地域との研究活動:アーカイブ
2024年10月29日
金沢市内には、建造物や用水、庭園や鎮守の森など、まちの歴史を今に伝える歴史遺産が数多く残されています。 金沢市では、それらの貴重でかけがえのない歴史遺産を次代へと継承すべく、調査や整備、活用など、様々な取り組みを行っています。
これらの取り組みの一環として、金沢市は9月28日から11月30日まで「金沢歴史遺産探求月間」を開催しており、国連大学サステナビリティ高等研究所(OUIK)もこのに協力しています。
この期間中、市の歴史的遺産を体験するためのイベントが複数開催されています。その一つとして、10月12日に国の名勝に指定されるために手続きが進められている西家庭園にて本イベントが開催されました。本イベントでは市の文化財保護課の招聘により、OUIKの研究者であるフアン博士が43名の参加者に向けて講演と庭園ツアーを行いました。
当イベントに金沢市長の村山卓も出席し、金沢の庭園文化の重要性と、国際的な認知の高まりについて語りました。村山市長は金沢の文化と環境が国連環境計画(UNEP)の「世代間環境回復プロジェクト」のモデル都市 として世界的に認識されていることを強調し、金沢の環境、経済、文化の価値を促進する上でOUIKが果たす重要な役割に感謝の意を表されました。
講演の中でフアン博士は、金沢市を取り囲む自然の主要な特徴、特に山々や豊かな水資源について説明しました。そして彼は16世紀に前田藩によって築かれた支援的な社会構造と、北陸地方の気候が形作った金沢の庭園の独自性を強調しました。このシステムにより多くの職人からなる中産階級が栄えました。さらに職人たちの多くは地域の用水路を利用し、自宅の庭に水を引き、小さな兼六園を再現しようとしました。
続いてフアン博士は現在でも市内に残る用水や庭園の関連性について詳述しました。彼は、これらの庭園が人口減少や維持管理の不足に直面している課題を説明しました。講演の後半では、用水と庭園のつながりが市内の生態系機能、特に生物多様性の維持にとって不可欠であることを強調しました。
この点を証明するために、フアン博士は都市内の30か所の庭園で実施された野生動物調査(2021年9月 、11月 )の結果を紹介し、西家庭園を具体例として挙げました。
この調査では、現場観察、センサー付きカメラ、ICレコーダー、DNA分析などさまざまな手法を用い、季節ごとにデータを収集しました。その結果、アユやハヤブサ、ナミコキセル、ホタルなどの貴重な種が特定されました。これらの結果は、文化的保護と自然保護が強く結びついていることを示しています。多くの生き物が急速な都市化から守られている環境を求め、庭園に生息するようになりました。そのため現在、庭園はこれらの生き物の貴重な生息地としての役割を果たしています。
フアン博士の講演を通じて、参加者たちは金沢庭園の美的、文化的、そして生態学的価値について深い理解を得ました。ディスカッションセッションでは、生態系の継続性を確保するために、今後数年間、生き物の生態を追跡するモニタリングシステムを確立することが重要であると議論されました。その後、参加者たちは晴れた初秋の日に庭園を自由に散策し、楽しむことができました。
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*西家庭園 について:西家庭園は、1916年(大正5年)に旧市街の長町の住宅地に作られ、その原貌を保ってきました。隣接する大野庄用水路は中央の庭池を潤し、その池は日本各地からの印象的で大きな景観石で囲まれており、アーチ型の橋や水の盆と美しく調和しています。また、庭の珍しい部分に配置された高い人工の丘は、松やツツジ、カエデなどの在来植物で植生されており、見る人に金沢の自然の特性を反映した深い空間感覚と隔絶した雰囲気を提供しています。
金沢市公式YouTubeチャンネルでイベントの概要をご覧ください。
VIDEO
2024年10月31日
2024年10月30日
震災の影響により、今年度の生き物調査は実施が難しいかと思われまれましたが、2024年10月25日、七尾市立中島小学校の6年生による「里海の生きもの調査」が無事行われました。この調査は七尾市が主催し、能登GIAHS生物多様性ワーキンググループの専門家のメンバーである、のと海洋ふれあいセンターの荒川さんと国連大学の小山研究員が参加し、生き物調査の実施を支援しました。
まず、七尾市農林水産課の小竹さんから挨拶があり、講師の荒川さんから調査方法や注意事項について説明がありました。必要な道具を手に5つの班に分かれて調査がスタートしました。箱眼鏡や網を使って熱心に生き物を探していました。四つん這いになり石段の隙間にいるカニを捕まえようとする児童や、夢中になって腰まで水に浸かってしまう児童もいました。採集時間が終了すると、「え、もう終わり?」と、もっと生き物探しを楽しみたいと名残惜しむ声が上がりました。
