OUIK > お知らせ > 地域との研究活動 > 金沢

金沢:アーカイブ

IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ 交流会#5(2021年9月16日)の開催

金沢ミライシナリオをパートナーシップで実践するためのプラットフォームであるIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ。2021年9月10日時点で157の企業、団体、個人が参加しています。パートナーズ交流会では、毎回、参加者が「パートナーズのみなさんと協働で実行したいプロジェクト」をピッチプレゼンし、それを起点に参加者同士で金沢ミライシナリオの実現に向けたディスカッションを行います。昨年度は合計2回の開催に留まりましたが、本年度は毎月開催することで、金沢ミライシナリオの実現と会員間の協働を進めていく予定です。

先日9月16日に2021年度第3回目、合計第5回目となるパートナーズ交流会がオンラインで開催されました。今回も各種団体、企業また個人の方と多くの方々にお集まりいただき、活発な意見交換が行われました。今回は、食糧不足と健康問題をテーマに活動するNPO法人TABLE FOR TWO、オーガニックとフェアトレードのお店を経営するほか、SDGs達成に向けた行動啓発のための映画上映を行う株式会社のっぽくん、「こころ豊かな暮らしを実現する」をテーマに人々の清潔、美、健康を支えてきた花王グループから花王グループカスタマーマーケティング株式会社の3団体がピッチプレゼンを行いました。

TABLE FOR TWOさんは、先進国の過度なカロリー消費とそれに起因する肥満や生活習慣病、反対に開発途上国で起こっている食糧不足と飢餓の両方を解決しようと取り組む団体です。企業の社員食堂や店舗で提供されるTABLE FOR TWOさん特製のヘルシーメニューが購入されることで、開発途上国に給食1食分が寄付される仕組みを作っています。これまで累計7,390万食が支援されたほか、709団体と提携してきた実績があり、2019年ジャパンSDGsアワードも受賞しています。金沢市でも株式会社白山さん、石川中央魚市グループの(株)マルストックさん、金沢大学などと提携し、自動販売機での飲料販売や地場食品の販売などを通した寄付の仕組みを導入しています。日本側で販売するメニューについては企業側の意向も踏まえ柔軟に対応しているそうです。

続いて、のっぽくんさんからは、のっぽくんが協力している「未来につなぐ映画祭」の紹介がありました。「未来につなぐ映画祭」は金沢市内の3会場(NOPPOKUN金沢港クルーズターミナルシネモンド)にて、SDGsに深く関わる合計5作品を9月4日から10月1日までの4週間にわたり上映します。どの映画も世の中や人生に関わる問題など、身近だけど知らなかった考えさせられるテーマを扱っていて、SDGs達成に向けて一歩踏み出すエネルギーを与えてくれるものです。加えて、文章では抽象的で難しいSDGsについて映像を通して噛み砕いて理解できるほか、各映画がSDGsのどの目標とリンクしているか表示されているので、まだまだSDGsについて分からない方でも自分ごととして捉えやすい内容になっています。のっぽくんさんは、5作品のほかにSDGsをテーマにした複数の映画を上映する権利を保持しています。今後は映画を通してSDGs達成に貢献するための交流の場を作っていくこと、企業向けのSDGsの勉強会などを行うことを検討しています。

最後に、花王グループカスタマーマーケティング株式会社さんから同社のSDGsへの取り組み内容をご紹介いただきました。花王グループはESG戦略として「My Kirei Lifestyle 世界中のお客さまのこころ豊かな暮らしを実現する」を掲げ、花王グループカスタマーマーケティング株式会社内にノルマを持たない社会コミュニケーション部門を設置。多様なコミュニティーとの積極的なコミュニケーションを行い、環境、健康、衛生、多様性の観点から社会貢献活動と生活者のこころ豊かな暮らしの実現を支援しています。具体的には、幼稚園や保育園向けの手洗い講座、小学生向けのプラスチックごみの環境講座、就活生や再就職者向けのメイク・スキンケア講座などを開催しています。今後、順々に取り組みの種類を増やすとともに講座の実施数も増やしていきたいそうです。前回のパートナーズ交流会で意見交換を行った石川シングルマザーの会さんとは、協力して公民館でメイクアップ講座を開催することが決まっているそうです。

ピッチプレゼンの後は、お馴染みのグループディスカッションが行われ、各発表者への質疑応答やどうしたらプロジェクト推進を後押しできるか、関連する課題を解決出来るか、話し合いが行われました。グループディスカッションの後、各グループでの話し合いの内容が参加者みんなに共有されました。共有された内容に対して更に、別の観点から新しい解決策や協働のアイディアが共有され、新しい協働プロジェクトのたねやネットワークも生まれました。ツエーゲン金沢 さんの子ども向けサッカー教室イベントと公式戦の合間に、施設を利用してのっぽくんさんと協力してSDGsの映画を放映するなどのアイディアも登場しました。

今回のパートナーズ交流会では、参加者が考えついたアイディアを自由に共有し合える交流会の場の中で更なる広がりが生まれ、プロジェクト推進のアイディアとつながりのきっかけが多数生まれる機会となりました。

今回のパートナーズ交流会では、ディスカッションに先立ち、IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズのコーディネーターを担当する橋本さんから交流会を通した協働の実現事例も共有されました。2021年度第1回目でピッチプレゼンされたkanazaWAZA研究所さんはパートナーズ交流会でつながりを作り、東京海上日動金沢支店さん、金沢機工さん、SYNCA DESIGN UNITさんと協働でサスティナアートプロジェクト放置竹林編を実施中。また、ピッチプレゼンの中でも紹介があったよう、石川シングルマザーの会さんと花王グループカスタマーズマーケティングさんがメイクアップ講座の開催を企画するなど、パートナーズ交流会を通した協働プロジェクトが着実に動き始めています。今後、橋本さんはコーディネーターとしてパートナーズ会員間の協働プロジェクトに伴走して調整を担い、協働の輪をどんどんと広げていく予定です。また、交流会を通して生まれた金沢ミライシナリオを実現する協働プロジェクトを進めている方がいらっしゃいましたら、ぜひ事務局までお知らせください。

IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズでは会員を随時募集しているほか、交流会でピッチプレゼンしたい企業、団体、個人の方も募集しています。ぜひ皆様のミライを作るアイデアを聞かせてください。

【開催報告】SDGsカフェ#11「持続とは変化!? ~with コロナ時代の働き方とリモートワーク~」

新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、できるだけ出社を伴わないリモートワーク(在宅勤務、テレワーク)による働き方が、現在求められています。

リモートワーク導入に際してのさまざまなネックや、「導入してみたけど、いまいち生かし切れていない気がする」など、日々の思いを皆さんで共有したいと考えて、コロナ緊急企画として、SDGsカフェ#11をウェビナー(*)で開催しました。

*ウェビナーとは、ウェブとセミナーを合わせた言葉で、動画を使ってインターネット上で行うセミナーのこと。Webセミナーとかオンラインセミナーとも呼ばれます。

SDGsとリモートワーク、新型コロナウィルスとの関係

今回、イマジンしてくださるのは、コロナを機に4月から全社リモートワークを導入しているという、株式会社計画情報研究所の代表取締役・安江雪菜さん。そしてアイデアを提供してくださるのは、働き方改革の最前線企業として知られるサイボウズ株式会社の社長室フェロー・野水克也さん。国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット事務局長の永井三岐子を交え、3人によるSDGsカフェ初のウェビナーが始まりました。

まずは永井から恒例のSDGsの概要と、IMAGINE KANAZAWA 2030の主旨説明を。

今回はリモートワークとコロナの関係をSDGsの枠組みで考えてみる、次のような解説も加わりました。

SDGsの17のゴールのうち、コロナと直接関係あるゴールは「働きがいも経済成長も」(8番)と、「すべての人に健康と福祉を」(3番)。

「私たちがリモートワークをすれば、移動が減ります。そして、使い捨てマスクの使用が減ればゴミの削減にもつながるなど、環境問題と切ってもきれない関係があります」と述べ、「気候変動に具体的な対策を」(13番)、「海の豊かさを守ろう」(14番)、「陸の豊かさを守ろう」(15番)との関係に言及しました。さらに、リモートワークをうまく使えるようになれば「産業と技術革新の基盤をつくろう」(9番)にもなると付け加えました。

一方で、ウィルスに感染した人への差別は「人や国の不平等を無くそう」(10番)、家庭内で増えているDVは「ジェンダー平等を実現しよう」(5番)のゴールからマイナスとなっている実態にも触れました。

リモートワークの実態を探る緊急アンケートを実施

計画情報研究所は、まちづくりのコンサルタントなどを行う会社で社員は25名。本社は金沢市で、分室や支店が七尾や高岡など4カ所にあります。

*株式会社計画情報研究所 https://keikaku.or.jp

今回、このカフェのために、安江さんは「リモートワーク緊急アンケート」を金沢イクボス企業同盟と連携して、ウェブ上で実施しました。

「緊急アンケートは、皆さんのリモートワークがどういう状況なのかを確認したくて行いました」と述べ、安江さんよりアンケートの結果を発表していただきました。

アンケートの回答は101件、年代は40〜50代が多く、業種はサービス業が一番で4割ほど。職種はさまざまで、規模は小さいところが多い中、1000人以上という企業も15%ほど。

リモートワークの実施状況は「全社員が行なっている」と、「半数以上の社員が行っている」が約半数を占め、「一部の社員が行っている」も含めると4分の3くらいの実施状況です。

「組織の課題について」の質問では、高かったのが、「セキュリティーに不安がある」、「リモートワークが可能な業務ではない」(個人情報を扱う、工場の製造現場であるなど)で、それに続いて「社内体制が整っていない」、「ネットワーク環境が十分でない」など。
あわせて寄せられた具体的な意見には、「在社しなければ『出勤ではない』と思い込む上層部」、「正式にリモートワークが決まると拒否反応を起こす上層部」など、管理職やマネジメントの問題を挙げるものや、「社員の勤務状況の実態を把握するのが難しい」、「お客様側にリモートワークの体制がない」と言ったものもありました。

あなた自身の課題は?」については、「自己管理が難しい」と「リモートワークが可能な業務じゃない」というのが多い回答でした。具体的には、「機材の強化、Wi-Fiの速度」、「顧客との連絡が個人の携帯電話」、「できない仕事(郵便物、判子が必要な書類など)がある」、「より高度なコミュニケーション(考えや意見を言語化できる能力が問われる)」と言ったものが挙がってきました。

