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石川県金沢市が「SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業」に選定されました!

2020年7月17日、金沢市は「2020年度SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定されました。テーマは「市民生活と調和した持続可能な観光の振興 ~「責任ある観光」により市民と観光客、双方の「しあわせ」を実現するまち金沢~」です。これは観光客が増加する中、自然・歴史・文化に基づく生物文化多様性をベースとし、市民・来街者の双方がまちの魅力を共創し、 持続可能なまちを実現すること目標としています。

日本では2008年、持続可能な経済社会実現に向けて「環境モデル都市」と「環境未来都市」を選定する制度が採用されました。今回金沢市が選定された「SDGs未来都市」は、「環境モデル都市」と「環境未来都市」に加えて、地方創生を一層促進することを目的として、SDGs達成に向けた取り組みを提案するものです。2018年度から各年度最大30都市が選定されており、石川県では珠洲市(2018年度)、白山市(2018年度)、小松市(2019年度)、今年新たに加賀市、能美市、金沢市が選定されました。(自治体SDGsモデル事業としては金沢市が県内初)これらはSDGs17の目標と紐づけられた評価軸で選定されていることが特徴で、目標達成に向けた積極的な事業展開が期待されています。

 

国連大学IAS-OUIKの役割

国連大学OUIKはSDGsの達成に向け金沢市との協働を進めてきました。「2018年のSDGsいしかわ・かなざわダイアローグシリーズ」をはじめ、2019年3月に金沢市、金沢青年会議所、国連大学での三者SDGs共同宣言を行なってからは金沢SDGsプロジェクトを「IMAGINE KANAZAWA 2030」と名づけ、協働を本格始動しました。SDGsや地域の課題への理解を深めるために「SDGsカフェ」という地域の皆さんが気軽に金沢の未来や地域課題について対話できるコミュニケーションの場を提供したり、SDGsミーティングでは地域の様々なステークホルダーの皆さんと協力し、アイデアを出し合いながら2030年の金沢のありたい姿を示す「金沢ミライシナリオ」を作成しました。

 

今後の展開

今後もOUIKは3者の協力体制をプラットフォームとして、SDGsの啓発・周知公報、共創するコミュニティの形成など、様々な場面で協働を進めていきます。特にモデル事業のうち、重要な要素である、魅力的なSDGsツアーの開発において、OUIKが長年の研究で培ってきた「日本庭園と金沢の持続可能性」を考えるワークショップ等の実践経験や、能登GIAHS(世界農業遺産)・白山ユネスコエコパークに関する研究成果を活かし、金沢のグリーンインフラを活かしたツーリズムのあり方や、広域のSDGsツーリズムのあり方に学術的な助言する役割を担っていきます。

【イベント告知】地域から考える!! 「SDGs 指標のモニタリングとオープンガバナンス」 〜地域での SDGs実装に向けて、自治体はどう変わるか〜

 

★このイベントはオンライン開催です。こちらより事前登録が必要です。

国連持続可能な開発目標が2015年に採択され今年で6年目を迎え、様々なセクターで17の目標達成に向けた取り組みが実践されています。その進捗を測るため、17の目標の下には169のターゲット、232(重複を除く)の数値指標が設定されています。この世界共通の数値指標に基づいて、国レベルでは各国のSDGs進捗を比較することができる一方で、指標によっては、各地域の事情を正しく反映することが難しいものもあります。そのため、SDGsでは各地域のゴール達成の進捗を測るために適した独自指標の設定が推奨されています。

日本政府は2019年4月に「地方創生SDGsローカル指標リスト」を改訂し、グローバル指標に対応し、データが入手可能なものを日本のローカル指標として公開しています。またこのプロセスの中でオープンデータを元に各自治体のSDGsインディケーターで達成度(進捗度)を可視化するSDGsローカルプラットフォームも公開されています。

SDGs169のターゲットのうち65%は自治体の関与がないと達成が難しいと言われるほど、SDGs実践においては、自治体が重要な役割を担っていくことが国連の様々な会議で言及されています。特に1)地域の文脈に即した指標の設定、2)各指標のきめ細かいデータ取得やモニタリングは自治体が市民の参加を得ながら行っていくことが望ましいとされています。

これは、「透明性」、「協働」、「参加」をキーワードとして市民が公のデータを使い、現状分析や政策課題の提案を行っていくオープンガバナンスの潮流と合致するもので、むしろSDGsが促す本質的な変化と言えます。このウェビナーではSDGs指標の設定やモニタリングを通じて、自治体経営に透明性、市民協働、市民参画が促されるようなしくみを構築するための議論を提供します。

石川県では、今年「SDGsツーリズム」でモデル事業認定を受けた金沢市を含む6つの自治体がSDGs未来都市認定を受け、里山里海、IT、教育などそれぞれの強みを活かした実践が進んでいます。まさにSDGs実践の現場から発信します!

SDGsをやっていくことになったが、何をどうしたよいのかお悩みの自治体SDGs担当者の方はもとより、テクノロジーとオープンガバナンスなど幅広いご興味の方々のご参加をお待ちしています!

日時:2020年9月30日(水) 15:00-17:00 

主催:国連大学 サステイナビリティ高等研究所 いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット

共催:金沢市

【プログラム】

15:00   開会

      共催挨拶:山野之義金沢市長

15:10   基調講演1「ローカルSDGs指標について現状と今後の展望」

        川久保 俊(法政大学デザイン工学部 准教授)

15:35   基調講演2「テクノロジーによる市民参画 – オープンガバナンスとはなにか-」

             福島 健一郎(一般社団法人コード・フォー・カナザワ 代表理事、一般社団法人シビックテックジャパン 代表理事)

16:00   事例紹介:石川県加賀市(2020年SDGs未来都市)のスマートSDGs  加賀市役所

16:10   パネル討論「市民と自治体の関係を変えるSDGsモニタリングの可能性」

             パネリスト: 川久保 俊、福島 健一郎、高木超(国連大学IAS-OUIK研究員)

             モデレーター 永井三岐子(国連大学IAS-OUIK事務局長)

    (討論キーワード)

    ・データを公開する意味とは?

    ・データは誰が作る?

    ・市民協働が楽しくなるオープンガバナンスのしかけとは?

17:00  閉会

【スピーカープロフィール(登壇順)】※随時更新

 

川久保 俊(かわくぼ しゅん)

法政大学デザイン工学部 准教授

慶應義塾大学理工学部後期博士課程修了。博士(工学)。法政大学デザイン工学部助教、専任講師を経て2017年10月より准教授(現職)。専門は建築/都市のサステナブルデザイン。近年は、持続可能な開発目標SDGsの主流化に関する調査研究を進めており、その成果を取り纏めて出版物「私たちのまちにとってのSDGs-導入のためのガイドライン-」やウェブアプリケーション「ローカルSDGsプラットフォーム」として発信している。主な受賞歴:日本都市計画学会論文奨励賞、日本建築学会奨励賞、山田一宇賞、International Conference on Sustainable Building Best Paper Awardなど。

 

 

福島 健一郎(ふくしま けんいちろう)

一般社団法人コード・フォー・カナザワ 代表理事、一般社団法人シビックテックジャパン 代表理事

2009年4月に金沢でアイパブリッシングをパートナーと創業。テクノロジーを用いた社会課題解決を続けている。 また、地域の課題をITの力で解決するために、2013年5月にCode for Kanazawaを9人で設立。日本で初めてのCode for コミュニティとなった。2014年に一般社団法人化。 Code for Kanazawaが開発した5374(ゴミナシ).jpは全国のコミュニティの手で2018年11月末現在で120都市以上に広がった他、のと・ノット・アローンやHa4goなど多数のアプリ/サービスを輩出。 現在は、シビックテックを国内に広げるための活動にも力を入れているほか、シビックテックを実現するための基盤となるオープンデータやオープンガバメントの推進についても精力的に活動を行っている。

 
 

高木 超(たかぎ こすも)

国連大学IAS-OUIK研究員

NPO、民間企業を経て、2012 年から神奈川県大和市の職員として、住民協働、厚木基地対 策、待機児童対策を担当。17 年 9 月に退職後、博士後期課程進学と同時に渡米。ニューヨ ークを拠点として、1 年間にわたり「自治体における SDGs のローカライズ」に関する調査 研究を行う。その間、国連訓練調査研究所(UNITAR)とクレアモント大学院大学が共催す る「SDGs と評価に関するリーダーシップ研修(英語名:Executive Leadership Programme In Evaluation and the SDGs) 」を日本人で初めて修了。ミレニアル世代の若者を中心に SDGs の達 成に向けて取り組む団体、SDGs-SWY の共同代表としても活動するとともに、国内外の自治体のSDGsを幅広く研究。著書に「SDGs x 自治体実践ガイドブック」

