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地域との研究活動:アーカイブ

絵本「ごっつぉをつくろう」動画版公開

世界農業遺産(GIAHS)「能登の里山里海」や地域の食文化の価値を次世代に伝えるため、能登地域GIAHS 推進協議会、国連大学IAS-OUIKでは地域の有識者とともに絵本「ごっつぉをつくろう」を2018年に作成しました。能登での暮らしや季節ごとの行事、食文化について楽しく学べる、大人にとっても興味深いストーリーとなっています。

2019年にはこの絵本をテーマに、石川県輪島市の三井小学校にて環境教育「SDGs三井のごっつぉproject」が通年で行われました。生徒たちは自分たちで実際に食材を収穫し、「ごっつぉ(ごちそう)」を作りながら地域の環境や伝統、そして持続可能な未来について学びました。

今後、このような教育活動をより活発に行っていくべく、今年度OUIKでは絵本の動画版を制作しました。この動画制作では祭囃子の音や、方言、鳥の鳴き声なども忠実に再現するため、専門家の皆様、地域の皆様にもご協力いただきました。さらに英語版の完成に伴い、今後はフィリピンのイフガオの世界農業遺産 (Ifugao Rice Terrace GIAHS) の地域の小学校と能登地域の小学校間の交流活動をはじめ、このストーリーを活用した国際的な学びの場を展開していく予定です。

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学校などの教育現場のみならず、ご家庭でも楽しんでいただけたらと思います。

【開催報告】地域から考える!! 「SDGs 指標のモニタリングとオープンガバナンス」 〜地域での SDGs実装に向けて、自治体はどう変わるか〜

国連持続可能な開発目標が2015年に採択から6年目を迎え、様々なセクターで目標とターゲット達成に向けた取り組みが実践されています。SDGs169のターゲットのうち65%は自治体の関与がないと達成が難しいと言われるほど、SDGs実践においては、自治体が重要な役割を担っていくことが国連の様々な会議で言及されています。特に1)地域の文脈に即した指標の設定、2)各指標のきめ細かいデータ取得やモニタリングは自治体が市民の参加を得ながら行っていくことが望ましいとされています。これは、「透明性」、「協働」、「参加」をキーワードとして市民が公のデータを使い、現状分析や政策課題の提案を行っていくオープンガバナンスの潮流と合致するもので、むしろSDGsが促す本質的な変化と言えます。

今回、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)はSDGs達成に向けて日頃から密接に議論を行っている金沢市と共催で、「地域から考える!!「SDGs 指標のモニタリングとオープンガバナンス」〜地域での SDGs実装に向けて、自治体はどう変わるか〜」をテーマにウェビナーを開催しました。

山野金沢市長や先日SDGs未来都市に認定された加賀市の山本課長他、2名の専門家にお集まりいただき、SDGs指標の設定やモニタリングを通じて、自治体経営に透明性、市民協働、市民参画が促されるような仕組みを構築するためにはどうすれば良いのか、基調講演とともにパネルディスカッションを通した活発な議論が行われました。

 

各自治体に合わせた達成状況を把握出来る仕組み作りが重要

開催に先立ち、主催を代表してUNU-IAS OUIK事務局長の永井三岐子より開催趣旨の説明がありました。「SDGs達成に向け、地方自治体の取り組みが鍵となる中、2018年にSDGs未来都市の認定が始まり、全国ですでに90以上の都市が認定されています。UNU-IAS OUIKのパートナーの一つである金沢市でもSDGsの実践フェーズに移行し、モニタリングを行なっていく段階となりました。石川県は複数都市でSDGs実践の事例が蓄積しつつあり、その知識を共有しつつ、活発な議論が出来ると嬉しいです。」

 

 

共催の金沢市を代表して、金沢市長・山野之義氏から開催の挨拶をいただきました。「行政においては、日々の業務の中で行政改革や財政改革を進めていく中で結果的にSDGs達成に繋がると思っています。翻って目標や終わりが見えないと現場の職員のモチベーションが持たず、疲労も出てくるので、目標の達成状況を把握出来る環境作りが大切なのではないかと思います。それぞれの自治体に相応しい成果目標が設定され、それに合わせたモニタリングが必要と思いますし、また市民やパートナーにも分かりやすい形で公開され、市民や関係者と常に意思疎通を測りながら、進めていくことが重要と認識しています。」

 

基調講演「ローカルSDGsの推進に向けてー指標を活用したモニタリング実施の意義」

SDGsは日頃の活動の延長線上にある

1つ目の基調講演は、サステイナビリティと地方創生の研究を行なっている法政大学デザイン工学部准教授の川久保俊氏から、「ローカルSDGsの推進に向けてー指標を活用したモニタリング実施の意義」との題で講演いただきました。冒頭、「日本においても産官学民全体でのSDGs達成に向けた取り組みが活発化しています。主体的に取り組むことでメリットを享受出来、逆に取り組んでいないとリスクも発生しうる状況になってきています。一人一人の日頃の行動がすでにSDGsと密着しているので、日頃の活動の延長線上で取り組んでいくのが良いかと思います。SDGsを地球規模課題であると認識しつつ、身近な自分達の街の問題だと認識=ローカライズし、自分達の日常で実践していくことが求められています。」とSDGsを自分ごとにすることの重要性を強調されました。

自治体の体制作りや成功事例共有が望まれている

続いて、ローカルSDGsに関する中央政府と地方自治体の認識について説明いただきました。2016年12月発表の政府の「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」が2019年12月に改定され、自治体はガバナンス手法を確立し、取り組みを的確に測定することが重要と明記されました。優れた事例や知見の情報発信や共有の重要性も唄われ、SDGsが認知の段階からまちづくりの中で実践していく段階へ移行しているとのことです。

他方で、川久保氏は内閣府と共に自治体のSDGs認知と実践状況について調査を続けており、調査結果はSDGs実践段階への移行をデータで裏付けているようです。認知度は2017年から2019年にかけて急速な増加を示す一方、取り組み状況については2019年現在、今後内容を検討する自治体が43.3%と後追いの状況を示しています。また、SDGs推進の課題については、一貫して行政内部での経験や専門性の不足、行政内の体制・リーダーシップ・職務分掌の問題が課題として上げられ、試行錯誤が続いている状況のようです。推進の支援策としては、研究会やウェビナーといった先行事例や成功事例の情報提供や学習の機会が求められています。

ローカル指標を活用してSDGsをまちづくりのプロセスに取り込む

川久保氏はSDGsをまちづくりのプロセスに取り込んでいく上で、街の状況を「見える化」しモニタリングするためのローカルSDGsプラットフォームを開発しています。

川久保氏は健康診断と同様に検査項目として指標を設定し、指標を用いて気づきを得て、次のアクションを検討するというPDCAサイクルをまちづくりのプロセスに導入することの重要性を説いています。その中で「見える化」が鍵となる一方、指標のデータを効率的に集め、運用に負荷がかかりすぎないように留意する必要があると考えています。しかし、SDGsの232のグローバル指標において、日本の自治体がそのまま活用可能な指標は約5%しかなく、読み替えを行うことでやっと約50%の指標が使えることになります。自治体がSDGsの全ての指標を独自に研究して、独自のローカル指標を開発するのは困難です。そこで、川久保氏は、自らの研究を通して、日本独自の指標も追加し、2019年8月に合計202の指標「地方創生SDGsローカル指標リスト」(内閣府)を整備しました。

更には、自治体職員が多忙な中で、ローカル指標リストに対応するデータを定期的に集めることが出来るのか、という課題に対応するため、オンラインのローカルSDGsプラットフォームを立ち上げました。このプラットフォームでは各自治体の指標データや情報を一括して収集出来、またローカル指標毎にデータをビジュアル化して確認することが出来ます。また、各自治体がSDGs達成に向けた課題にどう取り組んでいるのか、課題の克服方法の発見のために、自治体担当者のインタビュー記事など、経験や知見を共有することが出来る仕組みを盛り込んでいます。加えて、各自治体がアカウントを得て、施策やシンポジウムといった取り組みやニュースを独自に発信できる仕組みも整備しました。