リモートワークのメリットは?」の質問には、「通勤時間の削減」、「仕事の進め方の見直しができた」というのが多く、一方、「デメリットは?」には、「できる仕事が限られる」、「社内コミュニケーションが難しい」、「オンオフの切り替えが難しい」などなど。
子供も家にいるため、育児や家事もしながらということで、「いまは特にオンオフの切り替えが難しくなっている状況なのではないか」と安江さんは補足します。
メリットの具体的なものは、「ワークライフバランス」、「不要不急な社内電話、会議が減った」や、「自分の頭で考えるクセがつく」、「どのような状況になっても働き続けられる安心感」、「仕事の定義が、時間ではなく、成果、価値の提供へにシフト」、「遠方でも面接が受けられる」など、仕事へのポジティブな変化やチャンスと捉えている意見も多く見られます。
デメリットには、「孤独感と運動不足」、「セキュリティで事故が起きた時の責任問題」、「いままでのやり方が通用しない」、「『アレ頼むね!』みたいな数秒で済む依頼がしにくい」など、切実な問題も多く挙がっていました。

また、たくさん寄せられた自由意見は、次のように属性別に分類して紹介されました。

高いハードル

  • 相談業務だが、会社はビデオ相談というのを考えられない様子
  • 在宅勤務の規定が厳しすぎて、それをクリアして届け出られる者はいない

「新しい関係性の構築」

  • 高齢者などITリテラシーのない対象との仕事に使えない
  • 全社のミーティングをzoomミーティングに変えたら、いままでよりコミュニケーションが取れるようになった。チャンネルが変わるとコミュニケーションの方法も変わる
  • 社屋に捉われない組織の紐帯の進化を発揮し、会社役員に示していきたい
  • 社長は、リモートワーク中の社員がサボっているんじゃないかなんて思わず、信じて欲しい

働き方のシフト

  • セルフマネジメントが重要
  • リモートワークができない業務について、新しい働き方の模索も考えないといけない時期になっているのではないか
  • 会社の評価のあり方を変えていく必要を感じる
  • 会社の意思決定、人材育成、営業活動、仕事の進め方、組織のありようが質的に変わる。アフターコロナは、以前と同じ働き方、関係性には戻らない、戻れないと思う

以上がアンケート結果の報告でした。
リモートワークは企業文化を変えるチャンスとしても期待できそうです。

 

変わることで持続可能になる、それを感じる日々

金沢市出身の野水さんが所属するサイボウズ株式会社は、かねてよりリモートワークを先進的に進めている企業で、1000人近くの社員は3月初めからほとんど誰も出社していないそうです。

*サイボウズ株式会社 https://cybozu.co.jp

今回のアンケートの結果について野水さんからは、「体制とか内容の決め方とか、リモートワークをやったことがなかったところの典型的な進め方。規定とか許可とか、やりだすとそういうものとは関係なく進んでいきます。そこに捉われていても仕事が回らなくなりますから、まずはやりながら規則も決めていけばいいと思います」とアドバイスがありました。

続いて、サイボウズではどんなリモートワークをしているかについて発表していただきました。

サイボウズでは、リモートワークはBCP(*)の一環としての観点から挑戦し、取り組んできたそうです。

*BCPとは、災害などの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画。事業継続計画とも

「SDGs的に言いますと、持続可能とは伝統を守ることとは違います。変わっていくもの、変われるものが生き残れるのです。サイボウズにはリモートワークに挑戦してきた歴史があり、急にこういう体制になれたワケではありません。最初にこういう体制を取ったのが2010年でした。その当時のサイボウズはあまりにも社員の離職率が高く、社長は給与以外で社員の言うことを全部聞いてあげようということになり、『こうやって働きたい』と言う社員の要望を入れていった結果、在宅勤務制度がスタートしました」

リモートワークの試験運用を開始した半年後に東日本大震災が起こり、それまでは一部の者だけだった在宅勤務が自動的に全員となり、そのあといろいろなルール変更を繰り返し、いまに至っているそうです。

「最近、役所が変わってきたと感じています。いままでは『来月来られますか?』と言っていたのが、『今日、明日でzoom会議できませんか?』に変わりました」

変わらない時は徹底的に変わらなかったのに、変わる時は徹底的に変わるものだということを実感しているそうです。

「ほとんどリモートワークで、役所のサイトを2週間で作りました。このスピードでできたことはすごいことです」(野水さん)

 

リモートワークで部下がサボると思う上司は、まずは自分でやってみるといい

リモートワークに長い時間をかけて取り組んでいるサイボウズでの経験から、リモートワークのコツを教えていただきました。

「まず、管理のこと。『サボるんじゃないか?』と思う上司がいます。私も実は最初、そう思っていました。でも、一回自分でやってみたら、“いま、自分がサボっているとみんなに思われているんではないか?”という不安の方が勝ることがわかりました。在宅勤務をしている人は、本当は心細くて不安。大手を振ってサボれる人間なんていないということが身をもって体験できたのです。まずは管理職が体験し、その時に感じた気持ちを頭に置けば、進められるはずです」

「サボっているんじゃないか?」と疑うもう一つには、そもそも誰が何をやるかって決まっていない会社が多いことも指摘されました。

「あの人は手を動かしているから働いている、そう言う感覚でマネジメントをしているところが多すぎます。リモートワーク以前に、業務の見える化が必要です」

リモートワークは「基本的には性善説で。性悪説でいくと失敗する」と言う野水さんからは、「雑談もネット上でやるべき」、「一部の人がリモートワークをするのではなく、全員で取り組むことを前提にすべき」というアドバイスもありました。

いまは稼働率を気にしている場合ではない

ウェビナーでは、参加者(視聴者)がチャットやQ&Aを通じてリアルタイムに質問や意見を投げかけることができるのもメリットです。

参加者のお一人から、「経営層から、子どもが在宅しながら働くことに対して『稼働が下がってしまって申し訳ないという考え方は捨てましょう』というメッセージが流れました」という話も。

「心理的な安堵感となる、こういった言葉が一番欲しいと思います」(永井)

「自分から進んでリモートワークを行うのであれば、業務効率を落としてはいけませんが、いまは緊急事態の自粛によりリモートワークをしないといけない状況。ですから業務効率が落ちても仕方ないと割り切ることが必要。経営側も全く同じにはならないことを理解すべきです」(野水さん)

「経験値ということもあるので、その辺をどうやってみんなが学習して、こういう風にやると盛り上がるよね、楽しいよねみたいなことを学んでいく、いまはそんな時期なのかと思います」(安江さん)

リモートワークに切り替えるためのポイント

今回のコロナ対策として、安江さんの会社がとったリモートワーク対応の手順についても説明がありました。

コロナ以前に、BCP対策にもなるため自社ファイルサーバーをクラウドサーバーに移行していたことや、本支店間のミーティングにzoomを使用していたこと、会議のペーパレスや効率化などを踏まえて全社員のPCをノートPCに切り替えていたことなど、リモートワークを行えるインフラが整っていたそうです。そして、月間フレックス制を採用するなど多様な働き方を受容していた下地もあって、リモートワークへスムーズに移行することができたと言います。

このように進めてきた経験も踏まえて、安江さんはリモートワークを進めるためのコツとして、「バックキャスティングの思考」、「とにかくやるということの強い意思」、「基本のインフラを整える」、「自由と責任の風土」、「仕事の成果とは何かを問い直す」の5つの必要性をポイントに挙げました。

ありたい姿にシフトする、いまがそのチャンス

参加者から、「コロナの大変な時も織り込んで進めていくSDGsでは、変えないことと、変えることにはどのようなことがありますか? 金沢市の未来シナリオを再定義する必要はありますか?」という質問があり、それを踏まえて、安江さんからは「withコロナ afterコロナの働き方」についてを紹介していただきました。

「いまはみんなで強制的にやっているので変な興奮状態にあります。でも、長期化と倦怠感で、必ず反動がきます。それでも元には戻れません。ではどうすればいいか? 常識や慣例からありたい姿にシフトすることを真剣に考えたほうがいいと思うし、いまがそのチャンスです。組織の意思決定や、仕事のスタイル、価値観、環境、働く場所の意味まで、働く上でさまざまなものが変わっていきます。その上で、組織の存在意義やそこで行う事業の意義がシビアに問われるようになるのではないでしょうか」

SDGsの未来シナリオの再定義について安江さんは、「いますぐには決めきれないので、私たちはコロナという辛い共同の経験を踏まえて、どうありたいかをオープンにして語り合い、そこで何かの答えが見つけられたら良いなと思っています。持続していくことは、いかに自分が環境に対して変わっていけるかということなんだろうと思っています」と述べました。

「SDGsで問われたことは、『変われるか』ということ。SDGsはいままで騒がれはしたが、あんまり世の中が動いてきませんでした。それが今回のコロナで、やればできるということがこれだけ出てきていて、結局、変われるか変われないかを試された感さえもあります。いまうまく適応できている人とか組織は、結構コロナに対してもうまく扱えてるかなという気がしています。未来シナリオの再定義は別の議論だと思いますが、いままでSDGsをやって努力してきている人たちは、変わることへのアレルギーは少ないと思う気がしていますし、レジリエント(しなやかな強さ)みたいなのはあるのではないでしょうか」(永井)

「あんまりコロナにこだわらない方がいいと思います。こだわると「いつまで」と期限を区切って、元に戻ろうとします。元の通りに商売ができるように、元の通りに仕事ができるようにと給付金に頼って続けていると、おそらく2〜3年後には経済力のない町ができ上がる、そういうリスクがすごくあるんじゃないかと思います」(野水さん)

「製造業とか飲食、対面サービスなど、なかなかリモートワークができないからこのテーマは関係ないと思われるかもしれませんが、オンラインで全部やるからこそ、リモートワークとは違うリアルな場所が特別になります。そういったリアルな場所が、文化も含めて特別なものになって欲しいというのが、リスペクトも込めた私の願い。リモートワークで問題が解決しない、リアルでないといけないことを、いまはみんなで支援していき、大切にしたいと思っています」(安江さん)

「リモートワークに慣れ親しむのにリモート飲み会はいい。そこに上司も誘ってみたら?」という話も飛び出し、盛り上がる中、時間となって今回のウェビナーは終了となりました。

最多で100人近くが参加してくださった今回のSDGsカフェ。質問がしやすい、スライドが見やすい、遠方からも参加しやすい、アポが取れない人気のゲストも呼びやすいといったウェビナーならではの良さを、主催する側も参加する側も共感できた今回の試み。次回以降も、リアルと組み合わせたりしながらウェビナーも取り込んで、SDGsを議論する場を広げていきたいと考えています。

 

今回、ウェビナー中にQ&Aコーナーにていくつかご質問をいただきました。以下、野水さんからの回答付きでご紹介いたします。

Q. そもそもオフラインでも問題あるのですが、、会話コミュニケーションが苦手な人に対しての良い方策はありますか? 

A. まずは、タスクを見える化すること。(評価の基準を作る) あとは雑談ですね。雑談のために毎週時間を取りましょう。 

 

Q. 社員の皆様が全て会社のスマホをお持ちですか? 

A. サイボウズはほしければ支給しますが自分のを使うこともできます 

 

Q. 業務が特定の人に集中したりしませんか? 

A. 集中した人の給料を上げればいいかと 

 

Q. 会社の資料は クラウドに落ちるのですか? 

A. ほぼ100%クラウド上にあります。 

 

金沢イクボス企業同盟の皆さまにご協力いただいた「リモートワーク緊急アンケート」の詳しい結果はこちら

【開催報告】SDGsカフェ#10「『スポーツ×SDGs』から考える金沢の可能性」

今年、2020年といえば東京オリンピックの年。日を追うごとにスポーツへの関心が高まっている中で、スポーツとSDGsの関係を考えてみました。

SDGsとスポーツって関係あるの?

