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【イベント告知】 SDGsカフェ# 15 SDGsの学びの大動脈(!?)公民館を使おう

★このイベントはオンライン開催です。こちらより事前登録が必要です。

SDGsの実践には、一人でできること、仲間と進めること、コミュニティで取り組むこと、市全体で広くできること、そしてネットで世界中の人と繋がりながらやっていく方法、いろんな形が考えられます。「金沢SDGsにはどんなやり方がいいだろう?」と考えた時に地域の学びを担う公民館の役割をもう一度見直してみたくなります。

金沢の公民館制度は少し特殊。金沢方式と呼ばれるやり方は、小学校の学区に沿って公民館が設置され、役員や職員も地域から選出、運営資金も一部地域で負担しています。この金沢方式により地域事情に明るい職員さんが運営を担うことで住民に寄り添った様々な活動の拠点となってきました。

しかし地域住民の高齢化、ドーナツ化現象などの人口動態の変化、町内会加入率の低下など公民館機能を維持する住民側の事情も近年で大きく変わってきています。もっと多様な年代、属性の人が公民館を身近に利用するようになれば、金沢市に張り巡らされた62の公民館がSDGsの学びのネットワークになるような可能性を感じませんか!
今回2030年をIMAGINEしてくれるのは、そんな公民館の可能性を体現されている、菊川町公民館主事の原恵子さんです。地域の学びを量産する原さんは、企画するイベントは満員御礼を連発、学生さんとのコラボなど縦横無尽に多様な人と協働を進めます。

そしてアイデアを提供してくださるのは、社会教育がご専門で公民館を中心にすえたまちづくりに長く携わってきた金沢大学名誉教授の浅野秀重さんです。
皆さん、奮ってご参加ください!特にこれまで公民館とは縁遠かった方々、SDGsで公民館とつながってみませんか?

【プログラム】

●金沢SDGsの紹介:永井 三岐子(国連大学IAS OUIK事務局長)

●IMAGINEする人:原 恵子さん(菊川町公民館主事)

●アイディアを提供してくれる人: 浅野 秀重さん(金沢大学名誉教授) 

●オンラインディスカッション

 

【登壇者プロフィール(登壇順)】

原 恵子(はら けいこ)

菊川町公民館主事

金沢市出身

1986年 スイミングスクール・インストラクター

2015年 菊川町公民館主事

 
 

浅野 秀重(あさの ひでしげ)

金沢大学名誉教授

千葉県生まれ

1980年 石川県立学校教員

1987年 石川県庁及び県教育委員会等勤務

1998年 金沢大学教員

2019年 金沢大学名誉教授

 

OUIK 生物文化多様性シリーズ#5 金沢の庭園がつなぐ人と自然  ー持続可能なコモンズへの挑戦ー

金沢の日本庭園の活用方法を防災、観光、景観など多面的なアプローチから解説すると共に、持続可能な都市と生態系保全に向けたアイデアを提唱しています。

国連持続可能な開発目標に向けた 青年キャパシティ・ビルデン グ・ワークショップ

日時 / Date : 2016/07/15 13:00 -17:00
場所 / Place : 金沢大学中央図書館 オープンスタディオ 2階

国連大学サステイナビリティ高等研究所と金沢大学留学生センターは、日本で学ぶ留学生によるSDGsワークショップを開催します。このワークショップは、7月11日から14日まで行われる、金沢市を中心としたSDGs達成のためのフィールドワークの報告会を兼ねています。金沢大学留学生センターに在籍する留学生、国連大学サステイナビリティ高等研究所のアカデミックプログラムの修士、博士課程で学ぶ留学生が「創造都市・金沢」を建築、エネルギー、教育、自然資源管理などの側面から議論します。

SDGsに興味がある皆様のご参加をおまちしております。言語は英語のみとなります。 ご登録は ryukou@adm.kanazawa-u.ac.jp まで氏名、御所属を記載のうえお送りください。

OUIK 生物文化多様性シリーズ#4 「地図から学ぶ北陸の里山里海のみかた」

OUIK初のマップブックとして、北陸地方の里山里海の現状や変化、多様な見方を地図から学ぶ教材を発刊しました。北陸地方(石川、福井、富山、新潟、岐阜)のスケール、石川県のスケール、七尾湾のスケールといったマルチスケールでの地図情報をまとめています。(PDF:95MB)

関連ページ(Collections at UNU)  http://collections.unu.edu/view/UNU:6540

【開催報告】SDGsカフェ# 14 もったいないがないまちに向けてエネルギーの「地産地消」を考える

新鮮でおいしいし、地元を応援したいという気持ちもあって、積極的に地元産の野菜を買うという方も多いでしょう。
では、電気はどうでしょうか?

SDGsゴール7では「エネルギーをクリーンにそしてみんなに」という目標が掲げられています。化石燃料由来ではなくて、再生可能エネルギーを選んだ方がよいのはわかっていても、具体的なアクションはなかなか取りにくいものではないでしょうか。

今回は金沢、あるいはもう少しひろげて北陸での地域で使うエネルギーの地産地消について考えます。エネルギーのもったいないがないまち、そして気候変動というグローバル課題に貢献できるまち金沢の実現に向けて、2030年をIMAGINEしてくださったのは、石川で太陽光、風力発電所を市民出資で立ち上げ活動している金沢市民発電所の永原伸一郎さん。
そしておひさま進歩エネルギー株式会社の谷口彰さんから、市民共同発電所の国内外の先進事例をアイデア提供として紹介してくださいました。

金沢で着実に動き始めているSDGs

UNU-IAS OUIK事務局長・永井三岐子

 まずは国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)の永井事務局長から、今までの13回+番外編1のSDGsカフェの振り返りと、SDGsのおさらいを。

 内閣府SDGs推進本部が2018年からSDGs未来都市認定を開始し、今年は金沢市もSDGs未来都市に認定されました。そして、持続可能な観光を行っていくことがモデル事業に採択されたことを紹介。

 また、IMAGINE KANAZAWA 2030では、金沢ミライシナリオをパートナーシップで実践する、パートナー会員を募集していることもご案内しました。企業、NPOやサークルなどの団体、個人の方などどなたでもご入会いただけますので、ご興味があれば、まずは下記をご覧ください。

IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ

2030年の金沢をIMAGINE
「市民の力で持続可能な社会へ!」〜金沢市民発電所の取り組みから〜

持続可能なエネルギーを市民の手でつくる意義とは

金沢市民発電所代表社員・永原伸一郎さん

 

 金沢SDGsには「5つの方向性」があります。その2、「“もったいない”がないまち 環境への負荷を少なくし 資源循環型社会をつくる」が今回のSDGsカフェのテーマとなります。まずは、合同会社金沢市民発電所代表社員の永原伸一郎さんに、どのような活動をしてきたかということと、永原さんが想像する2030年の金沢についてお話をしていただきました。

「市民発電所」とは聞き慣れない言葉かもしれません。地域エネルギーの地産地消と自立を目指し、市民や地域コニュニティが、再生可能エネルギー事業に出資し、建設・運営を行う取り組みのことです。福島原発事故および2012年7月から再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が施行されたことで大きく広がりました。永原さんたちは石川県で最初にこの取り組みをはじめました。

 永原さんは2003年から3年間、金沢まちづくり市民研究機構の環境グループに所属し、2005年には環境グループで、風力発電の割合が世界一のデンマークへ視察に行きました。 デンマークは発電の50%以上が風力で、日によっては100%以上となり、輸出もしている風力大国です。そして特徴的なのは、風車の80%以上が地元の共同組合(つまり地域の人)が所有していること。大企業がほとんどを所有している日本とは全く違っているそうです。

 デンマークでの視察が転機となり、帰国後、メンバーは政策提言だけではなく、実際に自分たちも何かをやりたいと思うようになったそうで、2006年にNPO法人市民環境プロジェクトを設立しました。そして、2010年には北陸初の市民風車「のとりん」をつくることができました。しかし、2006年に建設が決まった翌年に能登半島沖地震が起こり、そのあともリーマンショックがあったり、野鳥の通り道となるので移動を余儀なくされたり、ほかにもいろいろあったそうですが、なんとか完成にこぎつけることができました。建設費約5億円のうちの約3億円を405人の市民出資者でまかなったそうです。

のとりんは高さは110m、定格出力は1980kw、約1000世帯分の電力を発電

環境と経済を両立させて、持続可能となる市民発電所

「環境に優しいまちづくりには住民の意識の変革が必要だと考えています」と述べる永原さん。市民の手によって発電する“市民風車”という仕組みはすばらしいものだと勉強で学んでいましたが、のとりんによってそのことを実感できたといいます。

 のとりんをつくった当時は、自然エネルギーに対しての意識・関心が低く、出資者もほとんどが県外でした。また、金沢から離れていて、地元・門前町の人とのコミュニケーション不足だったことも課題だと言います。そういった中で、今度は金沢周辺でもぜひやりたいと思うようになったそうです。

 2011年に東日本大震災が発生して、国民の目が変わり、金融機関の見方もガラリと変わり、のとりんへの取材が殺到しました。その翌年には、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が始まり、これにより市民発電所の取り組みにも大きくはずみがつきました。

 2012年度、「保育所等に市民発電所をつくろう」と金沢市環境政策課が行政提案を行い、受諾団体に応募して受諾。そこで、市民出資の太陽光発電事業等を行うために合同会社金沢市民発電所が設立されました。金沢市内の公立を除く全保育園・幼稚園134園に太陽光発電の設置に関するアンケートを送り、81園という高い割合で回答があり、現地見学や園長・理事長と交渉を開始。しかし、アンケートでは好印象だったにもかかわらず、実際に交渉に入るとさまざまな問題が出てきて難航。1年半が経ち諦めかけていたところ、2014年ようやく2つの園に市民発電所をつくることができました。

 翌年、2015年には保育園・幼稚園はもう無理なので、介護福祉施設に設置をしました。この時は2回めでしたので少し余裕ができ、エネルギーの地産地消だけでなく、食の地産地消もやろうということになり、地域環境保全に取り組む農業生産者の地元農産物や加工品が配当として選択できるようになりました。

