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地域との研究活動:アーカイブ

『SDGs三井のごっつぉproject』最終回 田の神様祭り

奥能登にはアエノコトと呼ばれる祭りがあります。「アエ=饗」の「コト=祭り」という意味で一年のお米の収穫を感謝して、毎年12月5日に田の神様を家へお迎えします。神様を風呂やご馳走でおもてなしをして春まで休んでいただきます。翌年2月9日には同じようにおもてなしをして豊作を祈願して田んぼへ送り出す行事です。

三井町ではアエノ͡コトではなく、古くから田の神様祭りと呼びそれぞれに家でお祭りされていましたが、近年過疎高齢化などで稲作に携わる人も減り執り行う家も減ってきました。そこで三井地区の区長会を中心に田の神様祭りを次世代に継承するために保存会を作り、三井町漆原にある茅葺き民家旧福島邸で公民館行事として行われています。

毎年三井小学校の子供達も太鼓や踊りで田の神様祭りに参加しています。この一年間は「SDGs三井のごっつぉプロジェクト」でご馳走の材料集めを体験してきたので、4,5,6年生12名が参加して一緒にお供えさせていただけることになりました。

まずは放課後バスで会場に到着しました。曇り空に雨交じりの能登の冬らしい天気となりました。山形公民館長さんはいつもと違って裃姿です。田の神様をお迎えするので正装されているのです。ゴテと呼ばれ一家の家長の役割を果たされます。

 

 

 

 

 

 

みんなで田んぼに向かいます。田の神様がいらっしゃるところには榊が建てられています。蓑や菅笠の衣装の集落の方もいます。昔は今のようなレインコートやビニールの傘がないので稲わらやスゲの草などで編んだ雨具です。

ゴテの手に持たれる松と栗の枝は「依り代」と呼ばれます。神様がそこへ依りついてお運びするためのもので、神様は田んぼの端で「待ってると来る」から転じて「松と栗」を掲げています。

田の神様は稲穂で目をついて失明されたということなので、家へご案内する道中も「段差がございます」や「右へ曲がります」など声掛けをします。ゴテはあたかも田の神様がそこにいるかのように振る舞うので不思議な光景に見えます。

家にたどり着くと「田の神様がおかえりやぞ!お迎えせ−よ!」と家のものに声をかけます。茅葺き屋根の玄関から囲炉裏のそばに入られます。寒い外からいらしたのでまずは暖かい甘酒を差し上げます。神様の大好物だそうです。

続いてゴテはお風呂の湯加減を見て、田の神様をお風呂へご案内します。恭しく榊をお風呂のお湯につけている様子も面白いですね。

 

お風呂で暖まられたら次はご馳走です。座敷には田の神様ご夫婦二人分の御膳が設えられています。二股の大根、御膳には一升枡にあふれんばかりの赤飯、煮しめにはわらびゼンマイ、大根、人参、こんにゃく、油揚げ。あいまぜという青大豆の打ち豆と大根や人参を炒り付けたおかずもあります。冷蔵庫もなく肉や魚が今のように手に入らなかった昔は打ち豆は貴重なタンパク源でした。そして立派な尾頭付きの鯛、大きなおはぎ。お汁に漬物。稲作は力仕事で大変なのでたくさん食べてくださいという意味が込められています。

 

 

 

 

 

輪島塗の御膳は赤く美しくご馳走が映えます。大切にしまってあったものを一つ一つ洗ってきれいにして盛り付けてあります。器の裏には家ごとの屋号を示す印が書かれています。冠婚葬祭などの時はお互い貸し借りするので目印になります。太いお箸は栗の木で、栗は一ヶ月に一寸成長するので一年間で一尺二寸(36.36cm)の長さにします。

お米を選別するときに使う箕という道具には畑で採れた野菜が盛られます。白菜人参カボチャなど色とりどりです。沢山実って嬉しい気持ちになりますね。

ゴテが食べ物を一つ一つ説明します。

子供達も田の神様のご馳走がデザインされた手ぬぐいの上に一人一人がゴテになった気分で自分のご馳走をのせました。

前列の6年生5人が代表してご挨拶をします。

「田の神様、これは5月にまるやまで集めたわらびの塩漬けでございます。」

枯れたススキの間から顔をのぞかせたわらび。赤ちゃんの手のような形にほやほやした毛が生えていましたね。集落のばあちゃんたちに習ってわらで縛って樽に入れてから半年ほどでぺったんこになりました。クンクン匂いを嗅いで臭いと言っている子もいました。

「田の神様、これは7月に珠洲で作ったあごだしでございます。」

羽の生えた魚を初めてみたり触ったり。包丁を手にさばいて串を打って炭火で焼きました。包丁を叩いて作る鍛冶屋さん、穴を掘って珪藻土でコンロを作る工場にも見学に行きました。あごだしはいい出汁が出るので煮しめも美味しくなるでしょう。

「田の神様、これは10月にまるやまで拾って干した勝栗でございます。」

しば栗ひろいはみんな必死で頑張りましたね。生のままかじっても甘かったですね。その場で茹でて針と糸でネックレスみたいに糸を通しました。蛇の皮の鱗を数えたり、絶滅危惧種のゲンゴロウやミズオオバコという花も見られましたね。

みんなで「どうもありがとうございました!」

それから権現太鼓の演奏をみんなで披露しました。

田の神様も今年はきっと三井小学校の子供達の用意したごっつぉを喜んで召し上がったことでしょう。神様だけでなく、来賓の方々や保存会の方がたも子供達が来てくれて賑やかで嬉しそうでした。

田の神様のお食事が終わられたら春まで神棚に上がって休まれます。

上座には大きな米俵が横たわっています。中には籾が入っています。籾とはみんながいつも食べているお米に殻がついたものです。生きているタネです。来年またこのタネを蒔いて米作りの一年が始まるのです。この籾こそ田の神様。

 

 

 

 

 

神様が休まれている間、家族は喧嘩をしてはいけないそうです。みんな仲良く心を合わせて、田畑を耕し、暮らしの糧を得ていかなければ生きていけないような能登の自然の厳しさが背景にあったのかもしれません。

