2026年5月24日(日)、能登空港講義室およびオンラインにて、 国際生物多様性の日記念イベント:「能登の復興と森づくりを考える 〜自然の力を活かし、未来へ繋ぐ~」を開催しました。震災や豪雨により被害を受けた能登の森林・里山について、人々の暮らしや生業、生物多様性の回復につながる森づくりや、保全と利用の両立をどのように進めていけるかを議論しました。
本イベントは、国連大学OUIKの主催、石川県 、能登地域GIAHS推進協議会・能登GIAHS生物多様性ワーキンググループ の共催、日本景観生態学会、中日新聞社、北國新聞社の後援にて開催されました。
はじめに、石川県 浅野大介副知事が開会挨拶で、能登の山には震災や豪雨の爪痕がまだ残っており、能登復興と森づくりは重要なテーマであり、県としても力を入れていきたいと述べました。
続いて、柳井清治氏(石川県立大学)が「能登の震災・豪雨による自然環境への影響」をテーマにイントロダクションを行いました。能登では震災や豪雨によって大規模な山地崩壊が発生し、生態系への影響も大きいことを説明しました。その上で、災害後に残された倒木や根、林床に残る実生・稚樹など、“生物学的遺産(レガシー)”を活かした復旧・再生の重要性について問題提起を行いました。また、多様な主体が復興に関わることの必要性についても述べました。
森本淳子氏(北海道大学)は、「自然の回復力を活かした森林再生」をテーマに基調講演を行いました。2018年の北海道胆振東部地震での事例をもとに、災害後の森林再生においては、倒木や林床に残された若い樹木、実生、稚樹などの“レガシー”が重要な役割を果たすことを紹介しました。実際に、レガシーを残した風倒地では自然に幼樹が成長し、15年後には若い森へと再生した一方で、倒木などを取り除き植林を行った場所では、十分な森林再生が見られなかった事例を紹介しました。
また、能登の被害地については、緩傾斜の崩壊地が多く、肥沃な表土が残っていることや、シカによる食害が少ないことなどから、自然再生の可能性があると説明しました。その上で、災害後に残された生態系の断片を活かしながら、土砂移動を防ぎ、自然の回復力を支える形で再生を進めていく重要性を強調しました。
一二三悠穂氏(石川県農林総合研究センター)は、「林業遺産 能登のアテ林業の継承と発信」について紹介しました。能登のアテ(ヒノキ科アスナロ属)は、強度に優れた建築材として知られるだけでなく、長年受け継がれてきた苗木づくりや育林技術が評価され、2023年に林業遺産に認定されたことを説明しました。また、アテは輪島塗の木地やキリコ祭りなど能登の文化とも深く関わっている一方、震災による被害も受けていることに触れ、県内外の人々を巻き込みながら継承に取り組んでいると述べました。
イベント後半のパネルディスカッションでは、小山明子氏(国連大学OUIK)がモデレーターを務め、「創造的復興に向けた森づくり―多様な主体による森林の再生と活用」をテーマに議論が行われました。パネリストとして、高峰博保氏(株式会社ぶなの森)、赤石大輔氏(大阪産業大学)、山口敦子氏(有限会社山口水産)、古矢拓夢氏(ケロンの小さな村)、長野麻子氏(株式会社モリアゲ)が参加しました。
議論では、震災や豪雨による大規模崩落が森林だけでなく、流木や土砂の流出を通じて海や漁業にも影響を及ぼしていることが共有されました。また、林道の復旧や崩落地への植樹といった課題に加え、シイタケ栽培、森林資源の循環利用、炭素中立や自然再興といった新たな森林の役割についても意見が交わされました。さらに、子どもの頃から自然に触れる機会の重要性や、外部から関わる人々を受け入れる体制づくりなど、多様な人々が森の再生に関わっていく必要性についても議論されました。
最後に、渡辺綱男氏(国連大学OUIK)が閉会挨拶を行い、能登には多様な森があり、それぞれに異なる役割や利用の形があると述べました。その上で、自然の回復力や地域に残された資源・知識を活かした再生は、今後の復興において重要な視点であるとし、人と自然の共生のあり方を能登から発信していきたいと述べ、イベントを締めくくりました。
詳細については以下の動画(シンポジウムの録画)をご視聴ください。