 さらに2016年にはかほく市民発電所をつくりました。この時は固定価格が27円の時代で採算が悪く、「やるつもりはなかった」と永原さんは振り返ります。しかし、かほく市の元公務員の方から、かほく市にとってもこの上ない取り組みだと熱烈なラブコールを受け、行うことにしたそうです。1口20万円で、100口を募集。契約期間は15年で目標分配利回りは2.0%。農産物での現物分配も選択可とし、さらに、抽選で出資者の中から毎年1人に、ルビーロマン1房をプレゼントしているそうです。さらに、かほく市に通勤・通学・在住の方にかほく市商工会が発行している共通商品券を毎年贈与し、地域経済の循環に弾みをつける取り組みも実施しています。また、地域連携協定を締結して災害時には設置している地域に電力供給を行います。

「市民発電所は地域に役に立つ、親しまれる事が大事だと思います」と永原さん。

かほく市民発電所

家庭では電気の自給自足があたり前となる2030年

 太陽光以外に木質バイオマスにも取り組んでいるといいます。石川県、特に金沢は放棄竹林が増えており、これを地産地消の木質バイオマスのエネルギーとして利用できないか、関係者を集めて策定委員会を開催。竹チップを温浴施設のボイラーで燃やす実験を実施しました。その結果、竹チップと廃材チップの混合比を工夫すれば、既存のボイラーでも問題なく燃焼することが確認できました。この成果は日本エネルギー学会でも発表しているそうです。

 2030年の金沢は、ZEH(ゼロエネルギーハウス)が普及して、災害に強く、環境にやさしいまちになっているのではないかとIMAGINEする永原さん。ZEH(ゼッチ)とは発電量が1次エネルギーよりも多い住宅のことで、電力の自給自足が可能になるといわれているそうです。大規模災害が起こり、停電した場合でも電気の使用が可能で、実際、2018年の北海道胆振東部地震のブラックアウト時も、ZEHに住んでいて停電に気づかなかった人もいたそうです。省エネ性能が高く、太陽光発電を活用するZEHは、温室効果ガスの削減効果がとても大きく、環境負荷を小さくできます。

「私が環境に取り組む最大の目的は地球温暖化防止ですので、これは非常に期待できますし、これから一気に普及するのではないかと思っています」と述べて、発表を締めくくりました。

 

話題提供
再生可能エネルギーで地産地消 〜地域をエネルギーで豊かに〜

北陸の電気は地産地消率で全国No.1

おひさま進歩エネルギー株式会社の取締役・谷口彰さん

 全国に約800カ所ある市民共同発電所のうち、その半数を運営しているおひさま進歩エネルギー株式会社の谷口彰さんから話題提供として、市民共同発電所の海外での先進事例や、実際に運営していく上での苦労話なども踏まえつつ、再生可能エネルギーについてお話をしていただきました。谷口さんは、金沢に2年半ほど滞在して、金沢市民発電所の協力をしたこともあり、金沢ともゆかりのある方です。

 まずは全体的な話を。2018年度の国内の自然エネルギーの比率は17.5%となっています。太陽光発電がFITで非常に伸び、大規模水力を抜いています。ただし、太陽光や風力は24時間発電しているものではなく変動します。一方で、バイオマスや地熱、小水力は同じ自然エネルギーでも24時間安定した電気を供給することができるのです。しかし、自然エネルギーの比率が増加しているといっても、石炭やLNG、石油といった化石燃料による発電が全体の4分の3以上を占めているのが実情です。

 続いて北陸の自然エネルギーについて紹介がありました。自然エネルギーの率は全国よりも高く、30%を超えています。その理由は豊富な水資源を利用した水力発電によるものです。再エネ比率は高く、地産地消率も全国トップという北陸の電気は一見エコに思えますが、実はCO2排出も多いそうです。それは全国に比べると石炭火力発電の比率が高いためで、CO2の排出係数を伸してしまっています。石炭からのシフトで、さらに地産地消でエコな電気への転換を考えていく必要がありそうです。

 さらに海外での状況の紹介がありました。世界で自然ネルギーの比率は、電気、交通、熱の3つの用途別の分野に分けてみると、熱分野が半分を占めていることがわかり、その熱の1割にしか自然エネルギーが使われていません。エネルギー全体で見ると自然エネルギーが占める割合はまだ少ないと言えそうです。

 その一方で変動する自然エネルギーの割合が50%を超える国もあります。中にはデンマークのサムソ島のように自然と共生するエネルギーが地域に全て揃い、エネルギー自給率が100%を超えているところも。スウェーデンのルンドエナジーという会社ではバイオマス燃料を中心とした温水による熱供給を行っており、地区の50%に達しているそうです。

「日本にも木質エネルギーなどが豊富にあるため、このようなことを為していけると考えています」と谷口さんは言います。

 再エネ先進諸国の一つ、ドイツの再エネ発電設備への投資主体を見ると、個人が一番多く、その次が農家、さらに中小企業など、8割以上が地域につながる主体であり、実際に伸びている先進諸国の事例を見ると、市民の力が再エネ省エネの裾野を広げるのに必須だということがわかります。

 地域の個人から始まってできた市民共同発電所など、省エネ・再エネに人がどのような動機で協力しているかというと、地域課題解決や地球温暖化防止もありますが、やはり経済効果というのが大きな柱として存在しています。問題解決をするといっても、発電所をつくるためには初期投資が大きく、お金が成り立たないとなかなか難しいという状況があります。

 

飯田市には市民が出資する発電所があちこちに

 飯田市は長野県南端の市で、年間日照時間約2,000時間という日照時間に恵まれた地域です(全国平均が1,900時間程度、金沢は1,800時間程度)。市民ファンドを使って太陽光を中心としている市民共同発電所が400カ所以上もあります。もともとはNPO法人が寄付を募って市民共同発電所を1カ所つくったときに、飯田市が環境省の「環境と経済の好循環モデル事業」の補助金をとったのがきっかけでした。このモデル事業を地域で実際にやっていくプレイヤーがなかなかおらず、結局、おひさま進歩エネルギーという会社を立ち上げて、この事業の委託を受けることになりました。

 市民出資のおひさまファンドによる太陽光発電事業の仕組みは、地域を中心に全国の人々からおひさま進歩エネルギーが出資を受けて、そのお金をもとに、屋根に太陽光発電パネルを設置していくというもの。発電した電気は保育園や公民館などの施設に直接供給して販売するという、現地供給の事業をモデル化したものです。おひさま進歩エネルギーは電気代で回収して、それを出資者にお返ししています。事業開始からはすでに15年程度経っていて、最初のファンドは昨年、15年間で完済。こういった事業がきちんと回ることを立証しています。このことは、20年の長期契約や22円/kWhの買取契約など、飯田市が前例にとらわれない行政決断をしたことで、事業性が保てて、ファンドも募集することができているのです。

 市民の意思で飯田市を中心に長野県内や全国に設置された太陽光発電所の規模は、419カ所で、9,089.5kW。メガソーラーの場合、1カ所で1MW(1,000kW)とか10MW(10,000kW)の発電をしていますが、これは9MWを400カ所以上に分けて発電していることになります。1カ所平均20kW程度のサイズで設置をしているから、屋根から直接施設に電気を供給でき、非常時ももちろんそれを使うことができるということになります。

 さて、これによって地域経済が実際に活性化できたのでしょうか? 2030年までのおひさま進歩エネルギー事業による地域経済付加価値の累計ポテンシャルの予測を研究した立命館大学等の分析データを見ると、年間17.7億円の経済付加価値が出ているそうです。

 こういったことを1つのステップとして、飯田市では地域住民が主体となって、地縁団体(地域の地区など)がこういった事業をできるようにする「地域環境権」を条例で定め、その事業も行われているそうです。

「地域住民を中心にせず、利益中心で考えると、どうしても地域に害を及ぼしてしまうようなものができてしまいがちです。地域に役立つエネルギーを地域のみんなでつくっていくということ、それを条例等で行政と一緒になってやっていけるのが、非常に大きな一歩になっているのかなと思います。市民の力で、エネルギーを変え、未来を変えていきたいと思っています」と述べて、発表は終了しました。

 

参加者の質問に答えつつ、盛り上がりをみせたトークセッション

 お二人の発表を受け、永井事務局長がモデレータを務めてトークセッションとなりました(以下敬称略)。

永井:永原さんへお聞きしたいのですが、永原さんは谷口さんが発表してくださった市民発電を金沢で初めてやったということですが、1000世帯相当の発電した電力は北陸電力に売っているという理解でよろしいのでしょうか?

永原:全てを北陸電力に売っています。自分で消費するよりも売ったほうが高く売れるということと、もうひとつは「のとりん」の場合、自家消費に適した安定して大量に電気を使う場所が近くにないためです。

永井:発電と送電を分けて考える必要があると思いますが、おひさま進歩エネルギーの場合、400カ所以上で9MWを発電という話でしたが、これらは基本的に発電した近くの場所で使っているということになりますか?

谷口:そうなりますね。送電網には特別高圧(特高)と、その下の高圧(6600V)や低圧(200V)を送電するのでは全くシステムが異なっていまして、私たちがつくっているのは高圧と低圧の分野であり、それは変電所内の近隣で使われています。

永井:市民発電をした場合、一般電気事業者(北陸電力や中部電力など)との関係はどうなのでしょうか? その辺りの利害関係といいますか、ここが一番エネルギーの政策で難しいところなのではないでしょうか。

永原:私たちのところは非常に発電量が小さいですから、ライバルでもなんでもなく、お互いが売ったり買ったりという、お客様同士の関係となります。

永井:たとえばすべての家がZEHになった場合、電力会社のビジネスモデルはどうなるのでしょうか?

永原:家庭用は3割だけです。産業用の7割については、ゼロエネルギーなどはなかなか難しいので、すべての家がZEHになっても、産業用は残ることになります。

谷口:産業用のところには発電も入るので、家庭それぞれが賄っていければ、発電側の1次エネルギーということでは削減ができ、それは大きいです。

永井:私のオフィスがあるビル(公共施設)にはソーラーパネルが設置されていますが、ここで発電されたものはこのビルの中で消費されています。一方、飯田市の場合は公共施設でもそこで使わないのに発電する場所として20年間貸してくれています。金沢市や石川県ではこのような政策はないのでしょうか?