今この様な家族やコミュニティと共にある農業が環境や地域づくりでも生き物やなど自然自然資源や食や伝統文化なども守れる重要な形だと再評価されてもいます。(家族農業の10年 )

 

いつでも、なんでもお金で買える今の時代ですが、自然の恵みを得る喜び、そこから自分の手で作る楽しさ、それを選ぶ選択肢が三井のような里山にはたくさん残っています。小学生のような感受性豊かな時期に五感で、地域の自然や土地に根ざした知恵に触れることができるように大人たちが環境を整えることが大事です。「三井のごっつぉ」を食べて世界へ飛び出し、誇りを持って自分を表現できるような子供達を私たちは送り出したいと願っています。

報告:萩のゆき(まるやま組)

国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」を利用した持続可能な未来へ向けての教育活動をサポートしています。一言で「能登の里山里海」と言っても地域によって異なる様々な伝統文化がありますが、三井小学校のような活動が能登の他の地域でも行われ、里海、里山間で交流が生まれるようなプラットフォーム作りを進めていきたいと思います。さて、次回はどんな「ごっつぉ」を作るのでしょうか?「SDGs三井のごっつぉproject」は通年のプログラムとして続きます。

企画・実行:萩野アトリエ/まるやま組 萩のゆき、萩野紀一郎(富山大学 芸術文化学部 准教授)協力:国連大学OUIK

【開催報告】北陸SDGsステークホルダーミーティング2019

12/17日、金沢歌劇座にて北陸SDGsステークホルダーミーティング2019を金沢工業大学と共同で開催いたしました。 このミーティングは2019年9月6日、国連大学本部にて開催された「『SDGs実施指針』改定に向けたステークホルダー会議」(主催:SDGs推進円卓会議有志、国連大学サステイナビリティ高等研究所)の地方版として開催され、北陸各地から企業、地方自治体、市民団体など様々な立場のSDGsに関わる人々が参加し、北陸のありたい未来を議論し、次世代に向けてSDGsで描く未来を発表しました。

 

 

 

 

 

まず初めに主催挨拶として国連大学サステイナビリティ高等研究所上級客員教授竹本和彦より挨拶があり、SDGsの実施指針が本年末に改訂されるタイミングでこのような会議が地方で開催されることの重要性について語られました。

次に内閣府地方創生推進事務局参事官の遠藤健太郎氏から来賓の挨拶を頂戴頂くと共に国の制作、地方創生とSDGsについてご説明頂きました。

さらに金沢工業大学SDGs推進センター長の平本督太郎准教授からは情報共有があり、この会議の狙いや分科会の進め方についての説明がありました。

今回のミーティングでは以下、5つの分科会に分かれ、それぞれのグループ内で2030年の北陸の姿について具体案をシナリオ形式で制作しました。

分科会① 誰もが暮らしやすいまちとは

〜どうして東京にヒト、カネ、モノ、情報が集まる?この流れを変えるにはSDGsの視点をどのように取り入れ地域を元気にしていくか?

ファシリテーター:三島由樹(㈱フォルク代表取締役 / ランドスケープ・デザイナー )北川達也(金沢工業大学情報フロンティア学部 経営情報学科)

分科会② イノベーション:地域での創造と、世界への発信 〜私たちは地方から何を創造して、何を発信し、世界の人と共感を得ていくのか? SDGsはその共通言語となるのか、テクノロジーとどう共存していくのか?

ファシリテーター:大沼洋美(㈱ヒロ代表)福島健一郎((一社)コード・フォー・カナザワ代表理事、アイパブリッシング㈱代表取締役)

分科会③ 教育:人生100年時代のキャリアと学びとは

〜人生100年時代のキャリアをどのように楽しみながら築きあげていくのか?

ファシリテーター:宮谷直樹(Start SDGs運営責任者)丸山祥子(ファミリービジネス専門 ファシリテーター)

分科会④ パートナーシップ:みんなの力を地域で結集するしくみ

~SDGs達成のために地域で様々な主体がセクターや組織を超えて共創するためには?

ファシリテーター:谷内博文(金沢市市民活動サポートセンター)塚本直之(コマニー㈱)

分科会⑤ 多様性:多様な人々が意思決定に参加できる社会とは

~多様な人々が意思決定に参加できる社会ができると私たちの生活は今とどう変わっていくのか?

ファシリテーター:北村健二(能登SDGsラボ 社会部門コーディネーター)渡邉さやか((一社)re:terra代表)

 

 

 

 

 

分科会では始めにNRI未来年表 2020-2100や総務省「未来をつかむTECH戦略」などの資料に目を通し、未来像を抽出しながら2045年の働き方とライフスタイルについてありたい姿を描きました。更に今回のイベントではペルソナ(人格)を設定し、その人が生きる人生のストーリーやターニングポイントを具体的な内容で次世代へのシナリオを参加者が制作しました。

 

 

 

 

 

午後の分科会の後にはそれらのシナリオを学校帰りに参加してくれた学生や生徒の皆さんに報告し、評価してもらいました。テクノロジーの進歩で可能になるシステムや家族の在り方の変化などたくさんのアイデアが共有されました。

参加者の皆様には最後まで真剣に取り組んで頂きありがとうございました。また、最後の共有セッションに参加して頂いた学生の皆様にも感謝申し上げます。

『SDGs三井のごっつぉproject』第7回 

2019年5月に始まった「SDGs三井のごっつぉproject」では輪島市三井を中心に能登の「ごっつぉ(ごちそう)」を巡るフィールド学習を行ってきました。今回、11月26日に行われた第7回目はまとめの回として世界の食に関する問題を学んだり、いろいろな国の食を味わったり、春にみんなで作ったワラビの塩漬けの塩抜き作業をする回になりました。

