OUIK > 催し事 > 地域との研究活動 > 金沢 > 【開催報告】SDGsカフェ#11「持続とは変化!? ~with コロナ時代の働き方とリモートワーク~」

催し事Events

【開催報告】SDGsカフェ#11「持続とは変化!? ~with コロナ時代の働き方とリモートワーク~」

日時 / Date : 2020/4/22
場所 / Place : オンライン

新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、できるだけ出社を伴わないリモートワーク(在宅勤務、テレワーク)による働き方が、現在求められています。

リモートワーク導入に際してのさまざまなネックや、「導入してみたけど、いまいち生かし切れていない気がする」など、日々の思いを皆さんで共有したいと考えて、コロナ緊急企画として、SDGsカフェ#11をウェビナー(*)で開催しました。

*ウェビナーとは、ウェブとセミナーを合わせた言葉で、動画を使ってインターネット上で行うセミナーのこと。Webセミナーとかオンラインセミナーとも呼ばれます。

SDGsとリモートワーク、新型コロナウィルスとの関係

今回、イマジンしてくださるのは、コロナを機に4月から全社リモートワークを導入しているという、株式会社計画情報研究所の代表取締役・安江雪菜さん。そしてアイデアを提供してくださるのは、働き方改革の最前線企業として知られるサイボウズ株式会社の社長室フェロー・野水克也さん。国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット事務局長の永井三岐子を交え、3人によるSDGsカフェ初のウェビナーが始まりました。

まずは永井から恒例のSDGsの概要と、IMAGINE KANAZAWA 2030の主旨説明を。

今回はリモートワークとコロナの関係をSDGsの枠組みで考えてみる、次のような解説も加わりました。

SDGsの17のゴールのうち、コロナと直接関係あるゴールは「働きがいも経済成長も」(8番)と、「すべての人に健康と福祉を」(3番)。

「私たちがリモートワークをすれば、移動が減ります。そして、使い捨てマスクの使用が減ればゴミの削減にもつながるなど、環境問題と切ってもきれない関係があります」と述べ、「気候変動に具体的な対策を」(13番)、「海の豊かさを守ろう」(14番)、「陸の豊かさを守ろう」(15番)との関係に言及しました。さらに、リモートワークをうまく使えるようになれば「産業と技術革新の基盤をつくろう」(9番)にもなると付け加えました。

一方で、ウィルスに感染した人への差別は「人や国の不平等を無くそう」(10番)、家庭内で増えているDVは「ジェンダー平等を実現しよう」(5番)のゴールからマイナスとなっている実態にも触れました。

 

リモートワークの実態を探る緊急アンケートを実施

計画情報研究所は、まちづくりのコンサルタントなどを行う会社で社員は25名。本社は金沢市で、分室や支店が七尾や高岡など4カ所にあります。

*株式会社計画情報研究所 https://keikaku.or.jp

今回、このカフェのために、安江さんは「リモートワーク緊急アンケート」を金沢イクボス企業同盟と連携して、ウェブ上で実施しました。

「緊急アンケートは、皆さんのリモートワークがどういう状況なのかを確認したくて行いました」と述べ、安江さんよりアンケートの結果を発表していただきました。

アンケートの回答は101件、年代は40〜50代が多く、業種はサービス業が一番で4割ほど。職種はさまざまで、規模は小さいところが多い中、1000人以上という企業も15%ほど。

リモートワークの実施状況は「全社員が行なっている」と、「半数以上の社員が行っている」が約半数を占め、「一部の社員が行っている」も含めると4分の3くらいの実施状況です。

安江雪菜さん

「組織の課題について」の質問では、高かったのが、「セキュリティーに不安がある」、「リモートワークが可能な業務ではない」(個人情報を扱う、工場の製造現場であるなど)で、それに続いて「社内体制が整っていない」、「ネットワーク環境が十分でない」など。
あわせて寄せられた具体的な意見には、「在社しなければ『出勤ではない』と思い込む上層部」、「正式にリモートワークが決まると拒否反応を起こす上層部」など、管理職やマネジメントの問題を挙げるものや、「社員の勤務状況の実態を把握するのが難しい」、「お客様側にリモートワークの体制がない」と言ったものもありました。

