甘酒を差し上げます。神様の大好物だそうです。

続いてゴテはお風呂の湯加減を見て、田の神様をお風呂へご案内します。恭しく榊をお風呂のお湯につけている様子も面白いですね。

 

お風呂で暖まられたら次はご馳走です。座敷には田の神様ご夫婦二人分の御膳が設えられています。二股の大根、御膳には一升枡にあふれんばかりの赤飯、煮しめにはわらびゼンマイ、大根、人参、こんにゃく、油揚げ。あいまぜという青大豆の打ち豆と大根や人参を炒り付けたおかずもあります。冷蔵庫もなく肉や魚が今のように手に入らなかった昔は打ち豆は貴重なタンパク源でした。そして立派な尾頭付きの鯛、大きなおはぎ。お汁に漬物。稲作は力仕事で大変なのでたくさん食べてくださいという意味が込められています。

輪島塗の御膳は赤く美しくご馳走が映えます。大切にしまってあったものを一つ一つ洗ってきれいにして盛り付けてあります。器の裏には家ごとの屋号を示す印が書かれています。冠婚葬祭などの時はお互い貸し借りするので目印になります。太いお箸は栗の木で、栗は一ヶ月に一寸成長するので一年間で一尺二寸(36.36cm)の長さにします。

お米を選別するときに使う箕という道具には畑で採れた野菜が盛られます。白菜人参カボチャなど色とりどりです。沢山実って嬉しい気持ちになりますね。

ゴテが食べ物を一つ一つ説明します。

子供達も田の神様のご馳走がデザインされた手ぬぐいの上に一人一人がゴテになった気分で自分のご馳走をのせました。

前列の6年生5人が代表してご挨拶をします。

「田の神様、これは5月にまるやまで集めたわらびの塩漬けでございます。」

枯れたススキの間から顔をのぞかせたわらび。赤ちゃんの手のような形にほやほやした毛が生えていましたね。集落のばあちゃんたちに習ってわらで縛って樽に入れてから半年ほどでぺったんこになりました。クンクン匂いを嗅いで臭いと言っている子もいました。

「田の神様、これは7月に珠洲で作ったあごだしでございます。」

羽の生えた魚を初めてみたり触ったり。包丁を手にさばいて串を打って炭火で焼きました。包丁を叩いて作る鍛冶屋さん、穴を掘って珪藻土でコンロを作る工場にも見学に行きました。あごだしはいい出汁が出るので煮しめも美味しくなるでしょう。

「田の神様、これは10月にまるやまで拾って干した勝栗でございます。」

しば栗ひろいはみんな必死で頑張りましたね。生のままかじっても甘かったですね。その場で茹でて針と糸でネックレスみたいに糸を通しました。蛇の皮の鱗を数えたり、絶滅危惧種のゲンゴロウやミズオオバコという花も見られましたね。

みんなで「どうもありがとうございました!」

それから権現太鼓の演奏をみんなで披露しました。

田の神様も今年はきっと三井小学校の子供達の用意したごっつぉを喜んで召し上がったことでしょう。神様だけでなく、来賓の方々や保存会の方がたも子供達が来てくれて賑やかで嬉しそうでした。

田の神様のお食事が終わられたら春まで神棚に上がって休まれます。

上座には大きな米俵が横たわっています。中には籾が入っています。籾とはみんながいつも食べているお米に殻がついたものです。生きているタネです。来年またこのタネを蒔いて米作りの一年が始まるのです。この籾こそ田の神様。

神様が休まれている間、家族は喧嘩をしてはいけないそうです。みんな仲良く心を合わせて、田畑を耕し、暮らしの糧を得ていかなければ生きていけないような能登の自然の厳しさが背景にあったのかもしれません。

今この様な家族やコミュニティと共にある農業が環境や地域づくりでも生き物やなど自然自然資源や食や伝統文化なども守れる重要な形だと再評価されてもいます。(家族農業の10年 )

 

いつでも、なんでもお金で買える今の時代ですが、自然の恵みを得る喜び、そこから自分の手で作る楽しさ、それを選ぶ選択肢が三井のような里山にはたくさん残っています。小学生のような感受性豊かな時期に五感で、地域の自然や土地に根ざした知恵に触れることができるように大人たちが環境を整えることが大事です。「三井のごっつぉ」を食べて世界へ飛び出し、誇りを持って自分を表現できるような子供達を私たちは送り出したいと願っています。