永原:屋根を貸して発電することを「屋根貸し」といいますが、石川県や県内市町の公共施設で屋根貸し事業をしているところはありません。自然エネルギー普及ということで、学校の屋根などにソーラーパネルは置かれてますけれど。

谷口:おそらく公共施設に置かれているものは自家消費のためのものだと思います。公共施設が付けると通常の単価の2倍以上がかかっています。基本的にそれは補助金でまかなうことになって、補助金でまかなっているものは自家消費となります。

永井:金沢市でも都市部となると、建物の上に建てるという発想がないと、なかなかまとまった発電量にいかないなと思いますが、そういう政策というのは飯田市にはありますが、金沢市にはないということでしょうか?

永原:民間なら自分たちでやっているところはありますが、県内の行政ではそういうのはないですね。ちなみに長野県や新潟県では行政が積極的に屋根貸しをしています。

谷口:屋根を貸してビジネスをさせるということが、行政の政策上はなかなか通らない状況があります。また、行政が自ら自家消費のために投資をするという形となると、初期費用が高くなります。屋根全体につけるような規模になるととても直接には予算化できませんので、そのためにも民間とパートナーシップを組むモデルづくりが必要だと思います。

永井:飯田市の事例で質問が来ています。飯田市ではFITが終了してもこの価格で買い取っていただけるのでしょうか。また、ソーラーパネルの耐用年数が過ぎたものはどうしているのでしょうか?

谷口:飯田市の方はもともと20年間で契約していますが、FITが始まる前からやっている事業につきましてFITは関係ありません。ただ、サイズによっては余剰の買取制度が利用できたりするものも一部あります。FIT前の買取価格というのは当時の電力価格とトントンくらいでしたが、長い目で見た持続可能性というのもありますし、地域経済循環というのも、防災も、CO2削減もあって、行政が判断したということです。飯田市の場合、地域経済循環が柱にあり、その理由としては地理的な環境も大きいと思います。他の都市との交流がなかなかしにくいという中で、経済をきちんと地域の中で潤していくというのが生きる術ともいえます。

 また、20年間経ってもパネルは問題なく使えまして、使えるものであれば無償譲渡してそのまま自家消費の太陽光という形で使っていただくことになっています。もちろん契約終了で撤去を希望される場合は、撤去してどこかに再設置するというモデルも考えています。

永井:パネル自体の寿命はどのくらいでしょうか?

谷口:今は非常に性能も良くなってきていますので、全体的には30年は持つといわれています。

永井:100%石川で生まれた再生可能エネルギーを契約したいのですがどうすればよいでしょうかという参加者からの質問が来ています。

永原:私の知る限り、石川県100%という新電力はないですが、全国ではやっているところはあります。

永井:このウェビナーのテーマである再生可能エネルギーの地産地消を実現するような契約は今すぐにはできないけれども、県外の100%再生可能エネルギーのプランはあるということですね。

谷口:ぜひ永原さんのところがそういう新電力会社になるように皆さんが応援してくださればいいですね。飯田市ではそういう形で、飯田まちづくり電力株式会社という会社を立ち上げています。野菜と同じように再エネでつくられた電気も地域で循環させていこうというもので、送電は中部電力の送配電会社に頼っていますが、つくることと地域で使うことの入口と出口をしっかり回していくことをめざして、進み出しています。

永井:電力会社は送電だけで、売るのはあくまでも飯田まちづくり電力ということで、電気も回り、お金も回るということですね。そして今は石川にはその仕組がないということ。再エネで発電した電気を電力会社に売って、石炭火力で発電された電気とも混ざって、でもちょっと安く供給されているという状況なのですね。

 このような新電力の会社を設立する際、一般電気事業者との関係はどうなりますか?

谷口さん:中部電力の小売の会社とはバッティングしますが、地域課題を解決するために共同してやっていくことがいいという考えを持ち合わせていて、長野県伊那市では中部電力も地域電力として入っています。ただ、出資はするけど運用は地域の会社に任せるという立ち位置をとり、共存共栄の道を双方で模索しているような状況です。

 

締めくくりは、金沢市が抱えている再エネに関する問題を議論

ほかにもごみ発電や太陽光や風力の自然環境などへの影響に関する議論も行いました。

 

永井:最後に金沢ならではの質問を。金沢市は全国でも唯一市営の水力発電所を持っています。それを民間に売却することになっていて、背景としては赤字のガス事業と一緒に黒字の水力発電事業を民間に売るということですが、反対の意見も多く、私自身も疑問符があります。サスティナビリティという観点から、お二人はこのことについてどう思われますか。

永原:唯一市営の水力発電ということでとても自慢に思っていますし、金沢市民にとっては誇りではないでしょうか。金沢の水力発電は1kW6円ちょっとで売っていますが、10円以上で売っているところもあって、少しでも値上げをすれば大きな黒字になるものを、なんで民間に売るのかなという思いもありますが、経営が誰になっても、水力発電というものをきちっと長く運営してくれることが重要だと思います。目先の利益にとらわれずに、大切に運用してほしいということしかいえないなと思います。

谷口:自治体が水力発電をやっているということは地域の誇りではないかと思っています。そこに地域が持っている地産地消の再エネがあって、それをどういうふうに維持しながら経営していくかというところかと思います。誰が持つかということもありますが、どういう理念でそれを経営していくのかというところも非常に大事だと思っていまして、例えば海外では地域の市民や会社が出資するという動きもあります。日本でもそういった動きというのは少しずつ起ころうとしていますので、ぜひ、そういう地域のものとして経営していけるような動きも取り入れて、進めてもらえたらいいなと思います。ただし、経営が続かなければ持続可能ではありません。市民共同発電所も持続可能にしていくためには、組織自体も持続可能にしていく必要があります。

永井:あっという間に時間が来てしまいました。エネルギーの地産地消というのでは、CO2を出さないという意味の物理的な地産地消、そして経済を回していくという意味の地産地消と、この2つの意味から貴重な事例とお話が聞けたと思います。本日はありがとうございました。

 

【登壇者プロフィール】

永原 伸一郎(ながはら しんいちろう)

(同)金沢市民発電所代表社員、(特非)市民環境プロジェクト副代表理事

1999年に(株)PFU退社、独立。2006年に仲間と一緒にNPO法人市民  環境プロジェクト設立、2013年には金沢市民発電所を設立して代表社員就任。これまで石川県内で市民風車1基と太陽光市民発電所4基の建設に携わる。

 

 

谷口 彰(たにぐち あきら)

おひさま進歩エネルギー㈱取締役

2004年名古屋大学大学院環境学研究科卒。地域自然エネルギー会社の先駆けであるおひさま進歩エネルギー株式会社の取締役ほか、2つの市民エネルギー会社で役員を務める。『おひさまファンド』などの市民出資事業や全国のエネルギー地産地消モデルの実現に尽力。自社著『みんなの力で自然エネルギーを』、京都大学経済学部の諸富先生監修『エネルギーの世界を変える。22人の仕事』『再生可能エネルギー開発にかかわる関連法規と実務ハンドブック』等で執筆。

 

 

 

 

 

セミナーの動画もこちらから試聴いただけます。

石川県金沢市が「SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業」に選定されました!

2020年7月17日、金沢市は「2020年度SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定されました。テーマは「市民生活と調和した持続可能な観光の振興 ~「責任ある観光」により市民と観光客、双方の「しあわせ」を実現するまち金沢~」です。これは観光客が増加する中、自然・歴史・文化に基づく生物文化多様性をベースとし、市民・来街者の双方がまちの魅力を共創し、 持続可能なまちを実現すること目標としています。

日本では2008年、持続可能な経済社会実現に向けて「環境モデル都市」と「環境未来都市」を選定する制度が採用されました。今回金沢市が選定された「SDGs未来都市」は、「環境モデル都市」と「環境未来都市」に加えて、地方創生を一層促進することを目的として、SDGs達成に向けた取り組みを提案するものです。2018年度から各年度最大30都市が選定されており、石川県では珠洲市(2018年度)、白山市(2018年度)、小松市(2019年度)、今年新たに加賀市、能美市、金沢市が選定されました。(自治体SDGsモデル事業としては金沢市が県内初)これらはSDGs17の目標と紐づけられた評価軸で選定されていることが特徴で、目標達成に向けた積極的な事業展開が期待されています。

 

国連大学IAS-OUIKの役割

国連大学OUIKはSDGsの達成に向け金沢市との協働を進めてきました。「2018年のSDGsいしかわ・かなざわダイアローグシリーズ」をはじめ、2019年3月に金沢市、金沢青年会議所、国連大学での三者SDGs共同宣言を行なってからは金沢SDGsプロジェクトを「IMAGINE KANAZAWA 2030」と名づけ、協働を本格始動しました。SDGsや地域の課題への理解を深めるために「SDGsカフェ」という地域の皆さんが気軽に金沢の未来や地域課題について対話できるコミュニケーションの場を提供したり、SDGsミーティングでは地域の様々なステークホルダーの皆さんと協力し、アイデアを出し合いながら2030年の金沢のありたい姿を示す「金沢ミライシナリオ」を作成しました。

 

今後の展開

今後もOUIKは3者の協力体制をプラットフォームとして、SDGsの啓発・周知公報、共創するコミュニティの形成など、様々な場面で協働を進めていきます。特にモデル事業のうち、重要な要素である、魅力的なSDGsツアーの開発において、OUIKが長年の研究で培ってきた「日本庭園と金沢の持続可能性」を考えるワークショップ等の実践経験や、能登GIAHS(世界農業遺産)・白山ユネスコエコパークに関する研究成果を活かし、金沢のグリーンインフラを活かしたツーリズムのあり方や、広域のSDGsツーリズムのあり方に学術的な助言する役割を担っていきます。

「第1回IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議」開催

2019年3月、国連大学OUIK、金沢市、金沢青年会議所の三者が協力し、持続可能な金沢をパートナーシップで実現するプロジェクト「IMAGINE KANAZAWA 2030」が発動しました。その一環として行われてきたSDGsミーティングでは、多様なステークホルダーが立場や世代を超えて集まり、金沢のあるべき姿を思い描き、アイデアを出し合いながら「金沢ミライシナリオ」の制作にいたりました。

2020年6月29日、SDGsの達成に向けて、この「金沢ミライシナリオ」を通して様々な主体が連携し実践すべく、この推進会議が設置されました。産業、教育、行政、金融、市民団体など各分野の方々をメンバーに迎え、意見を出し合い、協力体制を築きました。

会長として金沢市長山野委員、副会長として金沢商工会議所理事長、鶴山委員と国連大学OUIK所長、渡辺委員が選出され、監事としては金沢青年会議所監事、小谷内委員と金沢市会計課長、徳田委員が選任されました。