はじめに「今、世界が面している食に関する問題」についてSDGsの視点で国連大学OUIKの富田から紹介がありました。「17個あるSDGsのゴールのうち、「食」に関係してくるゴールはどれかな?」という問いかけに「2番(飢餓をゼロに)食べ物のマークあるけど飢餓ってなんだろう?」「14(海の豊かさを守ろう)とか15(陸の豊かさを守ろう)も関係するね。魚も食べるし」「6(安全な水とトイレを世界中に)もじゃない?水飲むし、水ないと畑もできんし」「農業とかは16(気候変動に具体的な対策を)にも関係するんじゃない?」と、とてもたくさんの意見が出ました。生徒たちはSDGsを通してグローバルなスケールで物事を考えたり、ゴールと問題を関連付けることが出来るようになり、SDGsの理解をさらに深めているようでした。

次に日本に住んでいるとなかなか聞くことがない「飢餓問題」について国連WFPのハンガーマップを見ながら考えてみました。「アフリカが深刻」「日本は全然大丈夫だね」と生徒たちは自分たちのテーブルに置かれた地球儀を使いながら場所を確認していました。現在地球上では8億2,100万人、約9人に1人が「栄養不足」であるという調査結果が出ています。SDGsのゴール2でもある「飢餓をなくそう」は途上国特有の問題と捉えられがちです。しかし気候変動や先進国の経済活動が飢餓問題の要因となっていることもあり、先進国に住む私たちちも真剣に向き合うべき問題です。

更に関連した話題として食品ロスの問題や未来の農業にも目を向けてみました。テクノロジーが食品の流通や農業そのものを効率化する一方、2017年に国連は2019年~2028年を国連「家族農業の10年」と定め、食料生産おいて主要な農業形態である家族農園の更なる活性化を図っています。話を聞きながら「残さず食べてるよ!」「家でも畑しとるよ」と話す生徒たちもちらほら。皆さんなりに食品にまつわる問題に向き合っているようです。

 

 

 

 

 

 

次に世界の食卓を覗いてみました。「地球の食卓―世界24か国の家族のごはん」(著者=ピーター・メンツェル+フェイス・ダルージオ)に掲載されている、さまざまな国や地域の「ひと家族における1週間分の食料」の写真を見ながら、気づいたことを発表しました。「パンがたくさんある、パンが主食かな?」「野菜が多いけど肉が全然ない」「家族が多い!来ている服も全然日本と違う」など、たくさんの発見がありました。国や地域によって食料の種類や量、家族の雰囲気が様々で、見たことのない食材も沢山あったようです。私たちの食卓に乗っている食材も世界の他の地域に住む人にとっては不思議な食材なのかもしれません。

次に萩野さんより5月にみんなで作った「ワラビの塩漬け」の塩抜きについて教えてもらいました。山菜を茹でたり、塩抜きをするときは銅鍋を使うのが昔から伝わる知恵だそうですが、どうしてでしょう?萩野さんによると銅鍋を使うと銅イオンが葉緑素(クロロフィル)とくっつき、食材の変色を防げるそうです。不思議ですね!

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく使っていないと銅鍋には緑青(錆)がつきます。この授業ではは同じ銅で出来た10円玉を使って緑青取りを行ってみました。準備したのは酢と塩。これらを混ぜて磨くだけで綺麗な輝きを取り戻します。つやつやになった10円玉、日常生活にもいろいろな化学が隠れていて面白いですね。

綺麗に塩抜きできたこのワラビの塩漬けは、12月5日の「あえのこと」にて神様にお供えする予定です。

最後は「能登空港発 世界一周ごっつぉツアー」ということで鈴木さんのブルキナファソ料理「トー」、OUIKインターンのフェリックスさんのスイスの「ロシュティ(Rösti)」OUIK富田のイギリス/オーストラリア料理「ベジマイト」を食べるツアーを行いました。まずはブルキナファソの「トー」。これはヒエやトウモロコシなどの粉をお湯で練ったお餅のようなものに、ソースをかけて食べるもので、今回はトマトを使ったシチューのようなソースをかけました。現地ではとてもよく食べられている料理だそうです。次はスイスのジャガイモ料理、「ロシュティ」です。細く切ったジャガイモをプライパンで焼いたもので、ソーセージなどの付け合わせとして食べることが多いようです。見た目はお好み焼きに少し似ていますが表面がカリカリしてとてもおいしいです。今回はスイスの代表的なチーズの1つ、「グリュイエールチーズ」も試食しました。最後はイギリスやオーストラリアで親しまれている「ベジマイト」をトーストに塗ったものです。チョコレートみたいに見えますがしょっぱく、発酵した独特の臭いがあります。現地ではよく朝食などで食べられているそうです。

ブルキナファソの「トー」

スイスの「ロシュティ」

イギリス/オーストラリアの「ベジマイト」

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめて食べる料理に生徒たちも大興奮です。ベジマイトは想像と全く違う味がしたらしく、かなりてこずっていたようでしたが、トーとロシュティに至ってはみんなおいしそうに食べていました。住んでいる地域や環境、文化が違うとそこで食べられている「ごっつぉ(ごちそう)」も多種多様です。最後にまるやま組の萩野さんは「今やいろいろな地域の料理がどこにいても食べられる時代となりましたが、自分たちが育った地域の「ごっつぉ」の味を忘れないでほしい」と話しました。

報告:国連大学OUIK

国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」を利用した持続可能な未来へ向けての教育活動をサポートしています。一言で「能登の里山里海」と言っても地域によって異なる様々な伝統文化がありますが、三井小学校のような活動が能登の他の地域でも行われ、里海、里山間で交流が生まれるようなプラットフォーム作りを進めていきたいと思います。さて、次回はどんな「ごっつぉ」を作るのでしょうか?「SDGs三井のごっつぉproject」は通年のプログラムとして続きます。