 
 

永井 三岐子(ながい みきこ)

国連大学IAS-OUIK事務局長

フランスで民間会社勤務の後、JICA(国際協力機構)専門家としてモンゴルで水資源管理や過放牧の問題、国連大学グローバル環境情報センターで気候変動適に関する研究に従事。JICA-JST日・タイ気候変動適応策プロジェクトコーディネーター、など環境分野の国際協力に携わってきた。2014年から現職。地域にある国連機関の強みを活かし自治体への政策提言などを通じて、SDGsの実践 を石川全域で推進中。金沢市出身。

 

 

OUIK 生物文化多様性シリーズ#5 金沢の庭園がつなぐ人と自然  ー持続可能なコモンズへの挑戦ー

金沢の日本庭園の活用方法を防災、観光、景観など多面的なアプローチから解説すると共に、持続可能な都市と生態系保全に向けたアイデアを提唱しています。

「第1回IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議」開催

2019年3月、国連大学OUIK、金沢市、金沢青年会議所の三者が協力し、持続可能な金沢をパートナーシップで実現するプロジェクト「IMAGINE KANAZAWA 2030」が発動しました。その一環として行われてきたSDGsミーティングでは、多様なステークホルダーが立場や世代を超えて集まり、金沢のあるべき姿を思い描き、アイデアを出し合いながら「金沢ミライシナリオ」の制作にいたりました。

2020年6月29日、SDGsの達成に向けて、この「金沢ミライシナリオ」を通して様々な主体が連携し実践すべく、この推進会議が設置されました。産業、教育、行政、金融、市民団体など各分野の方々をメンバーに迎え、意見を出し合い、協力体制を築きました。

会長として金沢市長山野委員、副会長として金沢商工会議所理事長、鶴山委員と国連大学OUIK所長、渡辺委員が選出され、監事としては金沢青年会議所監事、小谷内委員と金沢市会計課長、徳田委員が選任されました。

さらに金沢青年会議所、国連大学OUIK、コード・フォー・カナザワの三者より、これまでの取組報告が行われました。

最後の意見交換会では今後の活動に向けたアドバイスや様々なアイデアが交換され、立場や世代を超えたコミュニケーションの場となりました。

会議の詳細や発表内容は以下のYouTubeビデオからもご視聴ただけます。

・「IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ」募集中

SDGsを通して地域の課題解決を一緒に進めていくパートナーを募集しています。これまでなかなか解決できなかった課題も様々な立場の人や企業が集まり、異なる強みを持つプレイヤー同士が連携することで具体的なアプローチを指すことができるかもしれません。興味がある方はIMAGINE KANAZAWA 2030事務局までご連絡ください。

【開催報告】SDGsカフェ×高校生「これからの学校、学びの在り方とは?」

今回のSDGsカフェは⾦沢市の⾼校⽣が主催するセミナーと連携し、2週連続、オンラインで開催しました。

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)によって、浮き彫りになった学校教育をめぐる課題──これからの学校や学びはどうあるべきなのか? 持続可能な学校や学びとは? そもそも、現在の学校体制の背景には何があるのか? どういった課題があるのか?──高校生や大学生、社会人、教員など多様な人たちが参加し、 “これからの学校”や“学びの在り方”について、グループディスカッションを行い、それぞれがイメージを深めました。

◆第一部「ゼロベースでこれからの学校や学びの在り方について対話しよう」
 7月22日(水)18:30~20:00

◆第二部「他府県・他国ではどう考えているのか?先進事例に触れて対話しよう」
 7月29日(水)18:30~20:00

 

2030年に向けて、学校の在り方はどうする?
最初の話題提供は現役高校生の千代航平さんから

千代航平さん

 いままでのSDGsカフェとは違い、今回は特別なもの。高校生のからこのような話し合いをしたいという提案があり、SDGsカフェの場を提供する形で開催しました。千代さんは金沢大学附属高校2年生。今回のSDGsカフェではファシリテーターを務めます。

 まずは話題提供として、千代さんが考えている理想の学校像について紹介がありました。

「いままでは画一的な教育が求められてきましたが、多様性やグローバルな人材、個性を伸ばす教育などが求められているいま、現状のシステムが果たして則しているかどうかということも含めて、これからの学びはどうあるべきだろうと考えようと、今回のこの場を企画しました」(千代さん)

 千代さんは、先生と生徒の対話によって、よりいい学校を作ろうという活動をしているそうで、その活動から、生徒の知らなかった先生らの事情があるということを学んだといいます。そこで、これからの学校というのは先生と生徒がもっとフランクに対話できるようになるべきではないかと思ったのだとか。例えば、行事審議などの職員会議には生徒が出席してもいいのではないか? そのようなことも感じているそうです。

 課題研究は先生から与えられるもので、高校生だけで進められているものではなく、主体的になれない人も多くいるのではないか、そう思っているそうです。そこで、高校生同士が情報共有をし、主体となって課題研究が進められるプラットフォームを構想しているそうです。

 さらに、新たな学校の在り方の一つの方向を示す具体例として、実際に金沢大学附属高校で行われている地域の外部の人を取り込む教育について紹介がありました。これには、生徒にはモチベーションが上がりやすいとか、素直に意見を聞きやすいというメリットがあり、一方、先生からも、生徒を外の世界にふれさせることで刺激を与えられるなどといった前向きな意見があがったそうです。

 

学校が光れば、地域も輝く!
能登高校の魅力化に取り組む木村聡さんからの話題提供

 能登高校魅力化プロジェクトコーディネーターの木村聡さんは、能登町の地域おこし協力隊としてこのプロジェクトに関わっているそうです。

 能登町は過疎化が進んでいて、かつて町内には高校は3校1分校がありましたが、いまは町内に石川県立能登高校の1校しかなく、その1校も廃校の危機を迎えていたそうです。

 町としても高校がない地域に人が残ってくれるか? 移住をしてきてくれるか?という問題に立ち向かうために、町が県立高校を支えていくということで、能登高校魅力化プロジェクトを立ち上げたとのこと。プロジェクトのねらいには、「町内からの進学率を高めて高校の存続と発展を図ること」や、「希望する進路の実現の支援」、「地域の未来に貢献する人材を育てる」、「教育環境を充実させて定住・移住の地として選ばれる町となる」という、4つがあるそうです。

 木村さんが関わっていることは「地域連携・探究学習支援」。将来、地域で活躍する人材を育てたいという思いは、地域にも高校にもありますが、それをどうやって実現したらいいのかという部分で、木村さんがコーディネイターとして高校と地域をつなぐ役割を担っているそうです。「総合的な探究の時間」のサポートを行い、生徒にとって身近な「地域課題」を素材にして課題解決型学習に取り組んだりもしているとのこと。

 社会課題を見つける力を育てるプログラムでは、「SDGsと地域課題とのつながりを学ぶ」と題して、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニットの永井事務局長や、「SDGsと能登、SDGsと企業活動について学ぶ」では能登町でSDGsに取り組んでいる数馬酒造株式会社の数馬嘉一郎さんにも話をしてもらい、生徒にはSDGsの視点から地域の課題や世界の課題を考えてもらうきっかけ作りもしました。このように、木村さんは地域の人たちと高校をつなぐ役割を担っているそうです。今年はコロナ禍の中でもありオンラインで「進路探究学習」の授業を行っているそうです。

「地域学」といわれるものも実施しています。これは能登高生の希望者が参加するもので、地域のことが学べる講座です。ただ地域のことが学べるだけではなく、仕事をするというのはどういうことかや、考えたり表現したりするときに使える技を知ること、あるいはイノベーションを起こすとはどういうことかなど、総合的に学べるようになっているとのこと。

 普段の学校の授業とは全く違い、地域の人も入ってワークショップ形式で進めています。生徒たちからは「実は地域のことはよく知らなかったが、話を聞いてみるとこの町にポテンシャルがあるということがよくわかった」といった声が寄せられているそうです。

「学校の先生たちは多忙だということが現場を見ているとよく分かり、それは小規模校になるとなおさらです。その中で探究学習だ、地域課題だと、先生たちもやらなければいけないこと、学ばなければいけないことがたくさん増えています。

 学校だけでは対応できない問題でもあり、学校のある地域や自治体を巻き込んで、その中でコーディネイターを設置して物事を前に進めていくような仕組みを作るということは、これから先、とても大事なのではないでしょうか」と述べ、話題提供を終えました。