まずは、金沢市役所企画調整課の笠間彩さんから、金沢SDGsの5つの方向性の解説とともに、SDGsカフェ#8でもご登壇いただいた広石拓司さんのメルマガの一文を引用し、オリンピックとSDGsの関係について紹介しました。

近年のオリンピックでは「サステナビリティ」が大きなテーマになっていると言います。
競技や試合で生まれる“最高の一瞬”は、日々の努力はもちろん、食事や生活環境などが大きく影響しています。
「もし、その日々食べるものが自然や誰かを傷つけているとしたら、その“最高の一瞬”を心から喜べるでしょうか?」 
そんな広石さんからの問いかけとともに、スポーツでもSDGsは重視されていることを説明しました。

「2030年の金沢を想像しましょう。いま何が問題になっているのか? 誰がなぜ困っているのか? 想像力のスイッチをオンにするとたくさんの気づきがあります。そこから子供たちに引き継ぐべき、2030年の金沢の姿を描いていきましょう。金沢SDGsは市民全員が参加者です。SDGsの基本理念である、『誰一人取り残さない』を金沢から実践していきましょう。そのために、行政は行政、民間は民間、市民団体は市民団体という垣根を取り払って、今後はそれぞれ皆さんの強みを持ち寄って、共通のゴールに向かって進んでいける、そういうプロセスを踏んでいけるまちにしていきたいです」(笠間さん)

2030年の金沢をイマジンしてくれるのは、ツエーゲン金沢の灰田さん

「ツエーゲン金沢」は、金沢をはじめ石川県全県をホームタウンとするプロサッカーリーグ・Jリーグに加盟するサッカークラブ(J2)です。
そのツエーゲン金沢で、事業企画部次長兼ホームタウン推進室室長を務める灰田さちさんに、ツエーゲンの活動と2030年の姿をイマジンしてもらいました。

もともと金沢市のご出身の灰田さんは、高校生の時からJリーグで仕事がしたいと夢を見て、東京でいったん就職するも、大学院でスポーツマーケティングを勉強。その後、念願かなって「サンフレッチェ広島」で5年間働き、地元に帰ってこういう仕事がしたいと思うようになり、2018年の1月からツエーゲンに移ったそうです。

「私はスポーツ好きだと思われますが、実はそんなにスポーツを観るのは好きじゃないし、スポーツをするのも得意じゃないんです」と笑う灰田さんは、「ツエーゲンとSDGsってほんとに関係あるのって思われている方もいらっしゃるのでは?」と問いかけます。

 

Jリーグには3つの理念があり、その一つに「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」というのがあります。つまり、サッカーだけではなく、サッカーを通じて日本のスポーツ文化を発展させていこうという強い思いが、そこにこめられているのです。

一方、ツエーゲンにもクラブ理念があり、それは「挑戦を、このまちの伝統に。」です。
金沢には伝統という言葉がつくものが多い中、「挑戦する、チャレンジする姿勢を皆さんに示すことで、挑戦というものを石川県の新たな伝統の一つにしていきたい。そういう志を文字化したものがこのクラブ理念」だと言います。

これを実現していくために、「つなぐ」「楽しむ」「夢見る」「育てる」「つくる」の5つの価値で活動していこうとしているそうです。

 

Jリーグのクラブが行っている地域活動は年間2万回!

地域に愛されるクラブとなるために、ホームタウンの人々と交流するさまざまな活動を実施しています。それがホームタウン活動。

幼稚園の訪問サッカー教室「キッズキャラバン」や、ブラインドサッカーチーム「ツエーゲン金沢BFC」のサポート、精神疾患の患者の心身のリハビリを目的とするサッカー教室などをはじめ、昨年1年間でツエーゲン金沢が行ったホームタウン活動の回数は250回。

Jリーグの全56のクラブが、2019年度1年間でホームタウン活動は、なんと約2万回にも及んでいます。

しかし、これだけたくさんのホームタウン活動を行っているのに、地域の方にあまり認知されていない現実を踏まえ、2年前のJリーグ25周年の時に、ホームタウン活動と合わせて、これからは「シャレン」活動をやっていこうという方針を打ち出しました。

「シャレン」=社会連携活動の略で、これからはクラブと企業、行政、住民、学校など、地域の皆さんと手と手をとりあって、「地域の課題に対してそれを解決できる方法を考えましょう。そういった取り組みをやっていきましょう」という方向に流れが変わってきているそうです。今までは活動の数重視だったのが、質重視へと変化しています。

たとえば、「湘南ベルマーレ」では、中学2年生にスポンサー企業の体験授業を行い、「将来はこういう会社で働きたい。湘南って魅力のあるまちなんだな」ってことを感じてもらい、転出する人たちを将来的に減らしていく取り組みを行っているそうです。

2030年のツエーゲン金沢の姿を想像してみよう

灰田さん個人の思いも込めて、ツエーゲン金沢が今後やっていきたい、めざす姿を語っていただきました。

クラブの中でも、「2030年にどのような姿になりたいか?」という話をしているそうで、その一つ、ホームタウンの視点で言えば、「2030年までに、石川県民の誇り、シンボルのような存在になりたい」と考えているそうです。

灰田さんの頭の中には、そのようなスポーツチームの理想像があり、それは「広島カープ」なのだとか。

「サンフレッチェ広島」時代に広島カープの25年ぶりのリーグ優勝の熱狂ぶりを目の当たりにし、一昨年、カープがリーグ3連覇した時には、この年に広島で大雨の災害がありましたが、仮設住宅で暮らしている老夫婦が、ぼろぼろ泣きながら喜びあっている姿をテレビで観て、たかだか地域のスポーツチームの優勝でこんなに盛り上がるのが、まちのシンボル、誇りという存在なんだなと実感したそうです。これがまさしくツエーゲンが目指していきたい姿だと言います。

この姿になるためにも、シャレン活動は重要。こういった活動をしていくことによって、「ツエーゲン応援しようよ!」となってもらえるようになると言います。

「地域のみなさんと一緒に石川県、金沢を活力のあるまちにしていきたい」という灰田さん。「みなさんと共に石川県をより活力を感じられるまちにしていく、そのためにSDGsに合致するような活動だったり、シャレン活動であったり、そういったことをこれから展開していきたいと思っています」と締め括りました。

アイデア提供する高木超さんは、サッカー留学の経験あり

灰田さんのイマジンを受けて、そのヒントとなるアイデアを提供してくださるのが高木超(こすも)さん。 高木さんは慶應義塾大学や国連大学でSDGsの「策定プロセス」や「モニタリング指標」の研究をされている、SDGsの専門家であり、しかも実はブラジルへサッカー留学の経験もあるという経歴をお持ちの方。

おそらく日本でサッカーとSDGsの関係を語らせたら、高木さんを超える人はいないでしょう。

さて、まずはSDGsのことを、わかりやすい例を交えて解説していただきました。
その一つが、日本の内閣とスウェーデンの内閣の集合写真の比較でした。

日本は着ている服がみんな同じで女性が少ない……。

スウェーデンは女性が多く、着ている服はバラバラ……。

「どっちが正しいと言うのではなく、女性が少ないとか若い人が少ないとか、そう言う観点でチェックしていくのにSDGsを使ってもらえれば役に立つと思います。SDGsの視点から日常をいろいろ見ると、新しい発見があるかもしれません」

また、SDGsの重要な理論に、ゴールから翻っていま何をするかを考える「バックキャスティング」というのがあります。これを感覚的に理解するのはなかなか難しいのですが、高木さんはサッカーに例えてわかりやすく説明してくれました。それが以下の通り。

「サッカーが楽しくて続けていって、いつかはプロ選手になれればというのではなく、将来サッカーのプロ選手になりたいという目標を決め、そのためにいま何の練習をしなければいけないかを考えていく、それがバックキャスティングです」

SDGsには17ゴールがありますから、そこから逆算して、いま自分たちは何をやればいいのかを考えていくこと、それがSDGsのひとつの考え方。

SDGsはいずれも高い目標(ゴール)を設定していますが、この目標設定の仕方を「ムーンショット」と呼ぶそうで、アメリカのケネディー大統領の「月に行く」という目標設定のやり方に由来するそうです。

その結果、実際に10年後には月に行くことができました。SDGsも残り10年ですが、掲げられた高い目標も、いま何をしなければいけないかを考えていくことで、達成できると言えるのです。

Jリーグと絡めて、SDGsをどう使う?

SDGsの使い方のひとつに、「整理する」という考え方があります。

例えば「Y.S.C.C.横浜」というJ3のチームは、地域の生活環境が豊かでない地区にチームの栄養士を派遣して、住民と一緒に「栄養バランスのとれた食事を安い金額で作るにはどうしたらいいか」を考え、専門的な知識を使って貢献しています。

この活動はSDGsのゴールの2番「飢餓をゼロに」に貢献しています。でも、これはゴールで見ればすごく広く、なんでも紐づけられると思えてきます。

SDGsには169のターゲットと、その進捗を図る指標というのがあります。ターゲットと指標を見ると「栄養不足をなくそう」という考え方があり、それに貢献していることがわかります。

「SDGsで自分たちの取り組みを整理するときは、ゴールよりもターゲットを見てやってみてください。ターゲットはすごく具体的なので、自分たちの取り組みの意味とかを整理することができます」

「川崎フロンターレ」は、「算数ドリル」を市内の小学生に配っています。問題はフロンターレの年間の勝ち点を計算するとか、算数は嫌いでもサッカー好きなら思わず取り組んでみたくなるようなものです。SDGsのゴールでは4番「質の高い教育をみんなに」で、指標には「算数について、最低限の習熟度に達している子どもや若者の割合」が設定されており、ここにきちんと貢献していると整理できます。

イギリスの「フォレストグリーン・ローヴァーズFC」は世界で一番環境にやさしいクラブということで、国連からも認定されており、スタジアムにソーラーパネルをつけて、スタジアムの電気を全て太陽光発電で賄うという取り組みをしているそうです。このように海外のクラブもいろいろとSDGsに取り組んでいます。