企画・実行:萩野アトリエ/まるやま組 萩のゆき、萩野紀一郎(富山大学 芸術文化学部 准教授)協力:国連大学OUIK

OUIK 生物文化多様性シリーズ#5 金沢の庭園がつなぐ人と自然  ー持続可能なコモンズへの挑戦ー

金沢の日本庭園の活用方法を防災、観光、景観など多面的なアプローチから解説すると共に、持続可能な都市と生態系保全に向けたアイデアを提唱しています。

地図情報の集約:生物文化多様性や生態系サービスを理解する学びに貢献

OUIKでは、『地図情報から見た能登の里山里海』、『地図情報から見た金沢の自然と文化』をはじめ、地域の自然と文化のつながりを分かりやすく理解するための地図情報整備を進めています。
北陸地方を対象として、県レベル、市町村レベルでのマルチスケールでの地図情報を集約しています。その際に、生物多様性、文化多様性、生態系サービスといったキーワードを軸に、地域のニーズを反映しながら、視覚化や定量化に工夫し、地域に役立つ学びと情報発信のツールづくりを行っています。

世界農業遺産国際貢献プログラムとの共同スタディツアー2019

第2回目となるいしかわ世界農業遺産国際貢献プログラムとの共同スタディツアーが開催されました。このプログラムは石川県が主に開発途上国を対象に、世界農業遺産認定の支援や、地域振興に向けた能力開発研修を実施することで、持続可能な発展に貢献するプログラムです。 

第1回目の去年と同様に石川県、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)学術プログラム、国連大学いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)が能登をフィールドに共同企画・開催し、国連大学、金沢大学、名古屋大学、東北大学、東京農業大学の留学生からなる世界13か国総勢17名が3日間にわたり能登地方を訪問し、里山里海を活用した地域振興の取り組みを学びました。 

1日目、最初の訪問先は輪島市で「土地に根ざしたくらし」をテーマに様々な活動を行う「まるやま組」です 

まるやま組の代表である萩野さんご夫婦は東京やアメリカでの暮らしを経て、ここ輪島に移住してきました。建築家である萩野紀一郎さんとデザイナーである萩のゆきさんは地域の人たちとつながりながら、里山での暮らしをテーマに一般の方を対象にしたワークショップや小学校との共同教育プログラムを開催しています。 

 

地域に古くから残る伝統的な文化や農法を持続可能な形で次世代に伝えていくことが里山の生物文化多様性を守ることにつながると萩野さんは言います。 

昼食をはさみ午後の訪問先「いしかわ農業ボランティア」の現場に向かいました。石川県では農村でのボランティア活動を希望する個人や企業、団体の方々を「農村役立ち隊」、ボランティアの受け入れを希望する集落を「受け入れ隊」として登録し、マッチングすることで協働活動を推進しています。 

 

 

 

 

 

 

この日は金沢市内から茅葺屋根に使うススキを刈り取るボランティアの方々が参加していました。「受け入れ隊」の西山 茂男さん(みい里山百笑の会にお話を聞いてみると「昔はこの集落全部の家が茅葺屋根だった、今年は自分の家の屋根の手入れ、来年はあなたの家の屋根、という風に自然に協力関係ができていたが、近年の人口減少で担い手が減った結果、茅葺屋根の建物も残り2件まで減ってしまった。このようにボランティアの人たちの助けも借りてどうにかこの2件を残して行きたい。」と語りました。 

能登地域には古くから「結(ゆい)の精神」と呼ばれる集落の住民総出で助け合い、協力し合う相互扶助の精神あり、茅葺屋根は減ってしまったものの現在も農作業や草むしりなどを協力して行うそうです。ポーランドからの留学生は「自分の家のことだけではなく、集落一帯をコミュニティーとしてとらえ、協力しあうことは素晴らしい文化だと思う。」とコメントしました。 

1日目、最後の訪問先は穴水町の牡蠣の養殖場です。 

 

 

 

 

 

 

七尾湾に面するこの地域では穏やかで栄養分も多い内海を利用し、牡蠣の養殖が盛んに行われています。12月から5月はマガキ、夏の間は岩ガキがこの地域から全国に出荷されます。 

牡蠣の養殖業を営む松村さんに養殖技術や近年のインターネットなどを利用した出荷システムについて学びました。その後、ボートに乗せてもらい実際の養殖現場を見学させていただきました。マガキは12月ごろから出荷が始まるため、まだ十分成長しきっていませんでしたが、初めて見る牡蠣の養殖現場に留学生たちは興味津々でした。 

穴水に移住し、漁業と養殖業を行う齊藤さんにもお話を伺いました。シーズンオフの時期でも安定した収入を得るために牡蠣の養殖業のみならず、それ以外の漁業行う傍ら、夫婦でレストランを経営しているそうです。「1年を通して忙しいが、自然豊かなこの土地で自分の好きなことを職業にできることを幸せに思う。」と語りました。目の前の海から上げた牡蠣をその場で食せるこのレストランを目当てに遠くから足を運ぶ方も近年増えているようです。 

 

 

2日目の朝は能登町の「木の駅プロジェクト」について学びました。 

 

 

 

 

 

 

日本では人口減少や高齢化による人材不足、そして木材の輸入自由化に伴う林業の衰退により、近年放置される森林が増えています。一度手を加えた森林はその後も管理が必要ですが間伐をはじめとする森林の整備はとても手間がかかる割に採算が取れないこともあり、森林の荒廃が目立つようになりました。手入れが行き届いていない森林は台風の被害を受けたり大雨等による土砂災害も起こしやすくなると共に二酸化炭素を吸収する働きも低下するそうです

このように問題が山積みとなっている森林整備の現状を地域経済の活性化と組み合わせた形で解決すべく立ち上がったのがこの「木の駅プロジェクト」です。これは山林所有者が間伐材や林地残材など、利用価値の少ない木材を「木の駅」に出荷すると地元の商店などで使える地域通貨と交換できるシステムです。これは全国に広がりつつあるプロジェクトで収集された木材はチップや薪などの用途として販売されるそうです。 

能登町には現在木の駅が2つあるそうですが、そのうちの1つを見に行きました。この日はたまたま木材が買い取られた直後だったのかほとんど見当たりませんでした。真ん中にポツリと置いてある郵便ポストの中には記録用紙が入っており、木材を持ってきた人が量や大きさ、そして連絡先を書き込む仕組みになっています。その後、管理者が用紙をチェックしたのち地域通貨と交換する案内が届くそうです。 