 

理想の学びって? それを実現できる学校って?
グループでの対話が始まりました

 高校生が1名ないし2名ずつ入ったいくつかのグループに分かれ、グループワークを行う「ブレイクアウトセッション」に移りました。

 まずはそれぞれ自己紹介をしつつ、「いままでの人生の中で一番いい学びをしたなと思った瞬間は?」ということについて、それぞれが思いを発言しました。

 セッション終了後の情報共有で紹介された意見を、いくつか紹介します。

  • 自分の興味がある分野に対して、専門的に学べるというのが、いい教育なのではないか
  • 学校から外に出るフィールドワークで、実際に何か外のものにふれて体験することや、田舎の高校生が都会のビジネスマンと交流して、いままで知らなかった生活をしている人たちとふれあう経験、海外に行ってカルチャーショックを受けた経験など、日ごろふれることがないフィールドでの体験がいい学びにつながったことが多かった
  • 子ども会活動に関わり、進学で東京に行ったが、就職は金沢に戻ることにしたのは、その時の経験がすごく影響している。学校以外の経験というのが自分にとっては良かった

──以上のような意見がありました。

 続いて、「これからの理想の学校や学びの在り方について」をテーマに、2回目のブレイクアウトセッションに移りました。いい学びを得るにはどのような学校が理想なのか? 学びというのはどのようなものであったらいいのか?について、引き続きグループで対話をしてもらいました。

 セッション終了後に紹介された意見をいくつか紹介します。

  • 「総合的な探究の時間」について、生徒たちはそれをやる意味をあまり理解できていないという問題があり、まずはそこから解決する必要がある
  • そもそも「理想の学校」という形にはめることがどうなのか?
  • みんなが同じことを学ぶのではなくて、人それぞれの個性を活かすという上では、人それぞれ興味を持つことは違うから、それを伸ばす教育をするべきではないか。生徒が興味を持ったことを後押しするという教育が求められるのではないか
  • 大前提として「楽しい」ということは大事。ただ、「楽しい」以外にもいい学びや理想の学校というのがあるのではないだろうか。それは生徒一人ひとりが自分で選択することができるということであり、例えば夏休みの宿題にしても、するしないも自分で決めて、しないと決めたならどうやって先生を説得するかなど、すべてが学びにつながる。自分が選択したからには自分で責任を持って最後までやらないといけない。このように、生徒が自分で選ぶということがいい学びなのではないか。そして理想の学校とは、より多くの選択肢を生徒に提供できることではないか

──以上のような意見がありました。

 最後に、「どうすれば理想の学校や学びに近づくのか」について、グループで対話をしました。

 セッション終了後に紹介された意見をいくつか紹介します。

  • 大学生が高校生と一緒に「課題解決型学習」(PBL)に入れば、自分が数年後にその立場になる人が教えてくれたほうが親近感も湧くし、教えられているというより、一緒に考えているという感覚になれるのがいい
  • 学校の在り方として、知識的な勉強だけを強要するのではなく、アイデンティティの確立のためのスキルを向上させるべきではないかと思う
  • 何かにトライしたりするとき、心理的な安全がある場所として学校を提供できれば理想的
  • 教科を教える先生とは別に、地域とのつなぎ手となる新たな先生がいれば、理想の学びに近づけていけるのではないだろうか

──以上のような意見がありました。

「今日みたいにSDGsカフェの場を使っていろいろな人とつながっていただき、参加してくださった方もいろいろな意見を出してくださり、ムーブメントにつなげていく場にできたことはとても嬉しかったです」と永井が述べて、第一部が終了しました。

第一部参加の皆さん

 

一週間後に開催された第二部では、視野を広げつつ、
これからの学校や学びについて考えを深めていきました

 第一部で話し合ったことを思い返しながら1週間を過ごし、第二部の「他府県・他国ではどう考えているのか?先進事例に触れて対話しよう」に臨みました。

 ファシリテーターの千代さんは、実は今年1年、フィンランドに留学する予定があったそうです。しかし、新型コロナウィルス感染症の影響で行けなくなってしまったのだとか。そこで、第二部の話題提供その1として、千代さんが調べていたフィンランドの事例について、発表がありました。

 世界幸福度報告が1位、学習度到達調査PISAが世界トップクラスというこの国ではどのような教育がされているのでしょうか? 調べてみると、フィンランドでは勉強を教える先生とは別に、学校をよりよい環境にするための「チューター・ティーチャー」と呼ばれる先生がいることがわかったそうです。

 

学び方の多様性を創造する
学校と地域を結ぶコーディネイターの
白上昌子さんからの話題提供

白上昌子さん

 話題提供その2は、ゲストとしてお越しいただいた、白上昌子さんからお話しいただきました。学校と地域とを結ぶ、キャリア教育コーディネイターという肩書で日々活動している白上さん。アメリカの小学校で日本語教師として働いた経験をお持ちで、現在は名古屋市のNPO法人アスクネット顧問、くらしクリエイト代表として活躍しています。

「学び合い育ち合う共同体作り」をミッションとするアスクネットでは、ゲストティーチャーとして社会人を学校に連れてきたり、子どもたちがいろいろな体験を行う場を作ったり、大学生や高校生のインターンシップのプログラムのコーディネーションなども行っているそうです。

 その中でも高校の先生から要望が強い、大学・企業をそれぞれ1日ずつ体験できる「キャリア・ブリッジ」というプログラムを紹介しました。

 これは愛知県教育委員会と連携して、幅広く高校生に呼びかけているもので、昨年は7つの大学から、経営や教育、福祉など、それぞれのコースから学びたいものを高校生が選び、大学とその学んだ分野に関連する企業での体験から、「大学で学んだことが社会でどう生きるか」などを考える機会となります。その後には、大学と企業で学んだことを元に、自分が今後どのような進路を歩んでいきたいかを考え、レポートにして提出するそうです。ぼやっとした自分の将来イメージが、このように直接触れることで明確になってくるのだといいます。

 また、一昨年にエストニアに行った時の話も紹介していただきました。

 エストニアはフィンランドのすぐ近くにあり、旧ソビエトから独立した国。現在は電子国家と言われるほど、ITが進んだ国です。学校には、すべての教科にICTを導入するため、そのアドバイスを行うコーディネイター(ICT支援員)がいて、教科横断型の授業では、先生間のつなぎや、プロジェクトの準備も行っているそうです。

「未来」という科目もあり、過去を学ぶだけの教育ではなく、子どもたちの意識を未来に向けさせるべく、「ドローンを使えば、まちのどんな課題が解決できるのか?」ということを学ぶ実践プログラムも進めているのだとか。

 会社を作るということを学ぶ「起業家教育」もあり、高校では開業から廃業までを経験するのだとか。「一度これを経験すれば、自分も何かやれるかもしれないという気持ちになるのではないか」と白上さんは感じたといいます。

 最後に、SDGsの取り組みにも通じる愛知県立佐屋高校のことを紹介しました。もともとこの地域は白文鳥を飼育するという産業が盛んでしたが、それが衰退してしまい、絶滅の危機に瀕していました。生産農家から地元の農業高校に文鳥を育てるノウハウを学校に移植して、文化・伝統を継続できないかと相談があり、それを受けて、現在では高校で飼育を行い、販売まで手掛けるようになったそうです。

 生産者から相談を受け、孵化ができるようになるまで6年くらいかかりました。その間、いろいろな人たちの思いに寄り添いながら命と向き合い、それが先輩から後輩へと引き継がれていったそうです。

 これから2030年、あるいはもっと先の社会を見据えた時に、SDGsのいちばん大事な「誰一人取り残さない」ということを考えて、「一人ひとりの思いや命に向き合っていくために、どんな学びの在り方や学校の在り方がいいのかということを考えてみては」と述べて、白上さんは話を締めくくりました。

 

これからの理想の学校って? 学びって?
再び、グループによる対話が始まりました

 第一部と同様に、いくつかのグループに分かれるブレイクアウトセッションに移り、「これからの理想の学校や学びというのはどういうものなのだろう」ということを、話し合いました。

 セッション終了後に共有された意見をいくつか紹介します。

  • 前向きな先生もいれば、地域とのつながりを作るのが難しい先生もいるので、コーディネイターという存在は大事かもしれない
  • プロジェクト型学習というのがキーワードとして出ていたが、責任感を持って学べる学校や授業が大事。これからプロジェクト型地域課題の探究の学習が増えてくると思うが、形だけであったり、自分ごとにならないまま、プラン作って終わったりというパターンも散見されるので、そういったことを先生のサポートも含めて考えることができた

