OUIK > お知らせ > 地域との研究活動 > 能登

能登:アーカイブ

『SDGs三井のごっつぉproject』最終回 田の神様祭り

奥能登にはアエノコトと呼ばれる祭りがあります。「アエ=饗」の「コト=祭り」という意味で一年のお米の収穫を感謝して、毎年12月5日に田の神様を家へお迎えします。神様を風呂やご馳走でおもてなしをして春まで休んでいただきます。翌年2月9日には同じようにおもてなしをして豊作を祈願して田んぼへ送り出す行事です。

三井町ではアエノ͡コトではなく、古くから田の神様祭りと呼びそれぞれに家でお祭りされていましたが、近年過疎高齢化などで稲作に携わる人も減り執り行う家も減ってきました。そこで三井地区の区長会を中心に田の神様祭りを次世代に継承するために保存会を作り、三井町漆原にある茅葺き民家旧福島邸で公民館行事として行われています。

毎年三井小学校の子供達も太鼓や踊りで田の神様祭りに参加しています。この一年間は「SDGs三井のごっつぉプロジェクト」でご馳走の材料集めを体験してきたので、4,5,6年生12名が参加して一緒にお供えさせていただけることになりました。

まずは放課後バスで会場に到着しました。曇り空に雨交じりの能登の冬らしい天気となりました。山形公民館長さんはいつもと違って裃姿です。田の神様をお迎えするので正装されているのです。ゴテと呼ばれ一家の家長の役割を果たされます。

 

 

 

 

 

 

みんなで田んぼに向かいます。田の神様がいらっしゃるところには榊が建てられています。蓑や菅笠の衣装の集落の方もいます。昔は今のようなレインコートやビニールの傘がないので稲わらやスゲの草などで編んだ雨具です。

ゴテの手に持たれる松と栗の枝は「依り代」と呼ばれます。神様がそこへ依りついてお運びするためのもので、神様は田んぼの端で「待ってると来る」から転じて「松と栗」を掲げています。

田の神様は稲穂で目をついて失明されたということなので、家へご案内する道中も「段差がございます」や「右へ曲がります」など声掛けをします。ゴテはあたかも田の神様がそこにいるかのように振る舞うので不思議な光景に見えます。

家にたどり着くと「田の神様がおかえりやぞ!お迎えせ−よ!」と家のものに声をかけます。茅葺き屋根の玄関から囲炉裏のそばに入られます。寒い外からいらしたのでまずは暖かい甘酒を差し上げます。神様の大好物だそうです。

続いてゴテはお風呂の湯加減を見て、田の神様をお風呂へご案内します。恭しく榊をお風呂のお湯につけている様子も面白いですね。

 

お風呂で暖まられたら次はご馳走です。座敷には田の神様ご夫婦二人分の御膳が設えられています。二股の大根、御膳には一升枡にあふれんばかりの赤飯、煮しめにはわらびゼンマイ、大根、人参、こんにゃく、油揚げ。あいまぜという青大豆の打ち豆と大根や人参を炒り付けたおかずもあります。冷蔵庫もなく肉や魚が今のように手に入らなかった昔は打ち豆は貴重なタンパク源でした。そして立派な尾頭付きの鯛、大きなおはぎ。お汁に漬物。稲作は力仕事で大変なのでたくさん食べてくださいという意味が込められています。

 

 

 

 

 

輪島塗の御膳は赤く美しくご馳走が映えます。大切にしまってあったものを一つ一つ洗ってきれいにして盛り付けてあります。器の裏には家ごとの屋号を示す印が書かれています。冠婚葬祭などの時はお互い貸し借りするので目印になります。太いお箸は栗の木で、栗は一ヶ月に一寸成長するので一年間で一尺二寸(36.36cm)の長さにします。

お米を選別するときに使う箕という道具には畑で採れた野菜が盛られます。白菜人参カボチャなど色とりどりです。沢山実って嬉しい気持ちになりますね。

ゴテが食べ物を一つ一つ説明します。

子供達も田の神様のご馳走がデザインされた手ぬぐいの上に一人一人がゴテになった気分で自分のご馳走をのせました。

前列の6年生5人が代表してご挨拶をします。

「田の神様、これは5月にまるやまで集めたわらびの塩漬けでございます。」

枯れたススキの間から顔をのぞかせたわらび。赤ちゃんの手のような形にほやほやした毛が生えていましたね。集落のばあちゃんたちに習ってわらで縛って樽に入れてから半年ほどでぺったんこになりました。クンクン匂いを嗅いで臭いと言っている子もいました。

「田の神様、これは7月に珠洲で作ったあごだしでございます。」

羽の生えた魚を初めてみたり触ったり。包丁を手にさばいて串を打って炭火で焼きました。包丁を叩いて作る鍛冶屋さん、穴を掘って珪藻土でコンロを作る工場にも見学に行きました。あごだしはいい出汁が出るので煮しめも美味しくなるでしょう。

「田の神様、これは10月にまるやまで拾って干した勝栗でございます。」

しば栗ひろいはみんな必死で頑張りましたね。生のままかじっても甘かったですね。その場で茹でて針と糸でネックレスみたいに糸を通しました。蛇の皮の鱗を数えたり、絶滅危惧種のゲンゴロウやミズオオバコという花も見られましたね。

みんなで「どうもありがとうございました!」

それから権現太鼓の演奏をみんなで披露しました。

田の神様も今年はきっと三井小学校の子供達の用意したごっつぉを喜んで召し上がったことでしょう。神様だけでなく、来賓の方々や保存会の方がたも子供達が来てくれて賑やかで嬉しそうでした。

田の神様のお食事が終わられたら春まで神棚に上がって休まれます。

上座には大きな米俵が横たわっています。中には籾が入っています。籾とはみんながいつも食べているお米に殻がついたものです。生きているタネです。来年またこのタネを蒔いて米作りの一年が始まるのです。この籾こそ田の神様。

 

 

 

 

 

