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地域との研究活動:アーカイブ

佐渡の経験から学び能登の未来を考える:現地視察報告

2026年に予定されている能登半島でのトキの放鳥は、震災前から準備が進められてきました。2024年の地震や豪雨を経て、この放鳥は、地域の復興と、里山里海の豊かな自然を未来へつなぐシンボルとしても期待されています。一方で、能登では今もなお厳しい状況が続いており、地域の思いや現状に寄り添いながら、持続可能な取組として進めていくことが求められています。 

能登GIAHS(世界農業遺産)生物多様性ワーキンググループでは、これまで、市民参加型の生き物調査の仕組みづくりや実践に取り組んできました。今回、ワーキンググループのメンバー8名が、2025613日から16日にかけて佐渡を訪問し、佐渡で長年続けられてきた市民参加型の生き物調査の実践やその仕組み、さらにトキの放鳥に関する取組について学びました。 

佐渡では2008年にトキの放鳥が始まり、現在では500羽を超えるまでになっています。また、「朱鷺と暮らす郷づくり」認証制度による生き物にやさしい米づくりや、農家や子どもたちと連携した田んぼの生き物調査が、地域に根ざした継続的な活動として展開されています。こうした佐渡での取組から学び、能登における今後の持続的な生物多様性の保全や地域の活性化に活かすことを目的に佐渡を訪問しました。 

環境省佐渡自然保護官事務所および新潟県佐渡トキ保護センターからの学び 

環境省の北橋隆史さん・生亀嘉奈子さん、新潟県の大矢貴司さん・井上貴世子さんから、放鳥するためのトキの繁殖や放鳥前のトレーニングなどについてお話を伺いました。放鳥前の訓練施設(順化ケージ)では、人や農業機械に慣れさせる訓練、捕食者への対策などを紹介いただき、繁殖ケージの遠隔監視システムも見せていただきました。環境省と新潟県が同じ施設でしっかりと連携して取組を進めていることが印象的で、国・自治体・大学・民間等の連携の重要性が再確認されました。 

豊田光世教授との意見交換 

新潟大学佐渡自然共生科学センター コミュニティデザイン室の豊田光世教授からは、これまで佐渡で取組まれてきた住民の合意形成や市民活動の支援の取組などを紹介いただきました。天王川の自然再生については、かつて天王川が流れ込む加茂湖の漁業者の方々から反対の声もあったそうですが、中立的なファシリテーションによる合意形成をデザインし、話し合いの場を丁寧に重ねた結果、今では加茂湖での葦原づくりや、子どもたちへの環境教育などにも一緒に取り組むなど、良い関係が築かれているというお話が印象的でした。トキの野生復帰のような自然再生の取組の実現には、生物学的な取組と並行して、豊田教授のように社会学的な視点から行政や市民など多様な関係者をつなぎ、住民の声を丁寧に拾い上げる社会的なサポートの存在が不可欠であると実感しました。 

天王川自然再生現場の視察 

「トキの水辺づくり協議会」の板垣徹会長の案内で、天王川の自然再生の現場を訪れました。ここでは、河道を広げて自然な河川・湿地環境をつくり出し、トキの餌場としても活用していく取組が進められています。現在、工事が進行中で、数年後には完成する予定とのことでした。能登にもあるアテの木を使った魚道も設置されており、地域の資源を活かした工夫が感じられました。 
 
ただ、佐渡も能登も人手不足が大きな課題となっており、こうした自然環境を長期的に維持・管理していく仕組みづくりが求められています。過疎化が進む地域においては、維持管理の方法とあわせて、持続可能な自然再生のあり方を考えていくことが重要になると感じました。

渡生きもの語り研究所:生き物調査の取組から学ぶ 

まず、一般社団法人佐渡生きもの語り研究所にお願いして、「朱鷺と暮らす郷づくり」認証米の要件の1つにもなっている生き物調査(6月と8月の年2回)にワーキンググループのメンバーも参加させていただきました。今回参加させて頂いたのは、認証制度スタート当初から認証米を生産している農事組合法人長畝生産組合の6月の生き物調査です。小雨の降る中ではありましたが、子どもを含め多くの住民の方々が集まり、みんなで一斉に生き物探しを行いました。ドジョウやオタマジャクシ、カエル、トンボのヤゴや成虫、ゲンゴロウの仲間など、あっという間にたくさんの生き物が見つかりました。隣の田んぼでは、餌を探すトキの姿も遠目に見ることができました。 