──以上のような意見がありました。

 2回目のブレイクアウトセッションでは、より具体的に「どうすれば理想の学校や、学びに近づいていくだろうか」ということをそれぞれの立場から考えて、意見を交わしました。

 セッション終了後に共有された意見をいくつか紹介します。

  • 語りやすいのは成功事例。しかしそれはあらゆる条件が揃って成し遂げられたことであって、紹介しても別の場所に持っていったときにその条件が全部揃うかということも考えて語ったほうがいいのではないか。逆に失敗例を語ってもらったほうが、その失敗理由を追求していくことができるので、たくさんの成功事例を並べるよりも失敗例を挙げていったほうがいいのではないか
  • 地域課題と地域を結びつける以前に、生徒と学校が結びついていないから、もっと生徒の声を引き上げられる学校にちゃんとなってほしい
  • 理想の学校として話に出たのは、まず1つ目は自分の将来がどんなふうになるのかと描ける教育。2つ目が自分のしたいことや教科以外のことも調べられること。その理想に近づくためには、まずは生徒の意見を先生に直接伝えられる環境があること。そして、学校と地域とか外部との連携も大事。地域住民と学校が協力していたほうが、自分の将来を描きやすい。生徒の意見を先生ではない大人が直接評価してくれるという点でいい。もうひとつ、家庭環境も大事。家庭の中でニュースを見ながら親と意見を交わしたり、いろいろな職業について話すなど、親と話すことで自分の将来に目標が持てたり夢ができたりすることがある。さらに、親の反対によって学校が動くことも無きにしもあらずであり、そういう意味でも、親は大事ではないか

──以上のような意見がありました。

 さらに、学校にどう関わっていくか、学びをどうしていけばいいのかということをもう少し具体的に考えたり、あるいはいまの話をより深めてもらったりしながら、理想の学校や学びの姿を考えてもらうため、最後のブレイクアウトセッションに移りました。

 セッション終了後に共有された意見をいくつか紹介します。

  • 東京などの都会だと自分がやりたいことのコミュニティーがすぐに見つかったりするが、地方ではそれがなかなか見つからないということを話したら、東京に縁のある方から、東京はやりたいことは見つかるが、あまりにもいろいろなものがありすぎて、一つに没頭するということは地方の方がやりやすいのではないかという意見があった。いまはコロナの影響で自分のやりたいことをどこでやるのかということの価値観も変わり、自分たちはいままさにそういう過渡期にいることを感じている
  • 日本の形にはめた教育では、教育自体にみんなが興味を持たない。なんのために勉強をしているのかがわからない。海外の事例で、一週間の題材を決めてそれについていろいろな教科の観点から学んでいくというのがあることを聞いたが、何について学ぶのかという目的を定めた上で、さまざまな教科の視点から一つの題材をみるほうが、興味を持つのではないかと思う
  • コロナウィルスの影響で休校が続いたが、その時の教育格差というのをどうしたら最小限にできるかというのを話し合った。オンラインと動画配信とどっちが有効かという話になったが、結局、受けようと思えば受けることができる環境を作ることが大切だと思う
  • 学校とは人生の目標を叶える場所だと思っている。ただ、進学や就職が目標となってしまい、その目標を最優先するあまり、教科の勉強ばかりに時間が割かれてしまって、地域の問題を見る時間や自分の本当に好きなものを見つけるための時間というのがなくなってしまっている。進学や就職といった短期的なものではなく、人生の長期的な目標がないと、学生の頃から能動的に学ぶというのは難しい。学びの視野が広くなるようなシステムがあればいいと思っていたが、白上さんの話を聞いて、そのような動きが自分の住む地域でもたくさんできればいいなと思った

──以上のような意見がありました。

「2週にわたり、トータルで3時間ほどの対話を行いましたが、この短時間で答えが出る問題ではありませんし、これからもっと考えていかないといけない問題かと思います。対話が深まっていく中で、いろいろな意見や思いが現れてきました。これをうまくまとめていったり、引き続き考えていったりすることが、これから必要になってくると感じています。そして、これからもつなげていきたいと考えています」と千代さんが述べて、2回にわたったSDGsカフェは終了しました。

第二部参加の皆さん

 千代さんやお二人のゲストから紹介があった事例や、多くの参加者が口にしていたことは、“学校の外部の人間が学校に関わることの大切さ”でした。

 金沢SDGsでは、さまざまな市民に集まっていただき、『金沢ミライシナリオ』を作っており、5つの方向性の3番目に「子どもが夢を描けるまち」を挙げています(詳細はこちら)。そのミライシナリオの中にも「いろいろな先生に教えてほしい! NPOなど学外の人材を活用する仕組みを作ろう」というものがあります。

 自分たちよりも少し年上の大学生や、あるいは企業でバリバリに働いている社会人、人生経験が豊富なシニアなどから、学校で聞くことができない話に接することで、いろいろな刺激が与えられ、子どもたちの将来の夢が一歩も二歩も前進する可能性は大いにあります。

 子どもたちが描いた夢を実現するための学校や学び。それが理想の形かどうかはさておき、学校と地域社会のパートナーシップによって、学校も学びの在り方も良い方向へ向かうことはいろいろあるのではないかと感じました。

 

 

【今回のイベントのスピーカープロフィール(登壇順)】

千代航平(せんだいこうへい)

金沢大学附属高校2年

長い休校期間を経て、問い直されつつある、学校行事や、学校、学びそのものの在り方。 今回、様々な人と、様々な視点から、深い対話ができることを楽しみにしている。 1年時では、平和町商店街の活性化、また、現在は、高校生主体の探究活動を行えるプラットフォームの構想や、新たな行事の企画を考え中!問いを持ち続け、毎日歩みを止めないように行動し続けている。

 

木村聡(きむらさとし)

能登高校魅力化プロジェクト コーディネーター

慶應義塾大学商学部卒。卒業後は日本ガイシ(株)入社。2005年からベネッセコーポレーション。進研ゼミ中学講座の業績管理業務を担当したのち、ベネッセ教育総合研究所の研究員に。退職後、2018年に石川県能登町にIターン。現在は能登町が町内唯一となった能登高校の存続と発展に取り組む高校魅力化プロジェクトのコーディネーターとして、地域探究授業のサポートやふるさとを見つめ直す地域学など、教育と地域をつなぐプログラムを仕掛けているほか、Rakuten IT school Nextや地域みらい留学365(高校2年次での国内留学)の誘致といった新しい学びの機会提供にも尽力している。また、石川県穴水町岩車地区で農漁業・田舎体験プログラムを主催するNPO法人「田舎時間」代表も務める。

 

白上昌子(しらかみまさこ)

くらしクリエイト代表・NPO法人アスクネット顧問

大学卒業後、アメリカの小学校で日本語教師として働く。帰国後保険会社に勤務し、2006年NPO法人アスクネット入職。教育CSR担当として、トヨタ自動車、アイシン精機など企業の出前講座を手掛ける。2009年代表理事就任。小学生から大学生までを対象としたキャリア教育を推進。2010年高校生を対象とした公募型インターンシップの仕組みを行政と連携してつくる。また、2015年より生活困窮家庭向けの学習支援教室を開始し、教育と福祉の連携に努める。2019年5月に代表理事を退任。現在は「くらしクリエイト」という屋号で研修講師等を務める。文部科学省消費者教育委員会委員。愛知県まち・ひと・しごと創生総合戦略会議専門委員。名古屋市教育委員会事務点検評価委員。

OUIK 生物文化多様性シリーズ#4 「地図から学ぶ北陸の里山里海のみかた」

OUIK初のマップブックとして、北陸地方の里山里海の現状や変化、多様な見方を地図から学ぶ教材を発刊しました。北陸地方(石川、福井、富山、新潟、岐阜)のスケール、石川県のスケール、七尾湾のスケールといったマルチスケールでの地図情報をまとめています。(PDF:95MB)

関連ページ(Collections at UNU)  http://collections.unu.edu/view/UNU:6540

【開催報告】SDGsカフェ#12「〜with コロナ時代だから考えたい〜 ESG投資が金沢に根付くには!?」

新型コロナウイルス感染症の流行が、少しずつ落ち着きを見せ始め、さまざまな業種でコロナ前の数字に戻すことが最優先課題となりつつあります。
一方で、「環境にも良い働き方」など、コロナ禍で芽生えた「新しい価値観」や「社会変革の芽」は失いたくないと感じている方も多いでしょう。

自然や環境、働く人々を取り巻く社会課題などの解決と、持続可能な経済発展──その両方を実現させるキーワードが「ESG投資」という言葉です。最近、SDGsとともによく見聞きするようになってきましたが、まだまだ地方に暮らす私たちにとっては遠い存在だと思っていませんか?

