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【開催報告】シンポジウム「いしかわ・かなざわから発信する生物多様性10年のあゆみ 〜 持続可能な次の10年に向けて 〜」

日時 / Date : 2020/5/16
場所 / Place : オンライン

2010年に愛知県で開催された生物多様性第10回締約国会合(COP10)では、生物多様性を守っていくための愛知目標が採択されました。そして2011〜2020年を「国連生物多様性の10年(United Nations Decade on Biodiversity)」と定めて、愛知目標の達成を目指してきました。
2020年はこの10年の節目の年であり、「国際生物多様性の日」である5月22日を記念し、「国連生物多様性の10年」のキックオフシンポジウムが開催された石川県での10年の活動を総括し、次の10年に向け、生物多様性とどのように向き合い持続可能な地域を作っていくかを考えるシンポジウムを主催しました。

※新型コロナウイルス禍の中、本シンポジウムはオンラインで開催しました。

 

この10年を総括し、次の10年を考える

UNU-IAS所長・山口しのぶ

開催に先立ちまして、主催を代表して国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)・所長の山口しのぶより、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)の今までの取り組みや成果について紹介。「この10年間の活動を地域から総括し、またこれからの10年を見据えた持続可能な社会のあり方について発信できることは大変意味深いことだと考えます」と、開会の挨拶がありました。

共催の環境省、石川県、金沢市からはメッセージをいただきました。

環境省大臣政務官・八木哲也氏

環境省大臣政務官・八木哲也氏からは、「石川、金沢における活動を総括し、次の10年を考えるイベントが開催されることは、生物多様性に関する活動を将来につなげていくことで大変意義深いもの」と述べ、「世界は新型コロナウイルスという危機に直面していますが、この危機に加え、生物多様性や気候変動の危機に対処していくための解決の鍵は自然との共生を実現していく中にあると考えています。これらの危機を克服していくために社会のあり方を見直し、自然と共生する持続可能な社会に変革していくことが求められています。本日のシンポジウムが自然と共生する持続可能な社会のこれからの形、生物多様性との向き合い方について、参加者の皆様方とイメージを共有し、新たな活動の展開につながるきっかけとなることを祈念しています」と述べました。

石川県知事・谷本正憲氏からは、石川県の国際社会での認知度向上や、国際交流の推進が図られてきたことに、UNU-IAS OUIKが大きく貢献してきたことを評価するとともに、「今後とも生物文化多様性の保全や持続可能な地域社会の発展に向けた石川県の取り組みを世界へ発信していくためにご協力をお願いしたい」というメッセージをいただきました。

金沢市長・山野之義氏からは、2016年に策定された、金沢版生物多様性戦略についてと、また四季折々に豊かな金沢の自然環境が伝統文化を育んでいることの紹介があり、これを次の世代へと引き継いでいく義務であるとのメッセージをいただきました。

 

基調講演
生物多様性の10年—これまでの10年これからの10年

基調講演は、公益財団法人 地球環境戦略研究機関 理事長の武内和彦氏にお願いしました。

武内和彦/公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)理事長・国連大学上級客員教授・東京大学未来ビジョン研究センター特任教授

「オンラインのシンポジウムを開催するということで、新しい社会における交流のあり方につながればいいなと思っています」と、まずは抱負を述べられ、生物多様性のこれまでの10年の総括と、これから先の10年はどんなことを考えていけばいいのかについて、講演していただきました。
COP10で採択された「愛知目標」を踏まえて、日本の生物多様性国家戦略の見直しの最中に東日本大震災が発生。恵みであると同時に脅威でもある日本の自然に対し、感謝と畏敬の心で接することを認識したそうです。今回の新型コロナウイルスの発生についても、自然環境の破壊と無関係ではないという専門家の話を交えながら、自然との共生ということに立ち返って、これからの人と自然のあり方を考えていく必要性を強調しました。

