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IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ交流会 #8&9(2022年1月27日&2月26日)の開催

金沢市でのSDGs推進に向けて、多くの方のアイディアが集まって完成した金沢ミライシナリオ。その実践に向けて、チャレンジしていることや困りごとを持ち込み、対話を通して新しいプロジェクトを育てていくIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ交流会が、1月と2月に開催されました。本年度も気づけば7回目、通算で9回目の開催となりました。COVID-19の影響もあり、残念ながらオンラインでしたが、感染拡大傾向が収まりましたら、また対面で開催して、アイディアが広がっていくと良いなと思います。

今回の交流会#8&9では、以下の団体の方がピッチプレゼンを行いました。

●交流会#8発表団体
1)一般社団法人PADAYON
「開発途上国の課題」と「地方の課題」を同時に解決するプロジェクトについて
2)E.N.N. Co., Ltd.
空き家・空きビル対策
3)北陸ESD推進コンソーシアム
院内学級の子ども達に体験を!

●交流会#9発表団体
ヴィスト株式会社
生活困窮者の就労支援について

また、交流会#9では、これまでの1年間のパートナーズ交流会活動を振り返り、交流会がより発展するにはどうしたら良いか、議論も行いました。

今回も各団体のユニークで先導的な取り組みについて、深くお話を聞くことが出来、新しいパートナーシップやプロジェクトのきっかけとなるような交流も生まれていました。

各団体からは次のような団体の活動内容やチャレンジしていることをお話いただきました。

一般社団法人PADAYONさんは、社会的投資の手法の1つであるインパクト投資を活用してフィリピンと日本の社会的課題を目指して活動しているソーシャルスタートアップ。団体名のPadayonはフィリピンの現地の言葉で「一緒にやろう」を意味していて、一緒に活動を進める中で「プロセスを楽しめるまちづくり・人づくり」の考え方を大切にしています。

フィリピン出身のご家族とのつながりの中で、フィリピンのミドル世代の働く場所が見つからないという就労問題に直面します。そこで、地元金沢に貢献しつつ、フィリピンの方が能力を発揮できる場が生まれるような共存共栄の社会投資のエコシステム形成を目指すようになりました。そして、SDGs貢献や海外販路拡大、人材不足解消を目指したい金沢の企業と提携して、フィリピンで小規模店向けの貸店舗スペースを投資運営するインパクト投資事業を行い、現地の方に就労と学びの機会を提供するという仕組みを考え、実証を進めています。この仕組みは一つの例で、金沢の企業とフィリピン側の実際のマッチングのあり方は個別にご相談しているとのことでした。投資事業のほかにも食べ物をフィリピンに直接支援する寄付事業も行っているそうです。

E.N.N. Co., Ltd.さんは、建築設計事務所としてのビジネスを核としつつ、空間を見つけ、企画・創造し、空間の使い方を実践して広め、「まち・都市」をつくっていくソーシャルデザインの会社です。金沢でも空き家、空きビルが増え続け、社会課題となっている中で、注意喚起したいとのことで、登壇いただきました。

欧米諸国と比較して、新築住宅市場が著しく優位の日本では、毎年100万戸程度の住宅が新築されています。一方で、人口は増えないため、空き家や空きビルもそのまま横流しで増加している傾向にあります。金沢市では金澤町家といった昭和25年以前に建てられた木造建築物の保全と活用が進められていますが、壊されて毎年少しずつ数が減り、そして、空き家や空きビルも増えて、まちなみが壊れていっています。建物撤去による二酸化炭素排出も懸念されます。問題解決のために、E.N.N. Co., Ltd.さんの「古ビル調査室」と「木造たてもの調査室」では、身近な中古ビルや木造建築物の調査を行うサービスを提供しているそうです。

交流会#8の最後は、北陸ESD推進コンソーシアムさん。北陸ESD推進コンソーシアムさんは、2014年に金沢大学が事務局となって設立されました。SDGsの達成のためにESD(持続可能な開発のための教育)を進めていくことを目的としています。今回は、金沢大学付属病院内学級の子どもたちの院外教育活動についてお話いただきました。

金沢大学付属病院内学級の子どもたちは長期入院を必要としていて、感染症対策などの観点から外へ出ることが出来ない子どもも多い状況です。そのため、野外活動や自然観察など、屋外での活動を通して色々なことに触れて学ぶことが困難でした。しかし、撮影機器や通信機器の性能が上がり、安価に利用できるようになったことから、遠隔地からも天体観望を楽しむことも可能になりました。そこで、北陸ESD推進コンソーシアムさんは、2021年に、金沢市キゴ山ふれあい研修センター星の会と協力のうえ、子どもたちが院内からも楽しめるよう、オンライン天体観望を複数回行いました。今後は、子どもたちのニーズに応えて、天体観望以外にも美術館や博物館見学、社会見学や自然観察にも広げていきたいとのことでした。

交流会#9ではヴィスト株式会社さんがご登壇。「あらゆる人に働く希望を、心豊かなStoryを」を経営理念として、障害がある方など、働きづらさを感じている方への就労支援を行っています。ピッチプレゼンでは生活困窮者等の就労支援について取り組みの内容や課題を共有いただきました。ヴィスト株式会社さんは、金沢市からの委託事業である令和3年度生活困窮者等就労準備支援事業を通して、「生活保護受給者」と「生活困窮者」が日常、社会、そして仕事の場に参加していけるよう促す支援を行ってきました。金沢市には「生活保護受給者」は約4,000人、そして「生活困窮者」はおよそその10倍の人数にのぼるそうで、昨今はCOVID-19の影響で更に増えてきているそうです。

ヴィスト株式会社さんは、支援の1つとして、社会の中で自立して生活していけるよう、対人スキル向上を促し、自己肯定感向上につなげるために就労体験やボランティアの機会を提供しています。しかし、受け入れ先として協力してくれる団体を確保するのが難しい場合もあるそうです。ボランティア実施の際には、活動がスムーズに進むよう、ヴィスト株式会社さんのスタッフも同行するそうで、協力してくださる団体を募集しているとのことでした。

交流会#8と#9でも多様な団体から多様な課題を共有いただきました。金沢市の状況について勉強になるとともに、話題がきっかけとなって新しいアイディアや交流も生まれていました。IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ交流会の場をきっかけに、更にパートナーシップの輪が広がり、新しいプロジェクトが生まれていくと嬉しいです。

【開催報告】SDGsカフェ# 14 もったいないがないまちに向けてエネルギーの「地産地消」を考える

新鮮でおいしいし、地元を応援したいという気持ちもあって、積極的に地元産の野菜を買うという方も多いでしょう。
では、電気はどうでしょうか?

SDGsゴール7では「エネルギーをクリーンにそしてみんなに」という目標が掲げられています。化石燃料由来ではなくて、再生可能エネルギーを選んだ方がよいのはわかっていても、具体的なアクションはなかなか取りにくいものではないでしょうか。

今回は金沢、あるいはもう少しひろげて北陸での地域で使うエネルギーの地産地消について考えます。エネルギーのもったいないがないまち、そして気候変動というグローバル課題に貢献できるまち金沢の実現に向けて、2030年をIMAGINEしてくださったのは、石川で太陽光、風力発電所を市民出資で立ち上げ活動している金沢市民発電所の永原伸一郎さん。
そしておひさま進歩エネルギー株式会社の谷口彰さんから、市民共同発電所の国内外の先進事例をアイデア提供として紹介してくださいました。

金沢で着実に動き始めているSDGs

 まずは国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)の永井事務局長から、今までの13回+番外編1のSDGsカフェの振り返りと、SDGsのおさらいを。

 内閣府SDGs推進本部が2018年からSDGs未来都市認定を開始し、今年は金沢市もSDGs未来都市に認定されました。そして、持続可能な観光を行っていくことがモデル事業に採択されたことを紹介。

 また、IMAGINE KANAZAWA 2030では、金沢ミライシナリオをパートナーシップで実践する、パートナー会員を募集していることもご案内しました。企業、NPOやサークルなどの団体、個人の方などどなたでもご入会いただけますので、ご興味があれば、まずは下記をご覧ください。

IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ

2030年の金沢をIMAGINE
「市民の力で持続可能な社会へ!」〜金沢市民発電所の取り組みから〜

持続可能なエネルギーを市民の手でつくる意義とは

 金沢SDGsには「5つの方向性」があります。その2、「“もったいない”がないまち 環境への負荷を少なくし 資源循環型社会をつくる」が今回のSDGsカフェのテーマとなります。まずは、合同会社金沢市民発電所代表社員の永原伸一郎さんに、どのような活動をしてきたかということと、永原さんが想像する2030年の金沢についてお話をしていただきました。

「市民発電所」とは聞き慣れない言葉かもしれません。地域エネルギーの地産地消と自立を目指し、市民や地域コニュニティが、再生可能エネルギー事業に出資し、建設・運営を行う取り組みのことです。福島原発事故および2012年7月から再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が施行されたことで大きく広がりました。永原さんたちは石川県で最初にこの取り組みをはじめました。

 永原さんは2003年から3年間、金沢まちづくり市民研究機構の環境グループに所属し、2005年には環境グループで、風力発電の割合が世界一のデンマークへ視察に行きました。 デンマークは発電の50%以上が風力で、日によっては100%以上となり、輸出もしている風力大国です。そして特徴的なのは、風車の80%以上が地元の共同組合(つまり地域の人)が所有していること。大企業がほとんどを所有している日本とは全く違っているそうです。

 デンマークでの視察が転機となり、帰国後、メンバーは政策提言だけではなく、実際に自分たちも何かをやりたいと思うようになったそうで、2006年にNPO法人市民環境プロジェクトを設立しました。そして、2010年には北陸初の市民風車「のとりん」をつくることができました。しかし、2006年に建設が決まった翌年に能登半島沖地震が起こり、そのあともリーマンショックがあったり、野鳥の通り道となるので移動を余儀なくされたり、ほかにもいろいろあったそうですが、なんとか完成にこぎつけることができました。建設費約5億円のうちの約3億円を405人の市民出資者でまかなったそうです。

環境と経済を両立させて、持続可能となる市民発電所

「環境に優しいまちづくりには住民の意識の変革が必要だと考えています」と述べる永原さん。市民の手によって発電する“市民風車”という仕組みはすばらしいものだと勉強で学んでいましたが、のとりんによってそのことを実感できたといいます。

 のとりんをつくった当時は、自然エネルギーに対しての意識・関心が低く、出資者もほとんどが県外でした。また、金沢から離れていて、地元・門前町の人とのコミュニケーション不足だったことも課題だと言います。そういった中で、今度は金沢周辺でもぜひやりたいと思うようになったそうです。

 2011年に東日本大震災が発生して、国民の目が変わり、金融機関の見方もガラリと変わり、のとりんへの取材が殺到しました。その翌年には、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が始まり、これにより市民発電所の取り組みにも大きくはずみがつきました。

 2012年度、「保育所等に市民発電所をつくろう」と金沢市環境政策課が行政提案を行い、受諾団体に応募して受諾。そこで、市民出資の太陽光発電事業等を行うために合同会社金沢市民発電所が設立されました。金沢市内の公立を除く全保育園・幼稚園134園に太陽光発電の設置に関するアンケートを送り、81園という高い割合で回答があり、現地見学や園長・理事長と交渉を開始。しかし、アンケートでは好印象だったにもかかわらず、実際に交渉に入るとさまざまな問題が出てきて難航。1年半が経ち諦めかけていたところ、2014年ようやく2つの園に市民発電所をつくることができました。

 翌年、2015年には保育園・幼稚園はもう無理なので、介護福祉施設に設置をしました。この時は2回めでしたので少し余裕ができ、エネルギーの地産地消だけでなく、食の地産地消もやろうということになり、地域環境保全に取り組む農業生産者の地元農産物や加工品が配当として選択できるようになりました。

 さらに2016年にはかほく市民発電所をつくりました。この時は固定価格が27円の時代で採算が悪く、「やるつもりはなかった」と永原さんは振り返ります。しかし、かほく市の元公務員の方から、かほく市にとってもこの上ない取り組みだと熱烈なラブコールを受け、行うことにしたそうです。1口20万円で、100口を募集。契約期間は15年で目標分配利回りは2.0%。農産物での現物分配も選択可とし、さらに、抽選で出資者の中から毎年1人に、ルビーロマン1房をプレゼントしているそうです。さらに、かほく市に通勤・通学・在住の方にかほく市商工会が発行している共通商品券を毎年贈与し、地域経済の循環に弾みをつける取り組みも実施しています。また、地域連携協定を締結して災害時には設置している地域に電力供給を行います。

「市民発電所は地域に役に立つ、親しまれる事が大事だと思います」と永原さん。

家庭では電気の自給自足があたり前となる2030年

 太陽光以外に木質バイオマスにも取り組んでいるといいます。石川県、特に金沢は放棄竹林が増えており、これを地産地消の木質バイオマスのエネルギーとして利用できないか、関係者を集めて策定委員会を開催。竹チップを温浴施設のボイラーで燃やす実験を実施しました。その結果、竹チップと廃材チップの混合比を工夫すれば、既存のボイラーでも問題なく燃焼することが確認できました。この成果は日本エネルギー学会でも発表しているそうです。

 2030年の金沢は、ZEH(ゼロエネルギーハウス)が普及して、災害に強く、環境にやさしいまちになっているのではないかとIMAGINEする永原さん。ZEH(ゼッチ)とは発電量が1次エネルギーよりも多い住宅のことで、電力の自給自足が可能になるといわれているそうです。大規模災害が起こり、停電した場合でも電気の使用が可能で、実際、2018年の北海道胆振東部地震のブラックアウト時も、ZEHに住んでいて停電に気づかなかった人もいたそうです。省エネ性能が高く、太陽光発電を活用するZEHは、温室効果ガスの削減効果がとても大きく、環境負荷を小さくできます。

「私が環境に取り組む最大の目的は地球温暖化防止ですので、これは非常に期待できますし、これから一気に普及するのではないかと思っています」と述べて、発表を締めくくりました。

話題提供
再生可能エネルギーで地産地消 〜地域をエネルギーで豊かに〜

北陸の電気は地産地消率で全国No.1

 全国に約800カ所ある市民共同発電所のうち、その半数を運営しているおひさま進歩エネルギー株式会社の谷口彰さんから話題提供として、市民共同発電所の海外での先進事例や、実際に運営していく上での苦労話なども踏まえつつ、再生可能エネルギーについてお話をしていただきました。谷口さんは、金沢に2年半ほど滞在して、金沢市民発電所の協力をしたこともあり、金沢ともゆかりのある方です。

 まずは全体的な話を。2018年度の国内の自然エネルギーの比率は17.5%となっています。太陽光発電がFITで非常に伸び、大規模水力を抜いています。ただし、太陽光や風力は24時間発電しているものではなく変動します。一方で、バイオマスや地熱、小水力は同じ自然エネルギーでも24時間安定した電気を供給することができるのです。しかし、自然エネルギーの比率が増加しているといっても、石炭やLNG、石油といった化石燃料による発電が全体の4分の3以上を占めているのが実情です。

 続いて北陸の自然エネルギーについて紹介がありました。自然エネルギーの率は全国よりも高く、30%を超えています。その理由は豊富な水資源を利用した水力発電によるものです。再エネ比率は高く、地産地消率も全国トップという北陸の電気は一見エコに思えますが、実はCO2排出も多いそうです。それは全国に比べると石炭火力発電の比率が高いためで、CO2の排出係数を伸してしまっています。石炭からのシフトで、さらに地産地消でエコな電気への転換を考えていく必要がありそうです。

 さらに海外での状況の紹介がありました。世界で自然ネルギーの比率は、電気、交通、熱の3つの用途別の分野に分けてみると、熱分野が半分を占めていることがわかり、その熱の1割にしか自然エネルギーが使われていません。エネルギー全体で見ると自然エネルギーが占める割合はまだ少ないと言えそうです。

 その一方で変動する自然エネルギーの割合が50%を超える国もあります。中にはデンマークのサムソ島のように自然と共生するエネルギーが地域に全て揃い、エネルギー自給率が100%を超えているところも。スウェーデンのルンドエナジーという会社ではバイオマス燃料を中心とした温水による熱供給を行っており、地区の50%に達しているそうです。

「日本にも木質エネルギーなどが豊富にあるため、このようなことを為していけると考えています」と谷口さんは言います。

 再エネ先進諸国の一つ、ドイツの再エネ発電設備への投資主体を見ると、個人が一番多く、その次が農家、さらに中小企業など、8割以上が地域につながる主体であり、実際に伸びている先進諸国の事例を見ると、市民の力が再エネ省エネの裾野を広げるのに必須だということがわかります。