あなた自身の課題は?」については、「自己管理が難しい」と「リモートワークが可能な業務じゃない」というのが多い回答でした。具体的には、「機材の強化、Wi-Fiの速度」、「顧客との連絡が個人の携帯電話」、「できない仕事(郵便物、判子が必要な書類など)がある」、「より高度なコミュニケーション(考えや意見を言語化できる能力が問われる)」と言ったものが挙がってきました。

リモートワークのメリットは?」の質問には、「通勤時間の削減」、「仕事の進め方の見直しができた」というのが多く、一方、「デメリットは?」には、「できる仕事が限られる」、「社内コミュニケーションが難しい」、「オンオフの切り替えが難しい」などなど。
子供も家にいるため、育児や家事もしながらということで、「いまは特にオンオフの切り替えが難しくなっている状況なのではないか」と安江さんは補足します。
メリットの具体的なものは、「ワークライフバランス」、「不要不急な社内電話、会議が減った」や、「自分の頭で考えるクセがつく」、「どのような状況になっても働き続けられる安心感」、「仕事の定義が、時間ではなく、成果、価値の提供へにシフト」、「遠方でも面接が受けられる」など、仕事へのポジティブな変化やチャンスと捉えている意見も多く見られます。
デメリットには、「孤独感と運動不足」、「セキュリティで事故が起きた時の責任問題」、「いままでのやり方が通用しない」、「『アレ頼むね!』みたいな数秒で済む依頼がしにくい」など、切実な問題も多く挙がっていました。

また、たくさん寄せられた自由意見は、次のように属性別に分類して紹介されました。

高いハードル

  • 相談業務だが、会社はビデオ相談というのを考えられない様子
  • 在宅勤務の規定が厳しすぎて、それをクリアして届け出られる者はいない

「新しい関係性の構築」

  • 高齢者などITリテラシーのない対象との仕事に使えない
  • 全社のミーティングをzoomミーティングに変えたら、いままでよりコミュニケーションが取れるようになった。チャンネルが変わるとコミュニケーションの方法も変わる
  • 社屋に捉われない組織の紐帯の進化を発揮し、会社役員に示していきたい
  • 社長は、リモートワーク中の社員がサボっているんじゃないかなんて思わず、信じて欲しい

働き方のシフト

  • セルフマネジメントが重要
  • リモートワークができない業務について、新しい働き方の模索も考えないといけない時期になっているのではないか
  • 会社の評価のあり方を変えていく必要を感じる
  • 会社の意思決定、人材育成、営業活動、仕事の進め方、組織のありようが質的に変わる。アフターコロナは、以前と同じ働き方、関係性には戻らない、戻れないと思う

以上がアンケート結果の報告でした。
リモートワークは企業文化を変えるチャンスとしても期待できそうです。

 

変わることで持続可能になる、それを感じる日々

金沢市出身の野水さんが所属するサイボウズ株式会社は、かねてよりリモートワークを先進的に進めている企業で、1000人近くの社員は3月初めからほとんど誰も出社していないそうです。

*サイボウズ株式会社 https://cybozu.co.jp

今回のアンケートの結果について野水さんからは、「体制とか内容の決め方とか、リモートワークをやったことがなかったところの典型的な進め方。規定とか許可とか、やりだすとそういうものとは関係なく進んでいきます。そこに捉われていても仕事が回らなくなりますから、まずはやりながら規則も決めていけばいいと思います」とアドバイスがありました。

野水克也さん

続いて、サイボウズではどんなリモートワークをしているかについて発表していただきました。

サイボウズでは、リモートワークはBCP(*)の一環としての観点から挑戦し、取り組んできたそうです。

*BCPとは、災害などの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画。事業継続計画とも

「SDGs的に言いますと、持続可能とは伝統を守ることとは違います。変わっていくもの、変われるものが生き残れるのです。サイボウズにはリモートワークに挑戦してきた歴史があり、急にこういう体制になれたワケではありません。最初にこういう体制を取ったのが2010年でした。その当時のサイボウズはあまりにも社員の離職率が高く、社長は給与以外で社員の言うことを全部聞いてあげようということになり、『こうやって働きたい』と言う社員の要望を入れていった結果、在宅勤務制度がスタートしました」

