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「将来の石川県の生物多様性について考えよう」県内4地域でワークショップが開催されました

石川県では、2011年に策定された「石川県生物多様性戦略ビジョン」の改定に向けた検討が進められています。この取り組みの一環として、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)は石川県と連携し、県内4地域(金沢、能登、加賀、白山)において、地域の方々と共にこれからの石川の自然を考える全4回のワークショップの実施をサポートしました。

ワークショップ開催の背景と目的

現在、国際的には2030年までに生物多様性の損失を止め、回復へと転換する「ネイチャーポジティブ」の実現が掲げられています。こうした国際的な動向に加え、石川県内では、トキの放鳥・定着に向けた取組や、2024年に発生した能登半島地震および豪雨災害からの復旧・復興を背景に、自然環境の管理や生態系が果たす役割について、改めて議論が求められています。

今回のワークショップは、14年前に策定された生物多様性戦略ビジョンをこうした社会的・環境的な変化を踏まえて見直すにあたり開催されました。地域の方々の知見や経験を共有し、今後の戦略に反映させること、さらに生物多様性を自分ごととして考える機会を提供することを目的として開催されました。

各地域での開催内容

ワークショップは、専門家による講演と、参加者によるグループワークの二部構成で行われました。

11月13日に金沢地域で開催されたワークショップでは、国連大学のファン・パストール・イヴァールス研究員が、金沢の用水ネットワークや庭園が都市の生物多様性と炭素削減に果たす役割などについて講演しました。11月24日の能登地域では、柳井清治氏(石川県立大学)が、能登の植生や里山里海のこれまでの変化、そして地震・豪雨が自然環境に与えた影響、そして復興に向けたEco-DRR(生態系を活用した防災・減災:Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)の視点の重要性等を語りました。11月26日の加賀地域では、高栄晋平氏(小松市)により、加賀の地形・地質の成り立ちや、梯川(かけはしがわ)に生息する魚類相の現状と外来種などの課題が紹介されました。11月30日の白山地域では、坂本貴啓氏(金沢大学)が、白山ユネスコエコパーク・白山手取川ユネスコジオパークを舞台とした「水教育」の可能性と、健全な水循環が豊かな社会を作ること、市民による「夢」の提案が実現した事例などを紹介しました。

グループワーク:2050年の将来像を描く

講演後に行われたワークショップでは、農家、NPO、研究者、行政関係者、そして学生など、多様なバックグラウンドを持つ参加者が、対話を通じて理解を深め、それぞれ「いしかわみんなの自然マップ」を作成しました。

はじめに、地域で守り続けたい自然や自然と繋がりのある文化、 現在直面している課題を地図上に書き出し、参加者同士で共有しました。続いて、30年後の理想の姿、そして理想を実現するために必要なアクションについて活発な議論が交わされました。各テーブルでは、それぞれの地元の視点に立った熱心な意見交換が繰り広げられ、特に震災後の課題や地域固有の資源を再確認するための非常に貴重な場となりました。

最後に、各テーブルで出された多様な意見やアイデアは全体で共有され、地域の特性や課題、そして未来への展望が参加者全員の共通認識として示されました。

今後に向けて

生物多様性の保全に向けた取組は、行政や専門家だけで進めるものではなく、地域で蓄積されてきた知見や実践を共有し、意思決定に反映させていくプロセスが重要となります。
今回のワークショップは、そうした参加型の取組を具体化し、地域の視点を今後の戦略につなげていくための機会となりました。

今回寄せられた地域の方々の意見や提案は、今後策定される次期生物多様性戦略ビジョンにおいて、適宜反映される予定です。国連大学としても、石川県における多様な自然環境と人の関わりが次世代へ引き継がれていくよう、引き続き県や地域の関係者と連携しながら、戦略の検討および実現を支援していきます。

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