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地域との研究活動:アーカイブ

SUNプロジェクト生き物調査中間報告会を開催しました

2021/10/20

都市に自然を取り戻し、地域の復元力、回復力を向上させるための研究活動を行うSUNプロジェクト。研究の一環として、金沢市内の用水と日本庭園が生物多様性にどのような役割を果たしているのかを調べるべく、今年の春から3年間にわたる生き物調査を実施しています。

今年度も前半が終わり、調査対象の各庭園で春、夏、初秋の調査を終えたところで、金沢市役所職員、調査対象庭園保有者、専門家など約20名をお招きして、1020日その中間報告会を実施しました。

豊かな自然と歴史的な文化が残る金沢市において、庭園は金沢市の社会システムと自然システムの調和を象徴する重要なグリーンインフラの1つです。しかし、人口減少などの複数の原因により、維持管理が困難な庭園も存在し、その中で生物多様性や人と自然とのつながり、温暖化対策への貢献など自然がもたらす様々な恩恵も失われていく可能性があります。将来的な維持管理の方法を模索する必要がある中で、まずはどのような生き物が生息しているのか、現状を確認するために、今回の調査を実施しています。

調査を通して、各種の希少生物、外来種やその他の生物が生息し、また一部の生物は用水や周囲の森林を通して庭園内に入ってきたと思われることが分かりました。参加者との間では、庭園や用水とも連携した維持管理のあり方、また外来種が与える危害にどうやって対応していきつつ希少種を守っていくかなど、意見交換が行われました。今年度は、11月、そして冬の季節の調査も行う予定です。年間の調査が終わり、全調査が終了次第、調査結果を取りまとめ、分析していく予定です。

IMAGINE KANAZAWA 2030 「金沢市民のわたしたちが考える指標アイデアワークショップ」開催

国連が掲げる「持続可能な開発」とそれに紐付く17の目標(SDGs)の達成を地域で進めていくにあたっては、地域で適切に達成度を測って進捗を確認することが大切です。IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議は、10月16日に市民とともに地域でのSDGsの達成度を図るための指標のアイデアを出し合うワークショップを開催しました。約25名の市民の方にご参加いただきました。

2019年3月金沢市、金沢青年会議所、国連大学IAS OUIKは金沢SDGsを進めるための指針である「5つの方向性」を発表し、「IMAGINE KANAZAWA 2030」プロジェクトをスタートさせました。2020年3月には、地域の多様な主体が取り組みを進めるための行動計画である「金沢ミライシナリオ」を取りまとめ、SDGsを金沢で達成するための行動の道しるべを示しました。一方で、金沢市が2020年7月に内閣府より「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定されて以来、IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議は「市民生活と調和した持続可能な観光の振興〜『責任ある観光』により市民と観光客、双方の『しあわせ』を実現するまち金沢〜」をSDGsの達成促進のためのモデル事業として進めています。

このように、地域の実態に合わせてSDGsを地域で推進していくための計画を策定し、それに紐づくプロジェクトを進めている中で、指標を用いてプロジェクトの結果(アウトプット)や効果(アウトカム)を測っていくことが重要となります。指標を用いた計測は状況の分析や改善のために使えるほか、自分ごとになる指標を設定し、モニタリングすることで、参加意識が高まり、意識の共有やモチベーション向上につなげることもできます。今回のワークショップでは、そういった自分ごとにできる「みんなの指標」を作るために、市民の方々と一緒に「こうなったらいいよね」と思える未来の金沢とそれを測定するための指標について考えました。

ディスカッションのテーマとして設定したのは6つのテーマ。最初の5つは「金沢ミライシナリオ」の中の5つのシナリオに沿ったテーマ、そして最後の1つは自治体SDGsモデル事業のテーマである「持続可能な観光」です。例えば、2030年の金沢がどのような「古くて新しくて心地よいまち」になってほしいか、そして、そういった理想的な状態を計測するにはどういった指標が良いか、普段「”もったいない”がないまち」に貢献する活動をしている、それを計測するにはこういった指標があってほしい、といった内容をテーマ毎にグループに別れてブレインストーミングしていきました。

計測する指標を具体的にアイデア出ししていく作業は少し難しかったようです。ですが、ワークショップを通して、金沢が2030年にはどういった「まち」であってほしいかのアイデアはたくさん討論されました。学生と社会人のつながりやつながる場所があってほしい、ビジネスを始める人に優しかったり、生涯学習や学び直しに優しい環境、芸術家やキュレーターが育つ環境であってほしい、といった学びや仕事に関わること、マイノリティへの寛容なオープンマインドな社会であってほしいといった多様性や包摂性に関わること、地域団体と観光事業者が価値観を共有する、といったパートナーシップに関わることなど、意見が交わされました。そういったありたい姿に対して、学生と社会人のつながりやつながる場所の数、社会人が学び直しが出来る学校や講座の数など、定量的な指標を設定することで定量的な計測とモニタリングが可能となっていきます。

みなさんは、金沢でSDGsの達成を目指すためにどのような自分自身の指標を設定しますか?

IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議では今回のワークショップの開催までに、金沢でのSDGs達成の進捗を測定するために、「金沢ミライシナリオ」の5つのシナリオと自治体SDGsモデル事業の「持続可能な観光」に沿った指標案を検討してきました。今回のワークショップでの参加者のご意見を受けて、指標案を見直したのちに、みんなで取り組んでいける指標を改めて公開し、引き続きパートナーシップでSDGs達成に取り組んでいける環境づくりを進めていく予定です。

【開催報告】 能登の里海セミナー「里海の保全から考えるSDG14の達成-海洋汚染問題を考える-」

2015年から国連大学OUIKは石川県の世界農業遺産「能登の里山里海」(以下「能登GIAHS」)における里海の保全や生業に関する啓発活動を「能登の里海ムーブメント」として行ってきました。今年はこの活動の一環として、「里海セミナー」を計4回開催する予定です。

 2020年6月6日にオンライン開催された2020年度第1回目は「里海の保全から考えるSDG14の達成-海洋汚染問題を考える-」をテーマとし、SDG14「海の豊かさを守ろう」の10個の目標から、SDG14.1「2025年までに、陸上活動による海洋堆積物や富栄養化をはじめ、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に減少させる。」について学びを深める回となりました。 

「里海」という視点をもって海洋問題と向き合う

 開催に先立ち、主催を代表して国連大学OUIK事務局長の永井三岐子がこのセミナーの様々な可能性について語りました。沿岸生態系の資源から恩恵を受けて暮らす人々は世界に30億人いると言われており、人々の生業と自然が共生する沿岸地域を表す「里海」という視点を用いて海洋汚染問題と向き合うことはとても重要だそうです。さらに「SDGs14、そして科学的な知見を用いて地方から全国に向けてオンラインで発信できることは非常に意義のあることだと思います」と挨拶を述べました。

【イヴォーン・ユー(国連大学 OUIK研究員)】

 続いてこのセミナーの紹介として「能登の里海ムーブメントとSDG14について」と題し、国連大学OUIK研究員イヴォーン・ユーより発表がありました。

 2011年「能登の里山里海」として能登地域がGIAHS認定され、農業と関わりの深い「里山」の保全・活用活動が盛んに行われるようになったそうです。一方、2012年に行った「里海里山の保全活動に関する調査」では「里海」という観念の認識がまだ低く、「どのような活動を通して里海の豊かな伝統や自然を守っていけるのか、イメージしにくいという」という意見がでました。

 そこで国連大学OUIKでは「里海」という観念の理解を広げるため、地域の知名度の向上のため、そして里海を生業の場としている地域の人々の生活を向上させるための活動を「里海ムーブメント」と名付け2015年にスタートしました。国内外での発信、地域での保全活動のサポートも積極的に行い、計8回行われたセミナーでは七尾市の藻場や穴水湾の伝統漁法、珠洲市の貝類など、さまざまなテーマを取り上げ、東京や国際会議の場でも能登の里海について発信してきました。これらの活動は能登地方を里海研究・保全の拠点として活用の幅を広げることにもつながっています。

海洋汚染の様々な要因

 「海洋汚染」と一言でいっても、原因は多様です。近年話題になっているプラスチックゴミ問題の他に、産業化学物質や畜産の排出物や日常生活用品の化学物質などの陸上からの流出も汚染源となります。また、海上での油の流出や、浮遊する漁具が魚を獲り続ける幽霊漁具なども見逃せない問題です。こうしたさまざまな要因が、海洋の生態系に悪影響を及ぼしています。プラスチックゴミの問題に至っては「2025年には魚3トンにつき、1トンのプラスチック、そしてこのままいくと2050年には魚よりもプラスチックが多くなる」という予想がEUから出ています。

持続可能な海洋のためのイノベーション

 6月8日は世界海洋デー、今年のテーマは「持続可能な海洋のためのイノベーション」です。「海洋ゴミを減らすことも増やさないようにすることも大事だが、そのゴミを再利用することも考えるべき段階に来ている」とイヴォーンさんは語ります。さらに海外のイノベーション事例として海洋ゴミ100%で作られたサングラスやスポーツ用品についても紹介しました。「イノベーション(技術革新)は再利用製品の開発だけにとどまらず、教育などの知識的改革にも適応されるべき」と述べました。

 

【道田豊(東京大学大気海洋研究所教授)】

 次に「海洋プラスチックをめぐる課題と研究の展望」と題し、東京大学大気海洋研究所の道田豊教授よりお話いただきました。

 道田さんの専門分野は海洋物理学、主に海洋表面付近の流れと構造の変動を研究しており、その延長で漂流するプラスチックゴミについての調査も行っているそうです。2019年からは東京大学と日本財団の連携により海洋ごみ対策プロジェクトを開始し、海洋プラスチックゴミ(主に5mm以下のマイクロプラスチック)に関わる実態把握、生体影響、そしてゴミの発生フローの解明と削減・管理方策を研究しています。

そもそもどんなふうにゴミが海洋に流れてくる?