続いては、種判別の時間です。捕まえた生き物を海藻と分けて観察しました。ワーキンググループで作成した下敷きや記入シート、新たに完成した副教材も用いながら見つかった生き物を記録していきました。見つかった生き物については荒川さんに解説してもらいました。しただみの仲間は食べられることや、見た目は似ているけれど蓋の形状が異なるスガイという貝がいることなどを学びました。そして、異なる班でそれぞれ見つけたカニを一つのケースに入れて、見比べてみました。イソガニとガザミという異なる種類のカニで、ガザミの一番後ろの脚(第5脚)の形は平たく、泳ぐのに適していることなどを紹介してもらいました。
パッと見たところ何もいないように見える人工的な海岸でも、じっくり探すと様々な生き物がいることが分かりました。震災の影響もあり、子供たちが外に出て生き物と触れ合う機会は減ってしまっていると思いますが、今回の生き物調査で身近な里海の豊かさや面白さを感じてもらえたのではないでしょうか。これからも、自分たちの暮らしと海のつながりをさらに深く学んでいってほしいと思います。秋晴れの空の下、子供たちの輝く笑顔が何よりも印象的でした。
2024年10月25日
国連大学OUIKが今年度から新たに立ち上げた「石川金沢から世界を変える、次世代のリーダー育成プログラム」 発表会が2024年9月16日に開催されました。本プログラムは、持続可能な開発や気候変動といった地球規模の課題に対し、地域からグローバルリーダーを育成することを目的としています。金沢市内の高校生13名が参加し、半年にわたって地域環境や気候変動に関する学習を進めてきた成果を発表しました。
発表会の内容:
発表会では、プログラムに参加した13名の高校生が、夏休みを利用して取り組んだ地域環境課題の探究プロジェクトの成果を発表しました。各学生は、気候変動の影響や地域の具体的な環境問題に対して、彼ら自身が考えた解決策や提案をプレゼンテーション形式で発表し、会場からの質問にも積極的に応じました。
発表されたテーマは以下の通りです:
耕作放棄地の活用
車社会からの脱却
より良い港と周辺環境づくりに向けた提案
代替フロンの排出量削減について
いしかわ・かなざわのまちと水
金沢におけるグリーンインフラについて
サーキュラーエコノミー
学生たちの発表は、具体的なデータに基づいたものであり、現実的な解決策を提案する内容が多く見受けられました。特に、地域住民との連携や行政との協力を視野に入れた提案が、参加者の注目を集めました。
次のステップ:COP29への派遣
発表会終了後、参加学生たちは個別面接を行い、金沢泉丘高校の梶夏菜子さんと金沢大学附属高校の本多真理さんが選抜されました。この2名は、今年11月にアゼルバイジャンで開催される国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)に国連大学代表団、そして金沢のユース代表として参加することが決定しました。彼女たちは国際的な場で金沢の若者として積極的に意見を発信し、世界の気候変動対策に貢献することが期待されています。
今回の発表会は、地域の若者がグローバルな課題に対してどのように向き合い、自分たちの視点で解決策を提案するかを示す非常に意義深い機会となりました。学生たちの情熱と行動力に触れた参加者たちは、彼らが地域社会だけでなく、世界の未来を担うリーダーとして成長していく姿に大きな期待を寄せました。
COP29への派遣メンバーの活動報告は、国連大学OUIKの公式ウェブサイトやSNSを通じて順次発信される予定です。ぜひご期待ください。
2020年12月24日
2018年、国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」の価値を次世代に伝えるため、教育絵本「ごっつぉをつくろう」 を制作しました。この本は季節ごとに様々な地域の食材を使いながら能登の祭りごっつぉ(ご馳走)を作っていく物語です。「食」を通じて能登の農業や生き物、文化の理解を深めることを目的としています。
2019年、このその絵本を元に輪島市で「地域に根ざした学びの場・まるやま組」 では地域のご馳走の食材をあつめながら自然や文化について学ぶモデル授業「三井のごっつぉproject」を輪島市立三井小学校の児童を対象に行いました。
この「ごっつぉ草紙 Red data cook book」は一年を通して行ったこの教育活動の記録です。さらに授業の中では紹介できなかった地域に残る郷土料理や食材など「ふるさとの味」を季節ごとに紹介しています。
発行 2020年10月16日 World Food Day
制作 能登地域GIAHS推進協議会
協力 輪島市立三井小学校、輪島市三井公民館、市ノ坂集落、輪島エコ自然農、能登SDGsラボ、能登里山里海SDGsマイスタープログラム
企画・編集・デザイン・写真 萩のゆき(萩野アトリエ、まるやま組)
萩野紀一郎(富山大学芸術文化学部、まるやま組)
モニタリング・解説 伊藤浩二(岐阜大学、能登SDGsラボ連携研究員、まるやま組)