2019年5月に、「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学―政策プラットフォーム(IPBES)」から公表された生物多様性に関する報告は、「世界中で約100万種が絶滅の危機に瀕している」という、非常にセンセーショナルな数字で広く知られるようになりましたが、この報告書が言いたかった、もう一つの大事なメッセージを紹介しました。
それは、「このままでは自然保護と自然の持続可能な利用に関する目標は達成されないが、経済・社会・政治・科学技術の横断的な変革により、2030年以降の目標を達成できる可能性がある」とあり、「社会変革を促進する緊急かつ協調的な努力により、自然を保全、再生、自足的に利用しながら同時に国際的な社会目標を達成できる」とあることです。
「こういうポジティブなメッセージも含まれていることをぜひご理解いただければと思います」と述べました。

愛知目標達成に向けた現在の進捗状況は、順調に進んでいるものは少なく、一番うまくいっているのが「保護地域の拡大」で、うまくいっていないものは、「生息地の破壊」、「過剰な資源の利用」、「化学汚染」など。「外来種」はうまくいっているものもあればいっていないものもあるそうです。

SDGsのゴール達成に必要なトランスフォーマティブ・チェンジ

SDGs(持続可能な開発目標)で生物多様性と直接関係があるのは「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさを守ろう」ですが、生物多様性は人の健康とも密接な関係があります。SDGsの目標に対して生物多様性の議論がどのように進んでいるかと言うと、うまくいっている例は残念ながらほとんどないと言います。これまでの自然を守る、自然を活用するということに重点が置かれていた生物多様性の議論から、もっと広く社会や経済や、あるいはさまざまな環境問題につながっていくことを見据え、論点を変えていくことが必要であり、これが愛知目標に続く新しい目標のひとつの視点になりつつあるそうです。
このような議論は、世界でも盛んに行われていますが、そこで共通して使われている言葉があるそうです。トランスフォーマティブ・チェンジ(transformative change)と言い、翻訳すると「社会変革」です。
つまり、今の社会を単純に改善していくだけでは、高い目標に到達することはできず、到達させるためには、社会を大きく変えるような、そういう試みが必要であるということです。

地球規模の持続可能性に向けた「社会変革」は、具体的にどうやって展開していくかが重要であり、IPBESの報告書の中では、さまざまなステークホルダーが一体となってこの問題に取り組んでいく、そのための新しい共通の場が必要とあります。そのような人たちが一緒になって今の問題を解決するために、現在の状況に対して入り込み、変革を進めていくことが重要だと言います。
SDGs、気候変動、生物多様性、防災について(災害リスクの軽減)、それらをバラバラに考えていくのではなく、みんな合わせて考えていく──多様な取り組みを相乗的に進めていくことが重要だと言い、その中には、新型コロナウィルス後の人の健康と生物多様性のあり方の再考が含まれるのではないかと述べました。

ポスト2020年 2020年以降の目標

UNU-IASが行った取り組みとして、今後とも発展させていかなければいけないものとして、「生物多様性の持続的な利用」を挙げました。「SATOYAMAイニシアティブ」は、この持続的な利用に資する非常に有効な取り組みであると、生物多様性条約でも認識、評価されているそうです。
保護区以外の空間で人と自然がお互い手を携えるお互いに良い状態を作る、時には自然からさまざまな問題も投げかけられますが、それを人はうまく受け止められるような仕組みを作っていく──こういうものとして「SATOYAMAイニシアティブ」がさらに発展できればいいと期待を述べました。

石川、金沢の取り組みについて、世界農業遺産の取り組みと「SATOYAMAイニシアティブ」の取り組みは、同じことを違う側面で語っているので、これらを統合していくことも重要と思っているそうです。
最後に、「石川県で生物の豊かさのみならず、地域の文化的多様性も活用し、そしてSDGsに取り組んでいくというのが、これから期待される石川、金沢での取り組みではないだろうかと思います」と述べ、締め括りました。

