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南アフリカの先住民族のウェルビーイングに関する現地調査を実施

連大学のファン研究員は、2025年3月30日から4月4日まで、南アフリカ・ターフィールド村のコーサ族コミュニティで現地調査を行いました。この調査は、UNU-IASが進める2024~2028の4年間の国際プロジェクトReconceptualizing Well-being to Foster a Sustainable Society through Youth and Indigenous Perspectives from the Global South(グローバルサウスの若者と先住民族の視点からウェルビーイングを再考する取り組み)の一環として実施されたものです。この研究は、先住民族と若者の視点を通じて「ウェルビーイングよりよく生きること)」という概念を再定義することを目指しており、日本学術振興会(JSPSの支援を受けて実施されています。

このプロジェクトの主な目標は、先住民族の価値観を統合し、持続可能性に関するグローバルな議論に貢献するとともに、若者や地域コミュニティの声が2030年以降の開発ビジョンを形成できるようにすることです。プロジェクトには、南アフリカの他にインド、メキシコ、フィリピンのケーススタディが含まれており、伝統的な経済指標を超えた地域特有のウェルビーイング指標を共同で開発することに重点を置いています。これらの指標は、文化的アイデンティティ、関係的価値観、環境調和を強調し、気候変動や文化の侵食といったグローバルな課題に対応しています。本イニシアティブは、SDGsの目標3(健康と福祉)にも関連しています。 

今回の現地調査の目的は、先住民族が持つ「インピロ」という概念を現地の生活実践の中から深く理解しようとしました 「インピロ」とは、文化的遺産と自然との深い関係に根ざした、全体的な視点によるウェルビーイングの概念です。コーサにおいて、日常生活にどのように取り入れられているかを探ることが目標でした。そのために、フアン研究員はローズ大学および地域の関係者と協力し、地域の若者と高齢者とともに面談やワークショップ、地域の参加者とともに行う共創型の対話セッションを通じて関わりました。 

調査に参加したコーサ族は、「インピロ」というコンセプトを家族の結束、祖先の伝統への敬意、自然界との深い結びつきといった生活全般にわたる価値観として説明しました。若者たちは、「インピロ」を帰属意識や自分たちの文化的アイデンティティの一部として感じている一方で、現代のテクノロジーによる集中力の低下や、環境の変化に対する不安も抱えていることを明らかにしました。高齢者たちは、健康、儀式、そして心のバランスを保つことの大切さを強く訴え、あわせて伝統的な文化や慣習が失われつつあることへの不安も語りました。世代による考え方の違いはあったものの、若者と高齢者のどちらも、自然とのつながりや地域社会との絆、文化的な儀式が、真のウェルビーイングには欠かせないと考えている点では一致していました。 

今回の現地調査では、若者たちと一緒に、先住民族のウェルビーイングに関する「中核的な要素」を整理することができました。そして家族の結びつき、地域社会の支え合い、土地との精神的なつながりなどが、特に重要なテーマとして挙げられました。これらはまだ正式な「指標」としてまとめられたわけではありませんが、先住民族の人々が考えるウェルビーイングを理解するための大きな手がかりとなりますまた、ウェルビーイングは単なる抽象的な考えではなく、人とのつながりや自然への思いやりを通じて、毎日の暮らしの中で実際に大切にされていることもわかりました。こうした気づきは、プロジェクト全体で行われている他の地域との比較研究にも活かされる予定です。 

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