 地域の個人から始まってできた市民共同発電所など、省エネ・再エネに人がどのような動機で協力しているかというと、地域課題解決や地球温暖化防止もありますが、やはり経済効果というのが大きな柱として存在しています。問題解決をするといっても、発電所をつくるためには初期投資が大きく、お金が成り立たないとなかなか難しいという状況があります。

飯田市には市民が出資する発電所があちこちに

 飯田市は長野県南端の市で、年間日照時間約2,000時間という日照時間に恵まれた地域です(全国平均が1,900時間程度、金沢は1,800時間程度)。市民ファンドを使って太陽光を中心としている市民共同発電所が400カ所以上もあります。もともとはNPO法人が寄付を募って市民共同発電所を1カ所つくったときに、飯田市が環境省の「環境と経済の好循環モデル事業」の補助金をとったのがきっかけでした。このモデル事業を地域で実際にやっていくプレイヤーがなかなかおらず、結局、おひさま進歩エネルギーという会社を立ち上げて、この事業の委託を受けることになりました。

 市民出資のおひさまファンドによる太陽光発電事業の仕組みは、地域を中心に全国の人々からおひさま進歩エネルギーが出資を受けて、そのお金をもとに、屋根に太陽光発電パネルを設置していくというもの。発電した電気は保育園や公民館などの施設に直接供給して販売するという、現地供給の事業をモデル化したものです。おひさま進歩エネルギーは電気代で回収して、それを出資者にお返ししています。事業開始からはすでに15年程度経っていて、最初のファンドは昨年、15年間で完済。こういった事業がきちんと回ることを立証しています。このことは、20年の長期契約や22円/kWhの買取契約など、飯田市が前例にとらわれない行政決断をしたことで、事業性が保てて、ファンドも募集することができているのです。

 市民の意思で飯田市を中心に長野県内や全国に設置された太陽光発電所の規模は、419カ所で、9,089.5kW。メガソーラーの場合、1カ所で1MW(1,000kW)とか10MW(10,000kW)の発電をしていますが、これは9MWを400カ所以上に分けて発電していることになります。1カ所平均20kW程度のサイズで設置をしているから、屋根から直接施設に電気を供給でき、非常時ももちろんそれを使うことができるということになります。

 さて、これによって地域経済が実際に活性化できたのでしょうか? 2030年までのおひさま進歩エネルギー事業による地域経済付加価値の累計ポテンシャルの予測を研究した立命館大学等の分析データを見ると、年間17.7億円の経済付加価値が出ているそうです。

 こういったことを1つのステップとして、飯田市では地域住民が主体となって、地縁団体(地域の地区など)がこういった事業をできるようにする「地域環境権」を条例で定め、その事業も行われているそうです。

「地域住民を中心にせず、利益中心で考えると、どうしても地域に害を及ぼしてしまうようなものができてしまいがちです。地域に役立つエネルギーを地域のみんなでつくっていくということ、それを条例等で行政と一緒になってやっていけるのが、非常に大きな一歩になっているのかなと思います。市民の力で、エネルギーを変え、未来を変えていきたいと思っています」と述べて、発表は終了しました。

参加者の質問に答えつつ、盛り上がりをみせたトークセッション

 お二人の発表を受け、永井事務局長がモデレータを務めてトークセッションとなりました(以下敬称略)。

永井:永原さんへお聞きしたいのですが、永原さんは谷口さんが発表してくださった市民発電を金沢で初めてやったということですが、1000世帯相当の発電した電力は北陸電力に売っているという理解でよろしいのでしょうか?

永原:全てを北陸電力に売っています。自分で消費するよりも売ったほうが高く売れるということと、もうひとつは「のとりん」の場合、自家消費に適した安定して大量に電気を使う場所が近くにないためです。

永井:発電と送電を分けて考える必要があると思いますが、おひさま進歩エネルギーの場合、400カ所以上で9MWを発電という話でしたが、これらは基本的に発電した近くの場所で使っているということになりますか?

谷口:そうなりますね。送電網には特別高圧(特高)と、その下の高圧(6600V)や低圧(200V)を送電するのでは全くシステムが異なっていまして、私たちがつくっているのは高圧と低圧の分野であり、それは変電所内の近隣で使われています。

永井:市民発電をした場合、一般電気事業者(北陸電力や中部電力など)との関係はどうなのでしょうか? その辺りの利害関係といいますか、ここが一番エネルギーの政策で難しいところなのではないでしょうか。

永原:私たちのところは非常に発電量が小さいですから、ライバルでもなんでもなく、お互いが売ったり買ったりという、お客様同士の関係となります。

永井:たとえばすべての家がZEHになった場合、電力会社のビジネスモデルはどうなるのでしょうか?

永原:家庭用は3割だけです。産業用の7割については、ゼロエネルギーなどはなかなか難しいので、すべての家がZEHになっても、産業用は残ることになります。

谷口:産業用のところには発電も入るので、家庭それぞれが賄っていければ、発電側の1次エネルギーということでは削減ができ、それは大きいです。

永井:私のオフィスがあるビル(公共施設)にはソーラーパネルが設置されていますが、ここで発電されたものはこのビルの中で消費されています。一方、飯田市の場合は公共施設でもそこで使わないのに発電する場所として20年間貸してくれています。金沢市や石川県ではこのような政策はないのでしょうか?

永原:屋根を貸して発電することを「屋根貸し」といいますが、石川県や県内市町の公共施設で屋根貸し事業をしているところはありません。自然エネルギー普及ということで、学校の屋根などにソーラーパネルは置かれてますけれど。

谷口:おそらく公共施設に置かれているものは自家消費のためのものだと思います。公共施設が付けると通常の単価の2倍以上がかかっています。基本的にそれは補助金でまかなうことになって、補助金でまかなっているものは自家消費となります。

永井:金沢市でも都市部となると、建物の上に建てるという発想がないと、なかなかまとまった発電量にいかないなと思いますが、そういう政策というのは飯田市にはありますが、金沢市にはないということでしょうか?

永原:民間なら自分たちでやっているところはありますが、県内の行政ではそういうのはないですね。ちなみに長野県や新潟県では行政が積極的に屋根貸しをしています。

谷口:屋根を貸してビジネスをさせるということが、行政の政策上はなかなか通らない状況があります。また、行政が自ら自家消費のために投資をするという形となると、初期費用が高くなります。屋根全体につけるような規模になるととても直接には予算化できませんので、そのためにも民間とパートナーシップを組むモデルづくりが必要だと思います。

永井:飯田市の事例で質問が来ています。飯田市ではFITが終了してもこの価格で買い取っていただけるのでしょうか。また、ソーラーパネルの耐用年数が過ぎたものはどうしているのでしょうか?

谷口:飯田市の方はもともと20年間で契約していますが、FITが始まる前からやっている事業につきましてFITは関係ありません。ただ、サイズによっては余剰の買取制度が利用できたりするものも一部あります。FIT前の買取価格というのは当時の電力価格とトントンくらいでしたが、長い目で見た持続可能性というのもありますし、地域経済循環というのも、防災も、CO2削減もあって、行政が判断したということです。飯田市の場合、地域経済循環が柱にあり、その理由としては地理的な環境も大きいと思います。他の都市との交流がなかなかしにくいという中で、経済をきちんと地域の中で潤していくというのが生きる術ともいえます。

 また、20年間経ってもパネルは問題なく使えまして、使えるものであれば無償譲渡してそのまま自家消費の太陽光という形で使っていただくことになっています。もちろん契約終了で撤去を希望される場合は、撤去してどこかに再設置するというモデルも考えています。

永井:パネル自体の寿命はどのくらいでしょうか?

谷口:今は非常に性能も良くなってきていますので、全体的には30年は持つといわれています。

永井:100%石川で生まれた再生可能エネルギーを契約したいのですがどうすればよいでしょうかという参加者からの質問が来ています。

永原:私の知る限り、石川県100%という新電力はないですが、全国ではやっているところはあります。

永井:このウェビナーのテーマである再生可能エネルギーの地産地消を実現するような契約は今すぐにはできないけれども、県外の100%再生可能エネルギーのプランはあるということですね。

谷口:ぜひ永原さんのところがそういう新電力会社になるように皆さんが応援してくださればいいですね。飯田市ではそういう形で、飯田まちづくり電力株式会社という会社を立ち上げています。野菜と同じように再エネでつくられた電気も地域で循環させていこうというもので、送電は中部電力の送配電会社に頼っていますが、つくることと地域で使うことの入口と出口をしっかり回していくことをめざして、進み出しています。

永井:電力会社は送電だけで、売るのはあくまでも飯田まちづくり電力ということで、電気も回り、お金も回るということですね。そして今は石川にはその仕組がないということ。再エネで発電した電気を電力会社に売って、石炭火力で発電された電気とも混ざって、でもちょっと安く供給されているという状況なのですね。

 このような新電力の会社を設立する際、一般電気事業者との関係はどうなりますか?

谷口さん:中部電力の小売の会社とはバッティングしますが、地域課題を解決するために共同してやっていくことがいいという考えを持ち合わせていて、長野県伊那市では中部電力も地域電力として入っています。ただ、出資はするけど運用は地域の会社に任せるという立ち位置をとり、共存共栄の道を双方で模索しているような状況です。

 

締めくくりは、金沢市が抱えている再エネに関する問題を議論

ほかにもごみ発電や太陽光や風力の自然環境などへの影響に関する議論も行いました。

永井:最後に金沢ならではの質問を。金沢市は全国でも唯一市営の水力発電所を持っています。それを民間に売却することになっていて、背景としては赤字のガス事業と一緒に黒字の水力発電事業を民間に売るということですが、反対の意見も多く、私自身も疑問符があります。サスティナビリティという観点から、お二人はこのことについてどう思われますか。

永原:唯一市営の水力発電ということでとても自慢に思っていますし、金沢市民にとっては誇りではないでしょうか。金沢の水力発電は1kW6円ちょっとで売っていますが、10円以上で売っているところもあって、少しでも値上げをすれば大きな黒字になるものを、なんで民間に売るのかなという思いもありますが、経営が誰になっても、水力発電というものをきちっと長く運営してくれることが重要だと思います。目先の利益にとらわれずに、大切に運用してほしいということしかいえないなと思います。

谷口:自治体が水力発電をやっているということは地域の誇りではないかと思っています。そこに地域が持っている地産地消の再エネがあって、それをどういうふうに維持しながら経営していくかというところかと思います。誰が持つかということもありますが、どういう理念でそれを経営していくのかというところも非常に大事だと思っていまして、例えば海外では地域の市民や会社が出資するという動きもあります。日本でもそういった動きというのは少しずつ起ころうとしていますので、ぜひ、そういう地域のものとして経営していけるような動きも取り入れて、進めてもらえたらいいなと思います。ただし、経営が続かなければ持続可能ではありません。市民共同発電所も持続可能にしていくためには、組織自体も持続可能にしていく必要があります。

永井:あっという間に時間が来てしまいました。エネルギーの地産地消というのでは、CO2を出さないという意味の物理的な地産地消、そして経済を回していくという意味の地産地消と、この2つの意味から貴重な事例とお話が聞けたと思います。本日はありがとうございました。

 

【登壇者プロフィール】

永原 伸一郎(ながはら しんいちろう)

(同)金沢市民発電所代表社員、(特非)市民環境プロジェクト副代表理事

1999年に(株)PFU退社、独立。2006年に仲間と一緒にNPO法人市民  環境プロジェクト設立、2013年には金沢市民発電所を設立して代表社員就任。これまで石川県内で市民風車1基と太陽光市民発電所4基の建設に携わる。

 

谷口 彰(たにぐち あきら)

おひさま進歩エネルギー㈱取締役

2004年名古屋大学大学院環境学研究科卒。地域自然エネルギー会社の先駆けであるおひさま進歩エネルギー株式会社の取締役ほか、2つの市民エネルギー会社で役員を務める。『おひさまファンド』などの市民出資事業や全国のエネルギー地産地消モデルの実現に尽力。自社著『みんなの力で自然エネルギーを』、京都大学経済学部の諸富先生監修『エネルギーの世界を変える。22人の仕事』『再生可能エネルギー開発にかかわる関連法規と実務ハンドブック』等で執筆。

セミナーの動画もこちらから試聴いただけます。

【開催報告】地域から考える!! 「SDGs 指標のモニタリングとオープンガバナンス」 〜地域での SDGs実装に向けて、自治体はどう変わるか〜

国連持続可能な開発目標が2015年に採択から6年目を迎え、様々なセクターで目標とターゲット達成に向けた取り組みが実践されています。SDGs169のターゲットのうち65%は自治体の関与がないと達成が難しいと言われるほど、SDGs実践においては、自治体が重要な役割を担っていくことが国連の様々な会議で言及されています。特に1)地域の文脈に即した指標の設定、2)各指標のきめ細かいデータ取得やモニタリングは自治体が市民の参加を得ながら行っていくことが望ましいとされています。これは、「透明性」、「協働」、「参加」をキーワードとして市民が公のデータを使い、現状分析や政策課題の提案を行っていくオープンガバナンスの潮流と合致するもので、むしろSDGsが促す本質的な変化と言えます。

今回、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)はSDGs達成に向けて日頃から密接に議論を行っている金沢市と共催で、「地域から考える!!「SDGs 指標のモニタリングとオープンガバナンス」〜地域での SDGs実装に向けて、自治体はどう変わるか〜」をテーマにウェビナーを開催しました。

山野金沢市長や先日SDGs未来都市に認定された加賀市の山本課長他、2名の専門家にお集まりいただき、SDGs指標の設定やモニタリングを通じて、自治体経営に透明性、市民協働、市民参画が促されるような仕組みを構築するためにはどうすれば良いのか、基調講演とともにパネルディスカッションを通した活発な議論が行われました。

 

各自治体に合わせた達成状況を把握出来る仕組み作りが重要

開催に先立ち、主催を代表してUNU-IAS OUIK事務局長の永井三岐子より開催趣旨の説明がありました。「SDGs達成に向け、地方自治体の取り組みが鍵となる中、2018年にSDGs未来都市の認定が始まり、全国ですでに90以上の都市が認定されています。UNU-IAS OUIKのパートナーの一つである金沢市でもSDGsの実践フェーズに移行し、モニタリングを行なっていく段階となりました。石川県は複数都市でSDGs実践の事例が蓄積しつつあり、その知識を共有しつつ、活発な議論が出来ると嬉しいです。」

 

 

共催の金沢市を代表して、金沢市長・山野之義氏から開催の挨拶をいただきました。「行政においては、日々の業務の中で行政改革や財政改革を進めていく中で結果的にSDGs達成に繋がると思っています。翻って目標や終わりが見えないと現場の職員のモチベーションが持たず、疲労も出てくるので、目標の達成状況を把握出来る環境作りが大切なのではないかと思います。それぞれの自治体に相応しい成果目標が設定され、それに合わせたモニタリングが必要と思いますし、また市民やパートナーにも分かりやすい形で公開され、市民や関係者と常に意思疎通を測りながら、進めていくことが重要と認識しています。」

 

基調講演「ローカルSDGsの推進に向けてー指標を活用したモニタリング実施の意義」

SDGsは日頃の活動の延長線上にある

1つ目の基調講演は、サステイナビリティと地方創生の研究を行なっている法政大学デザイン工学部准教授の川久保俊氏から、「ローカルSDGsの推進に向けてー指標を活用したモニタリング実施の意義」との題で講演いただきました。冒頭、「日本においても産官学民全体でのSDGs達成に向けた取り組みが活発化しています。主体的に取り組むことでメリットを享受出来、逆に取り組んでいないとリスクも発生しうる状況になってきています。一人一人の日頃の行動がすでにSDGsと密着しているので、日頃の活動の延長線上で取り組んでいくのが良いかと思います。SDGsを地球規模課題であると認識しつつ、身近な自分達の街の問題だと認識=ローカライズし、自分達の日常で実践していくことが求められています。」とSDGsを自分ごとにすることの重要性を強調されました。

自治体の体制作りや成功事例共有が望まれている

続いて、ローカルSDGsに関する中央政府と地方自治体の認識について説明いただきました。2016年12月発表の政府の「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」が2019年12月に改定され、自治体はガバナンス手法を確立し、取り組みを的確に測定することが重要と明記されました。優れた事例や知見の情報発信や共有の重要性も唄われ、SDGsが認知の段階からまちづくりの中で実践していく段階へ移行しているとのことです。

他方で、川久保氏は内閣府と共に自治体のSDGs認知と実践状況について調査を続けており、調査結果はSDGs実践段階への移行をデータで裏付けているようです。認知度は2017年から2019年にかけて急速な増加を示す一方、取り組み状況については2019年現在、今後内容を検討する自治体が43.3%と後追いの状況を示しています。また、SDGs推進の課題については、一貫して行政内部での経験や専門性の不足、行政内の体制・リーダーシップ・職務分掌の問題が課題として上げられ、試行錯誤が続いている状況のようです。推進の支援策としては、研究会やウェビナーといった先行事例や成功事例の情報提供や学習の機会が求められています。