神様が休まれている間、家族は喧嘩をしてはいけないそうです。みんな仲良く心を合わせて、田畑を耕し、暮らしの糧を得ていかなければ生きていけないような能登の自然の厳しさが背景にあったのかもしれません。

今この様な家族やコミュニティと共にある農業が環境や地域づくりでも生き物やなど自然自然資源や食や伝統文化なども守れる重要な形だと再評価されてもいます。(家族農業の10年 )

 

いつでも、なんでもお金で買える今の時代ですが、自然の恵みを得る喜び、そこから自分の手で作る楽しさ、それを選ぶ選択肢が三井のような里山にはたくさん残っています。小学生のような感受性豊かな時期に五感で、地域の自然や土地に根ざした知恵に触れることができるように大人たちが環境を整えることが大事です。「三井のごっつぉ」を食べて世界へ飛び出し、誇りを持って自分を表現できるような子供達を私たちは送り出したいと願っています。

報告:萩のゆき(まるやま組)

国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」を利用した持続可能な未来へ向けての教育活動をサポートしています。一言で「能登の里山里海」と言っても地域によって異なる様々な伝統文化がありますが、三井小学校のような活動が能登の他の地域でも行われ、里海、里山間で交流が生まれるようなプラットフォーム作りを進めていきたいと思います。さて、次回はどんな「ごっつぉ」を作るのでしょうか?「SDGs三井のごっつぉproject」は通年のプログラムとして続きます。

企画・実行:萩野アトリエ/まるやま組 萩のゆき、萩野紀一郎(富山大学 芸術文化学部 准教授)協力:国連大学OUIK

『SDGs三井のごっつぉproject』第7回 

2019年5月に始まった「SDGs三井のごっつぉproject」では輪島市三井を中心に能登の「ごっつぉ(ごちそう)」を巡るフィールド学習を行ってきました。今回、11月26日に行われた第7回目はまとめの回として世界の食に関する問題を学んだり、いろいろな国の食を味わったり、春にみんなで作ったワラビの塩漬けの塩抜き作業をする回になりました。

はじめに「今、世界が面している食に関する問題」についてSDGsの視点で国連大学OUIKの富田から紹介がありました。「17個あるSDGsのゴールのうち、「食」に関係してくるゴールはどれかな?」という問いかけに「2番(飢餓をゼロに)食べ物のマークあるけど飢餓ってなんだろう?」「14(海の豊かさを守ろう)とか15(陸の豊かさを守ろう)も関係するね。魚も食べるし」「6(安全な水とトイレを世界中に)もじゃない?水飲むし、水ないと畑もできんし」「農業とかは16(気候変動に具体的な対策を)にも関係するんじゃない?」と、とてもたくさんの意見が出ました。生徒たちはSDGsを通してグローバルなスケールで物事を考えたり、ゴールと問題を関連付けることが出来るようになり、SDGsの理解をさらに深めているようでした。

次に日本に住んでいるとなかなか聞くことがない「飢餓問題」について国連WFPのハンガーマップを見ながら考えてみました。「アフリカが深刻」「日本は全然大丈夫だね」と生徒たちは自分たちのテーブルに置かれた地球儀を使いながら場所を確認していました。現在地球上では8億2,100万人、約9人に1人が「栄養不足」であるという調査結果が出ています。SDGsのゴール2でもある「飢餓をなくそう」は途上国特有の問題と捉えられがちです。しかし気候変動や先進国の経済活動が飢餓問題の要因となっていることもあり、先進国に住む私たちちも真剣に向き合うべき問題です。

更に関連した話題として食品ロスの問題や未来の農業にも目を向けてみました。テクノロジーが食品の流通や農業そのものを効率化する一方、2017年に国連は2019年~2028年を国連「家族農業の10年」と定め、食料生産おいて主要な農業形態である家族農園の更なる活性化を図っています。話を聞きながら「残さず食べてるよ!」「家でも畑しとるよ」と話す生徒たちもちらほら。皆さんなりに食品にまつわる問題に向き合っているようです。

 

 

 

 

 

 

次に世界の食卓を覗いてみました。「地球の食卓―世界24か国の家族のごはん」(著者=ピーター・メンツェル+フェイス・ダルージオ)に掲載されている、さまざまな国や地域の「ひと家族における1週間分の食料」の写真を見ながら、気づいたことを発表しました。「パンがたくさんある、パンが主食かな?」「野菜が多いけど肉が全然ない」「家族が多い!来ている服も全然日本と違う」など、たくさんの発見がありました。国や地域によって食料の種類や量、家族の雰囲気が様々で、見たことのない食材も沢山あったようです。私たちの食卓に乗っている食材も世界の他の地域に住む人にとっては不思議な食材なのかもしれません。

次に萩野さんより5月にみんなで作った「ワラビの塩漬け」の塩抜きについて教えてもらいました。山菜を茹でたり、塩抜きをするときは銅鍋を使うのが昔から伝わる知恵だそうですが、どうしてでしょう?萩野さんによると銅鍋を使うと銅イオンが葉緑素(クロロフィル)とくっつき、食材の変色を防げるそうです。不思議ですね!

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく使っていないと銅鍋には緑青(錆)がつきます。この授業ではは同じ銅で出来た10円玉を使って緑青取りを行ってみました。準備したのは酢と塩。これらを混ぜて磨くだけで綺麗な輝きを取り戻します。つやつやになった10円玉、日常生活にもいろいろな化学が隠れていて面白いですね。