 これまで人間が生産してきたプラスチックの全量は実に象14億頭分、中華人民共和国の人口が大体13-4億なので、人口が全員象の重さになったイメージだそうです。大量生産しているプラスチックの中には使用後、リサイクルされるもの、再利用されるもの、焼却処分されるものがあり、残りのごく一部(5%以下)が残念ながら海に流れ出ているそうです。5%と聞くと少なく感じますが、全体量が多いのでこの5%は決して小さな数ではないです。その多くは東南アジア諸国から流れ出ており、早急な対策が望まれているそうです。(日本は年間2万トン流出)

 これらが何処から発生してどうやって海に流れるのかという「プラスチックのマテリアルフロー」も明確になってきており、それに基づいた削減・管理方策を検討しているそうです。「(ゴミが)川を介して海に流出していることはほぼ確実、では川に流れる前の段階でどう抑られるか?それは制度を作ったり、社会的行動変容を促すことを考える必要があり、社会科学分野の専門家とも協力し、検討している」と述べました。

マイクロプラスチック

 マイクロプラスチックと言われているものには2種あり、もともの小さかったもの(レジンペレットやマイクロビーズ)と、海に流れ出た後、波に揉まれたり、紫外線の影響を受け、長い間かけて微粒子状になったものがあります。このマイクロプラスチックはまだまだわかっていないことが多く、道田教授の研究ではまずこれらが「何処から来て何処に行くのか?」という実態把握から進めているそうです。現在は「小さくなったプラスチックはプランクトンや魚の糞などにくっつき海底に沈んでいく」という仮説を証明するために調査研究が行われているそうです。

生態系への影響

 プラスチックという物質はPCB(ポリ塩化ビフェニル)等の化学物質が吸着しやすく、それらを飲み込む生物(魚や貝)への生体影響も懸念されています。これらの影響を把握するため、綺麗な海岸の生物とプラスチックゴミが多くある海岸の生物を比べ、体内の化学物質の量の違いなどを調査しているそうです。

 人体への影響についても未解明な点が多く、はっきりと影響があるとは言い切れないそうです。初期段階の研究として「マイクロプラスチックは体内に吸収されるか否か、そしてどのように体内に吸収されるのか」について培養した細胞のモデルを用いて研究しているそうです。「おそらく小さいプラスチックは吸収される、しかし生体に悪影響があるかどうかはまた別の問題。プラスチックは安定した物質で簡単には分解されない、そのまま体内を巡っているだけでは影響が出ない可能性もあるが、例えば免疫細胞などが反応し医学的影響を及ぼす可能性も否定できない」と道田氏は語ります。

 科学的に極めてハードルが高いこれらの問題の解明には長い時間がかかると言われています。しかし放っておくと取り返しがつかなくなるため、解決にはプラスチックの再利用やリサイクルはもちろん、全体量を減らす努力が必要です。道田さんの研究では2021年後半に政策提言ができるよう、取り組んでいるそうです。

【浦田慎(一般社団法人能登里海教育研究所主幹研究員)】

 続いて一般社団法人能登里海教育研究所主幹研究員の浦田慎さんより、「子供たちの海の学びを考える・能登里海教育研究所の環境教育」と題して活動紹介を行っていただきました。

 能登町の小木にある能登里海教育研究所は2015年に日本財団や能登町からの支援で設立されました。主な活動としては海洋教育に関する研究と学校での海の学びを支援する活動です。

なぜ海洋教育が必要か?

 日本という国は非常に地理的にも文化的にも海との関わりが非常に深く、法律でも「海洋に関する国民の理解の推進」が定められており、海洋問題に関しても海の側に住む人だけではなく、山の方に住む人も等しく学ぶことが推奨されているそうです。さらに「海」は自然環境と自分たちの暮らしや産業との結びつきを学ぶために活用しやすく、子どもたちにとっても興味関心を引く学びの場となっているそうです。浦田さんは「子どもたちが自ら興味を示し、自分で調べてみるといった主体的・対話的で深い学びが柱となっています」と海洋教育の方向性を語りました。

社会と連携した学校教育

 地域で活躍する漁師さんや専門家の方に実際に授業でお話しいただく、見せていただく、というのは海洋教育において非常に効果的な手法です。しかし、このような出前授業を行う場合は外部協力者(ゲストティーチャー)と学校教員の、それぞれの狙いを事前に確かめておく必要があるそうです。能登里海教育研究所は子どもたちの目標に応じた理解を優先する学校側と、自分の経験や知識をより多く伝えたい協力者の間に入り、授業をコーディネートする役目も果たしています。

海洋ゴミの教育

 これまでの海洋教育では、汚れた海のショッキングな写真を見るところから始まり、当事者意識を持たせ、行動を考えるという順で進められることが多かったそうです。しかし、この方法では「海が汚いところだ」というネガティブなイメージだけが残ってしまう可能性があります。さらに「海にとても親しみを感じる」と答えている若者が年々減ってきている中、「そもそも親しみを感じない場所のゴミ問題を解決しようと思うのか、懸念を感じている」と浦田さんは語ります。

 これらのことを踏まえて、最近は「海を守る」ことを教える前に「海に親しむ、知る」ことを優先する段階的な教育プランが多くの学校でも採用されているそうです。

 小木小学校では1-2年生の時はゴミ問題には触れず、海の生き物や海藻と触れ合い、観察や飼育を経験し、海に対する愛情を深めることを目標としています。その後3年生になると初めて海岸でゴミ拾いを行い、地域内で啓発活動を行うそうです。さらに高学年になると自分が疑問に思ったことについて調査・実験を通し、ゲストティーチャーと共にゴミ問題についてさらに理解を深めていきます。

 最後に「子どもたちから『なんでこんなに頑張ってもゴミが減らないの』と聞かれると非常に答えづらい。大人たちからも解決事例を示していくことも大事」と述べました。

 

 パネルディスカッションは「SDG14.1海洋汚染軽減の目標達成に私たちのできること」について輪島の海女漁保存振興会海女の早瀬千春さんも加わり、イヴォーン研究員がモデレーター役を努めました。

【早瀬千春(輪島の海女漁保存振興会海女)】

 輪島で30年以上海女として活動している早瀬さんは小さい時から海に親しんできたそうです。季節ごとに操業するエリアが変わる海女業を通して、広い範囲で長年能登の海を見てきた中、様々な変化を目の当たりにしてきたそうです。「昔の海と今の海では確実に変化が見られる。21歳の娘も海女デビューしたこともあり、海洋汚染問題についてはとても懸念している」と述べました。早瀬さんが感じている具体的な環境の変化としては水温の上昇や透明度の低下、磯焼けがあります。「磯は海の中の畑。磯が焼けてしまうとサザエやアワビの主食である海藻が育たない。昔の海の環境に戻すのは難しいかもしれないが、次の世代のためにも人間の手で壊した環境は人間の手で戻す努力をしないと」と述べました。

海に潜って漁を行う早瀬さん

 海女さんや漁師さんは海洋ゴミ問題にも日常的に直面しています。流れてきた漁具などが船のスクリューに絡まったり、海女さんの足に絡まったりして、危険な目に合ったこともあるそうです。「漁具は漁師の財産、故意に捨てることはないと思うが、それが流れてくることで被害を被るのも漁師さん。なんらかの形でこれらのゴミがお金になる仕組みができればゴミの回収自体も仕事として成り立ち、理想の形だ」とイヴォーン研究員は述べました。

 続いて新型コロナの影響からくるプラスチックの使用量の増加について道田さんにお話しを伺いました。「プラスチックを減らすのは大前提だが、例えばプラスチック製品がない医療は考えられないという事実がある。これを認めた上で知恵を絞り、上手に使うということに尽きる」と述べました。

 浦田さんは「プラスチックだから悪だと感情的に決めつけるのではなく、科学的な根拠を用いて正しく学習し、判断するスキルを子どもたちに持って欲しい」とコメントしました。早瀬さんも「捨てない努力と作らない努力、そして一人ひとりの心がけが大切である。大人も責任を持って行動するべき」と考えを述べました。

【Q&A】

 続いて質疑応答では「そもそもなぜ海洋にプラスチックが流れ出てしまうのか?リサイクルにもエネルギーが必要なのでゴミと一緒に燃やしてしまえばいいのではないでしょうか?」という質問に道田さんにお答えいただきました。ヨーロッパでは一般的な埋め立て処理や日本で行われているサーマルリカバリー処理*など、さまざまなプラスチックゴミ処理方法については専門家の間でも議論が分かれるそうです。「いろいろな要素が絡んでくるので、全部一緒に燃やしてしまう方法よりも分別して処理するという手段を日本は取るのがいいのでは」と道田氏は述べました。*ゴミを焼却して得た熱エネルギーを回収し、再利用する処理法

 最後にパネリストの3名から、皆さんへのお願いとしてコメントをいただきました。早瀬さんは「ゴミを減らす、ゴミを持って帰る、ゴミを作らない努力を心がけてほしい。海の環境悪化は明白であり、自分たちが理解を深め、変わらなくてはいけない。海に従事している私達海女とか漁師にしか出来ないコトがあるはず。海の中のゴミを収集する事や底引き網で深い所のゴミをさらうコトとか出来る。これについては、補助金とかあれば、海女も海掃除の日を何日か出来るはず」、浦田さんは「もっと多くの方に教育現場でのご協力をお願いしたい。海の素晴らしさが伝われば子どもたちの意識も高まると思う」、道田さんは「研究者として科学的根拠に基づいて議論できる世の中を作るために努力したい。皆さんには『私一人がやっても』と思わず、自分がやっている努力の意義を認識して、地道でも、できることからやって欲しい」と語りました。

 

 閉会の挨拶では国連大学OUIK所長の渡辺綱男が今日の議論を振り返ると共に「里海と関わって暮らしている方々の経験や想いを私たちみんなで共有し、一人ひとりの行動につなげていくことが海の豊かさを守ってく中でとても大事なのでは」と述べました。さらに来年からは「国連海洋科学の10年」が始まることもあり、「国連大学OUIKとしてもこの里海セミナーなどを通していろいろなテーマで海の豊かさを守るための活動を皆様と続けていきたい」と述べました。

 

セミナーの動画もご覧いただけます。

※セミナー中に対応できなかった質問に対する答えと登壇者プロフィールは下のファイルをご確認ください。

 

【開催報告】シンポジウム「いしかわ・かなざわから発信する生物多様性10年のあゆみ 〜 持続可能な次の10年に向けて 〜」

2010年に愛知県で開催された生物多様性第10回締約国会合(COP10)では、生物多様性を守っていくための愛知目標が採択されました。そして2011〜2020年を「国連生物多様性の10年(United Nations Decade on Biodiversity)」と定めて、愛知目標の達成を目指してきました。
2020年はこの10年の節目の年であり、「国際生物多様性の日」である5月22日を記念し、「国連生物多様性の10年」のキックオフシンポジウムが開催された石川県での10年の活動を総括し、次の10年に向け、生物多様性とどのように向き合い持続可能な地域を作っていくかを考えるシンポジウムを主催しました。

※新型コロナウイルス禍の中、本シンポジウムはオンラインで開催しました。

この10年を総括し、次の10年を考える

開催に先立ちまして、主催を代表して国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)・所長の山口しのぶより、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)の今までの取り組みや成果について紹介。「この10年間の活動を地域から総括し、またこれからの10年を見据えた持続可能な社会のあり方について発信できることは大変意味深いことだと考えます」と、開会の挨拶がありました。

共催の環境省、石川県、金沢市からはメッセージをいただきました。

環境省大臣政務官・八木哲也氏からは、「石川、金沢における活動を総括し、次の10年を考えるイベントが開催されることは、生物多様性に関する活動を将来につなげていくことで大変意義深いもの」と述べ、「世界は新型コロナウイルスという危機に直面していますが、この危機に加え、生物多様性や気候変動の危機に対処していくための解決の鍵は自然との共生を実現していく中にあると考えています。これらの危機を克服していくために社会のあり方を見直し、自然と共生する持続可能な社会に変革していくことが求められています。本日のシンポジウムが自然と共生する持続可能な社会のこれからの形、生物多様性との向き合い方について、参加者の皆様方とイメージを共有し、新たな活動の展開につながるきっかけとなることを祈念しています」と述べました。