さらに金沢青年会議所、国連大学OUIK、コード・フォー・カナザワの三者より、これまでの取組報告が行われました。

最後の意見交換会では今後の活動に向けたアドバイスや様々なアイデアが交換され、立場や世代を超えたコミュニケーションの場となりました。

会議の詳細や発表内容は以下のYouTubeビデオからもご視聴ただけます。

・「IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ」募集中

SDGsを通して地域の課題解決を一緒に進めていくパートナーを募集しています。これまでなかなか解決できなかった課題も様々な立場の人や企業が集まり、異なる強みを持つプレイヤー同士が連携することで具体的なアプローチを指すことができるかもしれません。興味がある方はIMAGINE KANAZAWA 2030事務局までご連絡ください。

【開催報告】地域から考える!! 「SDGs 指標のモニタリングとオープンガバナンス」 〜地域での SDGs実装に向けて、自治体はどう変わるか〜

国連持続可能な開発目標が2015年に採択から6年目を迎え、様々なセクターで目標とターゲット達成に向けた取り組みが実践されています。SDGs169のターゲットのうち65%は自治体の関与がないと達成が難しいと言われるほど、SDGs実践においては、自治体が重要な役割を担っていくことが国連の様々な会議で言及されています。特に1)地域の文脈に即した指標の設定、2)各指標のきめ細かいデータ取得やモニタリングは自治体が市民の参加を得ながら行っていくことが望ましいとされています。これは、「透明性」、「協働」、「参加」をキーワードとして市民が公のデータを使い、現状分析や政策課題の提案を行っていくオープンガバナンスの潮流と合致するもので、むしろSDGsが促す本質的な変化と言えます。

今回、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)はSDGs達成に向けて日頃から密接に議論を行っている金沢市と共催で、「地域から考える!!「SDGs 指標のモニタリングとオープンガバナンス」〜地域での SDGs実装に向けて、自治体はどう変わるか〜」をテーマにウェビナーを開催しました。

山野金沢市長や先日SDGs未来都市に認定された加賀市の山本課長他、2名の専門家にお集まりいただき、SDGs指標の設定やモニタリングを通じて、自治体経営に透明性、市民協働、市民参画が促されるような仕組みを構築するためにはどうすれば良いのか、基調講演とともにパネルディスカッションを通した活発な議論が行われました。

 

各自治体に合わせた達成状況を把握出来る仕組み作りが重要

開催に先立ち、主催を代表してUNU-IAS OUIK事務局長の永井三岐子より開催趣旨の説明がありました。「SDGs達成に向け、地方自治体の取り組みが鍵となる中、2018年にSDGs未来都市の認定が始まり、全国ですでに90以上の都市が認定されています。UNU-IAS OUIKのパートナーの一つである金沢市でもSDGsの実践フェーズに移行し、モニタリングを行なっていく段階となりました。石川県は複数都市でSDGs実践の事例が蓄積しつつあり、その知識を共有しつつ、活発な議論が出来ると嬉しいです。」

 

 

共催の金沢市を代表して、金沢市長・山野之義氏から開催の挨拶をいただきました。「行政においては、日々の業務の中で行政改革や財政改革を進めていく中で結果的にSDGs達成に繋がると思っています。翻って目標や終わりが見えないと現場の職員のモチベーションが持たず、疲労も出てくるので、目標の達成状況を把握出来る環境作りが大切なのではないかと思います。それぞれの自治体に相応しい成果目標が設定され、それに合わせたモニタリングが必要と思いますし、また市民やパートナーにも分かりやすい形で公開され、市民や関係者と常に意思疎通を測りながら、進めていくことが重要と認識しています。」

 

基調講演「ローカルSDGsの推進に向けてー指標を活用したモニタリング実施の意義」

SDGsは日頃の活動の延長線上にある

1つ目の基調講演は、サステイナビリティと地方創生の研究を行なっている法政大学デザイン工学部准教授の川久保俊氏から、「ローカルSDGsの推進に向けてー指標を活用したモニタリング実施の意義」との題で講演いただきました。冒頭、「日本においても産官学民全体でのSDGs達成に向けた取り組みが活発化しています。主体的に取り組むことでメリットを享受出来、逆に取り組んでいないとリスクも発生しうる状況になってきています。一人一人の日頃の行動がすでにSDGsと密着しているので、日頃の活動の延長線上で取り組んでいくのが良いかと思います。SDGsを地球規模課題であると認識しつつ、身近な自分達の街の問題だと認識=ローカライズし、自分達の日常で実践していくことが求められています。」とSDGsを自分ごとにすることの重要性を強調されました。

自治体の体制作りや成功事例共有が望まれている

続いて、ローカルSDGsに関する中央政府と地方自治体の認識について説明いただきました。2016年12月発表の政府の「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」が2019年12月に改定され、自治体はガバナンス手法を確立し、取り組みを的確に測定することが重要と明記されました。優れた事例や知見の情報発信や共有の重要性も唄われ、SDGsが認知の段階からまちづくりの中で実践していく段階へ移行しているとのことです。

他方で、川久保氏は内閣府と共に自治体のSDGs認知と実践状況について調査を続けており、調査結果はSDGs実践段階への移行をデータで裏付けているようです。認知度は2017年から2019年にかけて急速な増加を示す一方、取り組み状況については2019年現在、今後内容を検討する自治体が43.3%と後追いの状況を示しています。また、SDGs推進の課題については、一貫して行政内部での経験や専門性の不足、行政内の体制・リーダーシップ・職務分掌の問題が課題として上げられ、試行錯誤が続いている状況のようです。推進の支援策としては、研究会やウェビナーといった先行事例や成功事例の情報提供や学習の機会が求められています。

ローカル指標を活用してSDGsをまちづくりのプロセスに取り込む

川久保氏はSDGsをまちづくりのプロセスに取り込んでいく上で、街の状況を「見える化」しモニタリングするためのローカルSDGsプラットフォームを開発しています。

川久保氏は健康診断と同様に検査項目として指標を設定し、指標を用いて気づきを得て、次のアクションを検討するというPDCAサイクルをまちづくりのプロセスに導入することの重要性を説いています。その中で「見える化」が鍵となる一方、指標のデータを効率的に集め、運用に負荷がかかりすぎないように留意する必要があると考えています。しかし、SDGsの232のグローバル指標において、日本の自治体がそのまま活用可能な指標は約5%しかなく、読み替えを行うことでやっと約50%の指標が使えることになります。自治体がSDGsの全ての指標を独自に研究して、独自のローカル指標を開発するのは困難です。そこで、川久保氏は、自らの研究を通して、日本独自の指標も追加し、2019年8月に合計202の指標「地方創生SDGsローカル指標リスト」(内閣府)を整備しました。

更には、自治体職員が多忙な中で、ローカル指標リストに対応するデータを定期的に集めることが出来るのか、という課題に対応するため、オンラインのローカルSDGsプラットフォームを立ち上げました。このプラットフォームでは各自治体の指標データや情報を一括して収集出来、またローカル指標毎にデータをビジュアル化して確認することが出来ます。また、各自治体がSDGs達成に向けた課題にどう取り組んでいるのか、課題の克服方法の発見のために、自治体担当者のインタビュー記事など、経験や知見を共有することが出来る仕組みを盛り込んでいます。加えて、各自治体がアカウントを得て、施策やシンポジウムといった取り組みやニュースを独自に発信できる仕組みも整備しました。

市民を巻き込んだ独自のローカル指標の整備へ

最後に、川久保氏は強調します。「ローカルSDGs指標整備の各ステップの中で、このプラットフォームは各関係者にデータに関心を持ってもらう上で役立つものの、より質の高いデータや指標を模索し、各地域の実情を反映したローカルSDGs指標の整備していくステップにおいては、各自治体が自ら市民を巻き込みつつ取り組んでいく必要があります。」

 

基調講演2「テクノロジーによる市民参画 – オープンガバナンスとはなにか-」

2つ目の基調講演は、一般財団法人Code for Kanazawa及びCivic Tech Japan代表理事の福島健一郎氏から、「テクノロジーによる市民参画―オープンガバナンスとはなにかー」と題して、ローカルSDGs実践と指標モニタリングと市民参画のためのオープンガバナンスとシビックテックについてお話いただきました。

 

 

透明性の高く、市民が参画出来る社会の構築

福島氏は、オープンガバナンスとは「透明性の高く、しっかり説明が出来、市民が参画できる政府・自治体作り」と説明します。コロナウィルス感染症対策を例にとると、行政の対策に対して人々の不満や意見がしっかりと届き、行政のアクションが変わったと人々が実感を持てるようになることがオープンガバナンスの成果だと強調します。そして、ローカルSDGsの実践においても、指標のデータ取得やモニタリングについて市民の参画を得ながら進めていくことが望ましいため、透明性の高い行政、市民が参画できる社会の構築が不可欠であり、つまりはオープンガバナンスの構築が重要だと説明します。

では、どうすればオープンガバナンスが達成できるのか。福島氏はすぐに取り組めることの1つは「オープンデータ」だと説明します。「オープンデータとは国・自治体や民間企業が保有するデータのうち、営利非営利関係なく二次利用可能であり、機械判読に適した無償のデータです。オープン化を進めることでオープンガバメント、市民自治(シビックテック)、ビジネス活性化(無償利用)に役立ちます。」そして、SDGsに市民が参画していく流れの中で、市民自治、つまりシビックテックの分野の理解が有用だと続けます。

行政のデジタル化とオープンマインドの養成が重要

福島氏は、シビックテックとは「市民自らが市民が望む社会をテクノロジーを活用して実現すること」と捉えています。シビックテックの良い例として、シビックテック団体g0v他、多くの団体が活動する台湾を例示します。台湾ではコロナウィルス感染症の蔓延下において、g0vがリアルタイムにマスク在庫を「見える化」するサービスを提供していた他、他の団体も市民がテクノロジーを活用して、市民が必要とする形でサービスを提供していました。台湾ではそもそも行政のデジタル化が進んでおり、保険証のICチップ上の購入履歴がオープンデータとして活用され、また情報公開をすぐに決断出来るオープンマインドが形成されていました。