綺麗に塩抜きできたこのワラビの塩漬けは、12月5日の「あえのこと」にて神様にお供えする予定です。

最後は「能登空港発 世界一周ごっつぉツアー」ということで鈴木さんのブルキナファソ料理「トー」、OUIKインターンのフェリックスさんのスイスの「ロシュティ(Rösti)」OUIK富田のイギリス/オーストラリア料理「ベジマイト」を食べるツアーを行いました。まずはブルキナファソの「トー」。これはヒエやトウモロコシなどの粉をお湯で練ったお餅のようなものに、ソースをかけて食べるもので、今回はトマトを使ったシチューのようなソースをかけました。現地ではとてもよく食べられている料理だそうです。次はスイスのジャガイモ料理、「ロシュティ」です。細く切ったジャガイモをプライパンで焼いたもので、ソーセージなどの付け合わせとして食べることが多いようです。見た目はお好み焼きに少し似ていますが表面がカリカリしてとてもおいしいです。今回はスイスの代表的なチーズの1つ、「グリュイエールチーズ」も試食しました。最後はイギリスやオーストラリアで親しまれている「ベジマイト」をトーストに塗ったものです。チョコレートみたいに見えますがしょっぱく、発酵した独特の臭いがあります。現地ではよく朝食などで食べられているそうです。

ブルキナファソの「トー」

スイスの「ロシュティ」

イギリス/オーストラリアの「ベジマイト」

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめて食べる料理に生徒たちも大興奮です。ベジマイトは想像と全く違う味がしたらしく、かなりてこずっていたようでしたが、トーとロシュティに至ってはみんなおいしそうに食べていました。住んでいる地域や環境、文化が違うとそこで食べられている「ごっつぉ(ごちそう)」も多種多様です。最後にまるやま組の萩野さんは「今やいろいろな地域の料理がどこにいても食べられる時代となりましたが、自分たちが育った地域の「ごっつぉ」の味を忘れないでほしい」と話しました。

報告:国連大学OUIK

国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」を利用した持続可能な未来へ向けての教育活動をサポートしています。一言で「能登の里山里海」と言っても地域によって異なる様々な伝統文化がありますが、三井小学校のような活動が能登の他の地域でも行われ、里海、里山間で交流が生まれるようなプラットフォーム作りを進めていきたいと思います。さて、次回はどんな「ごっつぉ」を作るのでしょうか?「SDGs三井のごっつぉproject」は通年のプログラムとして続きます。

企画・実行:萩野アトリエ/まるやま組 萩のゆき、萩野紀一郎(富山大学 芸術文化学部 准教授)協力:国連大学OUIK

アジア生物文化多様性国際会議開催一周年記念国際フォーラムシリーズ議事録〔電子版〕

2016年10月、石川県七尾市で開催された第1回アジア生物文化多様性国際会議から1年後、石川宣言の実施を推進するため、2回シリーズの国際フォーラムをが開催されました。

 

シリーズ第一回(2017年10月4日)

生物文化多様性とSATOYAMA -自然共生社会を目指す世界各国の取り組みを知る-

 

シリーズ第二回(2017年10月15日)

生物文化多様性を次世代が敬称する為に-東アジアの連携を考える-

 

世界農業遺産国際貢献プログラムとの共同スタディツアー2019

第2回目となるいしかわ世界農業遺産国際貢献プログラムとの共同スタディツアーが開催されました。このプログラムは石川県が主に開発途上国を対象に、世界農業遺産認定の支援や、地域振興に向けた能力開発研修を実施することで、持続可能な発展に貢献するプログラムです。 

第1回目の去年と同様に石川県、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)学術プログラム、国連大学いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)が能登をフィールドに共同企画・開催し、国連大学、金沢大学、名古屋大学、東北大学、東京農業大学の留学生からなる世界13か国総勢17名が3日間にわたり能登地方を訪問し、里山里海を活用した地域振興の取り組みを学びました。 

1日目、最初の訪問先は輪島市で「土地に根ざしたくらし」をテーマに様々な活動を行う「まるやま組」です 

まるやま組の代表である萩野さんご夫婦は東京やアメリカでの暮らしを経て、ここ輪島に移住してきました。建築家である萩野紀一郎さんとデザイナーである萩のゆきさんは地域の人たちとつながりながら、里山での暮らしをテーマに一般の方を対象にしたワークショップや小学校との共同教育プログラムを開催しています。 

 

地域に古くから残る伝統的な文化や農法を持続可能な形で次世代に伝えていくことが里山の生物文化多様性を守ることにつながると萩野さんは言います。 

昼食をはさみ午後の訪問先「いしかわ農業ボランティア」の現場に向かいました。石川県では農村でのボランティア活動を希望する個人や企業、団体の方々を「農村役立ち隊」、ボランティアの受け入れを希望する集落を「受け入れ隊」として登録し、マッチングすることで協働活動を推進しています。 

 

 

 

 

 

 

この日は金沢市内から茅葺屋根に使うススキを刈り取るボランティアの方々が参加していました。「受け入れ隊」の西山 茂男さん(みい里山百笑の会にお話を聞いてみると「昔はこの集落全部の家が茅葺屋根だった、今年は自分の家の屋根の手入れ、来年はあなたの家の屋根、という風に自然に協力関係ができていたが、近年の人口減少で担い手が減った結果、茅葺屋根の建物も残り2件まで減ってしまった。このようにボランティアの人たちの助けも借りてどうにかこの2件を残して行きたい。」と語りました。 

能登地域には古くから「結(ゆい)の精神」と呼ばれる集落の住民総出で助け合い、協力し合う相互扶助の精神あり、茅葺屋根は減ってしまったものの現在も農作業や草むしりなどを協力して行うそうです。ポーランドからの留学生は「自分の家のことだけではなく、集落一帯をコミュニティーとしてとらえ、協力しあうことは素晴らしい文化だと思う。」とコメントしました。 

1日目、最後の訪問先は穴水町の牡蠣の養殖場です。 

 

 

 

 

 

 

七尾湾に面するこの地域では穏やかで栄養分も多い内海を利用し、牡蠣の養殖が盛んに行われています。12月から5月はマガキ、夏の間は岩ガキがこの地域から全国に出荷されます。 

牡蠣の養殖業を営む松村さんに養殖技術や近年のインターネットなどを利用した出荷システムについて学びました。その後、ボートに乗せてもらい実際の養殖現場を見学させていただきました。マガキは12月ごろから出荷が始まるため、まだ十分成長しきっていませんでしたが、初めて見る牡蠣の養殖現場に留学生たちは興味津々でした。 