石川県知事・谷本正憲氏からは、石川県の国際社会での認知度向上や、国際交流の推進が図られてきたことに、UNU-IAS OUIKが大きく貢献してきたことを評価するとともに、「今後とも生物文化多様性の保全や持続可能な地域社会の発展に向けた石川県の取り組みを世界へ発信していくためにご協力をお願いしたい」というメッセージをいただきました。

金沢市長・山野之義氏からは、2016年に策定された、金沢版生物多様性戦略についてと、また四季折々に豊かな金沢の自然環境が伝統文化を育んでいることの紹介があり、これを次の世代へと引き継いでいく義務であるとのメッセージをいただきました。

 

基調講演
生物多様性の10年—これまでの10年これからの10年

基調講演は、公益財団法人 地球環境戦略研究機関 理事長の武内和彦氏にお願いしました。

「オンラインのシンポジウムを開催するということで、新しい社会における交流のあり方につながればいいなと思っています」と、まずは抱負を述べられ、生物多様性のこれまでの10年の総括と、これから先の10年はどんなことを考えていけばいいのかについて、講演していただきました。
COP10で採択された「愛知目標」を踏まえて、日本の生物多様性国家戦略の見直しの最中に東日本大震災が発生。恵みであると同時に脅威でもある日本の自然に対し、感謝と畏敬の心で接することを認識したそうです。今回の新型コロナウイルスの発生についても、自然環境の破壊と無関係ではないという専門家の話を交えながら、自然との共生ということに立ち返って、これからの人と自然のあり方を考えていく必要性を強調しました。

2019年5月に、「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学―政策プラットフォーム(IPBES)」から公表された生物多様性に関する報告は、「世界中で約100万種が絶滅の危機に瀕している」という、非常にセンセーショナルな数字で広く知られるようになりましたが、この報告書が言いたかった、もう一つの大事なメッセージを紹介しました。
それは、「このままでは自然保護と自然の持続可能な利用に関する目標は達成されないが、経済・社会・政治・科学技術の横断的な変革により、2030年以降の目標を達成できる可能性がある」とあり、「社会変革を促進する緊急かつ協調的な努力により、自然を保全、再生、自足的に利用しながら同時に国際的な社会目標を達成できる」とあることです。
「こういうポジティブなメッセージも含まれていることをぜひご理解いただければと思います」と述べました。

目標達成に向けた現在の進捗状況は、順調に進んでいるものは少なく、一番うまくいっているのが「保護地域の拡大」で、うまくいっていないものは、「生息地の破壊」、「過剰な資源の利用」、「化学汚染」など。「外来種」はうまくいっているものもあればいっていないものもあるそうです。

SDGsのゴール達成に必要なトランスフォーマティブ・チェンジ

SDGs(持続可能な開発目標)で生物多様性と直接関係があるのは「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさを守ろう」ですが、生物多様性は人の健康とも密接な関係があります。SDGsの目標に対して生物多様性の議論がどのように進んでいるかと言うと、うまくいっている例は残念ながらほとんどないと言います。これまでの自然を守る、自然を活用するということに重点が置かれていた生物多様性の議論から、もっと広く社会や経済や、あるいはさまざまな環境問題につながっていくことを見据え、論点を変えていくことが必要であり、これが愛知目標に続く新しい目標のひとつの視点になりつつあるそうです。
このような議論は、世界でも盛んに行われていますが、そこで共通して使われている言葉があるそうです。トランスフォーマティブ・チェンジ(transformative change)と言い、翻訳すると「社会変革」です。
つまり、今の社会を単純に改善していくだけでは、高い目標に到達することはできず、到達させるためには、社会を大きく変えるような、そういう試みが必要であるということです。

地球規模の持続可能性に向けた「社会変革」は、具体的にどうやって展開していくかが重要であり、IPBESの報告書の中では、さまざまなステークホルダーが一体となってこの問題に取り組んでいく、そのための新しい共通の場が必要とあります。そのような人たちが一緒になって今の問題を解決するために、現在の状況に対して入り込み、変革を進めていくことが重要だと言います。
SDGs、気候変動、生物多様性、防災について(災害リスクの軽減)、それらをバラバラに考えていくのではなく、みんな合わせて考えていく──多様な取り組みを相乗的に進めていくことが重要だと言い、その中には、新型コロナウィルス後の人の健康と生物多様性のあり方の再考が含まれるのではないかと述べました。

ポスト2020年 2020年以降の目標

UNU-IASが行った取り組みとして、今後とも発展させていかなければいけないものとして、「生物多様性の持続的な利用」を挙げました。「SATOYAMAイニシアティブ」は、この持続的な利用に資する非常に有効な取り組みであると、生物多様性条約でも認識、評価されているそうです。
保護区以外の空間で人と自然がお互い手を携えるお互いに良い状態を作る、時には自然からさまざまな問題も投げかけられますが、それを人はうまく受け止められるような仕組みを作っていく──こういうものとして「SATOYAMAイニシアティブ」がさらに発展できればいいと期待を述べました。

石川、金沢の取り組みについて、世界農業遺産の取り組みと「SATOYAMAイニシアティブ」の取り組みは、同じことを違う側面で語っているので、これらを統合していくことも重要と思っているそうです。
最後に、「石川県で生物の豊かさのみならず、地域の文化的多様性も活用し、そしてSDGsに取り組んでいくというのが、これから期待される石川、金沢での取り組みではないだろうかと思います」と述べ、締め括りました。

 

事例紹介
能登の里山里海と生物多様性

続いて、UNU-IAS OUIK 研究員の小山明子から、能登島の取り組み事例を紹介しました。小山は5年ほど前に能登に活動の拠点を移し、2016年からは国連大学の能登の世界農業遺産関連業務に当たっています。
まず、能登の里山や里海の恵みは古くから人々に活用され、人の手が加わることによって多様な環境が生み出され、生物多様性が高くなっているということを解説。こういった人と自然の豊かなつながりがあることが認められて、能登半島は世界農業遺産に認定されたと述べました。

能登島での生物多様性に関係する具体的な取り組み事例として、長崎地区での「能登島自然の里ながさき」の活動を紹介。2009年に石川県が選定した先駆的里山保全地区の一つに長崎地区が選ばれて、これをきっかけに、「生物多様性の保護と生業を創出し、自然と人が共生する地域づくりを目指す」ことを目標とした「能登島自然の里ながさき」の活動が始まったそうです。

この地域の絶滅危惧種の植物調査を頻繁に行い、島内には石川県の絶滅危惧種120~130種が存在することがわかり、能登島固有植物2種も見つかりました。
調査だけでなく、ビオトープづくりなどによる保護活動も行われていて、植物や両生類、鳥類などが生活できる環境を守っています。

里山里海の資源の持続的な活用

保全と生業づくりを一体化させた取り組みを行っており、その一つが、この地区で昭和に途絶えてしまっていた塩作りを復活させ、里山の木材を燃料に、里海の海水を使った塩の製造と販売です。
もう一つが、繁茂しすぎると地面を覆ってしまい、他の植物を育たなくさせるウラジロの採取で、これを年末のしめ飾り用として、年間約3万枚を出荷しているそうです。

これからの10年については、これまで行われてきた生物多様性調査・保護・モニタリングの継続であり、一番大切なのはフィールドの生き物が育っていける環境維持だと言います。イノシシなど新たな脅威もあり、その対策を練っていく必要もあると述べました。
さらに能登島の若手移住者などが中心になって進めている「能登島まあそいブランド」との連携や、能登里山里海マイスターの修了生などの既存ネットワークとの連携も深めながら、新たな価値を生み出し、活動の持続性を高めることの重要性について言及しました。

「世界的には生物多様性の損失、気候変動、食の安全などさまざまな課題があります。でも、どんな課題もこういった長崎のような地域レベルの一つ一つの取組なしには解決できません。そういった取り組みをいろんな方たちと協力しながら支援していくことが、ますます重要になってくると思います。UNU-IAS OUIKが地域に根差した国連機関であることを生かして、地域のネットワーク化、そして世界で同じような課題を抱えている地域が他にもあるので、そういったところと情報共有の場などを作っていくことが非常に重要になってくると思います」(小山研究員)

 

ビジネスセクターの
生物多様性の10年と、これから

続いて、日経BP 日経ESGシニアエディターで、日経ESG 経営フォーラムプロデューサーの藤田香氏から、ビジネスセクター(ビジネス部門)からこの10年を振り返り、この先の展望をお話しいただきました。
ビジネスセクターでも2010年をきっかけに、本業での生物多様性への参画が盛んに進むようになってきたという藤田氏。経団連の生物多様性アンケートで2009年と2019年を比較すると、経営方針に「生物多様性の保全」や「持続可能な利用」という言葉をどれくらい織り込んでいるかという質問では、「生物多様性の保全」が39% → 75%、「持続可能な利用」が32% → 62%と、生物多様性への取り組みを行う企業が大きく増えていることを紹介。
直接、生物多様性という言葉は出てこなくても、言葉を変えて生物多様性という概念が浸透してきた印象があると述べ、それはこの10年間に、いろいろな社会的要請があったからだと言及しました。

2012年のリオ+20で「自然資本宣言」を金融機関で出したりなど、先進的な大企業はこのようなことに取り組んでいかないといけないということが認識されるようになり、SDGsが登場したのと同じ、2015年くらいからは「持続可能な調達」が重要視されるようなったそうです。2016年、東京五輪の持続可能な調達コードが出始め、企業がいろいろ取り組みを本格的に始めています。
さらに、この10年の大きな流れの柱として、ESG投資家の動きがあり、2016年頃からは森林や水産資源などの評価を始めているそうです。2019年のG7では生物多様性憲章も採択されました。
生物多様性だったり、自然資本だったり、SDGsだったり、持続可能な調達だったりと、言葉を変えながらも、この概念は着実に広がってきたと思っていると述べました。
また、東京五輪の「持続可能な調達」基準では、生物多様性と人権に配慮した調達を挙げています。そして、生物多様性と切り離せないのが、原材料を調達してくる地元の人々、あるいはサプライチェーンの途中段階で生産している人々の人権配慮であることを強調しました。
「持続可能な調達方針」や「目標」を策定し、「人権デューデリジェンス」を実施する企業も、ここ1〜2年で少しずつ増えてきているそうです。SDGsは生物多様性・自然資本経営に関わる部分が大きいと付け加えます。

さらにESG投資の伸びがあり、この3年くらいの特徴として、投資家の格付けが生物多様性分野に広がってきたと言います。投資家による協働エンゲージメントでは、たとえばパーム油のことを投資家から企業は聞かれるようになり、「ちゃんと対応してますか?」と投資家から問われることで、企業にとってはその分野をより頑張らないといけないと背中を押されることになるそうです。
ESG経営の重要な柱の1つに、持続可能な調達や生物多様性を入れている「花王」では、生物多様性の具体的な活動例の中に、「生物多様性の負荷を下げるための技術開発(イノベーション)でパーム油代替するような原材料を開発する」というものもあって、企業の本気度が伝わってきました。