シビックテックの普及には行政のデジタル化を進め、オープンマインドを養っていくことが必要となる中、福島氏は日本でも少しずつ下地は出来つつあると説明します。2013年のシビックテックコミュニティCode for Kanazawa設立を皮切りに、Code for Japanも設立されました。Code for Kanazawaの「5374(ゴミナシ)」といったゴミ廃棄日と分別のためのアプリの開発と全国拡大の他、Code for Japanが東京都からの委託で感染者数の可視化サイトをオープンソースとして開発しています。また、沖縄での事例では2ヶ月で4つのアプリを立ち上げることができ、そのスピード感はシビックテックならではと強調します。

最後に、福島氏は市民と行政が協働で地域を作っていく中でテクノロジーは不可欠と強調しつつ、「自治体は出来る範囲の中でテクノロジーをどれだけ活用出来るか考え、オープンマインドでありつつ、市民の参画も促す必要があります。市民側もITやテクノロジーの技術的な部分を理解し、自ら推進する、コミュニティに参加する、行政との協働に協力する意識が重要。お互いにマインドセットを変えていくことが重要です。」と締めくくられました。

 

事例紹介「加賀市のスマートSDGs」

消滅可能都市からスマートシティ加賀へ

前半の最後は、加賀市より政策戦略部政策推進課長の山本昌幸氏から、2020年にSDGs未来都市に選定された加賀市のスマートSDGsの事例について紹介いただきました。スマートシティを推進する背景について、山本氏はこう説明します。「加賀市は九谷焼や山中漆器等の伝統産業や加賀温泉郷に有名な温泉と観光の都市で、2023年春には加賀温泉駅開業が控えています。他方で、人口減少に起因する人材不足や、合併の影響による多極分散型の都市構造といった課題を抱えています。不名誉ながら2014年5月には「消滅可能性都市」と指摘されました。そのような背景の中で、持続可能性を目指すために先端技術を活用したイノベーション推進を図るスマートシティを目指すことと致しました。」

加賀市は持続可能な加賀市に向けて、「スマートシティへの取り組み」と「加賀市版RE100」を柱に位置付けています。スマートシティを推進するにあたり、加賀市は2019年8月に「スマートシティ推進官民連携協議会」を設立し、市内25団体(産業団体、市民団体)と連携する受け皿を整えました。また3月には「スマートシティ宣言」を発表して市民や外部に取り組みを発信し、クリエーティブでイノベーティブな挑戦可能性都市への変貌を目指しています。

山本氏は、加賀市のスマートシティとは人々の日常の色々な課題に対して技術を活用して解決することで、持続可能性をもたらしていくことと説明します。具体的な事業の例をいくつか説明いただきました。まずはドローンの活用です。物流分野での活用、災害時における空中からの災害現場の確認や緊急物資の搬送、加えて山間部といった人の移動が難しい場所において活用することを想定しているそうです。2つ目にMaaSの活用です。移動をより便利なものにし、移動と商業や観光をデータで繋げることで価値が高まる取り組みを進めています。今年度には実証実験を行う予定だそうです。3つ目にアバターを活用した取り組みです。医療や介護施設でのアバターを通じた面会システムの実現、行政におけるアバターを通した市民相談、社会科見学出来るアバター等の実験的な取り組みを進めていると説明がありました。

また加賀市は、マイナンバーカードと連携した個人認証の基盤作りにも取り組んでいます。市役所外で電子申請が出来る仕組みを作ることで時間を有効活用出来る仕組みを作ろうとしています。加えて加賀市版e-residencyの導入を検討しています。活動の拠点をいくつも持つような人を対象に仮想の加賀市民として認定することで、加賀市に関わりを持つ人を増やし、市の活性化に繋げたいそうです。

最後に、加賀市は加賀市版RE100の取り組みとして脱炭素社会の構築とエネルギーの地産地消を目指しています。市100%出資の株式会社を設立し、再生エネルギー等の電力を公共施設へ供給する事業も推進しているそうです。

加賀市は、RE100への取り組み、スマートシティ推進の取り組みを行うことで、官民協働による自律的な好循環が起こる仕組みを作り、持続可能な街を目指しています。

パネルディスカッション「市民と自治体の関係を変えるSDGsモニタリングの可能性」

基調講演をいただいた川久保氏、福島氏に、UNU IAS-OUIKの高木研究員が加わり、永井事務局長がモデレーターとなり、後半はパネルディスカッションを行いました。

永井:まずは皆様から講演を聞いて感想を伺いたいと思います。

高木:(全体を通して)ローカルSDGs指標はプラットフォーム上で他市と比較出来、また自治体の中での進捗を測定出来ることから画期的だと思います。今後、行政が直面する課題としては、取得出来るデータと出来ないデータがある中で、データ取得の適切な頻度、規模は自治体独自で考えていかないといけません。行政の中でデータ取得が目的化してしまわないよう、活用の視点も忘れないようにしないといけません。また、市民や民間企業の協力を得ないとデータを取得出来ないため、産官学民間の垣根を超える取り組みが必要です。データを取り込んでいく過程で参画者の考え方も変わっていくのではないかと思います。

川久保:(福島氏の話を聞いて)ローカルSDGsプラットフォームは各省庁の統計データを活用している一方、福島さんの市民と共同で作っていこうとする姿勢はSDGsの精神そのものであり感銘を受けました。またテクノロジーを活用しながら負荷を減らして両立させていく点も素晴らしく、SDGsを共通言語として金沢から日本全国へ、そして世界へ発信・展開していける良い事例だと思います。

福島:(川久保氏の話を聞いて)ローカルSDGs指標リストはちゃんと見たことがなかったので、今後、項目を確認して、シビックテックの力で関与できるものを確認するところから始めるのも良いと思いました。ローカルSDGsがいかに大事なのか、グローバル指標の5%しか自治体で活用出来ないと知り、驚愕しました。

永井:自治体の取り組みは包括的だから、自治体はSDGsがこれまでの業務の延長線だと認識し始めています。他方で住民への説明には非常に苦労されています。住民との協働を進めていく上でのヒントは何でしょうか。

福島:シビックテックを通して課題を解決することは、テクノロジーを通して地域の課題を解決していくことと説明をすると納得してもらえることが多いです。シビックテックに取り組んでいる方はもともとSDGsに近い領域に取り組まれていました。そして、なんとなく地域の課題解決に取り組んできた中で、SDGsの枠組みが出来上がってきました。指標に基づいて体系化されると的確に課題解決を迫れます。今後はシビックテックの実践の中で、SDGsについて体系立てた説明をしていきたいと思います。また、自分ごとにしていくという意味で、自分でやりたいと考える人の意思を尊重して進めていきたいと思います。

川久保:まずSDGsは気づきを与えてくれるツールだと考えます。指標に照らし合わせる中で、シビックプライドが養成され、逆に課題も見えてきます。次のステップとしては、気づきや取り組みを発信したくなるはずです。そうすると、共通言語としてのSDGsを橋渡しにして、事例を効果的に発信していくための情報発信ツールにもなり得ます。加えて、SDGsに関心のある人同士を繋ぐコミュニケーションツール、ブランディングツールにもなります。しかし、使い方によって色々なメリットがあり、実際に使い始めてみて気づくことも多いので、まずやってみることが重要だと思います。

永井:住民を巻き込んでいくために、戦略や計画だけでは住民は自分ごとにするのは難しいのではないかと思われます。高木さんが金沢大学と連携して行った取り組みで、住民がSDGsの指標を作り上げた取り組みがあります。経験について伺えないでしょうか。

高木:2019年2月から3月にかけて珠洲市能登SDGsラボで住民とローカル指標を作るワークショップを行いました。SDGsを理解するまでの時間の方が指標を設定するまでより時間がかかり、理解の促進に難しさを感じました。しかし、SDGsのフレームワークに基づいて世界が同じ目標に向かっているという方向性を理解してもらえれば、SDGsは使えるツールだと認識しました。またSDGsは地域や政策を改善するためにも使えるツールであり、そのプロセスを住民と一緒に進めていくことが重要だと考えます。

永井:日本で設定したローカル指標はそもそも国連で認められているものでしょうか。

川久保:SDGsは2030アジェンダがそもそもの根幹で、指標は実施のフォローアップのために存在しているに過ぎません。また各国により事情が異なるので、補完的に新しい指標を提案して策定していくことが推奨されています。今回の内閣府のリストはグローバル指標を補完するものとして提案されており、国連内で正統化するような動きはありません。また、企業や市民が独自に指標を設定している事例もあるよう、自分たちがSDGsにどう貢献していきたいかという観点から指標は設定されていくものと考えています。

永井:金沢市はSDGs未来都市事業を通して取り組みの見える化を進めていくことになります。今日のシンポジウムのテーマは自治体がどう変わるかですが、金沢市にはどう変わって欲しいと思いますか。

福島:金沢市はオープンデータがあり、シビックテックに理解がある都市の一つと考えています。ただ、オープンガバメントを呼び込むために庁内をもっとデジタル化する必要がありますし、どうやって市民参画してもらうか考えていく必要があると思います。またSDGsの枠組みを使う中で、様々な担当課が連携し、ノウハウやリソースを結集しないと、動きが噛み合わないということになりかねません。この機を生かしてこれらの実現を目指して欲しいと思います。

永井:担当課の連携を成し遂げるために何が必要か️、どういったアクションが必要か。SDGs推進室を作る自治体や首長がリーダーシップをとって進める自治体もあります。自治体がオープンガバナンスを進める上でどういう戦略、戦術があるでしょうか。

高木:市民と一緒に指標を作ることでSDGsの達成に繋がるので、まずそれを行うのが最初のステップかと思います。独自指標を作ることは自治体にとって霧の中を進むような作業となるので、まずは既存のローカルSDGsプラットフォームを活用して、自治体間で情報を共有し、協力して進めていくのがいいのではないかと考えます。

川久保:是非、プラットフォームが自治体の進捗や変化に関する情報交換の場になって欲しいと思います。国内でも自治体のボランタリーローカルレビューへの関心も強くなりつつあり、国際的に見ても今後は社会発信していく動きが強まっていくと予測しています。日本の自治体にも是非取り組んでほしいと思います。また追加ですが、指標の概念には、状態量を見るストック指標と変化を見るフロー指標があり、SDGsローカル指標はストック指標を主体に構成されています。住民の努力が目に見え、そして振り返りを行えるようにしていくためにはフロー指標を地域住民と共に作らないといけないと思います。自治体職員は多忙なので、金沢市の場合はOUIKが指標の素案を作って、一緒に進めていく方がいいかもしれないと思います。そうすることで、金沢市はより一層SDGs先進地域として進んでいけるのではないかと考えます。

