今年4月から始まりました「SDGsカフェ」。
さまざまな方に参加していただき、コーヒーでも飲みながら、2030年の金沢を考えてもらおうというものです。
その第3回では、「今、求められる教育」をテーマに、学校教育を問い直すキュメンタリー映画『Most Likely to Succeed』を鑑賞し、会場の皆さんと対話をしました。
未来の学び方について考えさせてくれる映画
まずは国連大学 サステイナビリティ高等研究所 いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)事務局長の永井から、SDGsカフェの趣旨説明と、今回、2030年の金沢をIMAGINEしてくださる藤岡慎二さん(北陸大学経済経営学部教授、地域連携センター長)の紹介がありました。
さて、上映する映画に出てくるHigh Tech Highというチャータースクール(特定の目的をもって設立される学校)について簡単にご紹介。
この学校は2010年の開校した米国のカリフォルニア州にある公立校で、小学校、中学校、高校があります。
学んだことはテストではなく文化祭で評価され、詰め込み式の受験偏重型教育とは違い、学生が主体的に深く学び、失敗や成功を通じて人間的にも成長できるそうです。
未来型教育を研究・実践しているHigh Tech Highの21世紀型の授業スタイルの実際を、この映画は克明にルポしています。
◎映画の詳しい情報は下記のサイトをご覧ください。
FUTUREEDU TOKYO
世の中は変わっても教育は120年以上変わっていない
米国の教育カリキュラムは、大量生産を推し進めていこうとした1892年に制定されたもの。GDPが伸びれば、国民所得も伸びた20世紀にはマッチしたものでしたが、1990年代後半からの急速な技術の進歩により、多くの仕事が奪われ、もはや大学を卒業したら安定した職に就けるという時代ではなくなりました。
世界の経済が激変した中で学校教育の改革は遅れています。これは日本に似たような状況と言えるでしょう。
この先、「より創造力の高い仕事だけが生き残っていく時代となる」、そう考えると、今の教育システムで十分なのか?という疑問が生じてくるでしょう。
その答えを導くヒントがこの映画の中にはたくさんありそうです。
映画が媒体となって、日本の教育の現状を考え合う
この映画を観ると、今までの学校教育の概念とのギャップを感じて、疑問や不安、あるいは気づきや確信など、さまざまな思いが浮かんできます。
映画を観終わってすぐ、そんな熱い想いを隣の人と語り合い、そしてティーブレイクを挟んで、今度は4〜5人でグループとなり、ワークショップが始まりました。
この映画は、観て終わりではなく、当事者である学生やその親、教師をはじめ、さまざまな立場の人が意見を交えあうことが重要なのです。
藤岡さんからは、「これはアメリカの学校の話であり、急いで日本で取り入れるのも変な話。日本には日本のいいもの(keep)もあれば、問題(problem)もある。そして取り込むべきと思うこと(try)もある。それをみんなで考えるワークショップにしたい」と述べ、一人ひとりが思うことを付箋に書き、keep、problem、tryと3分割された模造紙に貼っていくことになりました。
今回、さまざまな世代が集まり、いろいろな意見が出ましたが、「keep」には礼儀正しさなど日本人らしさに関係する意見が多く、また「problem」では、子どもの個性を伸ばせていないなど、いまの教育が抱えている問題とリンクした意見が多く見受けられました。
日本の地方は世界の“課題最先端地”。ここが変われば世界も変えられる
このワークショップをファシリテートする藤岡さんは、教育改革による地域創生で数々の実績をお持ちの方。
「高校魅力化プロジェクト」のきっかけとなった、隠岐島前高校が起こした奇跡の仕掛け人でもあります。その一つの高校から始まったことが、今では全国の地域に広がっているそうです(石川県でも「能登高校魅力化プロジェクト」が始まっています)。
藤岡さんによれば、少子高齢化など、日本は世界の「課題先進国」であり、地方はさらにその先を進んでいる最先端地だと言います。
そんな地方で生活や仕事をしている人たちの意見を高校生たちが聞き、そして一緒に挑戦していけるプロジェクト型学習ができたら、「それはもう、間違いなく世界最先端の教育」だと強調します。
いまの学校教育って・・・。批判するだけでは何も変わらない
このように、日本でもさまざまな教育改革が起こり始めていますが、その全てに当てはまる共通項があるそうです。
それは、「学校の先生に全て授業を丸投げしないこと」。
親や地域の人たちが、みんなで相談しながらみんなで育てているということです。
「今の学校は・・・」と、ただ批判するだけでは、改革は始まりません。周りの人たちがどう参画していけるかということがキーとなります。
2030年の社会をIMAGINEしてみたときに、今の教育制度で大人になった子ども達が、その社会でどんな活躍をしているだろうか? まずは一人ひとりがその姿を想像してみることから、いろいろなことが始まりそうですね。