翌日には、研究所の大井克巳さんと大石麻美さんに活動内容についてお話を伺いました。オリジナルの図鑑「佐渡田んぼの生きもん図鑑」を見せていただき、これまで農家や子どもたちと継続して取り組んできた生き物調査の実践や、その中での課題などを共有いただきました。集めた生き物のデータは十分に活用できていないとのことでしたが、それ以上に「生き物に親しむ体験」を大切にしているというお話が印象的でした。また、予算削減などにより活動の継続が難しくなっている現状も共有され、持続可能な組織運営の必要性とその難しさを改めて実感しました。 

齋藤農園の実践から学ぶ 

齋藤真一郎さんの案内で、「朱鷺と暮らす郷づくり」認証米の田んぼを見学しました。9年目となる田んぼアートに毎年取り組んでいる水田や、魚道や江(え)を整備し、アイガモロボットを使った除草の実験を行っている自然栽培の田んぼなど、さまざまな工夫を重ねながらトキのための田んぼづくりに取り組んでこられた様子を知ることができました。 

また、太平洋側で生まれた一面に水を張る「ふゆみずたんぼ」は、降水量が多い日本海側の佐渡の環境には合わず、轍(わだち)に水がたまる程度の冬期湛水がちょうどよいというお話も印象的でした。これはコメの品質を保つうえでも、足が短いトキにとっても好都合とのことでした。佐渡と気候が似ている能登にとっても、こうした斎藤さんの試行錯誤の経験は、大変参考になりそうです。 

齋藤さんは、「農家への経済的な動機付けだけでは、取組は長続きしない」と述べ、生き物やトキへの関心を農家自身が育むことの大切さを強調されていました。 

 

佐渡市役所との意見交換 

まずは髙野宏一郎前市長、そして当時トキ米のブランド化や販路開拓を担当されていた西牧孝行さんにお話を伺い、佐渡でトキの放鳥が決まった背景や、ブランド化に向けた取り組みについて教えていただきました。トキの放鳥が決まったのは、ちょうど佐渡米が台風による熱波の影響で大きな被害を受けた時期であり、市町村合併という大きな転換点とも重なっていたそうです。そうした中でブランド米を実現するには、JAとの連携が非常に重要だったというお話が印象に残りました。 

続いて、農林水産部農業政策課の中村長生さん、山本一樹さん、五十嵐麻湖さんからは、認証米の普及状況やコープデリ(生協)との連携、そして佐渡生きもの語り研究所と連携して実施している「佐渡Kids生きもの調査隊」などを通じた子どもたちへの教育活動、さらには学校給食での取り組みについてご紹介いただきました。 

「佐渡Kids生きもの調査隊」には、毎年30人を超える子どもたちが年間を通じて参加しているそうです。かつてこのプログラムに参加していた子どもが、現在は市の職員として地域で活躍している事例も紹介され、次世代の育成や地域への愛着を育む取り組みとしても注目されていました。また、生き物調査の講師を担う人材の確保については、10年以上前に実施されていたインストラクター制度を受講した方々が、今もインストラクターとして活動を続けており、こうした仕組みが人材育成に有効であることも改めて確認されました。 

最後に、渡辺竜五市長からもお話を伺うことができました。トキの放鳥や認証米のブランディングといった、これまでの長い取り組みの経緯についてご紹介いただきました。佐渡産コシヒカリがすでにブランド米になっていて需要が高く、生き物を育む農法を取り入れた「朱鷺と暮らす郷」認証米も佐渡産コシヒカリとして販売されることもあるそうです。そのため、生き物を育む農法に取り組む農家の方々に対して、その努力に見合う対価が十分に還元されない場合があるという課題も率直に共有されました。そのため、佐渡市では現在ふるさと納税を活用した認証米の販売が進めているとのことが紹介されました。そして、JAや農家など多様な関係者との丁寧な対話と連携が重要であることも強調されました。 