永井:SDGs達成に向けたアクションの中で、パートナーシップを組んで、市民、企業、行政のマインドセットが変わっていくプロセスを重要視していくことは非常に腹落ちする内容です。プロセスを一緒に進めることが出来ていれば、レジリエントなパートナーシップや組織を達成出来ると思います。しかし、自治体は管理の側面から、指標を設定して達成出来ないときの説明をどうするかという点を不安視しています。定性的な情報を客観視し、対外的に説明していくのは難しいことですが、どのように説明責任を果たしていけば良いと思いますか。

高木:定量的データの取得は原則として重要で、加えて定性的データを合わせて取得し活用していくことが重要です。指標に応じて、どちらが必要かを整理していく必要性があると考えます。

川久保:指標疲れを防ぐために、データ収集から色々な人を巻き込んでいくことが重要と考えます。データ収集は大学に依頼しても良いと思います。海外では、行政の役割は施策を考えること、データを集めるのは知識創造の拠点である大学の仕事と役割分担されていますので、日本でもそれを成し遂げられると良いかと思います。また目標の全部を達成しようとは考えず、出来るところから取り組む姿勢も大切だと考えます。加えて、既存のSDGsの枠組みの外にも視野を広げ、文化、芸術、スポーツ等のカバーしきれていない部分、”Beyond SDGs”を金沢市や加賀市がカバーして進めていくのが日本のプレゼンスの向上にとっても良いと考えます。

永井:最後に高木さんと福島さんから一言ずつコメントをお願い致します。

高木:SDGsは答えを出す性質のものではなく問いだと思います。自治体の方々もSDGsの視点から自分たちで考え続けるというのを大切にしてもらえればと思います。

福島:SDGsの推進に市民参画が重要で、それを持続可能にしていくために技術が使え、そのためにシビックテックを活かすことが出来ます。技術だけで上手くいく訳ではなく、関係者のマインドセットが重要となります。日本でも台湾のように取り組みが進めば面白いのではないかと思います。

 

 

 

【スピーカープロフィール(登壇順)】

 

川久保 俊(かわくぼ しゅん)

法政大学デザイン工学部 准教授

慶應義塾大学理工学部後期博士課程修了。博士(工学)。法政大学デザイン工学部助教、専任講師を経て2017年10月より准教授(現職)。専門は建築/都市のサステナブルデザイン。近年は、持続可能な開発目標SDGsの主流化に関する調査研究を進めており、その成果を取り纏めて出版物「私たちのまちにとってのSDGs-導入のためのガイドライン-」やウェブアプリケーション「ローカルSDGsプラットフォーム」として発信している。主な受賞歴:日本都市計画学会論文奨励賞、日本建築学会奨励賞、山田一宇賞、International Conference on Sustainable Building Best Paper Awardなど。

 

 

福島 健一郎(ふくしま けんいちろう)

一般社団法人コード・フォー・カナザワ 代表理事、一般社団法人シビックテックジャパン 代表理事

2009年4月に金沢でアイパブリッシングをパートナーと創業。テクノロジーを用いた社会課題解決を続けている。 また、地域の課題をITの力で解決するために、2013年5月にCode for Kanazawaを9人で設立。日本で初めてのCode for コミュニティとなった。2014年に一般社団法人化。 Code for Kanazawaが開発した5374(ゴミナシ).jpは全国のコミュニティの手で2018年11月末現在で120都市以上に広がった他、のと・ノット・アローンやHa4goなど多数のアプリ/サービスを輩出。 現在は、シビックテックを国内に広げるための活動にも力を入れているほか、シビックテックを実現するための基盤となるオープンデータやオープンガバメントの推進についても精力的に活動を行っている。

 

 
 

山本 昌幸(やまもと まさゆき)

加賀市政策戦略部政策推進課 課長

1989年に石川県加賀市役所に入庁し、2015年に地域交通対策室長、2016年に教育庶務課長を経て、2019年4月に現在の政策戦略部政策推進課長に至る。加賀市が進める「スマートSDGs」や「スマートシティ加賀」の取り組みが、全庁一丸となって推進されるように、その先導役として、積極的に業務の遂行に取り組んでいる。

 

 

高木 超(たかぎ こすも)

国連大学IAS-OUIK研究員

NPO、民間企業を経て、2012 年から神奈川県大和市の職員として、住民協働、厚木基地対 策、待機児童対策を担当。17 年 9 月に退職後、博士後期課程進学と同時に渡米。ニューヨ ークを拠点として、1 年間にわたり「自治体における SDGs のローカライズ」に関する調査 研究を行う。その間、国連訓練調査研究所(UNITAR)とクレアモント大学院大学が共催す る「SDGs と評価に関するリーダーシップ研修(英語名:Executive Leadership Programme In Evaluation and the SDGs) 」を日本人で初めて修了。ミレニアル世代の若者を中心に SDGs の達 成に向けて取り組む団体、SDGs-SWY の共同代表としても活動するとともに、国内外の自治体のSDGsを幅広く研究。著書に「SDGs x 自治体実践ガイドブック」

 
 

永井 三岐子(ながい みきこ)

国連大学IAS-OUIK事務局長

フランスで民間会社勤務の後、JICA(国際協力機構)専門家としてモンゴルで水資源管理や過放牧の問題、国連大学グローバル環境情報センターで気候変動適に関する研究に従事。JICA-JST日・タイ気候変動適応策プロジェクトコーディネーター、など環境分野の国際協力に携わってきた。2014年から現職。地域にある国連機関の強みを活かし自治体への政策提言などを通じて、SDGsの実践 を石川全域で推進中。金沢市出身。

 

動画もこちらからご視聴いただけます。

【開催報告】SDGsカフェ#13「SDGsカフェ#13 市民全員が庭師になろう! 金沢SDGsをグリーンインフラから考える」

「グリーンインフラ」という言葉をご存知でしょうか?

インフラと聞くとダム、道路などの社会基盤を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、グリーンインフラとは、多機能性という視点から自然を再評価することによって、持続可能な社会形成を目指した土地利用計画を指します。

金沢市は1968年に全国に先駆けて伝統環境保存条例を制定し、その中で市内緑地や用水も保全対象として武家屋敷や寺社群とともに町並みとして残す努力をしてきました。しかし、まちなかに住む人が減り、市民の生活の場であった景観も駐車場やホテルに変わってきています。

新型コロナウイルス感染症によって、金沢の基幹産業のひとつである観光業は大きな痛手を受けています。北陸新幹線の開通以来、すごいスピードで変わっている金沢のまちですが、このような状況である今だからこそ、あらためてグリーンインフラの視点から、現状を見つめ直してみることにしました。

 

SDGsカフェでグリーンインフラを取り上げるのはなぜ?

 

 SDGsカフェは、「2030年の金沢がこうだったらいいな」と誰でもIMAGINEしてもらえる会。そして、それを受け、専門知識を持った方に情報提供していただき、皆さんで議論をするというカジュアルなものです。2019年4月から始まり、教育や気候変動、文化、働き方、スポーツ、公共交通など、多岐にわたるテーマを、さまざまな皆さんと話し合ってきました。

 今日のテーマのグリーンインフラは、金沢にとってもとても重要な考え方で、今年発表した『金沢ミライシナリオ』の中でも、「古くて 新しくて 心地よいまち」をつくっていくにはどうしたらよいかという部分で、「グリーンインフラをつくり、使う」ということを具体的に挙げています。

 今回、グリーンインフラの視点から2030年をIMAGINEしてくれるのは、スペイン・バレンシア地方から来日して11年、日本庭園に魅せられて、京都、金沢と研究対象を広げてきた国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(国連大学IAS OUIK)のファン研究員。金沢の自然、市民の暮らし、歴史が凝縮した、市井にある日本庭園や曲水庭園などの研究を通じて、金沢市のこれまでの緑地の変化、これからのまちのあり方を住民と考える地域に根差した研究を展開しています。2019年には代表著者として『OUIK 生物文化多様性シリーズ#5 金沢の庭園がつなぐ人と自然―持続可能なコモンズへの挑戦―』を執筆しています。

 そしてアイデアを提供してくださるのは、三菱UFJリサーチ&コンサルティング在籍時にグリーンインフラ研究会の立ち上げに参画して、現在は京都産業大学で教鞭を取りながら、国内外のグリーンインフラ事例を幅広くまとめた書籍『決定版!グリーンインフラ』、『実践版!グリーンインフラ』の出版に関わるなど、多彩な活動されているグリーンインフラの専門家、研究家、広報官の西田貴明さんです。

 

金沢市民全員を庭師にすることが夢

 

 フアン研究員はいつも「金沢市民はみんな庭師になったらいい」と言っており、今回はそれをこのカフェのテーマにすることにしました。

 京都で6年間日本庭園の研究を行い、バレンシア工科大学で建築の博士号を取得したフアン研究員。現在は金沢での研究のかたわら、地域の住民と交流しながら、町家暮らしと庭園、茶道を楽しみ、日本家屋と庭園の現状を海外に発信しています。京都の人は周りの森や川の景色からインスピレーションをもらい、日本庭園をつくり、京都は素晴らしいまちになったと述べ、京都で毎日庭園を見ていた、本人いわく“夢のような日々”の話からスタートしました。

金沢の伝統的な生物多様性を維持する日本庭園

 

 里山庭園の例として「武家屋敷 寺島蔵人(てらしまくらんど)邸」の庭園を紹介。戦のことを考え、建材や食料となる果実や野菜などを栽培しながら、美しい日本庭園をつくっています。また、茶室をはじめ、建物のさまざまな場所からこの里山庭園を眺め、心を豊かにしていたそうです。

 続いて、展望台のある庭園の例として「辻家庭園」を紹介。コケや芝、土を寄せて交流の場をつくり、そこから、空と平地を眺めて、心を豊かにして生活していたそうです。

 金沢の曲水(きょくすい)と湧水庭園の例として「兼六園」を紹介。金沢では武士や裕福な町民は、犀川(さいがわ)や浅野川(あさのがわ)の水を庭に取り入れ、庭園の滝や池や小川に水を流して、人の心を癒やしてきました。

 白山山系からの雪解け水は、浅野川と犀川と湧き水になり、市民の重要な生命の源となっています。金沢には水源に応じた2つのタイプの日本庭園があり、それはまちなかにある用水網を使った「用水庭園」と、湧き水を生かした「湧水庭園」です。

 用水庭園の例として、長町にある千田家(せんだけ)庭園を紹介。大野庄(おおのしょう)用水の水を引き込んだ池の中には、メダカやカメなど多くの生きものがいるそうです。湧水庭園の例としては、卯辰山にある心蓮社(しんれんしゃ)庭園を紹介。湧き水が池をつくり、大雨で水が溢れたら排水溝から流れ出し、少なくなったら湧水により満たされます。この豊かな環境には、ホクリクサンショウウオなど貴重な生きものが暮らしているそうです。

西田家庭園

 これらの庭園の環境は、多様な生きものだけでなく、工芸の職人や料理人、茶人などの営みにも寄与しています。このように金沢は、庭園があるおかげで生態系学的にも文化的にも多様性に富んだまちになっているということができます。人と人の親密な関係は、自然との親密な関係と調和が取れ、また自然と親密な関係からは人と人の幸せが恵まれるなど、日本庭園から受ける恩恵はたくさんあるそうです。

心蓮社庭園

国連大学IAS OUIKが進める「S.U.Nプロジェクト」とは?