穴水に移住し、漁業と養殖業を行う齊藤さんにもお話を伺いました。シーズンオフの時期でも安定した収入を得るために牡蠣の養殖業のみならず、それ以外の漁業行う傍ら、夫婦でレストランを経営しているそうです。「1年を通して忙しいが、自然豊かなこの土地で自分の好きなことを職業にできることを幸せに思う。」と語りました。目の前の海から上げた牡蠣をその場で食せるこのレストランを目当てに遠くから足を運ぶ方も近年増えているようです。 

 

 

2日目の朝は能登町の「木の駅プロジェクト」について学びました。 

 

 

 

 

 

 

日本では人口減少や高齢化による人材不足、そして木材の輸入自由化に伴う林業の衰退により、近年放置される森林が増えています。一度手を加えた森林はその後も管理が必要ですが間伐をはじめとする森林の整備はとても手間がかかる割に採算が取れないこともあり、森林の荒廃が目立つようになりました。手入れが行き届いていない森林は台風の被害を受けたり大雨等による土砂災害も起こしやすくなると共に二酸化炭素を吸収する働きも低下するそうです

このように問題が山積みとなっている森林整備の現状を地域経済の活性化と組み合わせた形で解決すべく立ち上がったのがこの「木の駅プロジェクト」です。これは山林所有者が間伐材や林地残材など、利用価値の少ない木材を「木の駅」に出荷すると地元の商店などで使える地域通貨と交換できるシステムです。これは全国に広がりつつあるプロジェクトで収集された木材はチップや薪などの用途として販売されるそうです。 

能登町には現在木の駅が2つあるそうですが、そのうちの1つを見に行きました。この日はたまたま木材が買い取られた直後だったのかほとんど見当たりませんでした。真ん中にポツリと置いてある郵便ポストの中には記録用紙が入っており、木材を持ってきた人が量や大きさ、そして連絡先を書き込む仕組みになっています。その後、管理者が用紙をチェックしたのち地域通貨と交換する案内が届くそうです。 

 

木の駅を後にした一行は、春蘭の里へ向かい、多田さんと共に里山にキノコ採りに行きました。 

 

 

 

 

 

 

手入れが行き届いている多田さんが所有する森林では春には山菜が、秋になるとたくさんのキノコが採れるそうです。食べられるものと食べられないものがあり、中には判断が難しいものも多くあります。多田さんにチェックしてもらいながら、たくさんのキノコが採れました。この後、春蘭の里に戻り、多田さんのご自宅で調理してお昼ご飯と一緒に食べることにしました。 

能登町に位置する春蘭の里は集落全体に農家民泊施設が40数件あり、里山のリアルな暮らしが体験できる場所です。多田さんの家の宿泊施設となっており、前日はイタリアからの観光客が宿泊して行ったそうです。 

 

 

 

 

 

 

多田さんの自宅での昼食は輪島塗の漆器でい頂く、里山の恵が詰まった野菜中心の食事です。収穫したキノコも美味しくいただきました。 

午後は輪島市に戻り、仁行和紙を訪問しました。ここで昔ながらの方法で和紙を作っている遠見和之さんに和紙の作り方や、ここで作られている和紙の特徴をお話頂きました。和紙の原材料となるのは楮(こうぞ)呼ばれる植物で近くの森林から採取しているそうです。工房の側にもたくさん自生していました。この皮の部分を剥いで蒸し、煮込み、細かくすることで和紙の元になる白い繊維質ができます。 

 

 

 

 

 

 

遠見さんにお手本を見せてもらい、学生の皆さんも紙漉を体験しました。簡単そうに見えて均等な厚さにするために素早く手を動かすのがとても難しいそうです。お好みで植物や貝殻を入れてオリジナル和紙を作ることも可能だそうです。 

 

 

 

 

 

 

遠見さんの代で3代目になるこの工房は遠見さんのご祖父様が中国で紙漉の技術を学んで来てから続いているようです。近年では壁紙や名刺、お酒などのラベルに使用するための注文も増えているそうです。

 

最終日の3日目の朝は輪島の朝市を見学しました。その後、能登空港の会議室で金沢大学能登学舎の伊藤浩二さん(特任准教授)により、能登里山里海SDGsマイスタープログラムについての講義を受けました。このプログラムは少子高齢化が進む能登地域にて里山里海の自然資源を活かし、能登の明日を担う「若手人材」を育てる人材開発プログラムです。修了生と連携し講義プログラムを組むため研究内容も様々で幅広い分野の知識を学べます。 

 

午後は学生たちの最終発表とディスカッションセッションが行われました。このアカデミックプログラムはUNUIASのTrans-disciplinary and Graduate Research Seminar(TGRS)という共同演習のコマとして実施しているものでUNU-IAS斎藤修教授と共に学生たちは「高齢化と人口減少」をメインテーマに掲げ、「教育」「持続可能な生業」「ツーリズム」といった3つのサブテーマに分かれ、3か月前から事前研究を行ってきました。

今回の発表では事前研究の内容に過去3日間で得られた能登里山地域に関する洞察と課題に対応するための戦略やアイデアを付け加えて発表しました。 交流人口を増やすためのアイデアや留学生や学生に能登で活動してもらうため大学との共同プログラム、更にエコツーリズムに関するプロモーション戦略など、たくさんの意見が出ました。地元との関係者の方々にもディスカッションに参加して頂き、3時間にわたり活発に意見交換を行いました。今後はこれらのアイデアを具体的に形にしていくために学生たちは研究を続けていく予定です。 

能登生物多様性研究会の発足

能登の里山里海がFAOにより世界農業遺産(GIAHS)に認定されてから5年の節目を迎えようとしています。OUIKではそれに伴うアクションプランの改定作業やモニタリング作業の支援などを行ってきました。