ローカル指標を活用してSDGsをまちづくりのプロセスに取り込む

川久保氏はSDGsをまちづくりのプロセスに取り込んでいく上で、街の状況を「見える化」しモニタリングするためのローカルSDGsプラットフォームを開発しています。

川久保氏は健康診断と同様に検査項目として指標を設定し、指標を用いて気づきを得て、次のアクションを検討するというPDCAサイクルをまちづくりのプロセスに導入することの重要性を説いています。その中で「見える化」が鍵となる一方、指標のデータを効率的に集め、運用に負荷がかかりすぎないように留意する必要があると考えています。しかし、SDGsの232のグローバル指標において、日本の自治体がそのまま活用可能な指標は約5%しかなく、読み替えを行うことでやっと約50%の指標が使えることになります。自治体がSDGsの全ての指標を独自に研究して、独自のローカル指標を開発するのは困難です。そこで、川久保氏は、自らの研究を通して、日本独自の指標も追加し、2019年8月に合計202の指標「地方創生SDGsローカル指標リスト」(内閣府)を整備しました。

更には、自治体職員が多忙な中で、ローカル指標リストに対応するデータを定期的に集めることが出来るのか、という課題に対応するため、オンラインのローカルSDGsプラットフォームを立ち上げました。このプラットフォームでは各自治体の指標データや情報を一括して収集出来、またローカル指標毎にデータをビジュアル化して確認することが出来ます。また、各自治体がSDGs達成に向けた課題にどう取り組んでいるのか、課題の克服方法の発見のために、自治体担当者のインタビュー記事など、経験や知見を共有することが出来る仕組みを盛り込んでいます。加えて、各自治体がアカウントを得て、施策やシンポジウムといった取り組みやニュースを独自に発信できる仕組みも整備しました。

市民を巻き込んだ独自のローカル指標の整備へ

最後に、川久保氏は強調します。「ローカルSDGs指標整備の各ステップの中で、このプラットフォームは各関係者にデータに関心を持ってもらう上で役立つものの、より質の高いデータや指標を模索し、各地域の実情を反映したローカルSDGs指標の整備していくステップにおいては、各自治体が自ら市民を巻き込みつつ取り組んでいく必要があります。」

 

基調講演2「テクノロジーによる市民参画 – オープンガバナンスとはなにか-」

2つ目の基調講演は、一般財団法人Code for Kanazawa及びCivic Tech Japan代表理事の福島健一郎氏から、「テクノロジーによる市民参画―オープンガバナンスとはなにかー」と題して、ローカルSDGs実践と指標モニタリングと市民参画のためのオープンガバナンスとシビックテックについてお話いただきました。

 

 

透明性の高く、市民が参画出来る社会の構築

福島氏は、オープンガバナンスとは「透明性の高く、しっかり説明が出来、市民が参画できる政府・自治体作り」と説明します。コロナウィルス感染症対策を例にとると、行政の対策に対して人々の不満や意見がしっかりと届き、行政のアクションが変わったと人々が実感を持てるようになることがオープンガバナンスの成果だと強調します。そして、ローカルSDGsの実践においても、指標のデータ取得やモニタリングについて市民の参画を得ながら進めていくことが望ましいため、透明性の高い行政、市民が参画できる社会の構築が不可欠であり、つまりはオープンガバナンスの構築が重要だと説明します。

では、どうすればオープンガバナンスが達成できるのか。福島氏はすぐに取り組めることの1つは「オープンデータ」だと説明します。「オープンデータとは国・自治体や民間企業が保有するデータのうち、営利非営利関係なく二次利用可能であり、機械判読に適した無償のデータです。オープン化を進めることでオープンガバメント、市民自治(シビックテック)、ビジネス活性化(無償利用)に役立ちます。」そして、SDGsに市民が参画していく流れの中で、市民自治、つまりシビックテックの分野の理解が有用だと続けます。

行政のデジタル化とオープンマインドの養成が重要

福島氏は、シビックテックとは「市民自らが市民が望む社会をテクノロジーを活用して実現すること」と捉えています。シビックテックの良い例として、シビックテック団体g0v他、多くの団体が活動する台湾を例示します。台湾ではコロナウィルス感染症の蔓延下において、g0vがリアルタイムにマスク在庫を「見える化」するサービスを提供していた他、他の団体も市民がテクノロジーを活用して、市民が必要とする形でサービスを提供していました。台湾ではそもそも行政のデジタル化が進んでおり、保険証のICチップ上の購入履歴がオープンデータとして活用され、また情報公開をすぐに決断出来るオープンマインドが形成されていました。

シビックテックの普及には行政のデジタル化を進め、オープンマインドを養っていくことが必要となる中、福島氏は日本でも少しずつ下地は出来つつあると説明します。2013年のシビックテックコミュニティCode for Kanazawa設立を皮切りに、Code for Japanも設立されました。Code for Kanazawaの「5374(ゴミナシ)」といったゴミ廃棄日と分別のためのアプリの開発と全国拡大の他、Code for Japanが東京都からの委託で感染者数の可視化サイトをオープンソースとして開発しています。また、沖縄での事例では2ヶ月で4つのアプリを立ち上げることができ、そのスピード感はシビックテックならではと強調します。

最後に、福島氏は市民と行政が協働で地域を作っていく中でテクノロジーは不可欠と強調しつつ、「自治体は出来る範囲の中でテクノロジーをどれだけ活用出来るか考え、オープンマインドでありつつ、市民の参画も促す必要があります。市民側もITやテクノロジーの技術的な部分を理解し、自ら推進する、コミュニティに参加する、行政との協働に協力する意識が重要。お互いにマインドセットを変えていくことが重要です。」と締めくくられました。

 

事例紹介「加賀市のスマートSDGs」

消滅可能都市からスマートシティ加賀へ

前半の最後は、加賀市より政策戦略部政策推進課長の山本昌幸氏から、2020年にSDGs未来都市に選定された加賀市のスマートSDGsの事例について紹介いただきました。スマートシティを推進する背景について、山本氏はこう説明します。「加賀市は九谷焼や山中漆器等の伝統産業や加賀温泉郷に有名な温泉と観光の都市で、2023年春には加賀温泉駅開業が控えています。他方で、人口減少に起因する人材不足や、合併の影響による多極分散型の都市構造といった課題を抱えています。不名誉ながら2014年5月には「消滅可能性都市」と指摘されました。そのような背景の中で、持続可能性を目指すために先端技術を活用したイノベーション推進を図るスマートシティを目指すことと致しました。」

加賀市は持続可能な加賀市に向けて、「スマートシティへの取り組み」と「加賀市版RE100」を柱に位置付けています。スマートシティを推進するにあたり、加賀市は2019年8月に「スマートシティ推進官民連携協議会」を設立し、市内25団体(産業団体、市民団体)と連携する受け皿を整えました。また3月には「スマートシティ宣言」を発表して市民や外部に取り組みを発信し、クリエーティブでイノベーティブな挑戦可能性都市への変貌を目指しています。

山本氏は、加賀市のスマートシティとは人々の日常の色々な課題に対して技術を活用して解決することで、持続可能性をもたらしていくことと説明します。具体的な事業の例をいくつか説明いただきました。まずはドローンの活用です。物流分野での活用、災害時における空中からの災害現場の確認や緊急物資の搬送、加えて山間部といった人の移動が難しい場所において活用することを想定しているそうです。2つ目にMaaSの活用です。移動をより便利なものにし、移動と商業や観光をデータで繋げることで価値が高まる取り組みを進めています。今年度には実証実験を行う予定だそうです。3つ目にアバターを活用した取り組みです。医療や介護施設でのアバターを通じた面会システムの実現、行政におけるアバターを通した市民相談、社会科見学出来るアバター等の実験的な取り組みを進めていると説明がありました。

また加賀市は、マイナンバーカードと連携した個人認証の基盤作りにも取り組んでいます。市役所外で電子申請が出来る仕組みを作ることで時間を有効活用出来る仕組みを作ろうとしています。加えて加賀市版e-residencyの導入を検討しています。活動の拠点をいくつも持つような人を対象に仮想の加賀市民として認定することで、加賀市に関わりを持つ人を増やし、市の活性化に繋げたいそうです。

最後に、加賀市は加賀市版RE100の取り組みとして脱炭素社会の構築とエネルギーの地産地消を目指しています。市100%出資の株式会社を設立し、再生エネルギー等の電力を公共施設へ供給する事業も推進しているそうです。

加賀市は、RE100への取り組み、スマートシティ推進の取り組みを行うことで、官民協働による自律的な好循環が起こる仕組みを作り、持続可能な街を目指しています。

パネルディスカッション「市民と自治体の関係を変えるSDGsモニタリングの可能性」

基調講演をいただいた川久保氏、福島氏に、UNU IAS-OUIKの高木研究員が加わり、永井事務局長がモデレーターとなり、後半はパネルディスカッションを行いました。

永井:まずは皆様から講演を聞いて感想を伺いたいと思います。

高木:(全体を通して)ローカルSDGs指標はプラットフォーム上で他市と比較出来、また自治体の中での進捗を測定出来ることから画期的だと思います。今後、行政が直面する課題としては、取得出来るデータと出来ないデータがある中で、データ取得の適切な頻度、規模は自治体独自で考えていかないといけません。行政の中でデータ取得が目的化してしまわないよう、活用の視点も忘れないようにしないといけません。また、市民や民間企業の協力を得ないとデータを取得出来ないため、産官学民間の垣根を超える取り組みが必要です。データを取り込んでいく過程で参画者の考え方も変わっていくのではないかと思います。

川久保:(福島氏の話を聞いて)ローカルSDGsプラットフォームは各省庁の統計データを活用している一方、福島さんの市民と共同で作っていこうとする姿勢はSDGsの精神そのものであり感銘を受けました。またテクノロジーを活用しながら負荷を減らして両立させていく点も素晴らしく、SDGsを共通言語として金沢から日本全国へ、そして世界へ発信・展開していける良い事例だと思います。

福島:(川久保氏の話を聞いて)ローカルSDGs指標リストはちゃんと見たことがなかったので、今後、項目を確認して、シビックテックの力で関与できるものを確認するところから始めるのも良いと思いました。ローカルSDGsがいかに大事なのか、グローバル指標の5%しか自治体で活用出来ないと知り、驚愕しました。

永井:自治体の取り組みは包括的だから、自治体はSDGsがこれまでの業務の延長線だと認識し始めています。他方で住民への説明には非常に苦労されています。住民との協働を進めていく上でのヒントは何でしょうか。

福島:シビックテックを通して課題を解決することは、テクノロジーを通して地域の課題を解決していくことと説明をすると納得してもらえることが多いです。シビックテックに取り組んでいる方はもともとSDGsに近い領域に取り組まれていました。そして、なんとなく地域の課題解決に取り組んできた中で、SDGsの枠組みが出来上がってきました。指標に基づいて体系化されると的確に課題解決を迫れます。今後はシビックテックの実践の中で、SDGsについて体系立てた説明をしていきたいと思います。また、自分ごとにしていくという意味で、自分でやりたいと考える人の意思を尊重して進めていきたいと思います。

川久保:まずSDGsは気づきを与えてくれるツールだと考えます。指標に照らし合わせる中で、シビックプライドが養成され、逆に課題も見えてきます。次のステップとしては、気づきや取り組みを発信したくなるはずです。そうすると、共通言語としてのSDGsを橋渡しにして、事例を効果的に発信していくための情報発信ツールにもなり得ます。加えて、SDGsに関心のある人同士を繋ぐコミュニケーションツール、ブランディングツールにもなります。しかし、使い方によって色々なメリットがあり、実際に使い始めてみて気づくことも多いので、まずやってみることが重要だと思います。

永井:住民を巻き込んでいくために、戦略や計画だけでは住民は自分ごとにするのは難しいのではないかと思われます。高木さんが金沢大学と連携して行った取り組みで、住民がSDGsの指標を作り上げた取り組みがあります。経験について伺えないでしょうか。

高木:2019年2月から3月にかけて珠洲市能登SDGsラボで住民とローカル指標を作るワークショップを行いました。SDGsを理解するまでの時間の方が指標を設定するまでより時間がかかり、理解の促進に難しさを感じました。しかし、SDGsのフレームワークに基づいて世界が同じ目標に向かっているという方向性を理解してもらえれば、SDGsは使えるツールだと認識しました。またSDGsは地域や政策を改善するためにも使えるツールであり、そのプロセスを住民と一緒に進めていくことが重要だと考えます。

永井:日本で設定したローカル指標はそもそも国連で認められているものでしょうか。

川久保:SDGsは2030アジェンダがそもそもの根幹で、指標は実施のフォローアップのために存在しているに過ぎません。また各国により事情が異なるので、補完的に新しい指標を提案して策定していくことが推奨されています。今回の内閣府のリストはグローバル指標を補完するものとして提案されており、国連内で正統化するような動きはありません。また、企業や市民が独自に指標を設定している事例もあるよう、自分たちがSDGsにどう貢献していきたいかという観点から指標は設定されていくものと考えています。

永井:金沢市はSDGs未来都市事業を通して取り組みの見える化を進めていくことになります。今日のシンポジウムのテーマは自治体がどう変わるかですが、金沢市にはどう変わって欲しいと思いますか。

福島:金沢市はオープンデータがあり、シビックテックに理解がある都市の一つと考えています。ただ、オープンガバメントを呼び込むために庁内をもっとデジタル化する必要がありますし、どうやって市民参画してもらうか考えていく必要があると思います。またSDGsの枠組みを使う中で、様々な担当課が連携し、ノウハウやリソースを結集しないと、動きが噛み合わないということになりかねません。この機を生かしてこれらの実現を目指して欲しいと思います。

永井:担当課の連携を成し遂げるために何が必要か️、どういったアクションが必要か。SDGs推進室を作る自治体や首長がリーダーシップをとって進める自治体もあります。自治体がオープンガバナンスを進める上でどういう戦略、戦術があるでしょうか。

高木:市民と一緒に指標を作ることでSDGsの達成に繋がるので、まずそれを行うのが最初のステップかと思います。独自指標を作ることは自治体にとって霧の中を進むような作業となるので、まずは既存のローカルSDGsプラットフォームを活用して、自治体間で情報を共有し、協力して進めていくのがいいのではないかと考えます。

川久保:是非、プラットフォームが自治体の進捗や変化に関する情報交換の場になって欲しいと思います。国内でも自治体のボランタリーローカルレビューへの関心も強くなりつつあり、国際的に見ても今後は社会発信していく動きが強まっていくと予測しています。日本の自治体にも是非取り組んでほしいと思います。また追加ですが、指標の概念には、状態量を見るストック指標と変化を見るフロー指標があり、SDGsローカル指標はストック指標を主体に構成されています。住民の努力が目に見え、そして振り返りを行えるようにしていくためにはフロー指標を地域住民と共に作らないといけないと思います。自治体職員は多忙なので、金沢市の場合はOUIKが指標の素案を作って、一緒に進めていく方がいいかもしれないと思います。そうすることで、金沢市はより一層SDGs先進地域として進んでいけるのではないかと考えます。

永井:SDGs達成に向けたアクションの中で、パートナーシップを組んで、市民、企業、行政のマインドセットが変わっていくプロセスを重要視していくことは非常に腹落ちする内容です。プロセスを一緒に進めることが出来ていれば、レジリエントなパートナーシップや組織を達成出来ると思います。しかし、自治体は管理の側面から、指標を設定して達成出来ないときの説明をどうするかという点を不安視しています。定性的な情報を客観視し、対外的に説明していくのは難しいことですが、どのように説明責任を果たしていけば良いと思いますか。

高木:定量的データの取得は原則として重要で、加えて定性的データを合わせて取得し活用していくことが重要です。指標に応じて、どちらが必要かを整理していく必要性があると考えます。

川久保:指標疲れを防ぐために、データ収集から色々な人を巻き込んでいくことが重要と考えます。データ収集は大学に依頼しても良いと思います。海外では、行政の役割は施策を考えること、データを集めるのは知識創造の拠点である大学の仕事と役割分担されていますので、日本でもそれを成し遂げられると良いかと思います。また目標の全部を達成しようとは考えず、出来るところから取り組む姿勢も大切だと考えます。加えて、既存のSDGsの枠組みの外にも視野を広げ、文化、芸術、スポーツ等のカバーしきれていない部分、”Beyond SDGs”を金沢市や加賀市がカバーして進めていくのが日本のプレゼンスの向上にとっても良いと考えます。

