UNU-IASいしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)と小松サマースクール(KSS)の共催で、高校生向けの「SDGsワークショップ」を開催しました。
KSSは、毎年夏に石川県小松市で開催される、高校生向けの日英バイリンガルサマースクールで、全国から集まった高校生60人が、日本や海外の大学生と1週間寝食を共にします。自分の新たな一面を発見して、将来について思いを馳せる、そんなきっかけを作るもの。今年で5回目の開催となり、2016年からOUIKもSDGワークショップを共催していま す。
高校生の多くが知るSDGs
ワークショップではまず、OUIK事務局長の永井からSDGsについて改めて説明を行いました。多くの高校生がSDGsという言葉を知っているのに少し驚きましたが、SDGsの特徴についての解説や、「誰のためにSDGsをするか?」、「どんな価値を生むか?」、そして「一人ひとりでできることが必ずある」など、一歩踏み込んだ話は初めて聞くことも多かったようで、みなさん真剣に聞き入っていました。
日本でも身近にある差別や不平等
さて、今回のワークショップでは、SDGsのゴール10「人や国の不平等をなくそう」に通じる、日本における差別や不平等について学び、平等や差別とは何かについて、高校生たちに考えてもらいました。途上国の開発問題が中心だったミレニアム開発目標(MDGs)と比較して、SDGsは先進国も含めたすべての国が対象です。
外部講師として、生まれながらに骨が折れやすい病気で、車いす生活を送るコラムニストの伊是名夏子さんと、自らもゲイであることを公にして、LGBTに関する法制度や政治関連の記事を書いて配信する松岡宗嗣さんのお二人を招き、「どのようにして自分のアイデンティティを確立していったのか?」「現在大切にしている価値観とは?」「一人ひとりを個人として大切にするために自分たちができることとは?」など、お二人の対談によってテーマの掘り下げをしていきました。
対話の中で話題に上がったことをいくつか
- 障害のある人やLGBTの人を応援したいという気持ちを持つことは、障害がある人やLGBTの人でも同じ。すべての人が応援したり、応援されたりすることができる。「本質的に理解できなくても困っていたら味方でありたいな」と言う気持ちを大切にしたい。(松岡さん)
- 「合理的配慮」の仕方にもいろいろある。お互いが話し合いながらやり方を決める、お互いの都合を考えながらやっていくことが、今とても大事だと思う(どちらかが無理をしていたら長続きしない)。(伊是名さん)
- 「何でも助けてあげたい」と思っている責任感の強い人は、自分が助けてもらった経験がないから、意外と助けるのは下手。本当に人と繋がりたい、人のためになりたいと思うなら、自分が「助けて」とか「手を貸して」と言えるような人になるべき。(伊是名さん)
- 明日どうなるかがわからない。明日の自分がちゃんと守られるように、もしくは明日自分に何かあったときにやさしい社会であってほしいと思うからこそ、「明日の自分のために世の中をやさしい社会にしていく」と考えて、行動してくれると嬉しい。(松岡さん)
以上は、ごく一部。その後、高校生たちはグループ毎でディスカッションを行い、それぞれがもっとも重要だと思ったもの2~3ずつを発表しました。
将来を担う高校生たちが本気になれた一日
「やさしい世の中に変えていくことは自分のためにもなる」、その言葉は、義務感とか責任感でがんじがらめになっていた生徒たちの心を解きほぐしていったようです。
お二人の経験や考え方に、高校生たちは大いに心動かされ、人を助けるということ、一人ひとりを「個」として尊重することの本質を知る絶好の機会となりました。それと同時に、さまざまな問題を解決する手段として、対話が重要であるということも理解したことでしょう。
2030年までにSDGsの17の目標は達成しないといけません。その推進力となる若い世代に、目標達成は誰のために行うものか、そしてまずは何をすべきかを、具体的な事例から考えて、強く意識してもらうことができた、とても意義深い一日でした。