英国では、タバコの吸い殻を回収するゴミ箱を、クイズの投票箱の形式にしたところ、ポイ捨てが減ったという事例もあるそうで、「ポイ捨てをやめましょう、ポイ捨てしたら罰金何万円!とかじゃなく、楽しんでこうやってSDGsに関われる機会を金沢のまちでもたくさん作って、そういう取り組みができるようなまちになればいいなと思います」

SDGsのゴールに「文化がない」という意見もあるそうです。「別に決まりはないので、金沢市民で18個目を作ったって構わない」と高木さんは述べます。

「例えば、『18.豊かなスポーツ文化の醸成』とか作り、金沢の文化を大事にしながら、SDGsを楽しく、うまいこと活用していただければと思います」

金沢らしさを生かせるSDGsのあり方を提案して、高木さんのアイデア提供は終了しました。

グループディスカッションで「スポーツとSDGs」の関係を深めてみる

ツエーゲン金沢のアカデミーのコーチ直伝ストレッチを灰田さんに教えていただき、体を動かす気持ち良さを味わったあとは、スポーツとSDGsを掛け合わせて金沢SDGsを推進していきたいと考えたときに、どんなプロジェクトをやったらいいだろうか? どんなプロジェクトをやったら金沢SDGsの達成につながっていくか? そのプロジェクトをやるにはどんな人とどんな人が協力するといいかなということを、会場の5つのテーブルごとで話し合って、発表していただきました。

それぞれのテーブルでどんな話をしたかということを簡単に共有しましょう。

<テーブル1>

スポーツをめちゃくちゃするっていう方がいない中で、まずは個人でスポーツを楽しもうということや、応援することでスポーツ自体を好きになろうというところまで話した。

<テーブル2>

金沢SDGsの5つの方向性の中の、3番目「子供がゆめを描けるまち」を考え、金沢にはプロスポーツチームがいろいろあるので、子供たちが見て、夢を描いて欲しい。各地域でいろいろな選手を呼んで、子供たちと交流会ができたらいい。

<テーブル3>

健常者ではなく障害を持たれている方がスタジアムに行くための手段や、スタジアムに障害者用トイレが少ないので、それをきっかけに改善されれば、障害者や老人が行きやすくなるのではないか。

<テーブル4>

地域で子供達をスポーツ選手に育てる。また、みんなで参加できるようなイベントで交流も深め、他県や他国の人とも触れ合えるカルチャーになり、それが住みやすいまちづくりにつながれば。

<テーブル5>

スポーツ用品に伝統工芸を取り入れる。また食品ロスの削減につなげて、給食にスポーツ選手とかが出向き、一緒に食べ切る、または栄養バランスを考えながらみんなで楽しく食べるということを体験させる。

 

スポーツって言っただけで、たくさんの切り口が出てきた今回のSDGsカフェ

文化とか教育とか環境問題とか貧困とか、ちょっと難しそうと構えてしまう人も、「スポーツ」が間に入ることで、途端に興味を持ってくれます。スポーツはそれだけ人の心を動かし、また波及効果もすこぶる大きくなります。これをSDGsのゴールへつなげるために使わない手はないなということを、参加した多くの人か感じたのではないでしょうか。

そしてまた、地域に溶け込むためにいろいろ尽力しているツエーゲン金沢の姿を知り、まずは試合を観に行きたいと思った人も多かったでしょう。

「皆さんの想いとか、力とか、できることとかを持ち寄って、2030年の金沢はみんながハピネスを感じられるようなまちになるように、一歩一歩ゴールへ向かって進んで行けたらいいなと思います」と笠間さんが述べて、10回目のSDGsカフェは終了しました。

IMAGINE KANAZAWA 2030 「金沢SDGs推進のための民間資源活用に関する勉強会」開催

社会課題の解決や新しいプロジェクトを進めていくうえでは、個人や組織の技術や努力(「ヒト」)のほか、解決策やサービスを提供するツール(「モノ」)、そして人々や組織の活動を支えるお金(「カネ」)といったいわゆる経営資源を下支えしていくことが重要です。加えて、モノやサービスづくりを支える自然資源、知識や情報、ネットワークや信頼関係といった社会関係資本、そして個人や組織のスキルアップのための教育も欠かせない要素となります。パートナーシップを組み、補いあうことで、コレクティブインパクトが生まれ、より良い社会が実現されていきます。SDGsの達成についても同じです。

今回、IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議は、金沢でのSDGsの推進に向けて、とくに「民間資源」の活用について理解を深めるために、8月19日に「金沢SDGs推進のための民間資源活用に関する勉強会」を開催しました。IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議は、SDGsミーティングやIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズといったプラットフォームを通して、未来の金沢を実現するための新しいプロジェクトや団体や個人間のつながりが生まれるよう取り組んできました。今回の勉強会を通して、民間のノウハウや資金調達と循環の仕組みといった民間資源を活用して、持続可能な金沢の実現を支える仕組みについて理解を深めていきます。

第1回目となる勉強会では、南砺市エコビレッジ推進課の担当者をお招きして、「公益財団法人南砺幸せ未来基金」の設立のいきさつや基金の取り組みについてご説明いただき、その後、出席者全体で質疑応答や議論を行いました。「南砺幸せ未来基金」は南砺市内を活動範囲として地域に寄りそう市民設立の「コミュニティ財団」です。おもに寄付金や休眠預金をもとでに資金調達を行い、7つの地域課題のテーマにそった事業にたいして資金的な援助を行なっています。地域に貢献したい有志市民とその寄付金をもとに設立され、行政の支援で運営が行われてきましたが、2023年度には行政の手を離れ、自立的な運営が行われることを目指しています。現在、寄付金額の増額など資金を集める仕組みを強化するしかけづくり、PRやSNSを通した地名度向上が課題となっています。

今回の勉強会には石川県全域から各金融機関が参加され、石川県における中間支援組織やSDGs推進を支援する資金的支援の事例が共有されたほか、人材育成などの非資金的支援の進め方に関する質疑応答も活発に行われました。資金による支援を行う団体とは別に、ネットワークづくりやスキルアップといった非資金的な支援を行う団体が別の団体として存在しているケースや、その場合に、組織間の連携をどのように取って、社会課題に対してより効果的に支援していくのか、の指摘がありました。

また、社会課題に取り組む人材のスキルアップも議論になりました。参加された金融機関の中では自社で丁寧に育成するケースもあれば、外部委託するケース、また外部と一緒に育成していくケースも紹介されました。「民間資源」を多面的に活用したSDGsの推進のために、各参加団体のご意見やご経験が共有され、貴重な勉強会となりました。

今後もこの勉強会を通じて、民間資源の活用、育成について学んでいきます。

 

IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ 交流会#4(2021年8月18日)の開催

金沢ミライシナリオをパートナーシップで実践するためのプラットフォームであるIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ。8月18日に合計第4回目、2021年度では第2回目となるパートナーズ交流会がオンラインで開催されました。今回も企業や各種団体、また個人の方と多くの方々にお集まりいただきました。

パートナーズ交流会では、毎回「パートナーズのみなさんと協働で実行したいプロジェクト」がある方がピッチプレゼンし、それを起点に参加者同士でミライシナリオの実現に向けてのディスカッションを行います。

今回は、パソコンリサイクル事業のDREAM WORKSさんと、LGBTQ+の支援団体である金沢レインボープライドの2団体がプレゼンしました。DREAM WORKSさんは、リサイクルパソコンを厳しい境遇にある子供達へ提供しその運動が福井県の企業からも賛同され広がっていることなどを報告、金沢でもその輪を広げてIT教育などを通じ子供達の可能性を広げること提案してくれました。またパソコン廃棄には通常費用がかかりますが、DREAM WORKSさんではWindows7以降のパソコンであれば、回収からデータの消去まで無料で行なっているそうです(証明書発行は1件3,300円)。パソコンの廃棄費用を節約でき、かつ子供達への機会提供にも貢献できることが話題となりました。

金沢レインボープライドからは、北陸初となるレインボーパレードをはじめ、企業勉強会、教育フォーラム、映画上映会などからなる金沢プライドウィーク(9月23ー26日)の開催に向けての協力と、性的マイノリティーへの理解を促進するにはどうしたらよいかについて、当事者の参加も得て対話が行われました。またパレード実現に向けてのクラウドファンディングへの協力も呼びかけられました。

上記2つに加えて、国連大学OUIK永井事務局長とSDGs推進について自由なテーマで相談し議論するグループも設置。こちらでは、花王グループカスタマーマーケティング株式会社さんからSDGsやESG推進のための専門部署の立ち上げに伴い、金沢でできることは?との投げかけがありました。早速、石川シングルマザーの会さんから、普段は自分に時間とお金をかけることの少ないシングルマザーの方たちへ、メークやヘアケア講座などの開催を通じてつながれるのでは、と提案がありました。

各グループディスカッションでは、参加者みなさんの個人や組織としての知識や経験、アイディアが持ち寄られ、どうしたらプロジェクトを推進出来るか、関連する課題を解決出来るか、話し合いが途絶えませんでした。発表者と参加者のどちらにとっても新しい気づきや学びが生まれ、新しいつながりが生まれるきっかけになったのではないかと思います。

IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズでは、交流会を毎月開催することを予定しています。パートナー会員間の交流を通して、会員同士の協働プロジェクトがどんどんと生まれ育ち、地域でコレクティブインパクトを推し進めていける場づくりを進めていきたいと思っています。

IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズでは会員を随時募集しているほか、交流会でピッチプレゼンしたい企業、団体、個人の方も募集しています。ぜひ皆様のミライを作るアイデアを聞かせてください。

【開催報告】SDGsカフェ#9 「2030年の金沢の交通を考える」

回を重ねるごとに熱気を帯びてきた感があるSDGsカフェ。9回目となる今回は、「2030年の金沢の交通はどうなっていて欲しいか?」ということを、人々の幸せや魅力のあるまちづくりとリンクさせて、市民目線から議論をしました。

IMAGINEしてくださったのは、金沢レンタサイクル「まちのり」の仕掛け人でその事務局の片岸将広さん(株式会社日本海コンサルタント)。片岸さんは自転車だけでなく、国内外の交通全般の事例に精通されています。

そしてアイデア提供をいただいたのは「トランジション・マネジメント(transition management)」の第一人者で、オランダから来日したDerk Loorbachさん(エラスムス大学教授・オランダトランジション研究所所長)。通訳・コーディネーターとして松浦 正浩さん(明治大学専門職大学院ガバナンス研究科教授)にご協力いただきました。

トランジションとは?