今回の佐渡視察では、トキの野生復帰をめぐる幅広い取り組みと、それを支える人々の情熱に触れることができました。佐渡で積み重ねられてきた経験は、能登での放鳥や自然との共生、農業の維持を模索するうえでも、今後の参考となるものだと感じています。復興に向けた歩みを進めるなかで、地域の皆さんとともに、自然と人とのよりよい関係についても考えていけたらと思います。 

本視察は、公益信託 大成建設自然・歴史環境基金の支援を受けて実施されました。 

【開催報告】都市生態系再生国際シンポジウムin 金沢 「金沢から考える 都市の緑と文化、人々のつながり」 を開催

2025年5月22日、金沢市文化ホールにて、都市生態系再生国際シンポジウム「金沢から考える 都市の緑と文化、人々のつながり』が開催されました。世界中で都市が進化を続けるなかで、自然、文化、そしてコミュニティのつながりは、都市のアイデンティティをかたちづくり、持続可能な未来への道を拓く重要な要素です。本シンポジウムは地域住民の参画や文化的資源を生かした都市生態系の再生について、国内外の専門家やモデル都市・パイロット都市の代表者が意見を交わしました。

シンポジウムは村山卓(金沢市長)による開会あいさつで始まりました。その後、基調講演では以下3名にご登壇いただきました。

  • ユリア・ルブレバ(国際連合環境計画(UNEP)都市自然、アソシエイトプログラムオフィサー)
  • イングリッド・コッツィー(イクレイ アフリカ事務局 自治体生物多様性・自然・健康担当ディレクター)
  • 鈴木渉(自然環境局自然環境計画課生物多様性戦略推進室 室長)。

ユリア・ルブレバ(国際連合環境計画(UNEP)都市自然、アソシエイトプログラムオフィサー)は「人と地球のための都市自然:​生態系の再生とコミュニティの再構築​」をテーマに発表し、健康でレジリエントな都市を築く上で、自然の果たす役割の重要性が認識されてきていると強調しました。単に美しさのためではなく、この変化する世界において、生命を維持し、文化を育み、コミュニティを強化する能力を持つためには、都市と自然を再びつなぐことが重要であると述べました。

続いて、イングリッド・コッツィー(イクレイ アフリカ事務局 自治体生物多様性・自然・健康担当ディレクター)は「都市のウェルビーイングとレジリエンス、​そして人と人をつなぐ自然の力」をテーマに発表し、生態系と人間のウェルビーイングの強いつながりを反映した都市の例を紹介しました。さらに、パートナーシップと積極的なコミュニティ参加の重要性を述べました。

鈴木渉(自然環境局自然環境計画課生物多様性戦略推進室 室長)は、「自然共生社会の実現に向けた都市の役割」をテーマに発表し、生物多様性の改善のためには、緑の保全・再生、気候変動対策、持続可能な生産、消費の抑制を同時に進める必要があると強調しました。また、2020年以降の生物多様性世界枠組み(GBF)の実施、日本の新しい生物多様性国家戦略や地域レベルでの自然ベースの具体的な活用まで、世界、国、地域をつなぐ貴重な洞察を述べました。

 

後半のパネルディスカッションでは 内田東吾(イクレイ日本事務局長)がモデレーターを務めました。パネリストには、以下8名が参加しました。

  • ジェイラン・サフェット・カラウラン・ソズエル(トルコ・イスタンブール 戦略開発プログラムコーディネーター/都市デザイナー)
  • アンソニー・ポール・ディアス(米国・シアトル 公園・レクリエーション部長)
  • フランソワ・モロー(フランス・パリ 都市生態学庁長)
  • キンバリー・アンネ・ステーセム(カナダ・トロント 都市林業部長)
  • ラウラ・エルナンデス・ロサス(メキシコ・メキシコシティー生物多様性戦略コーディネーター)
  • ジュディス・アニャンゴ・オルオーチ(ケニア・キスムCECM(郡執行委員会委員-大臣)水、環境、気候変動、自然資源担当)
  • フアン・パストール・イーヴァルス(日本・UNU-IAS OUIK研究員)
  • 池田徹大(日本・金沢市文化スポーツ局文化財保護課)

