OUIK > お知らせ > 地域との研究活動

地域との研究活動:アーカイブ

能登GIAHS「食の知識・技術を伝える」映像制作プロジェクト

能登地域には、人々の営みにより長い時間をかけて形成されてきた豊かな里山里海が存在し、2011年には国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産(GIAHS)「能登の里山里海」として登録されました。能登地域の自然・生き物、農林水産業や伝統技術など里山里海の多岐にわたる営みや繋がりが、160もの構成資産とともに1つのシステムとして登録され、その保全と継承が推進されています。

国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(国連大学IAS OUIK)では、2020年末より、そのうち農林水産業や食の加工・保存に関する知恵や技術に焦点をあて、小山研究員が中心となって、能登GIAHSの「食の知識・技術を伝える」映像を制作するプロジェクトを開始しました。能登地域に今日も継承されている里山里海でとれた農産物や水産物を食材として活用する知恵や技術を次世代につなげるため、農家や漁師など地域の方にお話を伺い、映像記録として残し、伝えるプロジェクトです。

今回のプロジェクトでは、「発酵食(味噌)」、「山菜」、「魚介類(ナマコ)」、「海藻」の4つのテーマで映像制作を進めています。完成した映像は、2021年11月に開催が予定されている能登GIAHS10周年の国際会議に合わせて公開する予定です。

【開催報告】SDGsカフェ#9 「2030年の金沢の交通を考える」

回を重ねるごとに熱気を帯びてきた感があるSDGsカフェ。9回目となる今回は、「2030年の金沢の交通はどうなっていて欲しいか?」ということを、人々の幸せや魅力のあるまちづくりとリンクさせて、市民目線から議論をしました。

IMAGINEしてくださったのは、金沢レンタサイクル「まちのり」の仕掛け人でその事務局の片岸将広さん(株式会社日本海コンサルタント)。片岸さんは自転車だけでなく、国内外の交通全般の事例に精通されています。

そしてアイデア提供をいただいたのは「トランジション・マネジメント(transition management)」の第一人者で、オランダから来日したDerk Loorbachさん(エラスムス大学教授・オランダトランジション研究所所長)。通訳・コーディネーターとして松浦 正浩さん(明治大学専門職大学院ガバナンス研究科教授)にご協力いただきました。

トランジションとは?

「推移、変遷、移行、過渡期」という意味で、持続可能な未来社会を目指すのであれば、ステークホルダー間の草の根の合意形成ではなく、構造的転換までをも見据えた問題解決の方法論を検討する必要があるとする考え方です。

 

まずは国連大学OUIKの永井事務局長より、SDGsとこのカフェの説明と、金沢SDGsについて紹介がありました。

「オーストラリアの大火災も、地球の気候変動が原因。私たちの活動の一番下にあるのが自然資本なのです。そして大切なことは、社会と経済、環境のことを一緒に考えながら、一つ一つのプロジェクトやビジネス、取り組みを進めること。そして、もう一つ大事なことは、今の私たちと次の世代の人たちの公平性を担保することです」(永井)

新たな「まちのり」がまもなくスタート

片岸将広さんが仕掛けた「まちのり」は、今年の1月13日まで8年間運用し、総利用回数は1,239,000回、総利用者数は425,000人にものぼりました。そして現在はシステムの更新作業中で、サイクルポートの数、台数を約3倍の規模に拡大し、3月1日には「第2章」がスタートする予定。「真の公共交通となれるよう、いま頑張って進めています」と片岸さん。

 

片岸さんは、ご自分のことを「事務局体質」とおっしゃるように、まちのり以外にも、金沢の公共交通機関やまちづくりに関する複数の団体の事務局に関わり、その経験からの提案もしていただきました。

世界的な潮流として、「車から人へ」、「空間から場所へ(人の活動が加わることで空間は場所になる)」と、人が中心となる、つまり、SDGsそのものの動きになってきていると言います。

そして、交通のことを考える前に、「町はどうするか?」。そのビジョンを共有することが非常に重要だと述べました。

ところで、「なぜ、モビリティは必要なのか?

そもそも「なぜ我々にモビリティが必要なのか?」ですが、まずは土地利用があって活動が起こり、活動に対して移動が発生します。その移動のための手段がモビリティとなります。つまり、交通が目的ではなく、人々の活動を満たすために交通を考える必要があるということです。

最近では、複数の公共交通やそれ以外の移動手段がある中で、これらを最適に組み合わせて検索・予約・決済などを一括で行える「マース/MaaS(Mobility as a Service)」というサービスが、注目されるようになりました。

3年前に、片岸さんはスペインのバルセロナを旅行した時に、現地のさまざまな交通事業者に話を聞き、調査をしたそうです。そこで得られた考え方は金沢にも非常にマッチすると言い、その時の話をしていただきました。

バイクシェアリングを運営している会社でも話を聞いたそうですが、まちのりとは比較にならない規模で、市民が利用するモビリティ(公共交通)として、きちんと位置付けられているそうです。

そして、ヒアリングしたそれぞれの交通事業者に、「なぜモビリティが必要か?」という質問をぶつけてみたそうですが、その返ってきた答えは、いずれも「Happiness/人々の幸せのため」だったとか。

「人々の活動を支え、幸せな都市生活を演出するということがわれわれの使命。そのためにモビリティサービスを提供します」と言い切られ、「日本では違うのか?」と不思議がられたそうです。

「日本で交通を考える際、採算が取れないなどとネガティブな考えが先行しがち」と言う片岸さん。バルセロナでは皆が“ハピネス”をキーワードに上げてきたことに、衝撃を覚えたそうです

人々のハピネスのためにモビリティは必要

そんな衝撃を受けつつも、片岸さんはしっかりハピネスを支える3つのポイントを学んできました。それが以下です。

①Accessibility:多様な人々によるそれぞれの活動へのアクセス性の向上

②Multi-modal:人々のアクセシビリティ(利用しやすさ)に配慮した多様な交通モードの連携

③Integration:土地利用、福祉、環境、観光等の各種政策との連動を考慮した交通政策の展開(交通事業者だけでなくいろんな都市政策を統合的にやらないと意味がない)

バルセロナではバス路線網を見直し、縦、横、斜めのメインルートに集約・再編。非常にシンプルになり、さらにわかりやすい乗り換え案内によって「乗り換えの抵抗の低減」も図られているそうです。また、自転車交通のアクセシビリティも計画に位置付けられ、人口の64%が3分以内にシェアサイクルのステーションにアクセスできるそうです。

バス、トラム、自転車などをきちんと用意していき、思わず乗ってみたくなる、そんなかっこいい連結バスも走らせています。もちろん、それぞれの交通の連携もちゃんと取れています。

そして、③のように、交通安全、健康、環境、福祉、科学技術といった分野横断的な交通政策の方向性が示されています。

“幸せ(ハピネス)とは、さまざまな活動の先に得られる感情 → 活動するためには何らかの移動が生じる → 人々の活動を支え、幸せへとアクセスするための手段”=つまり、それがモビリティではないかと、片岸さんは考えます。

では、ハピネスの観点から金沢のまちや交通はどうでしょうか?

「これからの交通やまちづくりについて、すでにいい考え方がいろいろ提案されているにもかかわらず、なかなか進んでいません。それはなぜでしょうか? 市民、企業、商業者、交通事業者、警察、自治体、いろんなステークホルダーの中で、ハピネスのような“共通のビジョン”が共有できていないからだと思います」(片岸さん)

しかし、金沢SDGsの5つの方向性にある、環境の部分、社会の部分に基づいて、「これからはフラットな議論をしていける体制になるのでは」と期待を寄せます。

2030年の金沢の交通をイマジンする

AI、自動運転、MaaSアプリなど、テクノロジーは理念を実現する手段で、これを作ることが目的となってしまっている風潮を片岸さんはおかしいと思っていて、「人中心の都市・交通の実現に向けてテクノロジーをフル活用」ではないかと言います。

金沢の都市と交通2030について、「個人的な妄想」と断りつつ、次の5つを提言しました。

  • 金沢のまちなかは「スローモビリティ優先」
  • 基幹路線には「超カッコいい車両」を導入
  • 地域交通は「デマンド」&「シェア」でカバー(動きたいときに動ける)
  • まちなか周辺に複数の「モビリティセンター」
  • MaaSの概念に基づく「使いやすい仕組み」

まずは自分がまちを楽しむこと。そして、「大切にしたい金沢の魅力やアクティビティとは何か? 金沢ならではの幸せポイントは?」を、それぞれに考えることが大事だと言います。