市民を巻き込んだ独自のローカル指標の整備へ

最後に、川久保氏は強調します。「ローカルSDGs指標整備の各ステップの中で、このプラットフォームは各関係者にデータに関心を持ってもらう上で役立つものの、より質の高いデータや指標を模索し、各地域の実情を反映したローカルSDGs指標の整備していくステップにおいては、各自治体が自ら市民を巻き込みつつ取り組んでいく必要があります。」

 

基調講演2「テクノロジーによる市民参画 – オープンガバナンスとはなにか-」

2つ目の基調講演は、一般財団法人Code for Kanazawa及びCivic Tech Japan代表理事の福島健一郎氏から、「テクノロジーによる市民参画―オープンガバナンスとはなにかー」と題して、ローカルSDGs実践と指標モニタリングと市民参画のためのオープンガバナンスとシビックテックについてお話いただきました。

 

 

透明性の高く、市民が参画出来る社会の構築

福島氏は、オープンガバナンスとは「透明性の高く、しっかり説明が出来、市民が参画できる政府・自治体作り」と説明します。コロナウィルス感染症対策を例にとると、行政の対策に対して人々の不満や意見がしっかりと届き、行政のアクションが変わったと人々が実感を持てるようになることがオープンガバナンスの成果だと強調します。そして、ローカルSDGsの実践においても、指標のデータ取得やモニタリングについて市民の参画を得ながら進めていくことが望ましいため、透明性の高い行政、市民が参画できる社会の構築が不可欠であり、つまりはオープンガバナンスの構築が重要だと説明します。

では、どうすればオープンガバナンスが達成できるのか。福島氏はすぐに取り組めることの1つは「オープンデータ」だと説明します。「オープンデータとは国・自治体や民間企業が保有するデータのうち、営利非営利関係なく二次利用可能であり、機械判読に適した無償のデータです。オープン化を進めることでオープンガバメント、市民自治(シビックテック)、ビジネス活性化(無償利用)に役立ちます。」そして、SDGsに市民が参画していく流れの中で、市民自治、つまりシビックテックの分野の理解が有用だと続けます。

行政のデジタル化とオープンマインドの養成が重要

福島氏は、シビックテックとは「市民自らが市民が望む社会をテクノロジーを活用して実現すること」と捉えています。シビックテックの良い例として、シビックテック団体g0v他、多くの団体が活動する台湾を例示します。台湾ではコロナウィルス感染症の蔓延下において、g0vがリアルタイムにマスク在庫を「見える化」するサービスを提供していた他、他の団体も市民がテクノロジーを活用して、市民が必要とする形でサービスを提供していました。台湾ではそもそも行政のデジタル化が進んでおり、保険証のICチップ上の購入履歴がオープンデータとして活用され、また情報公開をすぐに決断出来るオープンマインドが形成されていました。

シビックテックの普及には行政のデジタル化を進め、オープンマインドを養っていくことが必要となる中、福島氏は日本でも少しずつ下地は出来つつあると説明します。2013年のシビックテックコミュニティCode for Kanazawa設立を皮切りに、Code for Japanも設立されました。Code for Kanazawaの「5374(ゴミナシ)」といったゴミ廃棄日と分別のためのアプリの開発と全国拡大の他、Code for Japanが東京都からの委託で感染者数の可視化サイトをオープンソースとして開発しています。また、沖縄での事例では2ヶ月で4つのアプリを立ち上げることができ、そのスピード感はシビックテックならではと強調します。

最後に、福島氏は市民と行政が協働で地域を作っていく中でテクノロジーは不可欠と強調しつつ、「自治体は出来る範囲の中でテクノロジーをどれだけ活用出来るか考え、オープンマインドでありつつ、市民の参画も促す必要があります。市民側もITやテクノロジーの技術的な部分を理解し、自ら推進する、コミュニティに参加する、行政との協働に協力する意識が重要。お互いにマインドセットを変えていくことが重要です。」と締めくくられました。

 

事例紹介「加賀市のスマートSDGs」

消滅可能都市からスマートシティ加賀へ

前半の最後は、加賀市より政策戦略部政策推進課長の山本昌幸氏から、2020年にSDGs未来都市に選定された加賀市のスマートSDGsの事例について紹介いただきました。スマートシティを推進する背景について、山本氏はこう説明します。「加賀市は九谷焼や山中漆器等の伝統産業や加賀温泉郷に有名な温泉と観光の都市で、2023年春には加賀温泉駅開業が控えています。他方で、人口減少に起因する人材不足や、合併の影響による多極分散型の都市構造といった課題を抱えています。不名誉ながら2014年5月には「消滅可能性都市」と指摘されました。そのような背景の中で、持続可能性を目指すために先端技術を活用したイノベーション推進を図るスマートシティを目指すことと致しました。」

加賀市は持続可能な加賀市に向けて、「スマートシティへの取り組み」と「加賀市版RE100」を柱に位置付けています。スマートシティを推進するにあたり、加賀市は2019年8月に「スマートシティ推進官民連携協議会」を設立し、市内25団体(産業団体、市民団体)と連携する受け皿を整えました。また3月には「スマートシティ宣言」を発表して市民や外部に取り組みを発信し、クリエーティブでイノベーティブな挑戦可能性都市への変貌を目指しています。

山本氏は、加賀市のスマートシティとは人々の日常の色々な課題に対して技術を活用して解決することで、持続可能性をもたらしていくことと説明します。具体的な事業の例をいくつか説明いただきました。まずはドローンの活用です。物流分野での活用、災害時における空中からの災害現場の確認や緊急物資の搬送、加えて山間部といった人の移動が難しい場所において活用することを想定しているそうです。2つ目にMaaSの活用です。移動をより便利なものにし、移動と商業や観光をデータで繋げることで価値が高まる取り組みを進めています。今年度には実証実験を行う予定だそうです。3つ目にアバターを活用した取り組みです。医療や介護施設でのアバターを通じた面会システムの実現、行政におけるアバターを通した市民相談、社会科見学出来るアバター等の実験的な取り組みを進めていると説明がありました。

また加賀市は、マイナンバーカードと連携した個人認証の基盤作りにも取り組んでいます。市役所外で電子申請が出来る仕組みを作ることで時間を有効活用出来る仕組みを作ろうとしています。加えて加賀市版e-residencyの導入を検討しています。活動の拠点をいくつも持つような人を対象に仮想の加賀市民として認定することで、加賀市に関わりを持つ人を増やし、市の活性化に繋げたいそうです。

最後に、加賀市は加賀市版RE100の取り組みとして脱炭素社会の構築とエネルギーの地産地消を目指しています。市100%出資の株式会社を設立し、再生エネルギー等の電力を公共施設へ供給する事業も推進しているそうです。

加賀市は、RE100への取り組み、スマートシティ推進の取り組みを行うことで、官民協働による自律的な好循環が起こる仕組みを作り、持続可能な街を目指しています。

パネルディスカッション「市民と自治体の関係を変えるSDGsモニタリングの可能性」

基調講演をいただいた川久保氏、福島氏に、UNU IAS-OUIKの高木研究員が加わり、永井事務局長がモデレーターとなり、後半はパネルディスカッションを行いました。

永井:まずは皆様から講演を聞いて感想を伺いたいと思います。

高木:(全体を通して)ローカルSDGs指標はプラットフォーム上で他市と比較出来、また自治体の中での進捗を測定出来ることから画期的だと思います。今後、行政が直面する課題としては、取得出来るデータと出来ないデータがある中で、データ取得の適切な頻度、規模は自治体独自で考えていかないといけません。行政の中でデータ取得が目的化してしまわないよう、活用の視点も忘れないようにしないといけません。また、市民や民間企業の協力を得ないとデータを取得出来ないため、産官学民間の垣根を超える取り組みが必要です。データを取り込んでいく過程で参画者の考え方も変わっていくのではないかと思います。

