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【開催報告】第4回 LGBTQと教育ダイアログin 金沢

日時 / Date : 2020/11/21
場所 / Place : KANAZAWA 旅音

国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)では、過去3年にわたり、2017年の初回開催以降、LGBTQなどのセクシュアル・マイノリティと教育との接点をテーマに、さまざまな有識者や当事者にご登壇いただき、このダイアログを実施しています。

4年目となる今年は、新型コロナウイルス感染拡大予防のため、参加者を少数に絞って開催しました。会場は江戸時代の足軽屋敷だった古⺠家を活用したゲストハウスで、まるで寺子屋のような雰囲気の中、「知らないではすまされないLGBTQ、地方行政にできること」をテーマに、LGBTQの方にとっても「安心して暮らせるまちづくり」に必要なことなどについて、さまざまな視点から議論が行われました。

*前回の様子はこちらをご覧ください
【開催報告】LGBTと教育ダイアログ

*セッションごとの動画もページ下にございます。

LGBTQとは?

Lesbian(レズビアン)・Gay(ゲイ)・Bisexual(バイセクシュアル)・Transgender(トランスジェンダー)の頭文字をとった、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)を総称するLGBTという言葉が浸透してきました。その他にも、好きになる人の性別(性的指向:Sexual Orientatuon)を問わない人や、自分がどの性別かという認識(性自認:Gender Identity)が曖昧な人・決めたくない人、社会的にどの性別で振る舞いたいか(性表現:Gender Expression)が出生時の体の性別と違う人など、さまざまなセクシュアル・マイノリティの人が存在します。そのため、LGBTの4つに当てはまりづらい人を、クエスチョニング (Questioning/自分がどうなのか迷っているなど)やクィア (Queer/人とは違う)のQをとって、LGBTQという名称が使われるようになってきました。

セクシュアル・マイノリティの人たちを指すLGBTに対し、すべての人が持つ性的指向・性自認を表す「SOGI(ソジ)」という言葉もあります。

 

第1回から参加されているNPO法人グッド・エイジング・エールズ代表で金沢出身の松中権さんと、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニットの永井三岐子事務局長のダブル司会でダイアログは始まりました。

「安心して学べるまちをつくろう」、「安心して暮らせるまちをつくろう」、「安心して楽しめるまちをつくろう」という3部構成で、それぞれ専門家や有識者を招き、深い議論が行われました。

ここではその要旨を紹介いたします。

 

金沢を安心して学べる町にするにはどうしたらいいか?
〜理解が進まない教育現場や家庭での現状に目を向ける〜

永井:市民が子ども達をどうやって守り、社会に出していくかということを、今までこのダイアログが重点課題としてやってきました。しかし、まだまだ市民の代表である議員の理解が少ないと言わざるを得ません。金沢でも多様性からいろいろな人が活動できる動きを作っていきたいと思っていて、今日の集まりから具体的なアクションが起こせたらいいなと考えています。
では、登壇の3人から自己紹介をお願いします。

馳さん:衆議院議員の馳浩です。私の目標は「金沢プライドハウス」の設置。当事者やアライ(当事者ではないが支援している人)やあるいは経済界の方々などとの交流や相談ができる場を作りたいと思っています。国会では超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」の会長をしています。

本間さん:本間啓子と申します。現在は金沢市立千坂小学校の校長をしています。LGBTQの方と接した経験はありませんが、気がつかないだけで子どもたちや保護者の中にもいらしたかもしれません。無意識に傷つけていたのではないかという気持ちがあり、今日は勉強させていただきたくて参りました。

松岡さん:名古屋でNPO法人ASTA の共同代表をしている松岡成子と申します。当事者の親の立場で、愛知県や岐阜県の学校、教職員研修、行政などを回っています。子どもたちを守るには大人がキーマン。教職員とか保護者とか関係なく、大人がどう動くかでこの問題はかなりスピードアップして解決していくと信じています。

松中さん:それぞれ具体的にどのような活動をしているか、お話しください。

松岡さん:研修は1人ではなく、いろいろなセクシュアリティの4〜5人とチームになって訪問し、その中には必ず保護者も入れるようにしています。人それぞれ経験も土台も違いますので、なるべく一度にいろいろな人に会っていただき、いろいろな角度の話を聞くことで、自分ごととして落としてもらえると思っています。

松中さん:松岡さんはお子さんからカミングアウトを?

