2015年5月28日、金沢市
による日本初のユネスコ創造都市ネットワーク会議の招致を記念し、「石川-金沢生物文化多様性圏~ 豊かな自然と文 化創造をつなぐいしかわ金沢モデル」を開催し国内外から約150名の方に参加いただきました。
基調講演では、ユネスコと生物多様性条約事務局が共同で運営する「生物多様性と文化多様性をつなぐ共同プログラム」の生物多様性条約事務局側の担当官であるジョン・スコット氏が、地域の文化と自然は人間の活動を介して相互に影響を与えあう関係であることを述べ、生物多様性と文化多様性の包括的な保全の必要を提唱しました。
ユネスコ側担当官であるアナ・パーシック氏からは2015年9月に国連総会で決議された持続可能な開発目標(SDGs)に言及し、人間中心の包括
的なアプローチである生物文化多様性もその中で重要な役割を担っていくと発表しました。
続いて、具体事例としてフィレンツェ大学のマウロ・アニョレッティ准教授から、2014年フィレンツェで開催された生物文化多様性に関するヨーロッパ地域会合とそこで採択されたフィレンツェ宣言について紹介がありました。同宣言では、都市部でも農村部でも生物多様性と文化多様性の豊かさが私たちの豊かな生活に貢献しているという前提のもと、生物文化多様性を包括的に議論する視点が様々なレベルの政策決定プロセスやビジネスモデルで主流化されることが提唱されています。同氏は学術研究機関の役割として、生物多様性と文化多様性のつながりのメカニズムを学術的に検証してゆくことが、生物多様性と文化多様性の喪失に歯止めをかけ、文化政策と環境政策の融合につながると述べました。
続く金沢市の生物資源と伝統工芸の関係、豊かな自然と加賀藩による文化政策の賜物である石川の食文化、里山と健康に関する事例紹介を受けて、敷田麻実教授(北海道大学)は、金沢の豊かな文化が周辺の里山里海との支えあいの関係から成り立っている点に注目し、資源消費型ではない、石川の自然が育まれるような文化創造と発展を目指す、「いしかわ金沢モデル」を提案しました。
パネルディスカッションでは「いしかわ金沢モデル」を世界に発信するために何が必要かについて、議論が行われました。ジョン・スコット氏は、国連の枠組みは大切だが、地域の方々の取り組みなしには国連の枠組みは成り立たないとコメントしました。そして議論の総括として、渡辺綱男OUIK所長より金沢メッセージが読み上げられると、参加者からは拍手をもって賛同が確認されました。
OUIKはこのシンポジウムを端緒として、石川、金沢の生物文化多様性保全、関係者の皆様と推進し、国際的に発信するプラットフォームとなることを目指して、活動を行ってゆきたいと考えています。