「文化と自然から考えるコミュニティ主導の都市再生:世界の視点から」というテーマで、パネリストが各都市活動を紹介、経験を基に意見を交わしました。

  • イスタンブール(トルコ)では、都市空間における自然の回復を目指す「アーバン・リワイルディング(都市再野生化)」プロジェクトが進行中であり、生態系の再生と市民の自然との共生を図っています。
  • シアトル(米国)では、地域住民のボランティアが中心となり、都市内の自然再生活動に積極的に取り組んでいます。これにより、市民参加型のエコシステム保全モデルが構築されています。
  • パリ(フランス)では、市庁舎前の広場の緑化が進められており、都市の中心部における自然環境の創出が実現されつつあります。
  • トロント(カナダ)では、先住民族との和解を基盤とした生物多様性回復への取り組みが展開されており、伝統的知識と都市政策の融合が進んでいます。
  • メキシコシティ(メキシコ)では、都市自然の保護・発展を目的としたネットワークの形成や、女性のリーダーシップ、地域コミュニティの参加を促す活動が行われています。
  • キスム(ケニア)では、住民主導の取り組みによって、ヴィクトリア湖の環境回復が進められています。地域に根ざした保全活動が実を結びつつあります。
  • 金沢(日本)では、用水や庭園システムを活用した都市内生態系の保全に加え、地域の伝統的知識と住民の協働による自然との共生が推進されています。

パネルディスカッションでは、シンポジウムの前に行われた視察やワークショップに参加したパネリストたちが、金沢で学んだことや経験したこと、それぞれの都市に持ち帰りたい見識や印象を共有しました。特に金沢市の用水活用、庭園や地域主導のホタルの保護活動について、印象的であったと述べました。さらに、パネリストは、猛暑、洪水、有害農薬、湖汚染、資金確保の難しさなど、各都市が直面している課題についても言及し、持続可能な都市を構築するためには、グリーン、ブルーインフラを増やすだけでなく、自然に基づく解決策 (Nature-based solutions) を採用することが重要であると強調しました。各都市で課題は異なるが、課題解決にはコミュニティの参加が重要であると締めくくり、ディスカッションを終了しました。

最後に、閉会時の挨拶で山口しのぶ(国連大学サステイナビリティ高等研究所 所長)は、パネルディスカッションで共有された各都市の事例を引き合いに出しながら都市生態系の再生は「人の関わり」によって実現するものであり、自然は人が関与することで豊かになると強調しました。さらに「生態系の回復とは、同時に関係性の回復でもある」と述べ、人と場所、過去と未来、そして同じ都市空間を共有する多様なコミュニティのつながりを再構築することの重要性を語りました。

本シンポジウムは、UNU-IAS OUIK、環境省、金沢市の共催のもと開催されました。また、国連環境計画(UNEP)、持続可能な都市と地域をめざす自治体協議会(イクレイ)日本事務局、石川県、北國新聞社にご後援いただきました。

詳細については以下の動画(シンポジウムの録画)をご視聴ください。

https://youtu.be/UgIElJI0e9o

※関連記事:・都市にて自然と文化のつながりを深める解決策を紹介 – Institute for the Advanced Study of Sustainability

菊川地域でホタル調査を実施― 都市に残る自然の豊かさを再確認

2025年6月27日、国連大学サステイナビリティ高等研究所 いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)は、金沢市の菊川地域にて市民参加型のホタル生息調査を実施しました。本活動は、OUIKのSUNプロジェクト(持続可能な都市自然プロジェクト)の一環で、菊川公民館との共催により行われたものです。

調査に先立ち、金沢ホタルの会会長であり、石川ホタルの会事務局長でもある新村光秀さんによる講義が行われました。新村さんは、長年にわたり金沢でホタル保全に携わってこられた経験から、ホタルの生態や生息環境の条件、そして地域と協働した保全活動の意義について丁寧に解説しました。「ホタルは都市自然の豊かさの象徴。地域に残る用水や庭園が、ホタルの生息を支えている」と語られました。

続いて、OUIKのフアン研究員からは、都市における「生物多様性」や「生物文化多様性」の意義についての説明がありました。ファン研究員は、金沢の用水や庭園のような身近な自然環境が、文化的な営みと深く結びついてきた背景を紹介し、そうした都市自然を守り育てることが、地域の持続可能性につながることを強調しました。