松岡さん:息子からゲイだと告白されました。ひとりで抱え込んで悩んでいると思っていましたので、私の場合は、「ようやく言ってもらえた」とむしろ喜びました。しかし、いろいろな当事者からは、「何年も実家に帰れない」、「自分がつく嘘に自分が疲れてしまった」、「友達はみんな認めてくれているが、どうしても親とは確執があって苦しい」などという話をたくさん聞き、ある大学の自殺の話もあって、そこをなんとかしたいと、十数名の保護者が当事者の子たちと一緒にチームを作って頑張っています。

松中さん:まだまだ当事者から親へのカミングアウトはハードルが高いと思いますが、お子さんから、「実はこういうところが大変だった」、「こういうことがあったから言えなかった」といった話はありましたか?

松岡さん:子どもがカミングアウトした時に、「何が一番辛かったか?」を聞いたら「お母さんだよ」と言われました。差別的なことを言っていたつもりは全くありませんでしたが、中学校高校と、ことあるごとに「彼女できた?」って聞いていたのを、「一度でいいから好きな人できた?と聞いて欲しかった」と言われました。良かれと思って子どもに言っていたモラルの話とか、一つひとつが自分の子どもをちょっとずつ攻撃していたことに気づかされました。最近知った「マイクロアグレッション(Microaggression)」という言葉がまさに当てはまります。無意識の小さな言葉の暴力だったのです。

松中さん:本間さんは今まで学校の中で当事者と触れ合ったことがないと言われましたが、視野を金沢の学校に広げた時に、先生同士でLGBTQに関して情報交換をしたり、事例があったという話を聞いたりと、情報共有のようなことはされていますか?

本間さん:金沢市内のいろいろな学校の先生との話しの中で、具体的にそのような子どもや保護者の話が出たことはありません。市からは今年3月に「多様な性の理解の促進のための金沢市教職員ハンドブック」というのが出ましたが、まだ校内での関心は十分ではありません。LGBTQに限ったことではありませんが、金沢市は人権研修にすごく力を入れていて、人権を大切にしている市であることは感じます。

松中さん:実際、教職員室で、LGBTQに関する会話はありますか?

本間さん:そういう視点がないのか、あまり会話にも出てきている様子がないというのが現実です。学校の取り組みとしては「一人ひとりの子を大事にする」ということで、子どもたちには「自分も周りも大事にするんだよ」ということを伝えています。学校は安心安全な場所でないといけないと思っていますので、いじめや差別につながることには教職員と一緒に対応できるように、まずはそこから偏見などを生まないということをベースとして私は考えています。

松中さん:文科省でも通知とか出されているんでしょうか?

馳さん:2015年に当時の下村大臣から通知が出ています。2016年の私が大臣の時にパンフレットを厚生労働省の研究班と共同で発行し、全小中学校の教職員と養護教諭、とりわけ管理職にはこのパンフレットを参考にし、相談の受付をしてもらうようにしました。理解をするように、きちんと相談を受け止めるように、そこからでした。

松中さん:国の通知とかガイドラインは、地方に降りてきたときはどのような位置付けになるのでしょうか?

本間さん:パンレットはQ&Aで書かれていたので、とてもわかりやすいものでしたが、直接話しをするほどの強い思いは伝わってこなかったです。ただ、このような子どもがいることを教職員や保護者も含めて捉えていかないといけないなと思った覚えはあります。

永井さん:松岡さんが先日、オンラインで行なった研修に私も参加して、ブレイクアウトセッションで一緒になった若い先生は、「小学校の教え子にそうじゃないかなと思える子がいるのでこの研修に参加しました」と言っていました。先生がそんなふうに「あれ?」って思った時に、どこかに相談するとか、それが情報として集積されるようなシステムができるといいなと思います。

馳さん:養護の先生には相談できないのでしょうか?