都市と地方をつなぐのは、生物多様性・自然資本

サプライチェーンからの要請は、下流(販売する側など)から上流(原材料のある地方)に行くだけでなく、逆に上流側から、「里山・里海という豊かな自然資本がある、そしてスキルや知恵を持った豊かな人的資本がある」というふうに、ぜひ使って欲しいし、「こういうアイデアはどうですか?」ということを仕掛けて行くこともできます。「それをつなぐのがまさに、自然とか生物多様性だと思っています」と述べました。
SDGsでの変革は、都市と地方がオープン・イノベーションでいろいろな新しいアイデアや仕組みを出して、変革を生み出せるいいチャンスなのではないかと言います。

さて、里山里海の資源を生かし、地域課題解決に取り組む時、SDGsという世界共通言語を使うと、刺さりやすいそうです。その例として、環境保全農業を実施している「金澤美人れんこん」を挙げて紹介がありました。
従来ならば「生物多様性に配慮したれんこんです」だけだったものが、作り方で生産効率をあげたり、IoTを活用して、働きかた改革も実現している特徴があることから、SDGsならば、2番とか8番とか14番とか15番にも貢献していると説明できます。生物多様性+SDGsにより、世界の誰にでもこの取り組みを発信しやすくなるというわけです。
「そういう意味でうまい具合に、地域の取り組みを生物多様性とSDGsという言葉を使ってPRを行い、仲間を見つけていくというのも、これからより重要になっていくのかなと思っています」と、話を結びました。

パネルセッション
「この10年を振り返り、今後の10年について語る」

道家哲平氏/国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)事務局長、鳥居敏男氏/環境省 自然環境局長、イヴォーン・ユー/UNU-IAS OUIK研究員に、先に発表を終えた藤田香氏を加え、渡辺綱男/UNU-IAS OUIK 所長をモデレーターに、パネルセッションを行いました。

まずは、藤田氏以外の3人にそれぞれの視点から、今までの10年を振り返って評価してもらい、そして今後の方向について述べていただきました。

●市民団体、市民社会の視点から 道家哲平氏

愛知ターゲット達成に向けて2011年に発足した「にじゅうまるプロジェクト」という取り組みを紹介。愛知ターゲットの生物多様性のことを学び、自分たちがどんな取り組みで貢献できるかを宣言し、みんなで行動するもの。全国729の団体が1054のアクション宣言を行なっているそうです。
10年間を振り返るキーワードを改めて考えると、「良い取り組みは生まれたが不十分」、「世界と地域の連動と、切り離し」の2つがあると言います。後者については、世界の良い影響を受けましたが、悪い影響も受けたので、良いものを受け入れ、悪いものを切り離す力が必要だと解説。
次の10年の方向性としては、自然の分野からSDGs達成を行う中で、「知る」「守る」「回復する」「投資する」「人と自然をつなぎなおす」の5つのアクションの入り口をつくり、世界中で、あらゆる関係者が取り組むことで、社会変革(トランスフォーマティブ・チェンジ)を起こしていく、今そのようなことを話し合っているとのことです。

●国の政策、立案という立場から 鳥居敏男氏

「2010年から10年、自然の猛威を思い知らされたり、昨今の新型コロナウィルスの影響もあり、人と自然の関わり方をもう一回考えないといけない事態が起こっているということに、何か因果を感じます」と述べ、SATOYAMAイニシアティブなどの流れをふり返りました。
また、今年の秋に開催される予定の生物多様性条約第15回締約国会議(CBD COP15、中国雲南省昆明にて開催。ただし延期される可能性が大)の「ポスト2020生物多様性枠組にむけての作業部会」で、日本のポジションから提案した事柄を紹介しました。
具体的に「日本の経験・知見からの貢献」として、SATOYAMAイニシアティブ、気候変動対策との連携、グローバル経済(持続可能なサプライチェーン構築)、非意図的に侵入する外来種への対処についてを挙げました。それぞれに関わりがある事柄であり、その取り組みにより、SDGsの達成に貢献していく、あるいは環境だけでなく、社会・経済の課題に統合的に対処して言い、トランスフォーマティブ・チェンジを目指していくことが重要と考えていると述べました。

●国際機関という立場から イヴォーン・ユー

「私のように生物多様性を研究する生物学者でない人が増えていることや、COP10以降に生物多様性という言葉を初めて聞き、関心を持つようになった人もたくさんいるのではないかと思っていて、そういう意味でこの10年間はすごく大きな進歩でした」と最初に述べ、現在とこれからのことを中心に話しました。
2020年は生物多様性のスーパーイヤーと呼ばれ、新しい機会と解決法をみんなで生み出して、未来に向けていくという、大きな未来志向を持つ年と紹介。COP15のテーマは「生態文明」。人と環境の関わりに着目してほしい、ということで文化的な多様性も注目するべきではないかというメッセージが込められているとのこと。
私たちの持続可能な社会の土台、SDGsの土台となるのが自然資本。生物多様性は自然資本に関するSDGsの4つのゴールをつなぐ重要なものであり、それぞれの健全性を示す指標になると言います。
IPBESの生物多様性及び自然に関する多様な価値を示しながら、今までは生物多様性、あるいは自然の価値を考えた場合、どうしても環境保全、あるいは経済活動にどうつなぐ、どう活かす、というような経済か環境かというふうに考えていましたが、これからの10年は、もっと多様な価値をまず皆さんに認識していただきたいと述べました。
あらゆる分野、産業、社会レベルにおいても、生物多様性の多面的な価値がみんなに理解されやすい「共通語」、あるいは「共通価値」を見つけ出すことが大事ではないか、そういう活動によって、生物多様性喪失を食い止めることができればと考えているそうです。
「今年の生物多様性の日のテーマの通り、解決の鍵は自然の中にありますが、それらの鍵を探し出せるかは私たち人間だけです。そして皆さん一人ひとりが解決者になれるかもしれません。皆さんにもそういうふうに考えていただき、一緒に頑張りたいと思います」と述べました。

活動を前に進めていくためのポイントとは?

「現場を見ると、かけがえのない自然が開発によって失われているということをまだまだ見受けます。現場で活動している人たちの視点に立って、生物多様性やSDGsをどう結びつけて、活動を前に進めて行けばいいのか、その点について4人の方に大切なポイントやヒントをお話しいただきたいと思います」(渡辺所長)

「地域には豊かな生物多様性とその使い方を知っている人材と、場合によっては廃校になった学校など、都会にはないリソースがいっぱいあります。そのリソースを使って、生物多様性SDGsビジネスみたいなもののアイデアをどんどん出していくのがいいのではないかと思っています。時には奇妙キテレツなアイデアでも、『私こんなこと考えているんだけど、他に誰か一緒にやってくれませんか?』と、まさにオープンイノベーションでいろいろな人とパートナーシップで進めることがポイント。新しい考え方とか、それこそトランスフォーマティブ・チェンジができるのではないかと思っています」(藤田氏)

「藤田さんの意見に賛成で、そういう連携・協力を進めていく時に大事かなと考えているのが、いろんな分野の人たちと取り組みをしている時のポイントは、生物多様性の分野の側からは、『これはダメなんだよ』とか、『これは注意してほしい』とか、やって欲しくないことを明らかにしておくことです。ネガティブな部分も事前に出すことによって、それを避けつつ、どうやって協力ってが進められるだろうかということが考えられると思います」(道家さん)

「今回のコロナ感染症も、生物多様性への人の影響、あるいは気候変動が進むことで感染症のリスクも高まっているわけですから、それに対処していかなければいけません。その際の一つのキーワードが、自立分散の地域づくり。地域の特性に応じて、あるいはその地域は何を求めているのかをしっかり分析した上で、そこにある、自然や人的資源は何かを把握します。そして生物多様性の観点からだけで解決策を探るのではなく、社会経済の観点から、健康とか教育とか、いろいろな視点も入れて、一石二鳥、三鳥の解決策を考えていくことがポイントです。それはSDGsの達成にもつながっていくことだと思います」(鳥居氏)

「まずは地域の皆さんがもっている自然と生物多様性の価値を認識することです。能登には世界農業遺産に認定された、世界が認めている農業システムがあるにもかかわらず、いまいちよく理解されてません。もっと自分の地域で持っていることを積極的に知ることがとても大事かなと思います」(イヴォーン研究員)

厳しい状況下で活動を進めていく皆さんへ

「国連生物多様性の10年ということで10年間、石川・金沢もいろいろなことを頑張ってきたし、全国各地でも活動が進められています。一方で、大きな自然災害であったり、新型コロナウィルスだったり、いろいろな厳しい状況も続いています。その中で私たちは、自然とどう付き合って、どう共生していけばいいのか、どんな気持ちでどんな姿勢で、活動を前に進めていけばいいのかということを、このシンポジウムの参加者の皆さんもそれぞれ悩みながら考えていると思います。最後に、そういう参加者の皆さんへ、パネリストの方々から、一言ずつメッセージをいただければと思います」(渡辺所長)

「一人一人が鍵を探し出す、解決者となれるのだということをぜひ思ってほしいです。大袈裟なことではなく、皆さんの身近な生活の中の行動、例えば食べ物を選ぶ際にも生物多様性のことを意識してもらうことが大事。皆さんなりの発想を生かして解決者になってください」(イヴォーン研究員)

「3.11の時もそうでしたが、今回のコロナは、都会は水も食料もエネルギーも、地方に依存していて何も自給できていないことを改めて認識する出来事でした。一方で、地方で残っているものを都会へ届ける、売れ残ったものを譲り合うといったようなサイトができたり、新しい発想が出てくるいいきっかけにもなっています。地方で子育てをしながら仕事をするという、今までのライフスタイルがガラリと変わるような時代がこれからくるのかなと思っています。新しい発想、まさにSDGs的な、課題についてみんなで知恵を出して解決していこうとするチャンスだと思いますので、都市の人も地方の人も、このチャンスをいろいろ考え、確認してもらいたいというのがひとつと、日本の自然資本をちゃんともっと使っていくこと、自給率を上げていくことをしっかりとやっていくいい機会にしてほしいと思っています」(藤田氏)

「生物多様性条約のソリューション(解決策)とはパズルみたいなもの。みんなが持ち寄ったアイデア、取り組み、イノベーション、そういったものを組み合わせていくことによって、解決策が生まれていくような形になっています。そういうものを考えていこうというのが今回の生物多様性の日のテーマであり、ポストコロナを考えた上でも同じことが言えます。誰も100点の答えは持っていませんが、それぞれがものやアイデアを出しあって、みんなで100点を作り上げていく、そういった問題解決に向けた臨み方というのがこれから本当に大事になってくると思っています」(道家さん)

「今回のコロナで我々の暮らしも変わってくる兆しが感じられます。たとえばテレワークみたいに、都会で仕事をしなくてもいいというのが増えてくると思います。自然豊かな里地里山で暮らして、そこの資源をうまく地産地消で活用しながら、持続可能な社会を作っていくという一つのきっかけにしていくということで、ぜひ、トランスフォーマティブ・チェンジを進めていければというふうに思っています。みんなで知恵を出し合いましょう」(鳥居さん)