実は意外と身近なところで、ESG投資の考え方が生かされていたり、あるいは知らないうちにESG投資と密接な関係があったりします。2030年に向けて、当たり前となっている必要があると考えられるESG投資について、社会変革への機運が高まりつつある今、地方からできることを考えてみました。

老舗六代目とESGのスペシャリストの話に耳を傾けてみましょう

 今回2030年の金沢をIMAGINEしてくださったのは、金沢にある伝統発酵食品の老舗・株式会社四十萬谷本舗(しじまやほんぽ)の六代目・専務取締役の四十万谷正和さんです。
 そして、アイデアを提供してくださったのが、サステナビリティ経営・ESG投資アドバイザリーの会社である株式会社ニューラル代表取締役CEOの夫馬賢治さんです。

 最初にここ最近のトピックスとして、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)の永井事務局長から、6月にIMAGINE KANAZAWA 2030推進会議が設置された報告がありました(詳細は下記をご覧ください)。

「第1回IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議」開催

 

今までESGやSDGsとはあまり関係ないと思っていた
四十万谷さんがイマジンする2030年

 四十萬谷本舗は明治8年(1875年)創業の老舗発酵食品の店。その後継者となる四十万谷さん(36歳)は、大学卒業の後、大手食品メーカーで約11年間、主に人事関係の仕事を行い、2017年に家業を継ぐべく金沢に戻ってきました。

四十万谷正和(しじまや まさかず)/ 株式会社四十万谷本舗専務取締役。2006年 慶應義塾大学経済学部卒業後、ハウス食品株式会社入社。入社後は、採用、労務、人事制度、グローバル人事など、一貫して人にまつわる仕事を行う。 2017年 株式会社四十万谷本舗入社。 2019年 専務取締役就任

 まずは四十萬谷本舗の主力商品であるかぶら寿しや大根寿しを紹介。
 コロナの影響によって家庭で食事を摂る機会が増え、このような発酵食品を求めてくれるお客さんが増えたそうです。明治時代の商家造りの本店は見応えがあり、「コロナが落ち着いたらぜひ遊びにいらしてください」と誘います。

かぶら寿し/塩漬けしたかぶに熟成させた鰤を挟み、糀(こうじ)で漬け込んで発酵させた石川県伝統の発酵食品です。おめでたい席や大事な方への贈り物にも使われます

 さて、今回のSDGsカフェの話が舞い込んだ時、最初は「地域にある中小の伝統企業とSDGsの関係がピンとこなかった」という四十万谷さん。しかし改めて金沢SDGsを見直してみたら、自分たちの日々の活動と関わっていることが多いのに気がついたそうです。発表では、金沢SDGsの5つのテーマに沿って、四十万谷さんたちの日々の活動との関わりについて考えていただきました。

*金沢SDGsの「5つの方向性」の紹介はこちらをご覧ください。

 

「自然、歴史、文化に立脚したまちづくり」から考えてみる

 歴史とか文化に関わることが多い、伝統的であって特徴のある発酵食品をたくさん作っていますが、実は「特に若い世代にその価値を伝えられていないのでないか?」という悩みがあるそうです。

「全国各地で伝統的なものを引き継ごうと思っている方は、皆さん同じことを考えていると思いますが、昔からある伝統的なものを作って、『これは大事なものなのです。だから残してください!』とお願いしたところで、お客さんが『やばい、これ残さなくちゃ!』というふうにはほとんどなりません。今の時代には、こんないいことがあるよとか、これ食べたらこんなにおいしいよという、 “いいね!”と思ってもらうことが重要で、そう思われれば残っていけると考えています。どうすればいいねと思ってもらえるか、それを大事にしたいです」

 そのために、若い世代に糀や発酵食の良さを伝えるワークショップを開催したり、健康経営を推進されている方たちと組んで発酵の価値を届けるようなことをやったりと、“発酵食のいいね!”を知ってもらうために、多様な取り組みを行っています。コロナ禍もあって、現在はオンラインで「みんなで漬けよう!オンライン糀漬け体験」というワークショップも開催しており、これがかえって今までかぶら寿しとか大根寿しとかにあまり興味がなかった方々にも触れていただく好機になっているそうです。

「環境への負荷を少なくし資源循環型社会を」目指す

「大きなテーマなので、最初は私たちと関係あるのかと思いましたが、3年ほど前に入社して以来、感じていたことに気がつきました。それは、物づくりの段階で廃棄している部分がすごくたくさんあることです」

 かぶら寿しとは贅沢な食べ物なので、丸いかぶの真ん中しか使わず、形を整えるためにかぶからはみ出した鰤をカットしますが、それも廃棄されるものもあるのだとか。

「もったいないし、せつないという思いがあります。これをなんとかできないかということは、実は私の父もずっと思っていたそうです」

 現在、石川県立大学の学生さんにプロジェクト型のインターンに参加してもらい、使われなかった材料を生かした製品開発をするプロジェクトを始動させたそうです。

 また、使うことができない野菜のくずは、自社で機械を導入し、圧縮して肥料に回すことを始めました。四十萬谷本舗には自社農園があり、かぶに関して年間で30トンくらいを廃棄していましたが、全てを肥料にして畑に戻し、かぶの廃棄はゼロになったそうです。

「小さなスケールですけど、自社農園の中で循環しています。廃棄の費用もかからない上、畑の肥料にもなるので、とても良い結果が出せました」

 一方で、地方の中小企業でも、地球規模の環境変化の影響を受けることは多いと言います。

「一番大きいのは原材料、昔から使っている原材料の中には、イカやニシンなど、今後入手が困難となりそうなものが結構出てきています。気候が変わってくると取れる作物なども変わってくるので、私たちにとっては大問題です」

 さらには、かぶは自社農園と契約農家さんに作ってもらっているそうですが、就農者の高齢化が進み、5年後、10年後まで続けるのはしんどいという声も上がっているそうです。作り手の方々が一緒に発展していける関係にあるのか、若い方が一緒にやってくれる環境にあるのかということも非常に大事だと述べました。

 

「次世代を担う子供達の可能性を引き出す環境」を作る

 子どもたちにこの土地の文化とか発酵食の魅力を伝えていき、そこから何かを感じ取ってもらえたらと考えて、「親子で糠床教室」や「自社農園でかぶ収穫体験」などを、続けていると言います(「誰もが生涯にわたって学び活躍できる社会風土をつくる」について、今回は触れませんでした)。

「文化や産業に革新的イノベーションが起きる仕組み」も始動

 今年に入って、四十万谷さんと同じ30代の大都市圏の方に、副業として四十萬谷本舗に関わってもらい、課題を解決しようという取り組みをやっているそうです。
 四十万谷さんは夫婦で6代目を継ぐべく金沢にやってきましたが、お二人ともが人事の仕事をしていた関係で、マーケティングの肌感覚もわからないし、テクノロジーが今どうなっているのかも、法務と言われても・・・と、わからないことが多く、悩みを抱えていたそうです。

「家業に入り、日々現場のことをやっていると、発想が現在までの延長線上の改善に偏ってしまいます(知の深化)。それもすごく大事ではありますが、新しい、別の発想を得てきてイノベーションを起こすこと(知の探索)がなかなかできないということがありました」

 前職を含め、さまざまな方々とお会いする中から、都市の大企業で働きながら、“自分の力とか知見で地域を良くすることに貢献したい”という、純粋で熱い思いを持っている人がたくさんいることを実感。そういう人たちと一緒にやりたいと考えて始めたそうです。

「私たちはもちろん、彼らも得るものがいろいろあると言います。私たちは小さい企業なので、こういう専門的な方にフルタイムで来ていただくのは難しいですが、このような形で一緒にやれているのがありがたいなと思っています」

 これは、四十萬谷本舗に限ったことではなく、都市の人たちと地域の自分たちの関わり方が変わっていくことで、どちらも元気になっていくのではないかと感じているそうです。

 地域との関わりが強く、その思いが強くなれば定住・移住となり、これが増えることが望まれますが、それは限定的なこと。四十万谷さんたちがいま行っているのは、地域企業と協働しながらいろいろな人と触れ合い、関係するということで、地域の人は彼らから知見を得て、いまある地域の価値をどんどんブーストしていくことができます。一方の彼らもこの経験をもとに、人との繋がりとか、何かの成長につなげていくことができたりすると言います。

