2026年3月14日、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)は、ミライシコウのサイドイベントとして金沢にて「Youth and the Climate Action Conference 2026(高校生国際会議)」を開催しました。今年は「Climate Justice(気候正義)」をテーマに、気候変動の影響や責任の不均衡、公正な気候行動のあり方について、講義とワークショップを通して学生とともに考えました。
気候変動と「気候正義」を理解する
はじめに、UNU-IASの岡野直幸プログラム・オフィサーが講義を行い、気候変動の科学的背景を概観するとともに、気候変動を単なる環境問題ではなく、倫理・政治・社会の問題として捉える視点が紹介されました。また、法哲学や政治哲学における「正義」の議論にも触れながら、正義とは誰のためにあり、社会の中でどのように実現されるべきものなのかという問いが提示されました。
その上で、気候正義とは、気候変動への責任や影響が国や地域、世代、社会集団によって不均衡であることに着目し、公平性や人権の観点から気候政策を評価する考え方であると説明されました。気候変動と正義の問題には必ずしも一つの正解があるわけではありませんが、こうした問いを持つこと自体が重要であることが強調されました。学生たちにとっては、気候変動や社会課題を考える際の一つの視点として、「正義」という観点に触れる機会となりました。


能登と金沢の事例から考える
小山研究員は、世界農業遺産「能登の里山里海」を例に、農業・水産業・食文化に対する気候変動の影響について説明しました。2024年の能登半島地震と豪雨災害という複合災害にも触れながら、米の品質低下や海水温上昇による漁業への影響など、地域の暮らしに現れて始めている変化が紹介されました。農村地域で自然資源を活用した暮らしを営む人々は、気候変動によって生業への影響を直接受けやすい点が指摘されました。また、都市部へ送電するための発電施設が農村の景観や生態系に影響を与えるといったトレードオフについても言及がありました。こうした点から、地域間で排出への責任と影響の大きさが必ずしも一致しないという点が、気候正義の観点からも重要な課題であることが示されました。
フアン研究員は、都市の視点から気候正義を考え、金沢を例に都市の緑地や自然へのアクセスの格差、都市の高温化、洪水リスクなどについて説明しました。都市の気候対策を進める際には、「誰が恩恵を受け、誰が意思決定に参加できるのか」という視点が重要であることが強調されました。また、自然を活用した解決策(Nature-based Solutions)や市民参加型の研究を通じて、公平で持続可能な都市づくりを目指す取り組みが紹介されました。
ワークショップ:日常の中の気候変動と気候正義について考える
講義の後には、学生が少人数のグループに分かれ、日常生活の中で感じる気候変動について議論しました。猛暑や豪雨、雪の変化、食料や交通など身近な例を共有し、それらが誰にどのような影響を与えるのかを考えるとともに、より公平な社会に向けた行動について意見を交換しました。議論の最後の発表では、地域の中で助け合うコミュニティの重要性や、都市部から農家を支える仕組みをどのように作ることができるかといった視点が共有されました。また、暑さが厳しくなる夏の中で、高齢者など暑さに弱い人々を環境に配慮した形で支える方法など、具体的なアイデアも挙げられました。
高校生によるCOP30参加報告
イベントの後半では、「石川金沢から世界を変える、次世代のリーダー育成プログラム」に参加した金沢大学附属高等学校 、金沢錦丘高等学校 の2名が、ブラジル・ベレンで開催されたCOP30への参加経験を報告しました。学生たちは国際会議のパビリオンで行われたユース対話セッションなどに参加し、世界各国の若者と気候行動について意見交換を行った経験を紹介しました。また、若者の視点と大人の知識や経験が協働することで、より実効性のある気候行動につながる可能性についても語られました。
*「石川金沢から世界を変える、次世代のリーダー育成プログラム2026」の募集が始まります。詳しくはリンク先公式ページをご確認ください。


気候正義を自分たちの行動へ
本イベントを通じて、学生たちは気候変動を単なる環境問題としてではなく、社会の公平性や世代間の責任、地域の暮らしとの関係の中で考える視点を学びました。UNU-IAS OUIKでは今後も、地域の事例と国際的な議論をつなぎながら、次世代とともに持続可能で公正な社会の実現に向けた取り組みを進めていきます。