報告:萩のゆき(まるやま組)

国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」を利用した持続可能な未来へ向けての教育活動をサポートしています。一言で「能登の里山里海」と言っても地域によって異なる様々な伝統文化がありますが、三井小学校のような活動が能登の他の地域でも行われ、里海、里山間で交流が生まれるようなプラットフォーム作りを進めていきたいと思います。さて、次回はどんな「ごっつぉ」を作るのでしょうか?「SDGs三井のごっつぉproject」は通年のプログラムとして続きます。

企画・実行:萩野アトリエ/まるやま組 萩のゆき、萩野紀一郎(富山大学 芸術文化学部 准教授)協力:国連大学OUIK

『SDGs三井のごっつぉproject』第7回 

2019年5月に始まった「SDGs三井のごっつぉproject」では輪島市三井を中心に能登の「ごっつぉ(ごちそう)」を巡るフィールド学習を行ってきました。今回、11月26日に行われた第7回目はまとめの回として世界の食に関する問題を学んだり、いろいろな国の食を味わったり、春にみんなで作ったワラビの塩漬けの塩抜き作業をする回になりました。

はじめに「今、世界が面している食に関する問題」についてSDGsの視点で国連大学OUIKの富田から紹介がありました。「17個あるSDGsのゴールのうち、「食」に関係してくるゴールはどれかな?」という問いかけに「2番(飢餓をゼロに)食べ物のマークあるけど飢餓ってなんだろう?」「14(海の豊かさを守ろう)とか15(陸の豊かさを守ろう)も関係するね。魚も食べるし」「6(安全な水とトイレを世界中に)もじゃない?水飲むし、水ないと畑もできんし」「農業とかは16(気候変動に具体的な対策を)にも関係するんじゃない?」と、とてもたくさんの意見が出ました。生徒たちはSDGsを通してグローバルなスケールで物事を考えたり、ゴールと問題を関連付けることが出来るようになり、SDGsの理解をさらに深めているようでした。

次に日本に住んでいるとなかなか聞くことがない「飢餓問題」について国連WFPのハンガーマップを見ながら考えてみました。「アフリカが深刻」「日本は全然大丈夫だね」と生徒たちは自分たちのテーブルに置かれた地球儀を使いながら場所を確認していました。現在地球上では8億2,100万人、約9人に1人が「栄養不足」であるという調査結果が出ています。SDGsのゴール2でもある「飢餓をなくそう」は途上国特有の問題と捉えられがちです。しかし気候変動や先進国の経済活動が飢餓問題の要因となっていることもあり、先進国に住む私たちちも真剣に向き合うべき問題です。

更に関連した話題として食品ロスの問題や未来の農業にも目を向けてみました。テクノロジーが食品の流通や農業そのものを効率化する一方、2017年に国連は2019年~2028年を国連「家族農業の10年」と定め、食料生産おいて主要な農業形態である家族農園の更なる活性化を図っています。話を聞きながら「残さず食べてるよ!」「家でも畑しとるよ」と話す生徒たちもちらほら。皆さんなりに食品にまつわる問題に向き合っているようです。

次に世界の食卓を覗いてみました。「地球の食卓―世界24か国の家族のごはん」(著者=ピーター・メンツェル+フェイス・ダルージオ)に掲載されている、さまざまな国や地域の「ひと家族における1週間分の食料」の写真を見ながら、気づいたことを発表しました。「パンがたくさんある、パンが主食かな?」「野菜が多いけど肉が全然ない」「家族が多い!来ている服も全然日本と違う」など、たくさんの発見がありました。国や地域によって食料の種類や量、家族の雰囲気が様々で、見たことのない食材も沢山あったようです。私たちの食卓に乗っている食材も世界の他の地域に住む人にとっては不思議な食材なのかもしれません。

次に萩野さんより5月にみんなで作った「ワラビの塩漬け」の塩抜きについて教えてもらいました。山菜を茹でたり、塩抜きをするときは銅鍋を使うのが昔から伝わる知恵だそうですが、どうしてでしょう?萩野さんによると銅鍋を使うと銅イオンが葉緑素(クロロフィル)とくっつき、食材の変色を防げるそうです。不思議ですね!

