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【開催報告】シンポジウム「New Normal(ニューノーマル) 時代の農業遺産保全と価値の向上」

日時 / Date : 2021/11/5
場所 / Place : オンライン

 国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)は、韓国農村振興庁(RDA)と共同で、2021年11月5日にシンポジウム「New Normal(ニューノーマル) 時代の世界農業遺産保全(GIAHS)の価値の向上」を開催しました。このイベントでは、COVID-19以降の「ニューノーマル」への移行を主なテーマとし、以下の2つを目的としました。

1)時代の変化に合わせてGIAHSを持続的に保全し、その価値を高める方法を模索する

2)世界的に重要なGIAHSの保全・管理に関するベストプラクティスと方向性を共有する

 RDAのテウン・ホ長官のはじめの言葉に続いて、UNU-IAS OUIKの渡辺綱男所長は、COVID-19のパンデミックによって人間と自然の共生がより一層重要となり、その実践地域としての役割を果たしていくGIAHS地域の可能性に注目が集まると期待し、本会議の議論の幕開けとしました。東京大学の八木信行教授は、人と環境が相互に依存し合い、共存することで繁栄する方法と関係性を明確に示すことが連食糧農業機関(FAO)のGIAHS申請審査時にも求められる重要な視点として強化されていると説明しました。GIAHSの価値を理解するために、UNU-IAS OUIKのイヴォーン・ユー博士とRDAのデヨン・ファン博士は、GIAHSの保全成果をモニタリング、評価することの重要性を強調しました。さらにUNU-IAS OUIKとRDAの共同研究である「GIAHSにおける特性分析と保全管理に関する技術の導入プロジェクト」で展開されている実用的な測定基準や指標を特定するための取り組みを共有しました。これらの発表を受け、韓国農林畜産食品部のアン・ジェロック氏は、農業コミュニティーの全体の暮らしを守り、環境保全対策を強化するために、GIAHSの現状維持に留まらず、多面的な価値の認識向上にも力を入れていくべきと話しました。

 続いて行われたプレゼンテーションとディスカッションでは、GIAHSが地域社会や人類にもたらす多面的な価値を「ニューノーマル」の時代にどのようにしてより広く認識してもらうかについて詳しく議論しました。RDAのミンチュル・ジョン博士は、最近韓国で実施されているGIAHSの参加型モニタリングプログラムを紹介し、モニタリングの重要性を改めて強調しました。林浩昭氏(国東半島宇佐GIAHS推進協議会会長)、高橋尚樹氏(大崎GIAHS推進協議会事務局長)、そして青山島の伝統的なクドゥルジャン灌漑棚田のコミュニティと密接に連携しているファン・キルシク氏(Myeonggso IMC研究員)は、それぞれのGIAHS地域での現在の実践と将来の計画について実例を挙げて話を進めました。特にこのパンデミックで大きな影響を受けた観光産業や商品販売を復活させることや、若い世代へのGIAHSシステムの教育、歴史の知識や文化的慣習の体系的な記録、金融投資を呼び込むインセンティブの創出などの重要性を強調しました。

 これらの発表を受けて、RDAのホン・ソクヨン博士と渡辺綱男博士は、若者をはじめとする従来とは異なるステークホルダーを巻き込んで、モニタリングを実用化することの重要性を指摘しました。これに対し、地球環境戦略研究機関(IGES)の斎藤修氏、パイチャイ大学のチェ・ジョンヒ氏、同志社大学の大和田順子氏からは、保全活動の評価と活用の方法として、日本のGIAHSが持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて積極的に活動していることなどの事例が紹介されました。

このシンポジウム「ニューノーマル時代におけるGIAHSの保存と価値の強化」は、ZoomやYouTubeの韓国語、日本語のチャンネルを通じて、120人近い参加者が集まりました。

 最後に、パンデミックを乗り超えて「ニューノーマル」の時代においての持続可能性な社会の実現へ向けて、GIAHSが果たす人間社会と自然環境の共生と保全への貢献と役割を再認識し、日韓のGIAHS地域が共通する課題の解決のために協力を深めることを期待して閉会しました。

 イベントの様子は、RDAのYouTubeチャンネルで韓国語と日本語で生配信され、日本語はこちら、韓国語はこちらでご覧いただけます。また、すべてのプレゼンテーションを含むプログラムは、こちらからダウンロードできます。

 

 

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