中でも、4市5町にわたる能登地域で行われている生物多様性モニタリングの活動は、各市町や各種民間団体が独自に行っている生き物調査が中心であり、能登地域全体として統一されたモニタリング手法や生物多様性に関する情報発信や地域の方々と共有するしくみはまだ開発されていません。この現状を受けて、OUIKと金沢大学里山里海プロジェクトが中心となり、能登の生物多様性モニタリングや関連活動を通じて能登GIAHSに貢献するための生物多様性研究会を設立しました。メンバーには地域で生物多様性保全や環境教育に取り組んでいる民間団体の方々、能登の関連する研究機関の方々に参加いただいています。

1月23日には、OUIKがオブザーバーとして参加している、能登GIAHS活用実行委員会と能登GIAHS推進協議会の場で同会の発足を報告しました。今後は推進協議会の生き物しらべや関連する事業と連携しつつ、能登GIAHSとして豊かな生物多様性の保全とモニタリング、そして発信に貢献してゆきます。

【開催報告】日韓国際会議『世界農業遺産(GIAHS)の保全を通じたSDGsの達成』

2019年10月30日に「世界農業遺産(GIAHS)保全の活用を通じたSDGsの達成(Achieving SDGs through the conservation of GIAHS)」と題した日韓国際会議が開催されました。

国連大学サステイナビリティ高等研究所 (UNU-IAS)では、韓国農村振興庁国立農業科学院(RDA)と2018年1月から3年間にわたり、FAOが認定する世界農業遺産(GIAHS)と各国が認定する国内農業遺産についての比較研究プロジェクトを実施してきた背景があり、本国際会議ではGIAHSが各認定地に与えた影響と未来へ残した課題をSDGsというグローバルゴールから考え、GIAHSとSDGsの関係性を日本、韓国からの専門家による解説によって紐解きました。

開会の挨拶はUNU-IAS OUIK所長の渡辺綱男が能登地域のGIAHSのこれまでの取り組みを紹介すると共に、21か国57地域にも及ぶGIAHS認定地域が今後SDGsにどう貢献していけるのか問われていくと述べました。また、来年中国・昆明で開催予定のCOP15でも「農業と生物文化多様性」が重要なテーマとなる可能性が高く、各国の関係者と議論を深めたいと述べました。

次に韓国農村振興庁(RDA)農業研究士、黄大龍氏からは開会の言葉を頂きました。台風19号の被害のお見舞いの言葉を頂くと共に韓国内でのGIAHSやNIAHSの活動状況を報告して頂きました。

基調講演①ではUNU-IASアカデミックプログラムディレクターの齊藤修氏が「里山里海の未来と持続可能性」と題して講演しました。齊藤氏は「食事に占める自家消費の割合調査」や「能登半島でのおすそわけ文化に関する調査」などを通じ、社会関係資本と豊かな食生活の関係を探る研究を進めてきました。更に能登地域における社会・生態システムの統合化による自然資本・生態系サービスの予測評価も行っています。未来のシナリオを想定した上で地域づくりを進め、に農村と都市が連携した形で地域循環型社会を作り上げることが重要と述べました。

基調講演②では韓国農村振興庁(RDA)農業研究士の鄭明哲氏より「韓国GIAHSの保全と活用の近状報告」と題し、初めに韓国での「GIAHSの動的保全のためのアクションプラン」を紹介して頂きました。更に韓国のGIAHS地域での農業体験プログラムやアート関連のプログラム、田んぼオーナー制度やファームツーリズムについてもお話頂きました。地域内外で共通の目標を共有することが重要であり、今後は適切な規制や指標の標準化も進めていきたいと述べました。

基調講演③では世界農業遺産等専門家会議委員の大和田順子氏より「SDGsの視点からみた国内の世界農業遺産認定地域の活性化-日韓GIAHS・SDGs調査から-」と題し、お話頂きました。「世界農業遺産とSDGs調査2019」ではSDGsゴール2と15に関しては、国内のGIAHS 11地域が全て取り組んでいると回答したそうです。地域によってバラつきはありますが、次はゴール6と12が重要視されてくると述べました。

休憩をはさみ、日本のGIAHS事例紹介①では珠洲市役所企画財政課課長の金田直之氏より「SDGs x GIAHS x Art(アート)」と題し、お話頂きました。はじめに珠洲市が行っているGIAHS関連の取り組みとして、市内9つの小学校全校で行っている生き物観察会や地域おこし協力隊の活動、そして課題解決型の人材育成事業(マイスタープログラム)の紹介を頂きました。「SDGs未来都市」にも選ばれている珠洲市では2018年に能登SDGsラボを設立し大学や企業と連携し様々な取り組みを行っています。今後は地域経済に対する効果を明確にし、市内経済活性化にどう結び付けるかがカギとなってくると述べました。更に先端アートプロジェクトによる地域の魅力発信や奥能登国際芸術祭についても紹介頂きました。

次の韓国GIAHSの事例紹介①では河東郡河東茶生産者協議会事務局長の金正坤氏より、「河東伝統茶農業の多元的機能と活用」と題し、茶畑とお寺の興味深い関係や茶畑におけるツーリズム事業やハイキングコースの開発についてお話頂きました。伝統的な茶農家と商業向けに大規模な茶畑を展開している農家間の対立など、韓国を代表するお茶の産地ならではの問題についても述べました。また2020年には「世界お茶博覧会」を予定しているそうです。

次は日本農業遺産の事例紹介②として滋賀県農政水産部農政課主席参事の青田朋恵氏より「琵琶湖システムとSDGs」と題してお話頂きました。2016年に滋賀県では農業遺産セクションを発足し、400万年の歴史を持つ古代湖として琵琶湖を鮒ずしの文化や森・川・水田・湖(うみ)の繋がりと共に発信してきました。現在日本農業遺産に認定されており、GIAHSには申請中だそうです。

最後の事例紹介として忠南研究院研究委員の劉鶴㤠氏に「錦山伝統高麗人参農業システムの持続可能性」と題して発表頂きました。GIAHSの認定は非常にうれしいことだが、冷静に見ると様々な課題があり、特に今後はモニタリングにおける指標の開発、そして誰がどうモニタリングを進めていくのか?といった問題にも、地域の方々の参画を促しながら立ち向かっていく必要があると述べました。

