2015年9月の国連サミットでポストミレニアム目標(Millenium Development Goals:MDGs)として、2030までの国際開発目標である「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals: SDGs)が採択されました。
OUIKでは、日本版SDGsのあり方を研究するポスト2015 プロジェクトと共催で、石川の地域人材育成に関わる取り組みから、持続可能な目標(SDGs)を考えるシンポジウムを開催し、約70名のご参加を頂き盛況に終えることが出来ました。
蟹江憲史先生(ポスト2015プロジェクトリーダー/慶応大学)の基調講演では、SDGsが国連で採択された背景、特徴、課題、政策ツールとしての可能性などを分かりやすく説明頂きました。これまでのMDGsや他の国際的枠組みでは途上国vs先進国という構図に陥りがちのところ、SDGsはすべての国を包摂するもので、各国の対等な取り組みが求められます。その意味では蟹江先生の「SDGsという視点ではすべての国が途上国である」というコメントが印象に残りました。
事例紹介では石川各地で人材育成の取り組み事例を紹介させていただきました。伊藤浩二先生(金沢大学)による「里山里海マイスター」の事例発表では、能登の世界農業遺産を次世代に残せる人材育成を紹介頂きました。能登の世界農業遺産は広域に渡る多様な構成資産から成るため、総合的な価値認定である、とよく言われます。第一フェーズはその科学的、社会的価値を世界と共有することだったとし、これからの第2フェーズはそれらを担う多様な人材育成(人間多様性)に注力してゆかなければいけないと結ばれました。
続く森山奈美さん(株式会社 御祓川)は、七尾市を流れる御祓川を中心としたヒト、ミセ、マチをつなぐ街づくりを株式会社として実践されています。地元の企業に学生インターンを派遣し学生、企業双方のヒトづくりに貢献する会社の哲学と活動を紹介いただきました。
仁志出憲聖さん((株)ガクトラボ代表)は大学時代の学生支援団体の立ち上げからこれまで、多くの学生、団体のキャリアコンサルを行なってきました。事業の株式会社化に伴い、インターンシップを通じた人材育成と地域企業ニーズのマッチングの取り組みをご紹介いただきました。石川で若い人材が活躍出来る場づくりを通じて地域に貢献する、というガクトラボが生み出すCSV(Creating Shared Value)がさらに多くの企業や団体、学生さんに共有され、さらには仁志出さんに続くコーディネーターが誕生してくれるとさらに心強いと感じました。
東京からかけつけてくださった小松サマースクール実行委員会の小山祥太郎さん(東京大学)には、アメリカの一流大学の学生と日本の大学生が高校生へ授業を行うことで、地域の高校生に幅広い視野を身につけてもらう活動を紹介していただきました。小松サマースクールの立ち上げに至るまでに感じていた地方での教育の課題を熱く語ってくださいました。現役大学院生による視点は大変参考になりました。改めて石川各地の人材育成はかなり先進的なのでは、と思える事例ばかりでした。
パネル討論では石川県企画課より寺坂公介さん、金沢市市民恊働課より柿本紀希さん、JICA北陸支部より小島路生さん、OUIKより永井三岐子が、蟹江先生の司会にて議論させて頂きました。討論では、地域でもSDGsは政策対話の有効なツールとなる可能性があることが示され、参加者の皆様からは、活動や議論のフレームワークとして取り入れたいなどのコメントを頂きました。SDGsは今後も地方創生の大切な視点となるでしょう。OUIKでは引き続き地域の皆さまとの恊働を通じてSDGsに貢献していきます。