リモートワークの試験運用を開始した半年後に東日本大震災が起こり、それまでは一部の者だけだった在宅勤務が自動的に全員となり、そのあといろいろなルール変更を繰り返し、いまに至っているそうです。

 

「最近、役所が変わってきたと感じています。いままでは『来月来られますか?』と言っていたのが、『今日、明日でzoom会議できませんか?』に変わりました」

変わらない時は徹底的に変わらなかったのに、変わる時は徹底的に変わるものだということを実感しているそうです。

「ほとんどリモートワークで、役所のサイトを2週間で作りました。このスピードでできたことはすごいことです」(野水さん)

 

リモートワークで部下がサボると思う上司は、
まずは自分でやってみるといい

リモートワークに長い時間をかけて取り組んでいるサイボウズでの経験から、リモートワークのコツを教えていただきました。

「まず、管理のこと。『サボるんじゃないか?』と思う上司がいます。私も実は最初、そう思っていました。でも、一回自分でやってみたら、“いま、自分がサボっているとみんなに思われているんではないか?”という不安の方が勝ることがわかりました。在宅勤務をしている人は、本当は心細くて不安。大手を振ってサボれる人間なんていないということが身をもって体験できたのです。まずは管理職が体験し、その時に感じた気持ちを頭に置けば、進められるはずです」

「サボっているんじゃないか?」と疑うもう一つには、そもそも誰が何をやるかって決まっていない会社が多いことも指摘されました。

「あの人は手を動かしているから働いている、そう言う感覚でマネジメントをしているところが多すぎます。リモートワーク以前に、業務の見える化が必要です」

リモートワークは「基本的には性善説で。性悪説でいくと失敗する」と言う野水さんからは、「雑談もネット上でやるべき」、「一部の人がリモートワークをするのではなく、全員で取り組むことを前提にすべき」というアドバイスもありました。

 

 

いまは稼働率を気にしている場合ではない

ウェビナーでは、参加者(視聴者)がチャットやQ&Aを通じてリアルタイムに質問や意見を投げかけることができるのもメリットです。

参加者のお一人から、「経営層から、子どもが在宅しながら働くことに対して『稼働が下がってしまって申し訳ないという考え方は捨てましょう』というメッセージが流れました」という話も。

「心理的な安堵感となる、こういった言葉が一番欲しいと思います」(永井)

永井三岐子

「自分から進んでリモートワークを行うのであれば、業務効率を落としてはいけませんが、いまは緊急事態の自粛によりリモートワークをしないといけない状況。ですから業務効率が落ちても仕方ないと割り切ることが必要。経営側も全く同じにはならないことを理解すべきです」(野水さん)

「経験値ということもあるので、その辺をどうやってみんなが学習して、こういう風にやると盛り上がるよね、楽しいよねみたいなことを学んでいく、いまはそんな時期なのかと思います」(安江さん)

 

リモートワークに切り替えるためのポイント

今回のコロナ対策として、安江さんの会社がとったリモートワーク対応の手順についても説明がありました。

コロナ以前に、BCP対策にもなるため自社ファイルサーバーをクラウドサーバーに移行していたことや、本支店間のミーティングにzoomを使用していたこと、会議のペーパレスや効率化などを踏まえて全社員のPCをノートPCに切り替えていたことなど、リモートワークを行えるインフラが整っていたそうです。そして、月間フレックス制を採用するなど多様な働き方を受容していた下地もあって、リモートワークへスムーズに移行することができたと言います。

このように進めてきた経験も踏まえて、安江さんはリモートワークを進めるためのコツとして、「バックキャスティングの思考」、「とにかくやるということの強い意思」、「基本のインフラを整える」、「自由と責任の風土」、「仕事の成果とは何かを問い直す」の5つの必要性をポイントに挙げました。

 