パネルディスカッションでは「GIAHSの地域振興とSDGsなどの国際的な目標達成への貢献」について発表者に韓国農漁村遺産学会副会長の李㽥稙氏が加わった形で議論が行われました。モデレーターを務めたのはUNU-IAS研究員のイヴォーン・ユー氏です。

李氏は「韓国ではSDGsはいまだに中央政府、地方政府による取り組みであり、市町村レベルで目標を掲げている珠洲市などの取り組みに感銘を受けた。韓国では今後GIAHSアクションプランに対するモニタリング指標をSDGsに結び付けることが出来れば」と述べました。更にGIAHSの認知度の低さは日本と韓国のGIAHSが持つ共通課題の一つであり、青田氏からは「SDGsが企業や市民社会に広がってきている。GIAHSの認知度を高めていくにあたり、SDGsを活用できるのではないかと考えている。」との意見が出ました。

最後に金沢大学名誉教授、東アジア農業遺産学会(ERAHS)日本議長の中村浩二氏より総括コメントを頂きました。GIAHSは認定されてからが大変であり、モニタリング→アクションプランの改訂→GIAHSのアップグレードを地域全体で取り組まなくてはならない。そのために今一番重要なことは人材育成であると述べ、中村氏が長年取り組んできたフィリピン・イフガオのマイスタープログラムについてもご紹介頂きました。

最後に閉会の挨拶を石川県農林水産部里山振興室長の寺﨑信二氏より頂きました。韓国農村振興庁(RDA)や参加者の皆さまにお礼を申し上げると共に、今後に向けての意気込みを語り、4時間にわたる日韓国際会議は閉幕となりました。

OUIK 生物文化多様性シリーズ#4 「地図から学ぶ北陸の里山里海のみかた」

OUIK初のマップブックとして、北陸地方の里山里海の現状や変化、多様な見方を地図から学ぶ教材を発刊しました。北陸地方(石川、福井、富山、新潟、岐阜)のスケール、石川県のスケール、七尾湾のスケールといったマルチスケールでの地図情報をまとめています。(PDF:95MB)

関連ページ(Collections at UNU)  http://collections.unu.edu/view/UNU:6540

OUIK 生物文化多様性シリーズ#3「能登の里海ムーブメントー海と暮らす知恵を伝えていく」

2015年度からOUIKが能登GIAHSを構成する市町と開催してきた里海シリーズ講座の内容をまとめたものです。海を利用してきた地域に伝わる知恵、それらを守り、現在の社会環境に合わせて活用していく取組みをまとめています。

『SDGs三井のごっつぉproject』第3回あごだしを作りの回-後半-

※前半の記事はコチラから

遠足の後半のプランはこの2つです

・あごだし作り体験で魚を焼くときに使用した、珪藻土(けいそうど)七輪コンロのできる様子を見学

・あごだし作り体験で魚をさばいたときに使用した、包丁のできる様子を見学

珪藻土七輪コンロができあがるまで

珪藻土七輪コンロのできる様子を見学しに、能登燃焼器工業株式会社を訪れました。

職人の舟場さんから、「珪藻土って何だと思う?!」と質問を受けると、「土です!」と子供たちが元気よく答えました。

「珪藻土とは、珪藻という水の中にいる小さい植物性プランクトンが死に、その殻が積み重なって化石化した土のことだよ。この地域の山の中を切り出すと珪藻土が出てくるということは、大昔この地域は海の底だったということが分かるよ。」と説明する舟場さん。子供たちは、「へ~」と少し驚いた様子でした。

「実際に、そこにある珪藻土の塊を触っていいよ」と言われると、「なんだか粘土みたい!」「柔らかい~」子供たちは初めて触る珪藻土の触感を楽しんでいました。

 

 

 

 

 

舟場さん曰く、この辺りでは珪藻土を使って七輪コンロを作り、輪島の地域では輪島塗を作るときに珪藻土を使用しているとのことです。地域によって、珪藻土の使われ方は様々であると分かりました。

続いて、実際に珪藻土を切り出してくる山の穴の入り口まで連れて行ってもらいました。

穴の入り口の前に来ると、「涼しい!!」「天然クーラーだ!!」「音がすごく響くよ!」(穴に向かって、あーーーっ!!と叫んでみる)子供たちは穴の中の様子に興味深々でした。穴の中は、夏は涼しく、冬は暖かいという特徴があるそうです。

職人は、ノミを持って穴の中に入り、珪藻土を切り出します。珠洲では昔から、珪藻土七輪コンロを作ってきた歴史があるので、山の中を探すと沢山の穴が見つかるとのことです。

先ほどの作業場へ戻ってくると、舟場さんが珪藻土の中から出てきたサメの化石を見せてくれました。「えっ!化石が出るの?!」「何が出るの!?」「たくさんでるの?!」「ここの方が近いし、福井行かないでここで発掘しようかな!」子供たちはとても嬉しそうに声をあげていました。

実際に珪藻土から出てきたサメの歯

「これまで切り出してきた珪藻土の中には、気づかずに見過ごした化石もあると思う」と舟場さんが言うと、「え~もったいない!」子供たちは、化石にとても興味があるようでした。

 

 

 

 

続いて、山の中から切り出してきた珪藻土の塊を七輪の形に形成していく加工場へ連れて行ってもらいました。加工場へ向かう途中で、焼き上げた後の珪藻土を目にすることができました。「実際に持ってみてもいいよ」と言われると、「え!!こんなに軽いの!?」「なんだか色が白っぽい!」子供たちは驚いた様子でした。(珪藻土は焼き上げると水分が抜け、塊だったころの約半分の重さになるそうです。)

加工場では、職人さんたちが道具を使って、珪藻土の塊を七輪の形に加工していました。子供たちも実際に、珪藻土の塊を削る作業を体験しました。「なにか、化石出てこないかなぁ(わくわく)」「チョコレートみたい!」「俺もやりたい!」子供たちはとても盛り上がっていました。