川久保:(福島氏の話を聞いて)ローカルSDGsプラットフォームは各省庁の統計データを活用している一方、福島さんの市民と共同で作っていこうとする姿勢はSDGsの精神そのものであり感銘を受けました。またテクノロジーを活用しながら負荷を減らして両立させていく点も素晴らしく、SDGsを共通言語として金沢から日本全国へ、そして世界へ発信・展開していける良い事例だと思います。

福島:(川久保氏の話を聞いて)ローカルSDGs指標リストはちゃんと見たことがなかったので、今後、項目を確認して、シビックテックの力で関与できるものを確認するところから始めるのも良いと思いました。ローカルSDGsがいかに大事なのか、グローバル指標の5%しか自治体で活用出来ないと知り、驚愕しました。

永井:自治体の取り組みは包括的だから、自治体はSDGsがこれまでの業務の延長線だと認識し始めています。他方で住民への説明には非常に苦労されています。住民との協働を進めていく上でのヒントは何でしょうか。

福島:シビックテックを通して課題を解決することは、テクノロジーを通して地域の課題を解決していくことと説明をすると納得してもらえることが多いです。シビックテックに取り組んでいる方はもともとSDGsに近い領域に取り組まれていました。そして、なんとなく地域の課題解決に取り組んできた中で、SDGsの枠組みが出来上がってきました。指標に基づいて体系化されると的確に課題解決を迫れます。今後はシビックテックの実践の中で、SDGsについて体系立てた説明をしていきたいと思います。また、自分ごとにしていくという意味で、自分でやりたいと考える人の意思を尊重して進めていきたいと思います。

川久保:まずSDGsは気づきを与えてくれるツールだと考えます。指標に照らし合わせる中で、シビックプライドが養成され、逆に課題も見えてきます。次のステップとしては、気づきや取り組みを発信したくなるはずです。そうすると、共通言語としてのSDGsを橋渡しにして、事例を効果的に発信していくための情報発信ツールにもなり得ます。加えて、SDGsに関心のある人同士を繋ぐコミュニケーションツール、ブランディングツールにもなります。しかし、使い方によって色々なメリットがあり、実際に使い始めてみて気づくことも多いので、まずやってみることが重要だと思います。

永井:住民を巻き込んでいくために、戦略や計画だけでは住民は自分ごとにするのは難しいのではないかと思われます。高木さんが金沢大学と連携して行った取り組みで、住民がSDGsの指標を作り上げた取り組みがあります。経験について伺えないでしょうか。

高木:2019年2月から3月にかけて珠洲市能登SDGsラボで住民とローカル指標を作るワークショップを行いました。SDGsを理解するまでの時間の方が指標を設定するまでより時間がかかり、理解の促進に難しさを感じました。しかし、SDGsのフレームワークに基づいて世界が同じ目標に向かっているという方向性を理解してもらえれば、SDGsは使えるツールだと認識しました。またSDGsは地域や政策を改善するためにも使えるツールであり、そのプロセスを住民と一緒に進めていくことが重要だと考えます。

永井:日本で設定したローカル指標はそもそも国連で認められているものでしょうか。

川久保:SDGsは2030アジェンダがそもそもの根幹で、指標は実施のフォローアップのために存在しているに過ぎません。また各国により事情が異なるので、補完的に新しい指標を提案して策定していくことが推奨されています。今回の内閣府のリストはグローバル指標を補完するものとして提案されており、国連内で正統化するような動きはありません。また、企業や市民が独自に指標を設定している事例もあるよう、自分たちがSDGsにどう貢献していきたいかという観点から指標は設定されていくものと考えています。

永井:金沢市はSDGs未来都市事業を通して取り組みの見える化を進めていくことになります。今日のシンポジウムのテーマは自治体がどう変わるかですが、金沢市にはどう変わって欲しいと思いますか。

福島:金沢市はオープンデータがあり、シビックテックに理解がある都市の一つと考えています。ただ、オープンガバメントを呼び込むために庁内をもっとデジタル化する必要がありますし、どうやって市民参画してもらうか考えていく必要があると思います。またSDGsの枠組みを使う中で、様々な担当課が連携し、ノウハウやリソースを結集しないと、動きが噛み合わないということになりかねません。この機を生かしてこれらの実現を目指して欲しいと思います。

永井:担当課の連携を成し遂げるために何が必要か️、どういったアクションが必要か。SDGs推進室を作る自治体や首長がリーダーシップをとって進める自治体もあります。自治体がオープンガバナンスを進める上でどういう戦略、戦術があるでしょうか。

高木:市民と一緒に指標を作ることでSDGsの達成に繋がるので、まずそれを行うのが最初のステップかと思います。独自指標を作ることは自治体にとって霧の中を進むような作業となるので、まずは既存のローカルSDGsプラットフォームを活用して、自治体間で情報を共有し、協力して進めていくのがいいのではないかと考えます。

川久保:是非、プラットフォームが自治体の進捗や変化に関する情報交換の場になって欲しいと思います。国内でも自治体のボランタリーローカルレビューへの関心も強くなりつつあり、国際的に見ても今後は社会発信していく動きが強まっていくと予測しています。日本の自治体にも是非取り組んでほしいと思います。また追加ですが、指標の概念には、状態量を見るストック指標と変化を見るフロー指標があり、SDGsローカル指標はストック指標を主体に構成されています。住民の努力が目に見え、そして振り返りを行えるようにしていくためにはフロー指標を地域住民と共に作らないといけないと思います。自治体職員は多忙なので、金沢市の場合はOUIKが指標の素案を作って、一緒に進めていく方がいいかもしれないと思います。そうすることで、金沢市はより一層SDGs先進地域として進んでいけるのではないかと考えます。

永井:SDGs達成に向けたアクションの中で、パートナーシップを組んで、市民、企業、行政のマインドセットが変わっていくプロセスを重要視していくことは非常に腹落ちする内容です。プロセスを一緒に進めることが出来ていれば、レジリエントなパートナーシップや組織を達成出来ると思います。しかし、自治体は管理の側面から、指標を設定して達成出来ないときの説明をどうするかという点を不安視しています。定性的な情報を客観視し、対外的に説明していくのは難しいことですが、どのように説明責任を果たしていけば良いと思いますか。

高木:定量的データの取得は原則として重要で、加えて定性的データを合わせて取得し活用していくことが重要です。指標に応じて、どちらが必要かを整理していく必要性があると考えます。

川久保:指標疲れを防ぐために、データ収集から色々な人を巻き込んでいくことが重要と考えます。データ収集は大学に依頼しても良いと思います。海外では、行政の役割は施策を考えること、データを集めるのは知識創造の拠点である大学の仕事と役割分担されていますので、日本でもそれを成し遂げられると良いかと思います。また目標の全部を達成しようとは考えず、出来るところから取り組む姿勢も大切だと考えます。加えて、既存のSDGsの枠組みの外にも視野を広げ、文化、芸術、スポーツ等のカバーしきれていない部分、”Beyond SDGs”を金沢市や加賀市がカバーして進めていくのが日本のプレゼンスの向上にとっても良いと考えます。

永井:最後に高木さんと福島さんから一言ずつコメントをお願い致します。

高木:SDGsは答えを出す性質のものではなく問いだと思います。自治体の方々もSDGsの視点から自分たちで考え続けるというのを大切にしてもらえればと思います。

福島:SDGsの推進に市民参画が重要で、それを持続可能にしていくために技術が使え、そのためにシビックテックを活かすことが出来ます。技術だけで上手くいく訳ではなく、関係者のマインドセットが重要となります。日本でも台湾のように取り組みが進めば面白いのではないかと思います。

 

 

 

【スピーカープロフィール(登壇順)】

 

川久保 俊(かわくぼ しゅん)