その上で、ハピネスを実現するために、それを支えるモビリティのあり方を考え、トランジションを起こして、市民も観光客も移動すること自体を楽しめるような、「人中心の世界都市・金沢」へと変遷している2030年をイマジンしてくださいました。

その研究の第一人者が語るトランジションの起こし方

では、これから未来のハピネスのためにモビリティを再構築していくのは、どうやって変えていけばいいのか? 都市の持続可能性を高めるため、研究するだけでなく、実践にも関わっているというDerk Loorbachさんからアイデアの提供をいただきました。

 

Derkさんの活動拠点・オランダのロッテルダムと、金沢市の姉妹都市・ベルギーのゲントの事例を交えながら、都市のモビリティのトランジションと、そのガバナンス(統治)について話しが進みました。

気候変動と生物多様性に関して問題があるということは、世界的に認識されていますが、実際には何の行動も起こっていないという問題があります。

「大きな問題があり、解決策があることもわかっているのですが、実際にできていません。そこの大きな変革をどうやって動かすか? トランジションの研究では、そこに主眼が置かれます」(Derkさん)

ロッテルダムの歴史を紐解いてみると、さまざまな危機をきっかけにして、大きな変革を経験してきたそうです。

トランジションが起きたことが本当に成功なのかどうか? 自転車の街だったのが自動車の街になってしまったなどと、批判的に見る必要があると言います。

トランジションというのは持続可能な社会を考えることから始まります。

トランジションの研究というのは、いま何があったのかを考えるのではなく、むしろ「なぜ変わらないのか? そしてどういう風に変わっていけるのか?」を考えることだそうです。

「こういう風なことを言うと、理想主義者とかドリーマーとか言われ、できないとか、お金がかかるとか、否定的に捉えられることがあります。そう言う人たちは、未来が信じられないというところがあるのかも知れません」

トランジション・マネジメント、トランジション・ガバナンスと言われるものは、変革のムーブメントを起こしていくネットワークを作っていくことですが、それだけではなく、「そうした変化ができると言うことを信じる人たちを増やす計画」というのもあると言います。

変化を目に見せることで広がっていく

例えば金沢であれば、自動車社会みたいなものがあるとしましょう。渋滞が起きたから道路を拡幅し、拡幅したらもっと渋滞が起きる……。駐車場が足りないから駐車場を増やし、また車が増えて足りなくなる……。そういう堂々めぐりが起きてしまいます。これが20年、30年続くと行き詰まり、最終的には不安定となり、崩壊する方向へ向かうのだそうです。

いつの世の中にも、こういった問題の解決策を考えて活動する人たちが少なからずいます。いろんな実験をしてみて、他のやり方も試してみる……。最初はクレイジーな人たちだって言われるかも知れませんが、だんだん支持を得られるようになり、仲間が増えていく傾向が出てくるそうです。

「それがどんどん増えていくと、形が目に見えるようになり、たとえば金沢なら自転車通行レーンがかなり増えてきましたし、ほかにもそういったような、将来の当たり前みたいな物が目に見え始めてきます」

最初は、役所の中の官僚の一人だったり、大企業の中の社員一人だったりするかもしれませんが、そういう人たちがうまく仲間を作って中心的な存在になることで、トランジションが始まると言います。

「どういう未来を求めるか? そのためにいま何ができるのか?」を考えて、10カ年計画とかを作るのではなく、いま何をするのかを考えることがポイント。誰でもができること、例えば明日から公共交通に乗るとか、自転車に乗るとか、屋根の上に太陽光発電をつけるとか、1個1個は小さな活動ですが、そういったことが目に見えるようになることで、変化が起きるのです。

「“トランジションの場”という考え方があり、それは何かというと、変化をもたらしうる個人に集まってもらって、どういうトランジションがありえるかを考えます。そこで個人だけで動くのではなくて、また自分の組織に戻り、組織として何か動く機会を作ってもらうということも狙います」

未来の姿から逆算して現在できることを考える(バックキャスティングという)こと。これは針の治療みたいなもので、ちょっと突いて考え方を変えさせることで、全体的な大いなる変化を巻き起こすそうです。

通行止めにした通りが公園へと変わっていく

ゲントではモビリティの分野で、2人の都市計画課の職員が始めた「リビングストリート」という取り組みがあります。夏の間の2ヶ月間、通りを通行止めにして、そこを公園のような空間として活用してもらう活動です。

実施するにあたり、関係部署を説得するのに2年を要し、最初の年はほとんど車が通らない2カ所で実施したそうです。2〜3年経つと実施する通りの本数も増えた一方で、迂回する車が他の通りに流れていくことから、今度はその苦情が出るようになったとか。それでも、その良さが伝わってベルギーの他の都市でも行われるようになり、今ではヨーロッパ全体に広がるようになりました。

ヨーロッパではモビリティの概念にも大きな変化が起こり、インフラとか交通手段から、人とかハピネスといったところへと、大きな変化がみられるそうです。

ロッテルダムでもモビリティのトランジションを行い、そこで出てきたことは、一部の人たちが排除されているという問題でした。たとえば貧困層の人はお金がなくて通勤できない、移動できない、自転車に乗れないなど。このことは社会福祉の問題として捉えられて、無償で自転車を提供することになりました。

トランジションを行ったことで、今までは急激な変化を好まなかった役人(政策担当者)の考え方も変わり、どんどん実験をやってみようという方向にマインドセットが変わっているそうです。今までは「問題が起こったらそれを解決する」という発想でしたが、「わざと問題を起こして解決策を施していく」、そのような考え方にシフトしていると言います。

例えば、電動自転車とかをどんどん普及させることによって、みんなが自転車に乗ると、自転車渋滞が起こるようになります。するとその解決を政治家が官僚に求めるようになり、問題解決へと動き出せる、そのようなことです。

自転車道を拡幅したり、自転車用信号にも工夫があって、雨の日とか自転車渋滞が起きていることを感知できるセンサーがついていて、そういう時は自転車側の青信号を長くするという制御をしたりします。そのため、雨の日でも自転車に乗る気になると言います。

一方で、まちなかの駐車料金を高くして、そのかわり郊外の料金を安くすることで、まちなかへの車の乗り入れを制御しているそうです。

交通部門のゼロエミッションに向けて

パリ協定の「気温上昇を1.5度までに抑える」。それを本気でやるなら、2030年までに交通部門からゼロエミッションにしていかなければければいけません。そのために動いてくれそうな人々を活性化させ、目標を共有することをしているそうです。まちのメインストリートを全部公園に変えてしまおうなどと、いろいろな人たちが関わって“イマジン”も行ったそうです。

トランジションというのは、既にそういう活動を始めている人を巻き込んでいくということがポイントだと言い、そして個別のアクションを実験としてやるなかで、役所の中の計画部局のようなセクションが、そういう活動をきっちりサポートすることが大事だと強調します。サポートすることで、自身もインスピレーションを受け、また計画に反映させていける、そのような循環も必要ということです。

「誰か一人を説得していくというのではなく、このSDGsカフェがそうなのかもしれませんが、いろいろな人たちを集めてやってみるというのが大事。よく失敗するのは、今日、明日に何かこれをやらないといけないとプレッシャーに感じてしまうことで、トランジションは長期的に起こるものです。計画を作っても信念がなければ実現できません。少なくとも何か変える方向にやってみるというところがポイントです」と述べ、話を締め括りました。

質問タイムでは中身の濃い質問がたくさん出ました

みなさん、いろいろな問題を感じているようで、たくさんの質問が出ました。ここでは、その一部を紹介しましょう。
<質問者A>

金沢の人たちは公共交通のことをほとんど考えていません。こういう人たちの意識改革をするためには、どのようなことをすればいいのか?

<Derkさん>

関心がなかったり、なかには迷惑だと思ったりする人もいるかもしれないので、小さく始めるというところがポイント。すでに活動している人たちと繋がっていって、目に見える形にしていくところから始めるというのも大事です。

<片岸さん>

まちを楽しむことが目的になければ、交通のことだけをいくら言ってもダメで、「まちをこうしましょう」というトランジションに切り替えていかないと、交通行動は変わらないという気がしています。

<質問者B>

オランダは雨がすごく降るけど自転車を使うと聞く。一方、金沢の人は雨が降るから、雪が降るから自転車は使えないと言う。オランダではどうやって人々に雨の中でも自転車を使うよう促すことができたのか?

<Derkさん>

自転車のインフラが整備されたオランダでは、車に乗るよりも自転車に乗ったほうが楽。金沢の方は、車に乗ったほうが楽になっているのではないでしょうか。
雨だろうが雪だろうがみんなで自転車に乗るツアーだとかイベントだとかをやってみて、見える形にすることで、それも普通なんだと思わせていく、それが大事です。

<質問者C>

トランジションの実験の結果は、経済にどういう影響を与えたか?