「推移、変遷、移行、過渡期」という意味で、持続可能な未来社会を目指すのであれば、ステークホルダー間の草の根の合意形成ではなく、構造的転換までをも見据えた問題解決の方法論を検討する必要があるとする考え方です。

 

まずは国連大学OUIKの永井事務局長より、SDGsとこのカフェの説明と、金沢SDGsについて紹介がありました。

「オーストラリアの大火災も、地球の気候変動が原因。私たちの活動の一番下にあるのが自然資本なのです。そして大切なことは、社会と経済、環境のことを一緒に考えながら、一つ一つのプロジェクトやビジネス、取り組みを進めること。そして、もう一つ大事なことは、今の私たちと次の世代の人たちの公平性を担保することです」(永井)

新たな「まちのり」がまもなくスタート

片岸将広さんが仕掛けた「まちのり」は、今年の1月13日まで8年間運用し、総利用回数は1,239,000回、総利用者数は425,000人にものぼりました。そして現在はシステムの更新作業中で、サイクルポートの数、台数を約3倍の規模に拡大し、3月1日には「第2章」がスタートする予定。「真の公共交通となれるよう、いま頑張って進めています」と片岸さん。

 

片岸さんは、ご自分のことを「事務局体質」とおっしゃるように、まちのり以外にも、金沢の公共交通機関やまちづくりに関する複数の団体の事務局に関わり、その経験からの提案もしていただきました。

世界的な潮流として、「車から人へ」、「空間から場所へ(人の活動が加わることで空間は場所になる)」と、人が中心となる、つまり、SDGsそのものの動きになってきていると言います。

そして、交通のことを考える前に、「町はどうするか?」。そのビジョンを共有することが非常に重要だと述べました。

ところで、「なぜ、モビリティは必要なのか?

そもそも「なぜ我々にモビリティが必要なのか?」ですが、まずは土地利用があって活動が起こり、活動に対して移動が発生します。その移動のための手段がモビリティとなります。つまり、交通が目的ではなく、人々の活動を満たすために交通を考える必要があるということです。

最近では、複数の公共交通やそれ以外の移動手段がある中で、これらを最適に組み合わせて検索・予約・決済などを一括で行える「マース/MaaS(Mobility as a Service)」というサービスが、注目されるようになりました。

3年前に、片岸さんはスペインのバルセロナを旅行した時に、現地のさまざまな交通事業者に話を聞き、調査をしたそうです。そこで得られた考え方は金沢にも非常にマッチすると言い、その時の話をしていただきました。

バイクシェアリングを運営している会社でも話を聞いたそうですが、まちのりとは比較にならない規模で、市民が利用するモビリティ(公共交通)として、きちんと位置付けられているそうです。

そして、ヒアリングしたそれぞれの交通事業者に、「なぜモビリティが必要か?」という質問をぶつけてみたそうですが、その返ってきた答えは、いずれも「Happiness/人々の幸せのため」だったとか。

「人々の活動を支え、幸せな都市生活を演出するということがわれわれの使命。そのためにモビリティサービスを提供します」と言い切られ、「日本では違うのか?」と不思議がられたそうです。

「日本で交通を考える際、採算が取れないなどとネガティブな考えが先行しがち」と言う片岸さん。バルセロナでは皆が“ハピネス”をキーワードに上げてきたことに、衝撃を覚えたそうです

人々のハピネスのためにモビリティは必要

そんな衝撃を受けつつも、片岸さんはしっかりハピネスを支える3つのポイントを学んできました。それが以下です。

①Accessibility:多様な人々によるそれぞれの活動へのアクセス性の向上

②Multi-modal:人々のアクセシビリティ(利用しやすさ)に配慮した多様な交通モードの連携

③Integration:土地利用、福祉、環境、観光等の各種政策との連動を考慮した交通政策の展開(交通事業者だけでなくいろんな都市政策を統合的にやらないと意味がない)

バルセロナではバス路線網を見直し、縦、横、斜めのメインルートに集約・再編。非常にシンプルになり、さらにわかりやすい乗り換え案内によって「乗り換えの抵抗の低減」も図られているそうです。また、自転車交通のアクセシビリティも計画に位置付けられ、人口の64%が3分以内にシェアサイクルのステーションにアクセスできるそうです。

バス、トラム、自転車などをきちんと用意していき、思わず乗ってみたくなる、そんなかっこいい連結バスも走らせています。もちろん、それぞれの交通の連携もちゃんと取れています。

そして、③のように、交通安全、健康、環境、福祉、科学技術といった分野横断的な交通政策の方向性が示されています。

“幸せ(ハピネス)とは、さまざまな活動の先に得られる感情 → 活動するためには何らかの移動が生じる → 人々の活動を支え、幸せへとアクセスするための手段”=つまり、それがモビリティではないかと、片岸さんは考えます。

では、ハピネスの観点から金沢のまちや交通はどうでしょうか?

「これからの交通やまちづくりについて、すでにいい考え方がいろいろ提案されているにもかかわらず、なかなか進んでいません。それはなぜでしょうか? 市民、企業、商業者、交通事業者、警察、自治体、いろんなステークホルダーの中で、ハピネスのような“共通のビジョン”が共有できていないからだと思います」(片岸さん)

しかし、金沢SDGsの5つの方向性にある、環境の部分、社会の部分に基づいて、「これからはフラットな議論をしていける体制になるのでは」と期待を寄せます。

2030年の金沢の交通をイマジンする

AI、自動運転、MaaSアプリなど、テクノロジーは理念を実現する手段で、これを作ることが目的となってしまっている風潮を片岸さんはおかしいと思っていて、「人中心の都市・交通の実現に向けてテクノロジーをフル活用」ではないかと言います。

金沢の都市と交通2030について、「個人的な妄想」と断りつつ、次の5つを提言しました。

  • 金沢のまちなかは「スローモビリティ優先」
  • 基幹路線には「超カッコいい車両」を導入
  • 地域交通は「デマンド」&「シェア」でカバー(動きたいときに動ける)
  • まちなか周辺に複数の「モビリティセンター」
  • MaaSの概念に基づく「使いやすい仕組み」

まずは自分がまちを楽しむこと。そして、「大切にしたい金沢の魅力やアクティビティとは何か? 金沢ならではの幸せポイントは?」を、それぞれに考えることが大事だと言います。

その上で、ハピネスを実現するために、それを支えるモビリティのあり方を考え、トランジションを起こして、市民も観光客も移動すること自体を楽しめるような、「人中心の世界都市・金沢」へと変遷している2030年をイマジンしてくださいました。

その研究の第一人者が語るトランジションの起こし方

では、これから未来のハピネスのためにモビリティを再構築していくのは、どうやって変えていけばいいのか? 都市の持続可能性を高めるため、研究するだけでなく、実践にも関わっているというDerk Loorbachさんからアイデアの提供をいただきました。

 

Derkさんの活動拠点・オランダのロッテルダムと、金沢市の姉妹都市・ベルギーのゲントの事例を交えながら、都市のモビリティのトランジションと、そのガバナンス(統治)について話しが進みました。

気候変動と生物多様性に関して問題があるということは、世界的に認識されていますが、実際には何の行動も起こっていないという問題があります。

「大きな問題があり、解決策があることもわかっているのですが、実際にできていません。そこの大きな変革をどうやって動かすか? トランジションの研究では、そこに主眼が置かれます」(Derkさん)

ロッテルダムの歴史を紐解いてみると、さまざまな危機をきっかけにして、大きな変革を経験してきたそうです。

トランジションが起きたことが本当に成功なのかどうか? 自転車の街だったのが自動車の街になってしまったなどと、批判的に見る必要があると言います。

トランジションというのは持続可能な社会を考えることから始まります。

トランジションの研究というのは、いま何があったのかを考えるのではなく、むしろ「なぜ変わらないのか? そしてどういう風に変わっていけるのか?」を考えることだそうです。

「こういう風なことを言うと、理想主義者とかドリーマーとか言われ、できないとか、お金がかかるとか、否定的に捉えられることがあります。そう言う人たちは、未来が信じられないというところがあるのかも知れません」

トランジション・マネジメント、トランジション・ガバナンスと言われるものは、変革のムーブメントを起こしていくネットワークを作っていくことですが、それだけではなく、「そうした変化ができると言うことを信じる人たちを増やす計画」というのもあると言います。

変化を目に見せることで広がっていく

例えば金沢であれば、自動車社会みたいなものがあるとしましょう。渋滞が起きたから道路を拡幅し、拡幅したらもっと渋滞が起きる……。駐車場が足りないから駐車場を増やし、また車が増えて足りなくなる……。そういう堂々めぐりが起きてしまいます。これが20年、30年続くと行き詰まり、最終的には不安定となり、崩壊する方向へ向かうのだそうです。

いつの世の中にも、こういった問題の解決策を考えて活動する人たちが少なからずいます。いろんな実験をしてみて、他のやり方も試してみる……。最初はクレイジーな人たちだって言われるかも知れませんが、だんだん支持を得られるようになり、仲間が増えていく傾向が出てくるそうです。

「それがどんどん増えていくと、形が目に見えるようになり、たとえば金沢なら自転車通行レーンがかなり増えてきましたし、ほかにもそういったような、将来の当たり前みたいな物が目に見え始めてきます」

最初は、役所の中の官僚の一人だったり、大企業の中の社員一人だったりするかもしれませんが、そういう人たちがうまく仲間を作って中心的な存在になることで、トランジションが始まると言います。

「どういう未来を求めるか? そのためにいま何ができるのか?」を考えて、10カ年計画とかを作るのではなく、いま何をするのかを考えることがポイント。誰でもができること、例えば明日から公共交通に乗るとか、自転車に乗るとか、屋根の上に太陽光発電をつけるとか、1個1個は小さな活動ですが、そういったことが目に見えるようになることで、変化が起きるのです。

「“トランジションの場”という考え方があり、それは何かというと、変化をもたらしうる個人に集まってもらって、どういうトランジションがありえるかを考えます。そこで個人だけで動くのではなくて、また自分の組織に戻り、組織として何か動く機会を作ってもらうということも狙います」

未来の姿から逆算して現在できることを考える(バックキャスティングという)こと。これは針の治療みたいなもので、ちょっと突いて考え方を変えさせることで、全体的な大いなる変化を巻き起こすそうです。

通行止めにした通りが公園へと変わっていく

ゲントではモビリティの分野で、2人の都市計画課の職員が始めた「リビングストリート」という取り組みがあります。夏の間の2ヶ月間、通りを通行止めにして、そこを公園のような空間として活用してもらう活動です。

実施するにあたり、関係部署を説得するのに2年を要し、最初の年はほとんど車が通らない2カ所で実施したそうです。2〜3年経つと実施する通りの本数も増えた一方で、迂回する車が他の通りに流れていくことから、今度はその苦情が出るようになったとか。それでも、その良さが伝わってベルギーの他の都市でも行われるようになり、今ではヨーロッパ全体に広がるようになりました。