法政大学デザイン工学部 准教授

慶應義塾大学理工学部後期博士課程修了。博士(工学)。法政大学デザイン工学部助教、専任講師を経て2017年10月より准教授(現職)。専門は建築/都市のサステナブルデザイン。近年は、持続可能な開発目標SDGsの主流化に関する調査研究を進めており、その成果を取り纏めて出版物「私たちのまちにとってのSDGs-導入のためのガイドライン-」やウェブアプリケーション「ローカルSDGsプラットフォーム」として発信している。主な受賞歴:日本都市計画学会論文奨励賞、日本建築学会奨励賞、山田一宇賞、International Conference on Sustainable Building Best Paper Awardなど。

 

 

福島 健一郎(ふくしま けんいちろう)

一般社団法人コード・フォー・カナザワ 代表理事、一般社団法人シビックテックジャパン 代表理事

2009年4月に金沢でアイパブリッシングをパートナーと創業。テクノロジーを用いた社会課題解決を続けている。 また、地域の課題をITの力で解決するために、2013年5月にCode for Kanazawaを9人で設立。日本で初めてのCode for コミュニティとなった。2014年に一般社団法人化。 Code for Kanazawaが開発した5374(ゴミナシ).jpは全国のコミュニティの手で2018年11月末現在で120都市以上に広がった他、のと・ノット・アローンやHa4goなど多数のアプリ/サービスを輩出。 現在は、シビックテックを国内に広げるための活動にも力を入れているほか、シビックテックを実現するための基盤となるオープンデータやオープンガバメントの推進についても精力的に活動を行っている。

 

 
 

山本 昌幸(やまもと まさゆき)

加賀市政策戦略部政策推進課 課長

1989年に石川県加賀市役所に入庁し、2015年に地域交通対策室長、2016年に教育庶務課長を経て、2019年4月に現在の政策戦略部政策推進課長に至る。加賀市が進める「スマートSDGs」や「スマートシティ加賀」の取り組みが、全庁一丸となって推進されるように、その先導役として、積極的に業務の遂行に取り組んでいる。

 

 

高木 超(たかぎ こすも)

国連大学IAS-OUIK研究員

NPO、民間企業を経て、2012 年から神奈川県大和市の職員として、住民協働、厚木基地対 策、待機児童対策を担当。17 年 9 月に退職後、博士後期課程進学と同時に渡米。ニューヨ ークを拠点として、1 年間にわたり「自治体における SDGs のローカライズ」に関する調査 研究を行う。その間、国連訓練調査研究所(UNITAR)とクレアモント大学院大学が共催す る「SDGs と評価に関するリーダーシップ研修(英語名:Executive Leadership Programme In Evaluation and the SDGs) 」を日本人で初めて修了。ミレニアル世代の若者を中心に SDGs の達 成に向けて取り組む団体、SDGs-SWY の共同代表としても活動するとともに、国内外の自治体のSDGsを幅広く研究。著書に「SDGs x 自治体実践ガイドブック」

 
 

永井 三岐子(ながい みきこ)

国連大学IAS-OUIK事務局長

フランスで民間会社勤務の後、JICA(国際協力機構)専門家としてモンゴルで水資源管理や過放牧の問題、国連大学グローバル環境情報センターで気候変動適に関する研究に従事。JICA-JST日・タイ気候変動適応策プロジェクトコーディネーター、など環境分野の国際協力に携わってきた。2014年から現職。地域にある国連機関の強みを活かし自治体への政策提言などを通じて、SDGsの実践 を石川全域で推進中。金沢市出身。

 

動画もこちらからご視聴いただけます。

OUIK 生物文化多様性シリーズ#5 金沢の庭園がつなぐ人と自然  ー持続可能なコモンズへの挑戦ー

金沢の日本庭園の活用方法を防災、観光、景観など多面的なアプローチから解説すると共に、持続可能な都市と生態系保全に向けたアイデアを提唱しています。

地図情報の集約:生物文化多様性や生態系サービスを理解する学びに貢献

OUIKでは、『地図情報から見た能登の里山里海』、『地図情報から見た金沢の自然と文化』をはじめ、地域の自然と文化のつながりを分かりやすく理解するための地図情報整備を進めています。
北陸地方を対象として、県レベル、市町村レベルでのマルチスケールでの地図情報を集約しています。その際に、生物多様性、文化多様性、生態系サービスといったキーワードを軸に、地域のニーズを反映しながら、視覚化や定量化に工夫し、地域に役立つ学びと情報発信のツールづくりを行っています。

珠洲市小学校SDGs学習「ゴール14:海の豊かさを守ろう」オンラインレクチャー

今年度から、珠洲市の全ての小学校でスタートしたSDGs学習プログラムの一環として、2020年9月3日(木)に能登SDGsラボが「ゴール14:海の豊かさを守ろう」に取組む正院小学校で導入授業を実施し、国連大学OUIKのイヴォーン・ユー研究員がゲストスピーカーとしてオンライン講義を提供しました。

対象:正院小学校 5,6年生

日時:2020年9月3日(木)13:45~15:25

講義が始まる前から始めてのオンライン授業に大喜びの子供たち。

イヴォーン研究員に手を振ったり、質問をしたり。イヴォーン研究員も嬉しそうに答えます。

能登SDGsラボのスタッフたちからSDGs全体の話を聞いた後、イヴォーン研究員から「SDG14から考える能登の里山里海を元気にするために私たちができること」と題して、オンライン講義が始まりました。

すでに海岸でごみ拾いなどの活動をスタートさせていた正院小学校の子供たちは、海の問題や能登の里海に関するより詳しい話を真剣に聞いています。

里海は「海のゆりかご」としてとても大切な場所であること、海の問題の多くは人が暮らしている陸によるものであるということ、一度海に流れ出てしまったゴミは何十年、何百年も分解されずに漂い続けるということなど、自分達の暮らしと海のつながりについて、学んでいきます。

イヴォーン研究員が投げかける質問にもさっと手が挙がります。

レクチャーの最後には、能登の里山里海を元気にするために自分達ができることについて、具体例を用いて説明してもらいました。

世界レベルの大きな問題にも、自分たちの身の回りで取り組めることが色々あるということに気付くことができた様子。

最後に担任の先生から感想を言える人は発表するように促されると、全ての生徒が一人ずつ感想や今後取り組みたい事などを発表してくれました。

「僕たちが目指している『海の豊かさを守ろう』のゴールについてイヴォーンさんから大切なことを聞けました。その話を聞いて、僕たちもできることがないかと考えることができたので良かったです。」「自分でできることを沢山しようと思いました。」など、素直で前向きな感想を聞き、この子供たちが大人になるSDGsゴールの目標年2030年にはもっともっと明るい未来が待っているように、今の大人達も全力でSDGsに取組まなくては、と感じました。

 

さて、この導入授業を受けて、正院小学校の子供たちの取組はどのように発展していくのでしょうか?今後の活動がとても楽しみです。

 

企画・実行:能登SDGsラボ

協力:国連大学OUIK

執筆:国連大学OUIK

【開催報告】令和2年度第2回 能登の里海セミナー「里山の保全から考えるSDG14の達成 ―海洋生物多様性の保全―」

2020年6月に開催された「海洋汚染問題を考える」に続き、今回が2回目となる国連大学OUIK「能登の里海セミナー」。

今回は、SDG14の10個のターゲットから、海洋生態系のレジリエンス強化や回復取り組みに関するSDG14.2と14.5について勉強しながら、海洋生物多様生の保全を考えました。

近年の海洋生態系に関する話題や保全取り組みを紹介するとともに、CBD-COP10の愛知目標とも連動する「海洋保護区」の紹介や、実際に能登の里海の生物多様性の保全を行っている2例の活動報告が行われました。

 

能登の里海ムーブメントとSDG14について

セミナー主催者を代表して国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(国連大学OUIK)の永井事務局長から開会の挨拶があり、続いてイヴォーン・ユー(国連大学 OUIK研究員)から、「能登の里海ムーブメントとSDG14について」と題して、このセミナーの趣旨説明がありました。

