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『SDGs三井のごっつぉproject』第6回

久しぶりに来たまるやまはもうすっかり秋色に染まっていました。

いくつかの田んぼを残し、ほとんどの田んぼでは稲刈りが終わり、「はざ(はさ)掛け」という、このように伝統的な方法で稲を乾燥している様子も見られました。

第6回目となる今回の「ごっつおプロジェクト」はこんな里山の秋を満喫できるプランです。

  • 栗拾い合戦
  • ヘビについて学ぼう!
  • 畔で育つ小豆とアズキゾウムシ
  • 水生昆虫を見つけよう
  • 茹でた栗で搗栗(かちぐり)作り

いくつ採れるかな?栗拾い合戦

バスから降りるとともに始まった栗拾い合戦。赤と白に分かれて制限時間内に栗をいくつ拾えるか競います。

まるやまではもともと地域の人が栗の木を薪にしたり炭焼きにして生活の中で活用していたこともあり、栗の木がたくさんあります。今回はシバグリという野生の栗を採り、「ごっつぉ(ご馳走)」を作りました。

そこら中に栗が落ちているように見えますが、中身が腐っていたり、空だったり、実が詰まっている栗を探すのは案外難しいようです。

「これ虫に食われとる」「これも空っぽや」そんなことを言いながら萩野さんと一緒に山を少し登ってみると「あった!栗脈!」

水脈のようにあらわれた栗脈、生徒たちは大はしゃぎです。

大きくてまだ開いていない栗。チクチク刺さると痛いけれど足で挟んで中の実をいただきます。

みんなの頑張りもあり、10分あまりでこんなにも採れました。

今回は「搗栗(かちぐり)」という栗を乾燥させた「ごっつぉ(ご馳走)」を作るため、まずは栗を茹でます。

 

秋のマムシはこわい?里山に生息するヘビについて学ぼう

栗を茹でる時間を利用して、次はヘビについて学びました。

「なんでヘビ?」「ヘビ怖いー」なんて声もちらほら上がる中、萩野さんからヘビ、それもマムシにまつわる、ちょっと怖い話を聞かせて頂きました。

なんと萩野さんの旦那さんはマムシに噛まれたことがあるとか。「心臓から遠い足の指をかまれたから、命は助かったけれどとても怖い経験だった」と語る萩野さん。

みなさんはマムシを見つけたらどうしますか?太い胴体に銭形模様が特徴のマムシ、ほとんどの人が怖くて逃げ出してしまうのではないかと思います。特に秋は繁殖期を向かえて神経質になっているマムシも多く、注意が必要とのこと。

この辺の集落ではマムシを見つけたら「殺す」ことが掟となっているようです。萩野さんも最近マムシに遭遇し、かわいそうだと思いながらも「誰かがまた噛まれては大変」と思い、殺生したそうです。人間の命も動物の命も、命に変わりありませんが、人間が安心して暮らすために、時には動物の命が犠牲になることを生徒たちも理解したようです。

人間の命をも奪うマムシの怖いお話はさておき、その他のヘビについても教えてもらいました。

「日本の本州には何種類のヘビがいると思う?」という問いかけに「100」「2000」「3000」と答える生徒たち、「そんなに多くないよ~、実際はたったの8種類」と聞きびっくりした様子。

8種類の詳細:

  • シマヘビ
  • アオダイショウ
  • ヒバカリ(刺されたらその「日ばかり」の意味と勘違いされているが無毒)
  • ジムグリ(基本土の中に生息)
  • タカチホヘビ(基本土の中に生息)
  • シロマダラ(絶滅危惧種)
  • ヤマカガシ(奥歯に毒あり)
  • マムシ(前歯に毒あり)

写真を見ながら日本の本州にいるヘビの特徴について教えてもらいました。

こうみると毒があるのはたったの2種類、その中でも特別注意が必要なのは主に前歯に毒があるマムシだけ、とのことです。

「ちょっと、安心、、、」

蛇をまじまじと観察する機会も少ないと思いますが、多くの蛇が幼蛇と成長した姿では模様や色が大きく違うそうです。どの蛇もマムシのように見えたり、またその逆もあるかもしれません。写真で萩野さんが抱えているのは絶滅危惧種のシロマダラの抜け殻です。車に轢かれていたのを発見し、お知り合いで剥製家の修行をしている方に仮剥製にして頂いたとても貴重なものだそうです。このシロマダラも名前にあるように派手なマダラ模様ですが無毒の蛇です。

ヘビについて少しばかり詳しくなった生徒たちと次はヘビの抜け殻の観察です。

「これはどのヘビなんだろう?」

ヘビは種類によって体の鱗(うろこ)の列数が決まっており、お腹の太いところの鱗を一周数えることで、何の種類のヘビなのか抜け殻からでもわかるそうです。普段なかなか見ることのないヘビの抜け殻に興味津々の生徒たちです。

