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【開催報告】SDGsカフェ#12「〜with コロナ時代だから考えたい〜 ESG投資が金沢に根付くには!?」

日時 / Date : 2020/7/10
場所 / Place : オンライン

新型コロナウイルス感染症の流行が、少しずつ落ち着きを見せ始め、さまざまな業種でコロナ前の数字に戻すことが最優先課題となりつつあります。
一方で、「環境にも良い働き方」など、コロナ禍で芽生えた「新しい価値観」や「社会変革の芽」は失いたくないと感じている方も多いでしょう。

自然や環境、働く人々を取り巻く社会課題などの解決と、持続可能な経済発展──その両方を実現させるキーワードが「ESG投資」という言葉です。最近、SDGsとともによく見聞きするようになってきましたが、まだまだ地方に暮らす私たちにとっては遠い存在だと思っていませんか?

実は意外と身近なところで、ESG投資の考え方が生かされていたり、あるいは知らないうちにESG投資と密接な関係があったりします。2030年に向けて、当たり前となっている必要があると考えられるESG投資について、社会変革への機運が高まりつつある今、地方からできることを考えてみました。

老舗六代目とESGのスペシャリストの話に耳を傾けてみましょう

 今回2030年の金沢をIMAGINEしてくださったのは、金沢にある伝統発酵食品の老舗・株式会社四十萬谷本舗(しじまやほんぽ)の六代目・専務取締役の四十万谷正和さんです。
 そして、アイデアを提供してくださったのが、サステナビリティ経営・ESG投資アドバイザリーの会社である株式会社ニューラル代表取締役CEOの夫馬賢治さんです。

 最初にここ最近のトピックスとして、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)の永井事務局長から、6月にIMAGINE KANAZAWA 2030推進会議が設置された報告がありました(詳細は下記をご覧ください)。

「第1回IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議」開催

 

今までESGやSDGsとはあまり関係ないと思っていた
四十万谷さんがイマジンする2030年

 四十萬谷本舗は明治8年(1875年)創業の老舗発酵食品の店。その後継者となる四十万谷さん(36歳)は、大学卒業の後、大手食品メーカーで約11年間、主に人事関係の仕事を行い、2017年に家業を継ぐべく金沢に戻ってきました。

四十万谷正和(しじまや まさかず)/ 株式会社四十万谷本舗専務取締役。2006年 慶應義塾大学経済学部卒業後、ハウス食品株式会社入社。入社後は、採用、労務、人事制度、グローバル人事など、一貫して人にまつわる仕事を行う。 2017年 株式会社四十万谷本舗入社。 2019年 専務取締役就任

 まずは四十萬谷本舗の主力商品であるかぶら寿しや大根寿しを紹介。
 コロナの影響によって家庭で食事を摂る機会が増え、このような発酵食品を求めてくれるお客さんが増えたそうです。明治時代の商家造りの本店は見応えがあり、「コロナが落ち着いたらぜひ遊びにいらしてください」と誘います。

 さて、今回のSDGsカフェの話が舞い込んだ時、最初は「地域にある中小の伝統企業とSDGsの関係がピンとこなかった」という四十万谷さん。しかし改めて金沢SDGsを見直してみたら、自分たちの日々の活動と関わっていることが多いのに気がついたそうです。発表では、金沢SDGsの5つのテーマに沿って、四十万谷さんたちの日々の活動との関わりについて考えていただきました。

*金沢SDGsの「5つの方向性」の紹介はこちらをご覧ください。

 

「自然、歴史、文化に立脚したまちづくり」から考えてみる

 歴史とか文化に関わることが多い、伝統的であって特徴のある発酵食品をたくさん作っていますが、実は「特に若い世代にその価値を伝えられていないのでないか?」という悩みがあるそうです。

「全国各地で伝統的なものを引き継ごうと思っている方は、皆さん同じことを考えていると思いますが、昔からある伝統的なものを作って、『これは大事なものなのです。だから残してください!』とお願いしたところで、お客さんが『やばい、これ残さなくちゃ!』というふうにはほとんどなりません。今の時代には、こんないいことがあるよとか、これ食べたらこんなにおいしいよという、 “いいね!”と思ってもらうことが重要で、そう思われれば残っていけると考えています。どうすればいいねと思ってもらえるか、それを大事にしたいです」