<Derkさん>

路上駐車のスポットを公園とかにした事例を例にして話すと、事前に「やりたいですか?」と目の前のお店や住人に確認を取りましたが、最初はお客さんが来られなくなるからやめてほしいという声が多かったのに、実際にやってみると、魅力的な空間を作った方が逆にお客さんが増えるという結果が出て、だんだんそれが広まっていきました。ロッテルダムでは4000カ所の駐車スペースが公園などに変わりました。
ゼロエミッションにより、いろいろな社会的な便益があって、健康が良くなるとか、コストが削減になるという試算をしました。これによって、どこのセクターが一番被害をくらうかというと、実は政府で、税収が減るというところが一番インパクトが大きいです。

<質問者D>

活動していく中で、ツーリズムがより活性化した事例があれば教えてほしい。

<Derkさん>

バルセロナもロッテルダムもそうで、歩きやすいまち、住みやすいまちの方が観光上もメリットがあります。ポイントとしてあるのは、すぐに車をシャットダウンするのではなく、いろいろな種類のモビリティ(移動手段)というものを提供することです。例えば電気自動車だったら入っていいよとか、そういうようにすればいいのです。いろいろな人にとって不便がなく移動でき、環境にいい手段を提供することから見直せばいいのです。

<片岸さん>

スイスのツェルマットのように電気自動車しか入れない都市に金沢をしていく、それぐらいのまちに金沢がなったらすごいのではないでしょうか。どっちかというとそっちのマインドに切り替えていくのがいいのでは。

 

<片岸さんからDerkさんへの質問も出ました>

一人のアイデアをどういうかたちで政策として合意形成して、実現していったのでしょうか。その辺の工夫があればぜひ教えていただきたいです。

<Derkさん>

「みんなの合意ですよ」と計画を作れば、それがいつか実行されだろうというのは、単なる夢というか幻であって、本当は毎日の人々の行動がどうなっているかが問題。そこを少しずつ未来に向けてポジティブに、毎日続けて変えていくことで、どんどん大きくなって行きます。
将来がこうあるべきだという信念があれば、信念に同調してくれる個人にどんどん話しかけて繋がっていくべきであって、ありとあらゆるステークホルダーから同意を取っていく必要はありません。
以上、今回も60名を超えるたくさんの方に集まっていただきました。交通という身近なテーマであり、2030年の金沢のまちのあり方について想像しやすく、また問題も見えていたのかもしれません。それは熱心な質問が続いたことからも窺い知れました。

Derkさんが言った「まずは小さなことから始めていく」、そのスタートがこのカフェになるかもしれません。いや、きっとなると思います。

金沢SDGs IMAGINE KANAZAWA 2030の公式サイトができました。今後のSDGsカフェの予定なども掲載されますので、ぜひチェックしてください。
https://kanazawa-sdgs.jp

【論文の紹介】Ten Years of GIAHS Development in Japan

国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(国連大学IAS OUIK)の客員リサーチフェロー永田明と研究員のイヴォーン・ユーが、国連食糧農業機関(FAO)による世界農業遺産(GIAHS)の日本国内での発展に焦点を当てた英論文を執筆し、2021年7月発行のJournal of Resources and Ecology 12巻4号に掲載されました。是非、ご一読ください。

*論文はこちらのリンクからご覧になれます。

【開催報告】北陸SDGsステークホルダーミーティング2019

12/17日、金沢歌劇座にて北陸SDGsステークホルダーミーティング2019を金沢工業大学と共同で開催いたしました。 このミーティングは2019年9月6日、国連大学本部にて開催された「『SDGs実施指針』改定に向けたステークホルダー会議」(主催:SDGs推進円卓会議有志、国連大学サステイナビリティ高等研究所)の地方版として開催され、北陸各地から企業、地方自治体、市民団体など様々な立場のSDGsに関わる人々が参加し、北陸のありたい未来を議論し、次世代に向けてSDGsで描く未来を発表しました。

まず初めに主催挨拶として国連大学サステイナビリティ高等研究所上級客員教授竹本和彦より挨拶があり、SDGsの実施指針が本年末に改訂されるタイミングでこのような会議が地方で開催されることの重要性について語られました。

次に内閣府地方創生推進事務局参事官の遠藤健太郎氏から来賓の挨拶を頂戴頂くと共に国の政策、地方創生とSDGsについてご説明頂きました。

さらに金沢工業大学SDGs推進センター長の平本督太郎准教授からは情報共有があり、この会議の狙いや分科会の進め方についての説明がありました。

今回のミーティングでは以下、5つの分科会に分かれ、それぞれのグループ内で2030年の北陸の姿について具体案をシナリオ形式で制作しました。

分科会① 誰もが暮らしやすいまちとは

〜どうして東京にヒト、カネ、モノ、情報が集まる?この流れを変えるにはSDGsの視点をどのように取り入れ地域を元気にしていくか?

ファシリテーター:三島由樹(㈱フォルク代表取締役 / ランドスケープ・デザイナー )北川達也(金沢工業大学情報フロンティア学部 経営情報学科)

分科会② イノベーション:地域での創造と、世界への発信 〜私たちは地方から何を創造して、何を発信し、世界の人と共感を得ていくのか? SDGsはその共通言語となるのか、テクノロジーとどう共存していくのか?

ファシリテーター:大沼洋美(㈱ヒロ代表)福島健一郎((一社)コード・フォー・カナザワ代表理事、アイパブリッシング㈱代表取締役)

分科会③ 教育:人生100年時代のキャリアと学びとは

〜人生100年時代のキャリアをどのように楽しみながら築きあげていくのか?

ファシリテーター:宮谷直樹(Start SDGs運営責任者)丸山祥子(ファミリービジネス専門 ファシリテーター)

分科会④ パートナーシップ:みんなの力を地域で結集するしくみ

~SDGs達成のために地域で様々な主体がセクターや組織を超えて共創するためには?

ファシリテーター:谷内博文(金沢市市民活動サポートセンター)塚本直之(コマニー㈱)

分科会⑤ 多様性:多様な人々が意思決定に参加できる社会とは

~多様な人々が意思決定に参加できる社会ができると私たちの生活は今とどう変わっていくのか?

ファシリテーター:北村健二(能登SDGsラボ 社会部門コーディネーター)渡邉さやか((一社)re:terra代表)

分科会では始めにNRI未来年表 2020-2100や総務省「未来をつかむTECH戦略」などの資料に目を通し、未来像を抽出しながら2045年の働き方とライフスタイルについてありたい姿を描きました。更に今回のイベントではペルソナ(人格)を設定し、その人が生きる人生のストーリーやターニングポイントを具体的な内容で次世代へのシナリオを参加者が制作しました。

午後の分科会の後にはそれらのシナリオを学校帰りに参加してくれた学生や生徒の皆さんに報告し、評価してもらいました。テクノロジーの進歩で可能になるシステムや家族の在り方の変化などたくさんのアイデアが共有されました。

参加者の皆様には最後まで真剣に取り組んで頂きありがとうございました。また、最後の共有セッションに参加して頂いた学生の皆様にも感謝申し上げます。

IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ 交流会#3(2021年7月13日)の開催

金沢ミライシナリオをパートナーシップで実践するためのプラットフォームであるIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ。始動から早1年が経過し、約140の企業、団体、個人の方にご登録いただく大きなプラットフォームに成長しています。パートナー会員間の交流が生まれる場、パートナーズ交流会を昨年度は合計2回しか開催できませんでしたが、今年度は毎月開催することで、会員同士の協働プロジェクトがどんどんと生まれ育っていくことを目指しています。

そのパートナーズ交流会の第3回目(2021年度第1回目)の交流会が7月13日に開催され、多くの企業、団体、個人の方、約50人にお集まりいただきました。今年度は「会員のみなさんと協働で実行したいプロジェクト」や「会員のみなさんと一緒に考えたいテーマ」がある方にピッチプレゼンしていただき、それを話題に参加者同士でディスカッションを行う、というものを予定しています。今回は合計5つの企業、団体からそれぞれの取り組みついてご紹介いただき、それに基づいて5つのグループに別れて話し合いを行う形で進行しました。