 

事例紹介
能登の里山里海と生物多様性

小山明子/国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット 研究員・珠洲市の能登SDGsラボ連携研究員

続いて、UNU-IAS OUIK 研究員の小山明子から、能登島の取り組み事例を紹介しました。小山は5年ほど前に能登に活動の拠点を移し、2016年からは国連大学の能登の世界農業遺産関連業務に当たっています。
まず、能登の里山や里海の恵みは古くから人々に活用され、人の手が加わることによって多様な環境が生み出され、生物多様性が高くなっているということを解説。こういった人と自然の豊かなつながりがあることが認められて、能登半島は世界農業遺産に認定されたと述べました。

能登島での生物多様性に関係する具体的な取り組み事例として、長崎地区での「能登島自然の里ながさき」の活動を紹介。2009年に石川県が選定した先駆的里山保全地区の一つに長崎地区が選ばれて、これをきっかけに、「生物多様性の保護と生業を創出し、自然と人が共生する地域づくりを目指す」ことを目標とした「能登島自然の里ながさき」の活動が始まったそうです。

この地域の絶滅危惧種の植物調査を頻繁に行い、島内には石川県の絶滅危惧種120~130種が存在することがわかり、能登島固有植物2種も見つかりました。
調査だけでなく、ビオトープづくりなどによる保護活動も行われていて、植物や両生類、鳥類などが生活できる環境を守っています。

里山里海の資源の持続的な活用

保全と生業づくりを一体化させた取り組みを行っており、その一つが、この地区で昭和に途絶えてしまっていた塩作りを復活させ、里山の木材を燃料に、里海の海水を使った塩の製造と販売です。
もう一つが、繁茂しすぎると地面を覆ってしまい、他の植物を育たなくさせるウラジロの採取で、これを年末のしめ飾り用として、年間約3万枚を出荷しているそうです。

これからの10年については、これまで行われてきた生物多様性調査・保護・モニタリングの継続であり、一番大切なのはフィールドの生き物が育っていける環境維持だと言います。イノシシなど新たな脅威もあり、その対策を練っていく必要もあると述べました。
さらに能登島の若手移住者などが中心になって進めている「能登島まあそいブランド」との連携や、能登里山里海マイスターの修了生などの既存ネットワークとの連携も深めながら、新たな価値を生み出し、活動の持続性を高めることの重要性について言及しました。


「世界的には生物多様性の損失、気候変動、食の安全などさまざまな課題があります。でも、どんな課題もこういった長崎のような地域レベルの一つ一つの取組なしには解決できません。そういった取り組みをいろんな方たちと協力しながら支援していくことが、ますます重要になってくると思います。UNU-IAS OUIKが地域に根差した国連機関であることを生かして、地域のネットワーク化、そして世界で同じような課題を抱えている地域が他にもあるので、そういったところと情報共有の場などを作っていくことが非常に重要になってくると思います」(小山研究員)

 

ビジネスセクターの
生物多様性の10年と、これから

藤田香/日経BP 日経ESG シニアエディター&日経ESG経営フォーラムプロデューサー(富山県魚津市生まれ)

続いて、日経BP 日経ESGシニアエディターで、日経ESG 経営フォーラムプロデューサーの藤田香氏から、ビジネスセクター(ビジネス部門)からこの10年を振り返り、この先の展望をお話しいただきました。
ビジネスセクターでも2010年をきっかけに、本業での生物多様性への参画が盛んに進むようになってきたという藤田氏。経団連の生物多様性アンケートで2009年と2019年を比較すると、経営方針に「生物多様性の保全」や「持続可能な利用」という言葉をどれくらい織り込んでいるかという質問では、「生物多様性の保全」が39% → 75%、「持続可能な利用」が32% → 62%と、生物多様性への取り組みを行う企業が大きく増えていることを紹介。
直接、生物多様性という言葉は出てこなくても、言葉を変えて生物多様性という概念が浸透してきた印象があると述べ、それはこの10年間に、いろいろな社会的要請があったからだと言及しました。