「武内先生が最初にお話しされたトランスフォーマティブ・チェンジなしには前には進めない、それを実現していくためにも、いろんな分野の連携であったり、それを支えていく、今まで以上に幅が広くて、今まで以上に柔軟なパートナーシップを作っていくことが大事だということを、今日のシンポジウムで皆さんから伝えていただけたと思います。UNU-IAS OUIKもこうしたテーマについて、国際的な議論と現場の一つひとつの取り組みをつないでいく橋渡し役となり、これからも皆さんと一緒に活動を進めていきたいと思います」と、渡辺所長が述べて、パネルセッションは終了しました。

最後に、石川県立自然史資料館館長の中村浩二氏より、「今日聞いた話を基に、どれだけ自分たちができているか、モニタリングして評価していくことが大事」と、閉会のお言葉をいただき、約280名というたくさんの方にご参加いただきました今回のシンポジウムは幕を閉じました。

 

★事務局からのお知らせ

・このシンポジウムは後援の国連生物多様性の10年日本委員会せいかリレーイベントとしても開催されました。国連生物多様性の10年日本委員会では生物多様性のためにできる5つのアクション(たべよう、ふれよう、つたえよう、まもろう、えらぼう)から自分のできることを宣言するMY行動宣言を推進しています。是非、皆さんも登録してみてください。

・5/22は国際生物多様性の日、そして2020年は愛知目標と国連生物多様性の10年の最終年でもあります。これらを記念して、生物多様性条約事務局エリザベス・マルマ・ムレマ暫定事務局長から日本の皆さんに向けてメッセージが届きました。(日本語訳は仮訳です)

 

IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ 交流会#5(2021年9月16日)の開催

金沢ミライシナリオをパートナーシップで実践するためのプラットフォームであるIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ。2021年9月10日時点で157の企業、団体、個人が参加しています。パートナーズ交流会では、毎回、参加者が「パートナーズのみなさんと協働で実行したいプロジェクト」をピッチプレゼンし、それを起点に参加者同士で金沢ミライシナリオの実現に向けたディスカッションを行います。昨年度は合計2回の開催に留まりましたが、本年度は毎月開催することで、金沢ミライシナリオの実現と会員間の協働を進めていく予定です。

先日9月16日に2021年度第3回目、合計第5回目となるパートナーズ交流会がオンラインで開催されました。今回も各種団体、企業また個人の方と多くの方々にお集まりいただき、活発な意見交換が行われました。今回は、食糧不足と健康問題をテーマに活動するNPO法人TABLE FOR TWO、オーガニックとフェアトレードのお店を経営するほか、SDGs達成に向けた行動啓発のための映画上映を行う株式会社のっぽくん、「こころ豊かな暮らしを実現する」をテーマに人々の清潔、美、健康を支えてきた花王グループから花王グループカスタマーマーケティング株式会社の3団体がピッチプレゼンを行いました。

TABLE FOR TWOさんは、先進国の過度なカロリー消費とそれに起因する肥満や生活習慣病、反対に開発途上国で起こっている食糧不足と飢餓の両方を解決しようと取り組む団体です。企業の社員食堂や店舗で提供されるTABLE FOR TWOさん特製のヘルシーメニューが購入されることで、開発途上国に給食1食分が寄付される仕組みを作っています。これまで累計7,390万食が支援されたほか、709団体と提携してきた実績があり、2019年ジャパンSDGsアワードも受賞しています。金沢市でも株式会社白山さん、石川中央魚市グループの(株)マルストックさん、金沢大学などと提携し、自動販売機での飲料販売や地場食品の販売などを通した寄付の仕組みを導入しています。日本側で販売するメニューについては企業側の意向も踏まえ柔軟に対応しているそうです。

続いて、のっぽくんさんからは、のっぽくんが協力している「未来につなぐ映画祭」の紹介がありました。「未来につなぐ映画祭」は金沢市内の3会場(NOPPOKUN金沢港クルーズターミナルシネモンド)にて、SDGsに深く関わる合計5作品を9月4日から10月1日までの4週間にわたり上映します。どの映画も世の中や人生に関わる問題など、身近だけど知らなかった考えさせられるテーマを扱っていて、SDGs達成に向けて一歩踏み出すエネルギーを与えてくれるものです。加えて、文章では抽象的で難しいSDGsについて映像を通して噛み砕いて理解できるほか、各映画がSDGsのどの目標とリンクしているか表示されているので、まだまだSDGsについて分からない方でも自分ごととして捉えやすい内容になっています。のっぽくんさんは、5作品のほかにSDGsをテーマにした複数の映画を上映する権利を保持しています。今後は映画を通してSDGs達成に貢献するための交流の場を作っていくこと、企業向けのSDGsの勉強会などを行うことを検討しています。

最後に、花王グループカスタマーマーケティング株式会社さんから同社のSDGsへの取り組み内容をご紹介いただきました。花王グループはESG戦略として「My Kirei Lifestyle 世界中のお客さまのこころ豊かな暮らしを実現する」を掲げ、花王グループカスタマーマーケティング株式会社内にノルマを持たない社会コミュニケーション部門を設置。多様なコミュニティーとの積極的なコミュニケーションを行い、環境、健康、衛生、多様性の観点から社会貢献活動と生活者のこころ豊かな暮らしの実現を支援しています。具体的には、幼稚園や保育園向けの手洗い講座、小学生向けのプラスチックごみの環境講座、就活生や再就職者向けのメイク・スキンケア講座などを開催しています。今後、順々に取り組みの種類を増やすとともに講座の実施数も増やしていきたいそうです。前回のパートナーズ交流会で意見交換を行った石川シングルマザーの会さんとは、協力して公民館でメイクアップ講座を開催することが決まっているそうです。

ピッチプレゼンの後は、お馴染みのグループディスカッションが行われ、各発表者への質疑応答やどうしたらプロジェクト推進を後押しできるか、関連する課題を解決出来るか、話し合いが行われました。グループディスカッションの後、各グループでの話し合いの内容が参加者みんなに共有されました。共有された内容に対して更に、別の観点から新しい解決策や協働のアイディアが共有され、新しい協働プロジェクトのたねやネットワークも生まれました。ツエーゲン金沢 さんの子ども向けサッカー教室イベントと公式戦の合間に、施設を利用してのっぽくんさんと協力してSDGsの映画を放映するなどのアイディアも登場しました。

今回のパートナーズ交流会では、参加者が考えついたアイディアを自由に共有し合える交流会の場の中で更なる広がりが生まれ、プロジェクト推進のアイディアとつながりのきっかけが多数生まれる機会となりました。

今回のパートナーズ交流会では、ディスカッションに先立ち、IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズのコーディネーターを担当する橋本さんから交流会を通した協働の実現事例も共有されました。2021年度第1回目でピッチプレゼンされたkanazaWAZA研究所さんはパートナーズ交流会でつながりを作り、東京海上日動金沢支店さん、金沢機工さん、SYNCA DESIGN UNITさんと協働でサスティナアートプロジェクト放置竹林編を実施中。また、ピッチプレゼンの中でも紹介があったよう、石川シングルマザーの会さんと花王グループカスタマーズマーケティングさんがメイクアップ講座の開催を企画するなど、パートナーズ交流会を通した協働プロジェクトが着実に動き始めています。今後、橋本さんはコーディネーターとしてパートナーズ会員間の協働プロジェクトに伴走して調整を担い、協働の輪をどんどんと広げていく予定です。また、交流会を通して生まれた金沢ミライシナリオを実現する協働プロジェクトを進めている方がいらっしゃいましたら、ぜひ事務局までお知らせください。

IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズでは会員を随時募集しているほか、交流会でピッチプレゼンしたい企業、団体、個人の方も募集しています。ぜひ皆様のミライを作るアイデアを聞かせてください。

能登GIAHS生物多様性ワーキンググループが始動しました

今年度、能登地域の自治体が組織する「能登地域GIAHS推進協議会」の中に「能登GIAHS生物多様性ワーキンググループ」が設立されました。世界農業遺産(GIAHS)に認定されている能登地域の生物多様性を今後も守り活用していくために、専門家や自治体職員などが意見交換をし、取組を進めていく場となることを目指して国連大学もサポートしています。

5月に1回目の会合、そして9月13日に2回目の会合がオンラインで開催されました。今年度は、能登地域で収集されている生き物のデータを蓄積したり、地域の方に生き物に関心を持ってもらったりするためにアプリを活用していくことなどを検討しています。夏の間には、地域の小学生や親子向けの生き物観察会の中でアプリの活用を試行するモデル調査を数件、地域の学校や活動団体に協力頂きながら実施し、9月の会合ではその結果も報告されました。10月には自治体のGIAHS担当職員向けのアプリの勉強会も開催される予定です。

【開催報告】SDGsカフェ#11「持続とは変化!? ~with コロナ時代の働き方とリモートワーク~」

新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、できるだけ出社を伴わないリモートワーク(在宅勤務、テレワーク)による働き方が、現在求められています。

リモートワーク導入に際してのさまざまなネックや、「導入してみたけど、いまいち生かし切れていない気がする」など、日々の思いを皆さんで共有したいと考えて、コロナ緊急企画として、SDGsカフェ#11をウェビナー(*)で開催しました。

*ウェビナーとは、ウェブとセミナーを合わせた言葉で、動画を使ってインターネット上で行うセミナーのこと。Webセミナーとかオンラインセミナーとも呼ばれます。

SDGsとリモートワーク、新型コロナウィルスとの関係

今回、イマジンしてくださるのは、コロナを機に4月から全社リモートワークを導入しているという、株式会社計画情報研究所の代表取締役・安江雪菜さん。そしてアイデアを提供してくださるのは、働き方改革の最前線企業として知られるサイボウズ株式会社の社長室フェロー・野水克也さん。国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット事務局長の永井三岐子を交え、3人によるSDGsカフェ初のウェビナーが始まりました。

まずは永井から恒例のSDGsの概要と、IMAGINE KANAZAWA 2030の主旨説明を。

今回はリモートワークとコロナの関係をSDGsの枠組みで考えてみる、次のような解説も加わりました。

SDGsの17のゴールのうち、コロナと直接関係あるゴールは「働きがいも経済成長も」(8番)と、「すべての人に健康と福祉を」(3番)。

「私たちがリモートワークをすれば、移動が減ります。そして、使い捨てマスクの使用が減ればゴミの削減にもつながるなど、環境問題と切ってもきれない関係があります」と述べ、「気候変動に具体的な対策を」(13番)、「海の豊かさを守ろう」(14番)、「陸の豊かさを守ろう」(15番)との関係に言及しました。さらに、リモートワークをうまく使えるようになれば「産業と技術革新の基盤をつくろう」(9番)にもなると付け加えました。

一方で、ウィルスに感染した人への差別は「人や国の不平等を無くそう」(10番)、家庭内で増えているDVは「ジェンダー平等を実現しよう」(5番)のゴールからマイナスとなっている実態にも触れました。

