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地域との研究活動:アーカイブ

ごっつぉ草紙 Red data cook book

2018年、国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」の価値を次世代に伝えるため、教育絵本「ごっつぉをつくろう」を制作しました。この本は季節ごとに様々な地域の食材を使いながら能登の祭りごっつぉ(ご馳走)を作っていく物語です。「食」を通じて能登の農業や生き物、文化の理解を深めることを目的としています。

2019年、このその絵本を元に輪島市で「地域に根ざした学びの場・まるやま組」では地域のご馳走の食材をあつめながら自然や文化について学ぶモデル授業「三井のごっつぉproject」を輪島市立三井小学校の児童を対象に行いました。

この「ごっつぉ草紙 Red data cook book」は一年を通して行ったこの教育活動の記録です。さらに授業の中では紹介できなかった地域に残る郷土料理や食材など「ふるさとの味」を季節ごとに紹介しています。

 

発行   2020年10月16日 World Food Day

制作   能登地域GIAHS推進協議会

協力   輪島市立三井小学校、輪島市三井公民館、市ノ坂集落、輪島エコ自然農、能登SDGsラボ、能登里山里海SDGsマイスタープログラム

企画・編集・デザイン・写真  萩のゆき(萩野アトリエ、まるやま組)
萩野紀一郎(富山大学芸術文化学部、まるやま組)

モニタリング・解説  伊藤浩二(岐阜大学、能登SDGsラボ連携研究員、まるやま組)

発行   国連大学サスティナビリティ高等研究所 いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)

 

【開催報告】GIAHSユースサミットとエクスカーション(世界農業遺産国際会議サイドイベント)

石川県七尾市にて開催された世界農業遺産国際会議のサイドイベントとして国連大学OUIKは11月26日に「GIAHSユースサミット世界農業遺産を未来と世界へー佐渡と能登からつながろうー」27日に「ユースサミット参加者向けのエクスカーション」を開催しました。

ユースサミット参加高校:石川県立飯田高等学校、石川県立鹿西高等学校、新潟県立佐渡総合高等学校、日本航空高等学校石川、宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校(計40名)

ユースサミット参加大使国:セネガル、ブルキナファソ、ペルー

ファシリテーター:県内大学生の方や能登でインターン中の大学生

 

はじめに永井三岐子(国連大学OUIK)が開会挨拶、続いてGIAHSユースサミットシリーズ第1回、第2回の開催報告が行われました。

  • 第1回「実はよく知らない世界農業遺産」 - 小山明子(国連大学 OUIK)
  • 第2回「農村の未来の可能性を次世代と共に考え、切り拓いていくために」 - 飯森 翔太郎(若者農学研究会)

セッション1「私たちが伝えたい未来の世界農業遺産」では、4つのテーマ:①農業の生物多様性と里山里海の環境の保全 ②経済の活性化 ③文化の継承と発展 ④知識の継承と発信、に分かれ、グループディスカッションを行いました。学生たちは各テーマに関連する地域ごとの特色や活動例を紹介し合い、それらにどのような価値があり、なぜ未来に伝える必要があるのかを話し合いました。県内外から集まった初めて会う仲間たちとのセッションに、はじめは緊張している様子だった高校生たちも、お互いの地域についての理解を深め、だんだんと打ち解けていった様子でした。

セッション終盤ではディスカッション中に挙がった意見を元に、今後自分たちの地域のGIAHSを守り、地域文化を継承していくためのアクションプランを練り、「GIAHSユース宣言」としてまとめました。

 

 

 

 

 

 

ランチタイムでは石川県立鹿西高等学校家庭部が考案した「GIAHS体感弁当」を家庭部員のプレゼンテーションと共に楽しみました。このGIAHS弁当は「サミット参加者がGIAHSを体感できるように」と、鹿西高校家庭部の皆さんが心を込めて企画してくださったものです。能登GIAHS内で生産、採取された40種類以上もの食材が使用され、郷土料理のかぶら寿司や能登の海で採れた岩のりも一緒に振舞われました。セネガル駐日大使は、すべて地元の素材を使っあることや高校生が熱心に取り組んでいることに感心し、「君たちはGIAHSの大使だ」と称賛されいていました。

午後に開かれたセッション2「私たちが伝えたい未来の世界遺産を形にしよう」ではGIAHSに関心を有する国々の駐日大使も加わり、午前中に行われたセッション1の結果の発表と大使による発表が行われました。各グループの高校生代表が自分たちの地域のGIAHSの多元的な価値を未来へ伝えていくために、自分たちがどのような行動を起こしていきたいか、発表しました。そして、大人たちにはどういった協力をしてほしいか、熱量を持って伝えてくれました。

一方で、参加いただいた駐日大使からは、自分たちの国の自然や景観、農業、食文化や伝統文化といった地域の資産について紹介いただきました。発表の後、会場で質問するのは少し恥ずかしかったのか、高校生は個別に大使とコミュニケーションを取り各国のユースの活動、SDGsや気候変動への関心の有無などを尋ねるなどしていました。さらにこのセッション中に来場いただいた谷本正憲氏(石川県知事)からは、「今後、若い世代を中心としたGIAHSでの地域活動に期待している」と激励のコメントを頂きました。

