国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)と能登町は9月17日(土)、石川県能登町で「里山と里海の仲人~能登町の暮らしを支える里川~」をテーマとした第5 回「能登の里海」シリーズ講座を開催します。
近年、森と里の有機物や栄養が川に運ばれて海へ流れ込むことによって海の生態系環境が豊かになる、陸域と海域が一体となった環境保全と資源管理の概念「森里川海のつながり」が定着しつつあります。川は山から海まで栄養と砂を運ぶとともに、たくさんの生き物を育み、川の恵みとして地域の食文化と暮らしを支えています。そのため「森は海の恋人」とよく言われるように、川は「山と海をつなぐ仲人」とも呼ばれるようになり、その山と海をつなぐ役割が注目されています。世界農業遺産「能登の里山里海」における能登町柳田地区には奥能登で最も長い町野川が流れています。ここで捕れる川と海を回遊する鮎を使って作られる「ひねずし」(なれずし)は、秋のキリコ祭りで祭り料理の1品としてよく出され、地域を代表する郷土料理になっています。また、町野川には「カンコ」と呼ばれる漁具を使った「ヤツメウナギ漁」も伝わっており、町野川はまさに地域の生業を支えてきた里川といえます。
本講座では、海の環境保全と資源維持のために川が果たす役割について大変詳しい九州大学大学院工学研究院の清野聡子氏、地元町野川を中心とする能登地域の河川で40年にわたって水生生物を調査してきた元柳田村立黒川小学校校長の谷口正成氏を講師としてお招きし、地域の生業づくりに能登町の里川、里海が果たしている役割、またそれらの生業を通じて支えられている暮らしや保全されている里川と里海の魅力など、それぞれのご経験から里川・里海づくりについてお話しいただき、能登町で活躍している方々と議論を行います。
なお、本講座は、UNU-IAS OUIK が実施している「能登の里海ムーブメント」の啓発活動の一環として位置付けています。「能登の里海ムーブメント」とは、里海の概念や、「能登の里海」の魅力と里海に関わる生業について、県内外の方々に、より深く理解していただけるよう情報を発信していくとともに、能登地域を日本海の里海の研究と保全活動をリードする拠点として定着させていくための取り組みであり、この取り組みを通して「能登の里海」の国内外における認知度を高め、里海における生業の振興に繋げたいと考えています。
主 催:能登町、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)
共 催:世界農業遺産活用実行委員会、能登地域GIAHS推進協議会
言 語:日本語
参加登録:参加無料、一般公開
参加ご希望の方は、お名前とご連絡先(Emailアドレスまたは電話番号)を記載のうえ、「9月17日里海講座参加希望」と明記し、UNU-IAS OUIKまで下記FAXまたはEmailにて
お申し込みください。
Email: unu-iasouik@unu.edu Fax:076-224-2271
プログラム(受付:12: 30~)
13:00-13:05 開会挨拶 渡辺綱男(UNU-IAS OUIK 所長)
13:05-13:50 講義①「里海を支える里川の役割」 清野聡子(九州大学大学院工学研究院環境社会部門生態工学研究室准教授)
13:50-14:20 講義②「町野川が育む生き物たち」 谷口正成(元柳田村立黒川小学校校長)
14:20-14:30 「『能登の里海』ムーブメント」イヴォーン・ユー(UNU-IAS OUIK 研究員)
14:30-14:45 休憩
14:45-15:55 パネルディスカッション モデレーター:イヴォーン・ユー
パネリスト:清野聡子、谷口正成、山下勝男(前柳田河川漁業協同組合長)、
藤平朝雄(能登半島広域観光協会相談役・石川県観光スペシャルガイド)
15:55-16:00 閉会の言葉 能登町
谷口正成(たにぐちまさしげ)、昭和3年生まれ。石川県輪島市出身、能登町当目在住。40 年にわたって町野川や山田川など奥能登の河川を中心に水生生物の調査を
行ってきた。著書に「この川にこんな『いのち』が~能登の河川の水生生物~」がある。昭和47 年度、金沢大学科学教育研究室(内地留学)。 平成16 年に環境大
臣表彰、平成20 年に全国河川協会表彰を受賞。
山下勝男(やましたかつお)、昭和13 年生まれ。能登町国光在住。四方を山で囲まれた柳田地区で本格的に老鮨を手がけるようになって三代目。山下家の屋号は「甚六(じんろく)」で、日頃は敬遠する人にも「甚六の老鮨なら食べられる」と言わしめる。
藤平朝雄(ふじひらあさお)、昭和14年生まれ。東京都目黒区出身。輪島市町野町在住。元輪島キリコ会館館長。エッセイ、講演、新民謡作詞などを手掛ける。著書に「奥能登万華鏡」「町野今昔物語」「能登燦々」「能登劇場 八十八景」などがある。能登の語り部として内外で活躍し、能登の魅力を発信し続けている。現在、地産地消文化情報誌「能登」で「町野川ものがたり」を執筆中。
イヴォーン・ユー シンガポール出身。2003 年にシンガポール国立大学人文社会科学部を首席で卒業後、2010 年までシンガポール交通省に在籍。日本には、2001 年に沖縄県費留学生として琉球大学に留学したのをはじめ、2003 年から3 年間、宮崎市教育委員会と宮崎県国際政策課に勤務、2012 年秋には日本国費外国人留学生として東京大学公共政策大学院を修了。2012 年から国連大学に勤務し、日本や韓国の世界農業遺産について研究するとともに申請活動を支援。石川県では能登の里山里海資源の持続的な利用について研究中。東京大学大学院農学生命科学研究科において博士号(国際水産開発学専門)を取得中。
清野聡子(せいのさとこ)、東京大学農学部水産学科卒業後、同大学院農学系・総合文化研究科にて農学修士(水産学)、博士(工学)を取得。2010 年より現職。河川法や海岸法の改正を契機 に、多くの国、自治体の海岸保全・再生計画、事業、合意形成会議に参加。現地調査をもとに実務・制度を環境や市民参加の点で拡充し、現場を改善する目標に向け、学際的な海岸研究に取り組んでいる。専門は、沿岸・流域環境保全学、水生生物学、生態工学。九州水フォーラム2016 実行委員会企画委員長、水産庁広域漁業調整委員会委員等を兼任。九州水フォーラム2016実行委員会企画委員長、水産庁広域漁業調整委員会委員等。