今回、ピッチプレゼンされたのは、以下の5つの企業、団体様です。

1)野村證券株式会社「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」
2)kanazaWAZA研究所 「サスティナアート プロジェクト 放置竹林編」
3)一般社団法人Code for Kanazawa 「地域課題解決コンテストへのご協力のお願い」
4)石川中央魚市株式会社 石川の朝とれもんプロジェクト事務局 「サステナブルシーフードの流通促進」
5)株式会社ロータスコンセプト 「大⻨ストローを広く知って頂く体験型プロモーション」

野村證券株式会社さんからは、「共感」と「応援」を軸としたESG投資の考え方や金沢におけるサステナビリティ・トランスフォーメーションのためのエコシステムの考え方がご紹介されました。また、ESGの文脈で高校生向けの投資教育にも力を入れていくそうです。kanazaWAZA研究所さんからは金沢市でのアートを活用した放置竹林問題解決への取り組みとしてご紹介いただきました。竹の伐採を通した竹林整備、竹材アートの制作、そして使用後の竹を再利用した土壌改良までの一連の循環モデル型のアートプロジェクトとして企画しています。重要企業、行政、市民、教育現場といった多様な関係者を交えた協働モデルのもとにプロジェクトを進めているそうです。

一般社団法人Code for KanazawaさんはITやデザインを活用して地域課題を解決しようとする団体です。同団体が運営するICTを活用して社会課題の解決を促進する事業である「地域課題解決コンテスト」についてご紹介がありました。石川中央魚市株式会社 石川の朝とれもんプロジェクト事務局さんからは同プロジェクトが取り組んでいるエコラベルについてご説明いただきました。エコラベルには、MEL認証やMSC認証、またASC認証といった多様な制度が存在しています。それぞれ、漁獲方法や養殖方法の持続可能性や環境負荷軽減について評価する内容になっていて、認証された商品の普及やイベント開発を進めていく予定だそうです。

最後に、株式会社ロータスコンセプトさんからは同社が製造・販売する大麦ストローについてご紹介いただきました。同社では大麦ストローを普及することで、プラスチックストローの廃棄や生産があたえる環境問題に取り組んでいます。石川県小松市の大麦を使っていて、専修大学や金沢市の「彩の庭ホテル」などで取り入れられています。大学や企業の食堂での普及を進めていきたいそうです。

各社、各団体から発表が終わったあと、グループに別れてディスカッションが行われました。各プロジェクトやテーマについて、企画提案された企業、団体のモチベーションや熱い想いとともに、参加者のみなさんの積極的な質問や提案が飛び交い、協働で出来る何かが生まれる有意義なディスカッションの機会になったのではないかと思います。今後もパートナーズ交流会の場が、企画提案者や参加者のみなさんがつながり、協働して地域でコレクティブインパクトを起こしていけるきっかけとなる場を提供していきたいと思います。

IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズでは会員を随時募集しているほか、交流会でピッチプレゼンしたい企業、団体、個人の方、また交流会運営に関わってくださるメンバーも募集しています。奮ってご応募ください。

【開催報告】SDGsカフェ#8 「つながり、助け合うのに必要なことは?~パートナーシップの新しい形を考える~」

「小春日和の日曜の朝に、爽やかにパートナーシップを語り合いましょう!」と、国連大学OUIKの永井事務局長の挨拶で始まったSDGsカフェの第8回。今回のテーマは、SDGsのゴール17に据えられたパートナーシップです。

「パートナーシップって、ゴールというより、アプローチでは?」と思われるかもしれませんが、SDGsのゴールはいずれもものすごく幅広く、誰か一人の力で解決できるものではありません。
そこで必要となるのがパートナーシップであり、「それだけ重要だからこそ、17番目のゴールに位置づけられている」(永井)となります。

いろいろな人を招いて、2030年の金沢をIMAGINE(想像)してもらうこのSDGsカフェ。
今回は、前代未聞のアプローチで「金沢SDGs行動計画」を策定している金沢市企画調整課の笠間彩さんがIMAGINEします。
そして、『ソーシャルプロジェクトを成功に導く12ステップ コレクティブな協働なら解決できる! SDGs時代の複雑な社会問題』(みくに出版刊)の著者で、株式会社エンパブリック代表取締役の広石拓司さんから、いろいろアイデアをいただきながら、2030年の金沢について、会場の皆さんと一緒に考えてみました。

金沢SDGsを動かしていく主体は市民であるということ

金沢市と金沢青年会議所(JC金沢)、国連大学OUIKとが、2019年3月にIMAGINE KANAZAWA 2030を立ち上げ、現在、来年からの行動計画を市民と一緒に、まさしくパートナーシップで考えるプロセスが進行しています。
これは、金沢市ではほとんど前例のない方法であり、それを行政が行うのは難しい中で、いろいろ調整し、骨折りしている笠間さんから、パートナーシップで創る2030年の金沢を想像してもらいました。
笠間さんは大学生の時に、地域の皆さんと力を合わせてまちづくりをしたいと思いはじめ、市役所に入り、幸いにもそんな想いを実行するために力を蓄えられる部署を渡り歩いて来たそうです。

ここでまず、金沢SDGsの概要について、おさらいをしておきます。
市とJ C金沢、国連大学OUIKの3者によって、金沢SDGsの5つの方向性を導き出しています。

1. 自然、歴史、文化に立脚したまちづくりをすすめる
2. 環境への負荷を少なくし資源循環型の社会をつくる
3. 次代を担う子供たちの可能性を引き出す環境をつくる
4. 誰もが生涯にわたって学び活躍できる社会風土をつくる
5. 文化や産業に革新的イノベーションが起きる仕組みをつくる

これらをより具体化して、皆さんが実際に取り組んでいくために、「どんなことをやったらいいか?」「具体的にどんな行動をとったらいいか?」ということ(行動計画)を示さなくてはなりません。それは3者だけでなく、40人近くのステークホルダーの方に集まってもらい、「SDGsミーティング」という形で、4回にわたって練られてきました。

並行して、教育、シビックテック、気候変動危機、文化のまちづくりといったことをテーマに、自由な意見交換の場をとなる「SDGsカフェ」を実施。こちらは、今回で8回目となりました。

「フォーラムなどで、“教育”とか“環境”をテーマにすると、今までは、“教育に興味がある人”、“環境に興味がある人”だけが集まることがほとんどでした。しかし、“SDGs”とか“金沢”というワードをつけると、違う分野の人も集まってくださり、そこで『化学反応が起こる』ということをたくさん目の当たりにしています。参加者同士が自然に繋がりはじめ、横のつながりができ、私たちが仕掛けるもの以外に、新しい仕掛けを参加者が作ってくれるようになったんです」(笠間さん)

具体的な行動計画を立てるところから市民に参加してもらい、自分たちが作った目標、自分たちが作った行動計画、さらにはその行動がちゃんとできているかのチェックまで、すべてを自分事として考えることができる、「“金沢SDGsは自分たちのもの”と思えるプロセスをとっていきたい」と強調します。

金沢SDGsの市役所の担当として、笠間さんが学んだり悩んだりしていること

市役所が参画している事で信用されることもあり、また、とりあえずやってみたり、手当たり次第に伝えてみたりすることで、道が開きつつある手応えを感じる一方で、SDGsに対するアレルギー反応も感じているそうです。
SDGsというのが、「みなさんをどこか一つの方向へ持っていこうとするもの」と思われたり、同調圧力や「何かよくわからない」ことからくる恐怖感みたいなものを感じたりする人もいるのだとか。
SDGsを動かすものは、 “個々を活かせるコレクティブな協働”(後述)ですが、その概念を伝えることの難しさを痛感しているそうです。
さらに、フラットな気持ちでいろんな人の意見を聞くと、すべてに一理あることに気がつくそうで、SDGsの誰も取り残さない理念に則り、すべての意見を反映させようとすると、やならければいけないことが膨大となってしまい、「果たしてこれは実現可能なんだろうか?」ということも悩みのタネだとか。

2030年の金沢はどんな風になっているか?