「へー!面白い!でも破れんかな?」近づいてみながら鱗の数を数えます。

「18?19?」19列の場合はシマヘビだそうです。

「へーこれシマヘビやったんかー。」

 

 

 

抜け殻を見ながら生きていたころのヘビを想像しながら「こんなに綺麗にむけたヘビはプロやねー」。

ヘビにも脱皮の上手下手があるのかもしれませんね。

 

畔の小豆とアズキゾウムシ

次は田んぼの畔に移動し、小豆の観察です。

こんなにも元気に育った小豆ですが、アズキゾウムシという天敵がいるそうです。

豆の周りに卵を産み、羽化した幼虫は豆の中に入り込み、豆を食べながら成長し、また別の豆に卵を産むそうです。この繰り返しをされては食べられる小豆が減ってしまいます。

アズキゾウムシも小豆を食べたい、人間も小豆を美味しく食べたい。

「みんなだったらどうずる?」という問いかけに「殺虫剤やったらおらんくらるんじゃない?」「ネットでもとれるかな?」との意見。

もちろん殺虫剤で虫を駆除してしまうこともできますが、まるやま組ではアズキゾウムシの光に集まる習性を利用してこのような仕掛けで捕獲しているそうです。なかなか上手くいかず試行錯誤中だそうですが環境や食の安全に配慮した農法です。

「たくさんおるよ、光に集まってくるんやね。」

水辺の方へ移動し、水中昆虫の観察も行いました。

「めだかいっぱいおる」こんなに小さな水辺にも沢山の種類の昆虫や動物が生息しているようです。

網ですくってみているうちに最近ではなかなかお目にかかれない昆虫を発見!

「ゲンゴロウや!これ珍しいらしいぞ!」

胴体の両端に白い線があるのがゲンゴロウの特徴です。このように自然栽培の田んぼではゲンゴロウやガムシなど、石川県でも絶滅しそうな生き物に出会えます。特に稲刈りの時期は田んぼの水が抜かれるので、江は水生昆虫の重要な避難場所となります。ここの江は最近まで経年変化で泥が堆積していましたが、田んぼの持ち主である新井さんが泥上げを行ったのでたくさんの水生昆虫が復活したそうです。さらに昆虫だけではなく絶滅危惧種のミズオオバコというピンクの花も咲き、動植物が健やかに育つ環境になっています。

「これはゲンゴロウ?違うの?」どうやらゲンゴロウに似た昆虫もたくさんいるようです。

 

搗栗(かちぐり)作り

そうこうしているうちに栗も茹であがり、美味しそうな匂いが漂ってきました。

「これで今日は搗栗をつくります。みんな搗栗は知ってる?」

「戦に勝ためのかちぐり!?」

そう、昔は縁起もよく、日持ちもする食糧として戦の際に重宝されたとか。

 

 

「みんなのおばあちゃんの時代はおやつとして食べられていたんだよ!」甘くて日持ちする搗栗はまさしく「ごっつぉ(ご馳走)」です。

つくり方はとっても簡単。茹でた栗に糸を通してしばらく干しておきます。昔は囲炉裏の上に掛けて干し、報恩講の時などに首から掛けておやつとして食べていたそうです。

栗の平べったい部分から針を刺して一つ一つ通していきます。

「できた!」「普通の栗と味違うんかな?」

自分で採った栗から作った「ごっつぉ」がどんな味になるのか楽しみな様子です。

「お腹空いたー。給食の時間や」ということで、盛沢山だった今回の三井ごっつぉプロジェクトも終了。

 

今回は秋の里山における生植物の多様性、そして様々な生き物との関わり方について学べたのではないでしょうか。

人間が安心して暮らすために時にはヘビや危険な動物の命が犠牲になったり、人間が美味しい野菜を食べられるように、虫の命が犠牲になります。

食べるということは命を頂くということ。命に感謝し、美味しくいただくことが大切だと感じました。

報告:国連大学OUIK

 

国連大学OUIKでは「世界農業遺産(GIAHS)能登の里山里海」を利用した持続可能な未来へ向けての教育活動をサポートしています。一言で「能登の里山里海」と言っても地域によって異なる様々な伝統文化がありますが、三井小学校のような活動が能登の他の地域でも行われ、里海、里山間で交流が生まれるようなプラットフォーム作りを進めていきたいと思います。さて、次回はどんな「ごっつぉ」を作るのでしょうか?「SDGs三井のごっつぉproject」は通年のプログラムとして続きます。

企画・実行:萩野アトリエ/まるやま組 萩のゆき、萩野紀一郎(富山大学 芸術文化学部 准教授)協力:国連大学OUIK

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