永井:最後に高木さんと福島さんから一言ずつコメントをお願い致します。

高木:SDGsは答えを出す性質のものではなく問いだと思います。自治体の方々もSDGsの視点から自分たちで考え続けるというのを大切にしてもらえればと思います。

福島:SDGsの推進に市民参画が重要で、それを持続可能にしていくために技術が使え、そのためにシビックテックを活かすことが出来ます。技術だけで上手くいく訳ではなく、関係者のマインドセットが重要となります。日本でも台湾のように取り組みが進めば面白いのではないかと思います。

 

 

 

【スピーカープロフィール(登壇順)】

 

川久保 俊(かわくぼ しゅん)

法政大学デザイン工学部 准教授

慶應義塾大学理工学部後期博士課程修了。博士(工学)。法政大学デザイン工学部助教、専任講師を経て2017年10月より准教授(現職)。専門は建築/都市のサステナブルデザイン。近年は、持続可能な開発目標SDGsの主流化に関する調査研究を進めており、その成果を取り纏めて出版物「私たちのまちにとってのSDGs-導入のためのガイドライン-」やウェブアプリケーション「ローカルSDGsプラットフォーム」として発信している。主な受賞歴:日本都市計画学会論文奨励賞、日本建築学会奨励賞、山田一宇賞、International Conference on Sustainable Building Best Paper Awardなど。

 

 

福島 健一郎(ふくしま けんいちろう)

一般社団法人コード・フォー・カナザワ 代表理事、一般社団法人シビックテックジャパン 代表理事

2009年4月に金沢でアイパブリッシングをパートナーと創業。テクノロジーを用いた社会課題解決を続けている。 また、地域の課題をITの力で解決するために、2013年5月にCode for Kanazawaを9人で設立。日本で初めてのCode for コミュニティとなった。2014年に一般社団法人化。 Code for Kanazawaが開発した5374(ゴミナシ).jpは全国のコミュニティの手で2018年11月末現在で120都市以上に広がった他、のと・ノット・アローンやHa4goなど多数のアプリ/サービスを輩出。 現在は、シビックテックを国内に広げるための活動にも力を入れているほか、シビックテックを実現するための基盤となるオープンデータやオープンガバメントの推進についても精力的に活動を行っている。

 

 
 

山本 昌幸(やまもと まさゆき)

加賀市政策戦略部政策推進課 課長

1989年に石川県加賀市役所に入庁し、2015年に地域交通対策室長、2016年に教育庶務課長を経て、2019年4月に現在の政策戦略部政策推進課長に至る。加賀市が進める「スマートSDGs」や「スマートシティ加賀」の取り組みが、全庁一丸となって推進されるように、その先導役として、積極的に業務の遂行に取り組んでいる。

 

 

高木 超(たかぎ こすも)

国連大学IAS-OUIK研究員

NPO、民間企業を経て、2012 年から神奈川県大和市の職員として、住民協働、厚木基地対 策、待機児童対策を担当。17 年 9 月に退職後、博士後期課程進学と同時に渡米。ニューヨ ークを拠点として、1 年間にわたり「自治体における SDGs のローカライズ」に関する調査 研究を行う。その間、国連訓練調査研究所(UNITAR)とクレアモント大学院大学が共催す る「SDGs と評価に関するリーダーシップ研修(英語名:Executive Leadership Programme In Evaluation and the SDGs) 」を日本人で初めて修了。ミレニアル世代の若者を中心に SDGs の達 成に向けて取り組む団体、SDGs-SWY の共同代表としても活動するとともに、国内外の自治体のSDGsを幅広く研究。著書に「SDGs x 自治体実践ガイドブック」

 
 

永井 三岐子(ながい みきこ)

国連大学IAS-OUIK事務局長

フランスで民間会社勤務の後、JICA(国際協力機構)専門家としてモンゴルで水資源管理や過放牧の問題、国連大学グローバル環境情報センターで気候変動適に関する研究に従事。JICA-JST日・タイ気候変動適応策プロジェクトコーディネーター、など環境分野の国際協力に携わってきた。2014年から現職。地域にある国連機関の強みを活かし自治体への政策提言などを通じて、SDGsの実践 を石川全域で推進中。金沢市出身。

 

動画もこちらからご視聴いただけます。

【開催報告】SDGsカフェ#13「SDGsカフェ#13 市民全員が庭師になろう! 金沢SDGsをグリーンインフラから考える」

「グリーンインフラ」という言葉をご存知でしょうか?

インフラと聞くとダム、道路などの社会基盤を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、グリーンインフラとは、多機能性という視点から自然を再評価することによって、持続可能な社会形成を目指した土地利用計画を指します。

金沢市は1968年に全国に先駆けて伝統環境保存条例を制定し、その中で市内緑地や用水も保全対象として武家屋敷や寺社群とともに町並みとして残す努力をしてきました。しかし、まちなかに住む人が減り、市民の生活の場であった景観も駐車場やホテルに変わってきています。

新型コロナウイルス感染症によって、金沢の基幹産業のひとつである観光業は大きな痛手を受けています。北陸新幹線の開通以来、すごいスピードで変わっている金沢のまちですが、このような状況である今だからこそ、あらためてグリーンインフラの視点から、現状を見つめ直してみることにしました。

 

SDGsカフェでグリーンインフラを取り上げるのはなぜ?

 

 SDGsカフェは、「2030年の金沢がこうだったらいいな」と誰でもIMAGINEしてもらえる会。そして、それを受け、専門知識を持った方に情報提供していただき、皆さんで議論をするというカジュアルなものです。2019年4月から始まり、教育や気候変動、文化、働き方、スポーツ、公共交通など、多岐にわたるテーマを、さまざまな皆さんと話し合ってきました。

 今日のテーマのグリーンインフラは、金沢にとってもとても重要な考え方で、今年発表した『金沢ミライシナリオ』の中でも、「古くて 新しくて 心地よいまち」をつくっていくにはどうしたらよいかという部分で、「グリーンインフラをつくり、使う」ということを具体的に挙げています。

 今回、グリーンインフラの視点から2030年をIMAGINEしてくれるのは、スペイン・バレンシア地方から来日して11年、日本庭園に魅せられて、京都、金沢と研究対象を広げてきた国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(国連大学IAS OUIK)のファン研究員。金沢の自然、市民の暮らし、歴史が凝縮した、市井にある日本庭園や曲水庭園などの研究を通じて、金沢市のこれまでの緑地の変化、これからのまちのあり方を住民と考える地域に根差した研究を展開しています。2019年には代表著者として『OUIK 生物文化多様性シリーズ#5 金沢の庭園がつなぐ人と自然―持続可能なコモンズへの挑戦―』を執筆しています。

 そしてアイデアを提供してくださるのは、三菱UFJリサーチ&コンサルティング在籍時にグリーンインフラ研究会の立ち上げに参画して、現在は京都産業大学で教鞭を取りながら、国内外のグリーンインフラ事例を幅広くまとめた書籍『決定版!グリーンインフラ』、『実践版!グリーンインフラ』の出版に関わるなど、多彩な活動されているグリーンインフラの専門家、研究家、広報官の西田貴明さんです。

 

金沢市民全員を庭師にすることが夢

 

 フアン研究員はいつも「金沢市民はみんな庭師になったらいい」と言っており、今回はそれをこのカフェのテーマにすることにしました。

 京都で6年間日本庭園の研究を行い、バレンシア工科大学で建築の博士号を取得したフアン研究員。現在は金沢での研究のかたわら、地域の住民と交流しながら、町家暮らしと庭園、茶道を楽しみ、日本家屋と庭園の現状を海外に発信しています。京都の人は周りの森や川の景色からインスピレーションをもらい、日本庭園をつくり、京都は素晴らしいまちになったと述べ、京都で毎日庭園を見ていた、本人いわく“夢のような日々”の話からスタートしました。

金沢の伝統的な生物多様性を維持する日本庭園

 

 里山庭園の例として「武家屋敷 寺島蔵人(てらしまくらんど)邸」の庭園を紹介。戦のことを考え、建材や食料となる果実や野菜などを栽培しながら、美しい日本庭園をつくっています。また、茶室をはじめ、建物のさまざまな場所からこの里山庭園を眺め、心を豊かにしていたそうです。

 続いて、展望台のある庭園の例として「辻家庭園」を紹介。コケや芝、土を寄せて交流の場をつくり、そこから、空と平地を眺めて、心を豊かにして生活していたそうです。

 金沢の曲水(きょくすい)と湧水庭園の例として「兼六園」を紹介。金沢では武士や裕福な町民は、犀川(さいがわ)や浅野川(あさのがわ)の水を庭に取り入れ、庭園の滝や池や小川に水を流して、人の心を癒やしてきました。

 白山山系からの雪解け水は、浅野川と犀川と湧き水になり、市民の重要な生命の源となっています。金沢には水源に応じた2つのタイプの日本庭園があり、それはまちなかにある用水網を使った「用水庭園」と、湧き水を生かした「湧水庭園」です。

 用水庭園の例として、長町にある千田家(せんだけ)庭園を紹介。大野庄(おおのしょう)用水の水を引き込んだ池の中には、メダカやカメなど多くの生きものがいるそうです。湧水庭園の例としては、卯辰山にある心蓮社(しんれんしゃ)庭園を紹介。湧き水が池をつくり、大雨で水が溢れたら排水溝から流れ出し、少なくなったら湧水により満たされます。この豊かな環境には、ホクリクサンショウウオなど貴重な生きものが暮らしているそうです。

 これらの庭園の環境は、多様な生きものだけでなく、工芸の職人や料理人、茶人などの営みにも寄与しています。このように金沢は、庭園があるおかげで生態系学的にも文化的にも多様性に富んだまちになっているということができます。人と人の親密な関係は、自然との親密な関係と調和が取れ、また自然と親密な関係からは人と人の幸せが恵まれるなど、日本庭園から受ける恩恵はたくさんあるそうです。

国連大学IAS OUIKが進める「S.U.Nプロジェクト」とは?

 日本庭園とグリーンインフラを合わせた未来のビジョンである「S.U.Nプロジェクト」というものを国連大学IAS OUIKが主宰しています。S.U.NとはSustainable、Urban、Natureの頭文字をとったもので、新たな自然の創出と、自然環境を保全することを目的に、2019年から研究活動を行っています。

 日本は急激な人口減少に直面しており、これにより空き家の割合が増加しており、現時点でも、金沢のまちなかでは空き家率が8%もあります。この問題を解決する方法を提案するのが本プロジェクトです。これは、IMAGINE KANAZAWAと連携するプロジェクトでもあり、3つのパートからなります。その1つ「S.U.N1」では、町の小さなエリアで日本庭園とグリーンインフラを統合した研究が始まっています。

「まち・ひと・しぜんの100年」と題した1970〜2070年のそれぞれの変化を示すチャートからは、2010年までは家も人も増え続けてきましたが、2010年から人口が減少するに伴い、空き家が増えていく(都市の縮小)のがわかります。一方の自然は、ずっと減少しつづけていて、何もしなければこのままずっと減少し続けると思われます。

 

 そこで、2030年までに駐車場や空き家などのグレーインフラを緑化することがフアン研究員のIMAGINEする金沢の姿であり、そして、その緑を守り続けていくため、「市民全員が庭師になろう」ということを提案しました。

 金沢SDGsの5つの方向性の1番、「自然、歴史、文化に立脚したまちづくりをすすめる」ということや、金沢市が2020年に内閣府から認定された「自治体SDGsモデル事業」の概要の中にも「用水、庭園などによる、水と緑のネットワークづくり」「生物文化多様性の保全・啓発」が具体的に挙げられています。

「『S.U.Nプロジェクト』はこれらの実現にお役に立てるように、調査研究を行っていくつもりです」とフアン研究員は述べて、発表を締めくくりました。

 国連大学IAS OUIKの永井事務局長からは、「フアンさんの研究活動自体が、金沢のまちを知ることができる地元観光にもなるのではないかと思っています」とのコメントがありました。

 

グリーンインフラは市民が主役となって語られることが大切

 

 金沢を緑で一杯にしたいということで、グリーンインフラの出番。西田さんにグリーンインフラとはなにか? そして、グリーンインフラの実践に向けた取り組みについて、話題提供をしていただきました。

「グリーンインフラの概念は、緑をいっぱいつくって人と一緒に活用していくということ。『全員が庭師になろう』と、いろいろな人が参加していくことは大事なポイントだと思います」とフアン研究員のIMAGINEの感想を述べ、まずはグリーンインフラを西田さんが着目するようになった経緯から話が始まりました。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングで10年間、生物多様性と社会経済活動をどう両立していくのかということに関わってきた西田さん。“生物多様性で生きものを守ることを目的に社会をつくっていくことだけではなかなか難しいのではないか? もっと別のアプローチはないのか?”と、仕事をしながら議論していた中でひとつ出てきたのが、グリーンインフラという話だったそうです。

 グリーンインフラとは概念であり、環境を守るということではなく、環境の価値を活用して、地域の活性化や、防災・減災につなげていこうとするのが定義だそうで、“グリーンインフラ=生物多様性を守るではない”と言います。自然の持っている機能を引き出すことによって、経済と社会とをうまく回していくということが目的であり、その結果として自然が豊かになっていく、そういうことを重視した考え方だと述べました。

 具体的にはいろいろなことが考えられているそうです。例えば、雨水貯留機能を備えた植栽帯(小さな貯水施設、防災的な効果も果たせる花壇)も。また、遊水地も生きものの棲みかにしたり、普段は農地にしたり、あるいはイベントの会場にしたりと、いろいろな機能を持たせることもグリーンインフラとして捉えているそうです。

 このようなものを作っていこうというのがグリーンインフラですが、SDGsとの関係でいえば、目標を達成するための手段がグリーンインフラとなります。グリーンインフラへの取り組みにより、複数のSDGsの目標達成に寄与している事例は国土交通省のHPでも取り上げられています。「SDGsが注目されて、具体的に何か行動をしたい時、グリーンインフラを考えてもらえたらいいなと思います」(西田さん)

 

日本でグリーンインフラをなぜ進めるの? その背景とは?

 

 環境だけでなく、後押しとなったもう一つは、人口減少の問題。“国土の担い手がどんどんいなくなっていく中でどうしていくか?” 人口が減っていく中で、インフラの維持コストはどんどん上がっていき、それに対応できるだけの地域的、経済的な余裕も十分でなくなるかもしれません。将来的に社会インフラを現状のままで維持していくのは難しいかもしれないということも背景にあると言います。

 

 また近年、災害リスクがどんどん高まっていることが感じられ、これを今までのインフラだけで守っていけるのでしょうか。さらにリスクの高いものが起こる可能性が高く、今まで行ってきたアプローチだけをやるのではダメだということも背景にあるそうです。

 この20年で環境産業は着実に伸びてきています。グリーンインフラなど自然を活用するという視点がビジネスとして魅力となり、生きものを守ろうということよりも、“自然環境の価値を生かしていくことで社会課題を解決できないのか?”ということが、グリーンインフラを進める推進力として期待できるようになってくるかもしれません。

 

 

多様な機能があって、経済や環境、安全上もいい、グリーンインフラ

 

 都市のなかで一番現実的なのが「分散型の雨水管理の場としてのグリーンインフラの活用」だと思っているという西田さん。通常では遊水地というのは、地面の下に大きな貯留槽をつくり、それで災害リスクを避けるのが主流ですが、そうではなく緑の空間も雨水貯留機能の場として使い、小さなものをたくさんつなげることによって、災害リスクを下げていきます。さらに、そういう緑の空間がまちなかにあふれる環境を生かして地域活性化につなげ、地域の賑わいを取り戻していこうとするそうです。

 先進事例として、アメリカのポートランド市の事例を紹介しました。ここでは、小さな雨水貯水機能の場をたくさんつくったほうが、大きな貯水槽をつくるよりもコストが安かったそうで、さらに、この分散型の植生帯を、みんなで管理したり、みんなで活用したりする仕組みをつくったことが大事だと強調しました。これにより、雨水流出抑制だけでなく、地域の景観が良くなったり、市民が参加して歩く機会が増えたり、人の賑わいが出てきたりしました。その結果、観光客が増えるなどの結果が出てきて、それでお金が入り、それがまた地域に回っていくという好循環ができてきたそうです。「グリーンインフラを都市でやるひとつの理想のモデルが、これではないかと思います」(西田さん)

 

 世界中で今行われているのは、未利用地を緑で再生してみんなで使えるようにしていること。日本にもこれができる余地がたくさんあり、例えば、駐車場や空き家などもうまく活用していくというのが一つ重要なポイントになるといいます。そしてもう一つ大事なことは、分散型の雨水管理をするだけではなく、リスクをきちんと認識していくことだといいます。今、流域治水という概念が注目を集めていて、これは河川だけで災害リスクを抑えるのではなく、あふれた後の対策も含めたリスクをどう捉えるのかということも行っていかないといけないという考え方。リスクとメリットというのを重ね合わせて議論していくことも大事だといいます。

 

 グリーンインフラはこれまでやってきた自然保護や生物多様性保全の延長でもあります。あるべき自然が残されてきて、それをみんなで利用できるような考え方が整備され、よりそれを大事にしながら活用していくという動きが出てきているそうです。

 

「行政の中で、環境や防災の文脈でグリーンインフラをどう使っていこうかという話が出てきていますが、まだまだ限られていますし、これだけでは経済的に回っていかないところもあります。それをどうつなげていくかというキーワードはいろいろ出てきていますが、まだまだ落とし込めていません。どうやったら落とし込めるのか、どうやったら組み込めるのかという話を、いろいろな形で議論していただければと思います」と述べて、話を締めくくりました。

 

質疑応答とディスカッションタイム

 

 残り時間は、たくさんいただいた質問に答えつつ、西田さん、フアン研究員、永井事務局長の3人でディスカッションを行いました。

 

永井:ポートランド市の事例、誰が音頭を取ってこのようなデザインができたのでしょうか?