 

木の駅を後にした一行は、春蘭の里へ向かい、多田さんと共に里山にキノコ採りに行きました。 

 

 

 

 

 

 

手入れが行き届いている多田さんが所有する森林では春には山菜が、秋になるとたくさんのキノコが採れるそうです。食べられるものと食べられないものがあり、中には判断が難しいものも多くあります。多田さんにチェックしてもらいながら、たくさんのキノコが採れました。この後、春蘭の里に戻り、多田さんのご自宅で調理してお昼ご飯と一緒に食べることにしました。 

能登町に位置する春蘭の里は集落全体に農家民泊施設が40数件あり、里山のリアルな暮らしが体験できる場所です。多田さんの家の宿泊施設となっており、前日はイタリアからの観光客が宿泊して行ったそうです。 

 

 

 

 

 

 

多田さんの自宅での昼食は輪島塗の漆器でい頂く、里山の恵が詰まった野菜中心の食事です。収穫したキノコも美味しくいただきました。 

午後は輪島市に戻り、仁行和紙を訪問しました。ここで昔ながらの方法で和紙を作っている遠見和之さんに和紙の作り方や、ここで作られている和紙の特徴をお話頂きました。和紙の原材料となるのは楮(こうぞ)呼ばれる植物で近くの森林から採取しているそうです。工房の側にもたくさん自生していました。この皮の部分を剥いで蒸し、煮込み、細かくすることで和紙の元になる白い繊維質ができます。 

 

 

 

 

 

 

遠見さんにお手本を見せてもらい、学生の皆さんも紙漉を体験しました。簡単そうに見えて均等な厚さにするために素早く手を動かすのがとても難しいそうです。お好みで植物や貝殻を入れてオリジナル和紙を作ることも可能だそうです。 

 

 

 

 

 

 

遠見さんの代で3代目になるこの工房は遠見さんのご祖父様が中国で紙漉の技術を学んで来てから続いているようです。近年では壁紙や名刺、お酒などのラベルに使用するための注文も増えているそうです。

 

最終日の3日目の朝は輪島の朝市を見学しました。その後、能登空港の会議室で金沢大学能登学舎の伊藤浩二さん(特任准教授)により、能登里山里海SDGsマイスタープログラムについての講義を受けました。このプログラムは少子高齢化が進む能登地域にて里山里海の自然資源を活かし、能登の明日を担う「若手人材」を育てる人材開発プログラムです。修了生と連携し講義プログラムを組むため研究内容も様々で幅広い分野の知識を学べます。 

 

午後は学生たちの最終発表とディスカッションセッションが行われました。このアカデミックプログラムはUNUIASのTrans-disciplinary and Graduate Research Seminar(TGRS)という共同演習のコマとして実施しているものでUNU-IAS斎藤修教授と共に学生たちは「高齢化と人口減少」をメインテーマに掲げ、「教育」「持続可能な生業」「ツーリズム」といった3つのサブテーマに分かれ、3か月前から事前研究を行ってきました。

今回の発表では事前研究の内容に過去3日間で得られた能登里山地域に関する洞察と課題に対応するための戦略やアイデアを付け加えて発表しました。 交流人口を増やすためのアイデアや留学生や学生に能登で活動してもらうため大学との共同プログラム、更にエコツーリズムに関するプロモーション戦略など、たくさんの意見が出ました。地元との関係者の方々にもディスカッションに参加して頂き、3時間にわたり活発に意見交換を行いました。今後はこれらのアイデアを具体的に形にしていくために学生たちは研究を続けていく予定です。 

【開催報告】SDGsカフェ#8 「つながり、助け合うのに必要なことは?~パートナーシップの新しい形を考える~」

「小春日和の日曜の朝に、爽やかにパートナーシップを語り合いましょう!」と、国連大学OUIKの永井事務局長の挨拶で始まったSDGsカフェの第8回。今回のテーマは、SDGsのゴール17に据えられたパートナーシップです。

「パートナーシップって、ゴールというより、アプローチでは?」と思われるかもしれませんが、SDGsのゴールはいずれもものすごく幅広く、誰か一人の力で解決できるものではありません。
そこで必要となるのがパートナーシップであり、「それだけ重要だからこそ、17番目のゴールに位置づけられている」(永井)となります。

いろいろな人を招いて、2030年の金沢をIMAGINE(想像)してもらうこのSDGsカフェ。
今回は、前代未聞のアプローチで「金沢SDGs行動計画」を策定している金沢市企画調整課の笠間彩さんがIMAGINEします。
そして、『ソーシャルプロジェクトを成功に導く12ステップ コレクティブな協働なら解決できる! SDGs時代の複雑な社会問題』(みくに出版刊)の著者で、株式会社エンパブリック代表取締役の広石拓司さんから、いろいろアイデアをいただきながら、2030年の金沢について、会場の皆さんと一緒に考えてみました。

金沢SDGsを動かしていく主体は市民であるということ

金沢市と金沢青年会議所(JC金沢)、国連大学OUIKとが、2019年3月にIMAGINE KANAZAWA 2030を立ち上げ、現在、来年からの行動計画を市民と一緒に、まさしくパートナーシップで考えるプロセスが進行しています。
これは、金沢市ではほとんど前例のない方法であり、それを行政が行うのは難しい中で、いろいろ調整し、骨折りしている笠間さんから、パートナーシップで創る2030年の金沢を想像してもらいました。
笠間さんは大学生の時に、地域の皆さんと力を合わせてまちづくりをしたいと思いはじめ、市役所に入り、幸いにもそんな想いを実行するために力を蓄えられる部署を渡り歩いて来たそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでまず、金沢SDGsの概要について、おさらいをしておきます。
市とJ C金沢、国連大学OUIKの3者によって、金沢SDGsの5つの方向性を導き出しています。