国連大学OUIKの永井事務局長

 石川県の能登半島は2011年に日本初の世界農業遺産に認定されましたが、そのコンセプトはまさに能登の里山と里海です。認定数年後、地域の人に話しを聞くと、里山の方は農業や森林管理など、認定をきっかけに活動が活発になっている一方、里海の方は、「どのように関わっていけばいいのか?」などと、地域の皆さんの中でも戸惑いがあることが分かりました。それを受けて、2015年から能登の里海を知るための「能登の里海ムーブメント」という活動を国連大学OUIKが開始。セミナーの開催、国連大学OUIKの研究、地域の皆さんの里海保全活動を手伝うというのが活動の3本の柱となっています。

 2015年から2017年までは、金沢市内や能登地域でいろいろなテーマで里海のセミナーを開催してきました。海の森だったり、海士さんの話しだったり、伝統的な漁の仕方だったり、さまざまな課題を通して、能登の里海の魅力などを伝えてきました。そして、2018年から2019年までは、これを受けての情報発信として、東京や海外でも能登の里海のことを発信してきました。

国連大学 OUIK研究員のイヴォーン・ユー

 今年度からはSDG 14に特化した里海のセミナーを開催しております。第1回目は里海開催は6月にSDG14.1に関する海洋汚染問題について勉強しました ここではSDGsの17のゴールのうち、14番の「海の豊かさを守ろう」について詳しくみていきます。SDG14は「持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」という目標。2015年に定めたものですが、海がやっと地球規模の課題として取り上げられたと、当時は海の専門家から、たくさんの喜びの声が上がりました。2017年には第1回の「国連海洋会議」がニューヨークで開催されましたが、この時はSDG14がテーマでした。SDG14は今、海を語る上での世界中の共通語となっています。

 

海の保護区は達成が間近の目標

 さて、SDG14の中にはさらに10のターゲットがあります。第1回の里海セミナーでは、ターゲット14・1の「海洋汚染削減」をテーマにしました。そして、今回のセミナーでは14・2「海洋生態系保護・修復」と14・5「沿岸域・海域保全」を中心にみていこうと思います。

 14・2「海洋生態系保護・修復」は、「2020年までに、海洋及び沿岸の生態系のレジリエンス強化や回復の取り組みなどを通じて持続可能な管理と保護を行い、大きな悪影響を回避し、健全で生産的な海洋を実現する」とあります。要するに“2020年までには海の環境を良くしていきましょう。そうすれば海の中の生物多様性も健全に保たれるのではないか”という主旨で作られた目標です。ちなみに2020年というのは、生物多様性条約(CBD)の「愛知目標10」の達成年からとっています。SDGsの中の生物多様性の目標はCBDの目標を参考にしているのです。

 14・5「沿岸域・海域保全」の目標は、「2020年までに、国内法および国際法に則り、入手可能な最適な科学的情報に基づいて、沿岸・海洋エリアの最低10%を保全する」とあります。こちらは、海の10%を守ろうという話で、同じくCBDの「愛知目標11」の中で掲げられているものです。

 今週、「地球規模生物多様性概況第5版」が出されました。これはこの10年間の愛知目標の達成状況などの報告書で、20個の目標はほぼ全部達成できていないという結果が出ています。その中で一部は進捗がある、希望があるというような報告もありました。

 具体的に「愛知目標10」をみると、海の変化に保全活動が追いついていないことや、海の保全を取り巻く制度がいろいろな国でばらつきがあって情報収集に困難しているのではないかなと思い、適切な分析ができていないように感じます。

 また、「愛知目標11」に関しては、陸と海の保護区は達成できる方向ではないかと考えます。実際、11が1番達成できそうな目標ともいわれています。

 海洋の生物多様性を示す図を見ると、日本の海が生物にあふれていることが読みとれます。さらに、人口密度の高い国のほうが生物多様性も多いようにもみえます。課題としては、生物多様性が豊かなだけに保全の仕方にも工夫をしなければいけないと考えます。

 里山と里海のつながり。森・里・川・海のつながりというのがあり、陸の栄養素を海に運び、それが生物の餌になっています。陸に住みながら、海とのつながりを意識すれば、陸からも海に対する保全ができるのです。里山・里海はいろいろな人の力によって守っていけるのです。

*以上、イヴォーン・ユー研究員の発表を要約・編集しました。

 

基調講演:海洋生物多様性の保全~海洋保護区について~

 基調講演は、環境省自然環境計画課の木村麻里子氏にお話しいただきました。

環境省自然環境計画課の木村麻里子氏

 木村さんは自然保護官として10年前に環境省に入省。COP10にも少し関わることができたそうで、その後、日本全国の国立公園や自然環境が豊かな場所にて希少種などの保護増殖などに関わり、現在は自然環境計画課に所属して、海洋生物多様性の担当をしています。

「現状の海洋保護区」「沖合域の新たな海洋保護区制度」「来年以降の海洋保護区」の3つを中心に発表がありました。

 

 国際的な海洋保護区に関する目標は、生物多様性条約の「愛知目標11」と、SDG14・5に設定されています。これをごくごく簡単に言うと、「2020年(今年)までに海の10%を保護区として保全しましょう」という目標となります。

 では、現状はどうでしょうか? 主な海外の大規模な海洋保護区の事例(位置図)を見ると、大規模な保護区が設定されていることがわかります。全海域(公海を含む)の約7.5%、管轄権海域(公海を含まない。EEZ《排他的経済水域》の内側)の約17.3%が保護区となっています。公海に関しては、誰がどうやって海洋保護区を設定するかがまだ決まっていなくて、現在議論をしている最中です。ちなみに、公海を除けば、目標の10%は達成していることになります。

 国別の海洋保護区の設定状況をみていきましょう。1位はイギリスでEEZの47.5%、日本は7位で8.3%です。10%目標にはまだ足りていません。ここで、日本の海洋保護区の制度についてもう少し詳しくお話します。そもそも「海洋保護区」とは何でしょうか? 愛知目標で10%にするとしていますが、その当時は詳しい定義はなされていませんでした。日本ではその半年後に、「海洋生物多様性保全戦略」を策定し、「生物多様性の保全および生態系サービスの持続可能な利用を目的として、法律などにより明確にエリアを決めて管理されている地域」のことを「海洋保護区」とする定義が定められました。

 では、この海洋保護区の定義に合致するものはどれくらいあるのでしょうか? 実は、「海洋保護区」という名前のところはなく、いろいろな制度で管理されている区域を海洋保護区としてカウントしているという状況です。目的別には、「自然景観の保護など」「自然環境または生物の生息・生育場の保護など」「水産動植物の保護培養など」の3つがあり、「水産動植物の保護培養など」の割合が一番多いです。これらを足したものが、先のEEZの内側にある8.3%の海洋保護区となります。

 石川県の自然公園をみてみましょう。能登半島国定公園は50年以上前に指定されたもので、能登半島の変化に富んだ長い海岸線が中心となります。国定公園の制度の中にある海域公園地区は「木ノ浦海域公園地区」と「内浦海域公園地区」の2つが指定されています。

 自然公園というと、ただ守るだけと思われがちですが、実はそれだけではなく、いろいろな人たちに来てもらい、自然環境を楽しんでもらう、要するに利用してもらうということも大事な目的の一つとなっています。利用と保護もどっちも大事な両輪で、このバランスを図って管理をしていくということが自然公園なのです。

 日本の海洋保護区を場所別に「沿岸域」か「沖合域」かで分け、目的別に「自然景観や生物の生息域場等の保護目的」か、「水産動植物の保護培養などの目的」かで分ける4つのブロックにすると、「沖合域」での「自然景観や生物の生息域場等の保護目的」だけが海洋保護区には含まれていません。日本の8.3%という保護区の多くが沿岸域に設定され、また、沖合域での自然景観などの保護は適用可能な法律がなかったため、指定されていないのが現状です。