 そのために、若い世代に糀や発酵食の良さを伝えるワークショップを開催したり、健康経営を推進されている方たちと組んで発酵の価値を届けるようなことをやったりと、“発酵食のいいね!”を知ってもらうために、多様な取り組みを行っています。コロナ禍もあって、現在はオンラインで「みんなで漬けよう!オンライン糀漬け体験」というワークショップも開催しており、これがかえって今までかぶら寿しとか大根寿しとかにあまり興味がなかった方々にも触れていただく好機になっているそうです。

「環境への負荷を少なくし資源循環型社会を」目指す

「大きなテーマなので、最初は私たちと関係あるのかと思いましたが、3年ほど前に入社して以来、感じていたことに気がつきました。それは、物づくりの段階で廃棄している部分がすごくたくさんあることです」

 かぶら寿しとは贅沢な食べ物なので、丸いかぶの真ん中しか使わず、形を整えるためにかぶからはみ出した鰤をカットしますが、それも廃棄されるものもあるのだとか。

「もったいないし、せつないという思いがあります。これをなんとかできないかということは、実は私の父もずっと思っていたそうです」

 現在、石川県立大学の学生さんにプロジェクト型のインターンに参加してもらい、使われなかった材料を生かした製品開発をするプロジェクトを始動させたそうです。

 また、使うことができない野菜のくずは、自社で機械を導入し、圧縮して肥料に回すことを始めました。四十萬谷本舗には自社農園があり、かぶに関して年間で30トンくらいを廃棄していましたが、全てを肥料にして畑に戻し、かぶの廃棄はゼロになったそうです。

「小さなスケールですけど、自社農園の中で循環しています。廃棄の費用もかからない上、畑の肥料にもなるので、とても良い結果が出せました」

 一方で、地方の中小企業でも、地球規模の環境変化の影響を受けることは多いと言います。

「一番大きいのは原材料、昔から使っている原材料の中には、イカやニシンなど、今後入手が困難となりそうなものが結構出てきています。気候が変わってくると取れる作物なども変わってくるので、私たちにとっては大問題です」

 さらには、かぶは自社農園と契約農家さんに作ってもらっているそうですが、就農者の高齢化が進み、5年後、10年後まで続けるのはしんどいという声も上がっているそうです。作り手の方々が一緒に発展していける関係にあるのか、若い方が一緒にやってくれる環境にあるのかということも非常に大事だと述べました。

 

「次世代を担う子供達の可能性を引き出す環境」を作る

 子どもたちにこの土地の文化とか発酵食の魅力を伝えていき、そこから何かを感じ取ってもらえたらと考えて、「親子で糠床教室」や「自社農園でかぶ収穫体験」などを、続けていると言います(「誰もが生涯にわたって学び活躍できる社会風土をつくる」について、今回は触れませんでした)。

「文化や産業に革新的イノベーションが起きる仕組み」も始動

 今年に入って、四十万谷さんと同じ30代の大都市圏の方に、副業として四十萬谷本舗に関わってもらい、課題を解決しようという取り組みをやっているそうです。
 四十万谷さんは夫婦で6代目を継ぐべく金沢にやってきましたが、お二人ともが人事の仕事をしていた関係で、マーケティングの肌感覚もわからないし、テクノロジーが今どうなっているのかも、法務と言われても・・・と、わからないことが多く、悩みを抱えていたそうです。

「家業に入り、日々現場のことをやっていると、発想が現在までの延長線上の改善に偏ってしまいます(知の深化)。それもすごく大事ではありますが、新しい、別の発想を得てきてイノベーションを起こすこと(知の探索)がなかなかできないということがありました」