1. 自然、歴史、文化に立脚したまちづくりをすすめる
2. 環境への負荷を少なくし資源循環型の社会をつくる
3. 次代を担う子供たちの可能性を引き出す環境をつくる
4. 誰もが生涯にわたって学び活躍できる社会風土をつくる
5. 文化や産業に革新的イノベーションが起きる仕組みをつくる

これらをより具体化して、皆さんが実際に取り組んでいくために、「どんなことをやったらいいか?」「具体的にどんな行動をとったらいいか?」ということ(行動計画)を示さなくてはなりません。それは3者だけでなく、40人近くのステークホルダーの方に集まってもらい、「SDGsミーティング」という形で、4回にわたって練られてきました。

並行して、教育、シビックテック、気候変動危機、文化のまちづくりといったことをテーマに、自由な意見交換の場をとなる「SDGsカフェ」を実施。こちらは、今回で8回目となりました。

「フォーラムなどで、“教育”とか“環境”をテーマにすると、今までは、“教育に興味がある人”、“環境に興味がある人”だけが集まることがほとんどでした。しかし、“SDGs”とか“金沢”というワードをつけると、違う分野の人も集まってくださり、そこで『化学反応が起こる』ということをたくさん目の当たりにしています。参加者同士が自然に繋がりはじめ、横のつながりができ、私たちが仕掛けるもの以外に、新しい仕掛けを参加者が作ってくれるようになったんです」(笠間さん)

具体的な行動計画を立てるところから市民に参加してもらい、自分たちが作った目標、自分たちが作った行動計画、さらにはその行動がちゃんとできているかのチェックまで、すべてを自分事として考えることができる、「“金沢SDGsは自分たちのもの”と思えるプロセスをとっていきたい」と強調します。

金沢SDGsの市役所の担当として、笠間さんが学んだり悩んだりしていること

市役所が参画している事で信用されることもあり、また、とりあえずやってみたり、手当たり次第に伝えてみたりすることで、道が開きつつある手応えを感じる一方で、SDGsに対するアレルギー反応も感じているそうです。
SDGsというのが、「みなさんをどこか一つの方向へ持っていこうとするもの」と思われたり、同調圧力や「何かよくわからない」ことからくる恐怖感みたいなものを感じたりする人もいるのだとか。
SDGsを動かすものは、 “個々を活かせるコレクティブな協働”(後述)ですが、その概念を伝えることの難しさを痛感しているそうです。
さらに、フラットな気持ちでいろんな人の意見を聞くと、すべてに一理あることに気がつくそうで、SDGsの誰も取り残さない理念に則り、すべての意見を反映させようとすると、やならければいけないことが膨大となってしまい、「果たしてこれは実現可能なんだろうか?」ということも悩みのタネだとか。

2030年の金沢はどんな風になっているか?

金沢SDGsが描いている“5つの方向性の金沢”になっていることはもちろん、みなさんがまちを良くしたいなと思った時に、金沢SDGsから解決策を見つけられたり、その判断の拠り所になったりしてほしいと笠間さんは言います。
そして何より一番は、金沢の人全員がまちづくりを自分事と捉え、個々の力を活かして、自然に協力しあっている、そんなまちになっていることだそうです。
「2030年には、何か問題を解決したいという時に、みなさんが自然と力を合わせられるようなまちに金沢がなっている事が私の一番の望みというか、夢です」(笠間さん)

SDGsにこめられた想いをおさらいしてみる

引き続き、パートナーシップのいろいろな取り組みをされている広石さんからの話題提供がありました。実は、笠間さんの話を受けて、その悩みに対する答えも、急きょ用意して発表内容を組み直したそうです。

SDGsが2015年に国連で採択され、行政とかに勧めても、「それって国連の話ですよね?」って言われて、当初は関心が低かったそうです。それでも気がつけばビジネスとしての機運が高まり、SDGsをやりたいという人たちもたくさん出てきたと振り返ります。
「パートナーシップ」はプロセスなのかゴールなのかという議論は国連でもあったそうですが、一方で大切なのは、パートナーシップの姿自体が2015年から2030年に向けて変わっていかないといけないのではないか? という議論もあるそうです。

ミレニアム開発目標(MDGs)は途上国の問題を、世界中が協力して解決しようとするものでした。
途上国の問題は、途上国を支援すれば解決するか?――実はそうではなく、いろいろな資源を消費している、つまり先進国の人たちのライフスタイルや考え方を変えていかないといけない事があります。その上、先進国の中にも貧困問題や社会問題が起きています。
途上国、先進国という考え方が前世紀的であって、その問題を一つずつ潰していかないといけないという考え方も現実的ではなくなってきていることに気がつきました。
そこで誕生したのがSDGs。そして、途上国の貧困や環境問題などと、先進国の意識や価値観、ライフスタイルなどとを、共通のこととして橋渡しをするようなゴールが必要となり、それがSDGsのゴールなのです。

問題があるから解決しなければいけない。ソリューションは大事ではあるが・・・

企業でも顧客の困りごとを解決することが価値を生んでいます。その場合、課題が明確になっていなければなりません。
“複雑な問題”と“難しい問題”は別のもの。難しい問題は答え合わせができますが、今の社会の問題は複雑で、多様な要素が相互作用しあい、複雑な文脈が絡み合って生じているため、問題の主な原因を一つに同定できません。
今までは、問題があると一つずつ潰してきました。つまり、あくまでも前提となるのは、 “問題のない状況”なのです。
「果たして問題のない状況というのはどのようなものでしょうか? そして、一つひとつ問題を潰していくというアプローチで本当にいいのでしょうか? 一つひとつ問題を潰すより、いっそのこと、皆が幸せな世界を作っちゃった方が早いし、トータルコストが安く済むのでは?」(広石さん)

システムで起こっている動的な問題、複雑な要因で起こっているものは複雑な解決策が必要です。問題が起こった時に、誰かが何かをやってくれたら解決するというものではなく、自分たちで予防とか早期発見とか解決できるように、地域のコミュニティとか社会がレベルアップしていく事が必要なのだと、広石さんは付け加えます。