金沢SDGsが描いている“5つの方向性の金沢”になっていることはもちろん、みなさんがまちを良くしたいなと思った時に、金沢SDGsから解決策を見つけられたり、その判断の拠り所になったりしてほしいと笠間さんは言います。
そして何より一番は、金沢の人全員がまちづくりを自分事と捉え、個々の力を活かして、自然に協力しあっている、そんなまちになっていることだそうです。
「2030年には、何か問題を解決したいという時に、みなさんが自然と力を合わせられるようなまちに金沢がなっている事が私の一番の望みというか、夢です」(笠間さん)

SDGsにこめられた想いをおさらいしてみる

引き続き、パートナーシップのいろいろな取り組みをされている広石さんからの話題提供がありました。実は、笠間さんの話を受けて、その悩みに対する答えも、急きょ用意して発表内容を組み直したそうです。

SDGsが2015年に国連で採択され、行政とかに勧めても、「それって国連の話ですよね?」って言われて、当初は関心が低かったそうです。それでも気がつけばビジネスとしての機運が高まり、SDGsをやりたいという人たちもたくさん出てきたと振り返ります。
「パートナーシップ」はプロセスなのかゴールなのかという議論は国連でもあったそうですが、一方で大切なのは、パートナーシップの姿自体が2015年から2030年に向けて変わっていかないといけないのではないか? という議論もあるそうです。

ミレニアム開発目標(MDGs)は途上国の問題を、世界中が協力して解決しようとするものでした。
途上国の問題は、途上国を支援すれば解決するか?――実はそうではなく、いろいろな資源を消費している、つまり先進国の人たちのライフスタイルや考え方を変えていかないといけない事があります。その上、先進国の中にも貧困問題や社会問題が起きています。
途上国、先進国という考え方が前世紀的であって、その問題を一つずつ潰していかないといけないという考え方も現実的ではなくなってきていることに気がつきました。
そこで誕生したのがSDGs。そして、途上国の貧困や環境問題などと、先進国の意識や価値観、ライフスタイルなどとを、共通のこととして橋渡しをするようなゴールが必要となり、それがSDGsのゴールなのです。

問題があるから解決しなければいけない。ソリューションは大事ではあるが・・・

企業でも顧客の困りごとを解決することが価値を生んでいます。その場合、課題が明確になっていなければなりません。
“複雑な問題”と“難しい問題”は別のもの。難しい問題は答え合わせができますが、今の社会の問題は複雑で、多様な要素が相互作用しあい、複雑な文脈が絡み合って生じているため、問題の主な原因を一つに同定できません。
今までは、問題があると一つずつ潰してきました。つまり、あくまでも前提となるのは、 “問題のない状況”なのです。
「果たして問題のない状況というのはどのようなものでしょうか? そして、一つひとつ問題を潰していくというアプローチで本当にいいのでしょうか? 一つひとつ問題を潰すより、いっそのこと、皆が幸せな世界を作っちゃった方が早いし、トータルコストが安く済むのでは?」(広石さん)

システムで起こっている動的な問題、複雑な要因で起こっているものは複雑な解決策が必要です。問題が起こった時に、誰かが何かをやってくれたら解決するというものではなく、自分たちで予防とか早期発見とか解決できるように、地域のコミュニティとか社会がレベルアップしていく事が必要なのだと、広石さんは付け加えます。

複雑な問題を解こうとしている事例紹介

一例として広石さんが取り上げたのがペットボトルについて。海外にあるような水筒(マイボトル)をリュフィルできる環境(給水スポットなど)ができていない中で、ペットボトルを我慢しろという言い方をするのは無理があり、逆に無料でリフィルできる環境ができれば、生活困窮者も安全で質の高い水が飲めるようになり、観光客にも良いし、市民の人たちにも良い――そんな問題解決の仕方。
行政は水の飲める環境を作り、それに呼応して市民も企業もちょっとずつ動き出すことで、変化が起こっている、そんな海外の事例を紹介しました。

また、パリではまちの中に森をどんどん作っているそうです。2014年から20年に、トータル100ヘクタールの屋上緑化を目指し、うち1/3は都市農業の畑にするのだとか。
まちの中に畑をたくさん作る事で、コミュニティーが生まれ、食料問題の解決、貧困対策(貧しい人がコミュニティーに参加して野菜を作る)、ヒートアイランド対策、大気の質向上、建物の温度調整にもなると考えられます。いろいろな問題を一つひとつ潰すのではなく、「都市緑化」一本勝負でそこに投資して、回りにも投資を呼びかける――その方が早いのではないか? そんな解決方法になっているのです。

コレクティブな協働が社会を変えていく

水筒のリフィル設備も都市農業の畑も、一つの取り組みで多面的な問題解決策になり得ます。そして社会システム全体が変わっていく――。これがSDGs的。
このことは単独ではできません。大切なことはみんなで協力をしていこうということ、つまりパートナーシップです。

このパートナーシップの意味も変わってきていて、かつてはよく市民協働とも言われ、計画を作って、約束を決めて、決めた通りのことを役割分担して行っていました。
しかし、解決策や計画を先に決めて動けない現代は、過去に決めたことも状況に応じてどんどんと変化させていかなければいけません。
そこでパートナーシップに求められるのが、“コレクティブ”という考え方です。なるべく違う人たちを集める、それが“コレクティブ”です。

違う人たちを一つにまとめようとするとたいてい反発が起こります。そのためには、「どんな未来ができたら良いか?」という大きな方向性のイメージだけは共有しあいながら、あとはそれぞれが勝手にやってもらうのだそうです。

「勝手にやったらバラバラになっていくのではないか?」という懸念が出てきますが、大きなイメージを共有するための対話の場をいろいろなところに設け、継続的にコミュニケーションし続け、相互評価をし、進捗を共有していくことで、ゴールを目指していけるのではないかという考えです。

欧米人は自分たちのネットワークが社会だと思っているため、社会は簡単に変えられると考えます。一方で日本人は、社会は個人と離れたところにあると思っていて、「社会を変える=国会とか役所とかを動かす=難しい」というイメージになってしまいがち。
しかし、社会を変えるというのは、「いま金沢ってこういう事が起きていて、こういう問題があります。では、あなたはどうしますか?」という風に、問いを分かち合って、一緒に問題に取り組んでいこうという人が増えていくことなのです。
「社会を変えるという事。このカフェはそういったチャレンジをしていける素敵な場だと思っています」と広石さんは話を結びました。

金沢SDGs「5つの方向性」をアクションに移す行動計画を見る

最後に残りの20分と短い時間ですが、ステークホルダー(市民)の方に関わってもらい、作られた金沢の行動計画の素案を、皆さんと共有するセッションを持ちました。

上述の5つの方向性毎に、視点(プログラム)と、さらに具体的な行動(プロジェクト)としての例を挙げてある中から、まずは、とっかかりのあるものや興味のあるものを探してもらい、「これだったら自分にもできる」ことを考え、金沢で自分がこうなったら良いなと思うことを、「他の人に問いかける」という形にして付箋に書いてもらい、共有しました。

「プログラムを回すためにはいろいろな行動が必要で、みなさんがこれを見て、こういう事ができる、これをやりたい、このために起業したい、さらに『これ一緒にやりましょうよ』と市役所に言いにきてくれる人が出てきたりしたらいいなと思っています。行動計画は今年度中に完成させますが、次年度以降もどんどん変化していくものです。みなさんが興味を持って見続けてくださるように工夫してやっていきたいと考えています」(笠間さん)

SDGsはやらなければいけないことではなく、やろうという決意

問題が複雑化して、一つだけの解決策なんてあり得なく、そこで重要となるのがパートナーシップだと紹介しました。これは言い換えると、パートナーシップによって、市民一人ひとりに活躍できる場所があり、誰もが必要とされているとなります。
SDGsは言われてやるのではなく、自分から進んでやる決意なのです。
それはどういう決意か? 話の途中で広石さんは、「貧困を終わらせることに成功する最初の世代になりうるし、地球を救うチャンスを持つ最後の世代になるかもしれないという事を自覚して、その物事に対して取り組んでいく、そういうモードに変えていく決意」だと話していました。

今回も用意した席では足りなくなるくらい、多くの方に集まっていただきました。回を重ねるごと、SDGsへの、そして2030年の金沢のまちのあり方への関心が高まっていることをひしひしと感じています。
みなさんが「自分事として、金沢のまちづくりを考えていける、そんなまちに変えていく」、今回の話が、その決意をするきっかけとなってくれればいいなと思っています。

【開催報告】日韓国際会議『世界農業遺産(GIAHS)の保全を通じたSDGsの達成』

2019年10月30日に「世界農業遺産(GIAHS)保全の活用を通じたSDGsの達成(Achieving SDGs through the conservation of GIAHS)」と題した日韓国際会議が開催されました。

国連大学サステイナビリティ高等研究所 (UNU-IAS)では、韓国農村振興庁国立農業科学院(RDA)と2018年1月から3年間にわたり、FAOが認定する世界農業遺産(GIAHS)と各国が認定する国内農業遺産についての比較研究プロジェクトを実施してきた背景があり、本国際会議ではGIAHSが各認定地に与えた影響と未来へ残した課題をSDGsというグローバルゴールから考え、GIAHSとSDGsの関係性を日本、韓国からの専門家による解説によって紐解きました。