 

 日本庭園とグリーンインフラを合わせた未来のビジョンである「S.U.Nプロジェクト」というものを国連大学IAS OUIKが主宰しています。S.U.NとはSustainable、Urban、Natureの頭文字をとったもので、新たな自然の創出と、自然環境を保全することを目的に、2019年から研究活動を行っています。

 日本は急激な人口減少に直面しており、これにより空き家の割合が増加しており、現時点でも、金沢のまちなかでは空き家率が8%もあります。この問題を解決する方法を提案するのが本プロジェクトです。これは、IMAGINE KANAZAWAと連携するプロジェクトでもあり、3つのパートからなります。その1つ「S.U.N1」では、町の小さなエリアで日本庭園とグリーンインフラを統合した研究が始まっています。

 

「まち・ひと・しぜんの100年」と題した1970〜2070年のそれぞれの変化を示すチャートからは、2010年までは家も人も増え続けてきましたが、2010年から人口が減少するに伴い、空き家が増えていく(都市の縮小)のがわかります。一方の自然は、ずっと減少しつづけていて、何もしなければこのままずっと減少し続けると思われます。

 そこで、2030年までに駐車場や空き家などのグレーインフラを緑化することがフアン研究員のIMAGINEする金沢の姿であり、そして、その緑を守り続けていくため、「市民全員が庭師になろう」ということを提案しました。

 金沢SDGsの5つの方向性の1番、「自然、歴史、文化に立脚したまちづくりをすすめる」ということや、金沢市が2020年に内閣府から認定された「自治体SDGsモデル事業」の概要の中にも「用水、庭園などによる、水と緑のネットワークづくり」「生物文化多様性の保全・啓発」が具体的に挙げられています。

「『S.U.Nプロジェクト』はこれらの実現にお役に立てるように、調査研究を行っていくつもりです」とフアン研究員は述べて、発表を締めくくりました。

寺島蔵人邸の庭園を眺めるフアン研究員

 国連大学IAS OUIKの永井事務局長からは、「フアンさんの研究活動自体が、金沢のまちを知ることができる地元観光にもなるのではないかと思っています」とのコメントがありました。

 

グリーンインフラは市民が主役となって語られることが大切

 

 金沢を緑で一杯にしたいということで、グリーンインフラの出番。西田さんにグリーンインフラとはなにか? そして、グリーンインフラの実践に向けた取り組みについて、話題提供をしていただきました。

「グリーンインフラの概念は、緑をいっぱいつくって人と一緒に活用していくということ。『全員が庭師になろう』と、いろいろな人が参加していくことは大事なポイントだと思います」とフアン研究員のIMAGINEの感想を述べ、まずはグリーンインフラを西田さんが着目するようになった経緯から話が始まりました。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングで10年間、生物多様性と社会経済活動をどう両立していくのかということに関わってきた西田さん。“生物多様性で生きものを守ることを目的に社会をつくっていくことだけではなかなか難しいのではないか? もっと別のアプローチはないのか?”と、仕事をしながら議論していた中でひとつ出てきたのが、グリーンインフラという話だったそうです。

 グリーンインフラとは概念であり、環境を守るということではなく、環境の価値を活用して、地域の活性化や、防災・減災につなげていこうとするのが定義だそうで、“グリーンインフラ=生物多様性を守るではない”と言います。自然の持っている機能を引き出すことによって、経済と社会とをうまく回していくということが目的であり、その結果として自然が豊かになっていく、そういうことを重視した考え方だと述べました。

 具体的にはいろいろなことが考えられているそうです。例えば、雨水貯留機能を備えた植栽帯(小さな貯水施設、防災的な効果も果たせる花壇)も。また、遊水地も生きものの棲みかにしたり、普段は農地にしたり、あるいはイベントの会場にしたりと、いろいろな機能を持たせることもグリーンインフラとして捉えているそうです。

 このようなものを作っていこうというのがグリーンインフラですが、SDGsとの関係でいえば、目標を達成するための手段がグリーンインフラとなります。グリーンインフラへの取り組みにより、複数のSDGsの目標達成に寄与している事例は国土交通省のHPでも取り上げられています。「SDGsが注目されて、具体的に何か行動をしたい時、グリーンインフラを考えてもらえたらいいなと思います」(西田さん)

 

日本でグリーンインフラをなぜ進めるの? その背景とは?

 

 環境だけでなく、後押しとなったもう一つは、人口減少の問題。“国土の担い手がどんどんいなくなっていく中でどうしていくか?” 人口が減っていく中で、インフラの維持コストはどんどん上がっていき、それに対応できるだけの地域的、経済的な余裕も十分でなくなるかもしれません。将来的に社会インフラを現状のままで維持していくのは難しいかもしれないということも背景にあると言います。

 また近年、災害リスクがどんどん高まっていることが感じられ、これを今までのインフラだけで守っていけるのでしょうか。さらにリスクの高いものが起こる可能性が高く、今まで行ってきたアプローチだけをやるのではダメだということも背景にあるそうです。

 この20年で環境産業は着実に伸びてきています。グリーンインフラなど自然を活用するという視点がビジネスとして魅力となり、生きものを守ろうということよりも、“自然環境の価値を生かしていくことで社会課題を解決できないのか?”ということが、グリーンインフラを進める推進力として期待できるようになってくるかもしれません。

 

多様な機能があって、経済や環境、安全上もいい、グリーンインフラ

 

 都市のなかで一番現実的なのが「分散型の雨水管理の場としてのグリーンインフラの活用」だと思っているという西田さん。通常では遊水地というのは、地面の下に大きな貯留槽をつくり、それで災害リスクを避けるのが主流ですが、そうではなく緑の空間も雨水貯留機能の場として使い、小さなものをたくさんつなげることによって、災害リスクを下げていきます。さらに、そういう緑の空間がまちなかにあふれる環境を生かして地域活性化につなげ、地域の賑わいを取り戻していこうとするそうです。

 先進事例として、アメリカのポートランド市の事例を紹介しました。ここでは、小さな雨水貯水機能の場をたくさんつくったほうが、大きな貯水槽をつくるよりもコストが安かったそうで、さらに、この分散型の植生帯を、みんなで管理したり、みんなで活用したりする仕組みをつくったことが大事だと強調しました。これにより、雨水流出抑制だけでなく、地域の景観が良くなったり、市民が参加して歩く機会が増えたり、人の賑わいが出てきたりしました。その結果、観光客が増えるなどの結果が出てきて、それでお金が入り、それがまた地域に回っていくという好循環ができてきたそうです。「グリーンインフラを都市でやるひとつの理想のモデルが、これではないかと思います」(西田さん)

 世界中で今行われているのは、未利用地を緑で再生してみんなで使えるようにしていること。日本にもこれができる余地がたくさんあり、例えば、駐車場や空き家などもうまく活用していくというのが一つ重要なポイントになるといいます。そしてもう一つ大事なことは、分散型の雨水管理をするだけではなく、リスクをきちんと認識していくことだといいます。今、流域治水という概念が注目を集めていて、これは河川だけで災害リスクを抑えるのではなく、あふれた後の対策も含めたリスクをどう捉えるのかということも行っていかないといけないという考え方。リスクとメリットというのを重ね合わせて議論していくことも大事だといいます。

 グリーンインフラはこれまでやってきた自然保護や生物多様性保全の延長でもあります。あるべき自然が残されてきて、それをみんなで利用できるような考え方が整備され、よりそれを大事にしながら活用していくという動きが出てきているそうです。

「行政の中で、環境や防災の文脈でグリーンインフラをどう使っていこうかという話が出てきていますが、まだまだ限られていますし、これだけでは経済的に回っていかないところもあります。それをどうつなげていくかというキーワードはいろいろ出てきていますが、まだまだ落とし込めていません。どうやったら落とし込めるのか、どうやったら組み込めるのかという話を、いろいろな形で議論していただければと思います」と述べて、話を締めくくりました。

 

質疑応答とディスカッションタイム

 

 残り時間は、たくさんいただいた質問に答えつつ、西田さん、フアン研究員、永井事務局長の3人でディスカッションを行いました。

 

永井:ポートランド市の事例、誰が音頭を取ってこのようなデザインができたのでしょうか?

 

西田:最初は自治体の下水道部局と環境部局の方が始めたそうですが、その人たちだけでできたわけではなく、どんどん活動が広がっていろいろな連携がある中での意見交換から出てきたと聞いています。

 

永井:下水の課題解決をきっかけにこのようになったということですか?

 

西田:内水面氾濫だけでなく、合流式下水道なので大雨の時には汚物が河川に流れてしまい、その水質汚濁が一番の課題だったみたいです。

 新しいものをなにかつくるだけでなく、すでにあるものに実はこういった機能を持っていたんだよということを評価できることも大事です。ファンさんの研究などはまさにそうなのかなと思います。緑地や庭園が防災面でこれだけの効果があるということが明らかになれば、かなり注目を集めることになると思います。

 

永井:ファンさんの庭園の清掃活動は参加してみると楽しいので、いろいろな人が手伝ってくれるようになりましたが、フアンさんはどうしてみんなが関わってくれるようになったと思いますか?

