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【開催報告】SDGsカフェ#6 「文化のまちづくり」

日時 / Date : 2019/9/26

今回は、金沢らしいSDGsへの取り組み方を考える上で、欠かすことができない「文化のまちづくり」をテーマに、認定NPO法人趣都金澤の理事長・浦淳さんを迎えて、金沢らしい文化を使ったまちづくりについてお話いただきました。後半は国連大学OUIKの永井事務局長との対談によって、金沢らしい文化について意見を交わし、さらに会場も交えて、文化にとどまらず、SDGsの進むべき方向性について深い議論がなされました。

文化でまちづくりをしながら、金沢をIMAGINE

まずは事務局長の永井からSDGsとIMAGINE KANAZAWAの取り組みやSDGsミーティングやSDGsカフェの説明がありました。

趣都金澤は、令和元年の「金沢市文化活動賞」を受賞。折しもこの日はその授賞式があったそうで、授賞式の興奮冷めやらぬ浦さんに、さっそく金沢をIMAGINEしていただきました。

講演の冒頭、浦さん自身が最近診断されたという痛風とSDGsとの関係をユーモアたっぷりに紹介し、会場の笑いを誘い、和やかなムードに。

石川県が輩出した二人の偉人、鈴木大拙と西田幾多郎が残した言葉の中で、浦さんが好きなものを紹介しました。
鈴木大拙の自由に関する表現から、西洋では「束縛からの自由」だが、東洋的な自由は「自らなしていく」とする、自由の考え方の東西の違いには、興味をひかれた人も多かったのではないでしょうか。
「鈴木大拙館」(金沢市/設計:谷口吉生)、「西田幾多郎記念哲学館」(かほく市/設計:安藤忠雄)とも、「素晴らしい建築なのでぜひ行って欲しい」と、建築が専門の浦さんらしいアピールも。

鈴木大拙館

金沢のまちづくりに新しい風を吹き込む工芸建築

趣都金澤とは、市民参画型によって文化でまちをつくっていこうという活動を行っている。2007年の設立当時は、行政や各種団体がまちづくりを行い、市民参画型というのは新しかったそうです。

*認定NPO法人趣都金澤についてはこちら

文化でまちをつくっていこうとした場合、その評価は計量的にはできず、文化についてある程度理解がないと、市民がそれを評価もできず、まちづくりの方向性について合意形成ができないのではないかと感じていました。

浦さんは会員とともにまちづくり学びながら、そのような感覚を養い、地域でまちづくりを行うディレクターをつくっていきたいと考えているそうです。

2018年秋には、金沢21世紀美術館で「『工芸×建築』の可能性を探る工芸建築展」を開催。さらに、2020年春にドイツ・ベルリンの「フンボルトフォーラム」内のベルリン国立アジア美術館に常設展示される「ゆらぎの茶室」を、工芸作家らと制作中です。

また、2016年からは金沢21世紀工芸祭を開催しています。工芸と食の催し「趣膳食彩」や、点在する町家を会場とした回遊型展示「工芸回廊」をはじめ、5つのメインコンテンツで、工芸を通じて金沢の魅力を発信しています。今年で4回目となり、金沢での秋の恒例イベントとして定着しました。

日本の工芸は世界的に見ても、緻密で伝統的にもさまざまな技法が残っていて、表現としても素晴らしいものがあるそうです。世界に売っていける可能性があるアートコンテンツとして、日本の工芸は、かなり注目されているそうです。

北陸や金沢が日本の工芸の中心となる

さて、2020年には日本海側初の国立美術館となる、国立工芸館が石川金沢に移転してきます。約1900点という日本の名だたる工芸が北陸・金沢にやってくることや、2020年には石川県で「国際工芸サミット」という大きなイベントも開催されることなど、北陸と金沢の工芸が今おかれている熱い状況を語りました。

「小松や金沢などの工芸は内発的に持続可能な形でやっていける可能性がある。高岡や福井の越前、鯖江とかでも、若い人が中心となって内発的な工芸祭もやっている。そういうものをつなげていくのもいい。工芸館がくることで、日本を見渡した工芸拠点を作れたらいいと思う。そして金沢はぜひ、北陸の中心として工芸のマーケットを作っていったらいい」と、期待を述べました。

自然との共生から自然との対峙へ。時代の変化がSDGsを生んだ

続いて世界各国の都市の、夜景写真を見せ、夜景だとどれも似たような感じで、驚くほど都市の平準化が進んでいることを示しました。
産業革命以前は、人と自然が共生しながらある種の理屈を持っていた時代でした。しかし、それが今は、人と自然が対峙しながら理屈がない無理な時代になっていると述べ、「だから今、SDGsがあるのではないか」と説明しました。そして、もう一度その中に、“理屈を入れていく”、“編集していく”といったことが大事だと付け加えました。

SDGsの17のゴールでまちづくりのことをストレートにいっているのは、「11.住み続けられるまちづくりを」の1つだけ。「もっとあってもいいと思う。そもそもデベロップメントとサステイナビリティを一緒にするのが難しい」と言う浦さんからは、「その地域ならでは文化にもっと寄せてみるのもいいのでは?」との意見が出ました。