開会の挨拶はUNU-IAS OUIK所長の渡辺綱男が能登地域のGIAHSのこれまでの取り組みを紹介すると共に、21か国57地域にも及ぶGIAHS認定地域が今後SDGsにどう貢献していけるのか問われていくと述べました。また、来年中国・昆明で開催予定のCOP15でも「農業と生物文化多様性」が重要なテーマとなる可能性が高く、各国の関係者と議論を深めたいと述べました。

次に韓国農村振興庁(RDA)農業研究士、黄大龍氏からは開会の言葉を頂きました。台風19号の被害のお見舞いの言葉を頂くと共に韓国内でのGIAHSやNIAHSの活動状況を報告して頂きました。

基調講演①ではUNU-IASアカデミックプログラムディレクターの齊藤修氏が「里山里海の未来と持続可能性」と題して講演しました。齊藤氏は「食事に占める自家消費の割合調査」や「能登半島でのおすそわけ文化に関する調査」などを通じ、社会関係資本と豊かな食生活の関係を探る研究を進めてきました。更に能登地域における社会・生態システムの統合化による自然資本・生態系サービスの予測評価も行っています。未来のシナリオを想定した上で地域づくりを進め、に農村と都市が連携した形で地域循環型社会を作り上げることが重要と述べました。

基調講演②では韓国農村振興庁(RDA)農業研究士の鄭明哲氏より「韓国GIAHSの保全と活用の近状報告」と題し、初めに韓国での「GIAHSの動的保全のためのアクションプラン」を紹介して頂きました。更に韓国のGIAHS地域での農業体験プログラムやアート関連のプログラム、田んぼオーナー制度やファームツーリズムについてもお話頂きました。地域内外で共通の目標を共有することが重要であり、今後は適切な規制や指標の標準化も進めていきたいと述べました。

基調講演③では世界農業遺産等専門家会議委員の大和田順子氏より「SDGsの視点からみた国内の世界農業遺産認定地域の活性化-日韓GIAHS・SDGs調査から-」と題し、お話頂きました。「世界農業遺産とSDGs調査2019」ではSDGsゴール2と15に関しては、国内のGIAHS 11地域が全て取り組んでいると回答したそうです。地域によってバラつきはありますが、次はゴール6と12が重要視されてくると述べました。

休憩をはさみ、日本のGIAHS事例紹介①では珠洲市役所企画財政課課長の金田直之氏より「SDGs x GIAHS x Art(アート)」と題し、お話頂きました。はじめに珠洲市が行っているGIAHS関連の取り組みとして、市内9つの小学校全校で行っている生き物観察会や地域おこし協力隊の活動、そして課題解決型の人材育成事業(マイスタープログラム)の紹介を頂きました。「SDGs未来都市」にも選ばれている珠洲市では2018年に能登SDGsラボを設立し大学や企業と連携し様々な取り組みを行っています。今後は地域経済に対する効果を明確にし、市内経済活性化にどう結び付けるかがカギとなってくると述べました。更に先端アートプロジェクトによる地域の魅力発信や奥能登国際芸術祭についても紹介頂きました。

次の韓国GIAHSの事例紹介①では河東郡河東茶生産者協議会事務局長の金正坤氏より、「河東伝統茶農業の多元的機能と活用」と題し、茶畑とお寺の興味深い関係や茶畑におけるツーリズム事業やハイキングコースの開発についてお話頂きました。伝統的な茶農家と商業向けに大規模な茶畑を展開している農家間の対立など、韓国を代表するお茶の産地ならではの問題についても述べました。また2020年には「世界お茶博覧会」を予定しているそうです。

次は日本農業遺産の事例紹介②として滋賀県農政水産部農政課主席参事の青田朋恵氏より「琵琶湖システムとSDGs」と題してお話頂きました。2016年に滋賀県では農業遺産セクションを発足し、400万年の歴史を持つ古代湖として琵琶湖を鮒ずしの文化や森・川・水田・湖(うみ)の繋がりと共に発信してきました。現在日本農業遺産に認定されており、GIAHSには申請中だそうです。

最後の事例紹介として忠南研究院研究委員の劉鶴㤠氏に「錦山伝統高麗人参農業システムの持続可能性」と題して発表頂きました。GIAHSの認定は非常にうれしいことだが、冷静に見ると様々な課題があり、特に今後はモニタリングにおける指標の開発、そして誰がどうモニタリングを進めていくのか?といった問題にも、地域の方々の参画を促しながら立ち向かっていく必要があると述べました。

パネルディスカッションでは「GIAHSの地域振興とSDGsなどの国際的な目標達成への貢献」について発表者に韓国農漁村遺産学会副会長の李㽥稙氏が加わった形で議論が行われました。モデレーターを務めたのはUNU-IAS研究員のイヴォーン・ユー氏です。

李氏は「韓国ではSDGsはいまだに中央政府、地方政府による取り組みであり、市町村レベルで目標を掲げている珠洲市などの取り組みに感銘を受けた。韓国では今後GIAHSアクションプランに対するモニタリング指標をSDGsに結び付けることが出来れば」と述べました。更にGIAHSの認知度の低さは日本と韓国のGIAHSが持つ共通課題の一つであり、青田氏からは「SDGsが企業や市民社会に広がってきている。GIAHSの認知度を高めていくにあたり、SDGsを活用できるのではないかと考えている。」との意見が出ました。

最後に金沢大学名誉教授、東アジア農業遺産学会(ERAHS)日本議長の中村浩二氏より総括コメントを頂きました。GIAHSは認定されてからが大変であり、モニタリング→アクションプランの改訂→GIAHSのアップグレードを地域全体で取り組まなくてはならない。そのために今一番重要なことは人材育成であると述べ、中村氏が長年取り組んできたフィリピン・イフガオのマイスタープログラムについてもご紹介頂きました。

最後に閉会の挨拶を石川県農林水産部里山振興室長の寺﨑信二氏より頂きました。韓国農村振興庁(RDA)や参加者の皆さまにお礼を申し上げると共に、今後に向けての意気込みを語り、4時間にわたる日韓国際会議は閉幕となりました。

「千田家庭園」清掃SDGsツアー ―市民も観光客も庭師になろう!―

3月28日日曜日に、長町武家屋敷エリアに位置する金沢市指定名勝千田家庭園(非公開庭園)にて、庭園清掃SDGsツアーを開催しました。このツアーは、これまでJuan Pastor Ivars 研究員が金沢市内の自然と文化を体感するために開催してきた庭園清掃ワークショップを、観光客も参加するツアーモデルとして展開出来るよう、令和二年度金沢市SDGsツーリズム推進事業を使って実施したものです。

日本庭園でのこのような清掃ボランティア活動は、これまでは金沢市景観政策課や金沢美術工芸大学など、自治体職員、研究者や学生などが中心となって実施されてきました。Juan研究員も2017年より活動に加わり、庭園清掃に、庭園の歴史や維持管理方法について学ぶワークショップやお茶会を組み込んで体験型プログラムに仕立て、プログラムの定着と普及啓発を図ってきました。

日本庭園を含む都市部の緑は、地球温暖化対策、ヒートアイランド対策にもなり、都市の固有の生態系や生物多様性の保全につながります。また、金沢市においては、工芸やお茶などの文化的営みや文化的景観の継承にも貢献してきました。更には、自然との関わりは心や体の健康への影響も指摘されています。しかし、人口構造の変化に伴って、維持管理のための担い手不足や維持管理の不届きが起こり、金沢市の持つ都市の自然や文化的景観、そしてそれに付随する文化的活動の次世代への継承が難しくなりつつあります。

このような課題の解決策として、Juan研究員は清掃活動を「エコツーリズム」として幅広い人に知ってもらうための仕組みづくりを探索してきました。今回は国際交流事業に強みのある株式会社You-I Japanと協力しワークショップを実施することで、インバウンド観光客と市民が協力して金沢のまちの緑と文化を共に継承していくツアーモデルの可能性を探りました。先日、卯辰山山麓寺院群と永久寺にて実施したツアーに続くSDGsツアーの開催になります。

当日はあいにくの小雨でしたが、朝9時に千田家庭園前にて待ち合わせ。金沢工業大学の日本人学生や金沢大学のロシア人学生など、総勢8名が参加しました。最初、庭園の修復にも関わっている金沢美術工芸大学の鍔先生から庭園設計についてお話を伺います。千田家庭園は脇に流れる大野庄用水から取水し、庭園の中心に位置する池を通って用水に戻される池泉回遊式庭園。座敷から池の向こうに見える石と木々の配置の一部は、長寿の象徴である鶴と亀を模しているそう。日本庭園の芸術性の奥深さを学びます。その後は、2人1組になって池の底に溜まった泥を取り除く作業を行います。参加者の皆さんは黙々と掃除に没頭します。水の流れに沿って、泥がたくさん溜まっているところとそうではないところもあるようです。

