金沢市内には、建造物や用水、庭園や鎮守の森など、まちの歴史を今に伝える歴史遺産が数多く残されています。 金沢市では、それらの貴重でかけがえのない歴史遺産を次代へと継承すべく、調査や整備、活用など、様々な取り組みを行っています。
これらの取り組みの一環として、金沢市は9月28日から11月30日まで「金沢歴史遺産探求月間」を開催しており、国連大学サステナビリティ高等研究所(OUIK)もこのに協力しています。
この期間中、市の歴史的遺産を体験するためのイベントが複数開催されています。その一つとして、10月12日に国の名勝に指定されるために手続きが進められている西家庭園にて本イベントが開催されました。本イベントでは市の文化財保護課の招聘により、OUIKの研究者であるフアン博士が43名の参加者に向けて講演と庭園ツアーを行いました。
当イベントに金沢市長の村山卓も出席し、金沢の庭園文化の重要性と、国際的な認知の高まりについて語りました。村山市長は金沢の文化と環境が国連環境計画(UNEP)の「世代間環境回復プロジェクト」のモデル都市として世界的に認識されていることを強調し、金沢の環境、経済、文化の価値を促進する上でOUIKが果たす重要な役割に感謝の意を表されました。
講演の中でフアン博士は、金沢市を取り囲む自然の主要な特徴、特に山々や豊かな水資源について説明しました。そして彼は16世紀に前田藩によって築かれた支援的な社会構造と、北陸地方の気候が形作った金沢の庭園の独自性を強調しました。このシステムにより多くの職人からなる中産階級が栄えました。さらに職人たちの多くは地域の用水路を利用し、自宅の庭に水を引き、小さな兼六園を再現しようとしました。
続いてフアン博士は現在でも市内に残る用水や庭園の関連性について詳述しました。彼は、これらの庭園が人口減少や維持管理の不足に直面している課題を説明しました。講演の後半では、用水と庭園のつながりが市内の生態系機能、特に生物多様性の維持にとって不可欠であることを強調しました。
この点を証明するために、フアン博士は都市内の30か所の庭園で実施された野生動物調査(2021年9月、11月)の結果を紹介し、西家庭園を具体例として挙げました。
この調査では、現場観察、センサー付きカメラ、ICレコーダー、DNA分析などさまざまな手法を用い、季節ごとにデータを収集しました。その結果、アユやハヤブサ、ナミコキセル、ホタルなどの貴重な種が特定されました。これらの結果は、文化的保護と自然保護が強く結びついていることを示しています。多くの生き物が急速な都市化から守られている環境を求め、庭園に生息するようになりました。そのため現在、庭園はこれらの生き物の貴重な生息地としての役割を果たしています。
フアン博士の講演を通じて、参加者たちは金沢庭園の美的、文化的、そして生態学的価値について深い理解を得ました。ディスカッションセッションでは、生態系の継続性を確保するために、今後数年間、生き物の生態を追跡するモニタリングシステムを確立することが重要であると議論されました。その後、参加者たちは晴れた初秋の日に庭園を自由に散策し、楽しむことができました。
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*西家庭園について:西家庭園は、1916年(大正5年)に旧市街の長町の住宅地に作られ、その原貌を保ってきました。隣接する大野庄用水路は中央の庭池を潤し、その池は日本各地からの印象的で大きな景観石で囲まれており、アーチ型の橋や水の盆と美しく調和しています。また、庭の珍しい部分に配置された高い人工の丘は、松やツツジ、カエデなどの在来植物で植生されており、見る人に金沢の自然の特性を反映した深い空間感覚と隔絶した雰囲気を提供しています。
金沢市公式YouTubeチャンネルでイベントの概要をご覧ください。