2012年のリオ+20で「自然資本宣言」を金融機関で出したりなど、先進的な大企業はこのようなことに取り組んでいかないといけないということが認識されるようになり、SDGsが登場したのと同じ、2015年くらいからは「持続可能な調達」が重要視されるようなったそうです。2016年、東京五輪の持続可能な調達コードが出始め、企業がいろいろ取り組みを本格的に始めています。
さらに、この10年の大きな流れの柱として、ESG投資家の動きがあり、2016年頃からは森林や水産資源などの評価を始めているそうです。2019年のG7では生物多様性憲章も採択されました。
生物多様性だったり、自然資本だったり、SDGsだったり、持続可能な調達だったりと、言葉を変えながらも、この概念は着実に広がってきたと思っていると述べました。
また、東京五輪の「持続可能な調達」基準では、生物多様性と人権に配慮した調達を挙げています。そして、生物多様性と切り離せないのが、原材料を調達してくる地元の人々、あるいはサプライチェーンの途中段階で生産している人々の人権配慮であることを強調しました。
「持続可能な調達方針」や「目標」を策定し、「人権デューデリジェンス」を実施する企業も、ここ1〜2年で少しずつ増えてきているそうです。SDGsは生物多様性・自然資本経営に関わる部分が大きいと付け加えます。

さらにESG投資の伸びがあり、この3年くらいの特徴として、投資家の格付けが生物多様性分野に広がってきたと言います。投資家による協働エンゲージメントでは、たとえばパーム油のことを投資家から企業は聞かれるようになり、「ちゃんと対応してますか?」と投資家から問われることで、企業にとってはその分野をより頑張らないといけないと背中を押されることになるそうです。
ESG経営の重要な柱の1つに、持続可能な調達や生物多様性を入れている「花王」では、生物多様性の具体的な活動例の中に、「生物多様性の負荷を下げるための技術開発(イノベーション)でパーム油代替するような原材料を開発する」というものもあって、企業の本気度が伝わってきました。

都市と地方をつなぐのは、生物多様性・自然資本

サプライチェーンからの要請は、下流(販売する側など)から上流(原材料のある地方)に行くだけでなく、逆に上流側から、「里山・里海という豊かな自然資本がある、そしてスキルや知恵を持った豊かな人的資本がある」というふうに、ぜひ使って欲しいし、「こういうアイデアはどうですか?」ということを仕掛けて行くこともできます。「それをつなぐのがまさに、自然とか生物多様性だと思っています」と述べました。
SDGsでの変革は、都市と地方がオープン・イノベーションでいろいろな新しいアイデアや仕組みを出して、変革を生み出せるいいチャンスなのではないかと言います。

さて、里山里海の資源を生かし、地域課題解決に取り組む時、SDGsという世界共通言語を使うと、刺さりやすいそうです。その例として、環境保全農業を実施している「金澤美人れんこん」を挙げて紹介がありました。
従来ならば「生物多様性に配慮したれんこんです」だけだったものが、作り方で生産効率をあげたり、IoTを活用して、働きかた改革も実現している特徴があることから、SDGsならば、2番とか8番とか14番とか15番にも貢献していると説明できます。生物多様性+SDGsにより、世界の誰にでもこの取り組みを発信しやすくなるというわけです。
「そういう意味でうまい具合に、地域の取り組みを生物多様性とSDGsという言葉を使ってPRを行い、仲間を見つけていくというのも、これからより重要になっていくのかなと思っています」と、話を結びました。

 

パネルセッション
「この10年を振り返り、今後の10年について語る」

道家哲平氏/国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)事務局長、鳥居敏男氏/環境省 自然環境局長、イヴォーン・ユー/UNU-IAS OUIK研究員に、先に発表を終えた藤田香氏を加え、渡辺綱男/UNU-IAS OUIK 所長をモデレーターに、パネルセッションを行いました。