松岡さん:言えない子の方が多いのではないかと思います。小学校の保健体育の教科書には、「思春期になると異性に興味を持つ」と書いてあり、“日本の教科書が間違っているはずがない、ということは同性に惹かれている自分が変態で異常者で生まれてきてはいけなかったのだろう”と、自己否定します。“これは親に言うと悲しませるだろうし、友達に言うといじめられるだろうから、一生秘密にしないといけないのだ”と思った子どもが、保健の先生に相談に行こうとは思わないでしょう。大事なのは、本人が自己否定してしまう前に、周りの大人が「世の中にはいろいろな人がいるんだよ、それは当たり前のことなんだよ」というメッセージを、どれだけたくさんの大人たちが子どもたちに届けられるかだと思っています。
 私たちが学校現場を回っていて感じるのは、トラブルになって動き出すということです。トラブルになる前に、子どもたちが自分の性格のまま成長できるように、そのためにはどうすれば良いのだろうということを考えていただきたいです。

馳さん:おっしゃる通り、教科書には普通に「異性を好きになる」と書いてあるのです。それをみんな普通だと思うじゃないですか。そうではない人は「自分は普通じゃない」と思ってしまいます。国会議員が学習指導要領の中身に踏み込むことは控えるようにしていますが、少なくともセックスとかLGBTという単語は記して、それをどう扱うかというガイドラインも含めて出すべきだと思っています。

松中さん:私が子どもの頃は、辞書には「同性愛は異常性愛」と書かれていました。「性倒錯」とも。教科書よりもさらに辞書ですからね。悩んで誰にも相談できない時、本や教科書に最初は行きますが、でもそのファーストコンタクトで崩れ落ちてしまいます。

松岡さん:1歳半児健診や3歳児健診の時に人権の話を入れて欲しいということを活動の目標の一つにしています。私たち保護者十数名全員に共通しているのが、カミングアウトされるまで想定していなかった、知らなかったということでした。また、カミングアウトした子に家族になんと言われたかと聞くと、「気持ち悪い」、「気のせいよ」など。本当にひどい場合、「死んでくれ」、「家から出ていけ」と言われたという子もいました。

本間さん:私たちの学校では5年生を対象に「いのちの講座」というのがあります。そこでLGBTを話題にすることがあり、「男の子が男の子を好きになったり、女の子が女の子を好きになったりする人がいることを初めて知りました」といった感想を何人もの子どもたちが書いていて、「お家で話をしたい」と言ってくれました。

松岡さん:私たちの話を聞いて、自己肯定感が上がった子が家に帰ってカミングアウトをするというパターンもあります。ただ、私たちから聞いた話を親にして、「そんな話が聞けてよかったね」と言う親なのか、「そんなことを学校で教えるのか」と言う親なのか、そこで変わります。

馳さん:こういうことを学校で教えてもらったと子どもから聞いて激怒する親もいます。“教育の現場ではどのような目的でこのことを子どもたちに伝えているのか”ということを、教育委員会の皆さんにもきちんとサポートしてもらえれば、現場の先生もやりやすくなると思います。

本間さん:何よりも保護者も一緒に聞いていただくことが一番かなと思います。

松中さん:以前のダイアログで、ゲイをカミングアウトした小学校の先生に登壇してもらいましたが、職員室に多様性がないことも問題ではないかと言っていました。子どもたちが見ている大人の世界が職員室にしかないと、そこでは異性愛ベースの会話しかなく、ここでは無理かなと感じさせてしまいますので。

馳さん:教職員同士の間で理解のない差別的な発言を発してしまう、そういう意味でも人権教育の研修をする教職員や管理職がきちんと理解して実践していただかないといけないなと思っています。

セッション1に登壇したみなさん

 

