2025年3月25日から28日にかけて、国連大学OUIKのファン研究員と富田プログラムコーディネーターが南アフリカ・ケープタウンで開催された「Generation Restoration」ワークショップに参加しました。本国際会議には、世界各地の自治体職員、研究者、実務者が集まり、都市の生態系を自然を活かした解決策(NbS)によって再生する革新的なアプローチについて議論が交わされました。
4日間にわたり、インクルーシブなガバナンス、気候変動へのレジリエンス、持続可能な資金調達、デジタルツールの活用などをテーマに議論が展開され、ケープタウン各地の自然再生現場の視察も行われました。OUIKからは、モデル都市にも選出されている金沢市の事例を紹介し、都市政策の中で文化遺産、地域の参加、生物多様性保全をどのように統合しているかを共有しました。
金沢の取組紹介
金沢市の取り組みは、文化的価値と環境保全、そして若者の参画をテーマとしたセッションで紹介されました。伝統庭園の保全活動や、生物文化に関する教育プロジェクト、観光圧による課題への対応策など、地域密着型の再生モデルとして注目を集め、類似の課題を抱える他都市の参加者にとっても示唆に富む内容となりました。
ツール・資金・地域発のイノベーション
クリチバ、イロイロ、グラスゴーなどの都市からは、NbSの成果測定ツール、マルチステークホルダーの調整、政策への生物多様性の組込みに関する実例が共有されました。注目されたのは、UNEP-DHIが開発した「Urban NbS Tool」の発表です。洪水、都市緑地、ヒートアイランドの分析を通じて、科学的かつ気候に強い都市計画を支援する新たなツールです。
フィールド視察と現地からの学び
2日目には、ブロウバーグ自然保護区とテーブルビュー砂丘再生プロジェクトを視察し、市民参加型の生物多様性回復の実践に触れました。4日目には「Onrus Catchment-to-Coast(オンラス流域から海へ)」プロジェクトの現場を訪問。湿地と汽水域の修復が、気候変動や土地利用の変化によっていかに複雑化するかを学び、水系全体の統合的管理の必要性が再確認されました。
今後に向けて
最終日のセッションでは、2025年のプロジェクト終了後も「Generation Restoration」ネットワークを継続させる重要性が確認されました。具体的には、CitiesWithNatureプラットフォームの活用、グローバルなストーリーテリングの強化、開発銀行との連携強化、そしてサンパウロでの最終国際会合の開催が提案されました。金沢の事例は、文化的継承、地域のリーダーシップ、気候適応を調和させた都市型NbSの好例として、今後の展開に大きな期待が寄せられています。