 

西田:最初は自治体の下水道部局と環境部局の方が始めたそうですが、その人たちだけでできたわけではなく、どんどん活動が広がっていろいろな連携がある中での意見交換から出てきたと聞いています。

 

永井:下水の課題解決をきっかけにこのようになったということですか?

 

西田:内水面氾濫だけでなく、合流式下水道なので大雨の時には汚物が河川に流れてしまい、その水質汚濁が一番の課題だったみたいです。

 新しいものをなにかつくるだけでなく、すでにあるものに実はこういった機能を持っていたんだよということを評価できることも大事です。ファンさんの研究などはまさにそうなのかなと思います。緑地や庭園が防災面でこれだけの効果があるということが明らかになれば、かなり注目を集めることになると思います。

 

永井:ファンさんの庭園の清掃活動は参加してみると楽しいので、いろいろな人が手伝ってくれるようになりましたが、フアンさんはどうしてみんなが関わってくれるようになったと思いますか?

 

フアン:金沢のまちは規模がちょうどよく、人の関係も強いので、庭園清掃活動の協力を募集すると、たくさんの地元の方がご協力してくださいます。金沢のまちのスケールが丁度いいのではないでしょうか。東京や京都だとまちが大きすぎてここまでうまくいったかどうか。

 

永井:質問が来ています。「環境がよくなったら、文化や経済に与えるプラスの影響やメリットについて、金沢での具体的な例があれば知りたい」というもの。フアンさん、グレーインフラをグリーンインフラにしたときに、このまちにどのようなメリットがあると考えますか?

 

フアン:夏のヒートアイランドは経済とも関係がありますが、それが改善できると思います。

 

永井:「デジタル社会との共存も大切になる。効率優先から持続可能な社会への考え方が変わっていくことが重要だと思うが、パネリストの方々はその切り替えがいつ頃から加速するとお考えか?」という質問が届いています。

 私の場合、現在はリモートで家にいますが、家の隣にせせらぎがあり、そこはコミュニティーの人が管理していますが、年配の人が多く、手が回らなくなっていて、私も手入れを手伝ったりするようになりました。グリーンインフラという現場をどう変えるかということもありますが、このように私たちの生活様式をどう変えるかということも大きく関係してくると思っています。そういったところでこの切り替えはいつ頃から加速すると思いますか?

西田:すでに始まっているのではないかと私は思っています。コロナの前の、2018年くらいから大きく変わってきていて、それが今は加速しているような気がします。2010年から2015年ころまではあまり動きが感じられませんでしたが、それ以降は自然とか持続可能性とかの思考が高まっているような気がしています。COP10のころは、理想的というか、倫理的に大事だと言っていたような気がしますが、今は社会的な利益のためにグリーンインフラも必要だし、持続可能なESG投資も大事だし、防災上でも分散型が大事だしと、自然とか持続可能性をきちんと守るということが社会にとってもメリットだということが、SDGsのおかげか広がってきたような印象があります。

 

永井:コロナによって、今まで変えられないと思っていたことが変えられることを知り、それとともに、心の豊かさを考えるようになったということもあると思います。

 フアンさんから、みてグリーンインフラなどをみんなでやっていくムーブメントを推進するためには何がカギになると思いますか? そしてスペインとの違いはどんなふうに感じていますか?

 

フアン:日本とヨーロッパの緑の考え方は違います。ヨーロッパは公園などの緑が多いですが、日本では公園は少なく、家の庭が多いです。ですから、日本では家の中の緑をどう増やすかということを考え、ヨーロッパではまちの中の緑をどう増やすかということを考えます。緑を増やすためには日本人の考え方を変えていかないとできません。

 

永井:「グリーンインフラの防災の機能について、平時から防災について市民に考えてもらう工夫も必要では? そんな事例があれば教えてほしい」という質問が来ています。

 

西田:昔から言われているのは、河川の堤防に桜並木をつくっているのは、普段から堤防などの防災施設の管理を意識してもらうためということ。楽しみと憩いの空間であり、かつ災害がある時に守ってくれる大事な存在だということを意識してもらえます。金沢の用水路も、そのような機能があるということを聞いた気がします。

 

永井:グリーンインフラは多機能だから、「防災訓練は楽しくないけど、ピクニックならば楽しい」など、別の仕掛けによって意識してもらいやすいのかなと思います。

「金沢には農業用水があるが、暗渠(あんきょ)のところも多い。例えば東京の神田川のように起点から終点まで、景色を楽しみながら歩けるまちになって欲しいと考える。そこで行政が土地を強制的に収容することは可能なのか?」という質問があります。

 

フアン:土地を利用することができれば、強制収容するほどのことをしなくていいと思います。持ち主はそのままでも、期間を限ってでも、まずはみんなで管理してすばらしい畑とかコミュニティーの場を作れればいいと考えています。

 

永井:参加いただいた方のコメントを一つ紹介したいと思います。「金沢は地域の生活文化を体験するカタチの観光にとても向いていると思うが、緑を育んで楽しむという観光も実はリピートにつながるのではないだろうか。ひいては持続可能なグリーンインフラにつなげることができそうだと思う。グリーンインフラは観光との親和性もあるかもしれない。そして、日本らしい、金沢らしいグリーンインフラのプロモーションの一つになるのではないだろうか」。

 時間となりました。最後に2人から、グリーンインフラの夢や希望を語ってください。

 

西田:いろいろありますが、まだ始まったばかりですので、これをどうやって広げていくかということに、いろいろ関わっていきたいと思っています。働き方改革やウィズコロナで、より住みやすいまちを作っていく中、グリーンインフラの扱いは、防災とは違う文脈で考えられるべきもの。それをどういうふうに行っていくかについてはまだまだ幅がありますので、さまざまな方とディスカッションしていくことで、よりクリアに見えてくるのではないかと考えています」

 

フアン:金沢市内の研究エリアで、地元の方と一緒になって、将来のために空き家や空き地が再利用できるようになればいいと思っています。

 

「今日、参加してくださった皆さんとは、今後またグリーンインフラの推進、そしてそれを金沢で実施していく時、ご一緒できたらと思っています」と永井事務局長が述べ、今回のSDGsカフェは終了しました。

 

全部通しで見たい、もう一度見たい、という方はコチラからご視聴いただけます。OUIKチャンネルのサブスクライブもよろしくお願いいたします。

IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ 交流会#7(2021年12月18日)の開催

金沢ミライシナリオをパートナーシップで実践するためのプラットフォームであるIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ20211210日現在、170を超える企業、団体、個人が会員登録されています。パートナーズでは、毎月1回、パートナーズ交流会という会員間の対話の場を設けています。会員のみなさんがチャレンジしていることや困っていることを持ち寄り、それを起点にディスカッションを行い、会員間や様々な団体との協働を通した課題の解決と金沢ミライシナリオの実現を目指しています。

先日1218日に2021年度第5回目、合計第7回目となるパートナーズ交流会を金沢市で開催しました。今回は、薬薬連携SDGs KANAZAWA、ツエーゲン金沢、特定非営利活動法人ニットの3団体がピッチプレゼンを行い、課題を共有しました。20人を超える方々が参加しました。

薬薬連携SDGs KANAZAWAさんは、薬剤師など医薬品の使用に関わる方々が集まり、薬薬連携を通したSDGs達成に向けて取り組んでいる団体です。薬局など患者さんの薬を準備する場では、日々、多くのプラスチックゴミが排出されています。多くは包装ゴミで、プラスチックの種類はポリエチレン、ポリプロピレンほか、様々です。世界中でプラスチックゴミが問題になっている中、薬薬連携SDGs KANAZAWAさんでも、職場の状況を省みて、何か解決策がないか検討しています。例えば、ポリエステル繊維などの繊維としてリサイクルし、衣類などに出来ないかと考えています。そして、その売上を途上国支援のために寄付を行えないかと考えています。資源リサイクル分野に詳しい方の協力を得て、プラスチックゴミの問題解決を実現していきたいとのことです。

金沢をホームタウンとするJリーグのサッカークラブツエーゲン金沢さん。Jリーグは、スポーツ文化の醸成を目指すとともに、サッカーを通して地域を豊かにしていくことを理念として掲げています。それを背景に、ツエーゲン金沢さんもシャレン活動(社会連携活動)の強化を進めています。これまではJクラブ側から地域に出て活動する機会が多かったのですが、地域の他の団体にJクラブを使ってもらい、お互いの強みを活かしながら地域に貢献する取り組みを増やそうとしています。例えば、本年は明治安田生命保険相互会社やいしかわフードバンク・ネットとともにフードドライブ活動を行いました。ツエーゲン金沢さんは、地域と人と連携して新しいことがどんどん生み出される挑戦の文化が地域の伝統として根付くことをクラブ理念としています。そういった意味でも、色々な団体の方の地域活動にツエーゲン金沢さんの強みを活用して欲しいと考えています。

最後に、特定非営利活動法人ニットさんから、認知症になっても安心して暮らしていける社会を目指していくうえでの課題や、認知症患者とその支援団体が抱える課題について共有いただきました。特定非営利活動法人ニットさんは認知症患者の暮らしを支えるサービスを提供している組織です。高齢者の認知症有病率が高い中、このまま高齢化社会が進むと、2050年には10人に1人が認知症患者になると予測されています。また、認知症患者は様々なことで生活に不便を感じています。家族構成が変化して独居世帯や高齢者夫婦世帯が増え、またコミュニティの形が変わる中で、これまでと同じ形で家族やコミュニティで支えていく仕組みではうまくいかないことも生まれています。認知症の方も安心できる「持続可能な」社会であるにはどうすれば良いか、お互いに支え合える社会になるためにはどうすれば良いか、考えていく必要があります。

一方で、認知症患者への誤解や偏見も多く、差別的な発言や何気無い発言がご本人や周囲の人の自信を失わせ、暮らしにくさに繋がっていることも課題となっています。また、認知症患者の生活を支える介護保健サービスについても、待遇が悪いことや社会的評価が低いことなどが原因となり、若者を中心に介護職員への成り手が不足しています。仕事観や価値観の転換が必要となっています。特定非営利活動法人ニットさんとしては、これら課題を解決していくためのヒントやアドバイスが欲しいとのことでした。

ピッチプレゼンの後は、3グループに別れてグループディスカッションを行いました。各団体の状況についてより詳しく伺い、そして、解決のためにアイディアを共有したり、議論したりしました。薬薬連携SDGs KANAZAWAさんのグループでは、プラスチックボトルをどうやったら減らせるか、そしてどう有効活用できるか議論し、そして、製薬会社と連携していくことやプラチック繊維をボランティアユニフォームや建築資材、そして市の有料ゴミ袋に活用するなどのアイディアが生まれました。ツエーゲン金沢さんのグループでは、ツエーゲン金沢さんの幅広い活動内容、そして、いろんな場面で連携できるポテンシャルの高さを学ぶことができました。また、プロスポーツは強くないといけない中で、地域と連携が進むことでファンも増え、チーム力強化につながるのではとの意見も上がりました。

特定非営利活動法人ニットさんのグループでは、家族や地域も認知症患者の介護の現場の理解が進んでいない問題があり、その中で取り巻く環境や課題について知ることが出来たことが大きな一歩であったことを確認しました。そして、介護の現場とそれを知りたい若者や社会をどのようにつなぐか、そのニーズを探っていく必要性についても確認できました。各グループともたくさんのアイディアが共有されていました。パートナーズの交流の場から、また新しい連携が生まれて、協働プロジェクトが進み、金沢ミライシナリオの実現に向かっていけると幸いです。

IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズでは会員を随時募集しているほか、交流会でピッチプレゼンしたい企業、団体、個人の方も募集しています。ぜひみなさまのミライを作るアイデアを聞かせてください。

また、IMAGINE KANAZAWA 2030は、金沢独自のSDGsの目標である「金沢ミライシナリオ」と「持続可能な観光振興」の達成度を測る指標の検討を進めています。この度、その指標案をIMAGINE KANAZAWA 2030のHPで公開しました。20211231日まで、金沢市民のみなさまの幅広いご意見を募集していますので、ぜひアイディアのご投稿をお願いいたします。

IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ 交流会#6(2021年11月22日)の開催

金沢ミライシナリオをパートナーシップで実践するためのプラットフォームであるIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ。先日11月22日に2021年度4回目、合計第6回目となるパートナーズ交流会を金沢市内で開催しました。パートナーズ交流会は、毎回参加者が「パートナーズのみなさんと協働で実行したいプロジェクト」や「会員のみなさんと一緒に考えたいテーマ」をピッチプレゼンし、それを話題に参加者間でディスカッションを行います。その中で、会員間が協働して取り組む新しいプロジェクトが生まれ育っていくことを目指しています。

今回の交流会では、最初に、金沢市交通政策課からまちなかの公共交通について情報提供がありました。戦禍を逃れ、昔ながらの区画が残る金沢市では、限られた道路空間を有効活用するために公共交通を活かし、人中心の空間に変えていくことが重要だそうです。また公共交通を活用することで環境負荷も低減することができます。金沢市役所は、本年10月に国土交通省と交通エコロジーモビリティ財団が進めるエコ通勤優良事業所に、県内で3番目に認証されました。健康増進や時間の有効活用のためにも、パートナーズ企業にもエコ通勤に取り組んでもらいたいとのことでした。

続いて、2団体がピッチプレゼンを行いました。一般社団法人HOLAさんからは「DXによるCSVまちづくり」、金沢市企画調整課からは「『金沢ミライシナリオ』の達成度を測る指標について」という内容でお話いただきました。

一般社団法人HOLAさんは、CSV(Creating Shared Value)の考え方を取り入れ、DX(デジタルトランスフォーメーション)によって、環境・人権・子育ての分野などで、まちづくりを推進しようと取り組んでいる団体です。現在は、特にかほく市で、会員の高齢化や会員数の減少などで運営が難しい地域のスポーツクラブの運営をビジネスの観点からサポートしています。HOLAさんは、HOLA公式LINEを通して市民、ビジネス、地域スポーツクラブがつながる場所と情報提供を行い、その収益をスポーツ振興に活用するアイディアを推進しています。HOLA公式LINEでは「はたらく」(採用情報)、「つかう」(お買い得情報)、「はじめる」(参加する、学ぶ、習い事情報)など、スポーツ施設や企業が情報を提供し、ユーザ登録した市民が情報を得られる仕組みになっています。今回は公式LINEやHOLAさんの取り組み全般に関する推進方法や地域スポーツ振興についてアイディアをいただきたいとのことでした。

「IMAGINE KANAZAWA 2030」プロジェクトの事務局でもある金沢市企画調整課からは、現在検討中の「金沢ミライシナリオ」と「持続可能な観光振興」の達成度を測る指標案についてお話がありました。金沢市はこれまで市の独自のSDGs推進策として、金沢SDGs「5つの方向性」を定め、その行動計画である「金沢ミライシナリオ」を定めてきました。また、2020年度の国の「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定され、「金沢市SDGs未来都市計画」を策定し、モデル事業である「市民生活と調和した持続可能な観光振興」を推進しています。ですが、実際にSDGs推進や「持続可能な観光振興」がどれくらい達成できているかを測る指標が存在していませんでした。そんな中、IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議は昨年度から指標案を検討してきましたが、SDGsの推進は、多様な主体で目標を共有しながら進めるものです。今回の交流会では、参加者から「こんな指標があったらいい」や「ミライの金沢はこうなってほしい」など、自分ごとに出来る指標や欠けている視点についてアイディアがほしいということでした。