 日本の沖合域をみてみましょう。日本の管轄海域というのはとても広く、世界で第6位の面積となります(各国が持つ海外領土を除いた場合)。沖合域には多様な環境や生態系が形成されていて、3万種以上の生物がいます。これは世界の全海洋生物種数の14%にあたります。太陽光も届かず、ものすごい圧力を受けている深海にもたくさんの生物がいます。なかなか調査に行けない場所なので、今後調査が進めば、まだまだ新しい生物が見つかるような、未知とロマンが広がっている場所でもあります。

 深海に生息する生物資源利用上の意義というのもあります。その代表的なのは2008年にノーベル賞化学賞をとった、オワンクラゲなどの蛍光タンパク質の利用や、バイオエタノール生産などに活用できるカイコウオオソコエビなどが挙げられます。

 

沖合域の新たな海洋保護区制度

 新たに沖合に海洋保護区を設定することになり、沖合域を守る法律がなかったので、自然環境保全法を改正して、沖合の海洋保護区制度ができました。沖合海底自然環境保全地域と呼ぶ、指定された区域では、鉱物の採掘や底引き網漁での海底の動植物の捕獲は規制されるようになります。最初に指定される海域としては小笠原方面の沖合域が有力視されていますが、現在、2020年内指定に向けて調整中で、仮に案通りに指定されれば、日本の海洋保護区割合は一気に13.3%となり、愛知目標11とSDG14・5が達成されることになります。

 しかし、「これで目標達成、バンザイ!」ということでよいのでしょうか? 問題提起の意味も込めて、最後に来年以降の海洋保護区の話をします。海洋保護区は10%を達成できても終わりではありません。管轄権海域よりも公海の方がはるかに面積が大きいので、公海をどうするのかを決めないと、いくら自国のEEZの中で海洋保護区を設定しても、全海域の保護区の割合を10%にするのは難しい状況です。

 さらに一方で、2030年までに海域の30%を海洋保護区にしようという話もあります。海洋保護区は広いほうが保全が進んでいいと思いますが、それだけの広い面積となると陸からかなり離れた沖合を指定することになります。指定した以上は、そこをちゃんと管理して保全していかないとなりませんが、そのためのコストも膨大なものとなります。実際問題として、どうやって管理や保全をするのかという話もあります。

 なかには自然保護区の野生動植物種に由来のものは一切利用してはダメ、何も手を付けてはいけないという考えの人も一部にはいます。海洋保護区でも一切漁業をしてはダメだという考えを持っている人もいます。しかし、人と自然環境との関わりがある中での持続可能な利用、つまり人が手を入れることで保全されているような面もあり、一切手をつけなくて保全が図られるのかということに、私は疑問を持っています。これに関しては皆さんにもぜひ考えてもらえるといいなと思っています。

*以上、木村麻里子氏の基調講演を要約・編集しました。

 

活動紹介 ①「能登九十九湾におけるアカテガニを介した森と海のつながり」

 能登の里海での活動報告その1を石川県立大学教授の柳井清治氏に発表していただきました。柳井さんは、能登の九十九湾(つくもわん)でアカテガニを指標にして、森と海のつながりを研究しており、その成果をお話しいただきました。

 

石川県立大学教授の柳井清治氏

 九十九湾では、アカテガニが毎年海に卵を放ちにやってきて、また、それを利用するいろいろな魚も集まってきます。そのようなことで、アカテガニは森と海のつながりを象徴するような生きものになっています。

 さて、アカテガニはどんな生きものなのか? 通常は森の中に棲んでいますので、森の中の生態系に含まれています。その子どもはゾエア、そして少し成長するとメガロパといいますが、いったん海に行ってから、陸に戻ってきます。アカテガニはおもに西日本、台湾、中国東部にいます。日本が北限とされています。アカテガニ類の生活史の最大の特徴というのは、陸と海を行き来するということ。親ガニは陸域に棲んでいますが、子どもは海に行って大きくなってまた陸に戻ってきて、森の中で生活をします。

 アカテガニは森の中に棲んでいて木登りが上手。森の中の斜面に穴を掘って棲み、冬眠も穴の中でします。雨水をうまく利用してエラ呼吸をする、森林生活に特化しているカニです。どんなものを食べるかというと、木の葉であったり、木の実であったり、キノコであったり、芋虫も食べます。

 成長したアカテガニは、夏になると卵を海に放つようになります(放仔行動という)。2万から3万の卵を抱えているといわれます。九十九湾には自然の海岸が多く残されており、夏の夜に、たくさんのカニが水辺に集まってきます。もう一つ、面白いのが卵を放つ個体と月齢が同調しているといわれていることです。満月や新月の大潮の時に集まってくるものが多いのです。なぜ大潮がいいのかというと、海に放ったゾエア(子)が効率よく沖合に流されていくからと考えられています。ゾエアがどこまで流されていくのかを九十九湾で調べたら、湾全域に広がっていますが、特に自然海岸が残されている奥の方が密度が高いことがわかりました。

 マアジやボラの仲間をはじめ、ゾエアを狙うたくさんの魚も集まってきます。魚にとっては「夏にごちそうが陸からやってくる」と思っているかもしれません。沿岸に棲む魚にとってはとても重要な餌になっていることも調査から分かりました。

 ゾエアは3週間くらい経つと、カニの形に近くなったメガロパというものになります。メガロパは大潮の時に、自然海岸で小川があるところに大量に戻ってくるということが最近になって明らかになりました。

 

森と海がつながるところにアカテガニは棲む

 能登半島全域でアカテガニが豊富なところを調べると、森と海がつながっていて、自然環境がよく保全されたところという共通点があります。森と海はあっても、その間に防波堤などの障害物があるところは少ないことも分かりました。海から戻ってきた子どもが森の中に帰れるような環境が重要なのです。

 アカテガニを活用した地域・教育活動が九十九湾周辺では盛んに行われています。一つはのと海洋ふれあいセンターが中心になって行っているいしかわ自然学校です。子どもたちを九十九湾に招き、そこに棲むアカテガニなどを観察する会を実施しています。月齢に左右されることや海の中に卵を放つ行動というのはとても感動するものです。

 一方、沿岸周辺の環境が重要だということで、アカテガニが棲む森林を守っていこうということも重要です。環境省が500カ所を選んだ生物多様性保全上重要な里地里山の中に、九十九湾も含まれていて、学生と一緒に森づくり活動も行っています。

 金沢大学が全国の学生を集める公開臨海実習では、「アカテガニに着目した海岸環境の保全に関する実習」を実施。放棄田を整備してアカテガニ・ビオトープを、みんなで泥だらけになりながら整備して、海との連続性もつくっています。

 アカテガニは次世代の子どもを育てる上の環境教育で、とてもいい材料になっているのではないかと思っています。

*以上、柳井清治氏の活動報告①を要約・編集しました。

 

活動紹介 ②「能登里海の生物多様性にダイバーとしての関わり」

 

 能登の里海での活動報告その2を能登島ダイビングリゾートの鎌村実氏に発表していただきました。能登半島の東側に位置する能登島でダイビングの店を開き、17年経つそうです。最初に紹介されたのが、「海の森」の写真。水底から水面を見上げたもので、まるで森の中を歩いているような光景が、海の中でも見れるということに驚かされました。

 

能登島ダイビングリゾートの鎌村実氏

 レジャーのダイビングは熱帯系のところをイメージされることが多いですが、もともとのレジャーのダイビングは、「ちょっと目の前の海に潜ってみようよ」というところから始まっているものです。陸と海とのつながりがあって自然が豊かな能登の海に潜ってみると、山歩きと同じように海の中でもたくさんの楽しみがあります。そこで感じている事をここで紹介しようと思います。

 私は能登の観光・教育に、スキューバダイビングという新たな分野を定着化させることができたのではないかと自負しています。このようなことができている条件として、能登の海の特徴があります。能登半島の西側は季節風の影響を大きく受けて、季節感が楽しめます。一方の東側は季節風の影響が少なく、富山湾の恵みを受けた生態系があります。水深1100メートルの深海がある富山湾の西側となり、水深は浅いですが季節風の影響を受けにくい地域です。その中で、私たちダイバーが入れる浅いところは、海藻の宝庫なのです。