ホタル調査の前に、ホタルと生物多様性についての講義が行われました

ホタル調査の様子

日が暮れた後、参加者はホタルマップを片手に、鞍月用水沿いや庭園の池などを歩きながらホタルを観察しました。用水のそばや民家の庭でもホタルの光が確認され、市街地にも自然の営みが息づいていることに気づかされました。参加者は観察ポイントごとに確認できたホタルの数を調査シートに記録し、提出しました。

なお、今年は昨年に比べて確認されたホタルの数が少なく、気候や環境条件の影響が考えられます。今後も継続的な観察と記録を通じて、都市における自然環境の変化を見つめていくことが求められます。

こうした活動を通じて、都市における生物多様性への理解を深め、市民とともに自然と共生する地域づくりを目指していきます。

次世代リーダー育成プログラム 第1回講義を開催

SDGs、気候変動、生物多様性 世界と地域をつなぐ基礎知識を学 

2025625日、「石川金沢から世界を変える、次世代のリーダー育成プログラム 2025 研修コース」の第1回講義が金沢未来のまち創造館で開催されました。石川県内の高校から選ばれた15名の生徒が参加し、SDGs、気候変動、生物多様性などの地球規模課題について、国際的・地域的な視点から学ぶ機会となりました。 

講義の前半では、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)の竹本明生プログラムヘッドが登壇し、「気候変動政策とSDGs:世界の現状と課題はどうなっているのか」と題して講義を行いました。竹本氏は、パリ協定やSDGsの枠組み、国際条約と国内政策の関係を整理しながら、再生可能エネルギー導入に伴う社会的・環境的リスク、日本のエネルギー・食料自給率の課題などを紹介しました。また、少子高齢化が進む中で、ユース世代の社会参加が持続可能な未来づくりに不可欠であることを強調しました。 

後半では、UNU-IAS OUIKのファン・パストール・イヴァールス研究員が、「自然を活用した解決策による生物多様性と気候変動への対応金沢モデル」と題して英語で講義を行いました。気候変動と生物多様性の密接な関係(biodiversity-climate nexus)を起点に、金沢における自然共生型の都市づくりの実践事例を紹介しました。伝統庭園や神社林などの自然資源を活かしたグリーンインフラ、空き地の再活用、地域住民との協働による環境保全などの取り組みを通して、Nature-based Solutions(自然を活用した解決策)やJust Urban Transition(公正な都市の移行)、Climate Justice(気候正義)といった国際的な概念を地域の現場に落とし込むアプローチを紹介しました。 

特に、「何が公正なのか?」という問いかけは参加者の関心を集めました。気候変動が環境問題にとどまらず、人口、ジェンダー、貧困、国際政治といった社会的要素が複雑に絡み合う課題であることへの理解が深まりました。 

次回の講義は79日に開催される予定で、能登半島地震や豪雨災害の事例をもとに、地域課題とレジリエンスについて考えます。 

都市生態系再生国際シンポジウム開催記念:現地エクスカーション

2025年5月21日、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)主催による「都市生態系再生国際シンポジウム」の一環として、金沢市内の自然・文化資源を巡る現地エクスカーションが開催されました。

国内外から参加した都市代表や専門家ら約20名が、金沢の水辺環境や文化的・歴史的景観、保全・再生活動などを視察し、都市の自然と文化が共生する取り組みについて理解を深めました。

金沢の水辺文化に触れる

午前中は、犀川沿いのウォーキングからスタート。都市中心部を流れるこの川は、市民に親しまれる憩いの場であり、100年の歴史を持つ犀川大橋も訪問しました。続いて、都市用水として整備されてきた鞍月用水と、その再生プロジェクトによって生まれ変わった「せせらぎ通り」を視察。かつて蓋掛けされていた用水を、市民と行政の協働で開渠化し、まちなかの自然景観として再生した取り組みが紹介されました。

  

歴史的庭園と都市生物多様性

千田家庭園では茶会を通じて、金沢に伝わる武家の文化と都市自然との共生を体感。さらに、西氏庭園では、用水を取り入れた庭園構造や、文化財としての価値、官民連携による保全の取り組みについて学びました。金沢市の「歴史的庭園振興プラン」も紹介され、市民や観光客が保全に関わる新たな仕組みづくりへの期待が高まりました。

    