 前職を含め、さまざまな方々とお会いする中から、都市の大企業で働きながら、“自分の力とか知見で地域を良くすることに貢献したい”という、純粋で熱い思いを持っている人がたくさんいることを実感。そういう人たちと一緒にやりたいと考えて始めたそうです。

「私たちはもちろん、彼らも得るものがいろいろあると言います。私たちは小さい企業なので、こういう専門的な方にフルタイムで来ていただくのは難しいですが、このような形で一緒にやれているのがありがたいなと思っています」

 これは、四十萬谷本舗に限ったことではなく、都市の人たちと地域の自分たちの関わり方が変わっていくことで、どちらも元気になっていくのではないかと感じているそうです。

 地域との関わりが強く、その思いが強くなれば定住・移住となり、これが増えることが望まれますが、それは限定的なこと。四十万谷さんたちがいま行っているのは、地域企業と協働しながらいろいろな人と触れ合い、関係するということで、地域の人は彼らから知見を得て、いまある地域の価値をどんどんブーストしていくことができます。一方の彼らもこの経験をもとに、人との繋がりとか、何かの成長につなげていくことができたりすると言います。

「こういう動きが、この地域に広がっていったらいいなと思っています。ここから新しい発想やイノベーションができたらいいですね」

 

2030年の金沢の姿。こうなるといいなをIMAGINE

 四十万谷さんは、次の3つを挙げました。

①地域内、地域外のつながりと協働がもっと進んでいると、個人的には元気になるなと思っている

②金沢の生活に息づく文化の魅力を私たちが発信できている

 意外と地元のものづくりを知らず、地元の伝統を体験することもあまりやってこなかったということを、今回のコロナ禍で気がついたそうで、まずは地元のことを知って、消費して、体感し、それを来るべきもっと移動が盛んになった時に、発信できればいいと考えているそうです。

③各事業に関わる方々が持続的に発展できていると言うこと

 最後に、ESG要素と地域中小企業との関係についても整理してくれました。

①地域の中小企業ほど、大きな影響を受ける

 ESGやSDGsとの関わりを考えた時、最初は地域の中小企業にはあまり関係がないと思ったそうですが、材料の話、物づくりの話などはダイレクトに影響を受けることを認識。ちゃんと文化を価値あるものとして伝えていけるか、今まで通りの原料で作れるか、影響は大きいと述べました。

②お客様から選ばれるための基準として・・・

 お客様がどこから物を買いたいかと言うと、環境とか社会とかガバナンスもしっかりしているところから買いたいという思いがあると述べました。

③多様な人材から選ばれるための基準として・・・

 一緒に働く先としてもESGのことをちゃんとしているところが選ばれて、一緒にやっていきたいと思ってもらえるのではないかと述べました。

 

ESGの本も出し、その流れをずっとウォッチしてきた
夫馬さんからアイデア提供

 東京からのリモート参加で、「本当は金沢に行きたかった!」と言う夫馬さんからは、「ESGと金沢」についてお話しいただきました。
 夫馬さんによると、ESGの話と地域の話は非常に密接な関係があるそうです。

 まずは、ESGについておさらい。
 Environmental(環境)、Social(社会)、Governance(統治、あるいは経営)。この3つについて投資家が着目し始めていることから、ESGという言葉が登場したそうです。

夫馬 賢治(ふま けんじ)/株式会社ニューラル 代表取締役CEO。サステナビリティ経営・ESG投資アドバイザリー会社を2013年に創業し現職。東証一部上場企業や大手金融機関をクライアントに持つ。著書『ESG思考』(講談社+α新書)他。ニュースサイト「Sustainable Japan」編集長。ハーバード大学大学院リベラルアーツ修士課程(サステナビリティ専攻)修了。サンダーバード・グローバル経営大学院MBA修了。東京大学教養学部(国際関係論専攻)卒