ヨーロッパではモビリティの概念にも大きな変化が起こり、インフラとか交通手段から、人とかハピネスといったところへと、大きな変化がみられるそうです。

ロッテルダムでもモビリティのトランジションを行い、そこで出てきたことは、一部の人たちが排除されているという問題でした。たとえば貧困層の人はお金がなくて通勤できない、移動できない、自転車に乗れないなど。このことは社会福祉の問題として捉えられて、無償で自転車を提供することになりました。

トランジションを行ったことで、今までは急激な変化を好まなかった役人(政策担当者)の考え方も変わり、どんどん実験をやってみようという方向にマインドセットが変わっているそうです。今までは「問題が起こったらそれを解決する」という発想でしたが、「わざと問題を起こして解決策を施していく」、そのような考え方にシフトしていると言います。

例えば、電動自転車とかをどんどん普及させることによって、みんなが自転車に乗ると、自転車渋滞が起こるようになります。するとその解決を政治家が官僚に求めるようになり、問題解決へと動き出せる、そのようなことです。

自転車道を拡幅したり、自転車用信号にも工夫があって、雨の日とか自転車渋滞が起きていることを感知できるセンサーがついていて、そういう時は自転車側の青信号を長くするという制御をしたりします。そのため、雨の日でも自転車に乗る気になると言います。

一方で、まちなかの駐車料金を高くして、そのかわり郊外の料金を安くすることで、まちなかへの車の乗り入れを制御しているそうです。

交通部門のゼロエミッションに向けて

パリ協定の「気温上昇を1.5度までに抑える」。それを本気でやるなら、2030年までに交通部門からゼロエミッションにしていかなければければいけません。そのために動いてくれそうな人々を活性化させ、目標を共有することをしているそうです。まちのメインストリートを全部公園に変えてしまおうなどと、いろいろな人たちが関わって“イマジン”も行ったそうです。

トランジションというのは、既にそういう活動を始めている人を巻き込んでいくということがポイントだと言い、そして個別のアクションを実験としてやるなかで、役所の中の計画部局のようなセクションが、そういう活動をきっちりサポートすることが大事だと強調します。サポートすることで、自身もインスピレーションを受け、また計画に反映させていける、そのような循環も必要ということです。

「誰か一人を説得していくというのではなく、このSDGsカフェがそうなのかもしれませんが、いろいろな人たちを集めてやってみるというのが大事。よく失敗するのは、今日、明日に何かこれをやらないといけないとプレッシャーに感じてしまうことで、トランジションは長期的に起こるものです。計画を作っても信念がなければ実現できません。少なくとも何か変える方向にやってみるというところがポイントです」と述べ、話を締め括りました。

質問タイムでは中身の濃い質問がたくさん出ました

みなさん、いろいろな問題を感じているようで、たくさんの質問が出ました。ここでは、その一部を紹介しましょう。
<質問者A>

金沢の人たちは公共交通のことをほとんど考えていません。こういう人たちの意識改革をするためには、どのようなことをすればいいのか?

<Derkさん>

関心がなかったり、なかには迷惑だと思ったりする人もいるかもしれないので、小さく始めるというところがポイント。すでに活動している人たちと繋がっていって、目に見える形にしていくところから始めるというのも大事です。

<片岸さん>

まちを楽しむことが目的になければ、交通のことだけをいくら言ってもダメで、「まちをこうしましょう」というトランジションに切り替えていかないと、交通行動は変わらないという気がしています。

<質問者B>

オランダは雨がすごく降るけど自転車を使うと聞く。一方、金沢の人は雨が降るから、雪が降るから自転車は使えないと言う。オランダではどうやって人々に雨の中でも自転車を使うよう促すことができたのか?

<Derkさん>

自転車のインフラが整備されたオランダでは、車に乗るよりも自転車に乗ったほうが楽。金沢の方は、車に乗ったほうが楽になっているのではないでしょうか。
雨だろうが雪だろうがみんなで自転車に乗るツアーだとかイベントだとかをやってみて、見える形にすることで、それも普通なんだと思わせていく、それが大事です。

<質問者C>

トランジションの実験の結果は、経済にどういう影響を与えたか?

<Derkさん>

路上駐車のスポットを公園とかにした事例を例にして話すと、事前に「やりたいですか?」と目の前のお店や住人に確認を取りましたが、最初はお客さんが来られなくなるからやめてほしいという声が多かったのに、実際にやってみると、魅力的な空間を作った方が逆にお客さんが増えるという結果が出て、だんだんそれが広まっていきました。ロッテルダムでは4000カ所の駐車スペースが公園などに変わりました。
ゼロエミッションにより、いろいろな社会的な便益があって、健康が良くなるとか、コストが削減になるという試算をしました。これによって、どこのセクターが一番被害をくらうかというと、実は政府で、税収が減るというところが一番インパクトが大きいです。

<質問者D>

活動していく中で、ツーリズムがより活性化した事例があれば教えてほしい。

<Derkさん>

バルセロナもロッテルダムもそうで、歩きやすいまち、住みやすいまちの方が観光上もメリットがあります。ポイントとしてあるのは、すぐに車をシャットダウンするのではなく、いろいろな種類のモビリティ(移動手段)というものを提供することです。例えば電気自動車だったら入っていいよとか、そういうようにすればいいのです。いろいろな人にとって不便がなく移動でき、環境にいい手段を提供することから見直せばいいのです。

<片岸さん>

スイスのツェルマットのように電気自動車しか入れない都市に金沢をしていく、それぐらいのまちに金沢がなったらすごいのではないでしょうか。どっちかというとそっちのマインドに切り替えていくのがいいのでは。

 

<片岸さんからDerkさんへの質問も出ました>

一人のアイデアをどういうかたちで政策として合意形成して、実現していったのでしょうか。その辺の工夫があればぜひ教えていただきたいです。

<Derkさん>

「みんなの合意ですよ」と計画を作れば、それがいつか実行されだろうというのは、単なる夢というか幻であって、本当は毎日の人々の行動がどうなっているかが問題。そこを少しずつ未来に向けてポジティブに、毎日続けて変えていくことで、どんどん大きくなって行きます。
将来がこうあるべきだという信念があれば、信念に同調してくれる個人にどんどん話しかけて繋がっていくべきであって、ありとあらゆるステークホルダーから同意を取っていく必要はありません。
以上、今回も60名を超えるたくさんの方に集まっていただきました。交通という身近なテーマであり、2030年の金沢のまちのあり方について想像しやすく、また問題も見えていたのかもしれません。それは熱心な質問が続いたことからも窺い知れました。

Derkさんが言った「まずは小さなことから始めていく」、そのスタートがこのカフェになるかもしれません。いや、きっとなると思います。

金沢SDGs IMAGINE KANAZAWA 2030の公式サイトができました。今後のSDGsカフェの予定なども掲載されますので、ぜひチェックしてください。
https://kanazawa-sdgs.jp

【開催報告】北陸SDGsステークホルダーミーティング2019

12/17日、金沢歌劇座にて北陸SDGsステークホルダーミーティング2019を金沢工業大学と共同で開催いたしました。 このミーティングは2019年9月6日、国連大学本部にて開催された「『SDGs実施指針』改定に向けたステークホルダー会議」(主催:SDGs推進円卓会議有志、国連大学サステイナビリティ高等研究所)の地方版として開催され、北陸各地から企業、地方自治体、市民団体など様々な立場のSDGsに関わる人々が参加し、北陸のありたい未来を議論し、次世代に向けてSDGsで描く未来を発表しました。

まず初めに主催挨拶として国連大学サステイナビリティ高等研究所上級客員教授竹本和彦より挨拶があり、SDGsの実施指針が本年末に改訂されるタイミングでこのような会議が地方で開催されることの重要性について語られました。

次に内閣府地方創生推進事務局参事官の遠藤健太郎氏から来賓の挨拶を頂戴頂くと共に国の政策、地方創生とSDGsについてご説明頂きました。

さらに金沢工業大学SDGs推進センター長の平本督太郎准教授からは情報共有があり、この会議の狙いや分科会の進め方についての説明がありました。

今回のミーティングでは以下、5つの分科会に分かれ、それぞれのグループ内で2030年の北陸の姿について具体案をシナリオ形式で制作しました。

分科会① 誰もが暮らしやすいまちとは

〜どうして東京にヒト、カネ、モノ、情報が集まる?この流れを変えるにはSDGsの視点をどのように取り入れ地域を元気にしていくか?

ファシリテーター:三島由樹(㈱フォルク代表取締役 / ランドスケープ・デザイナー )北川達也(金沢工業大学情報フロンティア学部 経営情報学科)

分科会② イノベーション:地域での創造と、世界への発信 〜私たちは地方から何を創造して、何を発信し、世界の人と共感を得ていくのか? SDGsはその共通言語となるのか、テクノロジーとどう共存していくのか?

ファシリテーター:大沼洋美(㈱ヒロ代表)福島健一郎((一社)コード・フォー・カナザワ代表理事、アイパブリッシング㈱代表取締役)

分科会③ 教育:人生100年時代のキャリアと学びとは

〜人生100年時代のキャリアをどのように楽しみながら築きあげていくのか?

ファシリテーター:宮谷直樹(Start SDGs運営責任者)丸山祥子(ファミリービジネス専門 ファシリテーター)

分科会④ パートナーシップ:みんなの力を地域で結集するしくみ

~SDGs達成のために地域で様々な主体がセクターや組織を超えて共創するためには?

ファシリテーター:谷内博文(金沢市市民活動サポートセンター)塚本直之(コマニー㈱)

分科会⑤ 多様性:多様な人々が意思決定に参加できる社会とは

~多様な人々が意思決定に参加できる社会ができると私たちの生活は今とどう変わっていくのか?

