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【開催報告】SDGsダイアローグシリーズ最終回・総括シンポジウム「地域の未来をSDGsでカタチにしよう」

日時 / Date : 2019/03/23
場所 / Place : 金沢市文化ホール

2018年6月4日のキックオフ円卓会議でスタートしたこのシリーズも、最終回となりました。

締めくくりとなる今回は、「地域発のSDGsの可能性について」と題し、今までの対話(ダイアローグ)で見えてきたモノや課題を皆さんと共有して、今後どのようなSDGsを進められるかということを、センション1では自治体の視点から、センション2では異なる主体のパートナーシップによる推進について、パネルディスカッション形式で、議論を深めました。

*今までのダイアローグシリーズの概要につきましては、国連大学IAS-OUIKの「ニュースレター2019年3月号」や、当サイトの「催し事」をご覧ください。

金沢SDGs共同宣言を行いました

金沢市では2018年7月に金沢市、金沢青年会議所(JC金沢)、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(国連大学IAS-OUIK)の3者で、SDGs推進に向けた共同研究に関する協定を締結して、議論を行ってきました。
総括シンポジウムに先立って、その成果について山野之義金沢市長から発表がありました。

金沢市では、「金沢独自の目標を設定する」「その目標を達成すべく実行計画を策定する」「そしてそのことを多くの市民のみなさんに知ってもらう」という3つを進めていく上で、5つの方向性を導き出しました。

  1. 金沢の個性(自然、歴史、文化)を大切にしながら新しいことにチャレンジしてきた先輩。我々も新しいことに挑戦し、新しい魅力を付け加えて後輩たちに繋げていかなければいけない。
  2. これからの都市の成長とは拡大・膨張ではなく、与えられた環境を大切にして、資源循環型社会を作って次の世代へと伝えていかなければならない。
  3. 世の中をつくっていくのは子供や孫たち。常に子供や孫たちを意識して街をつくっていかなければならない。
  4. ハンディキャップを背負った方、高齢者、若者、女性、男性、全ての人が力を発揮できる環境を意識しながら施策をつくっていく。
  5. 先人がつくってくれたものを大切にしながら、新しいことに挑戦していく。それが個人の資質で終わるのではなく、仕組みとしてつくられ、持続発展型の社会にする。

 

「2030年がどんな世の中になるべきか?」をイメージしていくことが大切であり、金沢SDGsは、「IMAGINE KANAZAWA 2030」と名付けて、2019年4月より推進していきます。

「3者だけでなく、多くの市民を巻き込んでいくことで、多くの皆さんとともに持続可能な街・金沢をつくっていきたい。そのために精一杯努力することを、ここで宣言します」と、山野市長は結びました。

また、金沢青年会議所・仲泉理事長からは、2030年に主役になるのは子供達であり、SDGsのさらなる認知向上のため学校教育にSDGsを取り入れる事業を展開していくという話がありました。

国連大学IAS-OUIK・渡辺所長からは、国際社会との地域の現場の取り組みを橋渡しするOUIKの特徴も生かし、金沢市、JC金沢、会場に集まってくださった皆さんとともに、金沢SDGsの取り組みを前に進めていきたいと述べました。

IMAGINE KANAZAWA 2030 Facebookページ

 

セッション1 地域でのSDGs推進における自治体の役割とは

地域のSDGsを進めていく上で、自治体の役割は大きいもの。自治体が市民とどういう風に協働を進めていくのか? 高木超さんのファシリテーションで、議論を進めていきました。

まず、高木さんからは「SDGsをきっかけに自治体は何が変わるのか?」について、話題提供がありました。

慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特任助授・高木超(たかぎこすも)氏 若者のsdgs参画を推進する団体「SDGs-SWY」の共同代表も務める

既存の政策でいくと持続可能ではない。SDGs視点の政策が持続可能にする。変革的な工夫が求められ、2030年には「そういえば昔はみんなペットボトルで水を飲んでいたよね」というくらいの変化がないと地球は持たない。SDGsの中で一つキーワードになるのは、現在の当たり前の社会構造をどのように変えていくか、そういうところにある。

SDGsの特徴と言える、バックキャスティングとインターリンケージという考え方。バックキャスティングとは、未来の理想の姿を規定し、そこから現在、何をすればいいか、もう一度考え直して政策を積み上げていくもの。そして、インターリンケージとは、縦割りを打破して複数の異なる部署が協力することで相乗効果を生み出すもの。

過去は現在に影響している。未来から現在を考えなおすことで、未来もまた、現在に影響している。SDGsは未来を考えることで自治体の今の行動を変えていく。

「IMAGINE KANAZAWA 2030」をスタートさせた金沢市企画調整課長の高桒 宏之(たかくわひろゆき)さんと、政府のSDGs未来都市に選定された自治体からは、珠洲市企画財政課長の横川 祐志さん、白山市企画振興部次長横川 祐志さん、長野県職員で信州イノベーションプロジェクトSHIP共同代表の倉根 明徳さんの3名に登壇していただき、議論を深めました。