まずは、藤田氏以外の3人にそれぞれの視点から、今までの10年を振り返って評価してもらい、そして今後の方向について述べていただきました。

●市民団体、市民社会の視点から 道家哲平氏

道家哲平/国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)事務局長

愛知ターゲット達成に向けて2011年に発足した「にじゅうまるプロジェクト」という取り組みを紹介。愛知ターゲットの生物多様性のことを学び、自分たちがどんな取り組みで貢献できるかを宣言し、みんなで行動するもの。全国729の団体が1054のアクション宣言を行なっているそうです。
10年間を振り返るキーワードを改めて考えると、「良い取り組みは生まれたが不十分」、「世界と地域の連動と、切り離し」の2つがあると言います。後者については、世界の良い影響を受けましたが、悪い影響も受けたので、良いものを受け入れ、悪いものを切り離す力が必要だと解説。
次の10年の方向性としては、自然の分野からSDGs達成を行う中で、「知る」「守る」「回復する」「投資する」「人と自然をつなぎなおす」の5つのアクションの入り口をつくり、世界中で、あらゆる関係者が取り組むことで、社会変革(トランスフォーマティブ・チェンジ)を起こしていく、今そのようなことを話し合っているとのことです。

●国の政策、立案という立場から 鳥居敏男氏

鳥居敏男/環境省 自然環境局長

「2010年から10年、自然の猛威を思い知らされたり、昨今の新型コロナウィルスの影響もあり、人と自然の関わり方をもう一回考えないといけない事態が起こっているということに、何か因果を感じます」と述べ、SATOYAMAイニシアティブなどの流れをふり返りました。
また、今年の秋に開催される予定の生物多様性条約第15回締約国会議(CBD COP15、中国雲南省昆明にて開催。ただし延期される可能性が大)の「ポスト2020生物多様性枠組にむけての作業部会」で、日本のポジションから提案した事柄を紹介しました。
具体的に「日本の経験・知見からの貢献」として、SATOYAMAイニシアティブ、気候変動対策との連携、グローバル経済(持続可能なサプライチェーン構築)、非意図的に侵入する外来種への対処についてを挙げました。それぞれに関わりがある事柄であり、その取り組みにより、SDGsの達成に貢献していく、あるいは環境だけでなく、社会・経済の課題に統合的に対処して言い、トランスフォーマティブ・チェンジを目指していくことが重要と考えていると述べました。

●国際機関という立場から イヴォーン・ユー

イヴォーン・ユー/UNU-IAS OUIK研究員

「私のように生物多様性を研究する生物学者でない人が増えていることや、COP10以降に生物多様性という言葉を初めて聞き、関心を持つようになった人もたくさんいるのではないかと思っていて、そういう意味でこの10年間はすごく大きな進歩でした」と最初に述べ、現在とこれからのことを中心に話しました。
2020年は生物多様性のスーパーイヤーと呼ばれ、新しい機会と解決法をみんなで生み出して、未来に向けていくという、大きな未来志向を持つ年と紹介。COP15のテーマは「生態文明」。人と環境の関わりに着目してほしい、ということで文化的な多様性も注目するべきではないかというメッセージが込められているとのこと。
私たちの持続可能な社会の土台、SDGsの土台となるのが自然資本。生物多様性は自然資本に関するSDGsの4つのゴールをつなぐ重要なものであり、それぞれの健全性を示す指標になると言います。
IPBESの生物多様性及び自然に関する多様な価値を示しながら、今までは生物多様性、あるいは自然の価値を考えた場合、どうしても環境保全、あるいは経済活動にどうつなぐ、どう活かす、というような経済か環境かというふうに考えていましたが、これからの10年は、もっと多様な価値をまず皆さんに認識していただきたいと述べました。
あらゆる分野、産業、社会レベルにおいても、生物多様性の多面的な価値がみんなに理解されやすい「共通語」、あるいは「共通価値」を見つけ出すことが大事ではないか、そういう活動によって、生物多様性喪失を食い止めることができればと考えているそうです。
「今年の生物多様性の日のテーマの通り、解決の鍵は自然の中にありますが、それらの鍵を探し出せるかは私たち人間だけです。そして皆さん一人ひとりが解決者になれるかもしれません。皆さんにもそういうふうに考えていただき、一緒に頑張りたいと思います」と述べました。