 

フアン:金沢のまちは規模がちょうどよく、人の関係も強いので、庭園清掃活動の協力を募集すると、たくさんの地元の方がご協力してくださいます。金沢のまちのスケールが丁度いいのではないでしょうか。東京や京都だとまちが大きすぎてここまでうまくいったかどうか。

西田家庭園の清掃作業の様子

永井:質問が来ています。「環境がよくなったら、文化や経済に与えるプラスの影響やメリットについて、金沢での具体的な例があれば知りたい」というもの。フアンさん、グレーインフラをグリーンインフラにしたときに、このまちにどのようなメリットがあると考えますか?

 

フアン:夏のヒートアイランドは経済とも関係がありますが、それが改善できると思います。

 

永井:「デジタル社会との共存も大切になる。効率優先から持続可能な社会への考え方が変わっていくことが重要だと思うが、パネリストの方々はその切り替えがいつ頃から加速するとお考えか?」という質問が届いています。

 私の場合、現在はリモートで家にいますが、家の隣にせせらぎがあり、そこはコミュニティーの人が管理していますが、年配の人が多く、手が回らなくなっていて、私も手入れを手伝ったりするようになりました。グリーンインフラという現場をどう変えるかということもありますが、このように私たちの生活様式をどう変えるかということも大きく関係してくると思っています。そういったところでこの切り替えはいつ頃から加速すると思いますか?

 

西田:すでに始まっているのではないかと私は思っています。コロナの前の、2018年くらいから大きく変わってきていて、それが今は加速しているような気がします。2010年から2015年ころまではあまり動きが感じられませんでしたが、それ以降は自然とか持続可能性とかの思考が高まっているような気がしています。COP10のころは、理想的というか、倫理的に大事だと言っていたような気がしますが、今は社会的な利益のためにグリーンインフラも必要だし、持続可能なESG投資も大事だし、防災上でも分散型が大事だしと、自然とか持続可能性をきちんと守るということが社会にとってもメリットだということが、SDGsのおかげか広がってきたような印象があります。

 

永井:コロナによって、今まで変えられないと思っていたことが変えられることを知り、それとともに、心の豊かさを考えるようになったということもあると思います。

 フアンさんから、みてグリーンインフラなどをみんなでやっていくムーブメントを推進するためには何がカギになると思いますか? そしてスペインとの違いはどんなふうに感じていますか?

 

フアン:日本とヨーロッパの緑の考え方は違います。ヨーロッパは公園などの緑が多いですが、日本では公園は少なく、家の庭が多いです。ですから、日本では家の中の緑をどう増やすかということを考え、ヨーロッパではまちの中の緑をどう増やすかということを考えます。緑を増やすためには日本人の考え方を変えていかないとできません。

 

永井:「グリーンインフラの防災の機能について、平時から防災について市民に考えてもらう工夫も必要では? そんな事例があれば教えてほしい」という質問が来ています。

 

西田:昔から言われているのは、河川の堤防に桜並木をつくっているのは、普段から堤防などの防災施設の管理を意識してもらうためということ。楽しみと憩いの空間であり、かつ災害がある時に守ってくれる大事な存在だということを意識してもらえます。金沢の用水路も、そのような機能があるということを聞いた気がします。

 

永井:グリーンインフラは多機能だから、「防災訓練は楽しくないけど、ピクニックならば楽しい」など、別の仕掛けによって意識してもらいやすいのかなと思います。

「金沢には農業用水があるが、暗渠(あんきょ)のところも多い。例えば東京の神田川のように起点から終点まで、景色を楽しみながら歩けるまちになって欲しいと考える。そこで行政が土地を強制的に収容することは可能なのか?」という質問があります。

 

フアン:土地を利用することができれば、強制収容するほどのことをしなくていいと思います。持ち主はそのままでも、期間を限ってでも、まずはみんなで管理してすばらしい畑とかコミュニティーの場を作れればいいと考えています。

 

永井:参加いただいた方のコメントを一つ紹介したいと思います。「金沢は地域の生活文化を体験するカタチの観光にとても向いていると思うが、緑を育んで楽しむという観光も実はリピートにつながるのではないだろうか。ひいては持続可能なグリーンインフラにつなげることができそうだと思う。グリーンインフラは観光との親和性もあるかもしれない。そして、日本らしい、金沢らしいグリーンインフラのプロモーションの一つになるのではないだろうか」。

 時間となりました。最後に2人から、グリーンインフラの夢や希望を語ってください。

 

西田:いろいろありますが、まだ始まったばかりですので、これをどうやって広げていくかということに、いろいろ関わっていきたいと思っています。働き方改革やウィズコロナで、より住みやすいまちを作っていく中、グリーンインフラの扱いは、防災とは違う文脈で考えられるべきもの。それをどういうふうに行っていくかについてはまだまだ幅がありますので、さまざまな方とディスカッションしていくことで、よりクリアに見えてくるのではないかと考えています」

 

フアン:金沢市内の研究エリアで、地元の方と一緒になって、将来のために空き家や空き地が再利用できるようになればいいと思っています。

「今日、参加してくださった皆さんとは、今後またグリーンインフラの推進、そしてそれを金沢で実施していく時、ご一緒できたらと思っています」と永井事務局長が述べ、今回のSDGsカフェは終了しました。

 

 

全部通しで見たい、もう一度見たい、という方はコチラからご視聴いただけます。OUIKチャンネルのサブスクライブもよろしくお願いいたします。

 

 

寺社庭園からはじまるグリーンインフラ Vol. 1

心蓮社の庭園は真ん中に池、そして背後に山が広がる「築山池泉式」の書院庭園です。ゆったりと時が流れる空間の中にいつまでも眺めていたい風景があります。卯辰山の麓に位置しており、その庭園は山と一体化していることからも庭園という人の手によって作られた空間にいながら、大自然の醍醐味を味わえる場所となっています。

今年2度目の清掃活動、そしてグリーンインフラに関するワークショップが心蓮社で行われました。

今回は金沢大学の丸谷耕太先生、そして北陸先端科学技術大学院大学の坂村圭先生のゼミとの合同企画です。特別ゲストとして龍谷大学から林珠乃先生をお招きし、基調講演も行っていただきました。

はじめに国連大学のファン研究員より、この庭園清掃ワークショップの活動についての説明がありました。金沢市に多く残されている庭園のほどんどが維持管理に関する問題を抱えており、このようなワークショップは新しい庭園管理のシステムとして大変重宝されているそうです。

これまでに約340名の方がこのワークショップに参加しており、徐々に市民の生活にも溶け込んできました。ファン研究員は清掃を始める前と後に参加者にアンケートを行っています。その結果、庭園を清掃することでポジティブな感情が増加し、ネガティブな感情が減少することがわかりました。このような清掃活動は庭園の持ち主だけではなく、参加者にもプラスに働くことがわかります。

スペインから10年前に来日し、京都で日本庭園について学んだファン研究員ですが「京都の庭園と金沢の庭園の違いは?」という質問に、「京都は枯山水が有名で落ち着いた雰囲気、金沢の庭園は曲水庭園など、水がポイントになっていると思います。」という答えました。また、京都の庭園は観光名所になっている場合が多く、主に企業などが費用を捻出しているため管理システムが確立している。一方、金沢の庭園の場合は個人が所有している庭園が多く、維持管理していく上で所有者やその家族にかかる経済的・身体的負担なども懸念されているとのことです。

ファン研究員が7月に出版されたブックレット『金沢の庭園がつなぐ人と自然』でも述べているように、地域住人が自分たちが暮らす町の「庭師」として自然を守るために協力することが持続可能な「都市の自然」の実現につながります。

休憩をはさみ、次は滋賀県の龍谷大学からお越しいただいた林先生に「過去の文化的景観を可視化する」をテーマにお話しいただきました。

林先生は元々生態学を研究しており、その過程で生き物のことだけではなく、生き物と人、または自然と人の関係についても興味を持ち、現在は龍谷大学の里山研究センターで活動されているそうです。

金沢の日本庭園の文化的景観や生物の多様性がミクロな視点だとすると、今回の林先生のお話はもう少しスケールが大きいもので滋賀県の琵琶湖の周辺一帯が示された地図を使いながらマクロな視点で人と自然の関係を見ていきました。

日本の自然は「セカンダリーネイチャー」と呼ばれる、人が意図的に手を加えて維持管理してきた自然がほとんどを占めます。そのため、人々の生活スタイルや社会の変化により過去から現在に至るまで変化し続けてきたそうです。

林先生の研究では過去の自然環境や文化的景観にも着目し、土地の利用方法や自然環境の変化を調査しています。昔から現代に至るまで変わらずに存在する自然の利用方法を調べることで持続可能な人と自然のつながり方や、その土地の環境に合った産業などを示唆できるのではないかと述べました。

このような研究結果は例えば化石燃料に頼らない地域づくりや地域循環型社会を作る上でも将来的に役立つのではという意見もあるそうです。

 

林先生のレクチャーの後は、庭園清掃に取り掛かりました。

3つのグループに分かれ、主に秋になり増えてきた落葉を集める作業を行いました。

美しい秋晴れの昼下がり、庭園を住処にする生き物も発見できました。

また、今回の清掃活動に庭師の中見宰さんも参加していたこともあり、苔の手入れ方法など普段なかなか教わることのできないプロの技術や知恵も教えていただきました。

 

 

 

 

 

十数人で清掃し1時間ほどかけてやっと綺麗になりました。この作業を所有者や管理人が一人で行うのはとても厳しいことだと参加者の皆さんも身をもって体感したようです。

清掃後は恒例のアンケートを行い、その後ディスカッションセッションを始めました。

各グループは今回の体験で感じたことや印象を共有し、まとめたものを3分間のプレゼンテーションで発表しました。

「どんな庭園だと足をはこびやすいかな?」「落葉の活用しよう」「ゆるくできて楽しかった」などなど、沢山の意見が出る中、「この活動は単なる通常の清掃と見なすべきではない」という共通の見解に至りました。

庭園で自然に囲まれて過ごす時間は都市で暮らす人々にとってとても貴重な自然と触れ合う場であると共に共通の目的を持ちながらコミュニケーションを図り、人との関係を深める場でもあります。美しい庭園で楽しみながら学び、参加者の皆さんはとても満足したようです。

最後に心蓮社の住職であり、この庭園の管理者でもある小島さんから挨拶のお言葉とコメントを頂き、閉会となりました。

 

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