「こういう動きが、この地域に広がっていったらいいなと思っています。ここから新しい発想やイノベーションができたらいいですね」

 

2030年の金沢の姿。こうなるといいなをIMAGINE

 四十万谷さんは、次の3つを挙げました。

①地域内、地域外のつながりと協働がもっと進んでいると、個人的には元気になるなと思っている

②金沢の生活に息づく文化の魅力を私たちが発信できている

 意外と地元のものづくりを知らず、地元の伝統を体験することもあまりやってこなかったということを、今回のコロナ禍で気がついたそうで、まずは地元のことを知って、消費して、体感し、それを来るべきもっと移動が盛んになった時に、発信できればいいと考えているそうです。

③各事業に関わる方々が持続的に発展できていると言うこと

 最後に、ESG要素と地域中小企業との関係についても整理してくれました。

①地域の中小企業ほど、大きな影響を受ける

 ESGやSDGsとの関わりを考えた時、最初は地域の中小企業にはあまり関係がないと思ったそうですが、材料の話、物づくりの話などはダイレクトに影響を受けることを認識。ちゃんと文化を価値あるものとして伝えていけるか、今まで通りの原料で作れるか、影響は大きいと述べました。

②お客様から選ばれるための基準として・・・

 お客様がどこから物を買いたいかと言うと、環境とか社会とかガバナンスもしっかりしているところから買いたいという思いがあると述べました。

③多様な人材から選ばれるための基準として・・・

 一緒に働く先としてもESGのことをちゃんとしているところが選ばれて、一緒にやっていきたいと思ってもらえるのではないかと述べました。

 

ESGの本も出し、その流れをずっとウォッチしてきた
夫馬さんからアイデア提供

 東京からのリモート参加で、「本当は金沢に行きたかった!」と言う夫馬さんからは、「ESGと金沢」についてお話しいただきました。
 夫馬さんによると、ESGの話と地域の話は非常に密接な関係があるそうです。

 まずは、ESGについておさらい。
 Environmental(環境)、Social(社会)、Governance(統治、あるいは経営)。この3つについて投資家が着目し始めていることから、ESGという言葉が登場したそうです。

夫馬 賢治(ふま けんじ)/株式会社ニューラル 代表取締役CEO。サステナビリティ経営・ESG投資アドバイザリー会社を2013年に創業し現職。東証一部上場企業や大手金融機関をクライアントに持つ。著書『ESG思考』(講談社+α新書)他。ニュースサイト「Sustainable Japan」編集長。ハーバード大学大学院リベラルアーツ修士課程(サステナビリティ専攻)修了。サンダーバード・グローバル経営大学院MBA修了。東京大学教養学部(国際関係論専攻)卒

 また、ESGはSDGsと密接な関係があると言います。SDGsは「持続可能な開発目標」と言いますが、裏を返せば、実は今は持続可能ではなく、持続可能にしなくてはいけないということになります。これは発展途上国だけの話ではなく、ある専門機関がSDGsの17あるゴールの毎年の達成状況を調べているそうですが、例えば日本なら、4段階の評価で一番高い評価を得られているものは3つしかなく、逆に一番低い評価のものが5個もあるそうです。
 つまりは日本も持続可能ではなく、持続可能にしていくためにはやらなければいけないことは山ほどあるということです。その中には企業が変わっていかないといけないこともたくさんあって、そこに着目しているのがESGということになります。

「世の中が持続可能であれば、投資家が企業を見るときにESGに着目することはなかったはずで、実はもう持続可能でなくなっていて、さらに今の企業のあり方すら持続可能ではない(つまり倒産するかもしれない)という危機感を持っているので、このESGが重視されています」

 ところで、このコロナ禍でESG投資はどう変化したのでしょうか? 一時期メディアからはSDGsという言葉が聞かれなくなり、多くの方がESG投資も減っているのではないかと思われています。しかし、日本ではわずかしか増えていませんが、海外では、2割、3割増と大幅に伸びているそうです。

 

機関投資家が上場企業でチェックしているESGの観点は多様

 二酸化炭素の排出量や水の問題、廃棄物など、環境(E)の方はわかりやすいですが、社会(S)のテーマは非常に多様だと言います。社会の中でいま一番ホットなテーマは、「人的資源」、つまり労働者だといい、社会といっても会社の中にある社会、つまり労働者の方々の評価というものが一番大きなウエイトを占めていると言います。

 ガバナンス(G)のところでは、取締役会にどういう専門家がいるか、また取締役会の人はどういう評価制度で評価されているのかというのもあるそうです。

 多岐にわたるこれらをチェックして、点数がつけられます。これがいまのESG投資と呼ばれる世界。全て定量評価になっているため、上場企業はその辺りの情報開示をしないと点が上がりません。中身のないことを言っても当然評価されず、かなりシビアな評価がされているようです。

 気候変動がもたらす変化により、日本の農林水産関係での被害額も右肩上がりで増加しています。世界的にみると自然災害による保険損害額は大幅に増えていて、東日本大震災クラス以上の被害が世界では毎年のように発生しています。この損害を止めなければいけないという深刻な状況になっているのです。

 

機関投資家がESGを重視する理由

 このような中でESGを重視する機関投資家(公的年金、企業年金、保険などの大口投資家)たちは、何を大事にするか──。やはりCO2を減らさないといけないということで、投資家自身が各国の政府に対し、「もっと削減をさせるような法制度を入れなさい」と指導をしています。こんなに自然災害ばかりでは企業経営がままならなくなり、投資家たちはそうすると自分たちの投資の値段が下がってしまうために、自らが環境規制を強化しようという動きになっているとのこと。例えばプラスチックの消費を減らそうというのも、このような投資家からの強いメッセージが影響しているそうです。

 食品廃棄物を減らすという動きも同様。また、廃棄物から飼料を作ろうという流れがあり、そうすれば飼料の主原料となる大豆の生産を抑えることができます。実はその大豆を育てる農地を作るために、多くの熱帯雨林が破壊されています。アマゾンなどの熱帯雨林を守るために、投資家たちは強く迫り、企業側も自主的に取引条件に課すようになっていて、きちんとしていない原料メーカーからは買いたくないという動きが海外では強くなっていて、日本でも一部の大手小売業者などが取り組み始めています。

 

これから生産年齢人口が一気に減少する金沢

 金沢の社会のSの話。生産年齢人口の話はとても重要です。すでに高齢者は急激に増えつつありますが、いよいよ本格的な人口減少が始まります。生産年齢人口が一気に減少していくというのが、これから金沢市が迎える世界。その中で経営をしていかないといけませんし、地域社会も支えていかないといけないということになります。

 金沢は大都市なのでまだましで、日本の将来の人口では2100年には明治維新の頃に逆戻りになると言われています。未曾有の人口減少社会をどう乗り切るか? 労働力不足はますます激しくなります。この10年間、女性の活躍ということで、かなりの人手を確保してきたことは事実ですが、まだまだ女性にとっては働きづらい社会。これからますます人が減る中で女性が働きづらいままだと、女性が実力を出せなくなってしまうでしょう。

 さらにもう一つ。この人口減少を乗り切るために、外国人に頼るというのもあります。石川県もこの数年で急激に外国人が増えています。
 しかし、厚生労働省が全国の外国人技能実習生という制度を使っている企業の監督指導を行ったら、70%の労働基準関係法令違反があったそうです。このままでは外国の方も来てもらえるか? 難しい状況にあるのではと夫馬さんは危惧します。

実はESG投資はとっても身近な話だった

 株式や社債という形で上場企業や大きな銀行に投資している機関投資家はいま、ESGの観点から投資の判断をしています。この話だけでは、地域の方からは少し遠い話だと思われるかもしれませんが、機関投資家は金沢市の地方債の投資家であったりもします。

 地方債を買っているのは個人もいますが、機関投資家や銀行が買って、金沢市なりの財政を支えています。すなわち金沢市がこれからESGに対して、どれくらい改善していけるかということが、地方債を出す上でのポイントになってくると言います。

 日本の大半の企業となる非上場企業は上場企業から発注を受けたり、銀行からも融資を受けたりします。いま銀行も投資家から評価を得るために、ESGの観点で融資を行うということが大事になってきています。