 

イヴォーン・ユー(国連大学OUIK)がこのサミットの閉会の言葉を述べた後、一同は本会議のクロージングセッションにて「GIAHSユース宣言」を発表すべく、会場に向かいました。

各学校を代表した高校生5名がこの日行われたGIAHSユースサミットの報告と「GIAHSユース宣言」を発表すると会場からは大きな拍手が送られました。

 

翌日27日にはサミット参加者向けのエクスカーションツアーが能登DMC協力の元、開催されました。このツアーでは新潟県立佐渡総合高校と宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校の生徒10名と引率の先生方が参加し、ユースサミットの最後に学生たちが掲げた「体験の機会を見つけ、GIAHSへの理解を深める」という約束を具体化しました。

このツアーはGIAHSの5つの基準である、1)食料と生活の安全、2)農業の生物多様性、3)地域と伝統的な知識体系、4)文化、価値体系、社会組織、4)景観と海景の特徴、を学生に説明するために、現場を訪問し、体験することを目的として構成されました。

一番目の目的地はのとの里山・里海ミュージアムです。ここでは能登の歴史、伝統文化、環境や生物多様性の特徴について概観しました。

 

 

 

 

 

 

続いて、同じく七尾市の三次水産牡蠣養殖場を訪れ、里海のくらしを体験しました。何十年も家族経営で牡蠣養殖業を営んでいる方の経験談を聞きながら、牡蠣に付着している岩やフジツボを取り除く作業を体験をしました。その後、昼食は近くの牡蠣料理専門店浜焼き能登風土に移動し、焼き牡蠣やカキフライなど水揚げしたばかりの新鮮な牡蠣を使った里海の味を堪能しました。

昼食の後は、志賀町の細川農園に立ち寄り、この時期の里山の恵みを利用した「能登志賀ころ柿」について学びました。この産業もまた、農村地域で深刻化している後継者問題を抱える産業の一つです。代表の細川氏は「農業遺産地域には、そこにしかないストーリーをもった産業や製品がたくさんある、是非若い皆さんにはこれから色々な経験をして、将来また自分たちの地域に戻ってきて、それらを生かした活動を行ってほしい」と語りました。

 

その後一同は「里山まるごとホテル」へ移動し、東京から能登に移り住み、地域の食材を使ったレストランを営むオーナーのお話を聞きました。高校生からは「私は地元の食材を使ったお店を学校のプロジェクトとしてやってみたい」など、具体的なアイデアや意見が交換されました。

 

 

 

 

 

 

 

最後に能登GIAHSの代表的景観の一つでもある輪島市の「白米千枚田」へ足を運んだ一同は、小さな田がびっしりと並び、日本海へと続く絶景を堪能し、帰途につきました。

帰りの車中では、この2日間の感想や発見を参加者で共有しました。学生たちは「地元の方々と触れ合う貴重な機会に恵まれ、GIAHSについての知識が深まった」、「GIAHS地域にとって一番重要なのは「人」であるとわかった。今後、地域に貢献できるようにこの経験を生かしたい」と述べ、エクスカーションは幕を閉じました。

 

 

IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ 交流会#7(2021年12月18日)の開催

金沢ミライシナリオをパートナーシップで実践するためのプラットフォームであるIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ20211210日現在、170を超える企業、団体、個人が会員登録されています。パートナーズでは、毎月1回、パートナーズ交流会という会員間の対話の場を設けています。会員のみなさんがチャレンジしていることや困っていることを持ち寄り、それを起点にディスカッションを行い、会員間や様々な団体との協働を通した課題の解決と金沢ミライシナリオの実現を目指しています。

先日1218日に2021年度第5回目、合計第7回目となるパートナーズ交流会を金沢市で開催しました。今回は、薬薬連携SDGs KANAZAWA、ツエーゲン金沢、特定非営利活動法人ニットの3団体がピッチプレゼンを行い、課題を共有しました。20人を超える方々が参加しました。

薬薬連携SDGs KANAZAWAさんは、薬剤師など医薬品の使用に関わる方々が集まり、薬薬連携を通したSDGs達成に向けて取り組んでいる団体です。薬局など患者さんの薬を準備する場では、日々、多くのプラスチックゴミが排出されています。多くは包装ゴミで、プラスチックの種類はポリエチレン、ポリプロピレンほか、様々です。世界中でプラスチックゴミが問題になっている中、薬薬連携SDGs KANAZAWAさんでも、職場の状況を省みて、何か解決策がないか検討しています。例えば、ポリエステル繊維などの繊維としてリサイクルし、衣類などに出来ないかと考えています。そして、その売上を途上国支援のために寄付を行えないかと考えています。資源リサイクル分野に詳しい方の協力を得て、プラスチックゴミの問題解決を実現していきたいとのことです。