 海藻は多種多様で、生きものを集め、魚のゆりかごともいわれています。海藻があることや、小魚や貝類がたくさんいることで海水の浄化がなされています。そのような景観の美しさは、レジャー・ダイビングにつながってくるところです。しかも、ミナミハンドウイルカというイルカも生息しています。首都圏や関西圏からのアクセスもよく、太平洋側や熱帯地域とは違う海の中の景観が見られることから、人気のレジャー・ダイビングスポットとなりました。

 私は海藻を見る里海のダイビングや冬の日本海に潜るという異日常を体験できるダイビングなどを、新しいレジャー・ダイビングとして提案もしています。一方でこれからの世界を背負って立つ子どもたちにも広めていきたいと思っており、県内の大学や専門学校、高等学校などの学生・生徒を集めて、一緒に潜り、海の中を楽しんでもらっています。

 

漁協とのつながりを持ち、漁業者のサポートにも取り組む

 獲るだけでなく、育てる漁業を考えたとき、「では何をすればいいのか?」ということを、潜水士の視点から提案や協力を行っています。たとえば、能登は定置網での漁が多いのですが、定置網の漁業者に海の中で定置網がどうなっているのかを見てもらうための潜水指導などをしています。また、17年ほど定点観察・撮影を続けていますが、そこで得られた知見を漁業者にフィードバックして、育てる漁業の漁場をどうやってつくっていくかといった場合の潜水作業の手伝いも行っています。

 そして漁業者との協業として、海藻の調査もしています。日本海の海藻は食文化とのつながりが強く、海の中ではどうなっているかを調査して、それを増やす活動を漁業者と一緒に行っています。磯焼けを起こしているところにアマモの種子を植え付けたらどうなるかという研究を、高校の潜水部の生徒に協力してもらって行ったり、もう少し深いところでは、日本海側でよく食べられているアカモクをもっと増やそうと、アカモクの母藻設置も行っています。

 ほかにも真冬に海に潜って牡蠣の生育状態を確認することや、雲丹が増えすぎて海藻がうなく育たないところでの雲丹の駆除の手伝いなどもしています。反対に雲丹を生育したいという場合には、雲丹を育てやすいように雲丹フェンスというものを設置してその中で雲丹を育てていくことをやったりすることもあります。実際の海の中に入って現場を見ながら、いろいろな手伝いする活動をしています。

 現場を見ることで、海洋学や水産学の枠にとらわれず体感してもらうことは学生たちにもしてもらっています。遊びの延長から始めて、中には水産関係の仕事に就く人も出てきました。

 珍しい潜水部がある高校もあり、そこでは部活動としての潜水活動(ダイビングというスポーツ)を通じ、里海での生物多様性を体で感じとっています。また、潜りながら水中のゴミ拾いも行っています。

 海中にはたくさんのゴミがあります。それをきれいに回収して海の生物多様性を守りたいと思っていますが、ダイバー個人のレベルではどうにもならないものがあります。それは、使われなくなった定置網などの漁具。海の中にたくさん沈んでいて、放置されたサザエとりの網に引っかかり、身動きが取れなくなっているサザエもよく見かけます。

 海中に放置した蛸壺をちょっときれいにしたらタコが棲みかに使うようになり、産卵もしました。このようにゴミにちょっと手を加えるだけで、プラスになることもあります。

 

 実際に海に入ることで海と人を結びつける役割を担い、海の資源に付加価値を付け、観光や教育へとつなげ、水産資源を人の手で育て守るなど、能登の里海の生物多様性に関して、ダイバーができることはたくさんあります。

*以上、鎌村実氏の活動報告②を要約・編集しました。

 

引き続き、パネルディスカッションへ

能登半島の西側には冬は荒波が打ち寄せる(撮影/豆本工房わかい)

 

モデレーターをイヴォーン研究員が務め、発表を終えた3人とパネルディスカッションが始まりました。

イヴォーン研究員:木村さん、2人の能登の活動報告を聞いて感想をお聞かせください。

木村さん:陸に特化したカニでも海がないと生きていけないという柳井さんのアカテガニの話を聞き、人間も海の恵をもらって生活しているので狭い範囲では生きていくことはできないと感じました。また、アカテガニのゾエアが沿岸部の魚の大事な餌資源になっていることを聞き、海の生態系を守ろうと思った時に、海だけに向かって何かをしているのでは足りないのではないか? 海と陸の生態系はつながっているということを考えると、海を守ろうと思ったら、同時に陸の生態系も見て、両方合わせて考えていかないといけないということを改めて感じました。

 鎌村さんの写真がすごくきれいで、海の森というのがほんとに言葉通りだなと思いました。高校生たちが一緒になってこのような活動をしていることに感心しました。また、漁業者と一緒になって、漁場を育てて持続可能な漁業を考える活動をされていることはすばらしいと思いました。

イヴォーン研究員:柳井さんと鎌村さんはいかがですか?

柳井さん:海の生態系を守る上で陸の生態系はとても大事だと思います。海と川を行き来する生きものもたくさんいて、その環境もいま非常に悪いです。鮭をはじめ、海を豊かにする生きものがたくさんいるので、森川海の連続性が非常に重要になってくるのではないかと考えています。放仔のシーンは実物を見るとものすごく感動します。しかも月齢に影響していることがとても面白く、宇宙の神秘も感じることができます。

イヴォーン研究員:私もすっかりアカテガニのファンになりました。

鎌村さん:高校生たちは部活動として体力を鍛え、また潜水技術の向上も図っています。それは何かというと、結局は安全に海と親しむためという部分があります。人として地球環境を守る認識を持って巣立っていってくれる子が多いことは、私たちにとっては非常にうれしいことです。

 私の自宅は森と海の間にあり、夏に家の庭を見るとアカテガニがザワザワと歩いています。柳井さんの発表を見て、アカテガニってこうだったんだとすごく勉強させていただきました。

能登半島の先端・珠洲市から富山湾越しに望む立山連峰(写真/豆本工房わかい)

イヴォーン研究員:最後に一般の方でも取り組める海のためにできることを教えてください。

鎌村さん:海を陸上からでなく、ぜひ中をご自分の目で見ていただきたいです。見ることで素晴らしさとか、自分たちが今後何をしていかないといけないのかということが少しでも見えるのではないかと思います。ぜひ海に入りましょう!

柳井さん:ぜひ、陸と海のつながりに感心を持っていただき、森は海に通じるなど、流域全体のことを日頃から気にかけていただければと思います。

木村さん:保全したいと思っている人は多くても、具体的に何をしたらいいのかがわからないということを、私自身も感じることがあります。ただ、その前に、まずは皆さんに海に関心を持ってもらうことが大切だと思います。都会など普段の生活の中で海をイメージすることがない人も結構多いと思います。そういう人にも海に関心を持ってもらい、鎌村さんと同じになりますが、海に入ってもらうということが大事だと思います。

 

閉会の言葉 これからの里海について一緒に考えていきましょう

 

国連大学OUIKの渡辺綱男所長

「皆さんの話から海洋性生物多様性の保全を考えていく上で、とても大事な視点をたくさんいただくことができました。能登の里山里海は世界農業遺産に認定された非常に重要な地。その能登で森と海のつながりをもっと大切にしながら、海とのよりよい関係を目指す取り組みを皆さんと進めていくことができたらすばらしいことだと思います」と、国連大学OUIKの渡辺綱男所長が述べて、セミナーは終了しました。

 

「能登の里海セミナー」は今回が2回めになります。3回目、4回目と続きますので、ぜひ次回以降もたくさんの方に参加いただき、これからの里海について皆さんと一緒に考えていくことができたらと思います。

 