ピッチプレゼンの後は、2グループに分かれてグループディスカッションが行われ、各発表者への質疑応答やどうしたら後押しできるか、話し合いが行われました。そして、グループディスカッションの後、各グループでの話し合いの内容が参加者みんなに共有されました。HOLAさんのグループでは、公式LINEにどういった情報が掲載されると良いかという議論があり、コロナ禍で不安を抱える子育て世代がつながる機会や情報が掲載されると良いという意見もありました。また、「金沢ミライシナリオ」と「持続可能な観光」の達成指標について話し合うグループでは、子育てセンターの男性利用者が増加してほしい、車に乗らない日を作る、など、多くの意見が集まりました。また、コミュニティのあり方が変わる中で、回覧板のあり方についても活発な議論が行われました。

今回のパートナーズ交流会も多くの方に参加いただきました。新たな繋がりが生まれて、有意義な議論の場になっていますと嬉しいです。IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズでは、交流会でピッチプレゼンしたい企業、団体、個人の方を随時、募集しています。また、パートナーズ会員も募集しています。ぜひ皆様のミライを作るアイデアを聞かせてください。

【開催報告】SDGsカフェ×高校生「これからの学校、学びの在り方とは?」

今回のSDGsカフェは⾦沢市の⾼校⽣が主催するセミナーと連携し、2週連続、オンラインで開催しました。

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)によって、浮き彫りになった学校教育をめぐる課題──これからの学校や学びはどうあるべきなのか? 持続可能な学校や学びとは? そもそも、現在の学校体制の背景には何があるのか? どういった課題があるのか?──高校生や大学生、社会人、教員など多様な人たちが参加し、 “これからの学校”や“学びの在り方”について、グループディスカッションを行い、それぞれがイメージを深めました。

◆第一部「ゼロベースでこれからの学校や学びの在り方について対話しよう」
 7月22日(水)18:30~20:00

◆第二部「他府県・他国ではどう考えているのか?先進事例に触れて対話しよう」
 7月29日(水)18:30~20:00

 

2030年に向けて、学校の在り方はどうする?
最初の話題提供は現役高校生の千代航平さんから

 いままでのSDGsカフェとは違い、今回は特別なもの。高校生のからこのような話し合いをしたいという提案があり、SDGsカフェの場を提供する形で開催しました。千代さんは金沢大学附属高校2年生。今回のSDGsカフェではファシリテーターを務めます。

 まずは話題提供として、千代さんが考えている理想の学校像について紹介がありました。

「いままでは画一的な教育が求められてきましたが、多様性やグローバルな人材、個性を伸ばす教育などが求められているいま、現状のシステムが果たして則しているかどうかということも含めて、これからの学びはどうあるべきだろうと考えようと、今回のこの場を企画しました」(千代さん)

 千代さんは、先生と生徒の対話によって、よりいい学校を作ろうという活動をしているそうで、その活動から、生徒の知らなかった先生らの事情があるということを学んだといいます。そこで、これからの学校というのは先生と生徒がもっとフランクに対話できるようになるべきではないかと思ったのだとか。例えば、行事審議などの職員会議には生徒が出席してもいいのではないか? そのようなことも感じているそうです。

 課題研究は先生から与えられるもので、高校生だけで進められているものではなく、主体的になれない人も多くいるのではないか、そう思っているそうです。そこで、高校生同士が情報共有をし、主体となって課題研究が進められるプラットフォームを構想しているそうです。

 さらに、新たな学校の在り方の一つの方向を示す具体例として、実際に金沢大学附属高校で行われている地域の外部の人を取り込む教育について紹介がありました。これには、生徒にはモチベーションが上がりやすいとか、素直に意見を聞きやすいというメリットがあり、一方、先生からも、生徒を外の世界にふれさせることで刺激を与えられるなどといった前向きな意見があがったそうです。

 

学校が光れば、地域も輝く!
能登高校の魅力化に取り組む木村聡さんからの話題提供

 能登高校魅力化プロジェクトコーディネーターの木村聡さんは、能登町の地域おこし協力隊としてこのプロジェクトに関わっているそうです。

 能登町は過疎化が進んでいて、かつて町内には高校は3校1分校がありましたが、いまは町内に石川県立能登高校の1校しかなく、その1校も廃校の危機を迎えていたそうです。

 町としても高校がない地域に人が残ってくれるか? 移住をしてきてくれるか?という問題に立ち向かうために、町が県立高校を支えていくということで、能登高校魅力化プロジェクトを立ち上げたとのこと。プロジェクトのねらいには、「町内からの進学率を高めて高校の存続と発展を図ること」や、「希望する進路の実現の支援」、「地域の未来に貢献する人材を育てる」、「教育環境を充実させて定住・移住の地として選ばれる町となる」という、4つがあるそうです。

 木村さんが関わっていることは「地域連携・探究学習支援」。将来、地域で活躍する人材を育てたいという思いは、地域にも高校にもありますが、それをどうやって実現したらいいのかという部分で、木村さんがコーディネイターとして高校と地域をつなぐ役割を担っているそうです。「総合的な探究の時間」のサポートを行い、生徒にとって身近な「地域課題」を素材にして課題解決型学習に取り組んだりもしているとのこと。

 社会課題を見つける力を育てるプログラムでは、「SDGsと地域課題とのつながりを学ぶ」と題して、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニットの永井事務局長や、「SDGsと能登、SDGsと企業活動について学ぶ」では能登町でSDGsに取り組んでいる数馬酒造株式会社の数馬嘉一郎さんにも話をしてもらい、生徒にはSDGsの視点から地域の課題や世界の課題を考えてもらうきっかけ作りもしました。このように、木村さんは地域の人たちと高校をつなぐ役割を担っているそうです。今年はコロナ禍の中でもありオンラインで「進路探究学習」の授業を行っているそうです。

「地域学」といわれるものも実施しています。これは能登高生の希望者が参加するもので、地域のことが学べる講座です。ただ地域のことが学べるだけではなく、仕事をするというのはどういうことかや、考えたり表現したりするときに使える技を知ること、あるいはイノベーションを起こすとはどういうことかなど、総合的に学べるようになっているとのこと。

 普段の学校の授業とは全く違い、地域の人も入ってワークショップ形式で進めています。生徒たちからは「実は地域のことはよく知らなかったが、話を聞いてみるとこの町にポテンシャルがあるということがよくわかった」といった声が寄せられているそうです。

「学校の先生たちは多忙だということが現場を見ているとよく分かり、それは小規模校になるとなおさらです。その中で探究学習だ、地域課題だと、先生たちもやらなければいけないこと、学ばなければいけないことがたくさん増えています。

 学校だけでは対応できない問題でもあり、学校のある地域や自治体を巻き込んで、その中でコーディネイターを設置して物事を前に進めていくような仕組みを作るということは、これから先、とても大事なのではないでしょうか」と述べ、話題提供を終えました。

 

理想の学びって? それを実現できる学校って?
グループでの対話が始まりました

 高校生が1名ないし2名ずつ入ったいくつかのグループに分かれ、グループワークを行う「ブレイクアウトセッション」に移りました。

 まずはそれぞれ自己紹介をしつつ、「いままでの人生の中で一番いい学びをしたなと思った瞬間は?」ということについて、それぞれが思いを発言しました。

 セッション終了後の情報共有で紹介された意見を、いくつか紹介します。

  • 自分の興味がある分野に対して、専門的に学べるというのが、いい教育なのではないか
  • 学校から外に出るフィールドワークで、実際に何か外のものにふれて体験することや、田舎の高校生が都会のビジネスマンと交流して、いままで知らなかった生活をしている人たちとふれあう経験、海外に行ってカルチャーショックを受けた経験など、日ごろふれることがないフィールドでの体験がいい学びにつながったことが多かった
  • 子ども会活動に関わり、進学で東京に行ったが、就職は金沢に戻ることにしたのは、その時の経験がすごく影響している。学校以外の経験というのが自分にとっては良かった

──以上のような意見がありました。

 続いて、「これからの理想の学校や学びの在り方について」をテーマに、2回目のブレイクアウトセッションに移りました。いい学びを得るにはどのような学校が理想なのか? 学びというのはどのようなものであったらいいのか?について、引き続きグループで対話をしてもらいました。

 セッション終了後に紹介された意見をいくつか紹介します。

  • 「総合的な探究の時間」について、生徒たちはそれをやる意味をあまり理解できていないという問題があり、まずはそこから解決する必要がある
  • そもそも「理想の学校」という形にはめることがどうなのか?
  • みんなが同じことを学ぶのではなくて、人それぞれの個性を活かすという上では、人それぞれ興味を持つことは違うから、それを伸ばす教育をするべきではないか。生徒が興味を持ったことを後押しするという教育が求められるのではないか
  • 大前提として「楽しい」ということは大事。ただ、「楽しい」以外にもいい学びや理想の学校というのがあるのではないだろうか。それは生徒一人ひとりが自分で選択することができるということであり、例えば夏休みの宿題にしても、するしないも自分で決めて、しないと決めたならどうやって先生を説得するかなど、すべてが学びにつながる。自分が選択したからには自分で責任を持って最後までやらないといけない。このように、生徒が自分で選ぶということがいい学びなのではないか。そして理想の学校とは、より多くの選択肢を生徒に提供できることではないか

──以上のような意見がありました。

 最後に、「どうすれば理想の学校や学びに近づくのか」について、グループで対話をしました。

 セッション終了後に紹介された意見をいくつか紹介します。

  • 大学生が高校生と一緒に「課題解決型学習」(PBL)に入れば、自分が数年後にその立場になる人が教えてくれたほうが親近感も湧くし、教えられているというより、一緒に考えているという感覚になれるのがいい
  • 学校の在り方として、知識的な勉強だけを強要するのではなく、アイデンティティの確立のためのスキルを向上させるべきではないかと思う
  • 何かにトライしたりするとき、心理的な安全がある場所として学校を提供できれば理想的
  • 教科を教える先生とは別に、地域とのつなぎ手となる新たな先生がいれば、理想の学びに近づけていけるのではないだろうか

──以上のような意見がありました。

「今日みたいにSDGsカフェの場を使っていろいろな人とつながっていただき、参加してくださった方もいろいろな意見を出してくださり、ムーブメントにつなげていく場にできたことはとても嬉しかったです」と永井が述べて、第一部が終了しました。

 

一週間後に開催された第二部では、視野を広げつつ、
これからの学校や学びについて考えを深めていきました

 第一部で話し合ったことを思い返しながら1週間を過ごし、第二部の「他府県・他国ではどう考えているのか?先進事例に触れて対話しよう」に臨みました。

 ファシリテーターの千代さんは、実は今年1年、フィンランドに留学する予定があったそうです。しかし、新型コロナウィルス感染症の影響で行けなくなってしまったのだとか。そこで、第二部の話題提供その1として、千代さんが調べていたフィンランドの事例について、発表がありました。

 世界幸福度報告が1位、学習度到達調査PISAが世界トップクラスというこの国ではどのような教育がされているのでしょうか? 調べてみると、フィンランドでは勉強を教える先生とは別に、学校をよりよい環境にするための「チューター・ティーチャー」と呼ばれる先生がいることがわかったそうです。

 

学び方の多様性を創造する
学校と地域を結ぶコーディネイターの
白上昌子さんからの話題提供

 話題提供その2は、ゲストとしてお越しいただいた、白上昌子さんからお話しいただきました。学校と地域とを結ぶ、キャリア教育コーディネイターという肩書で日々活動している白上さん。アメリカの小学校で日本語教師として働いた経験をお持ちで、現在は名古屋市のNPO法人アスクネット顧問、くらしクリエイト代表として活躍しています。

「学び合い育ち合う共同体作り」をミッションとするアスクネットでは、ゲストティーチャーとして社会人を学校に連れてきたり、子どもたちがいろいろな体験を行う場を作ったり、大学生や高校生のインターンシップのプログラムのコーディネーションなども行っているそうです。

 その中でも高校の先生から要望が強い、大学・企業をそれぞれ1日ずつ体験できる「キャリア・ブリッジ」というプログラムを紹介しました。

 これは愛知県教育委員会と連携して、幅広く高校生に呼びかけているもので、昨年は7つの大学から、経営や教育、福祉など、それぞれのコースから学びたいものを高校生が選び、大学とその学んだ分野に関連する企業での体験から、「大学で学んだことが社会でどう生きるか」などを考える機会となります。その後には、大学と企業で学んだことを元に、自分が今後どのような進路を歩んでいきたいかを考え、レポートにして提出するそうです。ぼやっとした自分の将来イメージが、このように直接触れることで明確になってくるのだといいます。

 また、一昨年にエストニアに行った時の話も紹介していただきました。

 エストニアはフィンランドのすぐ近くにあり、旧ソビエトから独立した国。現在は電子国家と言われるほど、ITが進んだ国です。学校には、すべての教科にICTを導入するため、そのアドバイスを行うコーディネイター(ICT支援員)がいて、教科横断型の授業では、先生間のつなぎや、プロジェクトの準備も行っているそうです。

「未来」という科目もあり、過去を学ぶだけの教育ではなく、子どもたちの意識を未来に向けさせるべく、「ドローンを使えば、まちのどんな課題が解決できるのか?」ということを学ぶ実践プログラムも進めているのだとか。

 会社を作るということを学ぶ「起業家教育」もあり、高校では開業から廃業までを経験するのだとか。「一度これを経験すれば、自分も何かやれるかもしれないという気持ちになるのではないか」と白上さんは感じたといいます。

 最後に、SDGsの取り組みにも通じる愛知県立佐屋高校のことを紹介しました。もともとこの地域は白文鳥を飼育するという産業が盛んでしたが、それが衰退してしまい、絶滅の危機に瀕していました。生産農家から地元の農業高校に文鳥を育てるノウハウを学校に移植して、文化・伝統を継続できないかと相談があり、それを受けて、現在では高校で飼育を行い、販売まで手掛けるようになったそうです。

 生産者から相談を受け、孵化ができるようになるまで6年くらいかかりました。その間、いろいろな人たちの思いに寄り添いながら命と向き合い、それが先輩から後輩へと引き継がれていったそうです。

 これから2030年、あるいはもっと先の社会を見据えた時に、SDGsのいちばん大事な「誰一人取り残さない」ということを考えて、「一人ひとりの思いや命に向き合っていくために、どんな学びの在り方や学校の在り方がいいのかということを考えてみては」と述べて、白上さんは話を締めくくりました。

 

これからの理想の学校って? 学びって?
再び、グループによる対話が始まりました

 第一部と同様に、いくつかのグループに分かれるブレイクアウトセッションに移り、「これからの理想の学校や学びというのはどういうものなのだろう」ということを、話し合いました。

 セッション終了後に共有された意見をいくつか紹介します。

  • 前向きな先生もいれば、地域とのつながりを作るのが難しい先生もいるので、コーディネイターという存在は大事かもしれない
  • プロジェクト型学習というのがキーワードとして出ていたが、責任感を持って学べる学校や授業が大事。これからプロジェクト型地域課題の探究の学習が増えてくると思うが、形だけであったり、自分ごとにならないまま、プラン作って終わったりというパターンも散見されるので、そういったことを先生のサポートも含めて考えることができた

──以上のような意見がありました。

 2回目のブレイクアウトセッションでは、より具体的に「どうすれば理想の学校や、学びに近づいていくだろうか」ということをそれぞれの立場から考えて、意見を交わしました。

 セッション終了後に共有された意見をいくつか紹介します。

  • 語りやすいのは成功事例。しかしそれはあらゆる条件が揃って成し遂げられたことであって、紹介しても別の場所に持っていったときにその条件が全部揃うかということも考えて語ったほうがいいのではないか。逆に失敗例を語ってもらったほうが、その失敗理由を追求していくことができるので、たくさんの成功事例を並べるよりも失敗例を挙げていったほうがいいのではないか
  • 地域課題と地域を結びつける以前に、生徒と学校が結びついていないから、もっと生徒の声を引き上げられる学校にちゃんとなってほしい
  • 理想の学校として話に出たのは、まず1つ目は自分の将来がどんなふうになるのかと描ける教育。2つ目が自分のしたいことや教科以外のことも調べられること。その理想に近づくためには、まずは生徒の意見を先生に直接伝えられる環境があること。そして、学校と地域とか外部との連携も大事。地域住民と学校が協力していたほうが、自分の将来を描きやすい。生徒の意見を先生ではない大人が直接評価してくれるという点でいい。もうひとつ、家庭環境も大事。家庭の中でニュースを見ながら親と意見を交わしたり、いろいろな職業について話すなど、親と話すことで自分の将来に目標が持てたり夢ができたりすることがある。さらに、親の反対によって学校が動くことも無きにしもあらずであり、そういう意味でも、親は大事ではないか

──以上のような意見がありました。

 さらに、学校にどう関わっていくか、学びをどうしていけばいいのかということをもう少し具体的に考えたり、あるいはいまの話をより深めてもらったりしながら、理想の学校や学びの姿を考えてもらうため、最後のブレイクアウトセッションに移りました。