金沢をホームタウンとするJリーグのサッカークラブツエーゲン金沢さん。Jリーグは、スポーツ文化の醸成を目指すとともに、サッカーを通して地域を豊かにしていくことを理念として掲げています。それを背景に、ツエーゲン金沢さんもシャレン活動(社会連携活動)の強化を進めています。これまではJクラブ側から地域に出て活動する機会が多かったのですが、地域の他の団体にJクラブを使ってもらい、お互いの強みを活かしながら地域に貢献する取り組みを増やそうとしています。例えば、本年は明治安田生命保険相互会社やいしかわフードバンク・ネットとともにフードドライブ活動を行いました。ツエーゲン金沢さんは、地域と人と連携して新しいことがどんどん生み出される挑戦の文化が地域の伝統として根付くことをクラブ理念としています。そういった意味でも、色々な団体の方の地域活動にツエーゲン金沢さんの強みを活用して欲しいと考えています。

最後に、特定非営利活動法人ニットさんから、認知症になっても安心して暮らしていける社会を目指していくうえでの課題や、認知症患者とその支援団体が抱える課題について共有いただきました。特定非営利活動法人ニットさんは認知症患者の暮らしを支えるサービスを提供している組織です。高齢者の認知症有病率が高い中、このまま高齢化社会が進むと、2050年には10人に1人が認知症患者になると予測されています。また、認知症患者は様々なことで生活に不便を感じています。家族構成が変化して独居世帯や高齢者夫婦世帯が増え、またコミュニティの形が変わる中で、これまでと同じ形で家族やコミュニティで支えていく仕組みではうまくいかないことも生まれています。認知症の方も安心できる「持続可能な」社会であるにはどうすれば良いか、お互いに支え合える社会になるためにはどうすれば良いか、考えていく必要があります。

一方で、認知症患者への誤解や偏見も多く、差別的な発言や何気無い発言がご本人や周囲の人の自信を失わせ、暮らしにくさに繋がっていることも課題となっています。また、認知症患者の生活を支える介護保健サービスについても、待遇が悪いことや社会的評価が低いことなどが原因となり、若者を中心に介護職員への成り手が不足しています。仕事観や価値観の転換が必要となっています。特定非営利活動法人ニットさんとしては、これら課題を解決していくためのヒントやアドバイスが欲しいとのことでした。

ピッチプレゼンの後は、3グループに別れてグループディスカッションを行いました。各団体の状況についてより詳しく伺い、そして、解決のためにアイディアを共有したり、議論したりしました。薬薬連携SDGs KANAZAWAさんのグループでは、プラスチックボトルをどうやったら減らせるか、そしてどう有効活用できるか議論し、そして、製薬会社と連携していくことやプラチック繊維をボランティアユニフォームや建築資材、そして市の有料ゴミ袋に活用するなどのアイディアが生まれました。ツエーゲン金沢さんのグループでは、ツエーゲン金沢さんの幅広い活動内容、そして、いろんな場面で連携できるポテンシャルの高さを学ぶことができました。また、プロスポーツは強くないといけない中で、地域と連携が進むことでファンも増え、チーム力強化につながるのではとの意見も上がりました。

特定非営利活動法人ニットさんのグループでは、家族や地域も認知症患者の介護の現場の理解が進んでいない問題があり、その中で取り巻く環境や課題について知ることが出来たことが大きな一歩であったことを確認しました。そして、介護の現場とそれを知りたい若者や社会をどのようにつなぐか、そのニーズを探っていく必要性についても確認できました。各グループともたくさんのアイディアが共有されていました。パートナーズの交流の場から、また新しい連携が生まれて、協働プロジェクトが進み、金沢ミライシナリオの実現に向かっていけると幸いです。

IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズでは会員を随時募集しているほか、交流会でピッチプレゼンしたい企業、団体、個人の方も募集しています。ぜひみなさまのミライを作るアイデアを聞かせてください。

また、IMAGINE KANAZAWA 2030は、金沢独自のSDGsの目標である「金沢ミライシナリオ」と「持続可能な観光振興」の達成度を測る指標の検討を進めています。この度、その指標案をIMAGINE KANAZAWA 2030のHPで公開しました。20211231日まで、金沢市民のみなさまの幅広いご意見を募集していますので、ぜひアイディアのご投稿をお願いいたします。

【開催報告】世界農業遺産国際会議2021

石川県の能登半島と新潟県の佐渡は、2011年に先進国として初めて世界農業遺産に認定された地域です。今年認定10周年という節目の年を迎えたことを記念し、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティングユニット(国連大学OUIK)は石川県、農林水産省、国連食糧農業機関(FAO)、能登地域GIAHS推進協議会と共に「世界農業遺産国際会議2021」を石川県七尾市にて開催しました。さらに国連大学OUIKは本会議のサイドイベントとしてGIAHSユースサミット 世界農業遺産を未来と世界へー佐渡と能登からつながろうーを11月26日に開催しました。

※世界農業遺産は現代に残る伝統的な農業、農法、土地利用や文化、その土地の自然や生物多様性を守り、次世代に継承することを目的に国連食糧農業機関(FAO)が、2002年に創設したプロジェクトです。

今回、3日間にわたり開催されたこの会議では、谷本正憲氏(石川県知事)などが登壇した基調講演をはじめ、ハイレベルセッションや様々な分科会を通して国内外の認定地域の代表や政策担当者、研究者などが、気候変動や生物多様性の保全などの世界的課題に関して議論しました。また、農業遺産地域間の連携を深め、共通課題に共に取り組んでいくための方策についても検討されました。