後半は浦さんと永井によるトークライブ。まずは金沢らしい文化を見つめ直す

金沢の産業には内発的なものが多く、結果として残っているニッチトップがいっぱいあります。その中には、前田家が投資を行ってきたストックも多く含まれます。
一方、全国を見渡してみると、日本海側にはそういったストックがいっぱい残っているはずなのに、「それがうまく生かされていない気がする」と言う浦さん。それらを顕在化するキーワードが「内発」であり、そのことを一番理解しているのがそこに住む人ではないか・・・、そのような話から議論が深まっていきました。

認定NPO法人趣都金澤の理事長・浦淳さん

また、メインストリームでない人が変えたいと思っていることもたくさんあると、永井から話が切り出され、「例えば、国際会議に芸妓が来てお酌をするとか、旦那衆が文化を作ってきた金沢らしい側面でもありますが、グローバルスタンダードと照らしてみて、それはどうなのでしょう?」と、疑問を提示。
「金沢だからとりあえず芸妓を呼べばいいという考え方ならば、それは想像力の欠如。ある意味、文化的発想から一番遠いこと。これは“伝えて統(す)べる”伝統も同じ。新しく創造されたものもいっぱいあり、その中から統べられて何かが残っていく、これじゃなくちゃいけない」(浦さん)

国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット事務局長・永井三岐子

「創造性、その場その場をちゃんと考えてやっているのであれば、『何か理由があるのだろう・・・』と納得できますが、考えもしないで『こうしておけばいいや』というところに縛られている金沢の文化というのも、たくさんありますよね」(永井)

それぞれが心地いい場所を作るために、まちづくりをはじめ、金沢で文化から変えることはできないものか、そんな話につながります。

話題はSDGsのあり方へと進む

「SDGsのゴールの目標。平準化、結果にこだわると、『数字を出せばいいのでしょう?』みたいになるのではないでしょうか?」(永井)。

SDGsみたいにガーってきたものは、往々にして残らないものがある。残すためには多少の疑問を持ったりすることも大事。地域や環境にあわせ少し軌道修正したり、付け加えたりしながら多様なゴールを考えることは、SDGsという理念の持続性に繋がると思う」(浦さん)

 

「食品会社だからと、『世界の飢餓をなくすために貢献しています』とか、SDGsでラベリングだけしている企業も残念ながらあります。SDGsの根底をうまく共有して、結果の出方は金沢の場合は文化によるかもしれないし、他の町はそうじゃないかもしれないが、表層的なものではなく、SDGsのコアなところの価値の共有ができたらいいですね」(永井)

「SDGsは一人ひとりの中にある、地域の中にあるもので、それを無理やり1個にまとめようとしているから難しいのではないか。17の目標から何を自分の方に呼び込んで行くか、それで足したり引いたりしていく上で別に生まれたりするものっていうのがあって、そこの議論が大事だと思う」(浦さん)。

会場を巻き込んで、SDGsに対するさまざまな思いが交錯

SDGsについて、会場からも貴重な意見がたくさん出ました。ここでは、そのいくつかをかいつまんで紹介します。

「SDGsは、みんなが変わっていかないといけないが、今までやってきたことを今まで通りにやりたいと思う伝統主義的な人には、それができなくなると思われるのではないか?」

「子供が学校でSDGsを習ってきた。先生は子供たちに議論もさせずに、正しいこととして教えていたが、『これでゴールしたら本当に幸せなの?』って疑問を持たないのは思考停止だと思う。誰かが違うって多面的に意見を言わないと本当のゴールは見えないのではないか?」

「文化はストーリーではなく、ナラティブ的に脈々と答えもなく受け継がれてきたもの。自分の町会でも誰も理由もわからずに祭りが続いている。こういうナラティブ的な文化のあり方が、金沢でのSDGsには必要な気がする。合理性とか生産性とか数値化とかからかけ離れたところにあるのが文化」

「極限の貧困とか自分たちの知らない現実があることはわかった。それに対して目標が誤っているとは思わないが、これらは教えることではなくて感じ取るものではないかと思う。学校では先生が教えることよりも、自分たちで答えを出すという教育に変わってきている。そのためにも自分たちはもっと現実を知るべきだと感じた」

「金沢で知らず知らずに受け継がれているもの。そういうものだという一つの型が文化を生んでいる。基本的に人間が育つ文化だし、子供のうちから引き継がれてきたもので、体に蓄えられた大事なもの。それが金沢だから継続しているが、周辺の山間部では少子高齢化でできなくなっている。それまで持っていたものがサステイナブルで無くなること。これは、世界中で起こってきている。自然環境や戦争で自分を育ててくれた土地から離れないといけなくなるなど、そういうことが起こり過ぎているからSDGsという話が出てきた。サステイナブルな環境が金沢にあるということならそれを大事にしないといけない」

 

最後に永井からは、「SDGsはISOのようにやり方を変えるのではなく、自分の在り方を変えようというもの。SDGsはこのように学び続けて対話しながら、想像を創造につなげいていくことが大切なのではないかと思う。今日ここで出た話から、多少なりとも何か持って帰っていただければ嬉しいです。素晴らしい場をみなさんと共有できたことに感謝します」と述べ、閉会となりました。

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