リモートワークの実態を探る緊急アンケートを実施

計画情報研究所は、まちづくりのコンサルタントなどを行う会社で社員は25名。本社は金沢市で、分室や支店が七尾や高岡など4カ所にあります。

*株式会社計画情報研究所 https://keikaku.or.jp

今回、このカフェのために、安江さんは「リモートワーク緊急アンケート」を金沢イクボス企業同盟と連携して、ウェブ上で実施しました。

「緊急アンケートは、皆さんのリモートワークがどういう状況なのかを確認したくて行いました」と述べ、安江さんよりアンケートの結果を発表していただきました。

アンケートの回答は101件、年代は40〜50代が多く、業種はサービス業が一番で4割ほど。職種はさまざまで、規模は小さいところが多い中、1000人以上という企業も15%ほど。

リモートワークの実施状況は「全社員が行なっている」と、「半数以上の社員が行っている」が約半数を占め、「一部の社員が行っている」も含めると4分の3くらいの実施状況です。

「組織の課題について」の質問では、高かったのが、「セキュリティーに不安がある」、「リモートワークが可能な業務ではない」(個人情報を扱う、工場の製造現場であるなど)で、それに続いて「社内体制が整っていない」、「ネットワーク環境が十分でない」など。
あわせて寄せられた具体的な意見には、「在社しなければ『出勤ではない』と思い込む上層部」、「正式にリモートワークが決まると拒否反応を起こす上層部」など、管理職やマネジメントの問題を挙げるものや、「社員の勤務状況の実態を把握するのが難しい」、「お客様側にリモートワークの体制がない」と言ったものもありました。

あなた自身の課題は?」については、「自己管理が難しい」と「リモートワークが可能な業務じゃない」というのが多い回答でした。具体的には、「機材の強化、Wi-Fiの速度」、「顧客との連絡が個人の携帯電話」、「できない仕事(郵便物、判子が必要な書類など)がある」、「より高度なコミュニケーション(考えや意見を言語化できる能力が問われる)」と言ったものが挙がってきました。

リモートワークのメリットは?」の質問には、「通勤時間の削減」、「仕事の進め方の見直しができた」というのが多く、一方、「デメリットは?」には、「できる仕事が限られる」、「社内コミュニケーションが難しい」、「オンオフの切り替えが難しい」などなど。
子供も家にいるため、育児や家事もしながらということで、「いまは特にオンオフの切り替えが難しくなっている状況なのではないか」と安江さんは補足します。
メリットの具体的なものは、「ワークライフバランス」、「不要不急な社内電話、会議が減った」や、「自分の頭で考えるクセがつく」、「どのような状況になっても働き続けられる安心感」、「仕事の定義が、時間ではなく、成果、価値の提供へにシフト」、「遠方でも面接が受けられる」など、仕事へのポジティブな変化やチャンスと捉えている意見も多く見られます。
デメリットには、「孤独感と運動不足」、「セキュリティで事故が起きた時の責任問題」、「いままでのやり方が通用しない」、「『アレ頼むね!』みたいな数秒で済む依頼がしにくい」など、切実な問題も多く挙がっていました。

また、たくさん寄せられた自由意見は、次のように属性別に分類して紹介されました。

高いハードル

  • 相談業務だが、会社はビデオ相談というのを考えられない様子
  • 在宅勤務の規定が厳しすぎて、それをクリアして届け出られる者はいない

「新しい関係性の構築」

  • 高齢者などITリテラシーのない対象との仕事に使えない
  • 全社のミーティングをzoomミーティングに変えたら、いままでよりコミュニケーションが取れるようになった。チャンネルが変わるとコミュニケーションの方法も変わる
  • 社屋に捉われない組織の紐帯の進化を発揮し、会社役員に示していきたい
  • 社長は、リモートワーク中の社員がサボっているんじゃないかなんて思わず、信じて欲しい

働き方のシフト

  • セルフマネジメントが重要
  • リモートワークができない業務について、新しい働き方の模索も考えないといけない時期になっているのではないか
  • 会社の評価のあり方を変えていく必要を感じる
  • 会社の意思決定、人材育成、営業活動、仕事の進め方、組織のありようが質的に変わる。アフターコロナは、以前と同じ働き方、関係性には戻らない、戻れないと思う

以上がアンケート結果の報告でした。
リモートワークは企業文化を変えるチャンスとしても期待できそうです。

 

変わることで持続可能になる、それを感じる日々

金沢市出身の野水さんが所属するサイボウズ株式会社は、かねてよりリモートワークを先進的に進めている企業で、1000人近くの社員は3月初めからほとんど誰も出社していないそうです。

*サイボウズ株式会社 https://cybozu.co.jp

今回のアンケートの結果について野水さんからは、「体制とか内容の決め方とか、リモートワークをやったことがなかったところの典型的な進め方。規定とか許可とか、やりだすとそういうものとは関係なく進んでいきます。そこに捉われていても仕事が回らなくなりますから、まずはやりながら規則も決めていけばいいと思います」とアドバイスがありました。

続いて、サイボウズではどんなリモートワークをしているかについて発表していただきました。

サイボウズでは、リモートワークはBCP(*)の一環としての観点から挑戦し、取り組んできたそうです。

*BCPとは、災害などの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画。事業継続計画とも

「SDGs的に言いますと、持続可能とは伝統を守ることとは違います。変わっていくもの、変われるものが生き残れるのです。サイボウズにはリモートワークに挑戦してきた歴史があり、急にこういう体制になれたワケではありません。最初にこういう体制を取ったのが2010年でした。その当時のサイボウズはあまりにも社員の離職率が高く、社長は給与以外で社員の言うことを全部聞いてあげようということになり、『こうやって働きたい』と言う社員の要望を入れていった結果、在宅勤務制度がスタートしました」

リモートワークの試験運用を開始した半年後に東日本大震災が起こり、それまでは一部の者だけだった在宅勤務が自動的に全員となり、そのあといろいろなルール変更を繰り返し、いまに至っているそうです。

「最近、役所が変わってきたと感じています。いままでは『来月来られますか?』と言っていたのが、『今日、明日でzoom会議できませんか?』に変わりました」

変わらない時は徹底的に変わらなかったのに、変わる時は徹底的に変わるものだということを実感しているそうです。

「ほとんどリモートワークで、役所のサイトを2週間で作りました。このスピードでできたことはすごいことです」(野水さん)

 

リモートワークで部下がサボると思う上司は、まずは自分でやってみるといい

リモートワークに長い時間をかけて取り組んでいるサイボウズでの経験から、リモートワークのコツを教えていただきました。

「まず、管理のこと。『サボるんじゃないか?』と思う上司がいます。私も実は最初、そう思っていました。でも、一回自分でやってみたら、“いま、自分がサボっているとみんなに思われているんではないか?”という不安の方が勝ることがわかりました。在宅勤務をしている人は、本当は心細くて不安。大手を振ってサボれる人間なんていないということが身をもって体験できたのです。まずは管理職が体験し、その時に感じた気持ちを頭に置けば、進められるはずです」

「サボっているんじゃないか?」と疑うもう一つには、そもそも誰が何をやるかって決まっていない会社が多いことも指摘されました。

「あの人は手を動かしているから働いている、そう言う感覚でマネジメントをしているところが多すぎます。リモートワーク以前に、業務の見える化が必要です」

リモートワークは「基本的には性善説で。性悪説でいくと失敗する」と言う野水さんからは、「雑談もネット上でやるべき」、「一部の人がリモートワークをするのではなく、全員で取り組むことを前提にすべき」というアドバイスもありました。

いまは稼働率を気にしている場合ではない

ウェビナーでは、参加者(視聴者)がチャットやQ&Aを通じてリアルタイムに質問や意見を投げかけることができるのもメリットです。

参加者のお一人から、「経営層から、子どもが在宅しながら働くことに対して『稼働が下がってしまって申し訳ないという考え方は捨てましょう』というメッセージが流れました」という話も。

「心理的な安堵感となる、こういった言葉が一番欲しいと思います」(永井)

「自分から進んでリモートワークを行うのであれば、業務効率を落としてはいけませんが、いまは緊急事態の自粛によりリモートワークをしないといけない状況。ですから業務効率が落ちても仕方ないと割り切ることが必要。経営側も全く同じにはならないことを理解すべきです」(野水さん)

「経験値ということもあるので、その辺をどうやってみんなが学習して、こういう風にやると盛り上がるよね、楽しいよねみたいなことを学んでいく、いまはそんな時期なのかと思います」(安江さん)

リモートワークに切り替えるためのポイント

今回のコロナ対策として、安江さんの会社がとったリモートワーク対応の手順についても説明がありました。

コロナ以前に、BCP対策にもなるため自社ファイルサーバーをクラウドサーバーに移行していたことや、本支店間のミーティングにzoomを使用していたこと、会議のペーパレスや効率化などを踏まえて全社員のPCをノートPCに切り替えていたことなど、リモートワークを行えるインフラが整っていたそうです。そして、月間フレックス制を採用するなど多様な働き方を受容していた下地もあって、リモートワークへスムーズに移行することができたと言います。

このように進めてきた経験も踏まえて、安江さんはリモートワークを進めるためのコツとして、「バックキャスティングの思考」、「とにかくやるということの強い意思」、「基本のインフラを整える」、「自由と責任の風土」、「仕事の成果とは何かを問い直す」の5つの必要性をポイントに挙げました。

ありたい姿にシフトする、いまがそのチャンス

参加者から、「コロナの大変な時も織り込んで進めていくSDGsでは、変えないことと、変えることにはどのようなことがありますか? 金沢市の未来シナリオを再定義する必要はありますか?」という質問があり、それを踏まえて、安江さんからは「withコロナ afterコロナの働き方」についてを紹介していただきました。

「いまはみんなで強制的にやっているので変な興奮状態にあります。でも、長期化と倦怠感で、必ず反動がきます。それでも元には戻れません。ではどうすればいいか? 常識や慣例からありたい姿にシフトすることを真剣に考えたほうがいいと思うし、いまがそのチャンスです。組織の意思決定や、仕事のスタイル、価値観、環境、働く場所の意味まで、働く上でさまざまなものが変わっていきます。その上で、組織の存在意義やそこで行う事業の意義がシビアに問われるようになるのではないでしょうか」

SDGsの未来シナリオの再定義について安江さんは、「いますぐには決めきれないので、私たちはコロナという辛い共同の経験を踏まえて、どうありたいかをオープンにして語り合い、そこで何かの答えが見つけられたら良いなと思っています。持続していくことは、いかに自分が環境に対して変わっていけるかということなんだろうと思っています」と述べました。

「SDGsで問われたことは、『変われるか』ということ。SDGsはいままで騒がれはしたが、あんまり世の中が動いてきませんでした。それが今回のコロナで、やればできるということがこれだけ出てきていて、結局、変われるか変われないかを試された感さえもあります。いまうまく適応できている人とか組織は、結構コロナに対してもうまく扱えてるかなという気がしています。未来シナリオの再定義は別の議論だと思いますが、いままでSDGsをやって努力してきている人たちは、変わることへのアレルギーは少ないと思う気がしていますし、レジリエント(しなやかな強さ)みたいなのはあるのではないでしょうか」(永井)