 また、ESGはSDGsと密接な関係があると言います。SDGsは「持続可能な開発目標」と言いますが、裏を返せば、実は今は持続可能ではなく、持続可能にしなくてはいけないということになります。これは発展途上国だけの話ではなく、ある専門機関がSDGsの17あるゴールの毎年の達成状況を調べているそうですが、例えば日本なら、4段階の評価で一番高い評価を得られているものは3つしかなく、逆に一番低い評価のものが5個もあるそうです。
 つまりは日本も持続可能ではなく、持続可能にしていくためにはやらなければいけないことは山ほどあるということです。その中には企業が変わっていかないといけないこともたくさんあって、そこに着目しているのがESGということになります。

「世の中が持続可能であれば、投資家が企業を見るときにESGに着目することはなかったはずで、実はもう持続可能でなくなっていて、さらに今の企業のあり方すら持続可能ではない(つまり倒産するかもしれない)という危機感を持っているので、このESGが重視されています」

 ところで、このコロナ禍でESG投資はどう変化したのでしょうか? 一時期メディアからはSDGsという言葉が聞かれなくなり、多くの方がESG投資も減っているのではないかと思われています。しかし、日本ではわずかしか増えていませんが、海外では、2割、3割増と大幅に伸びているそうです。

 

機関投資家が上場企業でチェックしているESGの観点は多様

 二酸化炭素の排出量や水の問題、廃棄物など、環境(E)の方はわかりやすいですが、社会(S)のテーマは非常に多様だと言います。社会の中でいま一番ホットなテーマは、「人的資源」、つまり労働者だといい、社会といっても会社の中にある社会、つまり労働者の方々の評価というものが一番大きなウエイトを占めていると言います。

 ガバナンス(G)のところでは、取締役会にどういう専門家がいるか、また取締役会の人はどういう評価制度で評価されているのかというのもあるそうです。

 多岐にわたるこれらをチェックして、点数がつけられます。これがいまのESG投資と呼ばれる世界。全て定量評価になっているため、上場企業はその辺りの情報開示をしないと点が上がりません。中身のないことを言っても当然評価されず、かなりシビアな評価がされているようです。

 気候変動がもたらす変化により、日本の農林水産関係での被害額も右肩上がりで増加しています。世界的にみると自然災害による保険損害額は大幅に増えていて、東日本大震災クラス以上の被害が世界では毎年のように発生しています。この損害を止めなければいけないという深刻な状況になっているのです。

 

機関投資家がESGを重視する理由

 このような中でESGを重視する機関投資家(公的年金、企業年金、保険などの大口投資家)たちは、何を大事にするか──。やはりCO2を減らさないといけないということで、投資家自身が各国の政府に対し、「もっと削減をさせるような法制度を入れなさい」と指導をしています。こんなに自然災害ばかりでは企業経営がままならなくなり、投資家たちはそうすると自分たちの投資の値段が下がってしまうために、自らが環境規制を強化しようという動きになっているとのこと。例えばプラスチックの消費を減らそうというのも、このような投資家からの強いメッセージが影響しているそうです。

 食品廃棄物を減らすという動きも同様。また、廃棄物から飼料を作ろうという流れがあり、そうすれば飼料の主原料となる大豆の生産を抑えることができます。実はその大豆を育てる農地を作るために、多くの熱帯雨林が破壊されています。アマゾンなどの熱帯雨林を守るために、投資家たちは強く迫り、企業側も自主的に取引条件に課すようになっていて、きちんとしていない原料メーカーからは買いたくないという動きが海外では強くなっていて、日本でも一部の大手小売業者などが取り組み始めています。

 

これから生産年齢人口が一気に減少する金沢

 金沢の社会のSの話。生産年齢人口の話はとても重要です。すでに高齢者は急激に増えつつありますが、いよいよ本格的な人口減少が始まります。生産年齢人口が一気に減少していくというのが、これから金沢市が迎える世界。その中で経営をしていかないといけませんし、地域社会も支えていかないといけないということになります。

 金沢は大都市なのでまだましで、日本の将来の人口では2100年には明治維新の頃に逆戻りになると言われています。未曾有の人口減少社会をどう乗り切るか? 労働力不足はますます激しくなります。この10年間、女性の活躍ということで、かなりの人手を確保してきたことは事実ですが、まだまだ女性にとっては働きづらい社会。これからますます人が減る中で女性が働きづらいままだと、女性が実力を出せなくなってしまうでしょう。