複雑な問題を解こうとしている事例紹介

一例として広石さんが取り上げたのがペットボトルについて。海外にあるような水筒(マイボトル)をリュフィルできる環境(給水スポットなど)ができていない中で、ペットボトルを我慢しろという言い方をするのは無理があり、逆に無料でリフィルできる環境ができれば、生活困窮者も安全で質の高い水が飲めるようになり、観光客にも良いし、市民の人たちにも良い――そんな問題解決の仕方。
行政は水の飲める環境を作り、それに呼応して市民も企業もちょっとずつ動き出すことで、変化が起こっている、そんな海外の事例を紹介しました。

また、パリではまちの中に森をどんどん作っているそうです。2014年から20年に、トータル100ヘクタールの屋上緑化を目指し、うち1/3は都市農業の畑にするのだとか。
まちの中に畑をたくさん作る事で、コミュニティーが生まれ、食料問題の解決、貧困対策(貧しい人がコミュニティーに参加して野菜を作る)、ヒートアイランド対策、大気の質向上、建物の温度調整にもなると考えられます。いろいろな問題を一つひとつ潰すのではなく、「都市緑化」一本勝負でそこに投資して、回りにも投資を呼びかける――その方が早いのではないか? そんな解決方法になっているのです。

コレクティブな協働が社会を変えていく

水筒のリフィル設備も都市農業の畑も、一つの取り組みで多面的な問題解決策になり得ます。そして社会システム全体が変わっていく――。これがSDGs的。
このことは単独ではできません。大切なことはみんなで協力をしていこうということ、つまりパートナーシップです。

このパートナーシップの意味も変わってきていて、かつてはよく市民協働とも言われ、計画を作って、約束を決めて、決めた通りのことを役割分担して行っていました。
しかし、解決策や計画を先に決めて動けない現代は、過去に決めたことも状況に応じてどんどんと変化させていかなければいけません。
そこでパートナーシップに求められるのが、“コレクティブ”という考え方です。なるべく違う人たちを集める、それが“コレクティブ”です。

違う人たちを一つにまとめようとするとたいてい反発が起こります。そのためには、「どんな未来ができたら良いか?」という大きな方向性のイメージだけは共有しあいながら、あとはそれぞれが勝手にやってもらうのだそうです。

「勝手にやったらバラバラになっていくのではないか?」という懸念が出てきますが、大きなイメージを共有するための対話の場をいろいろなところに設け、継続的にコミュニケーションし続け、相互評価をし、進捗を共有していくことで、ゴールを目指していけるのではないかという考えです。

欧米人は自分たちのネットワークが社会だと思っているため、社会は簡単に変えられると考えます。一方で日本人は、社会は個人と離れたところにあると思っていて、「社会を変える=国会とか役所とかを動かす=難しい」というイメージになってしまいがち。
しかし、社会を変えるというのは、「いま金沢ってこういう事が起きていて、こういう問題があります。では、あなたはどうしますか?」という風に、問いを分かち合って、一緒に問題に取り組んでいこうという人が増えていくことなのです。
「社会を変えるという事。このカフェはそういったチャレンジをしていける素敵な場だと思っています」と広石さんは話を結びました。

金沢SDGs「5つの方向性」をアクションに移す行動計画を見る

最後に残りの20分と短い時間ですが、ステークホルダー(市民)の方に関わってもらい、作られた金沢の行動計画の素案を、皆さんと共有するセッションを持ちました。

上述の5つの方向性毎に、視点(プログラム)と、さらに具体的な行動(プロジェクト)としての例を挙げてある中から、まずは、とっかかりのあるものや興味のあるものを探してもらい、「これだったら自分にもできる」ことを考え、金沢で自分がこうなったら良いなと思うことを、「他の人に問いかける」という形にして付箋に書いてもらい、共有しました。

「プログラムを回すためにはいろいろな行動が必要で、みなさんがこれを見て、こういう事ができる、これをやりたい、このために起業したい、さらに『これ一緒にやりましょうよ』と市役所に言いにきてくれる人が出てきたりしたらいいなと思っています。行動計画は今年度中に完成させますが、次年度以降もどんどん変化していくものです。みなさんが興味を持って見続けてくださるように工夫してやっていきたいと考えています」(笠間さん)

SDGsはやらなければいけないことではなく、やろうという決意

問題が複雑化して、一つだけの解決策なんてあり得なく、そこで重要となるのがパートナーシップだと紹介しました。これは言い換えると、パートナーシップによって、市民一人ひとりに活躍できる場所があり、誰もが必要とされているとなります。
SDGsは言われてやるのではなく、自分から進んでやる決意なのです。
それはどういう決意か? 話の途中で広石さんは、「貧困を終わらせることに成功する最初の世代になりうるし、地球を救うチャンスを持つ最後の世代になるかもしれないという事を自覚して、その物事に対して取り組んでいく、そういうモードに変えていく決意」だと話していました。

今回も用意した席では足りなくなるくらい、多くの方に集まっていただきました。回を重ねるごと、SDGsへの、そして2030年の金沢のまちのあり方への関心が高まっていることをひしひしと感じています。
みなさんが「自分事として、金沢のまちづくりを考えていける、そんなまちに変えていく」、今回の話が、その決意をするきっかけとなってくれればいいなと思っています。

アジア生物文化多様性国際会議開催一周年記念国際フォーラムシリーズ議事録〔電子版〕

2016年10月、石川県七尾市で開催された第1回アジア生物文化多様性国際会議から1年後、石川宣言の実施を推進するため、2回シリーズの国際フォーラムをが開催されました。

 

シリーズ第一回(2017年10月4日)

生物文化多様性とSATOYAMA -自然共生社会を目指す世界各国の取り組みを知る-

 

シリーズ第二回(2017年10月15日)

生物文化多様性を次世代が敬称する為に-東アジアの連携を考える-

 

寺社庭園からはじまるグリーンインフラ Vol. 1

心蓮社の庭園は真ん中に池、そして背後に山が広がる「築山池泉式」の書院庭園です。ゆったりと時が流れる空間の中にいつまでも眺めていたい風景があります。卯辰山の麓に位置しており、その庭園は山と一体化していることからも庭園という人の手によって作られた空間にいながら、大自然の醍醐味を味わえる場所となっています。

