2026年1月14日から15日にかけて、国連大学OUIKは国立環境研究所の専門家とともに能登半島を訪問し、隆起海岸や山地の斜面崩壊地など、震災や豪雨の影響を受けた自然環境の現場を視察しました。
今回の視察には、西廣淳氏(国立環境研究所気候変動適応センター副センター長)、大西悟氏(国立環境研究所福島地域協働研究拠点主任研究員)、堀田亘氏(国立環境研究所気候変動適応センター研究員)、渡辺綱男(UNU-IAS OUIK客員研究員)、小山明子(UNU-IAS OUIK研究員)、富田揚子(UNU-IAS OUIKプログラム・コーディネーター)、小林秀輝(UNU-IAS OUIKアシスタント)の7名が参加しました。
初日は、のと海洋ふれあいセンターの荒川裕亮氏の案内のもと、海岸及び河川周辺の隆起現場を訪問しました。午前に訪れた輪島市鹿磯では、今回の震災で最大級の海岸隆起が観測された地点を視察し、岩礁調査の概要や、隆起が潮間帯生物に及ぼす影響について説明を受けました。当日は冷たい強風が吹きつける能登の冬らしい天候となり、奥能登の冬の風物詩として知られる「波の花」も間近で観察することができました。

午後からは町野川の河口付近へ移動し、地元の方の解説も交えながら隆起により流路が変化した現場を視察しました。あわせて町野川下流付近の湿地帯も訪問し、荒川氏から現状の解説を受けました。いずれの現場でも、隆起に伴う水位低下により支流と本流の合流点に落差が生じていること、また排水路の整備等が周辺環境に影響し得ることが確認されました。希少な生物を含む生態系の保全が急務であることが共有され、現場では必要な環境整備の方向性について参加者間で活発な議論が交わされました。

2日目午前は、震災により大規模な地滑りが発生した輪島市内の斜面崩壊地を石川県立大学の柳井清治先生にご案内いただきました。現地の担当者による解説も交えつつ、崩れた大量の土砂による河道閉塞への対応として整備された仮水路の状況を確認しました。また、地質・地形に応じた斜面崩壊部の区分を考慮した復旧の重要性についてお話しいただきました。大規模な崩壊地の現場では、その規模と復旧作業を目の当たりにする機会となりました。


その後、一行は珠洲市へ移動し、震災後の見附島調査プロジェクトチームを率いる柳井先生から、見附島の成り立ちや地質の特徴、被災後の見附島の形状の変化や植生の状況を解説していただきました。震災で多くの土砂が崩壊し植生の多くが失われた一方で、残存した植生だけでなく、倒伏した樹木からも回復の兆しが見られることが紹介されました。

午後は、珠洲市役所の宇都宮大輔氏に市内の被災した田んぼをご案内いただきました。まずトキの野生復帰に向けた生息地整備に取り組む圃場を訪問し、被災後の排水の工夫や、生き物が生息できる場所づくりについて説明を受けました。あわせて、かつて使用されていたため池や水路などの利活用についても、参加者間で意見交換が行われました。


最後に、震災後、2024年9月に発生した奥能登豪雨により河川が氾濫し土砂に埋まった圃場も見学しました。現場には現在でも豪雨で山から押し流されてきた倒木が残り、被害の大きさを改めて実感する訪問となりました。復旧に長い時間を要することに加え、人口減少などの社会的変化の中で、生業の再開そのものが大きな課題になり得ることも共有されました。

今回の視察では、震災後の自然環境の変化に関連する様々な事例を確認しました。今後は、モニタリング等を通じて変化を的確に把握し、各所で見られた再生・レジリエンスの芽を伸ばしていくこと、その復旧や保全の選択肢を提示することが求められています。環境保全は地域の持続的な社会づくりに寄与するべきものであるという点が、参加者間であらためて共有された視察となりました。