金沢を安心して暮らせる町にするにはどうしたらいいか?
〜条例によって守られ、勇気をもらえるということを知る〜

松中さん:セッション2では、金沢を安心して暮らせるまちにしよう、そのためにはどいしたらいいかということを話し合います。まずは自己紹介をお願いします。

前田さん:前田邦博と申します。プライドハウス東京のスタッフをしており、昨年までは5期20年間文京区の区議会議員をしていました。3年前にLGBT議員連盟を立ち上げ、それがきっかけにゲイということをカミングアウトしました。

神谷さんLGBT法連合会事務局長の神谷悠一と申します。会は正式にはSOGIですが、2015年の発足当時はLGBTを使わないと浸透しないのではないかということで、略称でこのようになっています。80団体くらいが集まる全国組織です。一橋大学客員准教授もしています。

松中さん:永井さんも私も詳しくわかっていない地方行政におけるLGBTQに関する取り組みや先進事例について、お二人からお話しをお願いします。

前田さん:車を運転する上で誰もが守らないといけないものが交通ルールですが、自治体で言えばそれは条例にあたります。文京区は男女平等条例を7年前に作りました。23区でも遅い方で、金沢市は20年前に作られています。後発だけに、世界を見据えた先取りした条例を作っていきたいという考えで、性の多様性を尊重することも外せないということになりました。それぞれのイデオロギーなどはありますが、これはそうではなく、暮らしの問題であったり、人権であったり、暮らしをどう支えていくかということです。全会派一致で可決することができたのは嬉しかったです。
 このように法的な合意が取れていることは当事者にとってとても力強いものです。議員連盟ができた時、区民の皆さんからもいろいろなメッセージをいただきました。好意的なものが多く、当事者もさることながら特にアライの人たちから勇気をもらったというのが多かったのが印象的でした。文京区では条例があることで施策がやりやすくなりました。区の主催で当事者が集まる会合を作ったり、親族しか入れない公営住宅に同性パートナーも親族として認められて入れるようになったりしました。先ほど教職員への取り組みという話がありましたが、文京区では学校用務員を含めた全教職員に対して研修を行っています。文京区と契約を結ぶ企業もそういったことを守れないと契約が結べなくなることになっています。
 ちなみに、文京区と金沢市の違いというのはたった15文字だけです。性差別の定義に、カッコ書きで、“性自認及び性的指向の差別を含む”という文言が入っているかいないかだけなのです。この15文字を入れる条例改正をすれば、さまざまな改革を進める大きな後ろ盾となります。

神谷さん:性的指向と性自認を入れた条例が全国に広がっています。前田さんが言われたように性差別の禁止のところに入れるというのもありますし、もともとの男女参画の定義そのものを、“性的指向と性自認を含む性別等”とする、すべての制度においていろいろなものが取り込める条例も増えています。アウティング(本人の了解を得ずに公表していない性的指向や性自認のことを暴露すること)の話も含めているところもあります。新しい知見が後発の自治体こそ入ってきているということがあります。

前田さん:条例もそうですが、指針に関しても行政が進化してバージョンアップしてより良くなってきています。LGBT議連で言っているのが、生活全般を支えるのが地方自治体であり、いろいろな部署が関わってきますので、「できるところで、できる人が、できることをやっていきましょう」です。
 文京区も今年、ようやくパートナーシップ制度ができました。世論が高まらないとできないという声もありますが、住む場所によって受けられるものと受けられないものが出てきて、生活にリアルな影響をあたえてきています。