 セッション終了後に共有された意見をいくつか紹介します。

  • 東京などの都会だと自分がやりたいことのコミュニティーがすぐに見つかったりするが、地方ではそれがなかなか見つからないということを話したら、東京に縁のある方から、東京はやりたいことは見つかるが、あまりにもいろいろなものがありすぎて、一つに没頭するということは地方の方がやりやすいのではないかという意見があった。いまはコロナの影響で自分のやりたいことをどこでやるのかということの価値観も変わり、自分たちはいままさにそういう過渡期にいることを感じている
  • 日本の形にはめた教育では、教育自体にみんなが興味を持たない。なんのために勉強をしているのかがわからない。海外の事例で、一週間の題材を決めてそれについていろいろな教科の観点から学んでいくというのがあることを聞いたが、何について学ぶのかという目的を定めた上で、さまざまな教科の視点から一つの題材をみるほうが、興味を持つのではないかと思う
  • コロナウィルスの影響で休校が続いたが、その時の教育格差というのをどうしたら最小限にできるかというのを話し合った。オンラインと動画配信とどっちが有効かという話になったが、結局、受けようと思えば受けることができる環境を作ることが大切だと思う
  • 学校とは人生の目標を叶える場所だと思っている。ただ、進学や就職が目標となってしまい、その目標を最優先するあまり、教科の勉強ばかりに時間が割かれてしまって、地域の問題を見る時間や自分の本当に好きなものを見つけるための時間というのがなくなってしまっている。進学や就職といった短期的なものではなく、人生の長期的な目標がないと、学生の頃から能動的に学ぶというのは難しい。学びの視野が広くなるようなシステムがあればいいと思っていたが、白上さんの話を聞いて、そのような動きが自分の住む地域でもたくさんできればいいなと思った

──以上のような意見がありました。

「2週にわたり、トータルで3時間ほどの対話を行いましたが、この短時間で答えが出る問題ではありませんし、これからもっと考えていかないといけない問題かと思います。対話が深まっていく中で、いろいろな意見や思いが現れてきました。これをうまくまとめていったり、引き続き考えていったりすることが、これから必要になってくると感じています。そして、これからもつなげていきたいと考えています」と千代さんが述べて、2回にわたったSDGsカフェは終了しました。

 千代さんやお二人のゲストから紹介があった事例や、多くの参加者が口にしていたことは、“学校の外部の人間が学校に関わることの大切さ”でした。

 金沢SDGsでは、さまざまな市民に集まっていただき、『金沢ミライシナリオ』を作っており、5つの方向性の3番目に「子どもが夢を描けるまち」を挙げています(詳細はこちら)。そのミライシナリオの中にも「いろいろな先生に教えてほしい! NPOなど学外の人材を活用する仕組みを作ろう」というものがあります。

 自分たちよりも少し年上の大学生や、あるいは企業でバリバリに働いている社会人、人生経験が豊富なシニアなどから、学校で聞くことができない話に接することで、いろいろな刺激が与えられ、子どもたちの将来の夢が一歩も二歩も前進する可能性は大いにあります。

 子どもたちが描いた夢を実現するための学校や学び。それが理想の形かどうかはさておき、学校と地域社会のパートナーシップによって、学校も学びの在り方も良い方向へ向かうことはいろいろあるのではないかと感じました。

 

 

【今回のイベントのスピーカープロフィール(登壇順)】

千代航平(せんだいこうへい)

金沢大学附属高校2年

長い休校期間を経て、問い直されつつある、学校行事や、学校、学びそのものの在り方。 今回、様々な人と、様々な視点から、深い対話ができることを楽しみにしている。 1年時では、平和町商店街の活性化、また、現在は、高校生主体の探究活動を行えるプラットフォームの構想や、新たな行事の企画を考え中!問いを持ち続け、毎日歩みを止めないように行動し続けている。

 

木村聡(きむらさとし)

能登高校魅力化プロジェクト コーディネーター

慶應義塾大学商学部卒。卒業後は日本ガイシ(株)入社。2005年からベネッセコーポレーション。進研ゼミ中学講座の業績管理業務を担当したのち、ベネッセ教育総合研究所の研究員に。退職後、2018年に石川県能登町にIターン。現在は能登町が町内唯一となった能登高校の存続と発展に取り組む高校魅力化プロジェクトのコーディネーターとして、地域探究授業のサポートやふるさとを見つめ直す地域学など、教育と地域をつなぐプログラムを仕掛けているほか、Rakuten IT school Nextや地域みらい留学365(高校2年次での国内留学)の誘致といった新しい学びの機会提供にも尽力している。また、石川県穴水町岩車地区で農漁業・田舎体験プログラムを主催するNPO法人「田舎時間」代表も務める。

 

白上昌子(しらかみまさこ)

くらしクリエイト代表・NPO法人アスクネット顧問

大学卒業後、アメリカの小学校で日本語教師として働く。帰国後保険会社に勤務し、2006年NPO法人アスクネット入職。教育CSR担当として、トヨタ自動車、アイシン精機など企業の出前講座を手掛ける。2009年代表理事就任。小学生から大学生までを対象としたキャリア教育を推進。2010年高校生を対象とした公募型インターンシップの仕組みを行政と連携してつくる。また、2015年より生活困窮家庭向けの学習支援教室を開始し、教育と福祉の連携に努める。2019年5月に代表理事を退任。現在は「くらしクリエイト」という屋号で研修講師等を務める。文部科学省消費者教育委員会委員。愛知県まち・ひと・しごと創生総合戦略会議専門委員。名古屋市教育委員会事務点検評価委員。

【開催報告】SDGsカフェ#12「〜with コロナ時代だから考えたい〜 ESG投資が金沢に根付くには!?」

新型コロナウイルス感染症の流行が、少しずつ落ち着きを見せ始め、さまざまな業種でコロナ前の数字に戻すことが最優先課題となりつつあります。
一方で、「環境にも良い働き方」など、コロナ禍で芽生えた「新しい価値観」や「社会変革の芽」は失いたくないと感じている方も多いでしょう。

自然や環境、働く人々を取り巻く社会課題などの解決と、持続可能な経済発展──その両方を実現させるキーワードが「ESG投資」という言葉です。最近、SDGsとともによく見聞きするようになってきましたが、まだまだ地方に暮らす私たちにとっては遠い存在だと思っていませんか?

実は意外と身近なところで、ESG投資の考え方が生かされていたり、あるいは知らないうちにESG投資と密接な関係があったりします。2030年に向けて、当たり前となっている必要があると考えられるESG投資について、社会変革への機運が高まりつつある今、地方からできることを考えてみました。

老舗六代目とESGのスペシャリストの話に耳を傾けてみましょう

 今回2030年の金沢をIMAGINEしてくださったのは、金沢にある伝統発酵食品の老舗・株式会社四十萬谷本舗(しじまやほんぽ)の六代目・専務取締役の四十万谷正和さんです。
 そして、アイデアを提供してくださったのが、サステナビリティ経営・ESG投資アドバイザリーの会社である株式会社ニューラル代表取締役CEOの夫馬賢治さんです。

 最初にここ最近のトピックスとして、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)の永井事務局長から、6月にIMAGINE KANAZAWA 2030推進会議が設置された報告がありました(詳細は下記をご覧ください)。

「第1回IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議」開催

 

今までESGやSDGsとはあまり関係ないと思っていた
四十万谷さんがイマジンする2030年

 四十萬谷本舗は明治8年(1875年)創業の老舗発酵食品の店。その後継者となる四十万谷さん(36歳)は、大学卒業の後、大手食品メーカーで約11年間、主に人事関係の仕事を行い、2017年に家業を継ぐべく金沢に戻ってきました。

 まずは四十萬谷本舗の主力商品であるかぶら寿しや大根寿しを紹介。
 コロナの影響によって家庭で食事を摂る機会が増え、このような発酵食品を求めてくれるお客さんが増えたそうです。明治時代の商家造りの本店は見応えがあり、「コロナが落ち着いたらぜひ遊びにいらしてください」と誘います。

 さて、今回のSDGsカフェの話が舞い込んだ時、最初は「地域にある中小の伝統企業とSDGsの関係がピンとこなかった」という四十万谷さん。しかし改めて金沢SDGsを見直してみたら、自分たちの日々の活動と関わっていることが多いのに気がついたそうです。発表では、金沢SDGsの5つのテーマに沿って、四十万谷さんたちの日々の活動との関わりについて考えていただきました。

*金沢SDGsの「5つの方向性」の紹介はこちらをご覧ください。

「自然、歴史、文化に立脚したまちづくり」から考えてみる

 歴史とか文化に関わることが多い、伝統的であって特徴のある発酵食品をたくさん作っていますが、実は「特に若い世代にその価値を伝えられていないのでないか?」という悩みがあるそうです。

「全国各地で伝統的なものを引き継ごうと思っている方は、皆さん同じことを考えていると思いますが、昔からある伝統的なものを作って、『これは大事なものなのです。だから残してください!』とお願いしたところで、お客さんが『やばい、これ残さなくちゃ!』というふうにはほとんどなりません。今の時代には、こんないいことがあるよとか、これ食べたらこんなにおいしいよという、 “いいね!”と思ってもらうことが重要で、そう思われれば残っていけると考えています。どうすればいいねと思ってもらえるか、それを大事にしたいです」

 そのために、若い世代に糀や発酵食の良さを伝えるワークショップを開催したり、健康経営を推進されている方たちと組んで発酵の価値を届けるようなことをやったりと、“発酵食のいいね!”を知ってもらうために、多様な取り組みを行っています。コロナ禍もあって、現在はオンラインで「みんなで漬けよう!オンライン糀漬け体験」というワークショップも開催しており、これがかえって今までかぶら寿しとか大根寿しとかにあまり興味がなかった方々にも触れていただく好機になっているそうです。

「環境への負荷を少なくし資源循環型社会を」目指す

「大きなテーマなので、最初は私たちと関係あるのかと思いましたが、3年ほど前に入社して以来、感じていたことに気がつきました。それは、物づくりの段階で廃棄している部分がすごくたくさんあることです」

 かぶら寿しとは贅沢な食べ物なので、丸いかぶの真ん中しか使わず、形を整えるためにかぶからはみ出した鰤をカットしますが、それも廃棄されるものもあるのだとか。

「もったいないし、せつないという思いがあります。これをなんとかできないかということは、実は私の父もずっと思っていたそうです」

 現在、石川県立大学の学生さんにプロジェクト型のインターンに参加してもらい、使われなかった材料を生かした製品開発をするプロジェクトを始動させたそうです。

 また、使うことができない野菜のくずは、自社で機械を導入し、圧縮して肥料に回すことを始めました。四十萬谷本舗には自社農園があり、かぶに関して年間で30トンくらいを廃棄していましたが、全てを肥料にして畑に戻し、かぶの廃棄はゼロになったそうです。

「小さなスケールですけど、自社農園の中で循環しています。廃棄の費用もかからない上、畑の肥料にもなるので、とても良い結果が出せました」

 一方で、地方の中小企業でも、地球規模の環境変化の影響を受けることは多いと言います。

「一番大きいのは原材料、昔から使っている原材料の中には、イカやニシンなど、今後入手が困難となりそうなものが結構出てきています。気候が変わってくると取れる作物なども変わってくるので、私たちにとっては大問題です」

 さらには、かぶは自社農園と契約農家さんに作ってもらっているそうですが、就農者の高齢化が進み、5年後、10年後まで続けるのはしんどいという声も上がっているそうです。作り手の方々が一緒に発展していける関係にあるのか、若い方が一緒にやってくれる環境にあるのかということも非常に大事だと述べました。

 

「次世代を担う子供達の可能性を引き出す環境」を作る

 子どもたちにこの土地の文化とか発酵食の魅力を伝えていき、そこから何かを感じ取ってもらえたらと考えて、「親子で糠床教室」や「自社農園でかぶ収穫体験」などを、続けていると言います(「誰もが生涯にわたって学び活躍できる社会風土をつくる」について、今回は触れませんでした)。

「文化や産業に革新的イノベーションが起きる仕組み」も始動

 今年に入って、四十万谷さんと同じ30代の大都市圏の方に、副業として四十萬谷本舗に関わってもらい、課題を解決しようという取り組みをやっているそうです。
 四十万谷さんは夫婦で6代目を継ぐべく金沢にやってきましたが、お二人ともが人事の仕事をしていた関係で、マーケティングの肌感覚もわからないし、テクノロジーが今どうなっているのかも、法務と言われても・・・と、わからないことが多く、悩みを抱えていたそうです。

「家業に入り、日々現場のことをやっていると、発想が現在までの延長線上の改善に偏ってしまいます(知の深化)。それもすごく大事ではありますが、新しい、別の発想を得てきてイノベーションを起こすこと(知の探索)がなかなかできないということがありました」

 前職を含め、さまざまな方々とお会いする中から、都市の大企業で働きながら、“自分の力とか知見で地域を良くすることに貢献したい”という、純粋で熱い思いを持っている人がたくさんいることを実感。そういう人たちと一緒にやりたいと考えて始めたそうです。

「私たちはもちろん、彼らも得るものがいろいろあると言います。私たちは小さい企業なので、こういう専門的な方にフルタイムで来ていただくのは難しいですが、このような形で一緒にやれているのがありがたいなと思っています」

 これは、四十萬谷本舗に限ったことではなく、都市の人たちと地域の自分たちの関わり方が変わっていくことで、どちらも元気になっていくのではないかと感じているそうです。

 地域との関わりが強く、その思いが強くなれば定住・移住となり、これが増えることが望まれますが、それは限定的なこと。四十万谷さんたちがいま行っているのは、地域企業と協働しながらいろいろな人と触れ合い、関係するということで、地域の人は彼らから知見を得て、いまある地域の価値をどんどんブーストしていくことができます。一方の彼らもこの経験をもとに、人との繋がりとか、何かの成長につなげていくことができたりすると言います。

「こういう動きが、この地域に広がっていったらいいなと思っています。ここから新しい発想やイノベーションができたらいいですね」

 

2030年の金沢の姿。こうなるといいなをIMAGINE

 四十万谷さんは、次の3つを挙げました。

①地域内、地域外のつながりと協働がもっと進んでいると、個人的には元気になるなと思っている

②金沢の生活に息づく文化の魅力を私たちが発信できている

 意外と地元のものづくりを知らず、地元の伝統を体験することもあまりやってこなかったということを、今回のコロナ禍で気がついたそうで、まずは地元のことを知って、消費して、体感し、それを来るべきもっと移動が盛んになった時に、発信できればいいと考えているそうです。

③各事業に関わる方々が持続的に発展できていると言うこと

 最後に、ESG要素と地域中小企業との関係についても整理してくれました。

①地域の中小企業ほど、大きな影響を受ける

 ESGやSDGsとの関わりを考えた時、最初は地域の中小企業にはあまり関係がないと思ったそうですが、材料の話、物づくりの話などはダイレクトに影響を受けることを認識。ちゃんと文化を価値あるものとして伝えていけるか、今まで通りの原料で作れるか、影響は大きいと述べました。

②お客様から選ばれるための基準として・・・

 お客様がどこから物を買いたいかと言うと、環境とか社会とかガバナンスもしっかりしているところから買いたいという思いがあると述べました。

③多様な人材から選ばれるための基準として・・・

 一緒に働く先としてもESGのことをちゃんとしているところが選ばれて、一緒にやっていきたいと思ってもらえるのではないかと述べました。

 

ESGの本も出し、その流れをずっとウォッチしてきた
夫馬さんからアイデア提供

 東京からのリモート参加で、「本当は金沢に行きたかった!」と言う夫馬さんからは、「ESGと金沢」についてお話しいただきました。
 夫馬さんによると、ESGの話と地域の話は非常に密接な関係があるそうです。

 まずは、ESGについておさらい。
 Environmental(環境)、Social(社会)、Governance(統治、あるいは経営)。この3つについて投資家が着目し始めていることから、ESGという言葉が登場したそうです。

 また、ESGはSDGsと密接な関係があると言います。SDGsは「持続可能な開発目標」と言いますが、裏を返せば、実は今は持続可能ではなく、持続可能にしなくてはいけないということになります。これは発展途上国だけの話ではなく、ある専門機関がSDGsの17あるゴールの毎年の達成状況を調べているそうですが、例えば日本なら、4段階の評価で一番高い評価を得られているものは3つしかなく、逆に一番低い評価のものが5個もあるそうです。
 つまりは日本も持続可能ではなく、持続可能にしていくためにはやらなければいけないことは山ほどあるということです。その中には企業が変わっていかないといけないこともたくさんあって、そこに着目しているのがESGということになります。