少し前までは消滅可能性都市と名指しされていた珠洲市が今では未来都市になれたことや、市全体がジオパークの白山市は地域資源の活用と保護が求められているジオパークとSDGsの理念が合致していること、長野県では総合計画の中にSDGsの考え方を取り込んだことが評価されたことなど、それぞれの現状ついて説明があった後、SDGsが自治体にとってどのような役割を持つかということに言及していきます。

高桒さんからは、SDGsの17のゴールの存在は役所の縦割りを横串に導く存在であることや、開発によって失われる景観や生活文化などの価値を中長期的な視点から測れるのがSDGsだという意見を披露しました。

縦割りの問題については、倉根さんからも話があり、SDGsという世界標準の視点が整備されているということは、縦割りに横串を刺しやすくなり、職員の意識も変わったそうです。

「多様性を受け入れるにはどうすればいいか? SDGsの進捗をどう評価するか?」といったことなど課題も多いが、そういったことを対話で決めていく、そのプロセスが大事なのではないかという意見も出ました。

珠洲市は全国初と思われる「生物文化多様性基本条例」制定しましたが、これもSDGs未来都市に認定された大きな成果と位置づけられると言います。そんな珠洲市の取り組みに、会場からも絶賛する声が上がりました。

「地方都市は大都市に比べると経済のプレッシャーが弱い分、経済と環境と社会のバランスをとってSDGsの精神というのを体現していける場所なのではないか」(高桒さん)と言うように、地域という枠組みの中で、市民一人ひとりが「2030年ってどんな風に?」を想像し、議論を重ね、一人ひとりが変われば、それが2030の街を変える力になるはずです。

そう考えると、いろいろできることが見えてくるのではないでしょうか?

 

セッション2 SDGsパートナーシップのデザインとは

SDGsを統合的に進めていくには、さまざまなセクターの方々の協働が必須となってきます。「どのような協働、ガバナンスで進めていけば良いか?」 そういった知見をお持ちの広石 拓司さんをファシリテーターに迎えて、一般社団法人コード・フォー・カナザワ代表理事の福島 健一郎さん、エンパワープロジェクトのメンバーで金沢大大学院生の蝦名昂大(えびなこうた)さん、石川県立大学准教授の上野 祐介さんという、これまでのSDGsダイアローグに協力してくださった3名と、国連大学IAS-OUIK事務局長の永井三岐子とともに、パートナーシップのあり方について議論を深めました。

まずは、広石さんから、SDGsを考える上でのパートナーシップの重要性と、パートナーシップのあり方について話題提供がありました。

株式会社エンパブリック代表取締役・広石 拓司氏 環境省SDGs人材研修事業委員・講師なども務める

SDGsのテーマは、私たちの世界を次のバージョンに変えていきましょうというもの。今の問題はさまざまな要素が絡みあい、個別の分野だけでは解決できないものが多い。何が一番問題なのかを一つには同定できない状況であり、さまざまな分野とのパートナーシップが重要となる。そのため、パートナーシップ自体も次世代バージョンに変えて、皆んながレベルアップしていかないと問題は解決できない。

SDGsは個人や行政だけが取り組むことではなく、市民全体で変わっていかないといけない。大きな問題に対して個人ができることは小さいかもしれない。だからこそ、多くの人たちが協力しないといけないわけで、パートナーシップが重要となる。

SDGsは企業が熱心にやっているように、経済という側面も重要であり、また新しいテクノロジーも必要。

セッション2では、テクノロジー、市民の参加意識、まちづくり、トータルにさまざまな人たちをコーディネートする存在と、いろいろな立場の人たちにパネリストになってもらい、どういう風にすれば皆んなで協力できるかを考えていきたい。

続いて、それぞれのパネリストから自身の活動について説明がありました。

ITを使ってもっといい方向に持っていく、市民と一緒にチャレンジしているのがコード・フォー・カナザワ。市民が主体となって自らが望んでいる社会を作り上げるための活動とそのためのテクノロジーを「Civic Tech(シビックテック)」と称しますが、エンジニアに限らず、さまざまな市民が集まり、それぞれの課題に対して取り組んでいるそうです。テクノロジーは中立的であり、どの分野にどう使うかなどあまり関係がないといい、SDGsの1〜17の課題解決を、Civic Techで助けていきたいと福島さんは述べました。

蝦名さんが所属するエンパワープロジェクトでは、SDGs理念の「誰一人取り残さない社会」をつくるために「協力者カミングアウト」という活動を行っています。今までは当事者がカミングアウトするのが一般的でしたが、これは自分が協力者になることを意思表示するもので、それによって、誰もが暮らしやすい街になり、もっと助けあいが増える社会を目指しています。

*コード・フォー・カナザワ、エンパワープロジェクトについては、こちらの記事もご参照ください⇒「【開催報告】SDGsダイアローグシリーズ第15回SDGs アイデアソンワークショップ