活動を前に進めていくためのポイントとは?

「現場を見ると、かけがえのない自然が開発によって失われているということをまだまだ見受けます。現場で活動している人たちの視点に立って、生物多様性やSDGsをどう結びつけて、活動を前に進めて行けばいいのか、その点について4人の方に大切なポイントやヒントをお話しいただきたいと思います」(渡辺所長)

「地域には豊かな生物多様性とその使い方を知っている人材と、場合によっては廃校になった学校など、都会にはないリソースがいっぱいあります。そのリソースを使って、生物多様性SDGsビジネスみたいなもののアイデアをどんどん出していくのがいいのではないかと思っています。時には奇妙キテレツなアイデアでも、『私こんなこと考えているんだけど、他に誰か一緒にやってくれませんか?』と、まさにオープンイノベーションでいろいろな人とパートナーシップで進めることがポイント。新しい考え方とか、それこそトランスフォーマティブ・チェンジができるのではないかと思っています」(藤田氏)

「藤田さんの意見に賛成で、そういう連携・協力を進めていく時に大事かなと考えているのが、いろんな分野の人たちと取り組みをしている時のポイントは、生物多様性の分野の側からは、『これはダメなんだよ』とか、『これは注意してほしい』とか、やって欲しくないことを明らかにしておくことです。ネガティブな部分も事前に出すことによって、それを避けつつ、どうやって協力ってが進められるだろうかということが考えられると思います」(道家さん)

「今回のコロナ感染症も、生物多様性への人の影響、あるいは気候変動が進むことで感染症のリスクも高まっているわけですから、それに対処していかなければいけません。その際の一つのキーワードが、自立分散の地域づくり。地域の特性に応じて、あるいはその地域は何を求めているのかをしっかり分析した上で、そこにある、自然や人的資源は何かを把握します。そして生物多様性の観点からだけで解決策を探るのではなく、社会経済の観点から、健康とか教育とか、いろいろな視点も入れて、一石二鳥、三鳥の解決策を考えていくことがポイントです。それはSDGsの達成にもつながっていくことだと思います」(鳥居氏)

「まずは地域の皆さんがもっている自然と生物多様性の価値を認識することです。能登には世界農業遺産に認定された、世界が認めている農業システムがあるにもかかわらず、いまいちよく理解されてません。もっと自分の地域で持っていることを積極的に知ることがとても大事かなと思います」(イヴォーン研究員)

厳しい状況下で活動を進めていく皆さんへ

渡辺綱男/UNU-IAS OUIK

「国連生物多様性の10年ということで10年間、石川・金沢もいろいろなことを頑張ってきたし、全国各地でも活動が進められています。一方で、大きな自然災害であったり、新型コロナウィルスだったり、いろいろな厳しい状況も続いています。その中で私たちは、自然とどう付き合って、どう共生していけばいいのか、どんな気持ちでどんな姿勢で、活動を前に進めていけばいいのかということを、このシンポジウムの参加者の皆さんもそれぞれ悩みながら考えていると思います。最後に、そういう参加者の皆さんへ、パネリストの方々から、一言ずつメッセージをいただければと思います」(渡辺所長)