掃除の後は、休憩を挟み、所有者の千田さんより庭園の歴史についてお話を聞きます。千田家庭園は、明治時代中頃、西南戦争において功績を挙げた千田登文が作庭しました。往年の写真を通して、時代とともに庭園のデザインも少し変化していることが伺い知れます。今ではツツジが配されている土縁周囲のデザインにも違いが見られ、また、滝組が配されている石組周囲には水車も設置されていたそうです。千田さんは、このように、庭園の生態系が創り出す景観的美しさと歴史文化的価値を併せ持つ千田家庭園を千田登文の歴史とともに公開することを考えているそうです。

この日はツアー開催前に、千田家庭園で庭園の生物種を確認する生物調査も実施されました。エビやヤゴ、ドンゴやアユまで、池の中からは多くの生物種が見つかり、参加者で観察することが出来ました。庭園の自然と文化の連なりを学ぶ貴重な機会となりました。

最後に、参加者とともに意見交換会を行いました。近年、観光客も趣向が変わり、より地域に入り込んで現地ならではの体験や地域そのものが垣間見れる特別な経験を望むようになっているよう。庭園ワークショップもツアーコンテンツとしての可能性は秘めていますが、文化的背景が異なる他国の方々へは庭園技術の違いや地域の歴史文化を工夫して説明していくことが必要。一方で、日本庭園造園の技術的奥深さへの気づきのコメントもいただきました。

金沢市に蓄積された特有のまちの緑と文化を観光客と地域住民が協力しながら共同管理し、そして、その自然文化的価値を次世代に継承していくことに貢献出来るツアーモデルのあり方について、今後も考えて行きます。

能登GIAHS生物多様性ワーキンググループ 第一回準備会合

能登地域の自治体が組織する「能登地域GIAHS推進協議会」が「能登の里山里海」を世界農業遺産に推薦し、2011年6月に認定されてからもうすぐ10年になります。能登地域GIAHS推進協議会では能登の里山里海の保全と活用を目指し、保全活用計画を策定しています。現在2度目のアクションプランの改訂作業が進んでいて、OUIKでは石川県と推進協議会と協力しながら、これらの作業に関わるとともに、能登の里山里海の保全・活用のあり方、多様な関係者が関われるプラットフォーム作りなどの面からアドバイスしています。

この能登地域GIAHS推進協議会では、能登の生物多様性に関わりの深いメンバーを中心にした生物多様性に関するワーキンググループの立ち上げに向けた準備が現在進められていて、国連大学もサポートをしています。先月2月26日、石川県水産総合センター(能登町)内の会議室にて、立ち上げに向けた準備会合の第一回目が開催され、能登地域では現在どんな取り組みが行われていて、どんな課題があるのかなどについて話し合いが行われました。

【開催報告】SDGsカフェ#7 「気候変動危機、金沢のアクションをみんなで考える」

今回は、台風19号の被害が続いている中、もっとも関心の高い話題ともいえる気候変動をテーマに、地球の未来をリデザインする会と共催で、IMAGINE KANAZAWA 2030 SDGsカフェ第7回を開催しました。募集50名を上回る63名の参加があり、このテーマの関心の高さを改めて感じました。

地球の未来をリデザインする会の代表・奥圭奈子さんから、2030年の金沢をイマジンしてもらい、金沢大学河内幾帆(こうちいくほ)さんによる話題提供と、後半は金沢エコライフくらぶ代表の青海万里子さんも加わって、気候変動に対して、“市民一人ひとりは何ができるのか?”を話し合いました。

*は関連するページのリンクです。

地球規模のことを、金沢で考えるのが今回のテーマ

まずは国連大学OUIK事務局長の永井から、SDGsやこのカフェの趣旨を説明し、いま金沢で何が起こっているのかを紹介。
「環境のことも、人権のことも、子供のことも、全部を包括的に、全世界で一緒に考えようというのがSDGs。これはとても革新的です」と、永井は強調しました。

続いて、地球の未来をリデザインする会・代表の奥圭奈子さんから、2030年の金沢をイマジンしてもらいました。
この会は発足してからまだわずか50日ほどですが、金沢21世紀美術館で大きなイベントを開催するなど、注目されています。

「私なんかが、前に立ってもいいのでしょうか?」と謙遜する奥さんは、金沢でご主人と一緒に宿泊施設を経営する2児の母。気候変動については、海外の学生のムーブメントなどを見聞きするうちに、“自分も何かしないといけないと思うけど、どうすればいいのか?”と、モヤモヤしていたそうです。
そのような時に、同じような思いを持っている人たちと、とにかくつながろうと立ち上げたのがこの会で、だから会には専門家は誰もいないそうです。

地球の未来をリデザインする会・代表の奥圭奈子さん

“SDGsも気候変動も、どこかの国で起こっていることと捉えられてしまうと本当に遠くなってしまう。自分たちのこととしてなかなか置き換えられない。置き換えられないから実際の行動に移せないのではないか?”と感じ、「あなたと地球はつながっている」をキャッチコピーに行動を起こしているそうです。
そんな奥さんも、今回の台風の影響で宿泊キャンセルが出て、この“つながり”を痛感されたと言います。

「子供が『大きくなったら消防士になりたい!』と言うんですが、この子が大きくなったら、気候が今とは大きく違っているのではないか? そんなことをすぐに考えてしまいます。未来を否応なしに見させられる存在が近くにいるということはすごく大きい。春になったらお花が咲いて、初夏になったら新緑がきれいになってと、いま子供たちと一緒に体験できる当たり前のことを、子供たちが親になった時でも体験できる金沢であって欲しいです」(奥さん)

そのために“いまどう動くか?”ということを考えて、子供と一緒に話もされているそうです。

ゴア氏から学んだ環境問題に立ち向かう術を共有

気候変動とか、温暖化とか、規模が大きく、専門性が高いこともあって、“毎日の生活にどうやって落とし込めばいいのか?”と悩む問題ではないでしょうか?
金沢大学で環境問題を教える河内幾帆さんから、その答えのヒントにもなる話題提供がありました。
河内さんは、元アメリカ副大統領・アル・ゴア氏が東京で開催した、気候変動問題について学ぶトレーニングプログラム「Climate Reality Leadership Corps Training」に参加したばかり。そこで学んだ気候変動の今を、ゴア氏の心揺さぶられるメッセージとともに、会場と共有しました。

ゴア氏といえば、気候変動の影響が見られなかった30年前から、その問題について啓発活動を行ってきた人。アカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画『不都合な真実』に主演し、ノーベル平和賞を受賞しています。

今回のプログラムの目的は、コミュニティで気候変動に関する啓発活動を行う上で、必要な能力を身に着けること。具体的には、気候変動に関する正しい知識と現状、世界的な取り組み、課題を学び、その情報を「社会にどうやって伝えていくのか?」という方法を教えるもの。
そのスキルを身につけた河内さんは、今回のテーマの話題提供にこの上ない方でした。

その様子をダイジェストで、この記事を読まれている皆さんとも共有したいと思います。

金沢大学の河内幾帆さん

さて、気候変動を語るにあたって、答えないといけない3つの質問があるそうです。

1.変化が必要か?
2.変化が可能なのか?
3.その変化を起こすのか?