-削るときのポイントー

・少しずつ削ること

・薄く薄く削ること

・力を入れすぎると削るのが難しいから、力を入れすぎずに削ること

舟場さんからアドバイスを受けながら、子供たちは夢中になって珪藻土を削っていました。

加工場で珪藻土の塊を七輪の形に加工した後は、焼きの作業があります。二晩かけて珪藻土で出来た専用の窯で焼き上げるそうです。燃料は薪を使用し、窯の中の温度は800℃まで上がるそうです。

焼きの作業後は、仕上げの作業に入り、最終的に珪藻土の七輪コンロが出来上がるとのことです。珠洲の珪藻土は形成性に富み、多孔質(表面にちいさい穴があいている性質)で、優れた断熱性(熱効率)を有することなどから、長年人々の火のある暮らしを支えてきたとのことです。

 

 

 

 

包丁ができあがるまで

続いて、午前中のあごだし作り体験で魚をさばくときに使用した包丁のできる様子を見学しに、ふくべ鍛冶工場を訪れました。

移動の車中で、「ふくべ鍛冶工場には沢山の刃物が置いてあるので、皆さん気を付けて作業場を歩くようにしてください」と言われていた子供たちは、少し慎重な足取りで工場の中へと進みました。

子供たちが到着すると、ふくべ鍛冶4代目の千場さんが待っていてくださりました。

まず初めに千場さんから、「鍛冶屋って何だと思う?!」と質問を受けると、「刀をつくる!」と子供たちが答えました。

千場さんから、鍛冶屋は三種類に分類することができると教えてもらいました。

  • 刀鍛冶
  • 専門鍛冶
  • 野鍛冶-包丁や農具、漁具などを扱う鍛冶屋

ふくべ鍛冶は③野鍛冶に属し、能登の農業、漁業と共に歩んできた鍛冶屋であるとのことです。農法に適した道具を作っていくのが野鍛冶であり、用途に合わせてひとつひとつ丁寧に製造、修理を行っているそうです。

今回は、イカ割き包丁(イカを割くための細い包丁)が出来上がるまでを千場さんに実演して頂きました。窯の中は1200℃まで温度が上がり、その中に材料(鋼を鉄でサンドした包丁の原型)を入れるところから実演がスタートしました。

実演では、

窯の中で熱した材料を取り出す→機械で叩いて形を整える→ハンマーで叩いて形を整える→また窯の中に戻す

という作業を繰り返し行っていきました。

 

 

子供たちは、1200℃の熱い窯の側で汗をかきながら一生懸命に作業している千場さんの姿を、一瞬も目を離さずに見ていました。

千場さんが熱い窯の中から熱した刃物を取り出し、子供たちに見せると、「こんなに距離があるのに暑い・・。(干場さんの方が刃に近いから)」「すごーい」子供たちは刃物の熱さや、鋭さに驚いていました。

実演をしながら千場さんが、「ハンマーで叩く際に出てくる、カサブタのようなものは、鉄の中の不純物(サビの一種)が出てきているんだよ。」と教えてくれました。繰り返し叩くことで不純物を出し、純度の高い丈夫な刃物が出来上がるそうです。

また、ふくべ鍛冶で使用する窯の燃料は松炭を使用しているとのことです。松炭は繊細な温度調整ができ、火が付きやすく、刃が溶けにくく、刃物作りに適しているそうです。しかし、現在では手に入りづらく、とても貴重であるとのことです。

実演がすべて終わると、最初は長方形だった材料が、先の尖った刃物の形へと変形していました。

子供たちからは、「おぉ~」「包丁みたい」と声があがっていました。

千場さん曰く、通常は一時間ほど作業を繰り返し、その後に柄の部分と刃を合体させて包丁が完成するそうです。柄の部分と刃が合体したときに、丁度よいバランスが取れるようにすることが大切であるとのことでした。

 

-子供たちの感想-

・何回も同じ作業を繰り返していてすごいと思った

・包丁の作り方が分かった

・こんなに時間をかけて、包丁ができあがると思わなかった

・あちらにある機械はなんですか?→包丁を削る道具だよ(千場さん)

 

最後に、ふくべ鍛冶のお店を訪問し、実際に包丁が売られているところを見せていただきました。

お店には、様々な用途で使用できる包丁や、農業、漁業で使用する道具などが沢山販売されていました。千場さんが道具の使用方法などを教えてくださり、子供たちは真剣に耳を傾けていました。

 

 

 

 

 

遠足の後半(珪藻土七輪コンロ作りの見学、包丁作りの見学)を通して子供たちは、美味しい「ごっつぉ」ができあがるまでには、新鮮な食材だけでなく、様々な道具が使用されていることを改めて学べたのではないでしょうか。伝統的な技術で道具作りをしている人たちの、ひとつひとつの丁寧な手作業や、情熱によって素晴らしい道具が完成するということも、実際に道具を作る現場を見学させていただき、理解できたのではないかと思います。

私も三井小学校の皆さんの遠足に参加させていただき、とても勉強になりました。

ありがとうございました。

 

報告:OUIKインターン 成嶋 里香

 

国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」を利用した持続可能な未来へ向けての教育活動をサポートしています。

一言で「能登の里山里海」と言っても地域によって異なる様々な伝統文化がありますが、三井小学校のような活動が能登の他の地域でも行われ、里海、里山間で交流が生まれるようなプラットフォーム作りを進めていきたいと思います。

さて、次回はどんな「ごっつぉ」を作るのでしょうか?

「SDGs三井のごっつぉproject」は通年のプログラムとして続きます。

 

企画・実行:萩野アトリエ/まるやま組 萩のゆき、萩野紀一郎(富山大学 芸術文化学部 准教授)

協力:国連大学OUIK

『SDGs三井のごっつぉproject』第3回あごだしを作りの回-前半-

皆さん、こんにちは。インターン生の向です。

7月11日、今回で3回目となった『SDGs三井ごっつぉproject』では三井小学校5、6年生の7名が遠足という形で珠洲市を訪れ、「あごだし」について学びました。

これまでの活動についてはこちらをご覧ください。

『SDGs三井のごっつぉ Project』始動!

