ユネスコエコパーク(Biosphere Reserves:生物圏保存地域)の第4回目の世界大会が、ペルー・リマ市にて、2016年3月14日~17日の日程で開催されました。世界大会には、延べ約100ヶ国、1,000人を超える参加者が集まり、ユネスコMAB(人間と生物圏)計画の今後10年に向けた目標を定めた「MAB戦略2015-2025」と、それに基づく具体的な行動と役割をまとめた「リマ行動計画2016-2025」を的確に実行していくことを確認しました。
各国のユネスコエコパークは、生態系保全だけでなく、気候変動への対応や持続可能な開発目標の達成、グリーンエコノミーの実現など、具体的な行動の場として実践的に活用されていくことが目指されます。
今回、国連大学OUIKからは、飯田義彦リサーチアソシエイトが参加し、以下のワークショップならびにサイドイベントにて発表を行いました。
Mountains Workshop [詳細]
山岳地域の科学的なネットワークを議論するワークショップにて、日本のユネスコエコパークのすべてが山村や山岳地に位置づけられることを紹介し、日本の事例が世界の山岳地域のユネスコエコパークに対して有用な事例を提供する可能性を指摘しました。
また、白山ユネスコエコパークでの外来植物除去活動やタンザニアなどとの海外交流型環境保全プロジェクトを事例に、山岳地における住民参加型や民間主導型の創造的な保全活動の重要性を提示しました。
加えて、国連大学OUIK生物文化多様性ブックレットシリーズ第2弾『白山ユネスコエコパーク-ひとと自然が紡ぐ地域の未来へ』の刊行事業を紹介し、多様な主体を巻き込んだ教材づくりが単に1つのユネスコエコパークだけでなく、世界ネットワークの中での学びあいにも貢献できることをアピールしました。
ブックレットの作成に関わった多様な主体を紹介。(写真提供:白山ユネスコエコパーク協議会)
Side event: Synergies between Multidesignations in Biosphere Reserves [詳細]
ユネスコは、これまでユネスコエコパークをはじめ、世界遺産、ユネスコジオパークといった保全型プログラムに取り組んできました。今後は、ラムサール条約登録湿地やSATOYAMAイニシアティブ(IPSI)といった国際的なネットワークとの調整を図り、相乗効果をいかに発揮して生物多様性や文化多様性の保全に貢献していくかが問われています。本サイドイベント(座長:松田裕之氏)は、このような国際的な認証エリアに関する情報交換の場として日本側から提案したものとなります。
飯田義彦リサーチアソシエイトからは、石川県内の世界農業遺産「能登の里山里海」、白山ユネスコエコパークの双方に関わる立場から、持続可能な地域づくりや生物多様性保全、文化多様性の継承に向けて双方の経験が重要であり、補完し合うきっかけとなるOUIKの取り組み(ブックレットのシリーズ化や国際シンポジウムの開催など)について紹介しました。
石川県内の国際的な取り組みと国連大学OUIKの役割を説明(写真提供:白山ユネスコエコパーク協議会)
(文責:飯田義彦)