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【開催報告】SDGsカフェ#15 SDGsの学びの大動脈(!?)公民館を使おう

日時 / Date : 2021/1/25
場所 / Place : オンライン

SDGsの実践には、一人でできること、仲間と進めること、コミュニティで取り組むこと、市全体で広く行うこと、そしてネットで世界中の人とつながりながら進めていくことなど、いろいろな方法が考えられます。金沢でそれを考えた時、地域の学びを担う公民館はとても気になる存在です。

金沢の公民館制度は、実は少し特殊なのです。公民館は小学校の学区に応じて設置され、役員や職員は地域から選出、運営資金も一部地域で負担しています。金沢に住んでいる方にとってはこれが当たり前と思っているかもしれませんが、金沢独特なもので、「金沢方式」とも呼ばれています。

地域事情に明るい職員さんが運営を担っていることは、住民に寄り添った活動の拠点になり得るというメリットがあります。

しかし、地域住民の高齢化、ドーナツ化現象などの人口動態の変化、町内会加入率の低下など、公民館機能を維持する住民側の事情も、近年で大きく変わってきているという実情もあります。

地域にとって、とても頼もしい存在である公民館の役割を見つめ直し、もっと多様な年代や属性の人たちが積極的に利用するようになってくれることを願いつつ、今回のカフェは公民館をテーマに開催。金沢市に張り巡らされた60の公民館が、SDGsの学びのネットワークになる可能性を、皆さんと一緒に探ってみました。

 

IMAGINE KANAZAWA 2030は次のステージへ!

 まずは国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)の永井事務局長から、今までの14回+番外編1のSDGsカフェの紹介と、IMAGINE KANAZAWA 2030の最近の動きについて報告がありました。

 2019年4月から始まった金沢SDGs。2020年3月には多くの方に参加していただき、「金沢ミライシナリオ」も完成しています。7月には金沢がSDGs未来都市に認定されて、「持続可能な観光」を進めるというプロジェクトがモデル事業として採択されるなど、2020年はより具体的な一歩を踏み出せた年でした。

「今、IMAGINE KANAZAWA 2030は次の『学びあいのステージ』に来ています。昨年、パートナーズ対象の視察ツアーを実施しましたが、そこでさまざまな学びあいがありましたので、これからもこのような学べる場を持ちながら、いろいろなプロジェクトができたらいいなと思っています」(永井事務局長)

★金沢ミライシナリオはみなさんが2030年をイマジンした結果です。ぜひご覧ください。

金沢ミライシナリオ

★IMAGINE KANAZAWA 2030では、一緒に金沢ミライシナリオを実践してくださるパートナーズを募集。個人でも団体・企業でも参加でき、2021年1月現在で100以上が参加しています。

IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ

 さて、学びあうことの重要性を考えた時、「金沢市の公民館の存在には、学びの場として可能性を感じる」と永井は言います。そこで今回は、自ら公民館の可能性にチャレンジを続ける菊川公民館主事の原恵子さんにお願いして、2030年の金沢をIMAGINEしていただきました。また、アイデアを提供してくださったのは、社会教育が専門で公民館を中心にすえたまちづくりに長く携わっている、金沢大学名誉教授の浅野秀重さんです。

 

金沢の公民館から2030年をイマジン!

 菊川公民館では各町会から選出された公民館委員の皆さんに5つの部会に別れて所属していただき、各部会と事務局が協議して一年の事業計画を立てているそうです。その事業計画の中から、人気の「洋風しめ飾り講座」を紹介していただきました。これは、新しい年の到来を祝うとともに、参加者相互の親睦を図ることを目的としている講座で、キャンセル待ちが出るほど人気だそうです。

 SDGsの視点から振り返ると、しめ飾りの材料に可燃ゴミと不燃ゴミとなる物が混在していたそうで、左義長で燃やすのに、環境問題を意識していなかったことが、今後のことを踏まえての反省点だと言います。

「講座の全体像を踏まえ、SDGsの視点を加えて企画・立案をすることで改善したい」と原さんは述べ、環境に配慮した材料を使うなど、SDGsの視点を講師にも伝える必要を感じているそうです。