会議初日、渡辺綱男(国連大学OUIK)がモデレーターを務めた分科会2〈社会〉テーマ:「GIAHSの動的保全を担う人材の確保・育成」では、金田直之氏(能登GIAHS推進協議会)、麥島洋介氏(有限会社阿弥陀ヶ滝観光)、林浩昭氏(国東半島宇佐地域世界農業遺産推進協議会)、ユーラリー・ドゥルヌアン氏(フィリピンイフガオ州立大学)、ピエトロ・クラリチ氏(農業生産法人クラリチ)、パク・ヨノ氏(韓国農漁村公社・農村遺産協会)、が登壇し、コメンテーターは中村 浩二氏(金沢大学)が務めました。登壇者は各GIAHS地域の人材育成や保全活動について紹介し、意見交換を行いました。またイヴォーン・ユー(国連大学OUIK)は、GIAHS保全活動をさらに発展させるために、GIAHSのモニタリングと評価の実施と、国内外GIAHS間の連携強化が不可欠とコメントしました。

会議2日目のクロージングセッションでは「能登コミュニケ2021」が採択され、

①国内外の農業関係者や農業政策立案者との活動成果や情報の共有

②認定地の生態系や環境との調和

③地域資源を活用した新たな経済活動の創出

④気候変動や生物多様性などの世界的課題や国連の持続可能な開発目標(SDGs)への貢献

⑤開発途上国の候補地域支援

などを含めた8項目が発表されました。

クロージングセッションでは、国連大学OUIKが同日に開催したGIAHSユースサミットにて県内外のGIAHS地域の高校生が作成した「GIAHSユース宣言」も発表され、採択されました。

最後に谷本 正憲氏(石川県知事)、赤松 忠幸氏(農林水産省大臣官房審議官(兼 農村振興局))、遠藤 芳英氏(国連食糧農業機関(FAO)GIAHS事務局 GIAHSコーディネーター)、渡辺 綱男(国連大学OUIK所長)が会議参加者や関係者へ向けて感謝の意を表すとともに、今後の抱負を述べ、閉会のあいさつとしました。

 

国連大学OUIKが国際会議のポスターセッションにて掲示したポスターは以下から閲覧いただけます。

 

GIAHS Biodiversity WG Poster Jp Eng

Introduction of Technologies on Characteristic Analysis

OUIK_能登の里山里海映像制作‗ポスター

Education on GIAHS

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ 交流会#6(2021年11月22日)の開催

金沢ミライシナリオをパートナーシップで実践するためのプラットフォームであるIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ。先日11月22日に2021年度4回目、合計第6回目となるパートナーズ交流会を金沢市内で開催しました。パートナーズ交流会は、毎回参加者が「パートナーズのみなさんと協働で実行したいプロジェクト」や「会員のみなさんと一緒に考えたいテーマ」をピッチプレゼンし、それを話題に参加者間でディスカッションを行います。その中で、会員間が協働して取り組む新しいプロジェクトが生まれ育っていくことを目指しています。

今回の交流会では、最初に、金沢市交通政策課からまちなかの公共交通について情報提供がありました。戦禍を逃れ、昔ながらの区画が残る金沢市では、限られた道路空間を有効活用するために公共交通を活かし、人中心の空間に変えていくことが重要だそうです。また公共交通を活用することで環境負荷も低減することができます。金沢市役所は、本年10月に国土交通省と交通エコロジーモビリティ財団が進めるエコ通勤優良事業所に、県内で3番目に認証されました。健康増進や時間の有効活用のためにも、パートナーズ企業にもエコ通勤に取り組んでもらいたいとのことでした。

続いて、2団体がピッチプレゼンを行いました。一般社団法人HOLAさんからは「DXによるCSVまちづくり」、金沢市企画調整課からは「『金沢ミライシナリオ』の達成度を測る指標について」という内容でお話いただきました。

一般社団法人HOLAさんは、CSV(Creating Shared Value)の考え方を取り入れ、DX(デジタルトランスフォーメーション)によって、環境・人権・子育ての分野などで、まちづくりを推進しようと取り組んでいる団体です。現在は、特にかほく市で、会員の高齢化や会員数の減少などで運営が難しい地域のスポーツクラブの運営をビジネスの観点からサポートしています。HOLAさんは、HOLA公式LINEを通して市民、ビジネス、地域スポーツクラブがつながる場所と情報提供を行い、その収益をスポーツ振興に活用するアイディアを推進しています。HOLA公式LINEでは「はたらく」(採用情報)、「つかう」(お買い得情報)、「はじめる」(参加する、学ぶ、習い事情報)など、スポーツ施設や企業が情報を提供し、ユーザ登録した市民が情報を得られる仕組みになっています。今回は公式LINEやHOLAさんの取り組み全般に関する推進方法や地域スポーツ振興についてアイディアをいただきたいとのことでした。