しばらく使っていないと銅鍋には緑青(錆)がつきます。この授業ではは同じ銅で出来た10円玉を使って緑青取りを行ってみました。準備したのは酢と塩。これらを混ぜて磨くだけで綺麗な輝きを取り戻します。つやつやになった10円玉、日常生活にもいろいろな化学が隠れていて面白いですね。

綺麗に塩抜きできたこのワラビの塩漬けは、12月5日の「あえのこと」にて神様にお供えする予定です。

最後は「能登空港発 世界一周ごっつぉツアー」ということで鈴木さんのブルキナファソ料理「トー」、OUIKインターンのフェリックスさんのスイスの「ロシュティ(Rösti)」OUIK富田のイギリス/オーストラリア料理「ベジマイト」を食べるツアーを行いました。まずはブルキナファソの「トー」。これはヒエやトウモロコシなどの粉をお湯で練ったお餅のようなものに、ソースをかけて食べるもので、今回はトマトを使ったシチューのようなソースをかけました。現地ではとてもよく食べられている料理だそうです。次はスイスのジャガイモ料理、「ロシュティ」です。細く切ったジャガイモをプライパンで焼いたもので、ソーセージなどの付け合わせとして食べることが多いようです。見た目はお好み焼きに少し似ていますが表面がカリカリしてとてもおいしいです。今回はスイスの代表的なチーズの1つ、「グリュイエールチーズ」も試食しました。最後はイギリスやオーストラリアで親しまれている「ベジマイト」をトーストに塗ったものです。チョコレートみたいに見えますがしょっぱく、発酵した独特の臭いがあります。現地ではよく朝食などで食べられているそうです。

ブルキナファソの「トー」

スイスの「ロシュティ」

イギリス/オーストラリアの「ベジマイト」

はじめて食べる料理に生徒たちも大興奮です。ベジマイトは想像と全く違う味がしたらしく、かなりてこずっていたようでしたが、トーとロシュティに至ってはみんなおいしそうに食べていました。住んでいる地域や環境、文化が違うとそこで食べられている「ごっつぉ(ごちそう)」も多種多様です。最後にまるやま組の萩野さんは「今やいろいろな地域の料理がどこにいても食べられる時代となりましたが、自分たちが育った地域の「ごっつぉ」の味を忘れないでほしい」と話しました。

報告:国連大学OUIK

国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」を利用した持続可能な未来へ向けての教育活動をサポートしています。一言で「能登の里山里海」と言っても地域によって異なる様々な伝統文化がありますが、三井小学校のような活動が能登の他の地域でも行われ、里海、里山間で交流が生まれるようなプラットフォーム作りを進めていきたいと思います。さて、次回はどんな「ごっつぉ」を作るのでしょうか?「SDGs三井のごっつぉproject」は通年のプログラムとして続きます。

企画・実行:萩野アトリエ/まるやま組 萩のゆき、萩野紀一郎(富山大学 芸術文化学部 准教授)協力:国連大学OUIK

世界農業遺産国際貢献プログラムとの共同スタディツアー2019

第2回目となるいしかわ世界農業遺産国際貢献プログラムとの共同スタディツアーが開催されました。このプログラムは石川県が主に開発途上国を対象に、世界農業遺産認定の支援や、地域振興に向けた能力開発研修を実施することで、持続可能な発展に貢献するプログラムです。

第1回目の去年と同様に石川県、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)学術プログラム、国連大学いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)が能登をフィールドに共同企画・開催し、国連大学、金沢大学、名古屋大学、東北大学、東京農業大学の留学生からなる世界13か国総勢17名が3日間にわたり能登地方を訪問し、里山里海を活用した地域振興の取り組みを学びました。

1日目、最初の訪問先は輪島市で「土地に根ざしたくらし」をテーマに様々な活動を行う「まるやま組」です 

まるやま組の代表である萩野さんご夫婦は東京やアメリカでの暮らしを経て、ここ輪島に移住してきました。建築家である萩野紀一郎さんとデザイナーである萩のゆきさんは地域の人たちとつながりながら、里山での暮らしをテーマに一般の方を対象にしたワークショップや小学校との共同教育プログラムを開催しています。