 さらにもう一つ。この人口減少を乗り切るために、外国人に頼るというのもあります。石川県もこの数年で急激に外国人が増えています。
 しかし、厚生労働省が全国の外国人技能実習生という制度を使っている企業の監督指導を行ったら、70%の労働基準関係法令違反があったそうです。このままでは外国の方も来てもらえるか? 難しい状況にあるのではと夫馬さんは危惧します。

実はESG投資はとっても身近な話だった

 株式や社債という形で上場企業や大きな銀行に投資している機関投資家はいま、ESGの観点から投資の判断をしています。この話だけでは、地域の方からは少し遠い話だと思われるかもしれませんが、機関投資家は金沢市の地方債の投資家であったりもします。

 地方債を買っているのは個人もいますが、機関投資家や銀行が買って、金沢市なりの財政を支えています。すなわち金沢市がこれからESGに対して、どれくらい改善していけるかということが、地方債を出す上でのポイントになってくると言います。

 日本の大半の企業となる非上場企業は上場企業から発注を受けたり、銀行からも融資を受けたりします。いま銀行も投資家から評価を得るために、ESGの観点で融資を行うということが大事になってきています。

 発注をする上場企業は、「どれだけ持続可能になっていけるか?」ということが経営の判断材料になっています。グローバル企業から一次サプライヤー、二次サプライヤーとつながる中で、取引先の企業から「環境や社会についてはどうしていますか?」と聞かれる時代が始まっています。少しタイムラグはありますが、地方の非上場企業にもこのような話がやってきます。そしてきちんとしていないと、取引をしてもらえなくなるということになります。

 金沢SDGs「5つの方向性」の冒頭のメッセージに書かれた「今後さまざまな主体とともに、実現に向けた行動計画を策定します」が、夫馬さんから見るととても大事なポイントだと言います。

 行政もESGを測定していかなければならなくなり、地域の自治体向けの指標(ISO37120)もあり、海外では増えてきていますが、日本でこの指標で評価している自治体はまだわずかだそうです。

「金沢がSDGsの行動計画を作っていくときに私から提案をしたいのは数値目標です。現状を数値で評価し、把握して目標を立てる事は非常に大事です」

 機関投資家が運用するお金はどこからきているかというと、実は私たちの年金や保険の掛け金です。機関投資家たちはESGで判断していますが、私たちが声を上げていけば行くほど、機関投資家たちはもっとESGのことを考えるようになり、実際にそれが起こっています。

 

さまざまな主体による連携がますます重要に

 地域は事業者の皆さんに元気がないとどうしても萎んでしまいます。事業者の皆さんが持続的に経営していくためには、いま社会にどんな課題があるのか、環境影響をどう受けるのかということを気にしながら経営をしていくことが大事になってきます。そのために考えて、工夫して、さらにイノベーションを起こしていくということは重要です。

 イノベーションをしたり、新しいことをしたりするにはお金(資本)が必要です。この資本を支えるためには、例えば銀行が地域の皆さんが何にお金を使おうとしているのか、それが長期的なものであればしっかり支えて行こうとするような長い目で見た金融機関の経営も非常に大事になってきます。

 また、市役所が町の課題を数値にしていろいろな方に示してくれると、事業者の人たちにも課題が見えてくるようになってきます。そして、どこに向かっていくのか? 目標を一緒に考えていって欲しいと強調します。

 町の生の声は行政が知らなかったりすることもあり、町の中で活動するNPOの方がよく知っていたりするので、プロジェクトにはそう言ったNPOも巻き込み、町の声をしっかり事業者に届けていくことが求められます。そしてこういう社会の変化にも対応していかないといけないということを伝えてくれれば、事業者にとってNPOは、とても頼りになる存在となります。