「一人一人が鍵を探し出す、解決者となれるのだということをぜひ思ってほしいです。大袈裟なことではなく、皆さんの身近な生活の中の行動、例えば食べ物を選ぶ際にも生物多様性のことを意識してもらうことが大事。皆さんなりの発想を生かして解決者になってください」(イヴォーン研究員)

「3.11の時もそうでしたが、今回のコロナは、都会は水も食料もエネルギーも、地方に依存していて何も自給できていないことを改めて認識する出来事でした。一方で、地方で残っているものを都会へ届ける、売れ残ったものを譲り合うといったようなサイトができたり、新しい発想が出てくるいいきっかけにもなっています。地方で子育てをしながら仕事をするという、今までのライフスタイルがガラリと変わるような時代がこれからくるのかなと思っています。新しい発想、まさにSDGs的な、課題についてみんなで知恵を出して解決していこうとするチャンスだと思いますので、都市の人も地方の人も、このチャンスをいろいろ考え、確認してもらいたいというのがひとつと、日本の自然資本をちゃんともっと使っていくこと、自給率を上げていくことをしっかりとやっていくいい機会にしてほしいと思っています」(藤田氏)

「生物多様性条約のソリューション(解決策)とはパズルみたいなもの。みんなが持ち寄ったアイデア、取り組み、イノベーション、そういったものを組み合わせていくことによって、解決策が生まれていくような形になっています。そういうものを考えていこうというのが今回の生物多様性の日のテーマであり、ポストコロナを考えた上でも同じことが言えます。誰も100点の答えは持っていませんが、それぞれがものやアイデアを出しあって、みんなで100点を作り上げていく、そういった問題解決に向けた臨み方というのがこれから本当に大事になってくると思っています」(道家さん)

「今回のコロナで我々の暮らしも変わってくる兆しが感じられます。たとえばテレワークみたいに、都会で仕事をしなくてもいいというのが増えてくると思います。自然豊かな里地里山で暮らして、そこの資源をうまく地産地消で活用しながら、持続可能な社会を作っていくという一つのきっかけにしていくということで、ぜひ、トランスフォーマティブ・チェンジを進めていければというふうに思っています。みんなで知恵を出し合いましょう」(鳥居さん)

「武内先生が最初にお話しされたトランスフォーマティブ・チェンジなしには前には進めない、それを実現していくためにも、いろんな分野の連携であったり、それを支えていく、今まで以上に幅が広くて、今まで以上に柔軟なパートナーシップを作っていくことが大事だということを、今日のシンポジウムで皆さんから伝えていただけたと思います。UNU-IAS OUIKもこうしたテーマについて、国際的な議論と現場の一つひとつの取り組みをつないでいく橋渡し役となり、これからも皆さんと一緒に活動を進めていきたいと思います」と、渡辺所長が述べて、パネルセッションは終了しました。

中村浩二/石川県立自然史資料館館長

最後に、石川県立自然史資料館館長の中村浩二氏より、「今日聞いた話を基に、どれだけ自分たちができているか、モニタリングして評価していくことが大事」と、閉会のお言葉をいただき、約280名というたくさんの方にご参加いただきました今回のシンポジウムは幕を閉じました。

 

 

 

 

★事務局からのお知らせ

・このシンポジウムは後援の国連生物多様性の10年日本委員会せいかリレーイベントとしても開催されました。国連生物多様性の10年日本委員会では生物多様性のためにできる5つのアクション(たべよう、ふれよう、つたえよう、まもろう、えらぼう)から自分のできることを宣言するMY行動宣言を推進しています。是非、皆さんも登録してみてください。

・5/22は国際生物多様性の日、そして2020年は愛知目標と国連生物多様性の10年の最終年でもあります。これらを記念して、生物多様性条約事務局エリザベス・マルマ・ムレマ暫定事務局長から日本の皆さんに向けてメッセージが届きました。(日本語訳は仮訳です)

・シンポジウム中、対応できなかった質問の回答は下の添付ファイルをご確認ください。

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