 

地域に古くから残る伝統的な文化や農法を持続可能な形で次世代に伝えていくことが里山の生物文化多様性を守ることにつながると萩野さんは言います。

昼食をはさみ午後の訪問先「いしかわ農業ボランティア」の現場に向かいました。石川県では農村でのボランティア活動を希望する個人や企業、団体の方々を「農村役立ち隊」、ボランティアの受け入れを希望する集落を「受け入れ隊」として登録し、マッチングすることで協働活動を推進しています。 

この日は金沢市内から茅葺屋根に使うススキを刈り取るボランティアの方々が参加していました。「受け入れ隊」の西山 茂男さん(みい里山百笑の会にお話を聞いてみると「昔はこの集落全部の家が茅葺屋根だった、今年は自分の家の屋根の手入れ、来年はあなたの家の屋根、という風に自然に協力関係ができていたが、近年の人口減少で担い手が減った結果、茅葺屋根の建物も残り2件まで減ってしまった。このようにボランティアの人たちの助けも借りてどうにかこの2件を残して行きたい。」と語りました。 

能登地域には古くから「結(ゆい)の精神」と呼ばれる集落の住民総出で助け合い、協力し合う相互扶助の精神あり、茅葺屋根は減ってしまったものの現在も農作業や草むしりなどを協力して行うそうです。ポーランドからの留学生は「自分の家のことだけではなく、集落一帯をコミュニティーとしてとらえ、協力しあうことは素晴らしい文化だと思う。」とコメントしました。 

1日目、最後の訪問先は穴水町の牡蠣の養殖場です。 

七尾湾に面するこの地域では穏やかで栄養分も多い内海を利用し、牡蠣の養殖が盛んに行われています。12月から5月はマガキ、夏の間は岩ガキがこの地域から全国に出荷されます。 

牡蠣の養殖業を営む松村さんに養殖技術や近年のインターネットなどを利用した出荷システムについて学びました。その後、ボートに乗せてもらい実際の養殖現場を見学させていただきました。マガキは12月ごろから出荷が始まるため、まだ十分成長しきっていませんでしたが、初めて見る牡蠣の養殖現場に留学生たちは興味津々でした。 

穴水に移住し、漁業と養殖業を行う齊藤さんにもお話を伺いました。シーズンオフの時期でも安定した収入を得るために牡蠣の養殖業のみならず、それ以外の漁業行う傍ら、夫婦でレストランを経営しているそうです。「1年を通して忙しいが、自然豊かなこの土地で自分の好きなことを職業にできることを幸せに思う。」と語りました。目の前の海から上げた牡蠣をその場で食せるこのレストランを目当てに遠くから足を運ぶ方も近年増えているようです。 

 

 

2日目の朝は能登町の「木の駅プロジェクト」について学びました。 

日本では人口減少や高齢化による人材不足、そして木材の輸入自由化に伴う林業の衰退により、近年放置される森林が増えています。一度手を加えた森林はその後も管理が必要ですが間伐をはじめとする森林の整備はとても手間がかかる割に採算が取れないこともあり、森林の荒廃が目立つようになりました。手入れが行き届いていない森林は台風の被害を受けたり大雨等による土砂災害も起こしやすくなると共に二酸化炭素を吸収する働きも低下するそうです

このように問題が山積みとなっている森林整備の現状を地域経済の活性化と組み合わせた形で解決すべく立ち上がったのがこの「木の駅プロジェクト」です。これは山林所有者が間伐材や林地残材など、利用価値の少ない木材を「木の駅」に出荷すると地元の商店などで使える地域通貨と交換できるシステムです。これは全国に広がりつつあるプロジェクトで収集された木材はチップや薪などの用途として販売されるそうです。 

能登町には現在木の駅が2つあるそうですが、そのうちの1つを見に行きました。この日はたまたま木材が買い取られた直後だったのかほとんど見当たりませんでした。真ん中にポツリと置いてある郵便ポストの中には記録用紙が入っており、木材を持ってきた人が量や大きさ、そして連絡先を書き込む仕組みになっています。その後、管理者が用紙をチェックしたのち地域通貨と交換する案内が届くそうです。 

 

