2024年8月8日から9日、岐阜県で「第8回東アジア農業遺産学会」(ERAHS)が開催され、日中韓から約250名が参加しました。岐阜県の長良川流域は、2015年に「清流長良川の鮎」として世界農業遺産に登録されており、伝統的な漁業や地域文化が今も息づいています。会議では「次世代へ繋ぐ農業遺産~伝統的な農林漁業と文化~」をテーマに、農業遺産の保全や発展についての議論が展開されました。
ERAHSは2013年に設立され、日中韓の農業遺産関係者が毎年集まり、知識を共有し、交流を深める場として機能しています。これまで中国、日本、韓国で交互に会議が行われ、今回で8回目の開催です。
会合では、FAO(国連食糧農業機関)や各国政府の代表者が農業遺産の意義や課題について基調講演を行いました。FAOの遠藤芳英GIAHS事務局長は、農業遺産の保護における今後の課題を熱心に語り、ホセ=マリア・ガルシア=アルバレス=コケ氏はヨーロッパの事例を紹介しました。中国と韓国の農業遺産に関する最新の取り組みも紹介され、農業遺産の保全と活用の重要性が再確認されました。
さらに、会議では9つの分科会が開かれ、農業遺産の次世代継承や地域の活性化、伝統文化の保護、エコツーリズムなど、幅広いテーマについて議論が行われました。各国からの事例紹介もあり、宮城県大崎市が進めるブランド認証や韓国青山島でのクラウドファンディング、中国福州のジャスミン茶ブランドの法的保護など、地域活性化に向けた具体的な取り組みが紹介されました。
国連大学OUIKの小山研究員も石川県と合同で「世界農業遺産「能登の里山里海」復旧・復興の取組み」について発表しました。能登半島地震による農林漁業や伝統産業の被害状況、復旧・復興に向けた支援制度や創造的復興に向けた県や国連大学の取り組みについて紹介しました。
会議後、参加者は長良川の鵜飼や郡上市を訪れ、地域の伝統文化や自然環境に触れる機会を持ちました。鵜飼の実演や船造りの見学、郡上市の伝統工芸に加え、清流長良川あゆパークでの体験も行われました。
今回の会合は、農業遺産の価値を次世代へ継承し、地域の発展にどう活かしていくかを再確認する重要な場となりました。