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第1回「能登の里海」シリーズ講座 海の森は魚たちのゆりかご

日時 / Date : 2015/07/04
場所 / Place : 石川県七尾市

2015年度より実施している「能登の里海」シリーズ講座、記念すべき第一回は、2015年7月4日、石川県七尾市にて、「海の森は魚たちのゆりかご~七尾の里海からみた海草・海藻の世界~」をテーマに開催いしました。能登の里海で海草・海藻が環境保全と地域の生業づくりに果たす役割について発表、議論があり、漁業関係者をはじめ、県内外の専門家、行政職員、地域の方など約60名の方にご参加いただきました。

能登島ダイビングリゾートが撮影した「七尾の里海」の水中映像の上映では、アマモやホンダワラといった
海草・海藻が魚をはじめ多くの生き物の住みかになっていると同時に、海中の生態系を健全に保つ機能を果たしているとイヴォーン・ユーOUIK研究員が解説しました。続いてOUIK事務局長永井三岐子より、国連食糧農業機関の世界農業遺産(GIAHS)として認定された「能登の里山里海」における里海には、水産の持続可能な発展と環境保全に関する知恵がたくさん秘められており、そういった地域の伝統知識と活動が今年9月に国連で採択される予定の持続可能な開発目標(SDGs)にも貢献できることを期待し、能登の里海について県内外に発信していきたい旨ご挨拶いたしました。

基調講義では、「里海」のコンセプトを最初に提唱した九州大学名誉教授の柳哲雄氏が、「アマモ場の多面的機能」と題し発表しました。、沿岸里海のアマモ場は産卵場、仔稚魚の育成場、アマモの葉上植物(付着珪藻)を起点とした食物連鎖、生き物の住みかなどの機能を果たしていると説明し、岡山県日生漁協の漁民によるアマモ場修復活動を紹介し、アマモ場の造成だけではなく、どのような管理をすれば漁業と共存ができ、地域の方々にアマモ場の重要性を理解していただけるかを考えることが重要だと述べました。

能登の海藻について20年以上研究されてきた石川県水産総合センター普及指導課長の池森貴彦氏は、能登半島には、藻場全体の面積としては北海道、青森DSC_0175県に次いで全国第3位の約150k㎡があるとされ、特にホンダワラ類の藻場の面積としては約120k㎡で全国1位を誇っていると紹介しました。さらに、海藻の種類について、石川県には分かっているだけでも約200種の海藻が生育しており、その中で30種類ほどが能登地域では食されていると紹介しました。しかし、近年は夏期の高水温により、アマモの大型個体が広範囲に枯死したと考えられる現象も起きていると話しました。DSC_0184

パネルディスカッションでは、能登島で約60年もの間、漁船漁業の漁師を生業としてされてきた蔵谷弘氏も加わり、七尾湾の里海のこれまでの変遷、現在の状況と今後の課題について会場の参加者と大いに議論しました。その中で、子供の頃から七尾湾でとれたエゴ草やもずくなど海草・海藻で生計の半分を立てていたが、20年ほど前からエゴ草が全く取れなくなり、魚や貝類の数も年々減っているという蔵谷氏のお話に対して、会場から、里海の環境の変化は陸での人間の活動によって影響を受けている可能性もあるという質問や関心が多く寄せられていました。最後に、七尾市里山里海協議会副会長の濱暉元氏は、今回の講座を通して、多様な主体が一緒に里山と里海のつながりについて考える第一歩となったと述べました。

UNU-IAS OUIKは、今後も「能登の里海ムーブメント」の活動の一環として、能登地域にてシリーズ講座(年間4回)の開催や、里海の研究や里海の発信イベントへの協力を行っていきます。

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以下のファイルより内容をご覧いただけます。
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開催チラシ

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04.07.2015 アマモ場の多面的機能 柳哲雄 from unuiasouik

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