上野さんからは、昨年4つの大学の研究者で設立した「北陸グリーンインフラ研究会」の紹介がありました。グリーンインフラとは、自然が持っている多様な機能を活用した社会資本整備、防災、国土管理の考え方です。研究会は、金沢市、JC金沢、市民とも連携を開始し、大学をハブとした産学官民ネットワークによる、グリーンインフラを活用した金沢らしいSDGsプロジェクトを創出しているそうです。

*グリーンインフラについては、こちらの記事もご参照ください⇒「【開催報告】SDGsダイアローグ第5回 国際シンポジウム都市景観をグリーンインフラから考える−金沢市における活用と協働

国連大学IAS-OUIKの永井からは、このSDGsダイアローグを15回行って得られたものは何か? 「人と人との繋がりを広げることができ、そして、パートナシップを行ったことで、常に他の方の視点を学ぶことができた」と報告しました。
そして、SDGsとは知識を学ぶものではなく、あり方を変えるもの。パートナーシップにより、自分自身もその枠から出ることができ、これはパートナーシップした人間が得られるご褒美ではないかと述べました。

引き続き、活動を始めた動機について、パネリストの皆さんに伺いました。

「Civic Techをやっていると、目の前に実際困っている人がいて、解決できれば本当に喜んでもらえる。それがエンジニアにとって大きな動機になる」(福島さん)、「報酬もなしにやったことに、ありがとうと言われることはその人にとっていい報酬となる」(蝦名さん)、「生きものが大好きだが、自然環境が後回しになってきた社会。自然があることで社会が回っているというグリーンインフラという考え方で、社会が変わって自然が守られればいい」(上野さん)など、3名ともそれぞれの立場から社会を変えていきたいとする想いを語りました。

では、どういう時に皆さんSDGsのスイッチが入るのでしょうか?

その事例を多く見てきた永井によれば、女性救済とか、子どもの貧困とか、ジェンダーの問題とか、そういう活動をしている方々はなかなかメジャーにはなれずにいたが、SDGsにより、活動の評価が大きく変わるということを理解されると、目を輝かせるそうです。以前はうやむやにされていた問題も、「SDGsなのにおかしい」と主張すると通るようになってきたと、自身の体験も披露しました。

「答え合わせは2030年。今できていないからダメではない。その辺も含めて未来志向が広まっていけばいいなと思う」と広石さん。

また、いろいろな団体などと連携していくことの工夫などをお聞きしました。

「私たちはエンジニアの団体ではなく、多様性が大事。社会が多様なので、我々も多様でないといい解決方法は生まれない。私たちは課題を解決したいと思っている人たちと一緒にやる団体。自分ゴトにしてもらうこことで、うまくいきます」(福島さん)

「コラボする際、ターゲットを絞りこまずにやったほうが、多様性ができて予想できない、いい結果を生むことも多いので、その辺は気をつけています」(蝦名さん)

「新しくものを起こすことは大変です。すでに問題を抱えているところに大学が入っていってお手伝いをする、一緒に育てていく、それを積み上げていく……。それを同時多発的に行えば、仲間が増えて、お互いにとってもいい関係が築けると思います」(上野さん)

また、上野さんからは、AIが進化することで人間の負担が減り、SDGsのような、社会をよりよくしていこうとする活動をする人たちが増えるのではないか? 一方で、17の目標全部が達成できないと2030年はやってこないから、それぞれの目標の達成度をITなどのツールで見える化する必要があると、テクノロジーによってSDGsが推進されることを具体的に言及しました。

エンパワープロジェクの蝦名さんからも、「ITを使えばまだまだ普及できる可能性があることを知った。そのところを検討していきたい」と、テクノロジーへの期待をにじませました。

永井からは、「SDGsで言えば、情報格差といわれる中、今、テクノロジーを持っている人が優位に立てる状況ではあるが、Civic Techの人たちが、そういったテクノロジーを誰も取り残さない方に向けてもらえると、すごく可能性が広がると思う」と述べました。

広石さんは、「SDGsを使うことでいろいろな人が関われる。そして自分には関係ないと思っていた分野の人たちも集まって、持続可能な社会って何かを話あえるきっかけにもなる。またSDGsにより、『こういうことが正しいのではないか?』といった意見も出しやすくなって、それが実際に実現していくのが2030年になればとってもいいのではないか。そこに皆さんが持っている技術だとか、助けたい心だとか、学問だとか、そういったものを持ち寄れば地域を変えられる。そういったパートナーシップが金沢でも、石川県でも広がっていければいいと思う」と金沢、石川県発のSDGsへの期待を込め、セッション2を締めくくりました。

セッション終了後、国連大学IAS-OUIK所長の渡辺 綱男より、「いろいろな意見があるが、そういう違いを乗り越えて、お互いが学び合って、前に進んでいく。そういう柔らかなパートナーシップを育てていくことが、これからはとっても大事なんだなと感じた。持続可能な街づくりを、SDGsを活用しながら、みなさんと一緒に進めていくことができればと思う」と閉会の挨拶をしました。

 

 

 

キックオフと今回の総括を含めると、全17回に及びましたSDGsダイアローグシリーズにご参加くださった皆さま、そしてご登壇くださった皆さまに、この場をお借りして御礼申し上げます。

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