木の駅を後にした一行は、春蘭の里へ向かい、多田さんと共に里山にキノコ採りに行きました。 

手入れが行き届いている多田さんが所有する森林では春には山菜が、秋になるとたくさんのキノコが採れるそうです。食べられるものと食べられないものがあり、中には判断が難しいものも多くあります。多田さんにチェックしてもらいながら、たくさんのキノコが採れました。この後、春蘭の里に戻り、多田さんのご自宅で調理してお昼ご飯と一緒に食べることにしました。 

能登町に位置する春蘭の里は集落全体に農家民泊施設が40数件あり、里山のリアルな暮らしが体験できる場所です。多田さんの家の宿泊施設となっており、前日はイタリアからの観光客が宿泊して行ったそうです。 

多田さんの自宅での昼食は輪島塗の漆器でい頂く、里山の恵が詰まった野菜中心の食事です。収穫したキノコも美味しくいただきました。 

午後は輪島市に戻り、仁行和紙を訪問しました。ここで昔ながらの方法で和紙を作っている遠見和之さんに和紙の作り方や、ここで作られている和紙の特徴をお話頂きました。和紙の原材料となるのは楮(こうぞ)呼ばれる植物で近くの森林から採取しているそうです。工房の側にもたくさん自生していました。この皮の部分を剥いで蒸し、煮込み、細かくすることで和紙の元になる白い繊維質ができます。 

遠見さんにお手本を見せてもらい、学生の皆さんも紙漉を体験しました。簡単そうに見えて均等な厚さにするために素早く手を動かすのがとても難しいそうです。お好みで植物や貝殻を入れてオリジナル和紙を作ることも可能だそうです。 

遠見さんの代で3代目になるこの工房は遠見さんのご祖父様が中国で紙漉の技術を学んで来てから続いているようです。近年では壁紙や名刺、お酒などのラベルに使用するための注文も増えているそうです。

 

最終日の3日目の朝は輪島の朝市を見学しました。その後、能登空港の会議室で金沢大学能登学舎の伊藤浩二さん(特任准教授)により、能登里山里海SDGsマイスタープログラムについての講義を受けました。このプログラムは少子高齢化が進む能登地域にて里山里海の自然資源を活かし、能登の明日を担う「若手人材」を育てる人材開発プログラムです。修了生と連携し講義プログラムを組むため研究内容も様々で幅広い分野の知識を学べます。 

 

午後は学生たちの最終発表とディスカッションセッションが行われました。このアカデミックプログラムはUNUIASのTrans-disciplinary and Graduate Research Seminar(TGRS)という共同演習のコマとして実施しているものでUNU-IAS斎藤修教授と共に学生たちは「高齢化と人口減少」をメインテーマに掲げ、「教育」「持続可能な生業」「ツーリズム」といった3つのサブテーマに分かれ、3か月前から事前研究を行ってきました。

今回の発表では事前研究の内容に過去3日間で得られた能登里山地域に関する洞察と課題に対応するための戦略やアイデアを付け加えて発表しました。 交流人口を増やすためのアイデアや留学生や学生に能登で活動してもらうため大学との共同プログラム、更にエコツーリズムに関するプロモーション戦略など、たくさんの意見が出ました。地元との関係者の方々にもディスカッションに参加して頂き、3時間にわたり活発に意見交換を行いました。今後はこれらのアイデアを具体的に形にしていくために学生たちは研究を続けていく予定です。 

寺社庭園からはじまるグリーンインフラ Vol. 1

心蓮社の庭園は真ん中に池、そして背後に山が広がる「築山池泉式」の書院庭園です。ゆったりと時が流れる空間の中にいつまでも眺めていたい風景があります。卯辰山の麓に位置しており、その庭園は山と一体化していることからも庭園という人の手によって作られた空間にいながら、大自然の醍醐味を味わえる場所となっています。

今年2度目の清掃活動、そしてグリーンインフラに関するワークショップが心蓮社で行われました。

今回は金沢大学の丸谷耕太先生、そして北陸先端科学技術大学院大学の坂村圭先生のゼミとの合同企画です。特別ゲストとして龍谷大学から林珠乃先生をお招きし、基調講演も行っていただきました。