「IMAGINE KANAZAWA 2030」プロジェクトの事務局でもある金沢市企画調整課からは、現在検討中の「金沢ミライシナリオ」と「持続可能な観光振興」の達成度を測る指標案についてお話がありました。金沢市はこれまで市の独自のSDGs推進策として、金沢SDGs「5つの方向性」を定め、その行動計画である「金沢ミライシナリオ」を定めてきました。また、2020年度の国の「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定され、「金沢市SDGs未来都市計画」を策定し、モデル事業である「市民生活と調和した持続可能な観光振興」を推進しています。ですが、実際にSDGs推進や「持続可能な観光振興」がどれくらい達成できているかを測る指標が存在していませんでした。そんな中、IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議は昨年度から指標案を検討してきましたが、SDGsの推進は、多様な主体で目標を共有しながら進めるものです。今回の交流会では、参加者から「こんな指標があったらいい」や「ミライの金沢はこうなってほしい」など、自分ごとに出来る指標や欠けている視点についてアイディアがほしいということでした。

ピッチプレゼンの後は、2グループに分かれてグループディスカッションが行われ、各発表者への質疑応答やどうしたら後押しできるか、話し合いが行われました。そして、グループディスカッションの後、各グループでの話し合いの内容が参加者みんなに共有されました。HOLAさんのグループでは、公式LINEにどういった情報が掲載されると良いかという議論があり、コロナ禍で不安を抱える子育て世代がつながる機会や情報が掲載されると良いという意見もありました。また、「金沢ミライシナリオ」と「持続可能な観光」の達成指標について話し合うグループでは、子育てセンターの男性利用者が増加してほしい、車に乗らない日を作る、など、多くの意見が集まりました。また、コミュニティのあり方が変わる中で、回覧板のあり方についても活発な議論が行われました。

今回のパートナーズ交流会も多くの方に参加いただきました。新たな繋がりが生まれて、有意義な議論の場になっていますと嬉しいです。IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズでは、交流会でピッチプレゼンしたい企業、団体、個人の方を随時、募集しています。また、パートナーズ会員も募集しています。ぜひ皆様のミライを作るアイデアを聞かせてください。

 

OUIK 生物文化多様性シリーズ#5 金沢の庭園がつなぐ人と自然  ー持続可能なコモンズへの挑戦ー

金沢の日本庭園の活用方法を防災、観光、景観など多面的なアプローチから解説すると共に、持続可能な都市と生態系保全に向けたアイデアを提唱しています。

地図情報の集約:生物文化多様性や生態系サービスを理解する学びに貢献

OUIKでは、『地図情報から見た能登の里山里海』、『地図情報から見た金沢の自然と文化』をはじめ、地域の自然と文化のつながりを分かりやすく理解するための地図情報整備を進めています。
北陸地方を対象として、県レベル、市町村レベルでのマルチスケールでの地図情報を集約しています。その際に、生物多様性、文化多様性、生態系サービスといったキーワードを軸に、地域のニーズを反映しながら、視覚化や定量化に工夫し、地域に役立つ学びと情報発信のツールづくりを行っています。

【開催報告】シンポジウム「New Normal(ニューノーマル) 時代の農業遺産保全と価値の向上」

 国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)は、韓国農村振興庁(RDA)と共同で、2021年11月5日にシンポジウム「New Normal(ニューノーマル) 時代の世界農業遺産保全(GIAHS)の価値の向上」を開催しました。このイベントでは、COVID-19以降の「ニューノーマル」への移行を主なテーマとし、以下の2つを目的としました。

1)時代の変化に合わせてGIAHSを持続的に保全し、その価値を高める方法を模索する

2)世界的に重要なGIAHSの保全・管理に関するベストプラクティスと方向性を共有する

 RDAのテウン・ホ長官のはじめの言葉に続いて、UNU-IAS OUIKの渡辺綱男所長は、COVID-19のパンデミックによって人間と自然の共生がより一層重要となり、その実践地域としての役割を果たしていくGIAHS地域の可能性に注目が集まると期待し、本会議の議論の幕開けとしました。東京大学の八木信行教授は、人と環境が相互に依存し合い、共存することで繁栄する方法と関係性を明確に示すことが連食糧農業機関(FAO)のGIAHS申請審査時にも求められる重要な視点として強化されていると説明しました。GIAHSの価値を理解するために、UNU-IAS OUIKのイヴォーン・ユー博士とRDAのデヨン・ファン博士は、GIAHSの保全成果をモニタリング、評価することの重要性を強調しました。さらにUNU-IAS OUIKとRDAの共同研究である「GIAHSにおける特性分析と保全管理に関する技術の導入プロジェクト」で展開されている実用的な測定基準や指標を特定するための取り組みを共有しました。これらの発表を受け、韓国農林畜産食品部のアン・ジェロック氏は、農業コミュニティーの全体の暮らしを守り、環境保全対策を強化するために、GIAHSの現状維持に留まらず、多面的な価値の認識向上にも力を入れていくべきと話しました。