「SDGsの視点から、このような趣味的な講座を見れば、手づくりによる自己の充実感や参加者同士の交流といった当初の目的にとどまらず、講座の意義に「深み」を加えることができる可能性があります。単なる講座が国連が掲げた『持続可能な開発目標』をめざすことにつながります」と原さんは言います。

新しい事業を構築するには大きなエネルギーが必要です。公民館の事業そのものも持続可能でなければなりません。

「背伸びすることなく、今まで実施してきた講座のどこがSDGsと関連づけられるのかを見直してみる。そして、それをねらいに加えた講座の展開を図ってみる。そうすると今までと同じ講座の内容であってもSDGsという意図的な学びが加わり、講座に新しい価値となる深まりが生まれます。その結果として、地域住民へのSDGs意識の普及につながる可能性は、大変大きいと感じています」

 

次の地域の担い手を育成する「地域安全マップ」づくり

公民館では、通学路や遊び場などを学生の指導のもとフィールドワークで点検し、犯罪が起こりやすい場所を地図に表す「地域安全マップ」づくりを行っています。児童や学生たちが自らの手でマップを作ることにより、危険な場所を避けたり、注意や警戒が必要であることに気がついたり、さらに協働作業によるコミュニケーション能力の育成にもつながります。そして危険箇所があることは、子どもたちだけでなく、一緒に参加した保護者や地域住民との間で共通理解することができます。

 このマップづくりは、公民館が主体となって行うことで、子どもや保護者だけでなく、地域全体を巻き込むことができ、安心・安全につながるまちづくりにも大きな成果を残すことができました。安心・安全なまちは、SDGsゴール11(住み続けられるまちづくりを)の達成につながります。

「持続可能なまちづくりの視点から、このマップづくりを考えてみると、持続可能な地域の構築には地域の次の担い手も不可欠だと感じます。地域安全マップづくりに参加した学生や子どもたちが地域づくりの次の担い手になってくれることも期待しています」と原さんは、子どもたちに危機回避能力をつけさせるだけではない、このマップづくり事業に期待を寄せています。

 

公民館からの発信で、新たな金沢へ!

 SDGsのゴールへの近道は、一人ひとりが自分ゴトとして捉え、意識を変えていくことが重要。公民館はダイレクトに地域住民へ働きかけることが可能な学びの場です。学んだことで意識を変え、一人の小さな行動の変化こそが、地域を持続可能なものにつくり変えることができます。このような役割を担うことで、「金沢ミライシナリオ」を協働ですすめるパートナーシップ形成の一因に、公民館もなれると考えているそうです。

「2030年まであと10年。市内の1館でも多くの公民館がこのような視点で取り組みをしていくと、きっと金沢が変わると思います」と述べて、イマジンを終了しました。

 

公民館は社会教育を担う重要拠点

 大人の学びや生涯学習など、社会教育が専門の浅野さんから、公民館活動とSDGsについてアイデア提供がありました。

 まずは教育基本法の中で、社会教育が展開される施設の一つとして公民館が位置付けられているという話や、公民館で必要なものは「人(ヒト)」であり、公民館の仕事とは「つどう、まなぶ、むすぶ、そして人づくり・地域づくり」だということ、さらに金沢の公民館の特徴について説明していただきました。

「平成30年の中央教育審議会では、今後の地域における社会教育の在り方として、人づくり、つながりづくり、地域づくりの学びと活動の好循環をつくることを呼びかけています。

 要するに『開かれ、つながる社会教育の実現』であり、つまり、公民館も『人に開かれ、人がつながる公民館活動』を展開させようと述べています。これがこれからの社会教育活動を方向づけています」(浅野さん)

 

SDGsの視点に立った学びを推進する施設をめざす

 SDGsの17のゴールと公民館活動とは密接な関係があることは原さんの話でもよくわかりました。「地域が持続可能であるために、そんな視点を講座に持たせることで、見せ方も見え方も変わって来るのではないだろうか」と、さらに浅野さんは言及します。「SDGsを学びましょうという必要はなく、企画の中にSDGsの視点を盛り込むことで、ゴールへ近づける」ということです。

