2025年6月19日、国連大学サステイナビリティ高等研究所 いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)は、「金沢市内日本庭園における生き物調査」の成果報告会を石川県政記念しいのき迎賓館で開催しました。本調査は、金沢市内に点在する30の庭園を対象に、動植物の多様性や庭園が果たす生態系としての役割を明らかにすることを目的に3年間にわたって行われました。
会場には、石川県や金沢市の関係部局、庭園所有者、研究機関、自然保全団体など多様な関係者が集まり、非公開形式での報告と意見交換が行われました。
はじめにUNU-IAS OUIKのフアン・パストール・イヴァールス研究員が登壇し、調査の背景、方法、そして主な成果について説明しました。調査では、環境DNA解析や現地での観察を通じて、キクガシラコウモリ、ニホンイシガメ、アカハライモリ、アユなど、都市部では希少とされる生物種が複数の庭園で確認されました。これらの結果は、庭園が都市内における重要な生息地や繁殖地として機能していることを示しています。
また、植物の種類が豊富な庭園ほど動物の種類も多く見られること、庭園の管理の仕方が生物の多様性に影響を与えていること、水路や用水とつながる庭園では水生生物の分布が広がることなどの分析結果も紹介されました。これにより、庭園が都市の中で自然環境をつなぐ「生きものの通り道(生態的コリドー)」として重要な役割を果たしている可能性が示されました。
後半の意見交換では、UNU-IAS OUIKの渡辺綱男客員研究員をコーディネーターに、OECM(保護地域以外での有効な保全手法)としての庭園の活用や、市民参加によるモニタリング体制の構築、子どもや若者への教育活用など、多方面からの視点で将来の展望が語られました。
今回の調査と報告会は、都市に残された庭園の科学的価値と文化的意義を再評価するものであり、金沢市における「自然共生サイト」登録の検討や、生物多様性に配慮した都市計画の展開に向けた基礎資料となることが期待されています。今後も、行政、所有者、市民、研究者が連携しながら、都市と自然が共にあるまちづくりの実現に向けて取り組みが続けられます。