ファシリテーター:北村健二(能登SDGsラボ 社会部門コーディネーター)渡邉さやか((一社)re:terra代表)

分科会では始めにNRI未来年表 2020-2100や総務省「未来をつかむTECH戦略」などの資料に目を通し、未来像を抽出しながら2045年の働き方とライフスタイルについてありたい姿を描きました。更に今回のイベントではペルソナ(人格)を設定し、その人が生きる人生のストーリーやターニングポイントを具体的な内容で次世代へのシナリオを参加者が制作しました。

午後の分科会の後にはそれらのシナリオを学校帰りに参加してくれた学生や生徒の皆さんに報告し、評価してもらいました。テクノロジーの進歩で可能になるシステムや家族の在り方の変化などたくさんのアイデアが共有されました。

参加者の皆様には最後まで真剣に取り組んで頂きありがとうございました。また、最後の共有セッションに参加して頂いた学生の皆様にも感謝申し上げます。

IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ 交流会#3(2021年7月13日)の開催

金沢ミライシナリオをパートナーシップで実践するためのプラットフォームであるIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ。始動から早1年が経過し、約140の企業、団体、個人の方にご登録いただく大きなプラットフォームに成長しています。パートナー会員間の交流が生まれる場、パートナーズ交流会を昨年度は合計2回しか開催できませんでしたが、今年度は毎月開催することで、会員同士の協働プロジェクトがどんどんと生まれ育っていくことを目指しています。

そのパートナーズ交流会の第3回目(2021年度第1回目)の交流会が7月13日に開催され、多くの企業、団体、個人の方、約50人にお集まりいただきました。今年度は「会員のみなさんと協働で実行したいプロジェクト」や「会員のみなさんと一緒に考えたいテーマ」がある方にピッチプレゼンしていただき、それを話題に参加者同士でディスカッションを行う、というものを予定しています。今回は合計5つの企業、団体からそれぞれの取り組みついてご紹介いただき、それに基づいて5つのグループに別れて話し合いを行う形で進行しました。

今回、ピッチプレゼンされたのは、以下の5つの企業、団体様です。

1)野村證券株式会社「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」
2)kanazaWAZA研究所 「サスティナアート プロジェクト 放置竹林編」
3)一般社団法人Code for Kanazawa 「地域課題解決コンテストへのご協力のお願い」
4)石川中央魚市株式会社 石川の朝とれもんプロジェクト事務局 「サステナブルシーフードの流通促進」
5)株式会社ロータスコンセプト 「大⻨ストローを広く知って頂く体験型プロモーション」

野村證券株式会社さんからは、「共感」と「応援」を軸としたESG投資の考え方や金沢におけるサステナビリティ・トランスフォーメーションのためのエコシステムの考え方がご紹介されました。また、ESGの文脈で高校生向けの投資教育にも力を入れていくそうです。kanazaWAZA研究所さんからは金沢市でのアートを活用した放置竹林問題解決への取り組みとしてご紹介いただきました。竹の伐採を通した竹林整備、竹材アートの制作、そして使用後の竹を再利用した土壌改良までの一連の循環モデル型のアートプロジェクトとして企画しています。重要企業、行政、市民、教育現場といった多様な関係者を交えた協働モデルのもとにプロジェクトを進めているそうです。

一般社団法人Code for KanazawaさんはITやデザインを活用して地域課題を解決しようとする団体です。同団体が運営するICTを活用して社会課題の解決を促進する事業である「地域課題解決コンテスト」についてご紹介がありました。石川中央魚市株式会社 石川の朝とれもんプロジェクト事務局さんからは同プロジェクトが取り組んでいるエコラベルについてご説明いただきました。エコラベルには、MEL認証やMSC認証、またASC認証といった多様な制度が存在しています。それぞれ、漁獲方法や養殖方法の持続可能性や環境負荷軽減について評価する内容になっていて、認証された商品の普及やイベント開発を進めていく予定だそうです。

最後に、株式会社ロータスコンセプトさんからは同社が製造・販売する大麦ストローについてご紹介いただきました。同社では大麦ストローを普及することで、プラスチックストローの廃棄や生産があたえる環境問題に取り組んでいます。石川県小松市の大麦を使っていて、専修大学や金沢市の「彩の庭ホテル」などで取り入れられています。大学や企業の食堂での普及を進めていきたいそうです。

各社、各団体から発表が終わったあと、グループに別れてディスカッションが行われました。各プロジェクトやテーマについて、企画提案された企業、団体のモチベーションや熱い想いとともに、参加者のみなさんの積極的な質問や提案が飛び交い、協働で出来る何かが生まれる有意義なディスカッションの機会になったのではないかと思います。今後もパートナーズ交流会の場が、企画提案者や参加者のみなさんがつながり、協働して地域でコレクティブインパクトを起こしていけるきっかけとなる場を提供していきたいと思います。

IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズでは会員を随時募集しているほか、交流会でピッチプレゼンしたい企業、団体、個人の方、また交流会運営に関わってくださるメンバーも募集しています。奮ってご応募ください。

【開催報告】SDGsカフェ#8 「つながり、助け合うのに必要なことは?~パートナーシップの新しい形を考える~」

「小春日和の日曜の朝に、爽やかにパートナーシップを語り合いましょう!」と、国連大学OUIKの永井事務局長の挨拶で始まったSDGsカフェの第8回。今回のテーマは、SDGsのゴール17に据えられたパートナーシップです。

「パートナーシップって、ゴールというより、アプローチでは?」と思われるかもしれませんが、SDGsのゴールはいずれもものすごく幅広く、誰か一人の力で解決できるものではありません。
そこで必要となるのがパートナーシップであり、「それだけ重要だからこそ、17番目のゴールに位置づけられている」(永井)となります。

いろいろな人を招いて、2030年の金沢をIMAGINE(想像)してもらうこのSDGsカフェ。
今回は、前代未聞のアプローチで「金沢SDGs行動計画」を策定している金沢市企画調整課の笠間彩さんがIMAGINEします。
そして、『ソーシャルプロジェクトを成功に導く12ステップ コレクティブな協働なら解決できる! SDGs時代の複雑な社会問題』(みくに出版刊)の著者で、株式会社エンパブリック代表取締役の広石拓司さんから、いろいろアイデアをいただきながら、2030年の金沢について、会場の皆さんと一緒に考えてみました。

金沢SDGsを動かしていく主体は市民であるということ

金沢市と金沢青年会議所(JC金沢)、国連大学OUIKとが、2019年3月にIMAGINE KANAZAWA 2030を立ち上げ、現在、来年からの行動計画を市民と一緒に、まさしくパートナーシップで考えるプロセスが進行しています。
これは、金沢市ではほとんど前例のない方法であり、それを行政が行うのは難しい中で、いろいろ調整し、骨折りしている笠間さんから、パートナーシップで創る2030年の金沢を想像してもらいました。
笠間さんは大学生の時に、地域の皆さんと力を合わせてまちづくりをしたいと思いはじめ、市役所に入り、幸いにもそんな想いを実行するために力を蓄えられる部署を渡り歩いて来たそうです。

ここでまず、金沢SDGsの概要について、おさらいをしておきます。
市とJ C金沢、国連大学OUIKの3者によって、金沢SDGsの5つの方向性を導き出しています。

1. 自然、歴史、文化に立脚したまちづくりをすすめる
2. 環境への負荷を少なくし資源循環型の社会をつくる
3. 次代を担う子供たちの可能性を引き出す環境をつくる
4. 誰もが生涯にわたって学び活躍できる社会風土をつくる
5. 文化や産業に革新的イノベーションが起きる仕組みをつくる

これらをより具体化して、皆さんが実際に取り組んでいくために、「どんなことをやったらいいか?」「具体的にどんな行動をとったらいいか?」ということ(行動計画)を示さなくてはなりません。それは3者だけでなく、40人近くのステークホルダーの方に集まってもらい、「SDGsミーティング」という形で、4回にわたって練られてきました。

並行して、教育、シビックテック、気候変動危機、文化のまちづくりといったことをテーマに、自由な意見交換の場をとなる「SDGsカフェ」を実施。こちらは、今回で8回目となりました。

「フォーラムなどで、“教育”とか“環境”をテーマにすると、今までは、“教育に興味がある人”、“環境に興味がある人”だけが集まることがほとんどでした。しかし、“SDGs”とか“金沢”というワードをつけると、違う分野の人も集まってくださり、そこで『化学反応が起こる』ということをたくさん目の当たりにしています。参加者同士が自然に繋がりはじめ、横のつながりができ、私たちが仕掛けるもの以外に、新しい仕掛けを参加者が作ってくれるようになったんです」(笠間さん)

具体的な行動計画を立てるところから市民に参加してもらい、自分たちが作った目標、自分たちが作った行動計画、さらにはその行動がちゃんとできているかのチェックまで、すべてを自分事として考えることができる、「“金沢SDGsは自分たちのもの”と思えるプロセスをとっていきたい」と強調します。

金沢SDGsの市役所の担当として、笠間さんが学んだり悩んだりしていること

市役所が参画している事で信用されることもあり、また、とりあえずやってみたり、手当たり次第に伝えてみたりすることで、道が開きつつある手応えを感じる一方で、SDGsに対するアレルギー反応も感じているそうです。
SDGsというのが、「みなさんをどこか一つの方向へ持っていこうとするもの」と思われたり、同調圧力や「何かよくわからない」ことからくる恐怖感みたいなものを感じたりする人もいるのだとか。
SDGsを動かすものは、 “個々を活かせるコレクティブな協働”(後述)ですが、その概念を伝えることの難しさを痛感しているそうです。
さらに、フラットな気持ちでいろんな人の意見を聞くと、すべてに一理あることに気がつくそうで、SDGsの誰も取り残さない理念に則り、すべての意見を反映させようとすると、やならければいけないことが膨大となってしまい、「果たしてこれは実現可能なんだろうか?」ということも悩みのタネだとか。

2030年の金沢はどんな風になっているか?

金沢SDGsが描いている“5つの方向性の金沢”になっていることはもちろん、みなさんがまちを良くしたいなと思った時に、金沢SDGsから解決策を見つけられたり、その判断の拠り所になったりしてほしいと笠間さんは言います。
そして何より一番は、金沢の人全員がまちづくりを自分事と捉え、個々の力を活かして、自然に協力しあっている、そんなまちになっていることだそうです。
「2030年には、何か問題を解決したいという時に、みなさんが自然と力を合わせられるようなまちに金沢がなっている事が私の一番の望みというか、夢です」(笠間さん)

SDGsにこめられた想いをおさらいしてみる

引き続き、パートナーシップのいろいろな取り組みをされている広石さんからの話題提供がありました。実は、笠間さんの話を受けて、その悩みに対する答えも、急きょ用意して発表内容を組み直したそうです。

SDGsが2015年に国連で採択され、行政とかに勧めても、「それって国連の話ですよね?」って言われて、当初は関心が低かったそうです。それでも気がつけばビジネスとしての機運が高まり、SDGsをやりたいという人たちもたくさん出てきたと振り返ります。
「パートナーシップ」はプロセスなのかゴールなのかという議論は国連でもあったそうですが、一方で大切なのは、パートナーシップの姿自体が2015年から2030年に向けて変わっていかないといけないのではないか? という議論もあるそうです。

ミレニアム開発目標(MDGs)は途上国の問題を、世界中が協力して解決しようとするものでした。
途上国の問題は、途上国を支援すれば解決するか?――実はそうではなく、いろいろな資源を消費している、つまり先進国の人たちのライフスタイルや考え方を変えていかないといけない事があります。その上、先進国の中にも貧困問題や社会問題が起きています。
途上国、先進国という考え方が前世紀的であって、その問題を一つずつ潰していかないといけないという考え方も現実的ではなくなってきていることに気がつきました。
そこで誕生したのがSDGs。そして、途上国の貧困や環境問題などと、先進国の意識や価値観、ライフスタイルなどとを、共通のこととして橋渡しをするようなゴールが必要となり、それがSDGsのゴールなのです。