 発注をする上場企業は、「どれだけ持続可能になっていけるか?」ということが経営の判断材料になっています。グローバル企業から一次サプライヤー、二次サプライヤーとつながる中で、取引先の企業から「環境や社会についてはどうしていますか?」と聞かれる時代が始まっています。少しタイムラグはありますが、地方の非上場企業にもこのような話がやってきます。そしてきちんとしていないと、取引をしてもらえなくなるということになります。

 金沢SDGs「5つの方向性」の冒頭のメッセージに書かれた「今後さまざまな主体とともに、実現に向けた行動計画を策定します」が、夫馬さんから見るととても大事なポイントだと言います。

 行政もESGを測定していかなければならなくなり、地域の自治体向けの指標(ISO37120)もあり、海外では増えてきていますが、日本でこの指標で評価している自治体はまだわずかだそうです。

「金沢がSDGsの行動計画を作っていくときに私から提案をしたいのは数値目標です。現状を数値で評価し、把握して目標を立てる事は非常に大事です」

 機関投資家が運用するお金はどこからきているかというと、実は私たちの年金や保険の掛け金です。機関投資家たちはESGで判断していますが、私たちが声を上げていけば行くほど、機関投資家たちはもっとESGのことを考えるようになり、実際にそれが起こっています。

 

さまざまな主体による連携がますます重要に

 地域は事業者の皆さんに元気がないとどうしても萎んでしまいます。事業者の皆さんが持続的に経営していくためには、いま社会にどんな課題があるのか、環境影響をどう受けるのかということを気にしながら経営をしていくことが大事になってきます。そのために考えて、工夫して、さらにイノベーションを起こしていくということは重要です。

 イノベーションをしたり、新しいことをしたりするにはお金(資本)が必要です。この資本を支えるためには、例えば銀行が地域の皆さんが何にお金を使おうとしているのか、それが長期的なものであればしっかり支えて行こうとするような長い目で見た金融機関の経営も非常に大事になってきます。

 また、市役所が町の課題を数値にしていろいろな方に示してくれると、事業者の人たちにも課題が見えてくるようになってきます。そして、どこに向かっていくのか? 目標を一緒に考えていって欲しいと強調します。

 町の生の声は行政が知らなかったりすることもあり、町の中で活動するNPOの方がよく知っていたりするので、プロジェクトにはそう言ったNPOも巻き込み、町の声をしっかり事業者に届けていくことが求められます。そしてこういう社会の変化にも対応していかないといけないということを伝えてくれれば、事業者にとってNPOは、とても頼りになる存在となります。

「主役は事業者の皆さんで、行政と金融機関、NPOと協働する、これこそ私が実現すればいいなと思っている姿です」と述べて、夫馬さんからのアイデア提供は終了しました。

夫馬さんが今年出版した書籍

ESGもSDGsもこれからは情報公開が大事になる

 お寄せいただいた質問に答えながら、夫馬さん、四十万谷さん、永井の3人のフリートークとなりました。その一部を抜粋してお伝えします。

永井:「ESG投資の理念はわかるが、一個人が行動を起こせるものにはどのようなものがあるか? また、目先のご飯が食べられないと将来の展望は描くことができない。その辺りはどう考えれば良いか?」という質問が寄せられています。

四十万谷さん:野菜の廃棄のことを紹介しましたが、はじめに高い理念があったのではなく、廃棄物の処理費用が一気に値上げするという話があって、この費用を払っていたらご飯が食べられなくなると思って始めました。このように高尚な理論からではなく、目の前のご飯のことを考えて行動したら、いい結果が得られるということは、もしかしたら相当あるのかもしれません。

夫馬さん:環境面、特に資源やエネルギーに関わるものは、コスト削減でやったら環境にも優しくなったということはしばしばあります。ひと昔前の電球をLEDに変えたのがまさしくその良い例。LEDは電気の使用量が減って環境にも優しいですが、多くの人は電気代を下げたくてやっています。

永井:大上段からとてもいいことをすると考えるのではなく、目の前の課題を解決しようとするときっとそこにEかSかGに繋がっていくことになるということですね。
ところで、大企業はディスクロージャーの開示義務がありますが、中小企業などのESGの中身を一般の人が理解するにはどうすれば良いのでしょうか。

夫馬さん:消費者の視点で考えた場合、開示がないのは難しく、まだ時間がかかるかもしれません。上場企業はホームページなどで開示されているものが多く、情報はありますが、それでも見分けられないところはたくさんあります。その会社が今後どういう課題に直面しそうかということを自分で考えてみて、その上でその会社の開示されている情報を見て、本当にやっているかどうかを判断することになります。つまり、それで「自分が説得されたかどうか」が大事です。

永井:企業側の取り組みをESGというか、会社としてのステイタスを上げるための発信という意味で、四十万谷さんは何か心がけていらっしゃることはありますか?

四十万谷さん:私たちの上の世代に多いかもしれませんが、企業がESGとかSDGsの取り組みをしていることをオープンにしようという発想になっていない方もいらっしゃる気がしています。「お客様にはいい品物を届けることが一番」という考えが強く、普段当たり前にやっていることが実は自然のことを考えているなど、それをあえて伝えようとする発想がないのかも。これからは、その情報をお客様に出していくことが必要だということを、それぞれの企業が認識することが大事であり、そのような情報がどんどん出てくれば、買う方も選ぶ材料になります。

夫馬さん:情報を積極的に開示するということはとても大事なこと。知らなければ評価されません。それは消費者からもありますが、銀行からの評価や、行政の方が知ったらもしかしたら応援したいということになったかもしれない、そういう地域には眠っている企業がたくさんあります。開示したことで、たくさんの支持が得られて、事業がやりやすくなったという事例も多くあります。

永井:最後にお二方から、これから日本のESG投資はどうなっていくかについて、一言ずついただいて、今回のSDGsカフェを閉めたいと思います。

四十万谷さん:今回の機会でESG投資と私たち地方中小企業との関わりがすごく見えたような気がしています。世の中がどんどん変わり、環境的にも洪水が頻発したり、いろいろな廃棄物の問題があったり、そして自分たちの生活も影響を受けている中で、「じゃあどこの企業を応援したいか? どこの製品を買いたいか?」というと、やっぱり「そういうことをちゃんと考えている企業の製品を買いたい」という人が一定以上いらっしゃると思います。そういうことを皆さんと一緒に考えて、少しでも次の世代の世の中で、いい企業活動ができるようにやっていけたらなと思っています。

夫馬さん:地域の方はおそらく都会の方より横のつながりが強いのかなと思います。この分野では「協働する」ということは避けて通れません。他の方々と喋る時間を積極的に作っていただけると、いい意味での地域での資金循環ができてくるかなと思っています。

 

 

 

全部通しで見たい、もう一度見たい、という方はコチラからご視聴いただけます。OUIKチャンネルのサブスクライブもよろしくお願いいたします。

国連持続可能な開発目標に向けた 青年キャパシティ・ビルデン グ・ワークショップ

日時 / Date : 2016/07/15 13:00 -17:00
場所 / Place : 金沢大学中央図書館 オープンスタディオ 2階

国連大学サステイナビリティ高等研究所と金沢大学留学生センターは、日本で学ぶ留学生によるSDGsワークショップを開催します。このワークショップは、7月11日から14日まで行われる、金沢市を中心としたSDGs達成のためのフィールドワークの報告会を兼ねています。金沢大学留学生センターに在籍する留学生、国連大学サステイナビリティ高等研究所のアカデミックプログラムの修士、博士課程で学ぶ留学生が「創造都市・金沢」を建築、エネルギー、教育、自然資源管理などの側面から議論します。

SDGsに興味がある皆様のご参加をおまちしております。言語は英語のみとなります。 ご登録は ryukou@adm.kanazawa-u.ac.jp まで氏名、御所属を記載のうえお送りください。

寺社庭園からはじまるグリーンインフラ Vol. 1

心蓮社の庭園は真ん中に池、そして背後に山が広がる「築山池泉式」の書院庭園です。ゆったりと時が流れる空間の中にいつまでも眺めていたい風景があります。卯辰山の麓に位置しており、その庭園は山と一体化していることからも庭園という人の手によって作られた空間にいながら、大自然の醍醐味を味わえる場所となっています。

今年2度目の清掃活動、そしてグリーンインフラに関するワークショップが心蓮社で行われました。

今回は金沢大学の丸谷耕太先生、そして北陸先端科学技術大学院大学の坂村圭先生のゼミとの合同企画です。特別ゲストとして龍谷大学から林珠乃先生をお招きし、基調講演も行っていただきました。