 続いて行われたプレゼンテーションとディスカッションでは、GIAHSが地域社会や人類にもたらす多面的な価値を「ニューノーマル」の時代にどのようにしてより広く認識してもらうかについて詳しく議論しました。RDAのミンチュル・ジョン博士は、最近韓国で実施されているGIAHSの参加型モニタリングプログラムを紹介し、モニタリングの重要性を改めて強調しました。林浩昭氏(国東半島宇佐GIAHS推進協議会会長)、高橋尚樹氏(大崎GIAHS推進協議会事務局長)、そして青山島の伝統的なクドゥルジャン灌漑棚田のコミュニティと密接に連携しているファン・キルシク氏(Myeonggso IMC研究員)は、それぞれのGIAHS地域での現在の実践と将来の計画について実例を挙げて話を進めました。特にこのパンデミックで大きな影響を受けた観光産業や商品販売を復活させることや、若い世代へのGIAHSシステムの教育、歴史の知識や文化的慣習の体系的な記録、金融投資を呼び込むインセンティブの創出などの重要性を強調しました。

 これらの発表を受けて、RDAのホン・ソクヨン博士と渡辺綱男博士は、若者をはじめとする従来とは異なるステークホルダーを巻き込んで、モニタリングを実用化することの重要性を指摘しました。これに対し、地球環境戦略研究機関(IGES)の斎藤修氏、パイチャイ大学のチェ・ジョンヒ氏、同志社大学の大和田順子氏からは、保全活動の評価と活用の方法として、日本のGIAHSが持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて積極的に活動していることなどの事例が紹介されました。

このシンポジウム「ニューノーマル時代におけるGIAHSの保存と価値の強化」は、ZoomやYouTubeの韓国語、日本語のチャンネルを通じて、120人近い参加者が集まりました。

 最後に、パンデミックを乗り超えて「ニューノーマル」の時代においての持続可能性な社会の実現へ向けて、GIAHSが果たす人間社会と自然環境の共生と保全への貢献と役割を再認識し、日韓のGIAHS地域が共通する課題の解決のために協力を深めることを期待して閉会しました。

 イベントの様子は、RDAのYouTubeチャンネルで韓国語と日本語で生配信され、日本語はこちら、韓国語はこちらでご覧いただけます。また、すべてのプレゼンテーションを含むプログラムは、こちらからダウンロードできます。

 

 

生物多様性ワーキンググループの活動紹介のポスターを作成しました

国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)では、今年度能登GIAHS推進協議会内に設立された生物多様性ワーキンググループの活動を支援しています。活動の一環として、主に専門家メンバーと協力して、これまでの活動成果と今後の展望をまとめたポスターを作成し、2021年11月25日~27日に七尾市で行われた「世界農業遺産国際会議2021」にて展示しました。

市民参加型で生物多様性をモニタリングする体制づくりに取組んでいること、活動資金の獲得に向けて取組んでいること、他の世界農業遺産(GIHAS)認定地域とも連携して、幅広いパートナーシップで取組を進めてゆきたいと考えていること、などが記載されています。

詳しくはぜひ以下のポスターをご覧ください。(日英)

GIAHS Biodiversity WG Poster Jp Eng

【開催報告】SDGsカフェ# 19 金沢のパートナーシップ、どう進化している?

「2020年2月以来のリアル開催です」と挨拶するOUIKの永井事務局長

金沢市、金沢青年会議所、国連大学IASいしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)の3者が、SDGs推進のためのプラットフォーム「IMAGINE KANAZAWA 2030」を立ち上げて2年半が経ちました。

現在、180を超える企業、団体、個人など、多様なみなさんにIMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ会員になっていただき、勉強会や交流会を通じ、お互いの活動に対する学びを深めています。

*IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズの概要と入会申し込みはこちら

今回は、金沢のパートナーシップがどんなふうに進化しているかということがテーマ。それぞれの枠を越えて、共有したビジョンの下で協力していく「コレクティブインパクト」の視点を交えながら、「パートナーシップって何?」を改めて考えました。

 

2030年理想のパートナーシップに向けて、個人の意識変化をさぐる

 2年前(2019年)の11月、「SDGsを進めていく上で新しいパートナーシップを考える」をテーマにSDGsカフェを開催。「金沢ミライシナリオ」ができた直後で、2030年の金沢を、「金沢の人全員がまちづくりを自分ごととして捉え、個々の力を活かして、自然に協力しあっている、そんなまちになっていること」と、金沢市企画調整課の笠間彩さんがIMAGINE(想像)しました。その時、話題提供してくださったのが、今回もお招きしている株式会社エンパブリック代表取締役の広石拓司さん(その時のレポートはこちら)でした。

 あれから2年、パートナーズ会員の中からは、フードドライブやアート、LGBTQなどさまざまなテーマでのプロジェクトが誕生し始め、笠間さんが思い描く2030年の姿へと着々と進化しています。

宇夛裕基氏○薬薬連携SDGs KANAZAWA代表、石川県病院薬剤師会理事、博士(薬学)

 さて、今回IMAGINEしてくださるのは金沢市立病院の薬剤師で、薬薬連携SDGs KANAZAWA代表の宇夛裕基(うだひろき)さん。1年前、OUIKの永井事務局長の講演からSDGsに関心を持ち、残薬課題解決のための連携を模索し始めたそうです。宇夛さんからは、パートナーシップによる参加者の心の変化などをさぐりつつ、金沢のミライの姿をIMAGINEしていただきました〈以下は発表の要旨〉。