「あんまりコロナにこだわらない方がいいと思います。こだわると「いつまで」と期限を区切って、元に戻ろうとします。元の通りに商売ができるように、元の通りに仕事ができるようにと給付金に頼って続けていると、おそらく2〜3年後には経済力のない町ができ上がる、そういうリスクがすごくあるんじゃないかと思います」(野水さん)

「製造業とか飲食、対面サービスなど、なかなかリモートワークができないからこのテーマは関係ないと思われるかもしれませんが、オンラインで全部やるからこそ、リモートワークとは違うリアルな場所が特別になります。そういったリアルな場所が、文化も含めて特別なものになって欲しいというのが、リスペクトも込めた私の願い。リモートワークで問題が解決しない、リアルでないといけないことを、いまはみんなで支援していき、大切にしたいと思っています」(安江さん)

「リモートワークに慣れ親しむのにリモート飲み会はいい。そこに上司も誘ってみたら?」という話も飛び出し、盛り上がる中、時間となって今回のウェビナーは終了となりました。

最多で100人近くが参加してくださった今回のSDGsカフェ。質問がしやすい、スライドが見やすい、遠方からも参加しやすい、アポが取れない人気のゲストも呼びやすいといったウェビナーならではの良さを、主催する側も参加する側も共感できた今回の試み。次回以降も、リアルと組み合わせたりしながらウェビナーも取り込んで、SDGsを議論する場を広げていきたいと考えています。

 

今回、ウェビナー中にQ&Aコーナーにていくつかご質問をいただきました。以下、野水さんからの回答付きでご紹介いたします。

Q. そもそもオフラインでも問題あるのですが、、会話コミュニケーションが苦手な人に対しての良い方策はありますか? 

A. まずは、タスクを見える化すること。(評価の基準を作る) あとは雑談ですね。雑談のために毎週時間を取りましょう。 

 

Q. 社員の皆様が全て会社のスマホをお持ちですか? 

A. サイボウズはほしければ支給しますが自分のを使うこともできます 

 

Q. 業務が特定の人に集中したりしませんか? 

A. 集中した人の給料を上げればいいかと 

 

Q. 会社の資料は クラウドに落ちるのですか? 

A. ほぼ100%クラウド上にあります。 

 

金沢イクボス企業同盟の皆さまにご協力いただいた「リモートワーク緊急アンケート」の詳しい結果はこちら

【開催報告】SDGsカフェ#10「『スポーツ×SDGs』から考える金沢の可能性」

今年、2020年といえば東京オリンピックの年。日を追うごとにスポーツへの関心が高まっている中で、スポーツとSDGsの関係を考えてみました。

SDGsとスポーツって関係あるの?

まずは、金沢市役所企画調整課の笠間彩さんから、金沢SDGsの5つの方向性の解説とともに、SDGsカフェ#8でもご登壇いただいた広石拓司さんのメルマガの一文を引用し、オリンピックとSDGsの関係について紹介しました。

近年のオリンピックでは「サステナビリティ」が大きなテーマになっていると言います。
競技や試合で生まれる“最高の一瞬”は、日々の努力はもちろん、食事や生活環境などが大きく影響しています。
「もし、その日々食べるものが自然や誰かを傷つけているとしたら、その“最高の一瞬”を心から喜べるでしょうか?」 
そんな広石さんからの問いかけとともに、スポーツでもSDGsは重視されていることを説明しました。

「2030年の金沢を想像しましょう。いま何が問題になっているのか? 誰がなぜ困っているのか? 想像力のスイッチをオンにするとたくさんの気づきがあります。そこから子供たちに引き継ぐべき、2030年の金沢の姿を描いていきましょう。金沢SDGsは市民全員が参加者です。SDGsの基本理念である、『誰一人取り残さない』を金沢から実践していきましょう。そのために、行政は行政、民間は民間、市民団体は市民団体という垣根を取り払って、今後はそれぞれ皆さんの強みを持ち寄って、共通のゴールに向かって進んでいける、そういうプロセスを踏んでいけるまちにしていきたいです」(笠間さん)

2030年の金沢をイマジンしてくれるのは、ツエーゲン金沢の灰田さん

「ツエーゲン金沢」は、金沢をはじめ石川県全県をホームタウンとするプロサッカーリーグ・Jリーグに加盟するサッカークラブ(J2)です。
そのツエーゲン金沢で、事業企画部次長兼ホームタウン推進室室長を務める灰田さちさんに、ツエーゲンの活動と2030年の姿をイマジンしてもらいました。

もともと金沢市のご出身の灰田さんは、高校生の時からJリーグで仕事がしたいと夢を見て、東京でいったん就職するも、大学院でスポーツマーケティングを勉強。その後、念願かなって「サンフレッチェ広島」で5年間働き、地元に帰ってこういう仕事がしたいと思うようになり、2018年の1月からツエーゲンに移ったそうです。

「私はスポーツ好きだと思われますが、実はそんなにスポーツを観るのは好きじゃないし、スポーツをするのも得意じゃないんです」と笑う灰田さんは、「ツエーゲンとSDGsってほんとに関係あるのって思われている方もいらっしゃるのでは?」と問いかけます。

 

Jリーグには3つの理念があり、その一つに「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」というのがあります。つまり、サッカーだけではなく、サッカーを通じて日本のスポーツ文化を発展させていこうという強い思いが、そこにこめられているのです。

一方、ツエーゲンにもクラブ理念があり、それは「挑戦を、このまちの伝統に。」です。
金沢には伝統という言葉がつくものが多い中、「挑戦する、チャレンジする姿勢を皆さんに示すことで、挑戦というものを石川県の新たな伝統の一つにしていきたい。そういう志を文字化したものがこのクラブ理念」だと言います。

これを実現していくために、「つなぐ」「楽しむ」「夢見る」「育てる」「つくる」の5つの価値で活動していこうとしているそうです。

 

Jリーグのクラブが行っている地域活動は年間2万回!

地域に愛されるクラブとなるために、ホームタウンの人々と交流するさまざまな活動を実施しています。それがホームタウン活動。

幼稚園の訪問サッカー教室「キッズキャラバン」や、ブラインドサッカーチーム「ツエーゲン金沢BFC」のサポート、精神疾患の患者の心身のリハビリを目的とするサッカー教室などをはじめ、昨年1年間でツエーゲン金沢が行ったホームタウン活動の回数は250回。

Jリーグの全56のクラブが、2019年度1年間でホームタウン活動は、なんと約2万回にも及んでいます。

しかし、これだけたくさんのホームタウン活動を行っているのに、地域の方にあまり認知されていない現実を踏まえ、2年前のJリーグ25周年の時に、ホームタウン活動と合わせて、これからは「シャレン」活動をやっていこうという方針を打ち出しました。

「シャレン」=社会連携活動の略で、これからはクラブと企業、行政、住民、学校など、地域の皆さんと手と手をとりあって、「地域の課題に対してそれを解決できる方法を考えましょう。そういった取り組みをやっていきましょう」という方向に流れが変わってきているそうです。今までは活動の数重視だったのが、質重視へと変化しています。

たとえば、「湘南ベルマーレ」では、中学2年生にスポンサー企業の体験授業を行い、「将来はこういう会社で働きたい。湘南って魅力のあるまちなんだな」ってことを感じてもらい、転出する人たちを将来的に減らしていく取り組みを行っているそうです。

2030年のツエーゲン金沢の姿を想像してみよう

灰田さん個人の思いも込めて、ツエーゲン金沢が今後やっていきたい、めざす姿を語っていただきました。

クラブの中でも、「2030年にどのような姿になりたいか?」という話をしているそうで、その一つ、ホームタウンの視点で言えば、「2030年までに、石川県民の誇り、シンボルのような存在になりたい」と考えているそうです。

灰田さんの頭の中には、そのようなスポーツチームの理想像があり、それは「広島カープ」なのだとか。

「サンフレッチェ広島」時代に広島カープの25年ぶりのリーグ優勝の熱狂ぶりを目の当たりにし、一昨年、カープがリーグ3連覇した時には、この年に広島で大雨の災害がありましたが、仮設住宅で暮らしている老夫婦が、ぼろぼろ泣きながら喜びあっている姿をテレビで観て、たかだか地域のスポーツチームの優勝でこんなに盛り上がるのが、まちのシンボル、誇りという存在なんだなと実感したそうです。これがまさしくツエーゲンが目指していきたい姿だと言います。

この姿になるためにも、シャレン活動は重要。こういった活動をしていくことによって、「ツエーゲン応援しようよ!」となってもらえるようになると言います。

「地域のみなさんと一緒に石川県、金沢を活力のあるまちにしていきたい」という灰田さん。「みなさんと共に石川県をより活力を感じられるまちにしていく、そのためにSDGsに合致するような活動だったり、シャレン活動であったり、そういったことをこれから展開していきたいと思っています」と締め括りました。

アイデア提供する高木超さんは、サッカー留学の経験あり

灰田さんのイマジンを受けて、そのヒントとなるアイデアを提供してくださるのが高木超(こすも)さん。 高木さんは慶應義塾大学や国連大学でSDGsの「策定プロセス」や「モニタリング指標」の研究をされている、SDGsの専門家であり、しかも実はブラジルへサッカー留学の経験もあるという経歴をお持ちの方。

おそらく日本でサッカーとSDGsの関係を語らせたら、高木さんを超える人はいないでしょう。

さて、まずはSDGsのことを、わかりやすい例を交えて解説していただきました。
その一つが、日本の内閣とスウェーデンの内閣の集合写真の比較でした。

日本は着ている服がみんな同じで女性が少ない……。

スウェーデンは女性が多く、着ている服はバラバラ……。

「どっちが正しいと言うのではなく、女性が少ないとか若い人が少ないとか、そう言う観点でチェックしていくのにSDGsを使ってもらえれば役に立つと思います。SDGsの視点から日常をいろいろ見ると、新しい発見があるかもしれません」

また、SDGsの重要な理論に、ゴールから翻っていま何をするかを考える「バックキャスティング」というのがあります。これを感覚的に理解するのはなかなか難しいのですが、高木さんはサッカーに例えてわかりやすく説明してくれました。それが以下の通り。

「サッカーが楽しくて続けていって、いつかはプロ選手になれればというのではなく、将来サッカーのプロ選手になりたいという目標を決め、そのためにいま何の練習をしなければいけないかを考えていく、それがバックキャスティングです」

SDGsには17ゴールがありますから、そこから逆算して、いま自分たちは何をやればいいのかを考えていくこと、それがSDGsのひとつの考え方。

SDGsはいずれも高い目標(ゴール)を設定していますが、この目標設定の仕方を「ムーンショット」と呼ぶそうで、アメリカのケネディー大統領の「月に行く」という目標設定のやり方に由来するそうです。

その結果、実際に10年後には月に行くことができました。SDGsも残り10年ですが、掲げられた高い目標も、いま何をしなければいけないかを考えていくことで、達成できると言えるのです。

Jリーグと絡めて、SDGsをどう使う?