【スピーカープロフィール(登壇順)】

 
イヴォーン・ユー

イヴォーン・ユー

SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)事務局

国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティングユニット(UNU-IAS OUIK)リサーチ・フェロー

シンガポール出身、農学博士(東京大学)、専門は国際水産開発学。初来日の2001年に以降は、宮崎県、シンガポール国家交通省などの勤務を経て、2012年から現職。日本や韓国の世界農業遺産の申請活動を支援するとともに、国連大学の「SATOYAMAイニシアティブ」と「能登の里海ムーブメント」活動にも取り込み、里山と里海の持続可能な発展や、生態系サービスと生物多様性保全を研究。2014年から「能登の里海セミナー」を企画し、里海の研究と保全活動について国内外へ発信。

 

木村 麻里子(きむら まりこ)

環境省自然環境計画課

神奈川県出身。2010年10月に環境省の自然系技官(通称「レンジャー」)として採用。同月に名古屋市で開催された生物多様性条約COP10に関わる。本省国立公園課、釧路(主に知床を担当)、奄美大島(アマミノクロウサギの保護増殖やマングース防除事業を担当)、やんばる(国立公園の新規指定調整を担当)、本省野生生物課(主にワシントン条約を担当)を経て、現在は本省自然環境計画課にて海洋保護区やサンゴ礁保全等の海洋生物多様性に係る業務を行っている。

 

柳井 清治 (やない せいじ)

石川県立大学教授

1956年広島県生まれ。北海道大学農学部卒・同修士課程修了。農学博士。北海道林業試験場流域保全科長、北海道工業大学教授を経て石川県立大学環境科学科教授。研究分野は森林学、砂防学そして渓流生態学など。流域は運命共同体という観点から、環境保全と防災の調和を目指している。2015年に白山手取川上流で発生した大規模崩壊が、流域生態系に与える影響の解明とその復元対策に取り組む。能登半島においては、水産資源に及ぼす森林の役割(魚付き林)の解明をテーマに,九十九湾のアカテガニを介した森と海の相互作用について研究を行っている。また能登半島河川に生息する絶滅危惧種である、カワヤツメの生態調査と保全・増殖をアメリカワシントン州の研究者の協力を得ながら進めている。

 
 

鎌村 実(かまむら みのる)

能登島ダイビングリゾート オーナー

潜水士・ダイビングインストラクター

1959年大阪府生まれ。1978年に始めたスクーバダイビング。1984年にはIT系企業でサラリーマンの傍ら、スクーバダイビング・インストラクター資格取得。1997年独立起業。業務の一部に潜水業を取込み、ダイバー育成に努める。2004年能登の地にダイビング専門企業設立。レジャーダイバーの教育、消防署や専門学校にてプロ潜水士育成、水中撮影などに携わりテレビ番組の誘致、各種団体や漁業協同組合などからの依頼にて海洋及び水産資源調査など担う。現在能登島にて、環境省絶滅危惧種に類される海藻ホソエガサをはじめ能登里海の動植物の情報発信に努めている。

 

セミナーの動画もご覧いただけます。

 

アジア生物文化多様性国際会議開催一周年記念国際フォーラムシリーズ議事録〔電子版〕

2016年10月、石川県七尾市で開催された第1回アジア生物文化多様性国際会議から1年後、石川宣言の実施を推進するため、2回シリーズの国際フォーラムをが開催されました。

 

シリーズ第一回(2017年10月4日)

生物文化多様性とSATOYAMA -自然共生社会を目指す世界各国の取り組みを知る-

 

シリーズ第二回(2017年10月15日)

生物文化多様性を次世代が敬称する為に-東アジアの連携を考える-

 

能登生物多様性研究会の発足

能登の里山里海がFAOにより世界農業遺産(GIAHS)に認定されてから5年の節目を迎えようとしています。OUIKではそれに伴うアクションプランの改定作業やモニタリング作業の支援などを行ってきました。

中でも、4市5町にわたる能登地域で行われている生物多様性モニタリングの活動は、各市町や各種民間団体が独自に行っている生き物調査が中心であり、能登地域全体として統一されたモニタリング手法や生物多様性に関する情報発信や地域の方々と共有するしくみはまだ開発されていません。この現状を受けて、OUIKと金沢大学里山里海プロジェクトが中心となり、能登の生物多様性モニタリングや関連活動を通じて能登GIAHSに貢献するための生物多様性研究会を設立しました。メンバーには地域で生物多様性保全や環境教育に取り組んでいる民間団体の方々、能登の関連する研究機関の方々に参加いただいています。

1月23日には、OUIKがオブザーバーとして参加している、能登GIAHS活用実行委員会と能登GIAHS推進協議会の場で同会の発足を報告しました。今後は推進協議会の生き物しらべや関連する事業と連携しつつ、能登GIAHSとして豊かな生物多様性の保全とモニタリング、そして発信に貢献してゆきます。

石川県金沢市が「SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業」に選定されました!

2020年7月17日、金沢市は「2020年度SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定されました。テーマは「市民生活と調和した持続可能な観光の振興 ~「責任ある観光」により市民と観光客、双方の「しあわせ」を実現するまち金沢~」です。これは観光客が増加する中、自然・歴史・文化に基づく生物文化多様性をベースとし、市民・来街者の双方がまちの魅力を共創し、 持続可能なまちを実現すること目標としています。

日本では2008年、持続可能な経済社会実現に向けて「環境モデル都市」と「環境未来都市」を選定する制度が採用されました。今回金沢市が選定された「SDGs未来都市」は、「環境モデル都市」と「環境未来都市」に加えて、地方創生を一層促進することを目的として、SDGs達成に向けた取り組みを提案するものです。2018年度から各年度最大30都市が選定されており、石川県では珠洲市(2018年度)、白山市(2018年度)、小松市(2019年度)、今年新たに加賀市、能美市、金沢市が選定されました。(自治体SDGsモデル事業としては金沢市が県内初)これらはSDGs17の目標と紐づけられた評価軸で選定されていることが特徴で、目標達成に向けた積極的な事業展開が期待されています。

 

国連大学IAS-OUIKの役割

国連大学OUIKはSDGsの達成に向け金沢市との協働を進めてきました。「2018年のSDGsいしかわ・かなざわダイアローグシリーズ」をはじめ、2019年3月に金沢市、金沢青年会議所、国連大学での三者SDGs共同宣言を行なってからは金沢SDGsプロジェクトを「IMAGINE KANAZAWA 2030」と名づけ、協働を本格始動しました。SDGsや地域の課題への理解を深めるために「SDGsカフェ」という地域の皆さんが気軽に金沢の未来や地域課題について対話できるコミュニケーションの場を提供したり、SDGsミーティングでは地域の様々なステークホルダーの皆さんと協力し、アイデアを出し合いながら2030年の金沢のありたい姿を示す「金沢ミライシナリオ」を作成しました。

 

今後の展開

今後もOUIKは3者の協力体制をプラットフォームとして、SDGsの啓発・周知公報、共創するコミュニティの形成など、様々な場面で協働を進めていきます。特にモデル事業のうち、重要な要素である、魅力的なSDGsツアーの開発において、OUIKが長年の研究で培ってきた「日本庭園と金沢の持続可能性」を考えるワークショップ等の実践経験や、能登GIAHS(世界農業遺産)・白山ユネスコエコパークに関する研究成果を活かし、金沢のグリーンインフラを活かしたツーリズムのあり方や、広域のSDGsツーリズムのあり方に学術的な助言する役割を担っていきます。

OUIK 生物文化多様性シリーズ#4 「地図から学ぶ北陸の里山里海のみかた」

OUIK初のマップブックとして、北陸地方の里山里海の現状や変化、多様な見方を地図から学ぶ教材を発刊しました。北陸地方(石川、福井、富山、新潟、岐阜)のスケール、石川県のスケール、七尾湾のスケールといったマルチスケールでの地図情報をまとめています。(PDF:95MB)

関連ページ(Collections at UNU)  http://collections.unu.edu/view/UNU:6540

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