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【開催報告】かなざわ日本庭園まちのりツアー

5月22日は「国連生物多様性の日」。
その前日5月21日に、記念イベント「かなざわ日本庭園まちのりツアー」を開催しました。
水のめぐるまち・金沢の2本の河川と縦横無尽に流れる用水に沿って、非公開の2つの庭園を訪ねるプレミアムツアーで、約20名が参加。都市の緑地の生態系を研究する国連大学OUIKのフアン研究員がご案内しました。

また、今回の移動は金沢市公共シェアサイクル「まちのり」を利用し、車からでは感じられない水の音や、徒歩では味わえない風を切る爽快感を楽しみながら、気候変動の具体的な対策にも通じる、ゼロエミッションに近い、エコロジーなツアーが実現できました。

生物文化多様性の大切さを体感できる用水や庭園

金沢駅に集合し、まちのりに乗ってスタート。電動アシスト自転車のまちのりは、走り出しがスムーズで、ゆるい坂道も全く苦になりません。

金沢駅をスタート

鞍月用水で解説中のフアン研究員

大野庄用水沿いを走る

まずは鞍月用水に沿って進み、要所要所で止まって、金沢の用水の歴史や役割などのレクチャーを聞きます。続いて、大野庄用水沿いを、長町武家屋敷跡界隈へ。ここでは、今回の目的地の一つとなる武家屋敷の非公開庭園の見学を行い、抹茶と菓子の接待を受けました。

兼六園の整備に力を注いだ13代藩主・前田斉泰に仕えたご先祖が作庭したという池泉回遊式の庭園(金沢市指定名勝)。二本脚の灯籠をはじめ、「どこか兼六園に似た佇まいになっているのが特徴」と、所有者の石野延廣さんは教えてくださいました。
水は庭に並行して流れる大野庄用水から取水し、庭を一巡した後、大野庄用水へと戻っていきます。所有者から直接、庭園の自然環境の魅力やこれを維持していく大変さなど伺えたのは貴重な経験でした。普段は非公開ですが、約100年ぶりに池に落ちる滝を復活させ、今後はこのようなツアーでの公開を考えているそうです。

非公開の庭園を眺める参加者たち

参加者に庭園の概要を説明する石野氏

お茶を立ててくださいました

おいしいお茶とお菓子、ごちそうさまでした

犀川から浅野川まで、快適なサイクリング

広々として気持ちいい犀川の河川敷を走り、途中、大野庄用水の取水口を見学。まちの中心部へ入り、国連大学OUIKがある石川県政記念しいのき迎賓館の前で記念撮影を済ませたら、金沢城や兼六園を横目で眺めつつ、浅野川大橋を渡って、卯辰山山麓へ。ここは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、約50の寺社が集まり、寺院群をつないだ風情ある「心の道」と呼ばれる散策ルートがあります。
この辺りは道が狭くて車で入れないところも多く、そのために人口減少や高齢化が進んでいる地区でもあります。「空き家がたくさんあることや、一方で緑も多く残っていることにも注目してほしい」とフアン研究員が声をかけます。

広々とした犀川の河川敷へ

金沢城を横目で見ながら

車が入れない路地を進む

卯辰山山麓寺院群「心の道」

寺院群の一つ、浄土宗寺院・心蓮社が、このツアーの二つ目の目的地です。ここには小堀遠州流の築山池泉式庭園(金沢市指定名勝)があり、庭園の中央にある心字池の水は湧水が主で、夏の渇水時期でも枯れることはないそうです。
こちらでは庭園の清掃活動を体験しました。急傾斜で滑りやすい中、苔の上の落ち葉やゴミをていねいに拾い集めます。わずかな時間ですが、協力し合って拾い集めた落ち葉で瞬く間にゴミ袋がいっぱいに。

水面に写る新緑が美しい心蓮社庭園

滑りやすい急斜面での清掃活動

心字池の中央から水が湧く心蓮社庭園

キノコ発見!

今まで意識していなかった庭園の大切さを認識

その後は、フアン研究員から金沢市の庭園の特徴や重要性などをレクチャーしました。
金沢の庭園の一番の特徴として、庭園に水を用いていることを挙げ、その水源としては用水を用いているものと、湧水を用いているものに大別でき、今回訪れた2つの庭園がまさにその典型的なもの。
この3年で約25カ所の庭園を調査した結果、庭園の存在によって都市の生物多様性が増えていることがわかったと発表しました。また、ウェルビーイング(well-being)に関する調査では、庭園文化に触れあったり、庭園清掃を手伝ったりした人たちに、メンタルヘルスなどに関するアンケートを実施したところ、80%の参加者が自分の感情にポジティブな影響をもたらしたと答え、54%の人がネガティブな感情(怒りや緊張など)が減ったと答えました。一方で、庭園の数がどんどん減り、所有者の高齢化などからメンテナンス不足も深刻で、そのことから生物多様性が減少しているという、庭園が抱える課題についても報告しました。

フアン研究員からのレクチャー

庭園が抱える課題を解決し、所有者の負担を軽減する管理体制が必要とされる中、OUIKではこのようなツアーが所有者と観光客、双方にとってプラスになる解決策の一つと考え、研究を進めています。
持続可能性に気を配ったり、旅先の地域への貢献を考えたりする観光客に、このようなツアーに参加すれば、「生物多様性の保全への貢献」ができることを提案します。さらにメンテナンスが大変になってきている庭園の手入れを行う代わりに、観光客はお茶会に参加したり、新しい知識を得たり、生きもの観察をしたりといった特別な体験ができるということです。

今回の参加者からは、「庭園を引き継いでいくことの重要性を知ることができた」、「今まで庭園を見てもきれいと思うくらいだったが、いろいろな役割があることを知ることができた」、「SDGsを体感できるこのようなツアーは世の中のニーズにマッチしていると思った」といった声を聞くことができました。

国連大学IAS OUIKが入る石川県政記念しいのき迎賓館にて

 

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