はじめに国連大学のファン研究員より、この庭園清掃ワークショップの活動についての説明がありました。金沢市に多く残されている庭園のほどんどが維持管理に関する問題を抱えており、このようなワークショップは新しい庭園管理のシステムとして大変重宝されているそうです。

これまでに約340名の方がこのワークショップに参加しており、徐々に市民の生活にも溶け込んできました。ファン研究員は清掃を始める前と後に参加者にアンケートを行っています。その結果、庭園を清掃することでポジティブな感情が増加し、ネガティブな感情が減少することがわかりました。このような清掃活動は庭園の持ち主だけではなく、参加者にもプラスに働くことがわかります。

スペインから10年前に来日し、京都で日本庭園について学んだファン研究員ですが「京都の庭園と金沢の庭園の違いは?」という質問に、「京都は枯山水が有名で落ち着いた雰囲気、金沢の庭園は曲水庭園など、水がポイントになっていると思います。」という答えました。また、京都の庭園は観光名所になっている場合が多く、主に企業などが費用を捻出しているため管理システムが確立している。一方、金沢の庭園の場合は個人が所有している庭園が多く、維持管理していく上で所有者やその家族にかかる経済的・身体的負担なども懸念されているとのことです。

ファン研究員が7月に出版されたブックレット『金沢の庭園がつなぐ人と自然』でも述べているように、地域住人が自分たちが暮らす町の「庭師」として自然を守るために協力することが持続可能な「都市の自然」の実現につながります。

休憩をはさみ、次は滋賀県の龍谷大学からお越しいただいた林先生に「過去の文化的景観を可視化する」をテーマにお話しいただきました。

林先生は元々生態学を研究しており、その過程で生き物のことだけではなく、生き物と人、または自然と人の関係についても興味を持ち、現在は龍谷大学の里山研究センターで活動されているそうです。

金沢の日本庭園の文化的景観や生物の多様性がミクロな視点だとすると、今回の林先生のお話はもう少しスケールが大きいもので滋賀県の琵琶湖の周辺一帯が示された地図を使いながらマクロな視点で人と自然の関係を見ていきました。

日本の自然は「セカンダリーネイチャー」と呼ばれる、人が意図的に手を加えて維持管理してきた自然がほとんどを占めます。そのため、人々の生活スタイルや社会の変化により過去から現在に至るまで変化し続けてきたそうです。

林先生の研究では過去の自然環境や文化的景観にも着目し、土地の利用方法や自然環境の変化を調査しています。昔から現代に至るまで変わらずに存在する自然の利用方法を調べることで持続可能な人と自然のつながり方や、その土地の環境に合った産業などを示唆できるのではないかと述べました。

このような研究結果は例えば化石燃料に頼らない地域づくりや地域循環型社会を作る上でも将来的に役立つのではという意見もあるそうです。

 

林先生のレクチャーの後は、庭園清掃に取り掛かりました。

3つのグループに分かれ、主に秋になり増えてきた落葉を集める作業を行いました。

美しい秋晴れの昼下がり、庭園を住処にする生き物も発見できました。

また、今回の清掃活動に庭師の中見宰さんも参加していたこともあり、苔の手入れ方法など普段なかなか教わることのできないプロの技術や知恵も教えていただきました。

 

 

 

 

 

十数人で清掃し1時間ほどかけてやっと綺麗になりました。この作業を所有者や管理人が一人で行うのはとても厳しいことだと参加者の皆さんも身をもって体感したようです。

清掃後は恒例のアンケートを行い、その後ディスカッションセッションを始めました。

各グループは今回の体験で感じたことや印象を共有し、まとめたものを3分間のプレゼンテーションで発表しました。

「どんな庭園だと足をはこびやすいかな?」「落葉の活用しよう」「ゆるくできて楽しかった」などなど、沢山の意見が出る中、「この活動は単なる通常の清掃と見なすべきではない」という共通の見解に至りました。

庭園で自然に囲まれて過ごす時間は都市で暮らす人々にとってとても貴重な自然と触れ合う場であると共に共通の目的を持ちながらコミュニケーションを図り、人との関係を深める場でもあります。美しい庭園で楽しみながら学び、参加者の皆さんはとても満足したようです。

最後に心蓮社の住職であり、この庭園の管理者でもある小島さんから挨拶のお言葉とコメントを頂き、閉会となりました。

 

庭園クリーニングワークショップ@心蓮社

2019年7月4日、卯辰山山麓寺院群に位置する心蓮社(金沢市指定名勝)で、庭園クリーニングワークショップが実施されました。フアン(OUIK研究員)が率先して始めたこのプロジェクトに、アイーダ・ママードウァさん(金沢大学国際機構特任准教授)、飯田義彦さん(金沢大学環日本海域環境研究センター連携研究員)が加わり、共催でイベントを開催しました。

今回は、金沢大学に短期留学に来ているロシアのカザン連邦大学の留学生14名が参加しました。

開催当日は、ひがし茶屋街を散策しながら、金沢の文化や歴史などを学び、その後に心蓮社で庭園の清掃とお茶体験を行いました。

庭園クリーニングワークショップでの一日の様子を、ご報告したいと思います。

金沢について知る

まず初めに、街中にある地図を見ながら、

・金沢の人々の生活や文化に深く関わっている浅野川、犀川の二つの川について 

・金沢の三寺院群について

・金沢の交通網について

など、金沢の街の地形や文化、歴史などの説明を聞きました。

 

 

 

 

 

 

東山ひがし茶屋街を散策

続いて、重要伝統的建造物群保存地区ひがし茶屋街を訪れ、建築物や、金沢の伝統的な食文化、工芸品などについての説明を聞きながら、散策しました。

 

 

 

 

 

 

宇多須神社では、夏越の大祓(なごしのおおはらえ)という神事が行われており、茅の輪をくぐって参拝しました。参拝後、留学生たちはおみくじを引いて、とても楽しんでいるようでした。

茅の輪くぐり

おみくじを引いて楽しんでいる様子卯辰山山麓寺院群〝心の道″を歩く

ひがし茶屋街から心蓮社へは、〝心の道″を通って行きました。〝心の道″は細い小路になっており、とても静かでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

心蓮社 

心蓮社に着くとまずは、到着を待っていてくれた小島住職が心蓮社の歴史などについて教えてくれました。

 

 

 

 

 

 

心蓮社が現在の地に移ってきたのは1637年頃であり、そのときに庭園が造られたとのことです。庭園は江戸時代初期に作庭された築山池泉式書院庭園で、当時の寺院庭園として貴重なことから、金沢市指定名勝に指定されているそうです。

心蓮社庭園

小島住職は留学生に向けて、「日本滞在中に金沢、そして日本の文化を知り、その背後にある思想なども理解していただければと思います」と優しく語りかけていました。

留学生に語りかける小島住職

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここから庭園の清掃です。

まずは、清掃についての指導を受けてから、作業に入っていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

水の音やカエルの鳴き声を聞きながら、全員で落ち葉拾いを行いました。気づくと、無心になって清掃していました。庭園が綺麗になっていくと同時に、自分の心も整っていくような感覚がしました。 

 

 

 

 

 

 

庭園を清掃していると、緑が美しい苔や、キノコ、カエル、小さな草花など沢山の生物と出会いました。庭園は見た目が美しいと同時に、多様な生物の生息地としても大きな役割を果たしていると実感しました。

                    

 

 

 

 

 

お茶体験

庭園を清掃した後は、お茶体験をしました。

茶道の先生がお点前を披露して下さり、和菓子とお茶をいただきました。留学生の皆さんも正座をして、真剣に先生のお点前を拝見していました。

茶道に興味のある留学生三人は、実際にお抹茶を点てる体験をしました。とても緊張した面持ちで取り組んでいました。

 

 

 

 

 

 

自分たちが清掃した後の美しい庭園を眺めながら、幸せなひと時を過ごしました。

庭クリーニングワークショップの魅力

今回の庭園クリーニングワークショップの後、留学生に感想を伺ったところ、「庭園の清掃をしながら、庭園の造りなどをじっくりと眺めることができ、庭園の持つ素晴らしさを知ることができた」と話してくれました。

このような活動に参加することで、庭園のことが好きになったり、自然と私たちの暮らしとの関わりを考えるきっかけになると、改めて感じました。

また、庭園を眺めながらお茶をいただく時間は、自然と文化との繋がりを感じることができるひと時だと思いました。

 

OUIKでは今後も引き続き、庭園クリーニングワークショップを行っていく予定ですので、

ご興味のある方はぜひご参加ください。

 

報告:成嶋 里香(OUIKインターン)

 

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