観光と持続可能性のバランス

午後は、観光地として人気の東茶屋街を訪問。増加する観光客と地域の文化資源の保全との両立を目指した取り組みが紹介されました。続いて訪れた心蓮社では、禅と都市自然、人口減少社会における都市自然の役割について学び、このような場が持続可能なまちづくりの担い手となる可能性にも言及がありました。

   

参加者の声

参加者からは、「都市の中心に水の流れを利用した豊かな文化が栄えており、それらが共存していることに驚いた」「市民の参加が都市の再生を支えている点が非常に参考になった」など、多くの前向きな感想が寄せられました。

本エクスカーションは、都市の自然再生において文化や市民参加が果たす役割を体感的に学ぶ機会となり、翌日に開催予定のシンポジウムへ向けて大きな学びとなりました。

【開催報告】西家庭園にて文化的および生物多様性の価値に関する講演を開催

金沢市内には、建造物や用水、庭園や鎮守の森など、まちの歴史を今に伝える歴史遺産が数多く残されています。 金沢市では、それらの貴重でかけがえのない歴史遺産を次代へと継承すべく、調査や整備、活用など、様々な取り組みを行っています。

これらの取り組みの一環として、金沢市は9月28日から11月30日まで「金沢歴史遺産探求月間」を開催しており、国連大学サステナビリティ高等研究所(OUIK)もこのに協力しています。

この期間中、市の歴史的遺産を体験するためのイベントが複数開催されています。その一つとして、10月12日に国の名勝に指定されるために手続きが進められている西家庭園にて本イベントが開催されました。本イベントでは市の文化財保護課の招聘により、OUIKの研究者であるフアン博士が43名の参加者に向けて講演と庭園ツアーを行いました。

当イベントに金沢市長の村山卓も出席し、金沢の庭園文化の重要性と、国際的な認知の高まりについて語りました。村山市長は金沢の文化と環境が国連環境計画(UNEP)の「世代間環境回復プロジェクト」のモデル都市として世界的に認識されていることを強調し、金沢の環境、経済、文化の価値を促進する上でOUIKが果たす重要な役割に感謝の意を表されました。

講演の中でフアン博士は、金沢市を取り囲む自然の主要な特徴、特に山々や豊かな水資源について説明しました。そして彼は16世紀に前田藩によって築かれた支援的な社会構造と、北陸地方の気候が形作った金沢の庭園の独自性を強調しました。このシステムにより多くの職人からなる中産階級が栄えました。さらに職人たちの多くは地域の用水路を利用し、自宅の庭に水を引き、小さな兼六園を再現しようとしました。

続いてフアン博士は現在でも市内に残る用水や庭園の関連性について詳述しました。彼は、これらの庭園が人口減少や維持管理の不足に直面している課題を説明しました。講演の後半では、用水と庭園のつながりが市内の生態系機能、特に生物多様性の維持にとって不可欠であることを強調しました。

この点を証明するために、フアン博士は都市内の30か所の庭園で実施された野生動物調査(2021年9月11月)の結果を紹介し、西家庭園を具体例として挙げました。

この調査では、現場観察、センサー付きカメラ、ICレコーダー、DNA分析などさまざまな手法を用い、季節ごとにデータを収集しました。その結果、アユやハヤブサ、ナミコキセル、ホタルなどの貴重な種が特定されました。これらの結果は、文化的保護と自然保護が強く結びついていることを示しています。多くの生き物が急速な都市化から守られている環境を求め、庭園に生息するようになりました。そのため現在、庭園はこれらの生き物の貴重な生息地としての役割を果たしています。

フアン博士の講演を通じて、参加者たちは金沢庭園の美的、文化的、そして生態学的価値について深い理解を得ました。ディスカッションセッションでは、生態系の継続性を確保するために、今後数年間、生き物の生態を追跡するモニタリングシステムを確立することが重要であると議論されました。その後、参加者たちは晴れた初秋の日に庭園を自由に散策し、楽しむことができました。

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*西家庭園について:西家庭園は、1916年(大正5年)に旧市街の長町の住宅地に作られ、その原貌を保ってきました。隣接する大野庄用水路は中央の庭池を潤し、その池は日本各地からの印象的で大きな景観石で囲まれており、アーチ型の橋や水の盆と美しく調和しています。また、庭の珍しい部分に配置された高い人工の丘は、松やツツジ、カエデなどの在来植物で植生されており、見る人に金沢の自然の特性を反映した深い空間感覚と隔絶した雰囲気を提供しています。