 

──パートナーシップはSDGs17のゴールの一つで、すべてのゴールに共通する軸となる目標。そもそも、パートナーシップとは何か? 2つ以上の企業や団体などが、平等に、対等に手を取りあって、1つの目標に向かっていくというのが定義。これによって、さまざまなビジネスが動き始めています。しかし、団体に属している個人に目を向けてみると、なかには積極的ではない人もいるかもしれません。

 薬薬連携SDGs KANAZAWAとは、薬局や病院の薬剤師を中心に、医薬品に関わる人全てが対象の組織です。健康と福祉を守るために活動しているすべての人がパートナーとなることができ、実は医薬の業界では、多職種が手を組んでこのような新しい取り組みを行うことは、画期的なことでもあります。

 会則の前文では、「すべての事業はSDGs達成のため、社会問題の解決を目的とします」とうたい、現在、「コロナから子供を守る」、「残薬をゼロに」という2つのプロジェクトが進行中です。「残薬」とは家庭にある飲み残した薬のことで、年間100〜8,744億円もの残薬が発生しており、その多くが社会保険費(税金)で賄われていますから、国全体の問題と言えます。解決のために、一般社団法人コード・フォー・カナザワなどと連携して、アプリ開発を進めています。

 また、会則には「日本全国に活動が波及するよう、同志を育て、そのノウハウ、アイデア、資金、関係資産を提供し、SDGsへの取り組みを加速させていきます」と掲げ、2030年のゴール達成のために最速で日本中に波及すべく、全国で同じような団体を作っていくためのサポートも行いたいと考えています。

 さて、個人の意識がどのように変わっていったのか、まずは私の内的な意識変化を紹介します。1年前まではSDGsのことは何も知りませんでした。金沢ボランティア大学校観光コースで永井事務局長の講演を聴いたのがきっかけで、SDGsが身近な問題で自分ごとでもあることに気がつき、生活や仕事の中で、「自分に何ができるのか?」と問いかける、“モヤモヤ期”が始まりました。

 さらに、2021年1月にオンラインで開催された「北陸SDGs未来都市フォーラム」(レポートはこちら)で、広石さんの基調講演「SDGsをローカルイノベーションにつなげるために」を視聴し、SDGsの概念を地域に落とし込んで、事業や仕事にしていくことができることを知り、ワクワクしながら自分もやってみようと思うようになりました。そして、2カ月後にはとにかく知り合いを誘いまくってリモートで研修会を開催。「これからどういう未来を築こうか?」ということを探り、賛同してくれた11人が世話人になってくれました。このように私の場合、まずは「自分ごと」としてSDGsを捉えることができた後、“モヤモヤ期”、“ワクワク期”という意識の変化を経て、“活動期”へと入っていきました。

 一方で、世話人らの意識変化はどうだったのでしょうか。世話人らにとったアンケートによると、最初は引きずり込まれた感が強かったのですが、「理解が深まるにつれ、自分ごととして捉えることができ、参加意識が向上した」という声もあり、少しずつ積極的な意欲が上がってきていることがわかりました。世話人らは“モヤモヤ期”や“ワクワク期”という大事なステップを踏まずに、いきなり“活動期”に参加させられたため、最初は積極的な参加意欲につながっていなかったと考察しています。世話人たちも今後、“モヤモヤ期”や“ワクワク期”を経て、意欲が増していくのではないでしょうか。

 少しずつ意識が上がっていったという声があった一方で、「積極的に取り組みたいとは思うが、仕事と家のことで余裕がなく、今以上に積極的な活動をする自信がない」という声もありました。団体の中にはさまざまな背景を持っている人がいて、一緒に活動できない人もいます。しかし、そういう人たちの意見もしっかりと聞きながら活動を進めていくことが、本当のパートナーシップなのかなと思っています。

 2030年、私がIMAGINEする金沢は、個人の内的な意識変化も育み、パートナーシップを醸成していく、懐の深いまちです。──

 

薬を取り巻く課題をパートナーシップで解決する方法は、地域課題解決にも効く

広石拓司氏○株式会社エンパブリック代表取締役

 引き続き、金沢市のSDGsのアドバイザーもしている広石さんから、パートナーシップについて少し専門的な視点からのお話をしていただきました。実は広石さんは薬学部のご出身で、大学院まで薬学を勉強されていたそうです〈以下は発表の要旨〉。

 

──個人の頭の中で、「こんなことしたいな」と考えている人はたくさんいます。しかし、一人で考えているだけでは何も起きないので、それではもったいないと思います。とにかく自分の言葉で外に出していくこと、そして周りの人と話す機会を設けること、対話を深めていくことで、仲間ができます。活動をしていくうちに、新しい仕事の創出となり、仕事の広がりができ、新しい価値が生まれて、社会が変わる……。「私→私たち→社会」へとつながっていくこのプロセスを、「エンパブリック・サイクル」と呼んでいます。