発行 国連大学サスティナビリティ高等研究所 いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)
2016年02月28日
OUIKでは、『地図情報から見た能登の里山里海 』、『地図情報から見た金沢の自然と文化 』をはじめ、地域の自然と文化のつながりを分かりやすく理解するための地図情報整備を進めています。
北陸地方を対象として、県レベル、市町村レベルでのマルチスケールでの地図情報を集約しています。その際に、生物多様性、文化多様性、生態系サービスといったキーワードを軸に、地域のニーズを反映しながら、視覚化や定量化に工夫し、地域に役立つ学びと情報発信のツールづくりを行っています。
2016年02月23日
能登の里山里海がFAOにより世界農業遺産(GIAHS)に認定されてから5年の節目を迎えようとしています。OUIKではそれに伴うアクションプランの改定作業やモニタリング作業の支援などを行ってきました。
中でも、4市5町にわたる能登地域で行われている生物多様性モニタリングの活動は、各市町や各種民間団体が独自に行っている生き物調査が中心であり、能登地域全体として統一されたモニタリング手法や生物多様性に関する情報発信や地域の方々と共有するしくみはまだ開発されていません。この現状を受けて、OUIKと金沢大学里山里海プロジェクト が中心となり、能登の生物多様性モニタリングや関連活動を通じて能登GIAHSに貢献するための生物多様性研究会を設立しました。メンバーには地域で生物多様性保全や環境教育に取り組んでいる民間団体の方々、能登の関連する研究機関の方々に参加いただいています。
1月23日には、OUIKがオブザーバーとして参加している、能登GIAHS活用実行委員会と能登GIAHS推進協議会の場で同会の発足を報告しました。今後は推進協議会の生き物しらべや関連する事業と連携しつつ、能登GIAHSとして豊かな生物多様性の保全とモニタリング、そして発信に貢献してゆきます。
2019年07月10日
金沢の日本庭園の活用方法を防災、観光、景観など多面的なアプローチから解説すると共に、持続可能な都市と生態系保全に向けたアイデアを提唱しています。
2015年05月12日
協議会で挨拶する渡辺OUIK所長
白山麓はユネスコエコパークとして(英語名:UNESCO Man and the Biosphere progaramme / Biosphere Reserve)1980年にユネスコにより認定されています。白山市は、白山手取川ジオパーク推進協議会事務局とユネスコエコパーク事務局を兼務しており、これは世界的にも珍しいケースとのことです。2016年白山エコパークにおいて移行地域の拡張申請を行うにあたり、白山地域を構成する4県7市村の自治体が中心となって2014年1月に協議会が発足しました。OUIKは2015年8月から協議会の参与として正式に就任し、エコパーク認定地域の計画見直しや承認プロセスについての情報収集や啓発普及のお手伝いをさせて頂くことになりました。
山田白山市長(左)から白山の自然と文化について伺いました。
2015年5月12日の第3回協議会の開催にあわせて、協議会会長である山田白山市長に、渡辺OUIK所長より参与メンバー就任のご挨拶をさせていただきました。ご自身も白山麓の出身である市長からは、白山の自然と文化について貴重なお話をたくさん伺うことができました。これからも地域が自然と共生するエコパークの理念を守りつつ白山麓の地域創生のお手伝いが出来ればと思います。
2018年12月19日
2016年10月、石川県七尾市で開催された第1回アジア生物文化多様性国際会議から1年後、石川宣言の実施を推進するため、2回シリーズの国際フォーラムをが開催されました。
シリーズ第一回(2017年10月4日)
生物文化多様性とSATOYAMA -自然共生社会を目指す世界各国の取り組みを知る-
シリーズ第二回(2017年10月15日)
生物文化多様性を次世代が敬称する為に-東アジアの連携を考える-
2016年07月01日
日時 / Date : 2016/07/15 13:00 -17:00
場所 / Place : 金沢大学中央図書館 オープンスタディオ 2階
国連大学サステイナビリティ高等研究所と金沢大学留学生センターは、日本で学ぶ留学生によるSDGsワークショップを開催します。このワークショップは、7月11日から14日まで行われる、金沢市を中心としたSDGs達成のためのフィールドワークの報告会を兼ねています。金沢大学留学生センターに在籍する留学生、国連大学サステイナビリティ高等研究所のアカデミックプログラムの修士、博士課程で学ぶ留学生が「創造都市・金沢」を建築、エネルギー、教育、自然資源管理などの側面から議論します。
SDGsに興味がある皆様のご参加をおまちしております。言語は英語のみとなります。 ご登録は ryukou@adm.kanazawa-u.ac.jp まで氏名、御所属を記載のうえお送りください。