「主役は事業者の皆さんで、行政と金融機関、NPOと協働する、これこそ私が実現すればいいなと思っている姿です」と述べて、夫馬さんからのアイデア提供は終了しました。

夫馬さんが今年出版した書籍

ESGもSDGsもこれからは情報公開が大事になる

 お寄せいただいた質問に答えながら、夫馬さん、四十万谷さん、永井の3人のフリートークとなりました。その一部を抜粋してお伝えします。

永井:「ESG投資の理念はわかるが、一個人が行動を起こせるものにはどのようなものがあるか? また、目先のご飯が食べられないと将来の展望は描くことができない。その辺りはどう考えれば良いか?」という質問が寄せられています。

四十万谷さん:野菜の廃棄のことを紹介しましたが、はじめに高い理念があったのではなく、廃棄物の処理費用が一気に値上げするという話があって、この費用を払っていたらご飯が食べられなくなると思って始めました。このように高尚な理論からではなく、目の前のご飯のことを考えて行動したら、いい結果が得られるということは、もしかしたら相当あるのかもしれません。

夫馬さん:環境面、特に資源やエネルギーに関わるものは、コスト削減でやったら環境にも優しくなったということはしばしばあります。ひと昔前の電球をLEDに変えたのがまさしくその良い例。LEDは電気の使用量が減って環境にも優しいですが、多くの人は電気代を下げたくてやっています。

永井:大上段からとてもいいことをすると考えるのではなく、目の前の課題を解決しようとするときっとそこにEかSかGに繋がっていくことになるということですね。
ところで、大企業はディスクロージャーの開示義務がありますが、中小企業などのESGの中身を一般の人が理解するにはどうすれば良いのでしょうか。

夫馬さん:消費者の視点で考えた場合、開示がないのは難しく、まだ時間がかかるかもしれません。上場企業はホームページなどで開示されているものが多く、情報はありますが、それでも見分けられないところはたくさんあります。その会社が今後どういう課題に直面しそうかということを自分で考えてみて、その上でその会社の開示されている情報を見て、本当にやっているかどうかを判断することになります。つまり、それで「自分が説得されたかどうか」が大事です。

永井:企業側の取り組みをESGというか、会社としてのステイタスを上げるための発信という意味で、四十万谷さんは何か心がけていらっしゃることはありますか?

四十万谷さん:私たちの上の世代に多いかもしれませんが、企業がESGとかSDGsの取り組みをしていることをオープンにしようという発想になっていない方もいらっしゃる気がしています。「お客様にはいい品物を届けることが一番」という考えが強く、普段当たり前にやっていることが実は自然のことを考えているなど、それをあえて伝えようとする発想がないのかも。これからは、その情報をお客様に出していくことが必要だということを、それぞれの企業が認識することが大事であり、そのような情報がどんどん出てくれば、買う方も選ぶ材料になります。

夫馬さん:情報を積極的に開示するということはとても大事なこと。知らなければ評価されません。それは消費者からもありますが、銀行からの評価や、行政の方が知ったらもしかしたら応援したいということになったかもしれない、そういう地域には眠っている企業がたくさんあります。開示したことで、たくさんの支持が得られて、事業がやりやすくなったという事例も多くあります。

永井:最後にお二方から、これから日本のESG投資はどうなっていくかについて、一言ずついただいて、今回のSDGsカフェを閉めたいと思います。

四十万谷さん:今回の機会でESG投資と私たち地方中小企業との関わりがすごく見えたような気がしています。世の中がどんどん変わり、環境的にも洪水が頻発したり、いろいろな廃棄物の問題があったり、そして自分たちの生活も影響を受けている中で、「じゃあどこの企業を応援したいか? どこの製品を買いたいか?」というと、やっぱり「そういうことをちゃんと考えている企業の製品を買いたい」という人が一定以上いらっしゃると思います。そういうことを皆さんと一緒に考えて、少しでも次の世代の世の中で、いい企業活動ができるようにやっていけたらなと思っています。

夫馬さん:地域の方はおそらく都会の方より横のつながりが強いのかなと思います。この分野では「協働する」ということは避けて通れません。他の方々と喋る時間を積極的に作っていただけると、いい意味での地域での資金循環ができてくるかなと思っています。

 

 

 

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