 さて、パートナーシップの話をしているときによく登場するのが、地域看護の保健師らのヘルスプロモーション(WHOが提唱する人々が健康を管理し、より健康にすごせる可能性を模索する方法)に関する概念です。薬剤師や医師など専門知識を持つ人たちが、地域の人たち(患者=クライアント)を治してあげないといけないという考え方は、「コミュニティ・アズ・クライアント」と言いますが、これではヘルスプロモーションがうまくいかないということが、今までの蓄積からわかっています。そこで、地域が健康になるという目的は同じで、一緒に健康になっていく仲間を増やすという考え方の「コミュニティ・アズ・パートナー」という概念が出てきました。これを地域の課題解決に置き換えると、専門家が一方的に進めるのではなく、地域の情報収集からアセスメント、計画と、プロセス全体を住民と専門家が協働で行うということです。

 宇夛さんたちが活動のテーマにしている残薬問題に関する話題として、イギリスの王立薬剤師会が、なぜ患者は薬を飲まないか、コンプライアンスを守らない患者を調査したところ、そもそもコンプライアンスが間違っているのではないかということを発見しました。薬を飲んでいない患者も医師の前では、「薬を飲んでいる」と言い、実はきちんとコミュニケーションが取れていなかったのです。その解決策として、医療専門職と患者がパートナーシップにより対等の立場で話しあい、治療方法を見出す「コンコーダンス」と呼ぶ考え方が良いことがわかってきました。反対意見も含め、相手の意見も尊重して聞きあうこと。つまり、患者が薬を飲まないという権利も認めてあげるということです。さらに、両者の意見が相違する場合は患者に決定権を与えます。ただし、この共同意思決定を実施するには、患者にもパートナーとして参加するための知識が必要となります。

 この共同意思決定は、薬に限らず、地域づくりやSDGsにも応用することができ、専門職と住民による、一方通行でなく、継続的な対話を重ねるうちに、調和や相互理解ができるようになり、効果的に実行できる意思決定がなされ、住民主体のより良い生活が実現できるようになります。──

 

パートナーシップを進化させるのは一人ひとりの意思

 後半は、宇夛さん、広石さんとOUIKの永井事務局長、さらに会場の参加者も加わり、パートナーシップの理解を深めていきました。

 宇夛さんからは、「薬を飲まない権利、病気を治さない権利をもう少し認めてあげる風土、つまり患者の気持ちに共感してあげることで、結果として患者の意欲が増す」というご自身の経験を披露。広石さんは、「医療専門職の人は患者のことを知っているようで知らない。これは企業でも同じ」と述べ、顧客のことを自分たちは全く知らないのではないかと考えて取りかかっていかないと、サステイナビリティというのは進まないと提言しました。それを受け、永井からは、請われて企業などでSDGsのことを講演する際、「事前にいろいろ調べて、相手の立場になって話をすると、共感していただける」と経験を語りました。

「SDGsとは、本質的な内省を迫るものという見方もあり、ハマるところには広がる一方で、“バッジをつけたらSDGsだ”という部分もあって、二極化している」(永井)、「人の意識はそう簡単には変わらないが、関わる時間とともに意識が変わっていくことを示してくれた宇夛さんの発表を聞き、希望を感じた」(広石さん)、「先の薬を飲まない権利の話と同じで、参加を強制せず、やらない権利も認めてあげることが大事」(宇夛さん)など、SDGsに取り組む人の意識について、掘り下げていきます。

 企業などで、上から「SDGsをやれ!」と言われて取り組むより、何か解決したい課題があって、それをみんなで集まって話し合っていくうちに、「これってSDGsって言えるよね?」という流れの方がスムーズに話がまとまり、「プロセスをみんなで共有していくことが大事」だと永井が振り返ります。

 SDGsバッジに関して広石さんから面白いエピソードを紹介。ある日、バッジをつけて帰宅した父親に娘が、「家族が取り組んでいるSDGsについてレポートを書かないといけないのでお父さんの会社の話を聞かせて欲しい」と言われ、「もっとちゃんとやらないと」と思い立って、広石さんのセミナーを受講するようになった方がいたそうです。「こんなふうに何かにかこつけてでいいので、まずは考えて欲しい」と広石さん。

 金沢のSDGsでは、これからいろいろな企業や団体とのパートナーシップが生まれてくると思います。その時の上手な進め方を永井が広石さんに尋ねると、「人に教えることで自分自身も問い直して学ぶことができる。SDGsカフェのような場を作り続けることが大切」とアドバイスしました。

「今は理解してもらえない人も、サステイナビリティを当たり前に考える社会になれば、やがては味方になってくれるはず。いつかは誰もがパートナーになる、そう思えば人に優しくなれますし、そうなることを信じていくことが大事なのではないかと思います」と広石さんが述べ、久しぶりのリアルSDGsカフェは終了しました。

 

今回のSDGsカフェの会場となった「金沢未来のまち創造館」は、金沢市における新たな産業の創出と未来で活躍する人材の輩出を図る施設です。統合で廃校となった旧野町小学校校舎を利用し、登録すれば無料で使えるコワーキングスペースやここで開発されたメニューが味わえるカフェなどもあります。お気軽にお立ち寄りください。

当日のYouTubeで配信した動画はこちらからご視聴になれます。

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