 

金沢市公式YouTubeチャンネルでイベントの概要をご覧ください。

【開催報告】石川金沢から世界を変える、次世代のリーダー育成プログラム 2024成果発表会

国連大学OUIKが今年度から新たに立ち上げた「石川金沢から世界を変える、次世代のリーダー育成プログラム」発表会が2024年9月16日に開催されました。本プログラムは、持続可能な開発や気候変動といった地球規模の課題に対し、地域からグローバルリーダーを育成することを目的としています。金沢市内の高校生13名が参加し、半年にわたって地域環境や気候変動に関する学習を進めてきた成果を発表しました。

発表会の内容:

発表会では、プログラムに参加した13名の高校生が、夏休みを利用して取り組んだ地域環境課題の探究プロジェクトの成果を発表しました。各学生は、気候変動の影響や地域の具体的な環境問題に対して、彼ら自身が考えた解決策や提案をプレゼンテーション形式で発表し、会場からの質問にも積極的に応じました。

発表されたテーマは以下の通りです:

  1. 耕作放棄地の活用
  2. 車社会からの脱却
  3. より良い港と周辺環境づくりに向けた提案
  4. 代替フロンの排出量削減について
  5. いしかわ・かなざわのまちと水
  6. 金沢におけるグリーンインフラについて
  7. サーキュラーエコノミー

学生たちの発表は、具体的なデータに基づいたものであり、現実的な解決策を提案する内容が多く見受けられました。特に、地域住民との連携や行政との協力を視野に入れた提案が、参加者の注目を集めました。

次のステップ:COP29への派遣

発表会終了後、参加学生たちは個別面接を行い、金沢泉丘高校の梶夏菜子さんと金沢大学附属高校の本多真理さんが選抜されました。この2名は、今年11月にアゼルバイジャンで開催される国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)に国連大学代表団、そして金沢のユース代表として参加することが決定しました。彼女たちは国際的な場で金沢の若者として積極的に意見を発信し、世界の気候変動対策に貢献することが期待されています。

 

今回の発表会は、地域の若者がグローバルな課題に対してどのように向き合い、自分たちの視点で解決策を提案するかを示す非常に意義深い機会となりました。学生たちの情熱と行動力に触れた参加者たちは、彼らが地域社会だけでなく、世界の未来を担うリーダーとして成長していく姿に大きな期待を寄せました。

COP29への派遣メンバーの活動報告は、国連大学OUIKの公式ウェブサイトやSNSを通じて順次発信される予定です。ぜひご期待ください。

里海の生き物調査 in 七尾市小牧艇溜場

2024/10/25

震災の影響により、今年度の生き物調査は実施が難しいかと思われまれましたが、2024年10月25日、七尾市立中島小学校の6年生による「里海の生きもの調査」が無事行われました。この調査は七尾市が主催し、能登GIAHS生物多様性ワーキンググループの専門家のメンバーである、のと海洋ふれあいセンターの荒川さんと国連大学の小山研究員が参加し、生き物調査の実施を支援しました。

まず、七尾市農林水産課の小竹さんから挨拶があり、講師の荒川さんから調査方法や注意事項について説明がありました。必要な道具を手に5つの班に分かれて調査がスタートしました。箱眼鏡や網を使って熱心に生き物を探していました。四つん這いになり石段の隙間にいるカニを捕まえようとする児童や、夢中になって腰まで水に浸かってしまう児童もいました。採集時間が終了すると、「え、もう終わり?」と、もっと生き物探しを楽しみたいと名残惜しむ声が上がりました。

 

続いては、種判別の時間です。捕まえた生き物を海藻と分けて観察しました。ワーキンググループで作成した下敷きや記入シート、新たに完成した副教材も用いながら見つかった生き物を記録していきました。見つかった生き物については荒川さんに解説してもらいました。しただみの仲間は食べられることや、見た目は似ているけれど蓋の形状が異なるスガイという貝がいることなどを学びました。そして、異なる班でそれぞれ見つけたカニを一つのケースに入れて、見比べてみました。イソガニとガザミという異なる種類のカニで、ガザミの一番後ろの脚(第5脚)の形は平たく、泳ぐのに適していることなどを紹介してもらいました。

