9月21日、UNU-IAS OUIKは、金沢市域を対象とした生物多様性市民モニタリングに関する勉強会を開催しました。金沢市は金沢版生物多様性地域戦略を策定し、その中で金沢市の自然条件と工芸文化、食文化など独自の地域文化とのつながりに注目し、市民が営んできた生活文化とともに地域の自然を保全していく生物文化多様性の視点を提起しています。
OUIKも策定の支援に関わった同戦略には、市民とともに活動するためのキープロジェクトがいくつかうたわれており、市民モニタリングを推進する市民ウォッチャープロジェクトもその一つです。現在市民ウォッチャーは、写真データを金沢市のメールアドレスに送付する形式を取っていますが、今後さらに多くの人が参加できるようなデータプラットフォームを作るために今回の勉強会を金沢市環境政策課と協力し開催することとなりました。
勉強会講師には、2017年5月に国際生物多様性の日記念シンポジウムにも登壇いただいた須田真一氏(中央大学)をお迎えしました。須田氏は、中央大学、東京大学、パルシステム東京の協働による市民参加による生き物モニタリング調査(通称いきモニ)に昆虫学者の立場から参加し、東京の蝶のモニタリングを実施しました。
勉強会コメンテータとして「いきモニ」プロジェクトでアプリ開発とデータプラットフォームを開発した東京大学DIASから生駒栄司氏、服部純子氏をお招きしアドバイスをいただきました。
冒頭須田氏から、市民モニタリングが重要である背景説明とともに、東京での広範囲に渡る蝶のモニタリングに多くのパルシステム会員の方が参加したしくみ、会員が楽しく続けられる工夫などを紹介いただきました。
続いて金沢市環境政策課の武藤氏より、市民ウォッチャープロジェクトでこれまで報告のあった動植物データの紹介、そしてデータを投稿する人が限られていること、これからさらに多くの市民を巻き込んでいくための仕組みづくりが課題となっていることが挙げられました。
勉強会には自然観察や環境活動を行う市民団体、大学研究者、行政官、市議会議員などが参加し活発な意見交換が行われました。
「データがある程度蓄積されないと生物多様性に関する課題も見えにくいため最初から特定の種を指定してモニタリングを行うことは難しいのではないか」、「研究的な見地からはデータの位置情報が必要不可欠である」、「成功事例の裏には関係者の努力があるはずで、東京の蝶のモニタリングをそのまま移植しても成功するとは限らないのではないか」、「もっと他の環境関連の事業とも連携が必要なのでは」などのご意見をいただきました。