神谷さん:ほとんどの自治体が全会一致で条例が可決していることを忘れないで欲しいです。人権の問題ですから、冷静に議論をすれば全会一致できることだと思います。パートナーシップ制度は、自己否定を続けてきた中で、自治体がお祝いをしてくれ、承認が得られるということであり、とても素晴らしい、なくてはならない制度だと思いますが、パートナーシップ制度ができたからと言って、実態的に生活を変えるのは難しいです。仮にパートナーシップ制度がなくても、たとえば休暇制度で「事実婚では使えて、同性パートナーでは使えないのは変ではないか?」など、身近でおかしなところを改正していくなどと、そういう取り組みをしているところはたくさんあります。まずは、できるところからやるということです。
 6月に大企業と地方自治体を対象にパワーハラスメント防止法が施行されました。これでは性的指向性及び性的自認の関する侮辱的な言動と、いわゆるアウティングなどもパワーハラスメントになることが決まりました。職場ではセクハラと同じくやってはいけないことで、その相談があった時はそれを適切に受け入れる体制を職場で作るということが整備されました。これは義務ですから必ずやらなければならないことです。

前田さん:パートナーシップ制度の効果としてはシンボル的な意味もあります。金沢市が行えば、北陸で最初となってとてもインパクトがあり、当事者を励ます効果も大きく、国に対しての大きな働きかけの要因にもなります。さらに経済効果もあるといわれていて、訪れたいまちと思われるようになり、場合によっては子育て支援につながることもあります。これは非常にコスパも良く、ある自治体でパートナーシップ制度にかかる予算を聞いたことがありますが、「4万円くらい」と言っていました。当事者は嬉しいですし、誰も損をしない制度なので、ぜひ作っていただけたらと思います。
 パートナーシップ制度のないところで暮らして辛い思いをして、パートナーシップ制度のあるところに引っ越した人もいます。安心できる仕組みづくりをしているかどうかということは、住民が住み続けられるかどうかということにつながります。住民が住み続けられるためにはどうしたらいいか、また東京などへ行った人が戻ってこられる故郷になれるかどうか、あるいは今はコロナ禍で住み替えてもいいまちになれるかどうかということもあり、取り組む効果はとても大きいと思います。

セッション2に登壇したみなさん

 

安心して訪れていただくにはどうしたらいいだろうか?
〜多様性を打ち立てる観光政策によって得られるメリットは大きい〜

松中さん:最後のセッションは「まち自体を一層フレンドリーにしてよりたくさんの人に訪れてもらえるようにしよう」を話し合います。まずは一人ずつ自己紹介とLGBTQとの接点をお話しください。

林さん:今日の会場の「KANAZAWA旅音」のオーナーをしています林佳奈と申します。金沢出身の主人の強い希望で愛知から5年前に移り住みました。せっかく帰ってきたので、金沢のために何ができるかを考え、外国人向けのゲストハウスを始めました。町家や空き家を活用して、金沢市内で22棟の宿をやっています。

後藤さん:25年くらい前からLGBTに関するライターや編集者をやっている後藤純一です。5年前に日本で初めて人事などの方を対象とした『職場のLGBT読本』を、昨年は『はじめよう! SOGIハラのない学校・職場づくり』も一部書かせてもらいました。今はアウト・ジャパンという会社で一般企業向けのLGBT研修を行いつつ、半分はLGBTツーリズムのことをしています。『LGBTツーリズムハンドブック』というさまざまな観光産業従事者向けのLGBTに関する情報が詰まったハンドブックを制作したり、東北に海外の旅行者を呼ぶためのレインボー東北というプロジェクトで東北6県を回って研修を行ったり、大阪観光局との提携で海外のLGBTQのお客様のための特別サイトを作ったりもしています。

武藤さん:金沢星稜大学4年の武藤りかです。2年生の時にアイルランドに留学して初めてLGBTの存在を知り、日本には私のようにこの問題について知らない人がたくさんいるから、一人でも多くの人にLGBTの存在について知ってもらいたいと思い、同性婚が合法化しているオーストラリアのシドニーに、文科省の「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム 地域人材コース」の制度を使って留学してきました。

松中さん:シドニーはLGBTの人にとって住みやすく過ごしやすいまちとしてとても有名なところですが、ぜひそこでの体験談を教えてください。

武藤さん:シドニーのLGBTを支援するNPOでインターンシップをして、世界最大といわれているLGBTパレードの運営補助などをしました。シドニーでは当事者がとてもオープンマインドで、自分たちの存在をアピールしている姿勢が印象的でした。トイレは8割くらいがオールジェンダートイレで、住むところが違うだけでLGBT当事者の生き方がこんなにも違うのかということを強く思いました。

松中さん:シドニーに行って金沢に帰ってきて、これまで見えてなかったことが何か見えてきましたか?

