アジア生物文化多様性国際会議開催1周年を記念した国際フォーラムシリーズ第2回を、国際自然保護連合日本委員会と共催し、生物文化多様性をどのように次世代へ受け継いでいくか、日中韓のユース参加者とともに考えました。
吉田正人氏(筑波大学 教授)による基調講演では、自然と文化の相互関係について、国際的な動きを含めて、お話を頂きました。
第1部では、日本、中国、韓国の生物文化多様性の事例が紹介されました。まず、UNU-IAS OUIK の飯田義彦研究員が、石川県の生物文化多様性に関する取組と課題について述べた後、地域主体の生物文化多様性保全に向けた「多様性」アプローチの重要性を指摘しました。官秀玲氏(中国林学会 国際部ディレクター)からは、中国のオーク林管理の事例に関わる発表がありました。ホン・スンキ氏(モクポ大学島嶼文化研究所 教授)は、韓国の事例を取り上げながら、持続可能な発展のために、島嶼の生物文化多様性グローバルイニシアチブの必要性を唱えました。第1部の最後では、安藤よしの氏(ラムサール・ネットワーク日本共同代表)から、田んぼの生物多様性を向上するための活動(田んぼ10年プロジェクト)について紹介がありました。第1部の質疑応答では、森林の管理・保全方法、U字溝や除草剤の使用と田んぼの生物多様性の保護、個々の学びの「繋がり」の構築、自然と生活の両立、生物文化多様性と地域の活性化、法制度の問題など、会場から様々な質問が挙がり、日中韓の様々な視点から議論されました。
第2部の質疑応答では、まず、第一次産業が若者にとって魅力的なものになるにはどうあるべきか、ユースの皆さんから意見を頂きました。十分な対価を得られる制度の必要性や社会的ステータスの向上のほかに、自分が食べているものや使っているものがどこから来たかなど、身近なことを知ることが考えるきっかけとなるという意見も出されました。また、次世代に自然と文化を引き継いでいくための若者の繋がりを点から面へ発展させていくための活動をどのように展開していくことができるのか等についても議論されました。
最後に、堀江正彦氏(IUCN理事、外務省参与・大使)の総括の中で、若者が既に行っている心強い活動を広げていくことの大切さ、生物文化多様性の認知度を高め、主流化していくことの大切さ、国際社会が結束し、協調することの大切さについて言及されました。
今回のフォーラムの開催に先立ちIUCN及びOUIKの共催で能登の日帰りフィールドツアーが開催され、日本、中国、韓国の会員31名が参加しました。
一向はまず輪島市三井町のまるやま組を訪れ、活動主体となっている建築家の萩野紀一郎氏とデザイナーの萩野由紀氏、金沢大学の伊藤浩二氏から、地域の伝統や文化と生物多様性の繋がりを守り、次世代に継承していくための様々な取組について話を伺いました。
萩野紀一郎氏からはお二人が能登に住むことになった経緯や活動内容などについて紹介がありました。そして、萩野由紀氏からは地域の伝統行事であるアエノコトを生物多様性に感謝する行事として独自にアレンジし、多様な参加者と共に毎年実施していることや、地域の知恵や文化、生物多様性をまとめた歳時記などの冊子や教材を自ら作成していることが紹介されました。伊藤氏からは、まるやま組の活動が始まるきっかけとなった金沢大学の人材育成プログラムやまるやま組で毎月実施されている植物モニタリングの取組について紹介がありました。
参加者は、一般の参加者や子どもたちにメッセージを伝えるための創意工夫に富んだプログラムや教材に感心し、手作りの人形や冊子を実際に手に取りながら熱心に質問をしていました。その後、まるやま組のフィールドを歩き、活動場所について説明を受けました。視察後には、まるやま組のような取組をぜひ自国でも始めたいという声が参加者から聞こえてきました。
次に、白米千枚田を訪問し、OUIK永井三岐子氏よりこの場所に棚田が作られた経緯や棚田景観を守るために実施されているオーナー制度のしくみなどについて説明を受けました。その後千枚田を散策し、参加者は海辺の美しい棚田の景観を存分に楽しみました。