はじめに国連大学のファン研究員より、この庭園清掃ワークショップの活動についての説明がありました。金沢市に多く残されている庭園のほどんどが維持管理に関する問題を抱えており、このようなワークショップは新しい庭園管理のシステムとして大変重宝されているそうです。

これまでに約340名の方がこのワークショップに参加しており、徐々に市民の生活にも溶け込んできました。ファン研究員は清掃を始める前と後に参加者にアンケートを行っています。その結果、庭園を清掃することでポジティブな感情が増加し、ネガティブな感情が減少することがわかりました。このような清掃活動は庭園の持ち主だけではなく、参加者にもプラスに働くことがわかります。

スペインから10年前に来日し、京都で日本庭園について学んだファン研究員ですが「京都の庭園と金沢の庭園の違いは?」という質問に、「京都は枯山水が有名で落ち着いた雰囲気、金沢の庭園は曲水庭園など、水がポイントになっていると思います。」という答えました。また、京都の庭園は観光名所になっている場合が多く、主に企業などが費用を捻出しているため管理システムが確立している。一方、金沢の庭園の場合は個人が所有している庭園が多く、維持管理していく上で所有者やその家族にかかる経済的・身体的負担なども懸念されているとのことです。

ファン研究員が7月に出版されたブックレット『金沢の庭園がつなぐ人と自然』でも述べているように、地域住人が自分たちが暮らす町の「庭師」として自然を守るために協力することが持続可能な「都市の自然」の実現につながります。

休憩をはさみ、次は滋賀県の龍谷大学からお越しいただいた林先生に「過去の文化的景観を可視化する」をテーマにお話しいただきました。

林先生は元々生態学を研究しており、その過程で生き物のことだけではなく、生き物と人、または自然と人の関係についても興味を持ち、現在は龍谷大学の里山研究センターで活動されているそうです。

金沢の日本庭園の文化的景観や生物の多様性がミクロな視点だとすると、今回の林先生のお話はもう少しスケールが大きいもので滋賀県の琵琶湖の周辺一帯が示された地図を使いながらマクロな視点で人と自然の関係を見ていきました。

日本の自然は「セカンダリーネイチャー」と呼ばれる、人が意図的に手を加えて維持管理してきた自然がほとんどを占めます。そのため、人々の生活スタイルや社会の変化により過去から現在に至るまで変化し続けてきたそうです。

林先生の研究では過去の自然環境や文化的景観にも着目し、土地の利用方法や自然環境の変化を調査しています。昔から現代に至るまで変わらずに存在する自然の利用方法を調べることで持続可能な人と自然のつながり方や、その土地の環境に合った産業などを示唆できるのではないかと述べました。

このような研究結果は例えば化石燃料に頼らない地域づくりや地域循環型社会を作る上でも将来的に役立つのではという意見もあるそうです。

 

林先生のレクチャーの後は、庭園清掃に取り掛かりました。

3つのグループに分かれ、主に秋になり増えてきた落葉を集める作業を行いました。

美しい秋晴れの昼下がり、庭園を住処にする生き物も発見できました。

また、今回の清掃活動に庭師の中見宰さんも参加していたこともあり、苔の手入れ方法など普段なかなか教わることのできないプロの技術や知恵も教えていただきました。

十数人で清掃し1時間ほどかけてやっと綺麗になりました。この作業を所有者や管理人が一人で行うのはとても厳しいことだと参加者の皆さんも身をもって体感したようです。

清掃後は恒例のアンケートを行い、その後ディスカッションセッションを始めました。

各グループは今回の体験で感じたことや印象を共有し、まとめたものを3分間のプレゼンテーションで発表しました。

「どんな庭園だと足をはこびやすいかな?」「落葉の活用しよう」「ゆるくできて楽しかった」などなど、沢山の意見が出る中、「この活動は単なる通常の清掃と見なすべきではない」という共通の見解に至りました。

庭園で自然に囲まれて過ごす時間は都市で暮らす人々にとってとても貴重な自然と触れ合う場であると共に共通の目的を持ちながらコミュニケーションを図り、人との関係を深める場でもあります。美しい庭園で楽しみながら学び、参加者の皆さんはとても満足したようです。

最後に心蓮社の住職であり、この庭園の管理者でもある小島さんから挨拶のお言葉とコメントを頂き、閉会となりました。

 

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