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令和6年能登半島地震後の町野川流域視察

海岸隆起により広くなった砂浜(写真提供:石川県立大学 柳井清治氏)

2024年6月5日に能登GIAHS生物多様性ワーキンググループの専門家メンバーを中心に、能登半島地震による被害が大きく、また地盤の隆起により海岸の環境も大きく変化した輪島市町野地区の町野川流域の視察を行いました。

町野川の河口域では、震災前までは海水に浸っていた岩が完全に露出していて、移動することができなかったムラサキインコ、ヒザラガイ、カメノテなどの潮間帯の生物の死骸が多数見られました。今回の地震が私たち人間だけでなく、海辺の生物にとってもいかに大きな影響があったかを物語っていました。河川堤防は大きく壊れ、かつて水が流れていた水路は完全に干上がっていました。しかし、生物にとっては負の影響が起こっただけではなく、地震によって新たな環境も生まれていました。地盤隆起により河口では砂浜が80m近く海側に広がったことにより、護岸により直線化されていた河口部が、新たに広がった砂浜に蛇行し始め、その周辺にはウミネコなどの沢山の海鳥が集まり、水浴びをしたり、羽を休めたりしていました。海浜植物も広がった砂浜へ少しずつ根付き始めていました。

隆起により露出した岩

広がった砂浜と蛇行する川沿いに集う海鳥

 

 

 

 

 

 
町野川中流部のトキ放鳥推進モデル地区になっている東地区では、震災後大変な状況でありながらも、水が張られ、稲が植えられた水田が広がっていました。ただ、水平でなくなり、水が片側だけに溜まるようになってしまった水田や、用水路の破損などによって水を引き込むことができなくなってしまった水田もあり、地震の影響もみられました。農家の方からは、震災により地域を離れてしまった住民もおり、今後集落で担ってきた草刈りなどの作業の人手不足を心配する声が聞かれました。
 

石川県のトキ放鳥推進モデル地区になっている水田

地震の影響で水の流れが滞り、それにより広がった中流部の湿地帯も訪れました。湿地帯に近づくとあちこちで鳥がさえずり、周辺を観察すると、ヘビ、カニ、トンボ、貝類など、たくさんの生き物が見つかりました。地震の影響が大きいなかでも、多様な生き物が新たな環境に適応している様子を知ることができました。

 

 

 

地震後に広がった湿地帯

地震により甚大な被害が発生してしまいましたが、地震がきっかけで生み出された新たな環境をいかに地域の「資源」として生かしていくかということも、今後魅力的な地域を創出し、復興を実現する上で重要な点です。今回の視察では、「里山里海の自然環境を活用しながら地域の復興を考えたい」と活動している地元の方々にご協力いただきました。ワーキンググループでは、豊かな能登の里山里海の暮らし、そしてそれを支える自然環境の復興に向けて、地域内外の専門家と連携し、地域住民や自治体をサポートし、取組を進めていきたいと思います。

 

 

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