SDGsは徐々に浸透しつつありますが、ビジネスでは「どのように取り組めばいいのか?」、そして「どんなメリットがあるのか?」という面で、まだまだ分からないことが多いという声を聞きます。ダイアローグシリーズ第4回は、SDGsをビジネス面で活用する方法について意見を交わすシンポジウムを開催。募集定員を大幅に上回るお申し込みがあり、関心の高さを実感しました。
シンポジウムは2部構成で開催
第一部では、企業にとってSDGsの意義とは、そして国際社会ではどのような動きになっているかについて、国連大学上級副学長の沖大幹氏の基調講演と、「グローバルや地域の課題をビジネスチャンスに変えるために何が必要なのか?」について、SDGsを先進的に実践している皆さんによるパネルディスカッションで、SDGsをビジネスにどう生かしていくかを考えるきっかけになりました。
第二部では、ジェンダー平等を取り入れることがビジネスチャンスをつかむことを、国連女性機関日本事務所長の石川雅恵氏が講演し、ジェンダー平等によって見えてくるものや、真の女性活躍についてパネラーと一緒に議論しました。
沖大幹氏の基調講「ビジネスとSDGs」
SDGsは、達成できなくとも法的ペナルティーがあるわけではなく、真摯に取り組もうとしている人や企業はまだ少ないという実情があります。一方、海外では、例えば「ジェンダーの問題を考えていない企業の製品は置かない」というような動きも起こり始めていて、これから先、SDGsを実践しないとビジネスに影響が出るという状況が起こりうると考えられます。
SDGsへの取り組みは企業のステークホルダーとの関係をより発展させ、新たな協働の機会を創出し、大きなビジネスチャンスが期待されています。一方で表面的なアピールに終始する「SDGsウォッシュ」とならないようにしなければいけません。
SDGsは、慈善活動の延長である従来の CSR活動とは違い、取り組む企業はあくまでも本業に投資してビジネスとして成長することを求めています。「その結果、社会の課題解決にもなる」ことこそ、SDGsの実施により期待されている展開なのです。
「よりよい社会になるためにはどういう事ができるかを考えて、積極的にプレイヤーとしてSDGsに参加してほしい」と沖氏は結びました。
パネルディスカッション
「グローバル課題、地域課題をビジネスチャンスに変えるリーダーシップ」
モデレーターに平本督太郎氏(金沢工業大学SDGs推進室長)、パネラーに鈴木大詩氏(会宝産業株式会社)、徳成武勇氏(明和工業株式会社)、福光太一郎氏(公益社団法人金沢青年会議所理事長)を迎えて、討論が行われました。
SDGsを推進していくために求められている人材とは、一つの分野に固執するのではなく、分野横断的に考えて行動できて、地域と地球規模の課題解決を両立する考え方ができる人とのこと。そのようなリーダーを育成するためには、何をおいても企業経営陣の理解がなければできず、その点では、中小企業のほうが動きやすいという意見が出ました。
金沢には、SDGs推進に本格的に乗り出した金沢市役所、昨年、「ジャパンSDGsアワード」SDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞を受賞した金沢工業大学、そして国連大学OUIKやJICA北陸の存在と、さらにそれぞれの機関と提携して地元経営者や市民向けにSDGsに関するセミナーを開催している金沢青年会議所があります。このことは、SDGsに取り組む上でとても恵まれていて、SDGs推進にはこの上ない環境だというのが、パネラーの皆さんの共通意見でした。
「今後、金沢という地に新しい活動が生まれていけばいい。SDGsとしての持続可能性が高まり、そこに関わる企業が持続可能に成長できる。そのヒントが見えてきたのではないか」と平本氏が第一部のパネルディスカッションを締めくくりました。
石川雅恵氏の基調講演「ジェンダー平等をビジネスチャンスに」
環境、社会、ガバナンスに力を入れている企業を重視・選別して行うESG投資が拡大しています。女性活躍推進は企業にとってもメリットがあり、ジェンダーダイバーシティである企業の方がパフォーマンスがよいという事実があります。
ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを経営の核に位置付け、企業が自主的に取り組む「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」があり、企業のトップはその7つの原則を守る宣言を行います。これにより、社員満足度や生産性の向上、優秀な人材確保、企業のマーケティング戦略と結びつけた女性の経済的エンパワーメントの推進、新しいビジネス機会の獲得など、企業にとってのメリットも大きくなります。石川氏は「ぜひ、石川・金沢からもこの宣言をしてくれる企業が出てほしい」と呼びかけて、「今まで女性活躍は企業としてはやらなければいけないことだったが、これからは女性活躍をとり入れることで、それが企業の強みや競争力となる、そのように考え方を切り替えて、取り組んでいただければ」と結びました。
パネルディスカッション「ジェンダー平等の先にあるもの」
パネラーに大貫雅枝氏(日本政策金融公庫女性活躍・職場環境向上推進室)、石川雅恵氏(国連女性機関 日本事務所)、菅谷直美(経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー課)、高橋雅彦氏(ILCAいしかわ就職・定住総合サポートセンター)を迎え、モデレーターを永井三岐子(UNU-IAS OUIK)が務めて、パネラーの皆さんからは、それぞれのジェンダーに関する取り組みについての発表から討論はスタートしました。
大貫さんからは政策金融公庫の取り組みが紹介されました。またOUIKでインターン経験のある菅谷さんからは、結婚したばかりでこれから仕事も家庭も充実させたいという中で、女性が活躍するためには、男性も多様な働き方が選べるような環境が必要なのでは、と指摘がありました。石川の企業と移住者のマッチング事業などを通じて、石川の企業をよく知る高橋さんからは、SDGsやジェンダー平等をうたっているわけではないが、社員の働きやすさや社会貢献を意識している石川の企業事例が紹介されました。議論では、ジェンダー平等のためには、経営層、トップのやる気が大事。そしてその本気度を示すために女性の管理職を増やすこと。また、国連女性機関の「HeForShe」運動など、女性活躍推進の男性の仲間を増やしていくことも必要。さらに男性にもジェンダーの問題に興味を持ってもらうためには、丁寧な対話が重要となり、男性の意識改革だけでなく、女性の意識改革も重要であることなど、実例を交えつつ、熱く語り合いました。
これからも開催されるダイアローグから新しい流れを
閉会にあたってUNU-IAS OUIK所長の渡辺綱男からは謝意とともに、今年、OUIKが設立10周年を迎えて、今年はSDGsを柱にした「SDGsダイアローグシリーズ」を企画した経緯をご案内しました。この10年、環境を中心としたテーマの活動が中心でしたが、SDGsで幅広い分野の方々に参加していただけるようになったと言います。そして、このシリーズがいろいろな分野の人たちの出会いの場となり、それぞれの取り組みを前に動かす新しい力を生み出していると述べ、「一人一人がプレイヤーとなって石川・金沢らしさを生かしたSDGsの新しい流れ起こし、チャレンジできる場をつくっていくことにつながっていけたら素晴らしい」と、今後にさらなる期待を込めて、シンポジウムを締めくくりました。
今後も、SDGsダイアローグシリーズは、この場をお互いに学びあう場、ふれあう場という形で、さまざまなステークホルダーをさまざまなところから呼び、対話する企画を開催していきます。ぜひ、ご参加ください。