「世の中が持続可能であれば、投資家が企業を見るときにESGに着目することはなかったはずで、実はもう持続可能でなくなっていて、さらに今の企業のあり方すら持続可能ではない(つまり倒産するかもしれない)という危機感を持っているので、このESGが重視されています」

 ところで、このコロナ禍でESG投資はどう変化したのでしょうか? 一時期メディアからはSDGsという言葉が聞かれなくなり、多くの方がESG投資も減っているのではないかと思われています。しかし、日本ではわずかしか増えていませんが、海外では、2割、3割増と大幅に伸びているそうです。

 

機関投資家が上場企業でチェックしているESGの観点は多様

 二酸化炭素の排出量や水の問題、廃棄物など、環境(E)の方はわかりやすいですが、社会(S)のテーマは非常に多様だと言います。社会の中でいま一番ホットなテーマは、「人的資源」、つまり労働者だといい、社会といっても会社の中にある社会、つまり労働者の方々の評価というものが一番大きなウエイトを占めていると言います。

 ガバナンス(G)のところでは、取締役会にどういう専門家がいるか、また取締役会の人はどういう評価制度で評価されているのかというのもあるそうです。

 多岐にわたるこれらをチェックして、点数がつけられます。これがいまのESG投資と呼ばれる世界。全て定量評価になっているため、上場企業はその辺りの情報開示をしないと点が上がりません。中身のないことを言っても当然評価されず、かなりシビアな評価がされているようです。

 気候変動がもたらす変化により、日本の農林水産関係での被害額も右肩上がりで増加しています。世界的にみると自然災害による保険損害額は大幅に増えていて、東日本大震災クラス以上の被害が世界では毎年のように発生しています。この損害を止めなければいけないという深刻な状況になっているのです。

 

機関投資家がESGを重視する理由

 このような中でESGを重視する機関投資家(公的年金、企業年金、保険などの大口投資家)たちは、何を大事にするか──。やはりCO2を減らさないといけないということで、投資家自身が各国の政府に対し、「もっと削減をさせるような法制度を入れなさい」と指導をしています。こんなに自然災害ばかりでは企業経営がままならなくなり、投資家たちはそうすると自分たちの投資の値段が下がってしまうために、自らが環境規制を強化しようという動きになっているとのこと。例えばプラスチックの消費を減らそうというのも、このような投資家からの強いメッセージが影響しているそうです。

 食品廃棄物を減らすという動きも同様。また、廃棄物から飼料を作ろうという流れがあり、そうすれば飼料の主原料となる大豆の生産を抑えることができます。実はその大豆を育てる農地を作るために、多くの熱帯雨林が破壊されています。アマゾンなどの熱帯雨林を守るために、投資家たちは強く迫り、企業側も自主的に取引条件に課すようになっていて、きちんとしていない原料メーカーからは買いたくないという動きが海外では強くなっていて、日本でも一部の大手小売業者などが取り組み始めています。

これから生産年齢人口が一気に減少する金沢

 金沢の社会のSの話。生産年齢人口の話はとても重要です。すでに高齢者は急激に増えつつありますが、いよいよ本格的な人口減少が始まります。生産年齢人口が一気に減少していくというのが、これから金沢市が迎える世界。その中で経営をしていかないといけませんし、地域社会も支えていかないといけないということになります。

 金沢は大都市なのでまだましで、日本の将来の人口では2100年には明治維新の頃に逆戻りになると言われています。未曾有の人口減少社会をどう乗り切るか? 労働力不足はますます激しくなります。この10年間、女性の活躍ということで、かなりの人手を確保してきたことは事実ですが、まだまだ女性にとっては働きづらい社会。これからますます人が減る中で女性が働きづらいままだと、女性が実力を出せなくなってしまうでしょう。

 さらにもう一つ。この人口減少を乗り切るために、外国人に頼るというのもあります。石川県もこの数年で急激に外国人が増えています。
 しかし、厚生労働省が全国の外国人技能実習生という制度を使っている企業の監督指導を行ったら、70%の労働基準関係法令違反があったそうです。このままでは外国の方も来てもらえるか? 難しい状況にあるのではと夫馬さんは危惧します。

実はESG投資はとっても身近な話だった

 株式や社債という形で上場企業や大きな銀行に投資している機関投資家はいま、ESGの観点から投資の判断をしています。この話だけでは、地域の方からは少し遠い話だと思われるかもしれませんが、機関投資家は金沢市の地方債の投資家であったりもします。

 地方債を買っているのは個人もいますが、機関投資家や銀行が買って、金沢市なりの財政を支えています。すなわち金沢市がこれからESGに対して、どれくらい改善していけるかということが、地方債を出す上でのポイントになってくると言います。

 日本の大半の企業となる非上場企業は上場企業から発注を受けたり、銀行からも融資を受けたりします。いま銀行も投資家から評価を得るために、ESGの観点で融資を行うということが大事になってきています。

 発注をする上場企業は、「どれだけ持続可能になっていけるか?」ということが経営の判断材料になっています。グローバル企業から一次サプライヤー、二次サプライヤーとつながる中で、取引先の企業から「環境や社会についてはどうしていますか?」と聞かれる時代が始まっています。少しタイムラグはありますが、地方の非上場企業にもこのような話がやってきます。そしてきちんとしていないと、取引をしてもらえなくなるということになります。

 金沢SDGs「5つの方向性」の冒頭のメッセージに書かれた「今後さまざまな主体とともに、実現に向けた行動計画を策定します」が、夫馬さんから見るととても大事なポイントだと言います。

 行政もESGを測定していかなければならなくなり、地域の自治体向けの指標(ISO37120)もあり、海外では増えてきていますが、日本でこの指標で評価している自治体はまだわずかだそうです。

「金沢がSDGsの行動計画を作っていくときに私から提案をしたいのは数値目標です。現状を数値で評価し、把握して目標を立てる事は非常に大事です」

 機関投資家が運用するお金はどこからきているかというと、実は私たちの年金や保険の掛け金です。機関投資家たちはESGで判断していますが、私たちが声を上げていけば行くほど、機関投資家たちはもっとESGのことを考えるようになり、実際にそれが起こっています。

 

さまざまな主体による連携がますます重要に

 地域は事業者の皆さんに元気がないとどうしても萎んでしまいます。事業者の皆さんが持続的に経営していくためには、いま社会にどんな課題があるのか、環境影響をどう受けるのかということを気にしながら経営をしていくことが大事になってきます。そのために考えて、工夫して、さらにイノベーションを起こしていくということは重要です。

 イノベーションをしたり、新しいことをしたりするにはお金(資本)が必要です。この資本を支えるためには、例えば銀行が地域の皆さんが何にお金を使おうとしているのか、それが長期的なものであればしっかり支えて行こうとするような長い目で見た金融機関の経営も非常に大事になってきます。

 また、市役所が町の課題を数値にしていろいろな方に示してくれると、事業者の人たちにも課題が見えてくるようになってきます。そして、どこに向かっていくのか? 目標を一緒に考えていって欲しいと強調します。

 町の生の声は行政が知らなかったりすることもあり、町の中で活動するNPOの方がよく知っていたりするので、プロジェクトにはそう言ったNPOも巻き込み、町の声をしっかり事業者に届けていくことが求められます。そしてこういう社会の変化にも対応していかないといけないということを伝えてくれれば、事業者にとってNPOは、とても頼りになる存在となります。

「主役は事業者の皆さんで、行政と金融機関、NPOと協働する、これこそ私が実現すればいいなと思っている姿です」と述べて、夫馬さんからのアイデア提供は終了しました。

ESGもSDGsもこれからは情報公開が大事になる

 お寄せいただいた質問に答えながら、夫馬さん、四十万谷さん、永井の3人のフリートークとなりました。その一部を抜粋してお伝えします。

永井:「ESG投資の理念はわかるが、一個人が行動を起こせるものにはどのようなものがあるか? また、目先のご飯が食べられないと将来の展望は描くことができない。その辺りはどう考えれば良いか?」という質問が寄せられています。

四十万谷さん:野菜の廃棄のことを紹介しましたが、はじめに高い理念があったのではなく、廃棄物の処理費用が一気に値上げするという話があって、この費用を払っていたらご飯が食べられなくなると思って始めました。このように高尚な理論からではなく、目の前のご飯のことを考えて行動したら、いい結果が得られるということは、もしかしたら相当あるのかもしれません。

夫馬さん:環境面、特に資源やエネルギーに関わるものは、コスト削減でやったら環境にも優しくなったということはしばしばあります。ひと昔前の電球をLEDに変えたのがまさしくその良い例。LEDは電気の使用量が減って環境にも優しいですが、多くの人は電気代を下げたくてやっています。

永井:大上段からとてもいいことをすると考えるのではなく、目の前の課題を解決しようとするときっとそこにEかSかGに繋がっていくことになるということですね。
ところで、大企業はディスクロージャーの開示義務がありますが、中小企業などのESGの中身を一般の人が理解するにはどうすれば良いのでしょうか。

夫馬さん:消費者の視点で考えた場合、開示がないのは難しく、まだ時間がかかるかもしれません。上場企業はホームページなどで開示されているものが多く、情報はありますが、それでも見分けられないところはたくさんあります。その会社が今後どういう課題に直面しそうかということを自分で考えてみて、その上でその会社の開示されている情報を見て、本当にやっているかどうかを判断することになります。つまり、それで「自分が説得されたかどうか」が大事です。

永井:企業側の取り組みをESGというか、会社としてのステイタスを上げるための発信という意味で、四十万谷さんは何か心がけていらっしゃることはありますか?

四十万谷さん:私たちの上の世代に多いかもしれませんが、企業がESGとかSDGsの取り組みをしていることをオープンにしようという発想になっていない方もいらっしゃる気がしています。「お客様にはいい品物を届けることが一番」という考えが強く、普段当たり前にやっていることが実は自然のことを考えているなど、それをあえて伝えようとする発想がないのかも。これからは、その情報をお客様に出していくことが必要だということを、それぞれの企業が認識することが大事であり、そのような情報がどんどん出てくれば、買う方も選ぶ材料になります。

夫馬さん:情報を積極的に開示するということはとても大事なこと。知らなければ評価されません。それは消費者からもありますが、銀行からの評価や、行政の方が知ったらもしかしたら応援したいということになったかもしれない、そういう地域には眠っている企業がたくさんあります。開示したことで、たくさんの支持が得られて、事業がやりやすくなったという事例も多くあります。

永井:最後にお二方から、これから日本のESG投資はどうなっていくかについて、一言ずついただいて、今回のSDGsカフェを閉めたいと思います。

四十万谷さん:今回の機会でESG投資と私たち地方中小企業との関わりがすごく見えたような気がしています。世の中がどんどん変わり、環境的にも洪水が頻発したり、いろいろな廃棄物の問題があったり、そして自分たちの生活も影響を受けている中で、「じゃあどこの企業を応援したいか? どこの製品を買いたいか?」というと、やっぱり「そういうことをちゃんと考えている企業の製品を買いたい」という人が一定以上いらっしゃると思います。そういうことを皆さんと一緒に考えて、少しでも次の世代の世の中で、いい企業活動ができるようにやっていけたらなと思っています。

夫馬さん:地域の方はおそらく都会の方より横のつながりが強いのかなと思います。この分野では「協働する」ということは避けて通れません。他の方々と喋る時間を積極的に作っていただけると、いい意味での地域での資金循環ができてくるかなと思っています。

全部通しで見たい、もう一度見たい、という方はコチラからご視聴いただけます。OUIKチャンネルのサブスクライブもよろしくお願いいたします。

SUNプロジェクト生き物調査中間報告会を開催しました

2021/10/20

都市に自然を取り戻し、地域の復元力、回復力を向上させるための研究活動を行うSUNプロジェクト。研究の一環として、金沢市内の用水と日本庭園が生物多様性にどのような役割を果たしているのかを調べるべく、今年の春から3年間にわたる生き物調査を実施しています。

今年度も前半が終わり、調査対象の各庭園で春、夏、初秋の調査を終えたところで、金沢市役所職員、調査対象庭園保有者、専門家など約20名をお招きして、1020日その中間報告会を実施しました。

豊かな自然と歴史的な文化が残る金沢市において、庭園は金沢市の社会システムと自然システムの調和を象徴する重要なグリーンインフラの1つです。しかし、人口減少などの複数の原因により、維持管理が困難な庭園も存在し、その中で生物多様性や人と自然とのつながり、温暖化対策への貢献など自然がもたらす様々な恩恵も失われていく可能性があります。将来的な維持管理の方法を模索する必要がある中で、まずはどのような生き物が生息しているのか、現状を確認するために、今回の調査を実施しています。

調査を通して、各種の希少生物、外来種やその他の生物が生息し、また一部の生物は用水や周囲の森林を通して庭園内に入ってきたと思われることが分かりました。参加者との間では、庭園や用水とも連携した維持管理のあり方、また外来種が与える危害にどうやって対応していきつつ希少種を守っていくかなど、意見交換が行われました。今年度は、11月、そして冬の季節の調査も行う予定です。年間の調査が終わり、全調査が終了次第、調査結果を取りまとめ、分析していく予定です。

IMAGINE KANAZAWA 2030 「金沢市民のわたしたちが考える指標アイデアワークショップ」開催

国連が掲げる「持続可能な開発」とそれに紐付く17の目標(SDGs)の達成を地域で進めていくにあたっては、地域で適切に達成度を測って進捗を確認することが大切です。IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議は、10月16日に市民とともに地域でのSDGsの達成度を図るための指標のアイデアを出し合うワークショップを開催しました。約25名の市民の方にご参加いただきました。

2019年3月金沢市、金沢青年会議所、国連大学IAS OUIKは金沢SDGsを進めるための指針である「5つの方向性」を発表し、「IMAGINE KANAZAWA 2030」プロジェクトをスタートさせました。2020年3月には、地域の多様な主体が取り組みを進めるための行動計画である「金沢ミライシナリオ」を取りまとめ、SDGsを金沢で達成するための行動の道しるべを示しました。一方で、金沢市が2020年7月に内閣府より「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定されて以来、IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議は「市民生活と調和した持続可能な観光の振興〜『責任ある観光』により市民と観光客、双方の『しあわせ』を実現するまち金沢〜」をSDGsの達成促進のためのモデル事業として進めています。

このように、地域の実態に合わせてSDGsを地域で推進していくための計画を策定し、それに紐づくプロジェクトを進めている中で、指標を用いてプロジェクトの結果(アウトプット)や効果(アウトカム)を測っていくことが重要となります。指標を用いた計測は状況の分析や改善のために使えるほか、自分ごとになる指標を設定し、モニタリングすることで、参加意識が高まり、意識の共有やモチベーション向上につなげることもできます。今回のワークショップでは、そういった自分ごとにできる「みんなの指標」を作るために、市民の方々と一緒に「こうなったらいいよね」と思える未来の金沢とそれを測定するための指標について考えました。

ディスカッションのテーマとして設定したのは6つのテーマ。最初の5つは「金沢ミライシナリオ」の中の5つのシナリオに沿ったテーマ、そして最後の1つは自治体SDGsモデル事業のテーマである「持続可能な観光」です。例えば、2030年の金沢がどのような「古くて新しくて心地よいまち」になってほしいか、そして、そういった理想的な状態を計測するにはどういった指標が良いか、普段「”もったいない”がないまち」に貢献する活動をしている、それを計測するにはこういった指標があってほしい、といった内容をテーマ毎にグループに別れてブレインストーミングしていきました。

計測する指標を具体的にアイデア出ししていく作業は少し難しかったようです。ですが、ワークショップを通して、金沢が2030年にはどういった「まち」であってほしいかのアイデアはたくさん討論されました。学生と社会人のつながりやつながる場所があってほしい、ビジネスを始める人に優しかったり、生涯学習や学び直しに優しい環境、芸術家やキュレーターが育つ環境であってほしい、といった学びや仕事に関わること、マイノリティへの寛容なオープンマインドな社会であってほしいといった多様性や包摂性に関わること、地域団体と観光事業者が価値観を共有する、といったパートナーシップに関わることなど、意見が交わされました。そういったありたい姿に対して、学生と社会人のつながりやつながる場所の数、社会人が学び直しが出来る学校や講座の数など、定量的な指標を設定することで定量的な計測とモニタリングが可能となっていきます。

みなさんは、金沢でSDGsの達成を目指すためにどのような自分自身の指標を設定しますか?

IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議では今回のワークショップの開催までに、金沢でのSDGs達成の進捗を測定するために、「金沢ミライシナリオ」の5つのシナリオと自治体SDGsモデル事業の「持続可能な観光」に沿った指標案を検討してきました。今回のワークショップでの参加者のご意見を受けて、指標案を見直したのちに、みんなで取り組んでいける指標を改めて公開し、引き続きパートナーシップでSDGs達成に取り組んでいける環境づくりを進めていく予定です。

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