武藤さん:シドニーでは当事者と非当事者が積極的に交流できる輪があって、公共の場でこのように集まれるところが金沢にはないなと思いました。

松中さん:林さん、海外の人が金沢にやってくるとき、LGBTQであることをオープンにしてやってくる人もいるのでしょうか?

林さん:最初にゲストハウスを始めた時、毎晩、海外のゲストと一緒にご飯を食べることをしていましたが、最初の自己紹介で言われることも多いです。

松中さん:林さんがされている仕事の中で、LGBTQの人が来るかもしれないから気をつけていることや、何か情報発信していることはありますか?

林さん:特別に何かをやっていることはなく、友達同士のように接することを心がけています。

松中さん:海外からやってくる人からよく聞くのは、ホテルだと男性カップルでダブルの部屋を予約してもツインにされるという話があります。

後藤さん:ホテルの方で間違いではないか?と思って、勝手にツインに変えられることがあるのです。ひどいところでは、宿泊を拒否されたという話も聞きます。

松中さん: LGBTツーリズム実情というのを教えていただけませんか?

後藤さん:LGBTツーリズムというとどうしてもマーケティング的なイメージを持たれるかもしれませんが、私は行政や民間企業の施策のことだと思っています。LGBTの旅行者に気持ちよく過ごしてもらうために何ができるかということを考えて、取り組んでいくことがLGBTツーリズムです。カップルは男女だけではないということを、ホテルや旅館、お土産屋さんなどに理解してもらうことをまちぐるみで進めていくことだと思っています。

松中さん:実際それに取り組んで成功しているまちはあるのですか?

後藤さん:先進事例として、ホテルグランヴィア京都があります。お寺とコラボして同性結婚式を仏教のやり方で挙げられるというプランの販売を開始しました。海外の旅行博で発表したところ、すごい反響があって、海外には日本文化に興味がある人も多く、問い合わせが殺到しました。「日本でもこういうことをやっているんだ」となり、日本のイメージを変えたと思います。ただ、このホテルで勧められたバーにゲイカップルが行って、お店から嫌な思いをさせられてしまったという残念なこともありました。まちの人の理解がないと、せっかくの先進的な取り組みも台無しとなりますので、周囲に広く行き渡ることが大事なのかなと思います。
 国内の地域では沖縄が進んでいて、パームロイヤルNAHAというホテルが、地元のLGBTのバレーボール大会に協賛するなど、とても熱心に取り組んでいます。ピンクドット沖縄というLGBTのお祭りを主催しています。さらに沖縄観光協会などに働きかけを行って、レインボーアイランド計画を立て、どんどんLGBTの方に沖縄へ来てもらえるように地道に活動しています。

永井さん:この教育フォーラムを始めたきっかけは国連の持続開発目標ができたことで、多様性や誰も取り残さないということで松中さんと知り合い、それでスタートして4回目を迎えています。SDGsが浸透してきていることもあって世論も変わってきています。
 今年の6月に金沢市がSDGsの未来年に認定されて、モデル事業としてSDGsを地域に浸透させようとしています。そのモデル事業が「持続可能な観光」となっています。その中では、いろいろな人が幸福になれる観光プラスまちの人もいろいろな人が来てくれることで幸せになれる観光というのを目指しています。観光が多様性やLGBTを志向することによって、まち自体が優しくなっていく、そのような相互作用がある話だと思います。そう言った意味では林さんの“宿泊所だけでないまちへの関わり方”が面白いと思っています。

林さん:まちなかにあるところが多いということで、地域の公民館としても使ってもらったらと考えて、不登校のお子さんを持つママたちが集うカフェをしています。公民館でやるより、このような家の雰囲気を持つところの方が話しやすいということで、昼間はそういった活動に定期的に使っていただいています。
 ほかにも医療的ケア児がなかなかホテルなどで受け入れてもらえない実情を探り、どのような設備があれば受け入れ可能か、そのためのガイドライン作りも行っています。