パッと見たところ何もいないように見える人工的な海岸でも、じっくり探すと様々な生き物がいることが分かりました。震災の影響もあり、子供たちが外に出て生き物と触れ合う機会は減ってしまっていると思いますが、今回の生き物調査で身近な里海の豊かさや面白さを感じてもらえたのではないでしょうか。これからも、自分たちの暮らしと海のつながりをさらに深く学んでいってほしいと思います。秋晴れの空の下、子供たちの輝く笑顔が何よりも印象的でした。

菊川地区で参加型アクションリサーチ (Participatory Action Research: PAR)を開始

2024年5月14日

OUIKのフアン研究員はSustainable Urban Nature Project(持続可能な都市自然プロジェクト)の一環として参加型アクションリサーチ (participatory action research: PAR)を金沢市、菊川地区で開始しました。この地域において今年度、市民の参加を重視し、環境保護を促進し、放置されたスペースを活性化させることに焦点を当てた包括的な研究が行われます。

この参加型アクションリサーチ(PAR)活動には、共同問題解決、意識の向上、市民が経済的および環境的変化に効果的に適応するためのエンパワーも含まれます。

菊川でのPARイニシアティブは、次の5つの主要な行動を通じて自然豊かなコミュニティを育成することを目指しています:

  1. 緑(都市自然)の成長の促進
  2. 生物多様性のモニタリング
  3. 緑地の維持
  4. コミュニティガーデンの共同創造
  5. エコツーリズムの奨励

PAR活動のキックオフとして、最初のセッション「植物の植え付けを通じた緑の成長」が5月14日に行われました。女性が主体の15人の参加者がについて議論しました。

フアン研究員は、菊川地区でのPARの紹介と、近隣の緑化の利点と課題について発表しました。その後、地元の庭師の指導のもと、参加者は土地の準備、植物の植え付け技術、およびメンテナンスについての洞察を共有しながら、実際の植え付け活動に参加しました。

植え付けセッションの後、フアン研究員は参加者の自然の利点への認識、自然豊かなコミュニティーの輪を拡大する上での課題、および活動を通じて強化されたコミュニティの結束の指標を評価するための討論と調査を行いました。

次のPARセッションは6月28日に予定されています。このセッションでは、生物多様性のモニタリングが中心となり、市民科学者が菊川内の倉月水運河沿いおよび指定された2つの庭園でホタルの調査を行います。

このプロジェクトは、菊川地区でのポジティブな変化を推進し続けており、コミュニティの参加と持続可能な慣行を活用して、より自然豊かでレジリエンとな都市景観を創造しています。

JFUNU令和6年能登半島地震緊急支援募金のご案内

UNU-IAS OUIKでは能登半島の里山里海と共にある地域の暮らしや営みの一日も早い復旧と、能登地域の特色を活かした今後の創造的な復興をめざして、自治体や関係者との綿密な連携のもと、地域のニーズの把握に努めながら、地域の皆さんとの協力活動を進めていきます。

そこで、地域のニーズをより具体的な形でサポートすべく、国連大学協力会(JFUNU)の協力のもと、支援募金プログラムを開始しました。

JFUNUは国連大学の活動を支援するために、日本の民間人や企業・団体によって1985年に設立された公益法人です。東京・渋谷の国連大学本部施設の中に事務所を設け、国連大学の活動や学生をサポートする活動を行っています。

このプログラムで頂いた寄付金は、その全額を、地震で被災された人々のために、この地域において里山里海を活かした持続可能な地域の復旧復興に取り組む団体等に配分いたします。

皆様からのご協力をお願い申し上げます。

 

以下のフォームを提出後、振込口座へお振り込みください。

〔寄付申込書フォーム URL〕https://forms.office.com/r/ucR1p6GghH

〔振込口座〕銀行名:三菱 UFJ 銀行(金融機関コード 0005)
支店名:渋谷支店(支店番号 135)
口座番号:普通預金 2872951
口座名:公益財団法人国連大学協力会災害復興支援募金
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*恐れ入りますが、振込手数料をご負担いただきますようお願い申し上げます。

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