問題があるから解決しなければいけない。ソリューションは大事ではあるが・・・

企業でも顧客の困りごとを解決することが価値を生んでいます。その場合、課題が明確になっていなければなりません。
“複雑な問題”と“難しい問題”は別のもの。難しい問題は答え合わせができますが、今の社会の問題は複雑で、多様な要素が相互作用しあい、複雑な文脈が絡み合って生じているため、問題の主な原因を一つに同定できません。
今までは、問題があると一つずつ潰してきました。つまり、あくまでも前提となるのは、 “問題のない状況”なのです。
「果たして問題のない状況というのはどのようなものでしょうか? そして、一つひとつ問題を潰していくというアプローチで本当にいいのでしょうか? 一つひとつ問題を潰すより、いっそのこと、皆が幸せな世界を作っちゃった方が早いし、トータルコストが安く済むのでは?」(広石さん)

システムで起こっている動的な問題、複雑な要因で起こっているものは複雑な解決策が必要です。問題が起こった時に、誰かが何かをやってくれたら解決するというものではなく、自分たちで予防とか早期発見とか解決できるように、地域のコミュニティとか社会がレベルアップしていく事が必要なのだと、広石さんは付け加えます。

複雑な問題を解こうとしている事例紹介

一例として広石さんが取り上げたのがペットボトルについて。海外にあるような水筒(マイボトル)をリュフィルできる環境(給水スポットなど)ができていない中で、ペットボトルを我慢しろという言い方をするのは無理があり、逆に無料でリフィルできる環境ができれば、生活困窮者も安全で質の高い水が飲めるようになり、観光客にも良いし、市民の人たちにも良い――そんな問題解決の仕方。
行政は水の飲める環境を作り、それに呼応して市民も企業もちょっとずつ動き出すことで、変化が起こっている、そんな海外の事例を紹介しました。

また、パリではまちの中に森をどんどん作っているそうです。2014年から20年に、トータル100ヘクタールの屋上緑化を目指し、うち1/3は都市農業の畑にするのだとか。
まちの中に畑をたくさん作る事で、コミュニティーが生まれ、食料問題の解決、貧困対策(貧しい人がコミュニティーに参加して野菜を作る)、ヒートアイランド対策、大気の質向上、建物の温度調整にもなると考えられます。いろいろな問題を一つひとつ潰すのではなく、「都市緑化」一本勝負でそこに投資して、回りにも投資を呼びかける――その方が早いのではないか? そんな解決方法になっているのです。

コレクティブな協働が社会を変えていく

水筒のリフィル設備も都市農業の畑も、一つの取り組みで多面的な問題解決策になり得ます。そして社会システム全体が変わっていく――。これがSDGs的。
このことは単独ではできません。大切なことはみんなで協力をしていこうということ、つまりパートナーシップです。

このパートナーシップの意味も変わってきていて、かつてはよく市民協働とも言われ、計画を作って、約束を決めて、決めた通りのことを役割分担して行っていました。
しかし、解決策や計画を先に決めて動けない現代は、過去に決めたことも状況に応じてどんどんと変化させていかなければいけません。
そこでパートナーシップに求められるのが、“コレクティブ”という考え方です。なるべく違う人たちを集める、それが“コレクティブ”です。

違う人たちを一つにまとめようとするとたいてい反発が起こります。そのためには、「どんな未来ができたら良いか?」という大きな方向性のイメージだけは共有しあいながら、あとはそれぞれが勝手にやってもらうのだそうです。

「勝手にやったらバラバラになっていくのではないか?」という懸念が出てきますが、大きなイメージを共有するための対話の場をいろいろなところに設け、継続的にコミュニケーションし続け、相互評価をし、進捗を共有していくことで、ゴールを目指していけるのではないかという考えです。

欧米人は自分たちのネットワークが社会だと思っているため、社会は簡単に変えられると考えます。一方で日本人は、社会は個人と離れたところにあると思っていて、「社会を変える=国会とか役所とかを動かす=難しい」というイメージになってしまいがち。
しかし、社会を変えるというのは、「いま金沢ってこういう事が起きていて、こういう問題があります。では、あなたはどうしますか?」という風に、問いを分かち合って、一緒に問題に取り組んでいこうという人が増えていくことなのです。
「社会を変えるという事。このカフェはそういったチャレンジをしていける素敵な場だと思っています」と広石さんは話を結びました。

金沢SDGs「5つの方向性」をアクションに移す行動計画を見る

最後に残りの20分と短い時間ですが、ステークホルダー(市民)の方に関わってもらい、作られた金沢の行動計画の素案を、皆さんと共有するセッションを持ちました。

上述の5つの方向性毎に、視点(プログラム)と、さらに具体的な行動(プロジェクト)としての例を挙げてある中から、まずは、とっかかりのあるものや興味のあるものを探してもらい、「これだったら自分にもできる」ことを考え、金沢で自分がこうなったら良いなと思うことを、「他の人に問いかける」という形にして付箋に書いてもらい、共有しました。

「プログラムを回すためにはいろいろな行動が必要で、みなさんがこれを見て、こういう事ができる、これをやりたい、このために起業したい、さらに『これ一緒にやりましょうよ』と市役所に言いにきてくれる人が出てきたりしたらいいなと思っています。行動計画は今年度中に完成させますが、次年度以降もどんどん変化していくものです。みなさんが興味を持って見続けてくださるように工夫してやっていきたいと考えています」(笠間さん)

SDGsはやらなければいけないことではなく、やろうという決意

問題が複雑化して、一つだけの解決策なんてあり得なく、そこで重要となるのがパートナーシップだと紹介しました。これは言い換えると、パートナーシップによって、市民一人ひとりに活躍できる場所があり、誰もが必要とされているとなります。
SDGsは言われてやるのではなく、自分から進んでやる決意なのです。
それはどういう決意か? 話の途中で広石さんは、「貧困を終わらせることに成功する最初の世代になりうるし、地球を救うチャンスを持つ最後の世代になるかもしれないという事を自覚して、その物事に対して取り組んでいく、そういうモードに変えていく決意」だと話していました。

今回も用意した席では足りなくなるくらい、多くの方に集まっていただきました。回を重ねるごと、SDGsへの、そして2030年の金沢のまちのあり方への関心が高まっていることをひしひしと感じています。
みなさんが「自分事として、金沢のまちづくりを考えていける、そんなまちに変えていく」、今回の話が、その決意をするきっかけとなってくれればいいなと思っています。

「千田家庭園」清掃SDGsツアー ―市民も観光客も庭師になろう!―

3月28日日曜日に、長町武家屋敷エリアに位置する金沢市指定名勝千田家庭園(非公開庭園)にて、庭園清掃SDGsツアーを開催しました。このツアーは、これまでJuan Pastor Ivars 研究員が金沢市内の自然と文化を体感するために開催してきた庭園清掃ワークショップを、観光客も参加するツアーモデルとして展開出来るよう、令和二年度金沢市SDGsツーリズム推進事業を使って実施したものです。

日本庭園でのこのような清掃ボランティア活動は、これまでは金沢市景観政策課や金沢美術工芸大学など、自治体職員、研究者や学生などが中心となって実施されてきました。Juan研究員も2017年より活動に加わり、庭園清掃に、庭園の歴史や維持管理方法について学ぶワークショップやお茶会を組み込んで体験型プログラムに仕立て、プログラムの定着と普及啓発を図ってきました。

日本庭園を含む都市部の緑は、地球温暖化対策、ヒートアイランド対策にもなり、都市の固有の生態系や生物多様性の保全につながります。また、金沢市においては、工芸やお茶などの文化的営みや文化的景観の継承にも貢献してきました。更には、自然との関わりは心や体の健康への影響も指摘されています。しかし、人口構造の変化に伴って、維持管理のための担い手不足や維持管理の不届きが起こり、金沢市の持つ都市の自然や文化的景観、そしてそれに付随する文化的活動の次世代への継承が難しくなりつつあります。

このような課題の解決策として、Juan研究員は清掃活動を「エコツーリズム」として幅広い人に知ってもらうための仕組みづくりを探索してきました。今回は国際交流事業に強みのある株式会社You-I Japanと協力しワークショップを実施することで、インバウンド観光客と市民が協力して金沢のまちの緑と文化を共に継承していくツアーモデルの可能性を探りました。先日、卯辰山山麓寺院群と永久寺にて実施したツアーに続くSDGsツアーの開催になります。

当日はあいにくの小雨でしたが、朝9時に千田家庭園前にて待ち合わせ。金沢工業大学の日本人学生や金沢大学のロシア人学生など、総勢8名が参加しました。最初、庭園の修復にも関わっている金沢美術工芸大学の鍔先生から庭園設計についてお話を伺います。千田家庭園は脇に流れる大野庄用水から取水し、庭園の中心に位置する池を通って用水に戻される池泉回遊式庭園。座敷から池の向こうに見える石と木々の配置の一部は、長寿の象徴である鶴と亀を模しているそう。日本庭園の芸術性の奥深さを学びます。その後は、2人1組になって池の底に溜まった泥を取り除く作業を行います。参加者の皆さんは黙々と掃除に没頭します。水の流れに沿って、泥がたくさん溜まっているところとそうではないところもあるようです。

掃除の後は、休憩を挟み、所有者の千田さんより庭園の歴史についてお話を聞きます。千田家庭園は、明治時代中頃、西南戦争において功績を挙げた千田登文が作庭しました。往年の写真を通して、時代とともに庭園のデザインも少し変化していることが伺い知れます。今ではツツジが配されている土縁周囲のデザインにも違いが見られ、また、滝組が配されている石組周囲には水車も設置されていたそうです。千田さんは、このように、庭園の生態系が創り出す景観的美しさと歴史文化的価値を併せ持つ千田家庭園を千田登文の歴史とともに公開することを考えているそうです。

この日はツアー開催前に、千田家庭園で庭園の生物種を確認する生物調査も実施されました。エビやヤゴ、ドンゴやアユまで、池の中からは多くの生物種が見つかり、参加者で観察することが出来ました。庭園の自然と文化の連なりを学ぶ貴重な機会となりました。

最後に、参加者とともに意見交換会を行いました。近年、観光客も趣向が変わり、より地域に入り込んで現地ならではの体験や地域そのものが垣間見れる特別な経験を望むようになっているよう。庭園ワークショップもツアーコンテンツとしての可能性は秘めていますが、文化的背景が異なる他国の方々へは庭園技術の違いや地域の歴史文化を工夫して説明していくことが必要。一方で、日本庭園造園の技術的奥深さへの気づきのコメントもいただきました。

金沢市に蓄積された特有のまちの緑と文化を観光客と地域住民が協力しながら共同管理し、そして、その自然文化的価値を次世代に継承していくことに貢献出来るツアーモデルのあり方について、今後も考えて行きます。

Pick up

Banner:Conference