SDGsの使い方のひとつに、「整理する」という考え方があります。

例えば「Y.S.C.C.横浜」というJ3のチームは、地域の生活環境が豊かでない地区にチームの栄養士を派遣して、住民と一緒に「栄養バランスのとれた食事を安い金額で作るにはどうしたらいいか」を考え、専門的な知識を使って貢献しています。

この活動はSDGsのゴールの2番「飢餓をゼロに」に貢献しています。でも、これはゴールで見ればすごく広く、なんでも紐づけられると思えてきます。

SDGsには169のターゲットと、その進捗を図る指標というのがあります。ターゲットと指標を見ると「栄養不足をなくそう」という考え方があり、それに貢献していることがわかります。

「SDGsで自分たちの取り組みを整理するときは、ゴールよりもターゲットを見てやってみてください。ターゲットはすごく具体的なので、自分たちの取り組みの意味とかを整理することができます」

「川崎フロンターレ」は、「算数ドリル」を市内の小学生に配っています。問題はフロンターレの年間の勝ち点を計算するとか、算数は嫌いでもサッカー好きなら思わず取り組んでみたくなるようなものです。SDGsのゴールでは4番「質の高い教育をみんなに」で、指標には「算数について、最低限の習熟度に達している子どもや若者の割合」が設定されており、ここにきちんと貢献していると整理できます。

イギリスの「フォレストグリーン・ローヴァーズFC」は世界で一番環境にやさしいクラブということで、国連からも認定されており、スタジアムにソーラーパネルをつけて、スタジアムの電気を全て太陽光発電で賄うという取り組みをしているそうです。このように海外のクラブもいろいろとSDGsに取り組んでいます。

英国では、タバコの吸い殻を回収するゴミ箱を、クイズの投票箱の形式にしたところ、ポイ捨てが減ったという事例もあるそうで、「ポイ捨てをやめましょう、ポイ捨てしたら罰金何万円!とかじゃなく、楽しんでこうやってSDGsに関われる機会を金沢のまちでもたくさん作って、そういう取り組みができるようなまちになればいいなと思います」

SDGsのゴールに「文化がない」という意見もあるそうです。「別に決まりはないので、金沢市民で18個目を作ったって構わない」と高木さんは述べます。

「例えば、『18.豊かなスポーツ文化の醸成』とか作り、金沢の文化を大事にしながら、SDGsを楽しく、うまいこと活用していただければと思います」

金沢らしさを生かせるSDGsのあり方を提案して、高木さんのアイデア提供は終了しました。

グループディスカッションで「スポーツとSDGs」の関係を深めてみる

ツエーゲン金沢のアカデミーのコーチ直伝ストレッチを灰田さんに教えていただき、体を動かす気持ち良さを味わったあとは、スポーツとSDGsを掛け合わせて金沢SDGsを推進していきたいと考えたときに、どんなプロジェクトをやったらいいだろうか? どんなプロジェクトをやったら金沢SDGsの達成につながっていくか? そのプロジェクトをやるにはどんな人とどんな人が協力するといいかなということを、会場の5つのテーブルごとで話し合って、発表していただきました。

それぞれのテーブルでどんな話をしたかということを簡単に共有しましょう。

<テーブル1>

スポーツをめちゃくちゃするっていう方がいない中で、まずは個人でスポーツを楽しもうということや、応援することでスポーツ自体を好きになろうというところまで話した。

<テーブル2>

金沢SDGsの5つの方向性の中の、3番目「子供がゆめを描けるまち」を考え、金沢にはプロスポーツチームがいろいろあるので、子供たちが見て、夢を描いて欲しい。各地域でいろいろな選手を呼んで、子供たちと交流会ができたらいい。

<テーブル3>

健常者ではなく障害を持たれている方がスタジアムに行くための手段や、スタジアムに障害者用トイレが少ないので、それをきっかけに改善されれば、障害者や老人が行きやすくなるのではないか。

<テーブル4>

地域で子供達をスポーツ選手に育てる。また、みんなで参加できるようなイベントで交流も深め、他県や他国の人とも触れ合えるカルチャーになり、それが住みやすいまちづくりにつながれば。

<テーブル5>

スポーツ用品に伝統工芸を取り入れる。また食品ロスの削減につなげて、給食にスポーツ選手とかが出向き、一緒に食べ切る、または栄養バランスを考えながらみんなで楽しく食べるということを体験させる。

 

スポーツって言っただけで、たくさんの切り口が出てきた今回のSDGsカフェ

文化とか教育とか環境問題とか貧困とか、ちょっと難しそうと構えてしまう人も、「スポーツ」が間に入ることで、途端に興味を持ってくれます。スポーツはそれだけ人の心を動かし、また波及効果もすこぶる大きくなります。これをSDGsのゴールへつなげるために使わない手はないなということを、参加した多くの人か感じたのではないでしょうか。

そしてまた、地域に溶け込むためにいろいろ尽力しているツエーゲン金沢の姿を知り、まずは試合を観に行きたいと思った人も多かったでしょう。

「皆さんの想いとか、力とか、できることとかを持ち寄って、2030年の金沢はみんながハピネスを感じられるようなまちになるように、一歩一歩ゴールへ向かって進んで行けたらいいなと思います」と笠間さんが述べて、10回目のSDGsカフェは終了しました。

IMAGINE KANAZAWA 2030 「金沢SDGs推進のための民間資源活用に関する勉強会」開催

社会課題の解決や新しいプロジェクトを進めていくうえでは、個人や組織の技術や努力(「ヒト」)のほか、解決策やサービスを提供するツール(「モノ」)、そして人々や組織の活動を支えるお金(「カネ」)といったいわゆる経営資源を下支えしていくことが重要です。加えて、モノやサービスづくりを支える自然資源、知識や情報、ネットワークや信頼関係といった社会関係資本、そして個人や組織のスキルアップのための教育も欠かせない要素となります。パートナーシップを組み、補いあうことで、コレクティブインパクトが生まれ、より良い社会が実現されていきます。SDGsの達成についても同じです。

今回、IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議は、金沢でのSDGsの推進に向けて、とくに「民間資源」の活用について理解を深めるために、8月19日に「金沢SDGs推進のための民間資源活用に関する勉強会」を開催しました。IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議は、SDGsミーティングやIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズといったプラットフォームを通して、未来の金沢を実現するための新しいプロジェクトや団体や個人間のつながりが生まれるよう取り組んできました。今回の勉強会を通して、民間のノウハウや資金調達と循環の仕組みといった民間資源を活用して、持続可能な金沢の実現を支える仕組みについて理解を深めていきます。

第1回目となる勉強会では、南砺市エコビレッジ推進課の担当者をお招きして、「公益財団法人南砺幸せ未来基金」の設立のいきさつや基金の取り組みについてご説明いただき、その後、出席者全体で質疑応答や議論を行いました。「南砺幸せ未来基金」は南砺市内を活動範囲として地域に寄りそう市民設立の「コミュニティ財団」です。おもに寄付金や休眠預金をもとでに資金調達を行い、7つの地域課題のテーマにそった事業にたいして資金的な援助を行なっています。地域に貢献したい有志市民とその寄付金をもとに設立され、行政の支援で運営が行われてきましたが、2023年度には行政の手を離れ、自立的な運営が行われることを目指しています。現在、寄付金額の増額など資金を集める仕組みを強化するしかけづくり、PRやSNSを通した地名度向上が課題となっています。

今回の勉強会には石川県全域から各金融機関が参加され、石川県における中間支援組織やSDGs推進を支援する資金的支援の事例が共有されたほか、人材育成などの非資金的支援の進め方に関する質疑応答も活発に行われました。資金による支援を行う団体とは別に、ネットワークづくりやスキルアップといった非資金的な支援を行う団体が別の団体として存在しているケースや、その場合に、組織間の連携をどのように取って、社会課題に対してより効果的に支援していくのか、の指摘がありました。

また、社会課題に取り組む人材のスキルアップも議論になりました。参加された金融機関の中では自社で丁寧に育成するケースもあれば、外部委託するケース、また外部と一緒に育成していくケースも紹介されました。「民間資源」を多面的に活用したSDGsの推進のために、各参加団体のご意見やご経験が共有され、貴重な勉強会となりました。

今後もこの勉強会を通じて、民間資源の活用、育成について学んでいきます。

 

IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ 交流会#4(2021年8月18日)の開催

金沢ミライシナリオをパートナーシップで実践するためのプラットフォームであるIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ。8月18日に合計第4回目、2021年度では第2回目となるパートナーズ交流会がオンラインで開催されました。今回も企業や各種団体、また個人の方と多くの方々にお集まりいただきました。

パートナーズ交流会では、毎回「パートナーズのみなさんと協働で実行したいプロジェクト」がある方がピッチプレゼンし、それを起点に参加者同士でミライシナリオの実現に向けてのディスカッションを行います。

今回は、パソコンリサイクル事業のDREAM WORKSさんと、LGBTQ+の支援団体である金沢レインボープライドの2団体がプレゼンしました。DREAM WORKSさんは、リサイクルパソコンを厳しい境遇にある子供達へ提供しその運動が福井県の企業からも賛同され広がっていることなどを報告、金沢でもその輪を広げてIT教育などを通じ子供達の可能性を広げること提案してくれました。またパソコン廃棄には通常費用がかかりますが、DREAM WORKSさんではWindows7以降のパソコンであれば、回収からデータの消去まで無料で行なっているそうです(証明書発行は1件3,300円)。パソコンの廃棄費用を節約でき、かつ子供達への機会提供にも貢献できることが話題となりました。

金沢レインボープライドからは、北陸初となるレインボーパレードをはじめ、企業勉強会、教育フォーラム、映画上映会などからなる金沢プライドウィーク(9月23ー26日)の開催に向けての協力と、性的マイノリティーへの理解を促進するにはどうしたらよいかについて、当事者の参加も得て対話が行われました。またパレード実現に向けてのクラウドファンディングへの協力も呼びかけられました。

上記2つに加えて、国連大学OUIK永井事務局長とSDGs推進について自由なテーマで相談し議論するグループも設置。こちらでは、花王グループカスタマーマーケティング株式会社さんからSDGsやESG推進のための専門部署の立ち上げに伴い、金沢でできることは?との投げかけがありました。早速、石川シングルマザーの会さんから、普段は自分に時間とお金をかけることの少ないシングルマザーの方たちへ、メークやヘアケア講座などの開催を通じてつながれるのでは、と提案がありました。

各グループディスカッションでは、参加者みなさんの個人や組織としての知識や経験、アイディアが持ち寄られ、どうしたらプロジェクトを推進出来るか、関連する課題を解決出来るか、話し合いが途絶えませんでした。発表者と参加者のどちらにとっても新しい気づきや学びが生まれ、新しいつながりが生まれるきっかけになったのではないかと思います。

IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズでは、交流会を毎月開催することを予定しています。パートナー会員間の交流を通して、会員同士の協働プロジェクトがどんどんと生まれ育ち、地域でコレクティブインパクトを推し進めていける場づくりを進めていきたいと思っています。

IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズでは会員を随時募集しているほか、交流会でピッチプレゼンしたい企業、団体、個人の方も募集しています。ぜひ皆様のミライを作るアイデアを聞かせてください。

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