今年2度目の清掃活動、そしてグリーンインフラに関するワークショップが心蓮社で行われました。

今回は金沢大学の丸谷耕太先生、そして北陸先端科学技術大学院大学の坂村圭先生のゼミとの合同企画です。特別ゲストとして龍谷大学から林珠乃先生をお招きし、基調講演も行っていただきました。

はじめに国連大学のファン研究員より、この庭園清掃ワークショップの活動についての説明がありました。金沢市に多く残されている庭園のほどんどが維持管理に関する問題を抱えており、このようなワークショップは新しい庭園管理のシステムとして大変重宝されているそうです。

これまでに約340名の方がこのワークショップに参加しており、徐々に市民の生活にも溶け込んできました。ファン研究員は清掃を始める前と後に参加者にアンケートを行っています。その結果、庭園を清掃することでポジティブな感情が増加し、ネガティブな感情が減少することがわかりました。このような清掃活動は庭園の持ち主だけではなく、参加者にもプラスに働くことがわかります。

スペインから10年前に来日し、京都で日本庭園について学んだファン研究員ですが「京都の庭園と金沢の庭園の違いは?」という質問に、「京都は枯山水が有名で落ち着いた雰囲気、金沢の庭園は曲水庭園など、水がポイントになっていると思います。」という答えました。また、京都の庭園は観光名所になっている場合が多く、主に企業などが費用を捻出しているため管理システムが確立している。一方、金沢の庭園の場合は個人が所有している庭園が多く、維持管理していく上で所有者やその家族にかかる経済的・身体的負担なども懸念されているとのことです。

ファン研究員が7月に出版されたブックレット『金沢の庭園がつなぐ人と自然』でも述べているように、地域住人が自分たちが暮らす町の「庭師」として自然を守るために協力することが持続可能な「都市の自然」の実現につながります。

休憩をはさみ、次は滋賀県の龍谷大学からお越しいただいた林先生に「過去の文化的景観を可視化する」をテーマにお話しいただきました。

林先生は元々生態学を研究しており、その過程で生き物のことだけではなく、生き物と人、または自然と人の関係についても興味を持ち、現在は龍谷大学の里山研究センターで活動されているそうです。

金沢の日本庭園の文化的景観や生物の多様性がミクロな視点だとすると、今回の林先生のお話はもう少しスケールが大きいもので滋賀県の琵琶湖の周辺一帯が示された地図を使いながらマクロな視点で人と自然の関係を見ていきました。

日本の自然は「セカンダリーネイチャー」と呼ばれる、人が意図的に手を加えて維持管理してきた自然がほとんどを占めます。そのため、人々の生活スタイルや社会の変化により過去から現在に至るまで変化し続けてきたそうです。

林先生の研究では過去の自然環境や文化的景観にも着目し、土地の利用方法や自然環境の変化を調査しています。昔から現代に至るまで変わらずに存在する自然の利用方法を調べることで持続可能な人と自然のつながり方や、その土地の環境に合った産業などを示唆できるのではないかと述べました。

このような研究結果は例えば化石燃料に頼らない地域づくりや地域循環型社会を作る上でも将来的に役立つのではという意見もあるそうです。

 

林先生のレクチャーの後は、庭園清掃に取り掛かりました。

3つのグループに分かれ、主に秋になり増えてきた落葉を集める作業を行いました。

美しい秋晴れの昼下がり、庭園を住処にする生き物も発見できました。

また、今回の清掃活動に庭師の中見宰さんも参加していたこともあり、苔の手入れ方法など普段なかなか教わることのできないプロの技術や知恵も教えていただきました。

 

 

 

 

 

十数人で清掃し1時間ほどかけてやっと綺麗になりました。この作業を所有者や管理人が一人で行うのはとても厳しいことだと参加者の皆さんも身をもって体感したようです。

清掃後は恒例のアンケートを行い、その後ディスカッションセッションを始めました。

各グループは今回の体験で感じたことや印象を共有し、まとめたものを3分間のプレゼンテーションで発表しました。

「どんな庭園だと足をはこびやすいかな?」「落葉の活用しよう」「ゆるくできて楽しかった」などなど、沢山の意見が出る中、「この活動は単なる通常の清掃と見なすべきではない」という共通の見解に至りました。

庭園で自然に囲まれて過ごす時間は都市で暮らす人々にとってとても貴重な自然と触れ合う場であると共に共通の目的を持ちながらコミュニケーションを図り、人との関係を深める場でもあります。美しい庭園で楽しみながら学び、参加者の皆さんはとても満足したようです。

最後に心蓮社の住職であり、この庭園の管理者でもある小島さんから挨拶のお言葉とコメントを頂き、閉会となりました。

 

能登生物多様性研究会の発足

能登の里山里海がFAOにより世界農業遺産(GIAHS)に認定されてから5年の節目を迎えようとしています。OUIKではそれに伴うアクションプランの改定作業やモニタリング作業の支援などを行ってきました。

中でも、4市5町にわたる能登地域で行われている生物多様性モニタリングの活動は、各市町や各種民間団体が独自に行っている生き物調査が中心であり、能登地域全体として統一されたモニタリング手法や生物多様性に関する情報発信や地域の方々と共有するしくみはまだ開発されていません。この現状を受けて、OUIKと金沢大学里山里海プロジェクトが中心となり、能登の生物多様性モニタリングや関連活動を通じて能登GIAHSに貢献するための生物多様性研究会を設立しました。メンバーには地域で生物多様性保全や環境教育に取り組んでいる民間団体の方々、能登の関連する研究機関の方々に参加いただいています。

1月23日には、OUIKがオブザーバーとして参加している、能登GIAHS活用実行委員会と能登GIAHS推進協議会の場で同会の発足を報告しました。今後は推進協議会の生き物しらべや関連する事業と連携しつつ、能登GIAHSとして豊かな生物多様性の保全とモニタリング、そして発信に貢献してゆきます。

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