 学びとは、「昨日と違った今日の自分、今日と違った明日の自分づくりのための営みのこと。公民館における学びを、社会を創る学びへ」と言う浅野さんは、SDGsのゴール達成へとつながる公民館活動への期待を述べました。

 

 

参加者の質問に答えながらディスカッションタイム

永井:「SDGsという新しいことをするのではなく、既存のものに新しい価値づけをするということがなるほどだなと思った」というコメントがありました。お二人のお話を聞き、公民館という歴史があって制度的にも法律的にも裏付けのあるネットワークや仕組みをSDGsで使わない手はないと思っています。

浅野さん:公民館は教育委員会が所管する教育施設です。地域の人からはコミュニティの施設としての認識の方が強いかと思いますが、もっと学びに特化させてもいいかもしれません。

永井:菊川公民館は大学生との協働を行っていますが、民間企業との協働は可能でしょうか?

原さん:やったことはありませんが、興味はあります。周囲でもそのようなことをした話を聞いたことはありませんが、新しい時代の在り方として興味はあります。

永井:公民館活動を進めていくにあたって大きな課題となることは?

浅野さん:自分たちの公民館活動を振り返る時間が必要なことではないでしょうか。PDCAのC(チェック)をしても、振り返る時間がないことから、「来年も同じでいいか」となりがち。そうではなく、次のフェーズを目指せるチェックをして欲しいと思います。そのためには、振り返ったり、整理したりする時間が必要。「次どうする?」という意識を持ち続けていって欲しいです。

原さん:事業をすることが私たちの本来の仕事ですが、それ以外の仕事が年々多くなっていて、疲弊している主事さんも多くいます。いい意味での業務の断捨離を行い、2021年度にはSDGsという付加価値をつけた、いわば新しく生まれ変わったような事業を、私も皆さんと一緒に考えていきたいです。

永井:オンラインでの公民館活動の可能性はありますか?

原さん:今年度の地域安全マップづくりは、「オンラインホワイトボードサービスmiro」というアプリを使って、学生と地域住民を分けて実施しました。

永井:オンラインだけにしてしまうと高齢者が参加しにくくなります。オンラインとリアルをミックスしてやる必要があると思いますが、その分、高いデジタルのスキルが求められますね。だからこそ、大学や企業にサポートしていただくのもいいのかなと思います。
 参加者から寄せられましたたくさんの質問を見ても、公民館の役割への期待の大きさを感じました。学びは人生を豊かにするものなので、さっそく自分が住んでいるところの公民館に行ってみようと思っています。最後に、公民館活動はどうしたらもっと多様な人に関わってもらえると思いますか。

原さん:多様な方にどうやったら来てもらえるかを日々考えています。まずは、そういう方々(公民館に足を運ぶ機会がなかった方々)の意見を聞きながら進めていったらいいのかなと感じています。

浅野さん:「公民館ではこんなことをやろうと思っているんだけど、どう思う?」という問いかけを対象としたい人に投げかけてみること。もちろん、そのためにはそういう人たちと向き合う機会を創ることが必要です。これまでもしていたのかもしれませんが、力を貸して欲しい人に、アウトリーチ(届けること)もやっていいのかと感じます。

永井:私自身も足元の公民館をもっと盛り上げていきたいし、どんな活動をしているのか、興味を持って関わっていきたいと思いました。本日参加された皆さんもぜひ、ご自身の地区の公民館の活動に注目して、なんでしたら出向いていただいて、いろいろ働きかけるなど、金沢のまちの大動脈である公民館を、太く太くできたらいいなと思います。

 

※ウェビナーの途中で参加者に、「自分の住んでいるところの公民館がどこにあるか知っていますか?」というアンケートを取りました。結果は、「知らない」「よく利用している」を退け、「知ってるけどあまり行かない」という答えが過半数でした。

セミナーの動画もこちらから試聴いただけます。

 

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