ありたい姿にシフトする、いまがそのチャンス

参加者から、「コロナの大変な時も織り込んで進めていくSDGsでは、変えないことと、変えることにはどのようなことがありますか? 金沢市の未来シナリオを再定義する必要はありますか?」という質問があり、それを踏まえて、安江さんからは「withコロナ afterコロナの働き方」についてを紹介していただきました。

「いまはみんなで強制的にやっているので変な興奮状態にあります。でも、長期化と倦怠感で、必ず反動がきます。それでも元には戻れません。ではどうすればいいか? 常識や慣例からありたい姿にシフトすることを真剣に考えたほうがいいと思うし、いまがそのチャンスです。組織の意思決定や、仕事のスタイル、価値観、環境、働く場所の意味まで、働く上でさまざまなものが変わっていきます。その上で、組織の存在意義やそこで行う事業の意義がシビアに問われるようになるのではないでしょうか」

SDGsの未来シナリオの再定義について安江さんは、「いますぐには決めきれないので、私たちはコロナという辛い共同の経験を踏まえて、どうありたいかをオープンにして語り合い、そこで何かの答えが見つけられたら良いなと思っています。持続していくことは、いかに自分が環境に対して変わっていけるかということなんだろうと思っています」と述べました。

「SDGsで問われたことは、『変われるか』ということ。SDGsはいままで騒がれはしたが、あんまり世の中が動いてきませんでした。それが今回のコロナで、やればできるということがこれだけ出てきていて、結局、変われるか変われないかを試された感さえもあります。いまうまく適応できている人とか組織は、結構コロナに対してもうまく扱えてるかなという気がしています。未来シナリオの再定義は別の議論だと思いますが、いままでSDGsをやって努力してきている人たちは、変わることへのアレルギーは少ないと思う気がしていますし、レジリエント(しなやかな強さ)みたいなのはあるのではないでしょうか」(永井)

「あんまりコロナにこだわらない方がいいと思います。こだわると「いつまで」と期限を区切って、元に戻ろうとします。元の通りに商売ができるように、元の通りに仕事ができるようにと給付金に頼って続けていると、おそらく2〜3年後には経済力のない町ができ上がる、そういうリスクがすごくあるんじゃないかと思います」(野水さん)

「製造業とか飲食、対面サービスなど、なかなかリモートワークができないからこのテーマは関係ないと思われるかもしれませんが、オンラインで全部やるからこそ、リモートワークとは違うリアルな場所が特別になります。そういったリアルな場所が、文化も含めて特別なものになって欲しいというのが、リスペクトも込めた私の願い。リモートワークで問題が解決しない、リアルでないといけないことを、いまはみんなで支援していき、大切にしたいと思っています」(安江さん)

「リモートワークに慣れ親しむのにリモート飲み会はいい。そこに上司も誘ってみたら?」という話も飛び出し、盛り上がる中、時間となって今回のウェビナーは終了となりました。

最多で100人近くが参加してくださった今回のSDGsカフェ。質問がしやすい、スライドが見やすい、遠方からも参加しやすい、アポが取れない人気のゲストも呼びやすいといったウェビナーならではの良さを、主催する側も参加する側も共感できた今回の試み。次回以降も、リアルと組み合わせたりしながらウェビナーも取り込んで、SDGsを議論する場を広げていきたいと考えています。

 

今回、ウェビナー中にQ&Aコーナーにていくつかご質問をいただきました。以下、野水さんからの回答付きでご紹介いたします。

Q. そもそもオフラインでも問題あるのですが、、会話コミュニケーションが苦手な人に対しての良い方策はありますか? 

A. まずは、タスクを見える化すること。(評価の基準を作る) あとは雑談ですね。雑談のために毎週時間を取りましょう。 

 

Q. 社員の皆様が全て会社のスマホをお持ちですか? 

A. サイボウズはほしければ支給しますが自分のを使うこともできます 

 

Q. 業務が特定の人に集中したりしませんか? 

A. 集中した人の給料を上げればいいかと 

 

Q. 会社の資料は クラウドに落ちるのですか? 

A. ほぼ100%クラウド上にあります。 

 

金沢イクボス企業同盟の皆さまにご協力いただいた「リモートワーク緊急アンケート」の詳しい結果はこちら

 

 

Pick up

Banner:Conference