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【開催報告】観光とSDGs – 2030年の金沢の文化と観光を考えよう –

日時 / Date : 2022/12/19
場所 / Place : Online

このセミナーのシリーズでは、到着地(デスティネーション)からの視点で、持続可能な観光、観光とSDGsのつながり、観光とまちの調和について、概念や事例を通して、考えを深めていくきっかけになればということで開催してきました

4回目となる今回は、SDGsと文化、観光について考えました。

「文化」とは、あらゆる人と人の社会を構成する重要な要素であるものの、SDGsの中では目標として明確に位置付けられていません。一方で、「2030アジェンダ」を進める原動力としての役割や、また個別の文化活動ごとでSDGsとのつながりは示されています。例えば多様な文化を尊重しながら創造的な文化活動を促進し、多様な人の文化活動への参画を促していくことは、「持続可能な観光」にもつながり、持続可能な地域づくりを実現させます。

文化と観光、そしてSDGsとの関係とは?

まずは国連大学IAS OUIKの津田祐也研究員から、導入として「そもそも文化とは何か?」、そして今回のテーマ「文化×観光×SDGs」の観点から、現在の課題を提示しました。

続いて、国際連合教育科学文化機関(UNESCO) 文化局の吉田礼子氏から文化産業の発展やSDGsの関わりについて、トリップアドバイザー・アカウントエグゼクティブの中川聡美氏から海外旅行者のサスティナビリティ意識について、それぞれご紹介していただきました。

サッカーワールドカップ決勝の興奮冷めやらぬパリからご参加くださったユネスコの吉田さんから、「地域における文化・創造産業の持続可能な発展とSDGsへの貢献」と題し、文化の力を借りて、持続可能な産業と地域づくりをするために、どのように行動していくのが良いのかという話題提供がありました。

「スポーツと同様、文化にも国民の心をひとつにする力があり、いろいろな人たちがいろいろな文化を使って人々に共感を与えてつなぐ力がある」と言及した吉田さん。ユネスコの取り組みの中で、文化や創造産業とひも付けされるSDGsのゴールは、4、5、8、10、16、17と多岐にわたると紹介しました。創造産業が世界の経済に及ぼしている影響は大きく、世界のGDPと雇用にも大きく貢献していることも説明。文化と創造性は、都市や地域社会に社会的、経済的、空間的な利益をもたらすこともあると述べました。

 

世界最大のトラベルメディアであるトリップアドバイザーの中川さんからは、サスティナブルツーリズムに対する世界の旅行者の意識に関して、オーストラリア、日本、シンガポール、イギリス、アメリカの5カ国での消費者に対する調査結果から紹介していただきました。

多くの旅行者がサステイナブルな取り組みに強い関心を持ち、なかでも地域の食や物を消費することへの積極性が見られ、「地域のプロダクトを旅行商品に取り入れることが、サステイナビリティへの意識の高い旅行者を取り込むこととなり、またツーリズムが地域社会の経済や文化・伝統の継承に貢献することにつながる」と言います。

調査では、「そのためにより多く費用を払った経験を持つ人」はまだ少数でしたが、今後行動に移そうとしている人は65%に及んでいました。

世界の旅行者は、旅行先でその土地ならではの飲食体験や、その土地の歴史や文化を学ぶなど、体験型で没入型の旅行を求めていると紹介し、「人気のある観光地をフックに、周辺のまだ知られていない体験コンテンツを組み込んでストーリー仕立てにして発信していくことが重要。地域が一体となってそのストーリーを考えて、伝えることが大切」と述べました。

 

金沢で文化と観光に関係する3つの事例を紹介

引き続き、金沢で文化に深く関わる活動をされている九谷光仙窯の利岡光一郎氏、kanazaWAZA研究所の澤田雅美氏、金沢21世紀美術館の吉備久美子氏から、ぞれぞれの事例紹介をしていただきました。

金沢市野町の九谷光仙窯は150年くらいの歴史があり、2020年度金沢SDGsツーリズム推進事業に参加しています。「金沢の文化の中に内在しているSDGs、歴史の中で内在していたSDGsという着眼点を紹介し、SDGsは、その視点からの評価や取捨選択、軌道修正などに使っていくことに効果があると感じ始めている」と利岡さんは述べました。

「トラディショナルショー」により伝統文化に興味を持ってもらうための活動や、民衆文化を基本にした卯辰山アート遊歩道制作プロジェクトと、2つの側面から文化にアプローチする澤田さん。卯辰山の放置竹林の課題をアートで解決するというSDGsプロジェクトからは、地域と旅行者の力によって、「アート歩道」という新しい観光地を作り出すプロジェクトに発展しているそうです。

2004年に、「まちに開かれた公園のような美術館」を建築コンセプトに開館した金沢21世紀美術館は、新しい文化の創造と新たなまちの賑わいの創出を目指しています。
「みんなの美術館 みんなと美術館」と題して、2018年度から、美術館をより開かれた場所にしていくための取り組みを開始。美術館が共生社会の1つのコミュニティーとして機能し、包摂的に存在しながら、いろいろな人たちとの関わり合いの中で、小さな実験を繰り返していき、その先の未来像というのを一緒に考えていく場所として機能することを目指しているそうです。

 

2030年の金沢の文化と観光のあり方は?

金沢で活動されている3人をパネリストに迎えて、パネルディスカッションが始まりました。その一部を紹介します。

「文化をどう発信しようか?」「観光にどうひも付けしようか?」を考えるより、SDGsの考え方と同様、まずはゴールとなる未来を思い描くことが重要。(澤田さん)

文化の担い手が2030年にはもっと増え、その人たちが新しいまちを作っていく。その中で観光がツールとしても機能できたらとてもいい状況ではないか。では実際にどうしていけば機能していくのか、ご意見を伺いたい。(津田)

担い手が少ないのは経済的な理由もあるが、意地があるから続けるという要素も大きい。文化自体に意地が出せるほどの魅力がなければ、子供たち世代は担い手にならない。(利岡さん)

金沢の文化を継承していくためには誰の力が必要なのか? 観光で金沢に来る人たちも担い手の卵として見て、観光することで「金沢のまちの文化を継ぎたいと思う人」を育てる。そう思わせるツアーなども出てくる。まずは文化に興味を持ってもらうことだ。(澤田さん)

観光のあり方も変わってきていて、観光客は客観的に携わるのではなく、自分の行動がその地域にプラスの影響を及ぼすようなことがあれば、行きたいと思うようになる。(利岡さん)

市内に複数の大学があるということも、未来を考える上でいいこと。(吉備さん)

 

最後に、国連大学IAS OUIKの渡辺綱男所長が、「それぞれの地域に地域特有の自然があって、その自然に根差した形で地域の文化が育まれていった(生物文化多様性)。そういった地域をみんなで見つめ直して、自然と文化をうまく紡いでいく、そのことが個性豊かな地域づくりのカギになるし、持続可能な観光にとっても、とても大事なポイントになるのではないか」と述べ、このセミナーを締めくくりました。

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