松中さん:これまでこのダイアログでは教育しかやってきませんでしたが、SDGsの視点から観光というのもあるとなって、今回セッション3に観光を入れました。金沢が持っている良さを生かして、多様性やLGBTQの人たちが楽しく過ごせる観光タウンにしていくことは、やらなければいけないということではありません。このまちをそういうふうにしていきたいという気持ちがみんなに芽生えれば、「世界で注目されているまち」となって、たくさんの人が訪れてくれることも夢ではないのではないでしょうか。

後藤さん:すごくポテンシャルのあるまちだと実感したので、これを機にLGBTにきてもらうための働きかけをするといいと思います。

松中さん:金沢を本当に多様性ツーリズムのまちにするためのアイデアやいい場所をご存知でしたらお聞きしたいです。

武藤さん:当事者と当事者でない人みんながワクワクできるような場所を金沢に作れば、それを見た世界中の当事者が来たいと思ってくれるのではないかと思います。

後藤さん:世界で一番うまく行っている場所はスペイン。ヨーロッパ中からたくさんの人が訪れてお金を使ってくれます。成功の要因のひとつは世界で4番目に同性婚を認めたことです。「あのカトリックの国が」という驚きを与えたことが大きいと言えます。金沢はどうでしょうか? 観光地としての魅力はありますが、LGBT的に見た時、目立った取り組みはありません。それをしていくことは観光的にも大事なのかなと思います。

林さん:当事者と一対一で話す機会が増えると自分ごととして捉えられるようになりました。そういった話せる場が金沢にもっとできれば、より自分ごととして考えられる人も増えるのではないでしょうか。

松中さん:「プライドハウス金沢」が必要ということですね。金沢も選ばれるまちになるためには整えないといけないこともあるし、発信もしていかないといけません。金沢に住んでいる当事者が表に出るのはまだまだ難しいという実情がありますが、観光で他所から来てもらえると、地元のおじいちゃんも“うっかり”ふれあう機会ができ、「話してみたら気のいい兄ちゃんだった」と、偏見が解けるということも考えられます。
 東京以外ではまだまだLGBTQの存在の可視化は難しいです。でもいることを伝えないと、周りは変わっていかないというジレンマがあります。それを変えていくきっかけの一つとして観光があるのではないかと思います。

後藤さん:沖縄でも当事者が前に出るのは難しく、イベントを行っているのはアライの人たち。でも、このようなイベントが開かれることで、ちょっとずつ当事者の人たちも励まされたり、いいまちになってきたと思ってもらえたりと変わってきています。必ずしも当事者がカミングアウトしなくてもまちを変えていくことはできるのではないかと思います。
 LGBTツーリスムが成功する秘訣は、官・民・コミュニティが一体となって進めることです。自治体だけが頑張っても、ホテルだけが頑張っても、ピンポイントになってしまいますので、強く連携して一緒に取り組むということがとても大事ですし、長期的に取り組まないとなかなかうまくいきません。でも大きなマーケットではありますので、ポテンシャルがある金沢に海外からたくさんのLGBTの人が来てくれたらいいなと思っています。

セッション3に登壇したみなさん

永井:具体的に行動に移し、次回の第5回目はアクション会議か、発表会にしたいですね。長い時間、ありがとうございました。

 

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今回のイベントは新型コロナウイルス感染予防対策の為、定員を約10名に設定して実施いたしました。皆様のご理解とご協力に心から感謝申し上げます。

残念ながら参加できなかった方も多くいらっしゃると思います。そこでセッションごとにまとめた動画をアップロードいたしましたので是非こちらもお楽しみください。

【セッション1「安心して学べるまちをつくろう」】

【セッション2「安心して暮らせるまちをつくろう」】

【セッション3「安心して楽しめるまちをつくろう」】

 

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