『SDGs三井のごっつぉ Project』第2回

皆さん、「あごだし」はご存じでしょうか?「あごだし」とはトビウオの出汁(だし)のことで、新鮮なトビウオを焼いて干したり、煮て干したりして作るもののことです。珠洲では外浦で捕れる小さなトビウオを地元産の炭火で焼き、干して作っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の活動内容は

・あごだし作り体験

・あごを焼く珪藻土で作った七輪について学ぶこと

・トビウオを捕まえる道具作りについて学ぶこと

とても盛りだくさんな内容だったので、2部制で皆さんにお届けしたいと思います。

前半は午前中に行ったあごだし作り体験をメインに報告させていただきます!

最初の目的地は、珠洲市三崎町にある長手崎すいせん工房です。

「わぁぁ!海だぁ!」

普段は山に囲まれた三井で暮らしているため、今までのSDGsごっつぉprojectも山に関わるものでしたが、今回は初めての海。長手崎すいせん工房までの道中で、絵本「日本海のはなし」を読み聞かせしてもらい、気持ちはまっすぐ海に向かっていた子供たちは、工房のすぐそばにある海にとても目を輝かせていました。

 

あごだしはどうやって作るの?

今回は珠洲市みさき小学校が毎年行っている「あごだし作り体験」に同行させていただき、みさき小学校5年生11名の皆さんと一緒に体験を行いました。 

 

 

 

 

 

 

最初にトビウオのウロコ・頭・内蔵を取ってから水で洗い、串に刺して炭火で焼きます。焼いた後は身を開いて中骨を取り出し、網に並べ、24時間乾燥機にかけることで、あごだしができます。

 

 

 

 

 

 

どうやら子供たちは初めてトビウオに見たり触れたりするようで、「トビウオ怖い!!」「いきなりウロコ取りって・・触るの!?」と、少々ビビりながら、体験を行う工房に入っていきました。

そんな子供たちも実際に作業を行うといろいろ感じたことがあるようです。「トビウオって固いんだね。」「どこに串を指すといいのかな?」「どうやってトビウオを採るの?」

実は串を指す場所にも知恵が隠されています。焼き場で焼くときに串に刺さったトビウオをひっくり返したりするのですが、低い位置に刺しすぎると頭の方が重くなって上手くひっくり返せないそうです。

その他にも、トビウオは300m~400m飛び、6~8月に南国からやってくることや、脂がのりすぎたトビウオはあごだしには不向きなため、脂が少ない6・7月にしかこの工房では作らないことなどを教えてもらいました。

自分が刺したトビウオを焼くために、焼き場に移動した子供たち。炭火で焼くことによって、遠赤外線で焼くことができるため、より美味しいトビウオが出来上がるそうです。いざ、焼き場に立つと「暑い!!」「トビウオの串、重いなぁ。」そして中骨を取り出す作業に入ると「上手く取れないよ。」「ポロポロ身が取れちゃう。」あごだし作りの苦労を子供たちはそれぞれ感じたようです。
あごだしが出来るまでを体験を通して学んだ子供たちを乗せたバスは、次の見学地の能登SDGsラボへと出発しました。

 

 

 

 

 

 

能登SDGsラボ

珠洲市三崎町には、廃校になった小泊小学校の校舎を再利用した金沢大学能登学舎があり、その一室に能登SDGsラボが存在します。校舎内には、SDGs珠洲版や、珠洲の水田の生き物たちについての展示などがあります。

「SDGsってなんのゴールなの?」

 

 

 

 

 

 

能登SDGs内に飾られたSDGsそれぞれのゴールについて書かれたパネルを見た子供たちは、不思議そうにつぶやきました。それを聞いたOUIKの永井事務局長が子供たちにそれぞれのゴールの解説を始めました。SDGsとは国連が2015年に定めた、持続可能な社会を実現するための17のゴール、169のターゲットのことを指します。その中でも特に貧困やジェンダー、海ゴミに関するゴールに子供たちは興味を持ったようでした。

「一日100円で生活してるんだって。何ができるかな?」「お菓子しか買えないよ・・。」

「男のマークと女のマークがあるから、ジェンダーはオスとメスが平等にって意味かな?」

「去年、七ツ島のごみ拾いに参加したけど、たくさんごみがあったから今年も行くの!」

でもSDGsは2030年までのゴールなので、11年後までに達成しなくてはいけないと知ると、「達成できなかったらどうするの?」と子供たちはこぼします。また、「言葉が難しくて分からない。」という子もいました。

 

実は普段やっていることがSDGsだった!

三井小学校の地区では週に一度程、地域の方と森に入って遊んだり、自然にふれあう活動が行われています。

「俺ら、週に一回森に入っていろいろやってるからSDGs15は普段やってるってこと?」

「知らなかったけど、普段やってることもSDGsなんだね。」

普段の行動がSDGs達成に繫がるということは、能登に豊かな自然や文化が残っているからです。自分たちの生活とSDGsのつながりを学ぶことで、子供たちにSDGsを身近に感じてもらうことができたのではないかと思います。

 

ごっつぉを食べて、あごだしへの理解を深める

お待ちかねのごっつぉの時間!!

 

 

 

 

 

ダッシュで地域の方が運営する食堂「へんざいもん」に駆け込んできた子供たちは、あごだしのそうめんを見て満面の笑顔。「美味しい!!」「ずっと食べたかった!!」と大喜びでした。

やっぱりごっつぉは最高だね!

午前中はあごだしを作り、SDGsを学び、あごだしを食し、地域の皆さんと共に学びを深めました。

午後の活動に関しては、もう一人のインターン生 成嶋さんが次号にまとめています。

子供たちのあごだしを学ぶ旅はまだまだ続きます!

>>>『SDGs三井のごっつぉproject』第3回あごだしを作りの回-後半-

Pick up

Banner:Conference