ということだそうです。

まずは、温室効果ガスの一番大きな発生源は化石燃料を燃やすことなどといった、気候変動のことをおさらいしました。2016年の日本でのある調査で、「気候変動は人為的なものである」という見解に懐疑的な人がまだ多いということが紹介されました。
しかし実際、過去に遡って気温とCO2濃度との関係を示す図を見ると、その間にシンクロがあるのが分かります。また、年々暑くなってきたと感じるようになり、「記録的な猛暑」というのを毎年聞くようになってきているということからも、この関係は間違いないものと思わざるを得ないでしょう。

しかも、大気温の上昇以上に深刻なのが、海水温の上昇です。大気中に集まった熱は90%が海に吸収されます。海水温が上がると何が起こるか?
日本で影響が懸念されるのは台風が発生しやすくなり、巨大化すること。
台風19号で箱根に起こったような1日の降水量が1000ミリを超えるような大豪雨が、これから頻繁に起こるようになるという可能性を示唆しました。

ということで、質問1の「変化が必要か?」の答えは、「必要だ」となります。そして、私たちが存続していくためになすべきことは、「今の段階で温度上昇を食い止めること」なのです。

温室効果ガス削減はお金がかかるという話も聞きますが、「温室効果ガスの排出は世界経済に対する最大の脅威だ」とも言われているそうです。

 

では、質問2の「変化が可能か?」について、河内さんからは「解決策がある」と聞いて、ちょっとホッとしました。

その手段とは、自然エネルギー(再生可能エネルギー)への転換だと言います。今のエネルギーは世界的に80%が化石燃料によって保たれていて、20%は自然エネルギーに転換しているそうです。風力発電の能力は飛躍的に向上していて、太陽光発電のコストも大きく下がってきていて、自然エネルギーで全ての電力需要をまかなうことが技術的に可能となりつつあります。
ヨーロッパでは新しく作る発電所に関してはほとんどが自然エネルギーとなり、国内の電力需要を上回る量を自然エネルギーで発電できる国もあるそうです。

しかし、未だ多くを占めるのが石炭火力発電である理由として、その補助金の多さが挙げられ、それでも、世界各国の銀行は自然エネルギーの方へ投資を回すようになりつつあり、今後は、世界的に石炭火力発電への比重は下がっていくと予測されているそうです。

一方、日本でも再生可能エネルギーへの投資は増え始めているそうです。日本は気候変動対策を原子力発電で進めていこうとしてきましたが、東日本大震災でそれが社会的に受け入れられない状況となり、石炭など化石燃料の方にスイッチしてしまいました。
火力発電は比率が高いだけでなく、さらに増やしていく可能性があるようです。そして、発展途上国に石炭火力発電所の設置を国際援助としても行っていて、その援助額は世界で2位に上るそうです。

いま石炭火力発電から手を引くとなると、今まで投資した分が無駄となり、多くの人が“気候変動は人為的なものではないのでないか?”と思っている状況で、この投資を無駄にして、自然エネルギーに転換することに、“社会的な合意が得られるかどうか?” ということが大きなネックとする考えもあるそうです。
そのためにも重要なのが「今の状況を正しく理解すること」だと、河内さんは強調します。

このように変化することは十分に可能なのですが、質問3の「その変化を起こすのか?」は、それぞれの国、そしてそれぞれの一人ひとりが、みんなで考えないといけない問題なのです(まさしく今回のSDGsカフェのテーマ)。

リーダーシッププログラムのクロージングでは、ゴア氏の言葉が会場に集まった約800人の心を一つにしたそうで、そのメッセージを紹介しましょう。

“私たちは、いまの子供達に、将来次の2つの質問のどちらかをされるでしょう。

1つ目は、「どうしてまだ間に合ったときに何もしてくれなかったの?」

2つ目は、「どうやって、あんなすごいことを成し遂げることができたの!?」

私は、世界がこれから化石燃料の使用を0にするというゴールを達成して、気候変動の悪化を我々の世代でくいとめ、彼らが2つ目の質問をしてくれることを心の底から願っています。そしてその答えとして「それは、2019年10月に東京に日本中から集まった800人が一致団結して、協力して日本社会を変える原動力になったからだ」と答えたいと心から思っています“(アル・ゴア氏の言葉より)

10年後、「学生から『どうやってCO2の削減をやったんですか?』と聞かれたい」と語る河内さんは、「そのためにいま私が出来ることをしたいと思っています」と述べました。

 

多くの人が危機感を抱いている今が、そのスタートとなるか

河内さんの話を受けて、ここからは地域で何ができるのかということを、金沢エコライフくらぶ代表・青海万里子さんにも加わっていただき、会場も一体となって、議論が深まりました。

金沢エコライフくらぶ

 

金沢エコライフくらぶ代表・青海万里子さん

1992年にブラジルで開催された地球サミットをきっかけにして、以来ずっと環境問題に関わってきた青海さんは、“気候変動の関心の波は今まで何度か来たが、日本人はすぐに熱が下がってしまい、これが大きなうねりを作るきっかけになるところまでつながっていない”と、振り返ります。

今回の台風で、その影響をリアルに感じている人は多く、これがライフスタイルを変えることができるきっかけとなるのではないかと考えているそうです。

「一人ひとりでやるだけでなく、大きなチームで取り組まないと行けないこと。いろんな動きが一つにつながっていくためにどうしたらいいのか? 皆さんからお知恵をいただきたいです」(青海さん)

「使うエネルギーを再生可能エネルギーに変えることがいちばんの手段ではないでしょうか。10年後に、『なんで何もしてくれなかったの?』と言われるより、『実はSDGsカフェというすごいカフェがあって、そこから始まったらしい』って言われたいですよね。そのためには地域の温室効果ガスの排出量をモニタリングして、みんなで下げていく必要があるのではないでしょうか?」(永井)

国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット  事務局長 永井三岐子

「金沢市では2013年度を基準年として、2020年に12%削減、2030年に28%(国は26%)削減を目指しています。現在、2016年までの数値をホームページでも公開していますが、現在は横ばいといった感じで推移しています。また、再生可能エネルギーの発電割合(金沢市ではエネルギー自給率という)は概ね8%です」(会場にいた金沢市環境政策課の担当)

金沢市の温室効果ガス排出量(2016年度確報値)

さらに、地域で再生可能エネルギーによって発電した電気を買えるようになればいいということや、省エネを実践すれば確実に二酸化炭素の排出量が減らせるということを、会場にいらした環境カウンセラーの方も交えて、情報を共有していきました。
地域には専門的な知識を持った環境カウンセラーがいて、省エネに関する相談に応じてくれますから活用しない手はないという話も。

*省エネについては、クールチョイス(環境省)が参考になります

*金沢市では節電エコポイント事業を行っていて、削減率に応じてポイントが付与されます(令和元年度の募集は11月15日まで)

 

SDGsに重要な役割を果たすのが企業。その参加を促進したい

企業の活動についても話が上がり、「地元の企業と一般消費者とが一緒になってワークショップをする機会をセットして欲しい」という要望が会場から上がりました。

「SDGsはCSRの一環で“寄付します”ではなく、利益が出るからやりますという企業が入ってきてくれないと成り立ちません」(永井)

「私たちは日々、どこのメーカーから買うか、どこのお店から買うかを、その会社がどういう活動をして、どういう考え方を持っているのかを知った上で、するようにします。これは投票活動と同じ。私たちが日々投票したくなるような会社やお店が地域にたくさんあれば嬉しいし、そういう地域っていいですよね」(奥さん)

「海外では若者が行動を起こしているのに、日本では広まらないのは、“自分さえ良ければ良い”“自分一人が何かしても変わらない”とみんなが思っているから。10年後に“世界がこんなになってしまった”と嘆くのではなく、“自分は変えることができる”と思える子供たちを育てていきたい」(会場にいらした教育関係の方)

 

10年後、これ以上の気候変動は望まない。そのために変える

また、会場からは「社会的な合意がなされるためにはどうすればいいの? 時間がないと思いますが」という質問が出ました。

「焦らず、急がば回れで一つずつ積み上げて、賛同を得ていく動きにする、今はSNSなど、情報発信力がすごいから、昔よりは簡単にできます」(青海さん)

「気候変動に関して、いま皆さんが不安感を持っていて、何かをしたいと思っています。周りの身近な人の行動を見て波及していくから、“自分だけ省エネしてもしょうがない”と思わず、“自分の行動が他の人に影響を与えるんだ”という意識でやっていけばいい。社会の25%がやり始めると、周りもやり始めます。そこまでじっくり頑張ってやりましょう」(河内さん)

会場では、皆さんがそれぞれの立場から、10年後を見据え、今できることを考え始めたようです。そんなみなさんの想いを、付箋に書き留めていただきました。

そして、「エネルギーの話は大きすぎて個人の力は弱いように思われるかもしれませんが、変えていきましょう!」という永井の呼びかけに大きな拍手をいただき、終了しました。

さて、このSDGsカフェも回を重ねるごとに、会場と一体となって白熱した議論が交わされるようになりました。少しずつSDGsへの関心や理解が深まっていることを感じます。

金沢の2030年がどうなるのかは、一人ひとりの行動にかかっています。ぜひ、お気軽にこのカフェで一緒に考えてみませんか?

*SDGsカフェの最新情報は、IMAGINE KANAZAWA 2030(Facebookページ)をご覧ください。

*地球温暖化に関することをもっと知りたい方におすすめ!
 国立環境研究所地球環境研究センターの「ココが知りたい地球温暖化」
 Q&A形式で研究者がわかりやすく、しかも詳しく一般的な素朴な疑問に答えています。

Pick up

Banner:Conference